高多孔性のポリ二弗化ビニリデン膜
【課題】高い非対称度と高い流量を有する微多孔性ポリ二弗化ビニリデン膜の提供。
【解決手段】内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む第2表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分はポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料のフィラメント状ウェブを含み、当該ポリマー材料は当該膜を本質的に水で濡らし得るようにするのに十分な、一体的に配置された親水性ポリマーを有しており、当該親水性ポリマーは、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含む膜。
【解決手段】内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む第2表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分はポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料のフィラメント状ウェブを含み、当該ポリマー材料は当該膜を本質的に水で濡らし得るようにするのに十分な、一体的に配置された親水性ポリマーを有しており、当該親水性ポリマーは、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含む膜。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
1.技術分野
本発明は、ポリ二弗化ビニリデン(PVDF)ポリマー溶液および/または分散体(もしくは分散液)を流延することにより形成される合成ポリマー膜(またはメンブレン)材料の分野に関する。本発明に従って形成される膜はすべて高多孔性である。内部が等方性である膜および高非対称性(非対称性の程度が高い)PVDF膜の両方が開示される。本発明の膜は、疎水性または親水性であり得る。本発明の膜は種々の精密濾過用途において有用である。
【0002】
2.背景技術
PVDFポリマー膜の製造に関しては、非常に関心が示され、また、多大な努力がなされてきた。フィルターとしてのPVDF膜に関心が示されている基本的な理由は、PVDFが、水の殺菌において広範に使用されるオゾンを含む酸化環境に対して、耐性を有することである。PVDFはまた、ほとんどの無機酸および有機酸、脂肪族および芳香族炭化水素、アルコールならびにハロゲン化溶媒による作用に対しても耐性を有する。それは、所定の非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、および熱アセトンに可溶である。更に、PVDFは、−50〜140℃の範囲の温度で良好な物理的性質を有する。
【0003】
Grandineは、多くの人が最初の実用的なPVDFの微小多孔性(またはミクロポーラス)膜と考えるものを、米国特許第4,203,848号明細書に記載されているように、製造した。この膜は、湿熱タイプの転相プロセスによって製造された。当該プロセスにおいて、PVDFは、アセトンに、その沸点である55℃にて溶解した。流延後、膜を、熱的に、また、水/アセトン(体積比で20/80)クエンチ浴にての両方でクエンチング(quenching;または急冷もしくは凝固)した。アセトンは55℃にてPVDFの良溶媒であるが、室温では貧(または不良)溶媒であり、よって、結果的に、Grandineは、熱と液体のクエンチングの組み合わせを使用した。
【0004】
Benzingerは、好ましくは溶媒としてトリエチルホスフェートを使用し、非溶媒として種々のヒドロキシ化合物を使用した配合物から、PVDF限外濾過膜を流延した。米国特許第4,384,047号明細書を参照できる。JosefiakはPVDFを、熱クエンチングプロセスを使用して流延される、幾つかの「多孔性成型体」の1つとして開示した。米国特許第4,666,607号明細書を参照できる。Joffeeらの米国特許第4,774,132号明細書は、活性化され、モディファイされたPVDF構造の製造を開示している。同様に、米国特許第5,282,971号明細書において、Degenらは膜に共有結合した第4級アンモニウム基を含むようにモディファイされたPVDF膜を開示した。Gsellらの米国特許第5,019,260号明細書においては、タンパク質親和性の低いPVDF濾過媒体が開示された。
【0005】
Costar社は、PCT国際公開WO93/22034において、向上した流量を有すると述べられているPVDF膜の製造を開示している。尤も、膜は、密接に整列して接触するポリマー粒子の密な配列(またはアレイ)を含む全体として等方性の構造を有するようである。膜における小孔(ポア)は焼結した金属に構造的に類似すると認められる。
【0006】
Sasaki(ササキ)らは、1988年7月20日に発行された英国特許公報第2,199,786A号および米国特許第4,933,081号(「Fuji(フジ)特許」)において、PVDF配合物を開示した。相対湿度が30%の60℃の空気中に曝される実施例1のPVDF配合物は、比較的高いポリマー濃度(20%)を有するものであった。更に、Fujiの配合物は、共溶媒/膨潤剤として使用される高濃度のポリビニルピロリドンを含んでいた。FujiのPVDF膜における表面の孔は、約0.45μm〜0.65μmの間にあるようであり、膜の厚さは100μm〜110μmの範囲である。
【0007】
従来技術の膜は、幾つかの方法のいずれかにより親水性にしたものである。膜に親水性を付与するこれらの各方法は、固有の問題または困難さを有している。例えば、膜をある成分で後処理して親水性を付与する場合、当該成分が浸出し、試料を汚染する可能性がある。流延膜表面の所定成分を架橋することによって、浸出を最小限にすることを試みることができる。例えば、Roesinkらは、米国特許第4,798,847号明細書(再発行特許第34,296号)において、ポリスルホン膜の構造の全体にわたってPVPを架橋することを開示している。尤も、親水性成分を膜に架橋することが浸出を最小限にすると同時に、それは、追加の工程および複雑さを膜の製造プロセスに追加し得る。更に、架橋に必要とされる条件次第では、膜強度および/または剛性が犠牲になる場合がある。
【0008】
膜に親水性を付与する別の試みは流延用サスペンション(または懸濁液)に親水性成分を含有させることを伴う。例えば、Krausらは、米国特許第4,964,990号および第4,900,449号明細書において、流延用溶液にポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンのような親水性ポリマーを含有させることによって、疎水性ポリマーから親水性の精密濾過膜を形成することを開示している。しかしながら、Kraus特許に従って製造される膜は、ポリエーテルスルホンの配合物に限定され、また等方性である。したがって、それらは、非対称のPVDF膜を必要とする用途に十分に適しているものではない。
【0009】
構造に関して、Sasaki特許の膜はすべて、2段階の非対称性を有することが開示されている。断面において、膜は微多孔性の面および粗い孔(または目の粗い孔)の面を有する。孔の直径はまず、微多孔性の面から粗い孔の面へのラインに沿って減少し、膜の微多孔性の面と粗い孔の面との間で最小の孔寸法(pore size;またはポアサイズ)に達する。それから、孔寸法は、粗い孔の面の表面に向かうラインに沿って増加するが、当該増加、ひいては膜の非対称性は、標準的なWrasidlo(米国特許第4,629,563号明細書)の非対称性の膜におけるほど、急激なものではない。
【0010】
非対称性または異方性の膜は当該分野において公知である。例えば、Wrasidloは米国特許第4,629,563号および第4,774,039号明細書において、Zepfは米国特許第5,188,734号および第5,171,445号明細書において、それぞれ、非対称性膜およびその製造方法を開示しており、それらの開示は引用により本明細書に包含される。Wrasidlo特許は、最初の真に非対称性の精密濾過膜を開示した。Wrasidlo特許において使用される「非対称性」とは、微多孔性スキンと基礎構造部との間で、断面を横切って孔寸法が連続的に変化している膜を指している。これは、「非微多孔性スキン(nonmicroporous skin)」と膜の基礎構造部との間ではっきりとした不連続性を有し、また、当該分野において非対称性と称されている逆浸透膜および大抵の限外濾過膜と対照をなしている。
【0011】
WrasidloおよびZepf特許はそれぞれ、高非対称性の、一体の、微多孔性の表皮を有する膜であって、高い流量と優れた保持特性を有する膜を開示している。膜は一般に、溶媒/非溶媒の系におけるポリマーの準安定2相液分散体を用いて、修正された「転相」プロセスで製造される。当該分散体は流延され、続いて非溶媒と接触させられる。Zepf特許はWrasidlo特許の改良を開示している。
【0012】
転相(または相転換)プロセスは一般に、次の工程:(i)1または複数の適当な高分子量ポリマー、1または複数の溶媒、および1または複数の非溶媒を含む溶液または混合物を、薄いフィルム、チューブ、または中空繊維に流延(キャスト)する工程;ならびに(ii)1または複数の以下のメカニズム:
(a)溶媒および非溶媒の蒸発(ドライプロセス);
(b)露出した表面で吸収する、水蒸気のような非溶媒蒸気への曝露(蒸気相誘導析出(precipitation)プロセス);
(c)非溶媒液体(一般に水)中でのクエンチング(ウェットプロセス);または
(d)ポリマーの溶解度が急激に大幅に減少するような、熱いフィルムの熱的クエンチング(熱プロセス)
によりポリマーを析出させる工程を経て進行する。
【0013】
模式的に、溶液からゲルへの相の転換は以下のように進行する:
【数1】
【0014】
実質的に、SOL1は均一な溶液であり、SOL2は分散体であり、ゲルは成形されたポリマー・マトリックスである。SOL2の形成の引金となる事象は、用いられる転相プロセスによる。尤も、一般に引金事象は、SOLにおけるポリマーの溶解性を中心とするものである。ウェットプロセスにおいて、SOL1は流延され、ポリマーの非溶媒と接触させられ、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。蒸気相誘導析出プロセスにおいて、SOL1は流延され、ポリマーの非溶媒を含む気体雰囲気に曝され、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。熱プロセスにおいて、SOL1は流延され、SOL2を形成するように流延フィルムの温度が下げられ、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。ドライプロセスにおいて、SOL1は流延され、1または複数の溶媒を蒸発させる気体雰囲気、例えば空気と接触させられ、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。
【0015】
流延用ドープにおける非溶媒は、ポリマーに対して常に完全に不活性であるとは限らず、実際にはそれは通常不活性ではなく、多くの場合、膨潤剤と称される。Wrasidloタイプの配合物においては、後で述べるように、非溶媒の種類と濃度の両方の選択が、それがドープが相分離した状態で存在するかどうかを決定する主たる要因となる点において、重要である。
【0016】
一般に、非溶媒は、主要な孔形成剤であり、ドープにおけるその濃度は最終的な膜における孔寸法および孔寸法の分布に多大な影響を及ぼす。ポリマーの濃度もまた孔寸法に影響を及ぼすが、非溶媒ほどではない。尤も、それは膜の強度および多孔性(または多孔度)に影響を及ぼす。流延用溶液またはドープの主要な成分のほかに、例えば、界面活性剤や剥離剤のような副成分が存在し得る。
【0017】
ポリスルホンは高非対称性の膜を、特に2相のWrasidlo配合物を用いて、特に形成しやすい。これらは均一な溶液ではないが、2つの分離した相からなる:一方は溶媒に富む透明な、分子量のより低いポリマーの低濃度(例えば、7%)溶液であり、他方はポリマーに富み、濁った、コロイド状の、分子量のより高いポリマーの高濃度(例えば、17%)溶液である。2つの相は同じ3つの成分、即ち、ポリマー、溶媒、および非溶媒を含むが、それらは濃度および分子量分布が非常に異なる。最も重要なことには、2つの相は互いに不溶性であり、放置した場合には分離する。したがって、当該混合物は、フィルムに流延されるときまで、絶えず攪拌して分散体として維持されなければならない。実質的には、Wrasidloタイプの配合物において、流延用ドープはSOL2(分散体)の状態で提供される。したがって、分散体は、(上述の)中間工程としてではなく、下記のようにゲル形成開始点として作用する。:
【数2】
このプロセスの変形は、主として、従来技術のものと比較して、Wrasidlo膜の高度の非対称性および均一性をもたらすものであった。
【0018】
相分離をもたらすのは流延用混合物における非溶媒とその濃度であるが、全ての非溶媒がこのように作用するものではない。放置された場合、2相は互いに分離するが、各相はそれ自体かなり安定である。混合物の温度が変化すると、相間移動が生じる。加熱すると、より多くの透明な相が生成し、冷却すると、逆になる。濃度の変化は同様の効果を奏するが、Wrasidloによって論じられているように、相分離した系が存在し得る限界の濃度範囲または領域がある。Wrasidloは、一定温度にてそのように分散したポリマー/溶媒/非溶媒の相図においてこの不安定領域を規定するが、これは、スピノーダル線(spinodal curve)内、またはスピノーダル線とバイノーダル線(binodal curve)との間に存在し、そこでは、肉眼で見える2つの分離した層が存在する。
【0019】
ポリマーの大きな疎水性のために、ならびに一方が溶媒に富み、他方がポリマーに富む、2つの相が予め存在する流延用混合物の熱力学的に不安定な状態(転相に付される場合、他の系が通過しなければならない状態)のために、不安定なWrasidlo混合物は、クエンチングされると、界面で微多孔性スキンを形成し、その結果、WrasidloとZepfの各特許の膜が有する構造体である高非対称性膜となるように、非常に急激に析出する。
【0020】
微多孔性スキンは、膜の、細かい孔が形成された側であり、流延の間、空気−溶液界面またはクエンチング体−溶液界面を構成する。Wrasidloの特許において、そして本明細書の開示において、「スキン」という用語は、幾つかの膜に存在する、比較的厚く、ほぼ不透過性であるポリマー層を示すものではないことが理解されよう。ここでは、微多孔性スキンは、種々の厚さの微多孔性領域上にある、比較的薄い多孔性の表面である。非対称性の膜において、微多孔性領域の孔は、それがスキンから膜の反対側の面へ移るにつれて、徐々に寸法が大きくなる。孔寸法が徐々に大きくなる領域は、しばしば非対称性領域と称され、膜の反対側の非スキン面は粗い有孔表面(coarse pored surface)と称される場合が多い。粗い有孔表面に対するものとして、スキンはまた、微多孔性表面とも称される場合がある。
【0021】
幾つかの配合物および流延条件において、「スキニング(skinning;または皮張り)」効果が、膜の反対側の表面、即ち、流延支持体と接触し、流延プロセスにおいて湿り空気またはクエンチ浴に直接に曝されない面で生じ得る。そのような「反対側のスキン」の層が存在する場合、それは通常比較的薄く、一般に膜の厚さの約10%よりも小さい。それはまた、通常、高多孔性であるが、多孔性のネットワークまたはウェブ(web;もしくは網状物)は、2つのスキンが存在する場合、2つのスキンの間の膜の内部領域よりもより密に充填された断面外観を有し得る。
【0022】
ポリマー膜はまた、均一なポリマー溶液から流延され得る。これらの配合物の組成は、Wrasidloの相図のスピノーダル/バイノーダル領域の外側にある。均一な溶液から流延される膜もまた非対称性であり得るが、それらは通常、相分離した配合物から流延されたものほど高度に非対称性ではない。
【0023】
Wrasidloの膜は、従来の膜よりも、向上した流量および選択透過性を有する。そのような向上した流量および選択透過性は、膜の構造に由来する。
【0024】
Zepf特許は、改良されたWrasidloタイプのポリマー膜を開示している。それは、より均一な寸法の微多孔性スキンの孔を実質的により数多く有し、また、非常に向上した流量を有し、所定の孔直径に対して流れの共分散が減少するものである。改良されたZepf膜は、Wrasidloプロセスに改良を加えることによって得られ、流延およびクエンチング温度を低くし、流延とクエンチングとの間の環境曝露を少なくすることを含む。Zepfは更に、流延およびクエンチング温度を低くすると、配合物およびプロセス・パラメーターの僅かな変化に対する膜形成プロセスのセンシティビティー(または鋭敏性)が最小になることを教示している。
【0025】
Wrasidlo特許はまた、PVDF非対称性膜の製造を開示している。米国特許第4,774,039号明細書の実施例6、第12欄、第20〜34行を参照できる。尤も、Wrasidlo特許に従って製造されたPVDF膜は、微多孔性膜であったようではない。
【0026】
ここで論じている従来技術の微多孔性PVDF膜はいずれも、高非対称構造を有していない。その結果、従来技術のPVDF膜はすべて、高非対称性膜と比較して流量が限られている。したがって、当業者において認められるように、高い非対称度と高い流量を有する微多孔性PVDF膜を提供することが望まれている。更に、構造が等方性であるか異方性であるかに拘わらず、高流量を有する超薄PVDF膜を提供することは、有益であろう。加えて、疎水性または親水性のいずれかである高非対称性PVDF膜を提供することも望ましいであろう。また、そのような膜をそれぞれ、一貫して生産し得る方法を提供することもまた有益であろう。
【0027】
(発明の概要)
本発明に従って、我々は予期しないことに、極めて優れた流量を有する、微多孔性の高非対称性PVDF膜を製造することが可能であることを見出した。我々は更に、断面においてポリマー材料のフィラメント状ウェブ(または網状物、またはフィラメント状物もしくは繊維状物から成るウェブ)の格子を有する、微多孔性の、内部が等方性であるPVDF膜を製造することが可能であることを見出した。
【0028】
したがって、本発明の第1の要旨において、最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有する微多孔性のPVDFポリマー膜が開示される。表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。本発明のこの要旨の膜は、そのPVDFとしてHYLAR−461を使用してよく、そして、それはまた、ある態様において、重量基準で、約1〜3%、4〜8%、または別の態様において、約10%もしくは12%〜約18%−22%、あるいは更に別の態様において、約30%までのポリビニルピロリドン(PVP)を含んでよく、その好ましい種類は、約45,000ダルトン(またはドルトン)の平均分子量を有するPVPである。別法として、膜は、600,000、450,000、360,000、270,000、180,000、120,000、または90,000、あるいは60,000ダルトンの平均分子量を有するPVPを含んでよい。別の態様において、使用されるPVPは、9,000、15,000または30,000ダルトンであってよい。膜は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のような湿潤剤と接触させることによって親水性にしてよく、あるいは湿潤剤は界面活性剤であってよい。更に、本発明のこの要旨の膜は、それに積層(またはラミネート)された支持材料、例えば、ポリマーの不織布を有してよい。本発明のこの要旨の膜は、平坦なシートの形態である必要はなく、中空繊維の形態に製造され、当該形態で使用してよい。
【0029】
本発明の第2の要旨において、PVDF膜はやはり最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有する。表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント・ウェブで形成された多孔性支持体である。本発明のこの要旨の膜はまた、最小の孔の平均直径に対する最大の孔の平均直径の比が約5、10または20〜約50、100、250または500である、一体の非対称性構造を有してよい。本発明のこの要旨の膜は、10psidにて、約25、50または100〜約200、350または500cm/分の水の流量(または流速)を有してよい。それらは、約140μmよりも小さい厚さを有してよく、好ましくは約70μmよりも小さい厚さを有してよい。本発明のこの要旨の膜は、約0.5、2、または5〜約10、25、または50psidの水のバブル・ポイント(bubble point)を有し得る。本発明のこの要旨の膜の多孔性支持構造は、微多孔性表面から反対側の表面に向かって連続的に増加する孔寸法(またはポアサイズ)の勾配部から成ってよい。
【0030】
本発明の第3の要旨において、PVDF膜は最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有し、また、表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。膜は、膜厚の少なくとも80%にわたって等方性の構造を有してよく、また、厚さは約75μmよりも小さくてよく、好ましくは約30μmよりも小さくてよい。
【0031】
本発明の第4の要旨は、約12重量%〜20重量%のPVDF、および約1重量%〜30重量%の、PVPのような、親水性ポリマーが溶媒に溶解した流延用ドープを提供すること、ドープを流延して薄いフィルムを形成すること、薄いフィルムを気体環境に曝露すること、膜を水浴中で凝固させること、ならびに形成された微多孔性PVDFポリマー膜を回収することにより、PVDF膜を製造する方法を提供する。この方法によって製造される膜は、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面の間の多孔性支持体を有し得、多孔性支持体はポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成されている。当該方法において、流延工程の間、ドープ混合物は約21℃〜約35℃の間にある温度を有し、気体環境は約50%〜100%の間にある水の相対湿度を有していてよい。曝露工程は、約2秒〜約120秒の時間を有してよく、クエンチ(quench;または急冷もしくは凝固)水浴は約20℃〜80℃の間にある温度を有してよい。ドープ混合物中のPVPは、約45,000ダルトンの平均分子量を有してよい。流延およびクエンチング(quenching;または急冷もしくは凝固)後、形成された膜を、HPCおよび/または界面活性剤のような湿潤剤と接触させて、膜を親水性にしてよい。当該方法はまた、形成された膜を、ポリマーの織布または不織布である支持体に積層する工程を含んでよい。
【0032】
本発明は第5の要旨において、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面間の領域を有する非対称性の一体の微多孔性PVDFポリマー膜を提供する。この領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、同時に、当該多孔性支持体は、直径が微多孔性表面から反対側表面への勾配部に従って徐々に増加するフロー・チャンネルを有してよい。
【0033】
本発明の第6の要旨は、所与の平均直径である第1平均直径の最小孔を有する微多孔性表面と、異なる所与の平均直径の最大孔を有する反対側表面を備えた、内部等方性の微多孔性PVDFポリマー膜である。膜表面間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、また、比較的一定の直径を有するフロー・チャンネルを有していてよい。従って、本発明のこの要旨において、膜は3つの領域を有し得る。微多孔性表面付近の領域は、膜の全厚の10%よりも小さくてよく、微多孔性側にあるスキンポアの寸法に近似する孔寸法を有してよい。もう1つの領域は、反対側表面の付近にあってよく、膜の全厚の10%よりも小さくてよく、反対側表面にある孔の寸法に近似する孔寸法を有してよい。膜の中間領域は、膜の厚さの80%またはそれ以上を占めてよく、また、直径が実質的に一定であり、膜のいずれかの表面に近いチャンネルと比較して寸法が中間であるフロー・チャンネルを有してよい。
【0034】
本発明の第7の要旨は、水溶液を濾過する膜を有する改良された濾過装置である。この改良品は、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面間の多孔性支持体を有する、耐オゾン性の微多孔性PVDFポリマー膜である。多孔性支持体は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成されていてよく、耐オゾン性の膜は10psidにて約25〜500cm/分の水の流量を有し得る。
【0035】
本発明は、内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜を提供する。この膜は、第1平均直径を有する最小の孔を有する第1表面、第2平均直径を有する最大の孔を有する第2表面、およびそれらの間にある厚さ部分を有する。膜の表面の間は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。ポリマー材料は、それに一体的に配置された、膜を本質的に水で濡らし得るようにする(または水湿潤性にする)のに十分な親水性成分(または部分)を有していてよい。
【0036】
本発明のこの要旨の膜は、限外濾過膜であってよく、例えば、約100,000ダルトンまたは約10,000ダルトンの分子量カットオフ値(または分離限界値)を有していてよい。また、本発明のこの要旨の膜は、直径が約0.01ミクロン〜約3.0ミクロンである最小の孔を有する微多孔性膜を含む。
【0037】
本発明のこの要旨の膜は、第1平均直径が第2平均直径よりも小さく、多孔性支持体がフィラメント状ウェブにおける開口部を有し、当該開口部の寸法が第1表面から第2表面に向かって勾配部を有するように徐々に増加している、一体の非対称性構造を有してよい。そのような膜は、約5〜約10,000である、第2表面と第1表面との間の孔直径比を有してよい。
【0038】
本発明の膜は、HYLAR−461 PVDFを含んでよい。それらは、更に重量基準で約1%〜約30%のポリビニルピロリドンを含んでよい。ポリビニルピロリドンには、約45,000ダルトンの平均分子量を有するもの、約360,000ダルトンの平均分子量を有するもの、またはその両方が含まれてよい。本発明の膜は、それに積層された支持材料、例えば、ポリマーの不織布を有してよい。膜はまた、中空繊維の形態に製造してよい。
【0039】
これらの膜は、10psidにて約25〜約500cm/分の水の流量を有し得、また、約0.5〜約50psidの水のバブルポイントを有し得る。本発明はまた、膜の厚さの少なくとも約80%にわたって等方性構造を有する膜をも予定している。
【0040】
別の要旨において、本発明は、ポリ二弗化ビニリデン膜を製造する方法を提供する。当該方法は、次の工程:
溶媒に溶解している約12重量%〜20重量%の間のポリ二弗化ビニリデンおよび約1重量%〜約30重量%の間の親水性ポリマーを有する流延用ドープを供給すること;
ドープを流延(キャスト)して薄いフィルムを形成すること;
薄いフィルムを湿った気体環境に曝す(曝露する)こと;
フィルムを水浴中で凝固させること;および
本明細書にて説明される、形成された、内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜を回収することを含んでよい。この方法によれば、ドープは流延工程の間、約35℃〜約50℃の間にある温度を有してよく、また、気体環境は約50%〜100%の間にある水の相対湿度を有してよい。曝露工程の時間は約2秒〜約120秒であってよい。水浴温度は、約20℃〜80℃であってよい。
【0041】
この方法において、親水性ポリマーにはポリビニルピロリドンが含まれてよく、それは、約45,000ダルトンの平均分子量を有する種類または約360,000ダルトンの平均分子量を有する種類で使用してよく、また、両方の種類を含んでいてよい。当該方法はまた、形成された膜に、例えばポリマー不織布のような支持材料を積層する追加の工程を含んでよい。
【0042】
更に別の要旨において、本発明は、内部等方性の、内部親水性であるポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、第1平均直径の最小の孔を有する第1表面、第2平均直径の最大の孔を有する反対側表面、およびそれらの間の厚さ部分を有する膜を提供する。厚さ部分は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、当該多孔性支持体は、直径を有するフロー・チャンネルを含み、当該フローチャンネルの直径は、微多孔性表面に近接する多孔性支持体の第1領域内では、実質的に第1平均直径に相当し、一方、フロー・チャンネルの直径は、反対側表面に近接する多孔性支持体の第2領域内では、実質的に第2平均直径に相当する。そのような膜において、多孔性支持体の第1領域と多孔性支持体の第2領域との間のフロー・チャンネルの直径は、実質的に一定である。
【0043】
(好ましい態様の詳細な説明)
上述したように、本発明は、極めて良好な流量(流速)を有する微多孔性PVDF膜を2つの異なる構造形態:内部等方性形態および高非対称性形態で、製造することが可能であるという、我々の予期しなかった発見に関する。2つの異なる(または区別し得る)膜構造の共通点は、ポリマーがゲル化する方法により形成されるであろう多孔性構造に存する。この共通点は、本発明の膜の断面SEMを従来技術の膜と比較して観察することによって、容易に認められる。
【0044】
例えば、ここで図1を参照すると、4つの断面SEM図が比較のために示される:図1aは本発明の内部等方性PVDF膜である(500倍);図1bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1cおよび1dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。観察されるように、本発明の内部等方性である膜(図1a)はポリマー材料の比較的繊維状のウェブを含んでいる。同様に本発明の非対称性膜(図1b)は、微多孔性表面(またはそのすぐ下)から、目の粗い有孔表面までの途中約4分の3の箇所までにわたって、構造が、相互に連絡したポリマー材料のストランド(strand)またはウェブを明らかに含む領域を有している。対照的に、Costarの膜(図1cおよび1d)は、フィラメント状ウェブとして説明され得るストランドまたはウェブ構造を含んでいないように見える。むしろ、ポリマーは、球状または粒状にゲル化し、焼結金属の構造に類似しているように見える。
【0045】
本発明に従って製造される内部等方性膜と高非対称性膜の間で共有されている更なる共通の特徴は、両方の種類の膜が、微多孔性表面中に、またはそれに近接して、収縮した孔(constricted pore;または狭い孔)の領域を有するという事実である。即ち、本発明の膜は、微多孔性表面にある又は該表面を近い部分または領域よりも、より目の粗い基礎構造部(substructure)を有する。この構造は、粗い孔(または大きい孔)が入って来るフィードと接触する場合、本発明の膜が流体ストリームに対して相当少ない抵抗を示すことを可能にする。膜の選択性は、微多孔性表面内にある又はそれに近接する収縮した孔に支配される。
【0046】
ここで用いられる「微多孔性」という用語は、平均孔直径が約0.01μmを超える微多孔性(またはミクロポーラス)膜表面を有する膜に関するものである。微多孔性表面の最大孔直径は、好ましくは約8μmを超えない、理解されるように、0.01μmよりも小さい平均孔直径を有する膜は、一般に、限外濾過膜、逆浸透膜、およびガス分離膜に分類される。
【0047】
ここで使用される「内部等方性」とは、実質的に均一な孔寸法直径を膜の断面の大部分(または本体部分)で有する膜か、あるいは微多孔性表面から反対側の面までに孔寸法の大きな勾配を有しない膜を指している。例えば、「内部等方性」膜は、相対的により小さい孔を微多孔性表面に有し、相対的により大きい孔を多孔性のポリマー基礎構造部において有してよいが、孔寸法は一般に、微多孔性表面からポリマー基礎構造部に向かって徐々に増加しない。逆に、微多孔性表面は、多孔性基礎構造部よりも単位面積あたりの孔密度が高い、比較的薄い密な領域であり、多孔性の基礎構造部は、より低い孔密度を有する、相対的により厚い、より疎な領域である。したがって、本発明の内部等方性膜は、微多孔性表面と反対側表面との間で孔寸法の比較的急激な遷移を示し、このことは、Wrasidloタイプの非対称性膜で見られるように、微多孔性の面から反対側の面に向かって孔寸法が徐々に増加する勾配とは対照的である。
【0048】
本発明の膜はまた、比較的密なスキン領域を膜の反対側表面付近にも有し得るので、内部等方性膜は、両方の表面で、高非対称性膜の表面孔直径に非常に近似する表面孔直径を有することが可能である。従って、表面の孔に関するデータだけでは、本発明の膜が内部等方性であるか、高非対称性であるかを結論付けることはできない。重要な特徴は内部領域である:それは通常、膜の厚さの少なくとも中央部約80%である。高非対称性膜において、この内部領域は、徐々に直径が増加する孔またはフロー・チャンネルによって特徴づけられる。対照的に、内部等方性膜の内部領域は、実質的に一定の直径の孔またはフロー・チャンネルを有する。構造的な相異は、一般にSEMにおいて非常に明らかであり、また、異なる内部構造を有する膜の流量のデータからも通常、明らかである。我々は、この内部膜構造を再現可能に制御および操作する方法を見出したので、それをここで開示する。
【0049】
ここで使用される「非対称性」という用語は、孔寸法の勾配を有する膜に関するものである。即ち、非対称性膜は、最も小さい又は最も細い孔を、微多孔性表面に又は該表面に近接して有する。微多孔性表面と膜の反対側の表面の間での孔寸法の増加は、一般に漸進的であり、最も小さい孔寸法は微多孔性表面の最も近くにあり、最も大きい孔は反対側の粗い有孔表面で又は該表面に近接する場所で見られる。
【0050】
ここで使用される「一体(化)」は、単一のポリマー溶液またはドープから流延される膜を指している。これは、積層または複合膜を形成するために複数のポリマー溶液またはドープから流延される、一体でない膜又は複合膜と対照をなす。複合膜はまた、流延後、2つまたはそれ以上の完全に形成された膜を組み合わせてよい。
【0051】
本発明の好ましい膜は、孔寸法が約0.01μm〜約8.0μmの範囲に及んでいる微多孔性表面を有する一体の微多孔性膜である。0.1、0.3、0.45、0.5、0.667、0.8、1.0、2.0、3.0および5.0μmの微多孔性表面孔を有する膜を、ここで例示する。膜はまた、反対側表面を有する。微多孔性表面は、一般に、流延の間、環境またはクエンチ浴に直接に曝される表面である。一般に反対側の表面は、したがって露出しない表面、即ち、膜が流延される支持構造物と接触する表面である。したがって、ここでは、反対側の表面を「流延表面」と称する場合がある。
【0052】
本発明の膜の反対側の表面はまた、孔寸法が微多孔性表面上の孔よりもしばしば大きいものであり得る、微多孔性の孔を含んでいる。好ましい膜は、約0.05、0.1、0.5または1.0〜約10、25または50μmの反対側表面孔寸法を有している。約3、4、5、6、20および30μmの反対側表面孔寸法を有する膜を、ここで例示する。
【0053】
本発明の膜は、微多孔性表面と反対側表面との間に多孔性基礎構造部を有する。多孔性の基礎構造部は、実質的に等方性であり得、あるいは非対称性である得る。得られる構造の種類は、幾つかの因子によって決定され、当該因子には:ポリマー、溶媒および非溶媒の種類ならびに濃度;ナイフギャップおよびドープ温度のような流延条件;流延とクエンチングとの間の曝露時間および曝露雰囲気の湿度のような環境因子;ならびにクエンチ浴の組成および温度が含まれる。
【0054】
本発明の内部等方性膜および高非対称性膜の両方が共有する特徴は、好ましい膜が、ポリマー材料の繊維状ウェブを有することである。図1aおよび図1bを参照できる。対照的に、Costar膜(図1cおよび1d)のように、従来の技術の方法によって製造される膜は、上述のように、ポリマー材料の繊維構造部を有していないように見える。むしろ、ポリマーは、球状または粒状にゲル化し、焼結金属の構造に類似しているように見える。
【0055】
上述したように、本発明の膜は、微多孔性表面と粗い有孔表面との間で、ある孔寸法差を有する。尤も、ある膜は基礎構造部において等方性が支配的であり、一方、他のものは基礎構造部において非対称性が支配的である。換言すれば、本発明の膜は、膜の基礎構造部に対して、微多孔性表面に又は該表面に近接して狭い孔寸法を有する。尤も、「スキン」領域の厚さは、いずれの表面にあっても比較的薄く:一般に、膜の全厚の10%未満、好ましくは7%未満である。微多孔性表面にある又は該表面に近接している狭い孔の領域は、本発明の膜が基礎構造部において非常に目の粗いものであることを可能にし、そのことは良好な流量をもたらし、一方、制限された孔領域のために良好な保持(retention)性能が維持される。
【0056】
本発明のPVDF膜は、高非対称性または内部等方性のいずれであっても、比較的大きな空隙体積によって特徴づけられる。幾つかの態様において、空隙体積は少なくとも約45、50%または55%である。本発明の膜の別の態様は、少なくとも約60%、65%または70%の空隙体積を有する。本発明の更に別の態様は、少なくとも約75%、80%または85%の空隙体積を有する。空隙体積は、乾燥した膜と濡らした膜の重量を比較することにより、あるいは乾燥した膜の密度を計算しそれを同体積のポリマーまたはポリマー混合物の中実体の密度と比較することにより、決定し得る。
【0057】
本発明の膜は、概して、非常に「目の粗い」膜であり、流体のフロー(または流れ)に対して限られた抵抗を与えるが、それにもかかわらず、蛇行(または屈曲)の原理(principle tortuosity)と最小の孔寸法に基づいて粒子を有効に分離し得る。したがって、理解されるように、本発明の膜は、極めて優れた流量を有する。例えば、下記の表は、微多孔性表面孔寸法、反対側表面孔寸法、および流量を示すものである:
【0058】
【表1】
【0059】
本発明の膜は、従来技術の膜に比べて、実質的に向上した流量を有することが認められるであろう。例えば、Costar特許において、Costarの膜は、Millipore社から市販されているPVDF膜と比較されている。Costarの表1、11頁を参照できる。下記の表において、本発明の膜の流量をCostarおよびMilliporeの膜と比較する:
【表2】
【0060】
比較のために、可能な場合には平均流れ孔寸法(mean flow pore size)を示している。本発明の膜に関する平均流れ孔寸法は、評価したMilliporeの膜の場合よりも、実際のスキン孔寸法により近いことに留意することが重要である。種々の膜の間で流量が異なることを評価するために、近似するスキン孔寸法を有する膜の比較が一般に行われる。しかしながら、より有意義な比較は、近似する平均流れ孔寸法を有する膜の間での比較である。そのような比較は、本発明の膜の流量が市販の従来技術の膜と比較して非常に向上することを示した。
【0061】
本発明の膜は比較的薄い。例えば、本発明の内部等方性膜は、約20〜25μmと薄く製造することができ、好ましくは、厚さは約25〜約50μmである。本発明の非対称性膜は、一般に、内部等方性の対応するものよりも僅かに厚い。例えば、好ましい非対称性膜は、厚さが約60〜約125μmの間である。
【0062】
本発明の膜は、約12%から20%まで、またはそれ以上という、比較的高いポリマー濃度で製造される。ドープの温度は好ましくは、非対称性膜の場合は、21℃〜35℃の間であり、内部等方性膜の場合は、21℃未満であるか、35℃よりも高い温度のいずれかである。更に、好ましい態様において、ポリマーのドープまたはフィルムの流延の後に、フィルムは湿り空気に曝される。曝露時間は好ましくは比較的長く、約5または10秒〜約1または2分、あるいはそれ以上である;湿度は好ましくは比較的高く、約60%〜約100%の相対湿度が好ましい。理解されるように、湿度をより高くすること又は曝露時間をより長くすることは、一般に他方を対応して又は釣り合うように減らす(低くする又は短くする)ことと共に採用すると、同様の結果を得ることができる。曝露の後、フィルムは、ポリマーに対する非溶媒を比較的高い濃度で含むクエンチ浴でクエンチングされる。クエンチング温度は、好ましくは約45℃と70℃の間である。
【0063】
上述のプロセスによって、極めて優れた流束(flux)特性を有するPVDF膜が製造される。実際、我々は、非対称性ポリスルホン膜に匹敵する流束流量を有し、5ポンド/平方インチの圧力差(psid)と低いバブル・ポイントを有する膜を製造した。ポンド/平方インチの圧力差は、膜の対向する面間に存在する圧力差である;膜のバブル・ポイントは膜の透過性と相関しており、低いバブル・ポイントは予め濡らした膜に空気を通過させるのに比較的小さい圧力差が必要とされることを示す。膜についての水のバブル・ポイントは、予め濡らした膜の反対側(低圧)表面で泡が生じる圧力である。これは、液体を膜に強制的に流入させ、内部で捕捉されているガスを膜の外側に強制的に流出させ、その結果、泡が生成する事象である。高いバブル・ポイントは、膜を通過する流体フローに対して抵抗があることを示す。本発明のPVDF膜のバブル・ポイントは、近似する平均流れ孔寸法を有する高非対称性のWrasidloタイプのスルホンポリマー膜のバブル・ポイントに匹敵する。従来技術のPVDF膜はそうではなく、このことは、本発明の膜が従来技術のPVDF膜よりも優れた多孔性(porosity)および流量を有することを示している。
【0064】
本発明の配合物においてポリマー濃度がより高いと、膜に強度が付与され、また、膜の伸び特性が向上する。更に、基礎構造部においてマクロ空隙(macrovoid)の形成が減少することが認められる。流延フィルムの湿り空気への曝露は、係属中の米国特許出願第08/661,839号(1996年6月11日出願)において説明されているスルホンポリマーを用いて我々が行った検討と同様にして、開口された孔の形成をもたらすと考えられる。米国特許出願第08/661,839号の開示は引用により本明細書に包含される。
【0065】
しかしながら、興味深いことに、本発明の膜の製造に関連する湿り空気への曝露は、スルホンポリマーを用いて得たものよりも、非常に異なる構造をもたらすことが認められた。同様の環境曝露を伴って流延されるスルホンポリマー膜は、2層の構造を有する:等方性領域上にある微多孔性表面は、非対称性領域上にある。本発明の膜の等方性領域は、空気中の水蒸気とポリマーフィルムとの間の「蒸気相誘導析出プロセス」相互作用によって形成され、あるいは少なくともそれにより開始され、それは、均一な又は等方性の孔形成をもたらすものと考えられる。これは、セルロース混合エステルまたは硝酸セルロースの膜に類似している。しかしながら、溶媒または非溶媒のごく僅かな蒸発があり、その結果、クエンチ浴において、クエンチ用液体は等方性領域に勢いよく侵入して等方性領域を凝固させ、また、非対称性領域を形成し凝固させると考えられる。
【0066】
本発明の膜は、好ましくは、厳密に非溶媒である水を若干含んで流延される。固体濃度、湿度、および曝露時間の均衡をとることによって、我々は、超薄の膜を必要とする用途に適したものとするのに十分な強度を有する、高多孔性膜を作製した。添付した表およびSEMにおいて、我々は、配合物、孔寸法、ならびに他の特徴および条件を比較している。上述したように、本発明の膜の向上した強度のために、PVDF膜は、布帛の補強がなくても、高多孔性の超薄の膜として作製し得る。尤も、従来の経験によれば、布帛が必要であると考えられる場合には、PVDFは布帛上で非常に流延しやすいことが判っている。従って、我々はまた、本発明に従って、所定の好ましい積層および補強法を提供する。
【0067】
本発明の膜の強度および取扱い特性を向上させるために、膜に種々の布帛(fabric)を積層する、あるいは膜を種々の布帛に積層することができる。例えば、適当な積層材料には、織物および不織布材料、メルトブロー材料、ポリエステル、ならびにポリオレフィンが含まれる。例えば、多くのポリマーの中で、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンは、本発明の膜の織布または不織布支持体として有用である。使用すべき特定の積層材料は、特定の用途に基づいて選択される。本発明の膜を積層(またはラミネート)するために、当業者であれば想到するであろう、熱もしくは接着のプロセスまたは手法を用いることができる。
【0068】
本発明のPVDF膜を工業的に大量生産することに関して、流延または生産ラインは、例えばナイフ・ブレードもしくはスロット・コーターのような流延箇所とクエンチ水との間で、湿り状態および制御された空気流にフィルムが曝されるエリアを好ましくは有することが理解されるであろう。上述の大きな孔のスルホンポリマー膜についても同様である。尤も、ゲル化および硬化時間の違いのために、PVDFは、多くの場合、より長い空気曝露時間を必要とする。したがって、PVDF膜に関しては、ライン速度がより遅いこと、あるいは湿潤トンネルがより長いことのいずれか必要である。例えば、PVDF膜が毎分20フィートで流延され、1分間の湿り空気処理を必要とする場合、曝露距離は20フィートでなければならない。
【0069】
本発明の膜は、疎水性または親水性であり得る。流延後、疎水性である膜は湿潤剤で後処理して、それを親水性にしてよい。適当な湿潤剤には、界面活性剤および親水性ポリマーが含まれる。有用な界面活性剤の例は、ZONYL(DuPont、ブルーミントン(Bloomington)、デラウェア州)およびTRITON X−100(Rhom & Haas、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)である。親水性ポリマーの例として、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)がある。好ましいHPC処理は、HPC水溶液を含む浴に膜を浸漬することである;浴はまた、1または複数の界面活性剤を、単独で又はHPCと組み合わせて含んでよい。湿潤剤はまた、クエンチング工程の一環として膜を親水性にし得るように、クエンチ浴に加えてよい。
【0070】
本発明の膜は、オゾンが存在する水の電子分野の濾過を含む、全範囲の精密濾過用途に適している。本発明の膜の非常に重要な用途は電池におけるものであり、電池で膜は電池の異なるセル間のセパレータとして、またはアルカリ性のゲルを収容するために使用される。この用途は、厚さが約30μmであり、1Mの水酸化カリウム(KOH)を含む炭酸プロピレンに対して耐性を有する、高多孔性の超薄の膜を必要とする。水において、この濃度は約14のpHに相当する。炭酸プロピレンは80℃にてPVDFの潜溶媒であり、また、炭酸プロピレンは室温下であっても強力な膨潤剤となるかもしれないという懸念があったが、我々は、本発明のPVDF膜が、室温より少し高い温度下でも、炭酸プロピレンによる作用に対して耐性を有することを見出した。実際、我々が本発明の膜について実施した浸漬テストにおいて、膜は1Mの水酸化カリウム(KOH)を含む炭酸プロピレンによりもたらされる苛酷な条件に具合良く耐えた。更に、ナイロン不織布に流延された本発明のPVDF膜の試料もまた、炭酸プロピレン/KOHに耐えた。各浸漬テストにおいて、本発明に従って製造された膜は、良好な耐薬品性を示し、膜のカールは無く、またはっきりとわかる膜の弱化は無かった。
【0071】
膜のドープ混合物は、PVDFのほかに、例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールのような親水性ポリマーを含んでよい。これらのポリマーは、ドープ混合物の粘度を高め、また、多孔度(porosity;または多孔性)および孔構造にも影響を及ぼし得る。そのような親水性ポリマーは、当然に、膜の構造に影響を及ぼす他の因子、例えば、流延温度、クエンチング温度、湿り空気への曝露時間、膜を曝露する空気の温度および相対湿度等と相互作用する。本発明の膜は、親水性ポリマー無しで、あるいは、ドープ混合物中、約30%までの最終濃度で含まれる親水性ポリマー、多くの場合、少なくとも1〜3%の濃度、あるいは別の態様においてはドープ混合物の4〜8%の濃度(いずれも重量基準)で含まれる親水性ポリマーとともに流延してよい。
【0072】
更に、本発明の膜は内部親水性であってよい。内部親水性である膜は、膜の内部構造の一部として親水性成分を含む。これらの成分は、使用中、膜の外側に浸出しない。したがって、内部親水性膜は、迅速な水の浸潤が有益である用途、あるいは表面の添加剤の浸出が問題となる用途(例えば飲料処理)において使用するのに非常に望ましい。
【0073】
本発明の内部親水性膜は、ここで開示される疎水性PVDF膜に類似する水の流量および構造特性を有する。本発明の内部親水性膜は、等方性または非対称性であり得る。これらの親水性膜は、例えば、10,000、20,000、または30,000ダルトン〜約50,000、75,000、100,000、または200,000ダルトンのMWカットオフ値を有する限外濾過膜の寸法範囲に製作され得る。同様に、本発明はまた、約0.01、0.05、0.1、または0.5ミクロン〜約1、2、または3ミクロンの孔寸法を有する内部親水性精密濾過膜を企図している。
【0074】
内部親水性PVDF膜は、一般に、疎水性の対応するものと同様の配合およびプロセス・パラメータを有する。例えば、それらは、約12%、12%、または16%から、18%、20%、またはそれ以上までの、比較的高いポリマー濃度で製造される。一般に、より高いポリマー濃度は、より小さい限界孔を有する膜を与え、したがって、本発明に従って限外濾過膜を製造するために使用されるドープ配合物は、20%またはそれ以上の濃度でPVDFを含んでよい。
【0075】
さらに、より好ましい態様において、ポリマーのドープまたはフィルムの流延に続いて、フィルムが湿り空気に曝される。曝露時間は好ましくは比較的長く、約5または10秒〜約1または2分、あるいはそれ以上である;湿度は好ましくは比較的高く、相対湿度は約60%、70%または80%〜約90%または100%であることが好ましい。曝露の後、フィルムは、ポリマーに対する非溶媒を比較的高い濃度で含むクエンチ浴中でクエンチングされる。クエンチング温度は、好ましくは約45℃と70℃の間である。
【0076】
これらの配合およびプロセス条件に加えて、内部親水性膜は、約0.5%〜約4%の高い分子量のPVP(約150,000MW〜600,000、またはそれ以上)、例えばPVP K−90(平均MW 〜360,000)を含んでよい。膜はまた、約4%〜約15%のより低い分子量のPVP(約80,000MW未満)、例えばPVP K−30(平均MW 〜45,000)を含んでよい。更に、それらは、約8%〜20%の孔形成剤、例えば、n−ブタノール、PEG、TAA、ヘキサノール、2−メチルブタノール、または2−エチルブタノールを含んでよい。高分子量および低分子量の他の親水性ポリマーならびに他の孔形成剤を、当業者であれば想到するように、これらの配合物において自由に代用してよく、その場合、より高い分子量範囲を有する親水性ポリマーは、膜のPVDFと融和して浸出損失を呈しやすくなることに留意すべきである。内部親水性膜を製造するために使用される配合物として、ドープ混合物は、多くの場合、ゲル化を防止するために35℃〜50℃の温度にて用いられる。
【0077】
親水性は、当該分野において公知である幾つかの方法で確かめられる。例えば、乾燥した膜の面にある水滴は、膜が疎水性である場合には、滴のビーズを形成する傾向にあるが、親水性の膜は一般にそれを吸収する。親水性の比較級(または比較度合い)は、相対的な水湿潤性または乾燥した膜に付着した水の横方向の流量によって決定できる。例えば、膜は、蒸留水を含む皿又はビーカーの表面に膜のストリップ(もしくは帯状物)またはディスク(もしくは円盤状物)を置くことによって、比較できる。そのような試験において、親水性のPVDF膜は60秒以内に完全に濡れ、だいたい10秒以内に濡れ、また多くの場合、自然に濡れる。疎水性のPVDF膜は一般のそのような条件下では決して濡れない。膜の親水性の別の有用な徴候は、低圧の水フロー試験である。膜のディスクをフィルター装置に置き、水をその上に置く。膜のバブル・ポイント圧力よりも有意に小さい、小さな正圧にて、水は親水性膜を経由して流れる。対照的に、疎水性のPVDF膜を通過する水の流れは、加えられる圧力が膜のバブル・ポイントに等しくなるまで、生じない。
【0078】
したがって、本発明の内部親水性膜は、本質的に水で濡らすことができ、また、標準状態では浸出性ではない。当該膜は、エレクトロニクス、飲料およびジュース濾過等のための水の濾過のように、水溶液を濾過する標準的な操作において、その親水性成分を浸出に起因して失うものではない。幾つかの用途において、所定用途の膜の特性をさらに向上させるべく、膜を形成した後に、内部親水性膜を追加の湿潤剤または界面活性剤で後処理することが望ましい。本発明のこの要旨は、ここで開示するように親水剤によって表面が処理され、また、内部親水性である膜を形成する、そのような後処理を企図している。
【0079】
本発明のPVDF膜の配合物の多くが高濃度のポリマーを含み、したがって高い粘度を有するために、本発明の配合物は、微多孔性の中空繊維を製造するのに有利に適している。本発明のPVDF中空繊維膜の1つの態様において、空気または非溶媒、例えば水(溶媒またはその他の化学物質(例えば非溶媒)を含む)が、管腔(lumen)流体として使用され、水のような液体でクエンチングする前に、外側表面が、種々の環境、例えば、湿り空気、乾燥空気、またはその他の環境に曝される。得られる膜は、外部の環境水分が内部に移動するときに溶媒および非溶媒が外側に移動するので、より目の詰まった孔(tighter pore)を膜の外側に有する。我々は、本発明の配合物の粘度を十分に高くして、湿り空気のギャップを降下している間、形成中の中空繊維膜を傷つかない状態に維持し得ることを見出した。
【0080】
PVDFの供給元は幾つかあり、平均分子量に基づく幾つかの種類のものが入手できる。HYLAR−461(Ausimont社(ニュージャージー州、モリスタウン(Morristown)より入手できる)、およびKYNAR−761(Atochem社(ペンシルヴェニア州、フィラデルフィア)より入手できる)が、本発明の膜を流延するのに特に適していることが判った。
【0081】
本発明の一般的な膜を製造するために、PVDFおよび親水性ポリマーは、溶媒、孔形成剤、および非溶媒と組み合わせてよい。膜の所望の多孔性は用いられるPVDFの濃度を主として決定し、より高い濃度は、より小さい粒子を保持する能力を有する、より「密な(tighter)」膜をもたらす。適当な高分子量親水性ポリマーを包含させることにより、親水性ポリマーを標準状態下では解離しない内部親水性膜がもたらされる。より小さい分子量の親水性ポリマーおよび高沸点アルコールは、主として孔形成剤として機能する。粘度は流延時のドープ混合物の温度によって調節することができる。
【0082】
ドープ混合物は、移動ベルトに付着させられ、湿り空気に2、5、10、または20秒〜30、60、90または120秒の間、曝される。湿気曝露は、全曝露時間、湿った気体環境の温度、および環境の相対湿度により、影響を受け得る。湿った気体環境に曝露した後、薄い膜フィルムは、非溶媒の浴、一般には水の浴内に移動させられ、そこで膜はゲル化し固化する。非溶媒クエンチ浴の温度を変化させて、種々の孔寸法を得ることができる。
【0083】
次に、本発明の好ましい膜およびその製造方法を、以下の実施例に従って、また、図面を参照して説明する。
【0084】
実施例1
曝露時間の影響
重量基準で15.9%のPVDFポリマーHYLAR−461、0.9%の塩化リチウム、3.7%の水、2.3%のポリビニルピロリドン(PVP K−17 MW 〜9,000 BASF(ニュージャージー州、マウント・オリーブ(Mt Olive))より入手)、および溶媒として77.2%のジメチルアセトアミド(DMAC)を含む、流延用ドープを調製した。幾つかの膜試料を、7ミル(178μm)のナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。好ましくは、ドープ混合物は流延されるとき32℃未満である。流延後、初期の膜(膜になろうとする初期の段階の膜)を25〜27℃で相対湿度が100%または80%の空気に、表1に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0085】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液で10〜15秒間処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。それぞれの膜を、10psidにて、直径47mmのディスク(有効直径約35mm、面積9.5cm2)で水透過性試験に付した。膜の平均流れ孔寸法は、コールター・ポロメーター(Coulter porometer)で測定し、表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)法により検査した。
【0086】
試料1−bの膜の代表的なSEMを図2a〜図2cとして示す。膜の断面図(図2a)から観察されるように、膜は実質的に等方性である多孔性基礎構造部を有している。しかしながら、基礎構造部の孔は概して、微多孔性表面にある孔または該表面に近接する孔よりも大きい。微多孔性表面と粗い有孔表面との間の孔寸法の違いは、微多孔性表面のSEM(図2b)を粗い有孔表面のSEM(図2c)と比較すると、容易に理解できる。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表1に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例2
湿度および溶媒の影響
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、8.0%の水、3.0%のPVP K−17、および溶媒として73%のN−メチルピロリドン(NMP)を含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%の空気に、表2に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0089】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。膜のSEMは図2a〜2cに示すものと同様の構造を示した。尤も、断面のSEMは、マクロ空隙が形成されたことを示した。このファクターは、NMPはDMACほどPVDFの良い溶媒でないことがあり得るが、より高いポリマー濃度がこの問題を軽減し得ることを示している。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表2に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例3
ポリマー濃度の影響
実施例2で作製した膜にマクロ空隙が存在することに鑑み、ポリマー濃度が膜構造に及ぼす影響を知るために下記の試験を実施した。
【0092】
重量基準で20%のPVDF HYLAR−461、5.0%の水、1.5%のPVP K−17、および溶媒として73.5%のNMPを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%の空気に、表3に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0093】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。このように製造した膜は実施例1に関して示した構造と実質的に同一の構造を有しており、実施例2に関して見られたマクロ空隙を有していなかった。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表3に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例4
湿度および曝露時間の影響
実施例3で作製した膜の流量および孔寸法が違うことに鑑み、湿度および曝露時間の影響を知るために下記の試験を実施した。
【0096】
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、8.0%の水、3.0%のPVP K−17、および溶媒として73%のNMPを含む、流延用ドープを調製した。4つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%または100%である空気に、表4に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0097】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。それぞれの膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。
【0098】
代表的な膜についての結果を図3a〜図3cに示す。図3a〜図3cは、下記の試料4cとして製造された膜の1組のSEMである。図4aは、断面において、膜が、図1に関して示した膜(図2a)よりも更により粗いことを示している。更に、膜は、実質的に等方性である多孔性の基礎構造部を有している。尤も、基礎構造部における孔は概して、微多孔性表面にある又は微多孔性表面に近接する孔よりも大きい。微多孔性表面と粗い有孔表面との間の孔寸法の違いは、微多孔性表面のSEM(図3b)を粗い有孔表面のSEM(図3c)と比較すると、容易に判る。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表4に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
膜4aの特性と膜4cの特性の比較により、この温度での70%の湿度と100%の湿度の及ぼす影響は非常に異なることが判る。同様に、膜4aの特性と膜4cの特性の比較により、曝露時間を長くすると、より低い湿度をいくらか埋め合わせ得ることが判る。しかしながら、膜4−dは、実施例4−cの膜と比較して、流量の減少および膜の粗い側の孔寸法がより小さくなったことを示した。このことは、100%の湿度においては、膜は過剰に曝露され、相対湿度と曝露時間の相互作用がすべての場合において相乗的であるとは限らないことを示している。
【0101】
実施例5
溶媒の影響
重量基準で13.8%のPVDF HYLAR−461、6.9%のグリセリン、1.7%の水、2.0%のPVP K−17、および溶媒として75.6%のジメチルホルムアミド(DMF)を含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、表5に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0102】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。得られた膜はすべて、25〜30μmの厚さを有していた。回収した膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。SEMで観察した構造は、実施例1および4に関して示した構造と同様の外観を有していた。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表5に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
実施例6
支持された膜の製造
重量基準で15.4%のPVDF HYLAR−461、7.4%の水、および溶媒として77.2%のDMFを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してナイロン不織布支持体上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、10秒または60秒間、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0105】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。
【0106】
回収した膜を、1MでKOHを含む炭酸プロピレンの溶液(pHは約14)に浸漬した。浸漬した後、膜を回収したところ、後述の実施例と同様に、膜の強度の損失または劣化の形跡はなかった。引張強度および伸びの有意の変化は認められなかった。
【0107】
実施例7
引張強度および破断点伸び
重量基準で15.4%のPVDF HYLAR−461、7.4%の水、および溶媒として77.2%のDMFを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、10秒または60秒間、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0108】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。
【0109】
回収した膜を、1MでKOHを含む炭酸プロピレンの溶液(pHは約14)に浸漬した。浸漬した後、膜を回収したところ、膜の強度の損失または劣化の形跡はなかった。表7に示すように、引張強度および伸びの実質的な変化は認められなかった。
【0110】
【表8】
【0111】
実施例8
非対称性PVDF膜の製造
重量基準で14.6%のPVDF HYLAR−461、18.8%のt−アミルアルコール、4.8%のPVP K−30(平均MW 〜45,000)、2.3%の水、および溶媒として59.5%のDMFを含む、流延用ドープから、高非対称性PVDF膜を製造した。試料は、12ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。ドープ混合物の温度はずっと21℃〜35℃の間に保った。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が80%の空気に、25秒間、曝露した。その後、膜を約56℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0112】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にした。その後、膜を約70℃にてオーブン乾燥し、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。得られた膜は、約70μm〜100μmの厚さを有していた。膜の表面および断面をSEMにより検査した。図4aおよび4bは、膜の微多孔性表面および断面の図を示す。断面図(図4a)から観察されるように、膜は、微多孔性表面から膜の基礎構造部の大部分に向かって、また膜の基礎構造部の大部分にわたって、勾配の付いた孔構造を有している。そのような勾配の付いた孔構造は、微多孔性表面から膜の基礎構造部にわたって孔寸法が徐々に増加する、典型的な非対称性構造を示す。水の流束および孔寸法を表8に示す。
【0113】
【表9】
【0114】
実施例9
非対称性PVDF膜の製造
重量基準で14.6%のPVDF HYLAR−461、18%のt−アミルアルコール、4.8%のPVP K−30、2.3%の水、および溶媒として60.3%のDMFを含む流延用ドープから高非対称性PVDF膜を製造した。試料は、9.5ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、25秒間、曝露した。その後、膜を約50℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0115】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にした。その後、膜を風乾し、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。また、平均流れ孔寸法をコールター・ポロメーターで測定した。得られた膜は、約50μm〜75μmの厚さを有していた。
水の流束および孔寸法を表9に示す。
【0116】
【表10】
【0117】
実施例10
疎水性PVDF膜の製造
膜をHPCで後処理しなかったことを除いては、実施例の8の配合物および手順に従ってPVDF膜を作製した。水の流量および膜の孔寸法は表8に示すものと同じであった。しかしながら、膜は50%のイソプロピルアルコール水溶液で予め濡らすことを必要とした。本発明の疎水性の膜を予め濡らすの(prewetting)に適した他の溶液には、グリセリン、Zonyl、Triton、PVPおよびHPCが含まれる。
【0118】
実施例11
内部等方性PVDF膜の製造
実施例8の流延用ドープ配合物と同一の流延用ドープ配合物から内部等方性PVDF膜を作製したが、膜はドープ混合物の温度を35℃よりも高くして流延した。図3aは膜の断面、図3bおよび3cはそれぞれ、微多孔性表面および反対側表面を示す。断面図(図3a)から観察されるように、膜は、微多孔性表面に近接する密な領域と膜の反対側表面に近接する「反対側スキン」領域との間の中央領域で、実質的に一定の孔構造を有している。この実質的に一定な孔構造は、本発明の内部等方性PVDF膜の好ましい態様である。
【0119】
実施例12
HYLAR−461とKYNAR−761の特性
好ましい形態のPVDFは商品名HYLAR−461で市販されている。別の好ましい形態のPVDFは商品名KYNAR−761で市販されている。本発明は、いずれかの適当な形態のPVDFを用いて流延される膜を予定している。本発明は好ましくは、HYLAR−461、KYNAR−761、または表10に示される特性に類似した特性を有する実質的に類似な材料を採用する。
【0120】
【表11】
【0121】
実施例13
内部親水性のPVDF膜の製造
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、12.8%のn−ブタノール、5.9%のPVP K−30、1.6%のPVP K−90、2.4%の水、および溶媒として61.3%のDMFを含む、流延用ドープから、内部親水性PVDF膜を作製した。この溶液は、37〜44℃にて温かい状態に保ち、ゲル化を防止した。膜を、キャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が80%〜100%である空気に、20秒間、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0122】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで風乾した。この膜は親水性であることが判った;この特性は、多数回、徹底的に洗浄した後でも、変化しなかった。SEMは、図5aおよび図5bに示すように、膜が高非対称性および微多孔性であることを示した。
水の流束および孔寸法を表11に示す。
【0123】
【表12】
【0124】
(均等物)
本発明を、その特定の態様に関連して説明したが、更なる変更が可能であることが理解され、一般に本発明の原理に従い、本発明が属する当該分野において公知または慣習的な実施の範囲内にあるような、また先に述べた本質的な特徴に適用され得るような、また本発明の範囲およびそのいずれの均等物にも含まれるような、本明細書の開示からの変更を伴って、本発明のいずれの変形、使用または適合をも本願発明は包含することを意図していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1A】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1B】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1C】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1D】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図2A】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図2B】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図2C】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図3A】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図3B】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図3C】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図4A】本発明の非対称性膜を示す1組のSEMである。図4Aは断面図である(1,000倍)。図4Bは、微多孔性表面を見たものである(5,000倍)。膜は、約0.45μmの微多孔性表面孔を有する。
【図4B】本発明の非対称性膜を示す1組のSEMである。図4Aは断面図である(1,000倍)。図4Bは、微多孔性表面を見たものである(5,000倍)。膜は、約0.45μmの微多孔性表面孔を有する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の背景)
1.技術分野
本発明は、ポリ二弗化ビニリデン(PVDF)ポリマー溶液および/または分散体(もしくは分散液)を流延することにより形成される合成ポリマー膜(またはメンブレン)材料の分野に関する。本発明に従って形成される膜はすべて高多孔性である。内部が等方性である膜および高非対称性(非対称性の程度が高い)PVDF膜の両方が開示される。本発明の膜は、疎水性または親水性であり得る。本発明の膜は種々の精密濾過用途において有用である。
【0002】
2.背景技術
PVDFポリマー膜の製造に関しては、非常に関心が示され、また、多大な努力がなされてきた。フィルターとしてのPVDF膜に関心が示されている基本的な理由は、PVDFが、水の殺菌において広範に使用されるオゾンを含む酸化環境に対して、耐性を有することである。PVDFはまた、ほとんどの無機酸および有機酸、脂肪族および芳香族炭化水素、アルコールならびにハロゲン化溶媒による作用に対しても耐性を有する。それは、所定の非プロトン性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、および熱アセトンに可溶である。更に、PVDFは、−50〜140℃の範囲の温度で良好な物理的性質を有する。
【0003】
Grandineは、多くの人が最初の実用的なPVDFの微小多孔性(またはミクロポーラス)膜と考えるものを、米国特許第4,203,848号明細書に記載されているように、製造した。この膜は、湿熱タイプの転相プロセスによって製造された。当該プロセスにおいて、PVDFは、アセトンに、その沸点である55℃にて溶解した。流延後、膜を、熱的に、また、水/アセトン(体積比で20/80)クエンチ浴にての両方でクエンチング(quenching;または急冷もしくは凝固)した。アセトンは55℃にてPVDFの良溶媒であるが、室温では貧(または不良)溶媒であり、よって、結果的に、Grandineは、熱と液体のクエンチングの組み合わせを使用した。
【0004】
Benzingerは、好ましくは溶媒としてトリエチルホスフェートを使用し、非溶媒として種々のヒドロキシ化合物を使用した配合物から、PVDF限外濾過膜を流延した。米国特許第4,384,047号明細書を参照できる。JosefiakはPVDFを、熱クエンチングプロセスを使用して流延される、幾つかの「多孔性成型体」の1つとして開示した。米国特許第4,666,607号明細書を参照できる。Joffeeらの米国特許第4,774,132号明細書は、活性化され、モディファイされたPVDF構造の製造を開示している。同様に、米国特許第5,282,971号明細書において、Degenらは膜に共有結合した第4級アンモニウム基を含むようにモディファイされたPVDF膜を開示した。Gsellらの米国特許第5,019,260号明細書においては、タンパク質親和性の低いPVDF濾過媒体が開示された。
【0005】
Costar社は、PCT国際公開WO93/22034において、向上した流量を有すると述べられているPVDF膜の製造を開示している。尤も、膜は、密接に整列して接触するポリマー粒子の密な配列(またはアレイ)を含む全体として等方性の構造を有するようである。膜における小孔(ポア)は焼結した金属に構造的に類似すると認められる。
【0006】
Sasaki(ササキ)らは、1988年7月20日に発行された英国特許公報第2,199,786A号および米国特許第4,933,081号(「Fuji(フジ)特許」)において、PVDF配合物を開示した。相対湿度が30%の60℃の空気中に曝される実施例1のPVDF配合物は、比較的高いポリマー濃度(20%)を有するものであった。更に、Fujiの配合物は、共溶媒/膨潤剤として使用される高濃度のポリビニルピロリドンを含んでいた。FujiのPVDF膜における表面の孔は、約0.45μm〜0.65μmの間にあるようであり、膜の厚さは100μm〜110μmの範囲である。
【0007】
従来技術の膜は、幾つかの方法のいずれかにより親水性にしたものである。膜に親水性を付与するこれらの各方法は、固有の問題または困難さを有している。例えば、膜をある成分で後処理して親水性を付与する場合、当該成分が浸出し、試料を汚染する可能性がある。流延膜表面の所定成分を架橋することによって、浸出を最小限にすることを試みることができる。例えば、Roesinkらは、米国特許第4,798,847号明細書(再発行特許第34,296号)において、ポリスルホン膜の構造の全体にわたってPVPを架橋することを開示している。尤も、親水性成分を膜に架橋することが浸出を最小限にすると同時に、それは、追加の工程および複雑さを膜の製造プロセスに追加し得る。更に、架橋に必要とされる条件次第では、膜強度および/または剛性が犠牲になる場合がある。
【0008】
膜に親水性を付与する別の試みは流延用サスペンション(または懸濁液)に親水性成分を含有させることを伴う。例えば、Krausらは、米国特許第4,964,990号および第4,900,449号明細書において、流延用溶液にポリエチレングリコールやポリビニルピロリドンのような親水性ポリマーを含有させることによって、疎水性ポリマーから親水性の精密濾過膜を形成することを開示している。しかしながら、Kraus特許に従って製造される膜は、ポリエーテルスルホンの配合物に限定され、また等方性である。したがって、それらは、非対称のPVDF膜を必要とする用途に十分に適しているものではない。
【0009】
構造に関して、Sasaki特許の膜はすべて、2段階の非対称性を有することが開示されている。断面において、膜は微多孔性の面および粗い孔(または目の粗い孔)の面を有する。孔の直径はまず、微多孔性の面から粗い孔の面へのラインに沿って減少し、膜の微多孔性の面と粗い孔の面との間で最小の孔寸法(pore size;またはポアサイズ)に達する。それから、孔寸法は、粗い孔の面の表面に向かうラインに沿って増加するが、当該増加、ひいては膜の非対称性は、標準的なWrasidlo(米国特許第4,629,563号明細書)の非対称性の膜におけるほど、急激なものではない。
【0010】
非対称性または異方性の膜は当該分野において公知である。例えば、Wrasidloは米国特許第4,629,563号および第4,774,039号明細書において、Zepfは米国特許第5,188,734号および第5,171,445号明細書において、それぞれ、非対称性膜およびその製造方法を開示しており、それらの開示は引用により本明細書に包含される。Wrasidlo特許は、最初の真に非対称性の精密濾過膜を開示した。Wrasidlo特許において使用される「非対称性」とは、微多孔性スキンと基礎構造部との間で、断面を横切って孔寸法が連続的に変化している膜を指している。これは、「非微多孔性スキン(nonmicroporous skin)」と膜の基礎構造部との間ではっきりとした不連続性を有し、また、当該分野において非対称性と称されている逆浸透膜および大抵の限外濾過膜と対照をなしている。
【0011】
WrasidloおよびZepf特許はそれぞれ、高非対称性の、一体の、微多孔性の表皮を有する膜であって、高い流量と優れた保持特性を有する膜を開示している。膜は一般に、溶媒/非溶媒の系におけるポリマーの準安定2相液分散体を用いて、修正された「転相」プロセスで製造される。当該分散体は流延され、続いて非溶媒と接触させられる。Zepf特許はWrasidlo特許の改良を開示している。
【0012】
転相(または相転換)プロセスは一般に、次の工程:(i)1または複数の適当な高分子量ポリマー、1または複数の溶媒、および1または複数の非溶媒を含む溶液または混合物を、薄いフィルム、チューブ、または中空繊維に流延(キャスト)する工程;ならびに(ii)1または複数の以下のメカニズム:
(a)溶媒および非溶媒の蒸発(ドライプロセス);
(b)露出した表面で吸収する、水蒸気のような非溶媒蒸気への曝露(蒸気相誘導析出(precipitation)プロセス);
(c)非溶媒液体(一般に水)中でのクエンチング(ウェットプロセス);または
(d)ポリマーの溶解度が急激に大幅に減少するような、熱いフィルムの熱的クエンチング(熱プロセス)
によりポリマーを析出させる工程を経て進行する。
【0013】
模式的に、溶液からゲルへの相の転換は以下のように進行する:
【数1】
【0014】
実質的に、SOL1は均一な溶液であり、SOL2は分散体であり、ゲルは成形されたポリマー・マトリックスである。SOL2の形成の引金となる事象は、用いられる転相プロセスによる。尤も、一般に引金事象は、SOLにおけるポリマーの溶解性を中心とするものである。ウェットプロセスにおいて、SOL1は流延され、ポリマーの非溶媒と接触させられ、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。蒸気相誘導析出プロセスにおいて、SOL1は流延され、ポリマーの非溶媒を含む気体雰囲気に曝され、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。熱プロセスにおいて、SOL1は流延され、SOL2を形成するように流延フィルムの温度が下げられ、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。ドライプロセスにおいて、SOL1は流延され、1または複数の溶媒を蒸発させる気体雰囲気、例えば空気と接触させられ、そのことはSOL2の形成を引き起こし、SOL2はそれから「析出」してゲルになる。
【0015】
流延用ドープにおける非溶媒は、ポリマーに対して常に完全に不活性であるとは限らず、実際にはそれは通常不活性ではなく、多くの場合、膨潤剤と称される。Wrasidloタイプの配合物においては、後で述べるように、非溶媒の種類と濃度の両方の選択が、それがドープが相分離した状態で存在するかどうかを決定する主たる要因となる点において、重要である。
【0016】
一般に、非溶媒は、主要な孔形成剤であり、ドープにおけるその濃度は最終的な膜における孔寸法および孔寸法の分布に多大な影響を及ぼす。ポリマーの濃度もまた孔寸法に影響を及ぼすが、非溶媒ほどではない。尤も、それは膜の強度および多孔性(または多孔度)に影響を及ぼす。流延用溶液またはドープの主要な成分のほかに、例えば、界面活性剤や剥離剤のような副成分が存在し得る。
【0017】
ポリスルホンは高非対称性の膜を、特に2相のWrasidlo配合物を用いて、特に形成しやすい。これらは均一な溶液ではないが、2つの分離した相からなる:一方は溶媒に富む透明な、分子量のより低いポリマーの低濃度(例えば、7%)溶液であり、他方はポリマーに富み、濁った、コロイド状の、分子量のより高いポリマーの高濃度(例えば、17%)溶液である。2つの相は同じ3つの成分、即ち、ポリマー、溶媒、および非溶媒を含むが、それらは濃度および分子量分布が非常に異なる。最も重要なことには、2つの相は互いに不溶性であり、放置した場合には分離する。したがって、当該混合物は、フィルムに流延されるときまで、絶えず攪拌して分散体として維持されなければならない。実質的には、Wrasidloタイプの配合物において、流延用ドープはSOL2(分散体)の状態で提供される。したがって、分散体は、(上述の)中間工程としてではなく、下記のようにゲル形成開始点として作用する。:
【数2】
このプロセスの変形は、主として、従来技術のものと比較して、Wrasidlo膜の高度の非対称性および均一性をもたらすものであった。
【0018】
相分離をもたらすのは流延用混合物における非溶媒とその濃度であるが、全ての非溶媒がこのように作用するものではない。放置された場合、2相は互いに分離するが、各相はそれ自体かなり安定である。混合物の温度が変化すると、相間移動が生じる。加熱すると、より多くの透明な相が生成し、冷却すると、逆になる。濃度の変化は同様の効果を奏するが、Wrasidloによって論じられているように、相分離した系が存在し得る限界の濃度範囲または領域がある。Wrasidloは、一定温度にてそのように分散したポリマー/溶媒/非溶媒の相図においてこの不安定領域を規定するが、これは、スピノーダル線(spinodal curve)内、またはスピノーダル線とバイノーダル線(binodal curve)との間に存在し、そこでは、肉眼で見える2つの分離した層が存在する。
【0019】
ポリマーの大きな疎水性のために、ならびに一方が溶媒に富み、他方がポリマーに富む、2つの相が予め存在する流延用混合物の熱力学的に不安定な状態(転相に付される場合、他の系が通過しなければならない状態)のために、不安定なWrasidlo混合物は、クエンチングされると、界面で微多孔性スキンを形成し、その結果、WrasidloとZepfの各特許の膜が有する構造体である高非対称性膜となるように、非常に急激に析出する。
【0020】
微多孔性スキンは、膜の、細かい孔が形成された側であり、流延の間、空気−溶液界面またはクエンチング体−溶液界面を構成する。Wrasidloの特許において、そして本明細書の開示において、「スキン」という用語は、幾つかの膜に存在する、比較的厚く、ほぼ不透過性であるポリマー層を示すものではないことが理解されよう。ここでは、微多孔性スキンは、種々の厚さの微多孔性領域上にある、比較的薄い多孔性の表面である。非対称性の膜において、微多孔性領域の孔は、それがスキンから膜の反対側の面へ移るにつれて、徐々に寸法が大きくなる。孔寸法が徐々に大きくなる領域は、しばしば非対称性領域と称され、膜の反対側の非スキン面は粗い有孔表面(coarse pored surface)と称される場合が多い。粗い有孔表面に対するものとして、スキンはまた、微多孔性表面とも称される場合がある。
【0021】
幾つかの配合物および流延条件において、「スキニング(skinning;または皮張り)」効果が、膜の反対側の表面、即ち、流延支持体と接触し、流延プロセスにおいて湿り空気またはクエンチ浴に直接に曝されない面で生じ得る。そのような「反対側のスキン」の層が存在する場合、それは通常比較的薄く、一般に膜の厚さの約10%よりも小さい。それはまた、通常、高多孔性であるが、多孔性のネットワークまたはウェブ(web;もしくは網状物)は、2つのスキンが存在する場合、2つのスキンの間の膜の内部領域よりもより密に充填された断面外観を有し得る。
【0022】
ポリマー膜はまた、均一なポリマー溶液から流延され得る。これらの配合物の組成は、Wrasidloの相図のスピノーダル/バイノーダル領域の外側にある。均一な溶液から流延される膜もまた非対称性であり得るが、それらは通常、相分離した配合物から流延されたものほど高度に非対称性ではない。
【0023】
Wrasidloの膜は、従来の膜よりも、向上した流量および選択透過性を有する。そのような向上した流量および選択透過性は、膜の構造に由来する。
【0024】
Zepf特許は、改良されたWrasidloタイプのポリマー膜を開示している。それは、より均一な寸法の微多孔性スキンの孔を実質的により数多く有し、また、非常に向上した流量を有し、所定の孔直径に対して流れの共分散が減少するものである。改良されたZepf膜は、Wrasidloプロセスに改良を加えることによって得られ、流延およびクエンチング温度を低くし、流延とクエンチングとの間の環境曝露を少なくすることを含む。Zepfは更に、流延およびクエンチング温度を低くすると、配合物およびプロセス・パラメーターの僅かな変化に対する膜形成プロセスのセンシティビティー(または鋭敏性)が最小になることを教示している。
【0025】
Wrasidlo特許はまた、PVDF非対称性膜の製造を開示している。米国特許第4,774,039号明細書の実施例6、第12欄、第20〜34行を参照できる。尤も、Wrasidlo特許に従って製造されたPVDF膜は、微多孔性膜であったようではない。
【0026】
ここで論じている従来技術の微多孔性PVDF膜はいずれも、高非対称構造を有していない。その結果、従来技術のPVDF膜はすべて、高非対称性膜と比較して流量が限られている。したがって、当業者において認められるように、高い非対称度と高い流量を有する微多孔性PVDF膜を提供することが望まれている。更に、構造が等方性であるか異方性であるかに拘わらず、高流量を有する超薄PVDF膜を提供することは、有益であろう。加えて、疎水性または親水性のいずれかである高非対称性PVDF膜を提供することも望ましいであろう。また、そのような膜をそれぞれ、一貫して生産し得る方法を提供することもまた有益であろう。
【0027】
(発明の概要)
本発明に従って、我々は予期しないことに、極めて優れた流量を有する、微多孔性の高非対称性PVDF膜を製造することが可能であることを見出した。我々は更に、断面においてポリマー材料のフィラメント状ウェブ(または網状物、またはフィラメント状物もしくは繊維状物から成るウェブ)の格子を有する、微多孔性の、内部が等方性であるPVDF膜を製造することが可能であることを見出した。
【0028】
したがって、本発明の第1の要旨において、最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有する微多孔性のPVDFポリマー膜が開示される。表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。本発明のこの要旨の膜は、そのPVDFとしてHYLAR−461を使用してよく、そして、それはまた、ある態様において、重量基準で、約1〜3%、4〜8%、または別の態様において、約10%もしくは12%〜約18%−22%、あるいは更に別の態様において、約30%までのポリビニルピロリドン(PVP)を含んでよく、その好ましい種類は、約45,000ダルトン(またはドルトン)の平均分子量を有するPVPである。別法として、膜は、600,000、450,000、360,000、270,000、180,000、120,000、または90,000、あるいは60,000ダルトンの平均分子量を有するPVPを含んでよい。別の態様において、使用されるPVPは、9,000、15,000または30,000ダルトンであってよい。膜は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のような湿潤剤と接触させることによって親水性にしてよく、あるいは湿潤剤は界面活性剤であってよい。更に、本発明のこの要旨の膜は、それに積層(またはラミネート)された支持材料、例えば、ポリマーの不織布を有してよい。本発明のこの要旨の膜は、平坦なシートの形態である必要はなく、中空繊維の形態に製造され、当該形態で使用してよい。
【0029】
本発明の第2の要旨において、PVDF膜はやはり最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有する。表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント・ウェブで形成された多孔性支持体である。本発明のこの要旨の膜はまた、最小の孔の平均直径に対する最大の孔の平均直径の比が約5、10または20〜約50、100、250または500である、一体の非対称性構造を有してよい。本発明のこの要旨の膜は、10psidにて、約25、50または100〜約200、350または500cm/分の水の流量(または流速)を有してよい。それらは、約140μmよりも小さい厚さを有してよく、好ましくは約70μmよりも小さい厚さを有してよい。本発明のこの要旨の膜は、約0.5、2、または5〜約10、25、または50psidの水のバブル・ポイント(bubble point)を有し得る。本発明のこの要旨の膜の多孔性支持構造は、微多孔性表面から反対側の表面に向かって連続的に増加する孔寸法(またはポアサイズ)の勾配部から成ってよい。
【0030】
本発明の第3の要旨において、PVDF膜は最小の孔を有する微多孔性表面および最大の孔を有する反対側表面を有し、また、表面と表面の間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。膜は、膜厚の少なくとも80%にわたって等方性の構造を有してよく、また、厚さは約75μmよりも小さくてよく、好ましくは約30μmよりも小さくてよい。
【0031】
本発明の第4の要旨は、約12重量%〜20重量%のPVDF、および約1重量%〜30重量%の、PVPのような、親水性ポリマーが溶媒に溶解した流延用ドープを提供すること、ドープを流延して薄いフィルムを形成すること、薄いフィルムを気体環境に曝露すること、膜を水浴中で凝固させること、ならびに形成された微多孔性PVDFポリマー膜を回収することにより、PVDF膜を製造する方法を提供する。この方法によって製造される膜は、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面の間の多孔性支持体を有し得、多孔性支持体はポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成されている。当該方法において、流延工程の間、ドープ混合物は約21℃〜約35℃の間にある温度を有し、気体環境は約50%〜100%の間にある水の相対湿度を有していてよい。曝露工程は、約2秒〜約120秒の時間を有してよく、クエンチ(quench;または急冷もしくは凝固)水浴は約20℃〜80℃の間にある温度を有してよい。ドープ混合物中のPVPは、約45,000ダルトンの平均分子量を有してよい。流延およびクエンチング(quenching;または急冷もしくは凝固)後、形成された膜を、HPCおよび/または界面活性剤のような湿潤剤と接触させて、膜を親水性にしてよい。当該方法はまた、形成された膜を、ポリマーの織布または不織布である支持体に積層する工程を含んでよい。
【0032】
本発明は第5の要旨において、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面間の領域を有する非対称性の一体の微多孔性PVDFポリマー膜を提供する。この領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、同時に、当該多孔性支持体は、直径が微多孔性表面から反対側表面への勾配部に従って徐々に増加するフロー・チャンネルを有してよい。
【0033】
本発明の第6の要旨は、所与の平均直径である第1平均直径の最小孔を有する微多孔性表面と、異なる所与の平均直径の最大孔を有する反対側表面を備えた、内部等方性の微多孔性PVDFポリマー膜である。膜表面間の領域は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、また、比較的一定の直径を有するフロー・チャンネルを有していてよい。従って、本発明のこの要旨において、膜は3つの領域を有し得る。微多孔性表面付近の領域は、膜の全厚の10%よりも小さくてよく、微多孔性側にあるスキンポアの寸法に近似する孔寸法を有してよい。もう1つの領域は、反対側表面の付近にあってよく、膜の全厚の10%よりも小さくてよく、反対側表面にある孔の寸法に近似する孔寸法を有してよい。膜の中間領域は、膜の厚さの80%またはそれ以上を占めてよく、また、直径が実質的に一定であり、膜のいずれかの表面に近いチャンネルと比較して寸法が中間であるフロー・チャンネルを有してよい。
【0034】
本発明の第7の要旨は、水溶液を濾過する膜を有する改良された濾過装置である。この改良品は、最小の孔を有する微多孔性表面、最大の孔を有する反対側表面、および表面間の多孔性支持体を有する、耐オゾン性の微多孔性PVDFポリマー膜である。多孔性支持体は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成されていてよく、耐オゾン性の膜は10psidにて約25〜500cm/分の水の流量を有し得る。
【0035】
本発明は、内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜を提供する。この膜は、第1平均直径を有する最小の孔を有する第1表面、第2平均直径を有する最大の孔を有する第2表面、およびそれらの間にある厚さ部分を有する。膜の表面の間は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体である。ポリマー材料は、それに一体的に配置された、膜を本質的に水で濡らし得るようにする(または水湿潤性にする)のに十分な親水性成分(または部分)を有していてよい。
【0036】
本発明のこの要旨の膜は、限外濾過膜であってよく、例えば、約100,000ダルトンまたは約10,000ダルトンの分子量カットオフ値(または分離限界値)を有していてよい。また、本発明のこの要旨の膜は、直径が約0.01ミクロン〜約3.0ミクロンである最小の孔を有する微多孔性膜を含む。
【0037】
本発明のこの要旨の膜は、第1平均直径が第2平均直径よりも小さく、多孔性支持体がフィラメント状ウェブにおける開口部を有し、当該開口部の寸法が第1表面から第2表面に向かって勾配部を有するように徐々に増加している、一体の非対称性構造を有してよい。そのような膜は、約5〜約10,000である、第2表面と第1表面との間の孔直径比を有してよい。
【0038】
本発明の膜は、HYLAR−461 PVDFを含んでよい。それらは、更に重量基準で約1%〜約30%のポリビニルピロリドンを含んでよい。ポリビニルピロリドンには、約45,000ダルトンの平均分子量を有するもの、約360,000ダルトンの平均分子量を有するもの、またはその両方が含まれてよい。本発明の膜は、それに積層された支持材料、例えば、ポリマーの不織布を有してよい。膜はまた、中空繊維の形態に製造してよい。
【0039】
これらの膜は、10psidにて約25〜約500cm/分の水の流量を有し得、また、約0.5〜約50psidの水のバブルポイントを有し得る。本発明はまた、膜の厚さの少なくとも約80%にわたって等方性構造を有する膜をも予定している。
【0040】
別の要旨において、本発明は、ポリ二弗化ビニリデン膜を製造する方法を提供する。当該方法は、次の工程:
溶媒に溶解している約12重量%〜20重量%の間のポリ二弗化ビニリデンおよび約1重量%〜約30重量%の間の親水性ポリマーを有する流延用ドープを供給すること;
ドープを流延(キャスト)して薄いフィルムを形成すること;
薄いフィルムを湿った気体環境に曝す(曝露する)こと;
フィルムを水浴中で凝固させること;および
本明細書にて説明される、形成された、内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜を回収することを含んでよい。この方法によれば、ドープは流延工程の間、約35℃〜約50℃の間にある温度を有してよく、また、気体環境は約50%〜100%の間にある水の相対湿度を有してよい。曝露工程の時間は約2秒〜約120秒であってよい。水浴温度は、約20℃〜80℃であってよい。
【0041】
この方法において、親水性ポリマーにはポリビニルピロリドンが含まれてよく、それは、約45,000ダルトンの平均分子量を有する種類または約360,000ダルトンの平均分子量を有する種類で使用してよく、また、両方の種類を含んでいてよい。当該方法はまた、形成された膜に、例えばポリマー不織布のような支持材料を積層する追加の工程を含んでよい。
【0042】
更に別の要旨において、本発明は、内部等方性の、内部親水性であるポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、第1平均直径の最小の孔を有する第1表面、第2平均直径の最大の孔を有する反対側表面、およびそれらの間の厚さ部分を有する膜を提供する。厚さ部分は、ポリマー材料のフィラメント状ウェブで形成された多孔性支持体であってよく、当該多孔性支持体は、直径を有するフロー・チャンネルを含み、当該フローチャンネルの直径は、微多孔性表面に近接する多孔性支持体の第1領域内では、実質的に第1平均直径に相当し、一方、フロー・チャンネルの直径は、反対側表面に近接する多孔性支持体の第2領域内では、実質的に第2平均直径に相当する。そのような膜において、多孔性支持体の第1領域と多孔性支持体の第2領域との間のフロー・チャンネルの直径は、実質的に一定である。
【0043】
(好ましい態様の詳細な説明)
上述したように、本発明は、極めて良好な流量(流速)を有する微多孔性PVDF膜を2つの異なる構造形態:内部等方性形態および高非対称性形態で、製造することが可能であるという、我々の予期しなかった発見に関する。2つの異なる(または区別し得る)膜構造の共通点は、ポリマーがゲル化する方法により形成されるであろう多孔性構造に存する。この共通点は、本発明の膜の断面SEMを従来技術の膜と比較して観察することによって、容易に認められる。
【0044】
例えば、ここで図1を参照すると、4つの断面SEM図が比較のために示される:図1aは本発明の内部等方性PVDF膜である(500倍);図1bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1cおよび1dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。観察されるように、本発明の内部等方性である膜(図1a)はポリマー材料の比較的繊維状のウェブを含んでいる。同様に本発明の非対称性膜(図1b)は、微多孔性表面(またはそのすぐ下)から、目の粗い有孔表面までの途中約4分の3の箇所までにわたって、構造が、相互に連絡したポリマー材料のストランド(strand)またはウェブを明らかに含む領域を有している。対照的に、Costarの膜(図1cおよび1d)は、フィラメント状ウェブとして説明され得るストランドまたはウェブ構造を含んでいないように見える。むしろ、ポリマーは、球状または粒状にゲル化し、焼結金属の構造に類似しているように見える。
【0045】
本発明に従って製造される内部等方性膜と高非対称性膜の間で共有されている更なる共通の特徴は、両方の種類の膜が、微多孔性表面中に、またはそれに近接して、収縮した孔(constricted pore;または狭い孔)の領域を有するという事実である。即ち、本発明の膜は、微多孔性表面にある又は該表面を近い部分または領域よりも、より目の粗い基礎構造部(substructure)を有する。この構造は、粗い孔(または大きい孔)が入って来るフィードと接触する場合、本発明の膜が流体ストリームに対して相当少ない抵抗を示すことを可能にする。膜の選択性は、微多孔性表面内にある又はそれに近接する収縮した孔に支配される。
【0046】
ここで用いられる「微多孔性」という用語は、平均孔直径が約0.01μmを超える微多孔性(またはミクロポーラス)膜表面を有する膜に関するものである。微多孔性表面の最大孔直径は、好ましくは約8μmを超えない、理解されるように、0.01μmよりも小さい平均孔直径を有する膜は、一般に、限外濾過膜、逆浸透膜、およびガス分離膜に分類される。
【0047】
ここで使用される「内部等方性」とは、実質的に均一な孔寸法直径を膜の断面の大部分(または本体部分)で有する膜か、あるいは微多孔性表面から反対側の面までに孔寸法の大きな勾配を有しない膜を指している。例えば、「内部等方性」膜は、相対的により小さい孔を微多孔性表面に有し、相対的により大きい孔を多孔性のポリマー基礎構造部において有してよいが、孔寸法は一般に、微多孔性表面からポリマー基礎構造部に向かって徐々に増加しない。逆に、微多孔性表面は、多孔性基礎構造部よりも単位面積あたりの孔密度が高い、比較的薄い密な領域であり、多孔性の基礎構造部は、より低い孔密度を有する、相対的により厚い、より疎な領域である。したがって、本発明の内部等方性膜は、微多孔性表面と反対側表面との間で孔寸法の比較的急激な遷移を示し、このことは、Wrasidloタイプの非対称性膜で見られるように、微多孔性の面から反対側の面に向かって孔寸法が徐々に増加する勾配とは対照的である。
【0048】
本発明の膜はまた、比較的密なスキン領域を膜の反対側表面付近にも有し得るので、内部等方性膜は、両方の表面で、高非対称性膜の表面孔直径に非常に近似する表面孔直径を有することが可能である。従って、表面の孔に関するデータだけでは、本発明の膜が内部等方性であるか、高非対称性であるかを結論付けることはできない。重要な特徴は内部領域である:それは通常、膜の厚さの少なくとも中央部約80%である。高非対称性膜において、この内部領域は、徐々に直径が増加する孔またはフロー・チャンネルによって特徴づけられる。対照的に、内部等方性膜の内部領域は、実質的に一定の直径の孔またはフロー・チャンネルを有する。構造的な相異は、一般にSEMにおいて非常に明らかであり、また、異なる内部構造を有する膜の流量のデータからも通常、明らかである。我々は、この内部膜構造を再現可能に制御および操作する方法を見出したので、それをここで開示する。
【0049】
ここで使用される「非対称性」という用語は、孔寸法の勾配を有する膜に関するものである。即ち、非対称性膜は、最も小さい又は最も細い孔を、微多孔性表面に又は該表面に近接して有する。微多孔性表面と膜の反対側の表面の間での孔寸法の増加は、一般に漸進的であり、最も小さい孔寸法は微多孔性表面の最も近くにあり、最も大きい孔は反対側の粗い有孔表面で又は該表面に近接する場所で見られる。
【0050】
ここで使用される「一体(化)」は、単一のポリマー溶液またはドープから流延される膜を指している。これは、積層または複合膜を形成するために複数のポリマー溶液またはドープから流延される、一体でない膜又は複合膜と対照をなす。複合膜はまた、流延後、2つまたはそれ以上の完全に形成された膜を組み合わせてよい。
【0051】
本発明の好ましい膜は、孔寸法が約0.01μm〜約8.0μmの範囲に及んでいる微多孔性表面を有する一体の微多孔性膜である。0.1、0.3、0.45、0.5、0.667、0.8、1.0、2.0、3.0および5.0μmの微多孔性表面孔を有する膜を、ここで例示する。膜はまた、反対側表面を有する。微多孔性表面は、一般に、流延の間、環境またはクエンチ浴に直接に曝される表面である。一般に反対側の表面は、したがって露出しない表面、即ち、膜が流延される支持構造物と接触する表面である。したがって、ここでは、反対側の表面を「流延表面」と称する場合がある。
【0052】
本発明の膜の反対側の表面はまた、孔寸法が微多孔性表面上の孔よりもしばしば大きいものであり得る、微多孔性の孔を含んでいる。好ましい膜は、約0.05、0.1、0.5または1.0〜約10、25または50μmの反対側表面孔寸法を有している。約3、4、5、6、20および30μmの反対側表面孔寸法を有する膜を、ここで例示する。
【0053】
本発明の膜は、微多孔性表面と反対側表面との間に多孔性基礎構造部を有する。多孔性の基礎構造部は、実質的に等方性であり得、あるいは非対称性である得る。得られる構造の種類は、幾つかの因子によって決定され、当該因子には:ポリマー、溶媒および非溶媒の種類ならびに濃度;ナイフギャップおよびドープ温度のような流延条件;流延とクエンチングとの間の曝露時間および曝露雰囲気の湿度のような環境因子;ならびにクエンチ浴の組成および温度が含まれる。
【0054】
本発明の内部等方性膜および高非対称性膜の両方が共有する特徴は、好ましい膜が、ポリマー材料の繊維状ウェブを有することである。図1aおよび図1bを参照できる。対照的に、Costar膜(図1cおよび1d)のように、従来の技術の方法によって製造される膜は、上述のように、ポリマー材料の繊維構造部を有していないように見える。むしろ、ポリマーは、球状または粒状にゲル化し、焼結金属の構造に類似しているように見える。
【0055】
上述したように、本発明の膜は、微多孔性表面と粗い有孔表面との間で、ある孔寸法差を有する。尤も、ある膜は基礎構造部において等方性が支配的であり、一方、他のものは基礎構造部において非対称性が支配的である。換言すれば、本発明の膜は、膜の基礎構造部に対して、微多孔性表面に又は該表面に近接して狭い孔寸法を有する。尤も、「スキン」領域の厚さは、いずれの表面にあっても比較的薄く:一般に、膜の全厚の10%未満、好ましくは7%未満である。微多孔性表面にある又は該表面に近接している狭い孔の領域は、本発明の膜が基礎構造部において非常に目の粗いものであることを可能にし、そのことは良好な流量をもたらし、一方、制限された孔領域のために良好な保持(retention)性能が維持される。
【0056】
本発明のPVDF膜は、高非対称性または内部等方性のいずれであっても、比較的大きな空隙体積によって特徴づけられる。幾つかの態様において、空隙体積は少なくとも約45、50%または55%である。本発明の膜の別の態様は、少なくとも約60%、65%または70%の空隙体積を有する。本発明の更に別の態様は、少なくとも約75%、80%または85%の空隙体積を有する。空隙体積は、乾燥した膜と濡らした膜の重量を比較することにより、あるいは乾燥した膜の密度を計算しそれを同体積のポリマーまたはポリマー混合物の中実体の密度と比較することにより、決定し得る。
【0057】
本発明の膜は、概して、非常に「目の粗い」膜であり、流体のフロー(または流れ)に対して限られた抵抗を与えるが、それにもかかわらず、蛇行(または屈曲)の原理(principle tortuosity)と最小の孔寸法に基づいて粒子を有効に分離し得る。したがって、理解されるように、本発明の膜は、極めて優れた流量を有する。例えば、下記の表は、微多孔性表面孔寸法、反対側表面孔寸法、および流量を示すものである:
【0058】
【表1】
【0059】
本発明の膜は、従来技術の膜に比べて、実質的に向上した流量を有することが認められるであろう。例えば、Costar特許において、Costarの膜は、Millipore社から市販されているPVDF膜と比較されている。Costarの表1、11頁を参照できる。下記の表において、本発明の膜の流量をCostarおよびMilliporeの膜と比較する:
【表2】
【0060】
比較のために、可能な場合には平均流れ孔寸法(mean flow pore size)を示している。本発明の膜に関する平均流れ孔寸法は、評価したMilliporeの膜の場合よりも、実際のスキン孔寸法により近いことに留意することが重要である。種々の膜の間で流量が異なることを評価するために、近似するスキン孔寸法を有する膜の比較が一般に行われる。しかしながら、より有意義な比較は、近似する平均流れ孔寸法を有する膜の間での比較である。そのような比較は、本発明の膜の流量が市販の従来技術の膜と比較して非常に向上することを示した。
【0061】
本発明の膜は比較的薄い。例えば、本発明の内部等方性膜は、約20〜25μmと薄く製造することができ、好ましくは、厚さは約25〜約50μmである。本発明の非対称性膜は、一般に、内部等方性の対応するものよりも僅かに厚い。例えば、好ましい非対称性膜は、厚さが約60〜約125μmの間である。
【0062】
本発明の膜は、約12%から20%まで、またはそれ以上という、比較的高いポリマー濃度で製造される。ドープの温度は好ましくは、非対称性膜の場合は、21℃〜35℃の間であり、内部等方性膜の場合は、21℃未満であるか、35℃よりも高い温度のいずれかである。更に、好ましい態様において、ポリマーのドープまたはフィルムの流延の後に、フィルムは湿り空気に曝される。曝露時間は好ましくは比較的長く、約5または10秒〜約1または2分、あるいはそれ以上である;湿度は好ましくは比較的高く、約60%〜約100%の相対湿度が好ましい。理解されるように、湿度をより高くすること又は曝露時間をより長くすることは、一般に他方を対応して又は釣り合うように減らす(低くする又は短くする)ことと共に採用すると、同様の結果を得ることができる。曝露の後、フィルムは、ポリマーに対する非溶媒を比較的高い濃度で含むクエンチ浴でクエンチングされる。クエンチング温度は、好ましくは約45℃と70℃の間である。
【0063】
上述のプロセスによって、極めて優れた流束(flux)特性を有するPVDF膜が製造される。実際、我々は、非対称性ポリスルホン膜に匹敵する流束流量を有し、5ポンド/平方インチの圧力差(psid)と低いバブル・ポイントを有する膜を製造した。ポンド/平方インチの圧力差は、膜の対向する面間に存在する圧力差である;膜のバブル・ポイントは膜の透過性と相関しており、低いバブル・ポイントは予め濡らした膜に空気を通過させるのに比較的小さい圧力差が必要とされることを示す。膜についての水のバブル・ポイントは、予め濡らした膜の反対側(低圧)表面で泡が生じる圧力である。これは、液体を膜に強制的に流入させ、内部で捕捉されているガスを膜の外側に強制的に流出させ、その結果、泡が生成する事象である。高いバブル・ポイントは、膜を通過する流体フローに対して抵抗があることを示す。本発明のPVDF膜のバブル・ポイントは、近似する平均流れ孔寸法を有する高非対称性のWrasidloタイプのスルホンポリマー膜のバブル・ポイントに匹敵する。従来技術のPVDF膜はそうではなく、このことは、本発明の膜が従来技術のPVDF膜よりも優れた多孔性(porosity)および流量を有することを示している。
【0064】
本発明の配合物においてポリマー濃度がより高いと、膜に強度が付与され、また、膜の伸び特性が向上する。更に、基礎構造部においてマクロ空隙(macrovoid)の形成が減少することが認められる。流延フィルムの湿り空気への曝露は、係属中の米国特許出願第08/661,839号(1996年6月11日出願)において説明されているスルホンポリマーを用いて我々が行った検討と同様にして、開口された孔の形成をもたらすと考えられる。米国特許出願第08/661,839号の開示は引用により本明細書に包含される。
【0065】
しかしながら、興味深いことに、本発明の膜の製造に関連する湿り空気への曝露は、スルホンポリマーを用いて得たものよりも、非常に異なる構造をもたらすことが認められた。同様の環境曝露を伴って流延されるスルホンポリマー膜は、2層の構造を有する:等方性領域上にある微多孔性表面は、非対称性領域上にある。本発明の膜の等方性領域は、空気中の水蒸気とポリマーフィルムとの間の「蒸気相誘導析出プロセス」相互作用によって形成され、あるいは少なくともそれにより開始され、それは、均一な又は等方性の孔形成をもたらすものと考えられる。これは、セルロース混合エステルまたは硝酸セルロースの膜に類似している。しかしながら、溶媒または非溶媒のごく僅かな蒸発があり、その結果、クエンチ浴において、クエンチ用液体は等方性領域に勢いよく侵入して等方性領域を凝固させ、また、非対称性領域を形成し凝固させると考えられる。
【0066】
本発明の膜は、好ましくは、厳密に非溶媒である水を若干含んで流延される。固体濃度、湿度、および曝露時間の均衡をとることによって、我々は、超薄の膜を必要とする用途に適したものとするのに十分な強度を有する、高多孔性膜を作製した。添付した表およびSEMにおいて、我々は、配合物、孔寸法、ならびに他の特徴および条件を比較している。上述したように、本発明の膜の向上した強度のために、PVDF膜は、布帛の補強がなくても、高多孔性の超薄の膜として作製し得る。尤も、従来の経験によれば、布帛が必要であると考えられる場合には、PVDFは布帛上で非常に流延しやすいことが判っている。従って、我々はまた、本発明に従って、所定の好ましい積層および補強法を提供する。
【0067】
本発明の膜の強度および取扱い特性を向上させるために、膜に種々の布帛(fabric)を積層する、あるいは膜を種々の布帛に積層することができる。例えば、適当な積層材料には、織物および不織布材料、メルトブロー材料、ポリエステル、ならびにポリオレフィンが含まれる。例えば、多くのポリマーの中で、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリエチレンは、本発明の膜の織布または不織布支持体として有用である。使用すべき特定の積層材料は、特定の用途に基づいて選択される。本発明の膜を積層(またはラミネート)するために、当業者であれば想到するであろう、熱もしくは接着のプロセスまたは手法を用いることができる。
【0068】
本発明のPVDF膜を工業的に大量生産することに関して、流延または生産ラインは、例えばナイフ・ブレードもしくはスロット・コーターのような流延箇所とクエンチ水との間で、湿り状態および制御された空気流にフィルムが曝されるエリアを好ましくは有することが理解されるであろう。上述の大きな孔のスルホンポリマー膜についても同様である。尤も、ゲル化および硬化時間の違いのために、PVDFは、多くの場合、より長い空気曝露時間を必要とする。したがって、PVDF膜に関しては、ライン速度がより遅いこと、あるいは湿潤トンネルがより長いことのいずれか必要である。例えば、PVDF膜が毎分20フィートで流延され、1分間の湿り空気処理を必要とする場合、曝露距離は20フィートでなければならない。
【0069】
本発明の膜は、疎水性または親水性であり得る。流延後、疎水性である膜は湿潤剤で後処理して、それを親水性にしてよい。適当な湿潤剤には、界面活性剤および親水性ポリマーが含まれる。有用な界面活性剤の例は、ZONYL(DuPont、ブルーミントン(Bloomington)、デラウェア州)およびTRITON X−100(Rhom & Haas、フィラデルフィア、ペンシルヴェニア州)である。親水性ポリマーの例として、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)がある。好ましいHPC処理は、HPC水溶液を含む浴に膜を浸漬することである;浴はまた、1または複数の界面活性剤を、単独で又はHPCと組み合わせて含んでよい。湿潤剤はまた、クエンチング工程の一環として膜を親水性にし得るように、クエンチ浴に加えてよい。
【0070】
本発明の膜は、オゾンが存在する水の電子分野の濾過を含む、全範囲の精密濾過用途に適している。本発明の膜の非常に重要な用途は電池におけるものであり、電池で膜は電池の異なるセル間のセパレータとして、またはアルカリ性のゲルを収容するために使用される。この用途は、厚さが約30μmであり、1Mの水酸化カリウム(KOH)を含む炭酸プロピレンに対して耐性を有する、高多孔性の超薄の膜を必要とする。水において、この濃度は約14のpHに相当する。炭酸プロピレンは80℃にてPVDFの潜溶媒であり、また、炭酸プロピレンは室温下であっても強力な膨潤剤となるかもしれないという懸念があったが、我々は、本発明のPVDF膜が、室温より少し高い温度下でも、炭酸プロピレンによる作用に対して耐性を有することを見出した。実際、我々が本発明の膜について実施した浸漬テストにおいて、膜は1Mの水酸化カリウム(KOH)を含む炭酸プロピレンによりもたらされる苛酷な条件に具合良く耐えた。更に、ナイロン不織布に流延された本発明のPVDF膜の試料もまた、炭酸プロピレン/KOHに耐えた。各浸漬テストにおいて、本発明に従って製造された膜は、良好な耐薬品性を示し、膜のカールは無く、またはっきりとわかる膜の弱化は無かった。
【0071】
膜のドープ混合物は、PVDFのほかに、例えば、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールのような親水性ポリマーを含んでよい。これらのポリマーは、ドープ混合物の粘度を高め、また、多孔度(porosity;または多孔性)および孔構造にも影響を及ぼし得る。そのような親水性ポリマーは、当然に、膜の構造に影響を及ぼす他の因子、例えば、流延温度、クエンチング温度、湿り空気への曝露時間、膜を曝露する空気の温度および相対湿度等と相互作用する。本発明の膜は、親水性ポリマー無しで、あるいは、ドープ混合物中、約30%までの最終濃度で含まれる親水性ポリマー、多くの場合、少なくとも1〜3%の濃度、あるいは別の態様においてはドープ混合物の4〜8%の濃度(いずれも重量基準)で含まれる親水性ポリマーとともに流延してよい。
【0072】
更に、本発明の膜は内部親水性であってよい。内部親水性である膜は、膜の内部構造の一部として親水性成分を含む。これらの成分は、使用中、膜の外側に浸出しない。したがって、内部親水性膜は、迅速な水の浸潤が有益である用途、あるいは表面の添加剤の浸出が問題となる用途(例えば飲料処理)において使用するのに非常に望ましい。
【0073】
本発明の内部親水性膜は、ここで開示される疎水性PVDF膜に類似する水の流量および構造特性を有する。本発明の内部親水性膜は、等方性または非対称性であり得る。これらの親水性膜は、例えば、10,000、20,000、または30,000ダルトン〜約50,000、75,000、100,000、または200,000ダルトンのMWカットオフ値を有する限外濾過膜の寸法範囲に製作され得る。同様に、本発明はまた、約0.01、0.05、0.1、または0.5ミクロン〜約1、2、または3ミクロンの孔寸法を有する内部親水性精密濾過膜を企図している。
【0074】
内部親水性PVDF膜は、一般に、疎水性の対応するものと同様の配合およびプロセス・パラメータを有する。例えば、それらは、約12%、12%、または16%から、18%、20%、またはそれ以上までの、比較的高いポリマー濃度で製造される。一般に、より高いポリマー濃度は、より小さい限界孔を有する膜を与え、したがって、本発明に従って限外濾過膜を製造するために使用されるドープ配合物は、20%またはそれ以上の濃度でPVDFを含んでよい。
【0075】
さらに、より好ましい態様において、ポリマーのドープまたはフィルムの流延に続いて、フィルムが湿り空気に曝される。曝露時間は好ましくは比較的長く、約5または10秒〜約1または2分、あるいはそれ以上である;湿度は好ましくは比較的高く、相対湿度は約60%、70%または80%〜約90%または100%であることが好ましい。曝露の後、フィルムは、ポリマーに対する非溶媒を比較的高い濃度で含むクエンチ浴中でクエンチングされる。クエンチング温度は、好ましくは約45℃と70℃の間である。
【0076】
これらの配合およびプロセス条件に加えて、内部親水性膜は、約0.5%〜約4%の高い分子量のPVP(約150,000MW〜600,000、またはそれ以上)、例えばPVP K−90(平均MW 〜360,000)を含んでよい。膜はまた、約4%〜約15%のより低い分子量のPVP(約80,000MW未満)、例えばPVP K−30(平均MW 〜45,000)を含んでよい。更に、それらは、約8%〜20%の孔形成剤、例えば、n−ブタノール、PEG、TAA、ヘキサノール、2−メチルブタノール、または2−エチルブタノールを含んでよい。高分子量および低分子量の他の親水性ポリマーならびに他の孔形成剤を、当業者であれば想到するように、これらの配合物において自由に代用してよく、その場合、より高い分子量範囲を有する親水性ポリマーは、膜のPVDFと融和して浸出損失を呈しやすくなることに留意すべきである。内部親水性膜を製造するために使用される配合物として、ドープ混合物は、多くの場合、ゲル化を防止するために35℃〜50℃の温度にて用いられる。
【0077】
親水性は、当該分野において公知である幾つかの方法で確かめられる。例えば、乾燥した膜の面にある水滴は、膜が疎水性である場合には、滴のビーズを形成する傾向にあるが、親水性の膜は一般にそれを吸収する。親水性の比較級(または比較度合い)は、相対的な水湿潤性または乾燥した膜に付着した水の横方向の流量によって決定できる。例えば、膜は、蒸留水を含む皿又はビーカーの表面に膜のストリップ(もしくは帯状物)またはディスク(もしくは円盤状物)を置くことによって、比較できる。そのような試験において、親水性のPVDF膜は60秒以内に完全に濡れ、だいたい10秒以内に濡れ、また多くの場合、自然に濡れる。疎水性のPVDF膜は一般のそのような条件下では決して濡れない。膜の親水性の別の有用な徴候は、低圧の水フロー試験である。膜のディスクをフィルター装置に置き、水をその上に置く。膜のバブル・ポイント圧力よりも有意に小さい、小さな正圧にて、水は親水性膜を経由して流れる。対照的に、疎水性のPVDF膜を通過する水の流れは、加えられる圧力が膜のバブル・ポイントに等しくなるまで、生じない。
【0078】
したがって、本発明の内部親水性膜は、本質的に水で濡らすことができ、また、標準状態では浸出性ではない。当該膜は、エレクトロニクス、飲料およびジュース濾過等のための水の濾過のように、水溶液を濾過する標準的な操作において、その親水性成分を浸出に起因して失うものではない。幾つかの用途において、所定用途の膜の特性をさらに向上させるべく、膜を形成した後に、内部親水性膜を追加の湿潤剤または界面活性剤で後処理することが望ましい。本発明のこの要旨は、ここで開示するように親水剤によって表面が処理され、また、内部親水性である膜を形成する、そのような後処理を企図している。
【0079】
本発明のPVDF膜の配合物の多くが高濃度のポリマーを含み、したがって高い粘度を有するために、本発明の配合物は、微多孔性の中空繊維を製造するのに有利に適している。本発明のPVDF中空繊維膜の1つの態様において、空気または非溶媒、例えば水(溶媒またはその他の化学物質(例えば非溶媒)を含む)が、管腔(lumen)流体として使用され、水のような液体でクエンチングする前に、外側表面が、種々の環境、例えば、湿り空気、乾燥空気、またはその他の環境に曝される。得られる膜は、外部の環境水分が内部に移動するときに溶媒および非溶媒が外側に移動するので、より目の詰まった孔(tighter pore)を膜の外側に有する。我々は、本発明の配合物の粘度を十分に高くして、湿り空気のギャップを降下している間、形成中の中空繊維膜を傷つかない状態に維持し得ることを見出した。
【0080】
PVDFの供給元は幾つかあり、平均分子量に基づく幾つかの種類のものが入手できる。HYLAR−461(Ausimont社(ニュージャージー州、モリスタウン(Morristown)より入手できる)、およびKYNAR−761(Atochem社(ペンシルヴェニア州、フィラデルフィア)より入手できる)が、本発明の膜を流延するのに特に適していることが判った。
【0081】
本発明の一般的な膜を製造するために、PVDFおよび親水性ポリマーは、溶媒、孔形成剤、および非溶媒と組み合わせてよい。膜の所望の多孔性は用いられるPVDFの濃度を主として決定し、より高い濃度は、より小さい粒子を保持する能力を有する、より「密な(tighter)」膜をもたらす。適当な高分子量親水性ポリマーを包含させることにより、親水性ポリマーを標準状態下では解離しない内部親水性膜がもたらされる。より小さい分子量の親水性ポリマーおよび高沸点アルコールは、主として孔形成剤として機能する。粘度は流延時のドープ混合物の温度によって調節することができる。
【0082】
ドープ混合物は、移動ベルトに付着させられ、湿り空気に2、5、10、または20秒〜30、60、90または120秒の間、曝される。湿気曝露は、全曝露時間、湿った気体環境の温度、および環境の相対湿度により、影響を受け得る。湿った気体環境に曝露した後、薄い膜フィルムは、非溶媒の浴、一般には水の浴内に移動させられ、そこで膜はゲル化し固化する。非溶媒クエンチ浴の温度を変化させて、種々の孔寸法を得ることができる。
【0083】
次に、本発明の好ましい膜およびその製造方法を、以下の実施例に従って、また、図面を参照して説明する。
【0084】
実施例1
曝露時間の影響
重量基準で15.9%のPVDFポリマーHYLAR−461、0.9%の塩化リチウム、3.7%の水、2.3%のポリビニルピロリドン(PVP K−17 MW 〜9,000 BASF(ニュージャージー州、マウント・オリーブ(Mt Olive))より入手)、および溶媒として77.2%のジメチルアセトアミド(DMAC)を含む、流延用ドープを調製した。幾つかの膜試料を、7ミル(178μm)のナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。好ましくは、ドープ混合物は流延されるとき32℃未満である。流延後、初期の膜(膜になろうとする初期の段階の膜)を25〜27℃で相対湿度が100%または80%の空気に、表1に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0085】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)水溶液で10〜15秒間処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。それぞれの膜を、10psidにて、直径47mmのディスク(有効直径約35mm、面積9.5cm2)で水透過性試験に付した。膜の平均流れ孔寸法は、コールター・ポロメーター(Coulter porometer)で測定し、表面および断面を走査型電子顕微鏡(SEM)法により検査した。
【0086】
試料1−bの膜の代表的なSEMを図2a〜図2cとして示す。膜の断面図(図2a)から観察されるように、膜は実質的に等方性である多孔性基礎構造部を有している。しかしながら、基礎構造部の孔は概して、微多孔性表面にある孔または該表面に近接する孔よりも大きい。微多孔性表面と粗い有孔表面との間の孔寸法の違いは、微多孔性表面のSEM(図2b)を粗い有孔表面のSEM(図2c)と比較すると、容易に理解できる。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表1に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
実施例2
湿度および溶媒の影響
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、8.0%の水、3.0%のPVP K−17、および溶媒として73%のN−メチルピロリドン(NMP)を含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%の空気に、表2に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0089】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。膜のSEMは図2a〜2cに示すものと同様の構造を示した。尤も、断面のSEMは、マクロ空隙が形成されたことを示した。このファクターは、NMPはDMACほどPVDFの良い溶媒でないことがあり得るが、より高いポリマー濃度がこの問題を軽減し得ることを示している。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表2に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例3
ポリマー濃度の影響
実施例2で作製した膜にマクロ空隙が存在することに鑑み、ポリマー濃度が膜構造に及ぼす影響を知るために下記の試験を実施した。
【0092】
重量基準で20%のPVDF HYLAR−461、5.0%の水、1.5%のPVP K−17、および溶媒として73.5%のNMPを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%の空気に、表3に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0093】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。このように製造した膜は実施例1に関して示した構造と実質的に同一の構造を有しており、実施例2に関して見られたマクロ空隙を有していなかった。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表3に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例4
湿度および曝露時間の影響
実施例3で作製した膜の流量および孔寸法が違うことに鑑み、湿度および曝露時間の影響を知るために下記の試験を実施した。
【0096】
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、8.0%の水、3.0%のPVP K−17、および溶媒として73%のNMPを含む、流延用ドープを調製した。4つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が70%または100%である空気に、表4に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0097】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。回収した膜は、25〜30μmの厚さを有していた。それぞれの膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。
【0098】
代表的な膜についての結果を図3a〜図3cに示す。図3a〜図3cは、下記の試料4cとして製造された膜の1組のSEMである。図4aは、断面において、膜が、図1に関して示した膜(図2a)よりも更により粗いことを示している。更に、膜は、実質的に等方性である多孔性の基礎構造部を有している。尤も、基礎構造部における孔は概して、微多孔性表面にある又は微多孔性表面に近接する孔よりも大きい。微多孔性表面と粗い有孔表面との間の孔寸法の違いは、微多孔性表面のSEM(図3b)を粗い有孔表面のSEM(図3c)と比較すると、容易に判る。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表4に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
膜4aの特性と膜4cの特性の比較により、この温度での70%の湿度と100%の湿度の及ぼす影響は非常に異なることが判る。同様に、膜4aの特性と膜4cの特性の比較により、曝露時間を長くすると、より低い湿度をいくらか埋め合わせ得ることが判る。しかしながら、膜4−dは、実施例4−cの膜と比較して、流量の減少および膜の粗い側の孔寸法がより小さくなったことを示した。このことは、100%の湿度においては、膜は過剰に曝露され、相対湿度と曝露時間の相互作用がすべての場合において相乗的であるとは限らないことを示している。
【0101】
実施例5
溶媒の影響
重量基準で13.8%のPVDF HYLAR−461、6.9%のグリセリン、1.7%の水、2.0%のPVP K−17、および溶媒として75.6%のジメチルホルムアミド(DMF)を含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、表5に示すように時間を変えて、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0102】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。得られた膜はすべて、25〜30μmの厚さを有していた。回収した膜を、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。膜の表面および断面をSEMにより検査した。SEMで観察した構造は、実施例1および4に関して示した構造と同様の外観を有していた。
曝露条件、水の流束のデータ、および孔寸法を表5に示す。
【0103】
【表7】
【0104】
実施例6
支持された膜の製造
重量基準で15.4%のPVDF HYLAR−461、7.4%の水、および溶媒として77.2%のDMFを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してナイロン不織布支持体上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、10秒または60秒間、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0105】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。
【0106】
回収した膜を、1MでKOHを含む炭酸プロピレンの溶液(pHは約14)に浸漬した。浸漬した後、膜を回収したところ、後述の実施例と同様に、膜の強度の損失または劣化の形跡はなかった。引張強度および伸びの有意の変化は認められなかった。
【0107】
実施例7
引張強度および破断点伸び
重量基準で15.4%のPVDF HYLAR−461、7.4%の水、および溶媒として77.2%のDMFを含む、流延用ドープを調製した。2つの膜試料を、7ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、10秒または60秒間、曝露した。その後、膜を約60℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0108】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にし、それから風乾した。
【0109】
回収した膜を、1MでKOHを含む炭酸プロピレンの溶液(pHは約14)に浸漬した。浸漬した後、膜を回収したところ、膜の強度の損失または劣化の形跡はなかった。表7に示すように、引張強度および伸びの実質的な変化は認められなかった。
【0110】
【表8】
【0111】
実施例8
非対称性PVDF膜の製造
重量基準で14.6%のPVDF HYLAR−461、18.8%のt−アミルアルコール、4.8%のPVP K−30(平均MW 〜45,000)、2.3%の水、および溶媒として59.5%のDMFを含む、流延用ドープから、高非対称性PVDF膜を製造した。試料は、12ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。ドープ混合物の温度はずっと21℃〜35℃の間に保った。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が80%の空気に、25秒間、曝露した。その後、膜を約56℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0112】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にした。その後、膜を約70℃にてオーブン乾燥し、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。得られた膜は、約70μm〜100μmの厚さを有していた。膜の表面および断面をSEMにより検査した。図4aおよび4bは、膜の微多孔性表面および断面の図を示す。断面図(図4a)から観察されるように、膜は、微多孔性表面から膜の基礎構造部の大部分に向かって、また膜の基礎構造部の大部分にわたって、勾配の付いた孔構造を有している。そのような勾配の付いた孔構造は、微多孔性表面から膜の基礎構造部にわたって孔寸法が徐々に増加する、典型的な非対称性構造を示す。水の流束および孔寸法を表8に示す。
【0113】
【表9】
【0114】
実施例9
非対称性PVDF膜の製造
重量基準で14.6%のPVDF HYLAR−461、18%のt−アミルアルコール、4.8%のPVP K−30、2.3%の水、および溶媒として60.3%のDMFを含む流延用ドープから高非対称性PVDF膜を製造した。試料は、9.5ミルのナイフギャップを有するキャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が100%の空気に、25秒間、曝露した。その後、膜を約50℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0115】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで0.1%のHPC水溶液で処理して膜を親水性にした。その後、膜を風乾し、10psidにて、直径47mmのディスクで水透過性試験に付した。また、平均流れ孔寸法をコールター・ポロメーターで測定した。得られた膜は、約50μm〜75μmの厚さを有していた。
水の流束および孔寸法を表9に示す。
【0116】
【表10】
【0117】
実施例10
疎水性PVDF膜の製造
膜をHPCで後処理しなかったことを除いては、実施例の8の配合物および手順に従ってPVDF膜を作製した。水の流量および膜の孔寸法は表8に示すものと同じであった。しかしながら、膜は50%のイソプロピルアルコール水溶液で予め濡らすことを必要とした。本発明の疎水性の膜を予め濡らすの(prewetting)に適した他の溶液には、グリセリン、Zonyl、Triton、PVPおよびHPCが含まれる。
【0118】
実施例11
内部等方性PVDF膜の製造
実施例8の流延用ドープ配合物と同一の流延用ドープ配合物から内部等方性PVDF膜を作製したが、膜はドープ混合物の温度を35℃よりも高くして流延した。図3aは膜の断面、図3bおよび3cはそれぞれ、微多孔性表面および反対側表面を示す。断面図(図3a)から観察されるように、膜は、微多孔性表面に近接する密な領域と膜の反対側表面に近接する「反対側スキン」領域との間の中央領域で、実質的に一定の孔構造を有している。この実質的に一定な孔構造は、本発明の内部等方性PVDF膜の好ましい態様である。
【0119】
実施例12
HYLAR−461とKYNAR−761の特性
好ましい形態のPVDFは商品名HYLAR−461で市販されている。別の好ましい形態のPVDFは商品名KYNAR−761で市販されている。本発明は、いずれかの適当な形態のPVDFを用いて流延される膜を予定している。本発明は好ましくは、HYLAR−461、KYNAR−761、または表10に示される特性に類似した特性を有する実質的に類似な材料を採用する。
【0120】
【表11】
【0121】
実施例13
内部親水性のPVDF膜の製造
重量基準で16%のPVDF HYLAR−461、12.8%のn−ブタノール、5.9%のPVP K−30、1.6%のPVP K−90、2.4%の水、および溶媒として61.3%のDMFを含む、流延用ドープから、内部親水性PVDF膜を作製した。この溶液は、37〜44℃にて温かい状態に保ち、ゲル化を防止した。膜を、キャスティングナイフを使用してポリエチレンコート紙の移動ベルト上に流延した。流延後、初期の膜を25〜27℃で相対湿度が80%〜100%である空気に、20秒間、曝露した。その後、膜を約55℃の温度を有する水浴でクエンチングした。
【0122】
凝固後、膜を脱イオン水で洗浄し、次いで風乾した。この膜は親水性であることが判った;この特性は、多数回、徹底的に洗浄した後でも、変化しなかった。SEMは、図5aおよび図5bに示すように、膜が高非対称性および微多孔性であることを示した。
水の流束および孔寸法を表11に示す。
【0123】
【表12】
【0124】
(均等物)
本発明を、その特定の態様に関連して説明したが、更なる変更が可能であることが理解され、一般に本発明の原理に従い、本発明が属する当該分野において公知または慣習的な実施の範囲内にあるような、また先に述べた本質的な特徴に適用され得るような、また本発明の範囲およびそのいずれの均等物にも含まれるような、本明細書の開示からの変更を伴って、本発明のいずれの変形、使用または適合をも本願発明は包含することを意図していることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1A】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1B】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1C】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図1D】比較する目的で膜の断面図を示す1組の走査型電子顕微鏡写真(SEM)であり:図1Aは、本発明の内部等方性PVDF膜であり(500倍);図1Bは、本発明の非対称性PVDF膜であり(1000倍);図1Cおよび図1Dは、CostarのPCT国際公開WO93/22034からSEMをコピーしたものであり、PVDF膜の断面構造を示す(3000倍)。
【図2A】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図2B】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図2C】図2は、本発明の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図2Aは断面図である(500倍)。図2Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図2Cは、粗い有孔表面を見たものである(500倍)。膜は約0.5μmの微多孔性表面孔寸法を有する。
【図3A】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図3B】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図3C】図3は、本発明の別の内部等方性膜を種々の方向から見たものを示す1組のSEMである。図3Aは断面図である(750倍)。図3Bは微多孔性表面を見たものである(1,500倍)。図3Cは、粗い有孔表面を見たものである(1,000倍)。膜は約2μmの微多孔性表面孔を有する。
【図4A】本発明の非対称性膜を示す1組のSEMである。図4Aは断面図である(1,000倍)。図4Bは、微多孔性表面を見たものである(5,000倍)。膜は、約0.45μmの微多孔性表面孔を有する。
【図4B】本発明の非対称性膜を示す1組のSEMである。図4Aは断面図である(1,000倍)。図4Bは、微多孔性表面を見たものである(5,000倍)。膜は、約0.45μmの微多孔性表面孔を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、当該膜は、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む第2表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分はポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料のフィラメント状ウェブを含み、当該ポリマー材料は当該膜を本質的に水で濡らし得るようにするのに十分な、一体的に配置された親水性ポリマーを有しており、当該親水性ポリマーは、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含む、膜。
【請求項2】
膜が限外濾過膜である請求項1の膜。
【請求項3】
100,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する請求項2の膜。
【請求項4】
10,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する請求項2の膜。
【請求項5】
前記最小の孔の直径が、0.01ミクロン〜3.0ミクロンである、請求項1の膜。
【請求項6】
膜が一体の非対称性構造を有し、前記第1平均直径は第前記2平均直径よりも小さく、前記多孔性支持体は前記フィラメント状ウェブに開口部を含み、当該開口部は前記第1表面から第2表面に向かって勾配を形成するように徐々に寸法が大きくなっている、請求項1の膜。
【請求項7】
前記第2平均直径と前記第1平均直径の比が、5〜10,000の間にある、請求項6の膜。
【請求項8】
重量基準で1%〜30%のポリビニルピロリドンを含む、請求項1の膜。
【請求項9】
ポリビニルピロリドンが45,000ダルトンの平均分子量を有する種類を更に含む、請求項8の膜。
【請求項10】
前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンが360,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項8の膜。
【請求項11】
ポリビニルピロリドンが45,000ダルトンの平均分子量を有する種類を更に含み、前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンが360,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項8の膜。
【請求項12】
膜に積層された支持材料を更に含む、請求項1の膜。
【請求項13】
支持材料がポリマー不織布である、請求項12の膜。
【請求項14】
膜が中空繊維である、請求項1の膜。
【請求項15】
10psidにて25〜500cm/分の水の流量を有する、請求項1の膜。
【請求項16】
0.5〜50psidの水のバブル・ポイントを有する、請求項1の膜。
【請求項17】
ポリビニルピロリドンが80,000ダルトン未満の平均分子量を有する種類を、更に重量基準で4%〜15%含む、請求項1の膜。
【請求項18】
前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンを、重量基準で0.5%〜4%含む、請求項1の膜。
【請求項19】
内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、当該膜は、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含み、当該膜は、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む反対側表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分は内部にフローチャンネルを有するポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料を含み、フローチャンネルの直径は、微多孔性表面に近接している第1領域内では第1平均直径に実質的に相当し、フローチャンネルの直径は、反対側表面に近接している第2領域内では第2平均直径に実質的に相当し、フローチャンネルの直径は、多孔性支持体の第1領域と多孔性支持体の第2領域との間の中間領域では実質的に一定で、第1領域内の直径と第2領域内の直径との中間の大きさであり、前記中間領域は当該膜の厚さの80%またはそれ以上を占める、膜。
【請求項20】
ポリビニルピロリドンが80,000ダルトン未満の平均分子量を有する種類を、更に重量基準で4%〜15%含む、請求項19の膜。
【請求項1】
内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、当該膜は、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む第2表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分はポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料のフィラメント状ウェブを含み、当該ポリマー材料は当該膜を本質的に水で濡らし得るようにするのに十分な、一体的に配置された親水性ポリマーを有しており、当該親水性ポリマーは、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含む、膜。
【請求項2】
膜が限外濾過膜である請求項1の膜。
【請求項3】
100,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する請求項2の膜。
【請求項4】
10,000ダルトンの分子量カットオフ値を有する請求項2の膜。
【請求項5】
前記最小の孔の直径が、0.01ミクロン〜3.0ミクロンである、請求項1の膜。
【請求項6】
膜が一体の非対称性構造を有し、前記第1平均直径は第前記2平均直径よりも小さく、前記多孔性支持体は前記フィラメント状ウェブに開口部を含み、当該開口部は前記第1表面から第2表面に向かって勾配を形成するように徐々に寸法が大きくなっている、請求項1の膜。
【請求項7】
前記第2平均直径と前記第1平均直径の比が、5〜10,000の間にある、請求項6の膜。
【請求項8】
重量基準で1%〜30%のポリビニルピロリドンを含む、請求項1の膜。
【請求項9】
ポリビニルピロリドンが45,000ダルトンの平均分子量を有する種類を更に含む、請求項8の膜。
【請求項10】
前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンが360,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項8の膜。
【請求項11】
ポリビニルピロリドンが45,000ダルトンの平均分子量を有する種類を更に含み、前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンが360,000ダルトンの平均分子量を有する、請求項8の膜。
【請求項12】
膜に積層された支持材料を更に含む、請求項1の膜。
【請求項13】
支持材料がポリマー不織布である、請求項12の膜。
【請求項14】
膜が中空繊維である、請求項1の膜。
【請求項15】
10psidにて25〜500cm/分の水の流量を有する、請求項1の膜。
【請求項16】
0.5〜50psidの水のバブル・ポイントを有する、請求項1の膜。
【請求項17】
ポリビニルピロリドンが80,000ダルトン未満の平均分子量を有する種類を、更に重量基準で4%〜15%含む、請求項1の膜。
【請求項18】
前記150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類のポリビニルピロリドンを、重量基準で0.5%〜4%含む、請求項1の膜。
【請求項19】
内部親水性のポリ二弗化ビニリデンポリマー膜であって、当該膜は、150,000〜360,000ダルトンの平均分子量を有する種類を含むポリビニルピロリドンを含み、当該膜は、最小の孔を含む第1表面、最大の孔を含む反対側表面、および表面の間に厚さ部分を有し、最小の孔は第1平均直径を有し、最大の孔は第2平均直径を有し、厚さ部分は内部にフローチャンネルを有するポリ二弗化ビニリデンを含むポリマー材料を含み、フローチャンネルの直径は、微多孔性表面に近接している第1領域内では第1平均直径に実質的に相当し、フローチャンネルの直径は、反対側表面に近接している第2領域内では第2平均直径に実質的に相当し、フローチャンネルの直径は、多孔性支持体の第1領域と多孔性支持体の第2領域との間の中間領域では実質的に一定で、第1領域内の直径と第2領域内の直径との中間の大きさであり、前記中間領域は当該膜の厚さの80%またはそれ以上を占める、膜。
【請求項20】
ポリビニルピロリドンが80,000ダルトン未満の平均分子量を有する種類を、更に重量基準で4%〜15%含む、請求項19の膜。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【公開番号】特開2009−39716(P2009−39716A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260836(P2008−260836)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願2000−549364(P2000−549364)の分割
【原出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【分割の表示】特願2000−549364(P2000−549364)の分割
【原出願日】平成11年5月18日(1999.5.18)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]