高密度、広帯域幅の多重ホログラフィックメモリ
ホログラフィックメモリシステムと装置、および多ビットホログラムをフォトリフラクティブ結晶に格納する能力を提供する方法。シングルレーザダイオードは、平行レーザ光を放出して、フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から多ビットデータのページを読み出すように構成される。多重空間光変調器(DMDSLM)は、多ビットデータのページを平行レーザ光から分割される入力光上に符号化するように構成される。第1の画像化リレーレンズの対は、多重空間光変調器とフォトリフラクティブ結晶との間に位置付けられ、多ビット空間光変調器画像をフォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化する。1つ以上のミラーは、平行レーザ光から分割される参照光を高速でフォトリフラクティブ結晶に誘導し、多ビットデータのページを読み出す、あるいは書き込むように設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の同時係属かつ同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法119条(e)項の利益を主張するものであり、この出願は本明細書に参考のために援用される:
2005年11月15日にTien−Hsin Chaoによって出願された米国仮特許出願第60/735,655号(代理人管理番号第176.32−US−P1/CIT−4524P号)。
【0002】
本願は、次の米国特許出願に関連し、これらの出願は本明細書に参考のために援用される:
2006年8月4日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、George F.Reyes、およびHanying Zhouによって出願された、題名「HOLOGRAPHIC MEMORY USING BEAM STEERING」の米国実用出願第11/462,495号(代理人管理番号第176.18−US−D1/CIT−3875D号)であり、この出願は2004年4月15日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、George F.Reyes、およびHanying Zhouによって出願された、題名「HOLOGRAPHIC MEMORY USING BEAM STEERING」の米国実用出願第10/824,722号(代理人管理番号第176.18−US−U1/CIT−3875号)の米国特許法120条の利益を主張し、さらに後者の出願は次の同時係属かつ同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法119条(e)項の利益を主張するものであり、これらの出願は本明細書に参考のために援用される:
2003年4月18日にTien−Hsin Chao、Hanying Zhou、およびGeorge F.Reyesによって出願された、題名「COMPACT HOLOGRAPHIC DATA STORAGE SYSTEM」の米国仮特許出願第60/463,821号(代理人管理番号第176.18−US−P1(CIT−3875−P)号)、および
2004年1月9日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、およびGeorge F.Reyesによって出願された、題名「HIGH DENSITY HIGH RATE HOLOGRAPHIC MEMORY USING A MEMS MIRROR BEAM STEERING DEVICE」の米国仮特許出願第60/535,205号(代理人管理番号第176.18−US−P2(CIT−3875−P2)号)。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発についての声明)
本願発明は、NASA契約に基づいた研究の実施において成され、契約者が所有権を保持すると定められた、一般法96−517(米国特許法202条)の規定に従うことを条件としている。
【0004】
(発明の分野)
本発明は、概してホログラフィに関し、具体的には超高密度・超広帯域幅ホログラフィックメモリに関する。
【背景技術】
【0005】
(関連技術の記載)
多くの装置(例えば、コンパクトディスクやデジタルビデオディスク)は、光を利用して、データの格納、読み出しを行なう。しかし、先行技術の光学式記憶方法では転送能力および容量が限定されている。この先行技術の不利な点を克服するために、ホログラフィックメモリが利用できる。ホログラフィックメモリは、記録媒体の表面下に情報を格納し、その記録媒体の体積を記憶に使用する。しかし、ホログラフィックメモリは、データの記録および/または記憶媒体からのデータの読み出しに関して、速度限界を有する場合がある。さらに、ホログラフィックメモリ密度も制限されている場合がある。これらの問題は、メモリと先行技術のホログラフィックメモリシステムのさらなる必要性を記載することにより、より理解され得る。
【0006】
パーソナルコンピュータおよび市販電子機器市場により推進される現在の技術は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、およびフラッシュメモリを具体化した様々なものを開発することに焦点を当てている。DRAMおよびSRAMは、ともに揮発性である。これらの密度は、ダイ当たり256Mビットに近い。最新の3Dマルチチップモジュール(MCM)実装技術は、最大100Gbの記憶容量を有するソリッドステートレコーダ(SSR)を作成するために使用されてきた。不揮発性であるフラッシュメモリは、急速に人気を得てきている。先行技術では、ダイ当たり256Mビットのフラッシュメモリ密度が存在する。高密度SSRも、3D MCM技術を用いて作成できる。しかし、フラッシュメモリは、克服できない2つの限界に直面している。1つは、耐久性の限界(読み出し/書き込みサイクルを繰り返した後の破損)、もう1つは放射線耐性の低さ(超高密度実装用の電源回路の簡易化による)である。
【0007】
NASAの将来の任務は、地球科学任務に対応するために、大容量の高速搭載データ記憶を必要とする可能性がある。地球科学観測に関しては、1999年のジェット推進研究所とゴダード宇宙飛行センター(GFSC)との共同研究(「高速データ転送機器研究」)は、ダウンリンク間に格納される搭載科学データ(ハイパースペクトルおよび合成アパーチャレーダーなどの高速データ転送機器によって収集されたデータ)は、2003年には最大40テラバイト(Tb)となると指摘していた。しかし、2003年の搭載記憶能力は、わずか4Tbと推定され、これは要求のわずか10%に過ぎない。記憶能力ははるかに遅れを取っており、現在、搭載記憶要求のわずか1%にしか対応しないと考えられる。
【0008】
その結果、先行技術の電子メモリは、NASA任務の需要を満たすことができない。したがって、必要とされるものは、不揮発性、耐放射線性、長期耐久性を満足し、同時に全てのNASA任務に要求される高密度、高転送速度、低電力、質量、および体積を満たす新しいメモリ技術である。
【0009】
体積ホログラフィは、主に高密度データ記憶技術とみなされてきた。体積ホログラフィでは、(コンパクトディスク[CD]および/またはデジタルビデオディスク[DVD]などでのように)表面領域を使用するだけであることに代えて、記録媒体の体積を記憶用に使用する。従来、レーザを発射する場合、光分割器を用いて2つの光を生成する。1つの光は、物体または信号光/波面と称され、生バイナリデータのページをクリアおよびダークボックスとして表示する空間光変調器(SLM)を通って進行する。バイナリコードのページからの情報は、信号光によって感光性ニオブ酸リチウム結晶(または、結晶の代わりにフォトポリマなどのその他のホログラフィック材料)に伝送される。第2の光は(光分割器により生成)、参照光と称され、結晶への別の経路を通って前進する。2つの光が出会うと、生成された干渉縞が、信号光によって伝送されたデータをホログラム(ホログラフィック格子とも称される)として結晶中の特定の領域に格納する。
【0010】
データを格納するために使用される参照光の角度によって、種々のデータのページを結晶の同じ領域に格納することができる。結晶に格納されたデータを取得するために、参照光は、そのデータのページを格納するために入射した時と全く同じ角度で、結晶内に投影される。参照光が、全く同じ角度で投影されないと、そのページ取得は失敗となる。光は、結晶によって回折されるので、特定の位置に格納されたページの再生成が可能になる。再生成されたページは、次に電荷結合装置(例えば、CCDカメラ)上に投影することができるが、これはデータを解釈し、コンピュータに転送することができる。
【0011】
したがって、上述のように、データが符号化された複雑な信号波面は、選択的かつコヒーレントな参照光への干渉によって、精巧なホログラフィック格子として媒体内部に記録される。信号波面は、同じ対応する参照光を用いて読み出すことによって、後に回復される。
【0012】
ブラッグの法則は、回折光強度は、回折光が空間的にコヒーレントであり、構造的に同相である場合にのみ有意であると定めている。ブラッグの法則を用いて、しばしば結晶によって分散された光の干渉縞が説明される。結晶の高い空間性と、波長のブラッグ選択性により、多数のホログラムを同じ体積の中に選択的に格納し、読み出すことができる。これにより、1波長当たり1ビットの立方体データ記憶の体積密度、およびホログラム当たり最大メガバイト台に至るデータの固有パラメータが可能となる。
【0013】
さらに、先行技術のホログラフィックメモリ密度は、バイナリホログラム(ピクセル値は、0か1のいずれか)を使用することによって、1テラバイトに到達し得る。そのようなシステムにより、最大1Gビット/秒の転送速度が達成できる。しかし、そのようなシステムは、現在の多くの記憶が必要とするよりも依然として少なくとも1桁小さい。
【0014】
そのようなシステムに使用される、先行技術のバイナリ値によるホログラムを用いた記憶密度と転送速度は、システムの体積および電力消費を著しく増加させずに、1桁上げることはできない。したがって、新規のホログラフィックメモリアーキテクチャは、密度/帯域幅の必要性を満たすと同時に、多くの用途(例えば、NASAや国防総省での用途)における体積/質量/電力消費制約に対応するために必要であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それ故に、先行技術は、上述のように、十分なメモリ能力を提供することができない。先行技術のホログラフィックメモリシステムは、そのような能力を提供することを目的として発展してきた。しかし、先行技術のホログラフィックメモリシステムは、記憶容量/密度、効率性、速度、耐放射線性などをさらに一層向上できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
数値的に記録し、光波面全体を再構成するための手法として、デジタルホログラフィは、計測学、ディスプレイ、データ記憶、および認証などの分野で非常に関心が高い。高い光スループットと良好な回折効率を示す高速空間光変調器は、デジタルホログラムの適切な光再構成を提供するために必要である。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態は、ホログラフィック媒体の記憶密度を著しく増加させる多重ホログラム記録および読み出しシステムを使用する。このことから、デジタルマイクロミラーデバイスSLM(あるいは可変ミラーデバイスSLM)(DMDSLMと称される)は、ミラーの物理的移動が原因で見られる悪影響を伴わずに、透過型LCDと比較して、優れた光スループット、回折効率、コントラスト、およびグレースケール範囲を提供するために用いられる。そのようなDMDSLMは、本発明の大きな利益を提供するために、バイナリあるいはパルス幅変調(PWM)のいずれかのモードで使用することができる。
【0018】
さらに、本発明は、入力光にDMDSLMを使用する能力と、参照光の高速光ステアリングとを組み合わせる。
【0019】
以上の点を考慮して、本発明のホログラフィックメモリシステムは、多ビットホログラム(multibit hologram)を格納するように構成されたフォトリフラクティブ結晶を使用する。シングルレーザダイオード(single laser diode)は、平行レーザ光を放出して、フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から多ビットデータのページを読み出すように構成される。多重空間光変調器は、多ビットデータのページを平行レーザ光から分割される入力光上に符号化するために使用される。第1の画像化リレーレンズの対は、多重空間光変調器とフォトリフラクティブ結晶との間に位置付けられ、フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面で、多ビット空間光変調器画像を画像化する。次に、ミラーを使用して、平行レーザ光から分割された参照光をフォトリフラクティブ結晶に高速で誘導し、多ビットデータのページを読み出す、あるいは書き込む。そのような高速光ステアリング装置は、液晶相アレイまたは微小電子機械システム(MEMS)ミラーのいずれかを備えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面を参照すると、同じ参照番号は、全体を通して一致する部分を表している。
【0021】
以下の記載において、その一部を成す添付の図面を照会するが、これは例として、本発明のいくつかの実施形態において示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、その他の実施形態を使用してもよく、構造を変更してもよいことを理解すべきである。
【0022】
(概要)
本発明の1つ以上の実施形態は、超高密度(テラバイト)と超広帯域幅(ギガビット/秒)ホログラフィックメモリのための、新しい概念とシステムアーキテクチャを提供する。多重ホログラム記録および読み出しシステムは、先行技術のバイナリホログラムの代わりに使用される。例えば、先行技術のホログラフィックメモリ密度は、バイナリホログラム(例えば、1ピクセル値は、0あるいは1のいずれか)を使用することによって、1テラバイトに到達できる。多重ホログラムを使用することによって、3ビット(8値)ホログラムを用いて、記憶密度を最大8テラバイトに増加させることができる。8ビットホログラムは、先行技術のシステムの体積、質量、および電力消費を著しく増加させることなく、記憶密度を256テラバイトに増加させることができる。
【0023】
(ホログラフィックデータ記憶)
上述のように、ホログラフィックデータ記憶は、フォトリフラクティブ結晶内の多数のホログラムに、データを格納する事ができる。ホログラムは、ページデータ(画像またはバイナリビット)を伝送するデータ光と参照レーザ光によって生じる光干渉縞を(立方体形フォトリフラクティブ結晶に)記録することによって形成される。これらの画像は、フーリエ領域に格納され、ホログラム内に3次元の膨大な冗長性が構築されるため、格納されたホログラムは、媒体内の欠陥あるいは点欠陥を起こすことがないであろう。
【0024】
LiNbO3フォトリフラクティブ結晶は、その均一性、高い電気光学係数、高い光感受性、および商業的入手性から、最も完成したホログラフィックメモリ用記録材料である。ホログラフィックデータ記憶を使用することの1つの独自の利点は、その耐放射線性である。フォトリフラクティブ結晶に格納されたホログラムは、放射線耐性であると実験的に実証されている。例えば、ニオブ酸リチウムホログラフィックメモリを空間に流入すると、取得された結晶は表面損傷を受けただけで、そのホログラム記録のための光感受性は保持された。
【0025】
(光ステアリング使用小型ホログラフィックメモリ)
ホログラフィックメモリシステムにおいて高速データ転送速度を達成するために必要な1つの重要な側面は、レーザ光ステアリング法である。種々の方法/システムを用いて、光ステアリング使用での速度を向上させることができる。
【0026】
(液晶光ステアリング素子)
本発明の1つ以上の実施形態による、液晶光ステアリング空間光変調器(BSSLM)は、高速光ステアリングに使用される。図1は、本発明の1つ以上の実施形態による、液晶BSSLMを使用した概略アーキテクチャを示している。アーキテクチャ100は、多重ホログラム記録のための書き込みモジュール102と、ホログラム読み出しのための読み出しモジュール104から成る。
【0027】
書き込みモジュール102は、コヒーレント光源としてのレーザダイオード106A、角度多重光ステアリングのための1対の縦続接続したBSSLM108(各対において、1つは透過型108A、1つは反射型108B)、記憶のデータ入力のためのデータSLM110、光形成のための2つの立方体形分割器107Aと107B、およびホログラム記録のためのフォトリフラクティブ結晶112を含む。
【0028】
読み出しモジュール104もフォトリフラクティブ結晶112を共有する。読み出しモジュールは、書き込みレーザダイオード106Aと同じ波長を有するレーザダイオード106B、位相共役読み出し光(読み出し光は、書き込み光と反対に向けられる)を生成するための1対の縦続接続したBSSLM113Aと113B、共有フォトリフラクティブ結晶112、立方体形光分割器、読み出しホログラムを記録するための光検出器アレイ114を含む。システムは、多重ホログラムを格納するための角度多重化方式と、各ホログラムを読み出すための位相共役光とを使用する。
【0029】
ホログラムの書き込みでは、平行レーザ光106Aが、第1の立方体形光分割器107Aで2つの部分に分割する。水平に偏向した光は、第2の立方体形光分割器107Bを横切って進行し、データSLM110に衝突した後、入力データを読み出す。データ伝送光109は、次にデータ書き込み光と同様にPR結晶112内に反射する。
【0030】
レーザ光111の残りの部分は、垂直に進行し、BSSLM108Aを通過してから、第2の反射型BSSLM108Bに反射する。両BSSLM108は、格子周期によって決定される角度偏向を伴う光ステアリングが可能な1次元ブレーズド位相格子である。2つのBSSLM108を直交に縦続接続することにより、2次元光ステアリングが達成できる。あるいは、単一の2D光ステアリングSLMを使用することもできる。偏向したレーザ光111は、PR結晶112に向けられ、干渉格子(ホログラム)を形成する。個々のホログラムは、それぞれ固有の参照角で書き込まれ、この角度(あるいはその共役角)でしか読み出されない。順次記録における参照光角度111を変えることにより、記録媒体に非常に多数のホログラムを記録することができる。
【0031】
ホログラムの読み出しについては、革新的な位相共役アーキテクチャが図1に示される。位相共役方式は、最低限の歪み(低いビット誤り率)で、レンズを使用しないホログラム読み出しを可能にする。図1に示されるように、透過型113Aおよび反射型113B BSSLMの第2の対は、位相共役読み出し光(書き込み参照光に対して)を提供するために用いられる。光がPR結晶112に衝突した後、記録されたホログラムから回折した光は、位相共役特性により、PR結晶112から出て入力データ光経路を引き返す。その後この光は、光学部品の焦点を合わせ、対応するデータページを再構成する必要なく、PR結晶112に記録および格納されたように、光検出器アレイ114に直接衝突する。
【0032】
(電気光学的光ステアリング)
本発明の代替実施形態では、図2に示されるような電気光学的光ステアリングを使用できる。平行レーザ光202は、まず偏光光分割器204Aに入射し、2つの光に分割される。入力光は、データSLM206、レンズ208A、ミラー210A、ミラー210B、ミラー210C、レンズ208Bを順次通過し、それからPRC214(Fe:LiNbO3フォトリフラクティブ結晶)に入射する。
【0033】
レンズの対208Aと208Bは、データSLM206のスループット画像をPRC214に中継するであろう。ミラーの組210A〜210Cは、光路長を折り畳み、長くし、参照光の長さと等しくする。
【0034】
参照光は、光分割器204Aを出射した後、光分割器204B、BSSLM212A、光分割器204B(再度)、レンズ208C、光分割器204C、BSSLM212B、光分割器204C(再度)、レンズ208Dを通過し、PRC214に到達する。
【0035】
データ光と参照光は、PRC214の体積内で交差し、90°の記録配列を形成する。両光は、入射面(参照および信号光によって形成される面)と直角の方向に偏光する。レンズの対208Cと208Dは、BSSLM212AをPRC214表面に中継する。BSSLM212Aは、C軸と平行に、水平面(またはx軸)に沿って参照光を走査する。BSSLM212Bは、参照光を垂直面(y軸、またはフラクタル面)に誘導する。ホログラフィックデータ記録において、入力データの各ページにより形成される干渉縞は、PR結晶214に記録される。参照光の角度(および位置)は、入力データのページごとに変更される。読み出しでは、データ光を中断し、参照光を作用させてPR結晶214を照射する。
【0036】
ホログラフィック波面再構成の原理によって、特定の参照光角度に対応する、格納されたページデータを読み出すことができる。読み出しデータ光は、PRC214から出射して、ミラー210Dとレンズ208Eを通過し、光検出器(PD)アレイ216に到達する。レンズの組208A、208B、および208Eは、入力SLM206をPDアレイ216に中継することに留意されたい。レンズの組によって生じる拡大率は、データSLM206とPDアレイ216のアスペクト比によって決定される。
【0037】
図2に図示されるように、直交配置に縦続接続した2つの1次元BSSLM212Aおよび212Bを用いることにより、ホログラフィックデータの高密度記録および取得を可能にするブレッドボード構成で、2次元角度フラクタル多重化方式が形成される。
【0038】
実験では、ホログラムは、まずx方向(面内)の角度変更により多重化され、y方向の角度は変更されなかった。1列のホログラムの記録が終了した後、y方向(入射面と直角)の角度が変更され、x方向の角度変更とともにホログラムの次の列が記録された。xおよびyの両角度変更は、完全にコンピュータ制御され、ランダムにアクセスできる。それにより、高品質ホログラムの長いビデオクリップの記録と取得を行なうことができる。
【0039】
電気光学的光ステアリング方式を使用することの利点には、機械的動作を伴わないこと、高い転送速度(1Gb/秒)、ランダムアクセスデータアドレス指定、低体積、および低電力がありうる。
【0040】
(光ステアリング空間光変調器)
上述のBSSLMは、セラミックPGA(ピン・グリッド・アレイ)キャリアのVLSI裏面上に実装された素子で実現できる。ネマチックツイスト液晶(NTLC)を充填した4096画素の1次元アレイは、SLM(空間光変調器)表面上に展開されている。素子の開口サイズは7.4μm×7.4μmであり、各画素の寸法は1.18μm×7.4μmである。そのような実施形態の応答時間は、200フレーム/秒に到達し得る。
【0041】
さらに、上記の実施形態におけるNTLCは、強誘電性液晶(FLC)と置き換えてもよい。FLCを使用すると、速度を1桁上げることができる(すなわち、>2000フレーム/秒)。
【0042】
上述のように、ホログラフィックデータ記憶の角度多重化のために、そのような電気光学的光ステアリング装置を使用することのいくつかの利点には、機械的に動作する部分がないこと、ランダムアクセスが可能な光ステアリング、低電圧/電力消費、大開口操作、AOベースの装置のように嵩張る周波数補償用光学部品が必要ないことが含まれる。
【0043】
上記に加え、カスタム位相−アレイプロファイルドライバを、BSSLMへの駆動プロファイルのダウンロードのためのLabView(商標)ベースのシステムHW/SW制御装置と共に使用してもよい。
【0044】
(ホログラフィックメモリの記憶容量および転送速度)
本発明の実施形態にしたがって、多様なサイズおよびタイプの素子を使用することができる。
【0045】
例えば、最大160,000ページ(すなわち、160Gbのメモリ)のホログラムを、それぞれの参照光に対して角度多重化を行なうための走査ミラーを用いて、体積1cm3のLiNbO3 PR結晶に格納できることが実証されている。しかし、機械的に制御される動作部を必要とする走査ミラー方式は、宇宙飛行には適さない。したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、高速かつ高解像度の全電気光学制御の角度多重化方式を提供することができる。この点から、上述のように、本発明は全位相光ステアリング装置BSSLMを使用することができる。
【0046】
透過型および反射型の両BSSLMを、高度ホログラフィックメモリ(AHM)システムに使用することができる。透過型BSSLM装置の例としては、約64の解像可能な点を有する1×1024アレイがある。反射型BSSLM装置の例としては、シリコンベースの1D回折光ステアリング装置がある。そのような反射型BSSLM装置は、およそ128の解像可能な点を有する1×4096アレイであってもよい。本発明の実施形態にしたがって、解像可能な点の数がより大きい(約180)装置を提供することもできる。したがって、縦続接続したBSSLMの解像可能な点の合計は、約11,520であってもよい。光ステアリングのために2つの縦続接続したBSSLMを使用することによって、合計10,000ページを超えるホログラムを、1立方センチメートルのPR結晶に保存し、読み出すことができる。各ページが約1000×1000画素のデータ(1Mバイト)を格納できることから、総記憶容量は、10ギガバイトに到達し得る。
【0047】
別の例では、開口サイズ7.4mm×7.4mmで、1×4096アレイを使用してもよい。あるいは、アレイサイズを2.5mm×2.5mm(1in2)に拡大してもよく、対応するアレイ密度は1×12000となる。したがって、解像可能な角度の数は、2666にまで増加する。
【0048】
上記の情報から、本発明のホログラフィックメモリ構成で使用される液晶BSSLMは、高密度ホログラフィック記憶にとって適切であり得ることがわかる場合がある。BSSLMの性能をさらにアップグレードすることにより、ホログラフィックメモリブレッドボードに記録できるホログラムの総数は、容易に20,000を超え得る。そのようなホログラフィックブレッドボードは、2000ホログラムをx次元(角度方向)の各列とy次元(フラクタル方向)の10列に記録することによって構成できる。
【0049】
そのようなホログラフィックメモリシステムの記憶容量は、アップグレードした電気光学的BSSLMを使用すると、1000画素×1000画素の入力ページの場合、20Gbを上回る。これは5000画素×5000画素の入力ページを使用すると、500Gbにまで増加する。さらに小型化すると、ホログラフィックメモリを5cm×5cm×1cmの立方体にまで縮小することが可能となる。そのようなホログラフィックメモリの立方体をメモリカード上に複数積み重ねることにより(例えば、1枚のカードに10×10の立方体)、カード1枚当たり2〜50Tbの記憶容量が達成できる。そのようなホログラフィックメモリシステムの転送速度は、200Mb/秒(1Mの画素ページで200ページ/秒)から5Gb/秒(25Mの画素ページで200ページ/秒)の範囲となり得る。
【0050】
(光学的パターンによる巨大記憶の必要性に対応するための高度ホログラフィックメモリ(AHM)技術の適用)
AHM技術は、光学的パターン認識システムによる巨大データ記憶の必要性に対応することができる。この関連で、グレースケール光相関器が、大規模に開発され、パターン認識に適用されてきた。本発明は、リアルタイム自動標的認識(ATR)のための小型グレースケール光相関器(GOC)302を提供する。図3に示されるように、そのような光相関器302は、入力された画像のインコヒーレント−コヒーレント変換に対し8ビットグレースケール解像度を有する液晶空間光変調器(LC SLM)304を採用してもよい。図3は、ホログラフィックに格納され、取得されたフィルタデータを用いて、リアルタイム光学的パターン認識を行なう、光相関器302のシステムアーキテクチャを示している。高密度ホログラフィックメモリ306からのグレースケールMACH(最大平均相関高)フィルタデータを含む読み出しデータは、GOC302のフィルタSLMドライバ308に直接送り込み、リアルタイムATRを可能にする。
【0051】
フーリエ変換面において、両極振幅(実数)SLMを用いて、相関フィルタを符号化することができる。能力を符号化する実数相関フィルタは、歪み不変相関計算のための非常に強力な最適フィルタ計算アルゴリズムである最大平均相関高(MACH)の使用を可能にしてきた。
【0052】
GOC302を用いる、より多用途のATRの主な限界のうちの1つは、電子メモリの厳しいサイズ制限である。そのようなGOC302は、1000フレーム/秒の速度で相関フィルタを更新することができる。各フィルタは、512画素×512画素から成り、8ビットグレースケール解像度を有する。したがって、相関器302を全速で作動させるために、フィルタのデータスループットは、2ギガビット/秒となるであろう。転送速度は、磁気ハードディスクをはるかに上回る。SDRAMのみが、適切なデータ転送速度で使用できる。しかし、適当な数である1000フィルタを搭載するには、2ギガビットのSDRAMメモリを必要とするであろう。メモリボードのサイズと電力消費は、空および宇宙を運ばれるシステムにとっては過剰であり、対応できない。したがって、本発明は、GOC302を使用するリアルタイムパターン認識のための代替的なメモリソリューションとして、ホログラフィックメモリ306を使用する。
【0053】
更新可能な光相関器用にホログラフィックメモリシステムを使用することの固有の利点には、高い記憶密度、ランダムアクセス、高いデータ転送速度、およびグレースケール画像記憶能力がある。これら3つの特徴は全て、GOC302のメモリ要件を十分に満たす。
【0054】
(ホログラフィックメモリを備える光相関器を用いた光学的パターン認識の実験的検証)
本発明の1つ以上の実施形態は、光学的に実装されたMACH(最大平均相関高)相関フィルタを備えるポータブルGOCを用いる。
【0055】
実験的検証により、リアルタイム光学的パターン認識が説明されている。そのような実験的試験において、カムコーダサイズのGOCを使用して、リアルタイムパターン認識を行なうことができるCHDS(小型ホログラフィックデータ記憶)ブレッドボードを使用して、MACH相関フィルタの格納、読み出しを行なうことができる。この実験ステップは、以下のように説明できる。まず、MACH相関フィルタを作成するために、1組のトレーニング画像を選択することができる。次に、これらのMACHフィルタをCHDSブレッドボード内に記録し、続いてGOCのフィルタドライバ内に読み出し、ダウンロードしてよい。取得されたホログラフィックフィルタ画像のダイナミックレンジは、次に、慎重に保存することで、8ビット解像度を保持することができる。
【0056】
リアルタイム光学的パターン認識走操作では、図3に示されるように、大きなMACH相関フィルタデータバンクが、まず音響に基づくホログラフィックメモリ306に格納されるであろう。読み出しホログラフィックデータは、次にGOC302のフィルタSLMドライバ308に直接送り込まれ、高速フィルタ更新の必要に対応する。
【0057】
ホログラフィックに取得されたMACHフィルタ画像が、GOC302のフィルタSLM308内にダウンロードされた後、以前の飛行試験で記録された入力場面のビデオを入力SLM304送り込むことができる。入力された標的に関連する、種々の回転、スケール、視点での鋭利な相関ピークを、相関出力から得ることができる。
【0058】
(1Dおよび2D電気光学的光ステアリングを備えるホログラフィックメモリブレッドボード)
本発明の1つ以上の実施形態は、ブックサイズの1Dホログラフィックメモリブレッドボードに実装してもよい。そのような実装は、光ステアリングにBSSLM装置を使用して、ホログラフィックデータの記録および取得における多重化の必要性を満たすことの実行可能性を実証できる。さらに、そのようなシステムは、単一のBSSLMを使用してもよく、角度多重化のための1D光ステアリングを実証することができる。上記に加え、典型的なそのようなシステムは30cm×20cm×5cmでよく、これは電話帳のサイズである。
【0059】
あるいは、実施形態は、2D電気光学的な角度−フラクタル光ステアリングを備えるCDサイズの小型ホログラフィックメモリブレッドボードに実装してもよい。そのようなCDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードは、10cm×10cm×1cmの非常に小型のホログラフィックメモリモジュールとすることができる。コンパクトサイズのVLSIベースのBSSLMは、光学部品の高度な設計を伴って、システムの体積をブックサイズからCDサイズへと大幅に縮小できる。そのようなブレッドボードは、10GBのホログラフィックデータを記録することができる。さらに、このシステム設計は、アップグレードバージョンが利用可能な場合に、キーデバイスの容易な置換を可能にする。そのようなキーデバイスには、空間光変調器、BSSLM、およびPD(光検出器)アレイが含まれる。さらに、システム記憶容量は、高解像度BSSLMの使用により、2桁増加することができる。
【0060】
CDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードは、包括的なLabViewベースのシステム制御装置を備えて作成することができる。したがって、システムを完全統合した上で自律的なデータ記録および取得が可能である。
【0061】
したがって、上述のように、高度ホログラフィックメモリ技術を使用して、データ記録および読み出し時にランダムアクセスできる、高密度・高速ホログラフィックデータ記憶を可能にできる。液晶光ステアリング装置を使用することによって達成される革新的なE−O(電気光学的)光ステアリング方式が、これまで示されてきた。さらに、CDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードを統合して使用し、ホログラフィックデータを記録および取得することもできる。そのようなブレッドボードは小型であり、入力ページのサイズに応じて、10Gb〜250Gbの範囲の記憶容量を有する。
【0062】
(高速光ステアリング用MEMSミラー)
液晶(LC)BSSLM位相アレイは、小型ホログラフィックメモリブレッドボードにおける高速光ステアリングのための使用には成功してきたが、光スループットの効率性を改善することは有益であろう。LC BSSLMにおける位相アレイによるスループット光の光回折によって、多数の回折次数(回折したレーザ光の第1次数以外)が存在するが、これらはホログラム記録に使用される。1次で100%回折効率を達成することは非常に困難なため、相当の量のレーザ光エネルギーが、ゼロ次および高次の回線に拡散する。高次光はスプリアス干渉を引き起こし、しばしば記録されたホログラムの信号対雑音比を低下させる。
【0063】
したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、光ステアリング装置として、回折の代わりに光偏向を使用する高速走査ミラーを提供する。先行技術は、レーザ光ステアリング目的でのガルバノメータ制御ミラーの使用を説明している。しかし、ガルバノメータミラーは相当な質量を有するため、その走査速度が厳しく制限される可能性がある(例えば、ビデオ速度程度)。先行技術の限界を考慮して、本発明は、小型ホログラフィックメモリシステムにおける高速光ステアリングのために、新たなMEMS(微小電子機械システム)ミラー技術の使用を提供する。
【0064】
微小電子機械システム(MEMS)は、微細加工技術によって、機械構成部品、センサ、アクチュエータ、および電子装置を一般的なシリコン基板上で統合したものである。電子装置は、集積回路(IC)処理シーケンス(例えば、CMOS、バイポーラ、またはBICMOS処理)を用いて加工されるが、微小機械構成部品は、互換性のある「マイクロマシニング」プロセスを用いて加工される。このプロセスでは、シリコンウエハーの一部を選択的にエッチングで取り除く、あるいは新しい構造層を追加して、機械および電気機械素子を形成する。
【0065】
MEMSマイクロミラーは、微視的世界にまで「縮小」されたミラーである。そのようなMEMSマイクロミラーは、光ファイバの分野での適用を含め、種々の使途が可能である。あるいは、MEMSマイクロミラーは、ホログラフィックメモリシステムにおける光ステアリングに使用することもできる。
【0066】
これらのマイクロミラーの加工方法は、片持ち梁構造の加工方法と類似している(あるいは同一である)が、プロセスが完了した後、アルミニウムなどの反射層を梁の上に置いてもよい点が異なる。
【0067】
MEMSマイクロミラーは、ミラーの誘導に静電アクチュエーションを使用する。正電荷と負電荷は互いを誘引する(また、同じ電荷は反発する)ため、片持ち梁を形成して、その上に交互の正−負電荷を付与している間に正電荷を維持できれば、静電気によって、片持ち梁が上下に共振する。
【0068】
上記を考慮すると、MEMSミラーは、ホログラフィックメモリシステムにおける光ステアリング装置として、魅力的となりうる。光ステアリング装置としてMEMSミラーを使用することの利点には、高い光スループットの効率性(>99%反射力)、優れた光質(ミラーから反射した光は、回折光ステアリング装置のように、スプリアス回折を生成しない)、低質量、および高速が挙げられる。
【0069】
光ステアリングにMEMSミラーを使用するホログラフィックメモリシステムアーキテクチャが、図4Aに示されている。システム配置の詳細は、平行レーザ光400がまず偏光光分割器402に入射し、出射する際に2つの光に分割されることを示している。入力光は、データSLM(空間光変調器)404、および画像リレーレンズの対406A〜406B(それぞれ焦点距離f1およびf2を有するレンズL1およびL2とも称される)を順次通過し、それから鉄ドープニオブ酸リチウム(Fe:LiNbO3)のフォトリフラクティブ結晶(PRC)408に衝突する。画像化リレーレンズの対406A〜406Bを使用して、入力SLM404の画像サイズを測定し、PRC408の入力瞳のサイズと一致させる。画像化リレーレンズの対406A〜406Bは、PRC408の裏側に設置されたCCD410の記録面上で、入力SLM404画像を鮮明に画像化することもできる。
【0070】
PRC408は、大容量の書換可能なホログラフィックメモリ記録が可能なホログラフィック記録装置である。他方の光(参照光)は、まず画像化リレーレンズの対406C〜406D(それぞれレンズL3およびL4とも称される)を通過してから、MEMSミラー412に衝突する。レーザ光は、次にMEMSミラー412によって、既定の増分角度だけ偏向される。偏向された参照光は、継続して第3の画像化リレーレンズの対406E〜406F(それぞれレンズL5およびL6とも称される)を通過し、PRC408に到達する。参照光とデータ光は、PRC408の体積内で交差し、90°の記録配列を形成する。レンズの対406C〜406Dの焦点長さ/距離(例えばf3+f4)および開口サイズは、入力SLM404の開口とMEMSミラー412の開口とのスケール差を補正するように選択する。同様に、レンズの対406E〜406Fは、MEMSミラー412とPRC408入射瞳とのスケール差に一致するように選択した寸法(例えば、焦点距離f5およびf6)を有する。
【0071】
MEMSミラー412は、C軸と平行に、水平面(x軸)に沿って参照光を走査する。ホログラフィックデータを記録するとき、MEMSミラー412から偏向された角度は、それぞれの新しいデータページに対して、わずかな増分だけ変更される。したがって、各ページの入力データ光と特異的に配向された参照光との間に形成された干渉縞は、角度多重化方式でPR結晶408に記録される。
【0072】
読み出しにおいては、データ光は中断され、参照光を作用させてPR結晶408を照射する。ホログラフィック波面再構成の原理によって、特定の参照光角度に対応する、格納されたページデータが読み出される。読み出しデータ光は、CCD410記録面上で鮮明に画像化される。
【0073】
(多重空間光変調器)
本発明の1つ以上の実施形態は、多重(複数相)空間光変調器を使用する。そのようなSLMの例には可変ミラーデバイスがあるが、これはデジタルマイクロミラーデバイス(DMDSLM)とも称され、Texas Instrumentsから入手可能である。ここで使用するDMDSLMという用語は、全ての形式の複数相空間光変調器を指し、これには可変ミラーデバイスまたはデジタルマイクロミラーデバイスも含まれる。
【0074】
本発明のホログラフィックメモリシステムアーキテクチャは、最大12ビットの高速データ入力変換のためのDMDSLM、データ読み出しと転送のための適合するCMOS光検出器アレイ、さらに光ステアリングのための動作部分を伴わない光ステアリング装置(上述のような液晶相アレイまたは高速MEMSミラー)、ホログラフィックデータ記録のためのフォトリフラクティブ結晶、および関連する画像/光形成用光学部品を使用する。先行技術のバイナリ(2層)SLMの代わりに、時間多重化および多重DMDSLMを使用することにより、多ビットホログラムを記録し、システムの体積を増加させずに、記憶密度を増加させることができる(3ビットホログラムでは8倍増加、8ビットホログラムでは256倍増加)。DMDSLMは、優れた転送速度(7.6Gビット/秒以上)に関する能力も提供する。したがって、その結果得られるホログラムメモリシステムは、高密度、広帯域幅、および少ない体積を同時に実現する。
【0075】
図4Bは、本発明の1つ以上の実施形態による、多重ホログラフィックメモリシステムを示している。図示されているように、青色レーザアセンブリは、レーザを放出し、これはコリメータを通過して、平行光を生成する。平行光は、ミラーM5およびM6で反射して、光分割器に到達する。参照光は、画像リレーレンズの対f5とf6、およびミラーf1を通過して高速光ステアリングミラーに到達する。その後、光は画像化リレーレンズの対f3およびf4を通過し、PRCに到達する。データ/入力光は、光分割器からDMDSLM(例えば、Texas Instruments(商標)による)、ミラーM4、画像リレーレンズの対f1anおよびf1bへと通過する。このデータ/入力光は、ミラーM2によって反射され、PRCに到達し、ここで干渉縞の形で多ビット/多重ホログラムを記録することができる。焦点長さの違いが、適宜図面に示されている。図示されているように、画像化リレーレンズの対f1a/f1bは、多重空間光変調器とフォトリフラクティブ結晶との間に位置付けられ、多ビット空間光変調器画像をフォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化する。
【0076】
データを読み出すためには、入力光(PRCの格納された多ビットデータを含む)は、PRCから反射され、画像リレーレンズの対f2A/f2Bを通過し、ミラーM3へ、そしてBasler CMOSセンサ上へと到達する。
【0077】
図5は、本発明の1つ以上の実施形態による、デュアルチャネル・多重ホログラムメモリシステムを示している。システム500中に示されるように、入力データは、青色ダイオードレーザ光502(データ光)と参照光504とに分割される。データ光502は、DMDSLMの対(DMDSLM#1およびDMDSLM#2)を通過して、多重/多ビット光を生成する。この多重/多ビット光は、画像化リレーレンズの対506として図示される光学部品を経由して、ブロック型フォトリフラクティブ結晶(PRC508)上で集束される。参照光504は、走査ミラー510を経由して、PRC508に向けられ、そこで複数層/ビットで干渉縞が記録される。
【0078】
データを読み出すためには、参照光504を用いてPRC508を照射し、その出力がCMOSセンサ506上に記録される。
【0079】
上記を考慮して、DMDSLMは、ホログラフィックメモリシステム/立方体500への入力装置として使用される。そのようなDMDの使用により、7.6Gb/秒の転送速度が提供されるが、これは先行技術の強誘電性液晶SLMの約8倍の速度である。さらに、DMDSLMは、2000:1のハイコントラストで、8〜10ビットグレースケール解像度を処理できるため、PRC508内での多重デジタルホログラムを可能にする。そのような多重ホログラムは、3ビット解像度を維持する。したがって、データ記憶密度は、1ビット/画素から8ビット/画素(1バイト/画素)へと増加し、その結果、先行技術では775GBであったのに対し、6.2テラバイトの記録を可能とする。
【0080】
図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できるDMDSLMの写真を示している。そのようなDMDSLMは、先行技術のデジタル光プロセッサ(DLP)に使用されてきた。DLP技術は、ハイコントラストを備え、明るく、シームレスで、かつデジタル制御のみが達成できるカラーおよびグレースケールの精度を有する、デジタル・高解像度・カラー投影型ディスプレイを可能にする。DLPシステムでは、DMDのそれぞれのミラーが画素を表す。DMDの合計サイズを用いると、16平方μm(16μm×16μm)の各ミラーが1.64cm×1.23cmの開口サイズを実現することにより、1024画素×768画素の解像度が実現できる。さらに、DLPシステムにおいて、8または10ビット解像度と、7.6Gb/秒(または最大9.7Gb/秒)のデータ転送/スループット速度とを利用することができる。そのようなスループットは、バイナリデータでは9,700fps、3ビットデータでは1,220fps、8ビットデータでは38fpsを提供する。さらに、高精細度(1920×1080解像度)では、20.1Gb/秒のスループット速度が可能である。図7は、本発明の1つ以上の実施形態による、デジタルビットの機能としての最大フレームレートを示している。図示されているように、ビット/フレーム数が増加すると、最大フレームレートは減少する。
【0081】
また図8は、先行技術の高精細度テレビおよび投影型ディスプレイ(DLPシステム)で使用されるDMD装置を図解している。さらに、図8は、バイナリ・パルス幅変調方式の例である。この簡単な例では、DMDアレイは、一定強度の光(図示せず)で照射され、4ビットワードのみがアレイに入力され、16の可能なグレーレベルを表している。投影レンズは、各画素から反射した光を遠隔にある投影画面上で集束、増幅させる。明確にするために、中央列のみがアドレス指定されている。その他は暗状態(0000)にアドレス指定されたと仮定される。各ライトスイッチのメモリ要素に、電気的ワードを各ワードの最上位のビット(MSB)から始めて、1ビットずつ入力する。
【0082】
アレイ全体のライトスイッチがMSBでアドレス指定ができると、個々の画素が有効になり(リセットされ)、それらのMSB状態(1または0)に対応して応答することができる。各ビット時間中に、次のビットがメモリアレイに読み出される。各ビット時間の終了時に、画素はリセットされ、次のアドレスビットに対応して応答する。このプロセスは、全てのアドレスビットがメモリに読み出されるまで繰り返される。
【0083】
入射光はライトスイッチから反射し、電気的ワードの各ビットに表される継続時間を有する光束に切り替え、あるいは変調される。観察者にとっては、この光束は、4ビットの入力ワードの値に表される一定強度を有する光を身体で感じる目の積分時間と比較して、非常に短い時間に発生する。
【0084】
上記を考慮して、図9に図示されるような、本発明のホログラフィックメモリに使用できるDMDSLMの詳細アーキテクチャを検討することができる。各画素のアドレス回路と電気機械的上部構造は、16平方μmのアルミニウムマイクロミラーの+10°からp;10°までの高速かつ正確な回転という、1つの単純な機能に対応している。図8には、2つの画素のアーキテクチャが図解されているが、ここでは下部の構造が見えるよう、ミラーは半透明で示されている。DMD画素は、CMOS SRAMセル/基板上に加工された、モノリシックに集積したMEMS上部構造セルである。犠牲層のプラズマエッチングにより、上部構造の金属層間に空隙が形成される。この空隙により、構造は、2つの弾性トーションヒンジを中心に自由に回転できる。ミラーは下部のヨークに接続されるが、これらは、2つの薄いトーションヒンジによって浮き上がり、ポストを支持している。ヨークは、下部のヨークアドレス電極に静電気により付着される。ミラーは、ミラーアドレス電極に静電気により付着される。ミラーとヨークは、ヨークが、ヨークと同電位の機械的ストッパに当って停止するまで回転する。機械的ストッパの位置は、ミラーの回転角度を+10°または−10°に制限する。
【0085】
下記の表1は、本発明の1つ以上の実施形態による、多重デジタルホログラム用いたデータ転送速度を示している。表1に記載の装置には、Texas Instruments製のDMDSLM、Red Lake(商標)製のCMOSセンサ、Chromux(商標)製のMEMSミラーが含まれる。
【0086】
【表1】
表2は、本発明の1つ以上の実施形態による、多重デジタルホログラムを用いた記憶密度を示している。
【0087】
【表2】
(論理フロー)
図10は、多ビットデータをホログラフィックメモリに格納するための方法を示すフローチャートである。ステップ1000では、シングルレーザダイオードが、フォトリフラクティブ結晶に多ビットホログラムを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から多ビットホログラムを読み出すために、平行レーザ光を放出する。ステップ1002では、平行レーザ光が、参照光と入力光に分割される。
【0088】
ステップ1004では、多重空間光変調器(DMDSLM)が、多ビットデータのページを平行レーザ光から分割される入力光上に符号化する。ステップ1006では、多重空間光変調器とPRCとの間に設置された第1の画像化リレーレンズの対が、PRCの裏側の平面に、入力光(符号化されたデータを有する)(多ビット空間光変調器画像とも称される)を誘導/集束させる。上述のように、DMDSLMは、デジタルマイクロミラーデバイスであってもよい(例えば、Texas Instrumentsから入手可能)。
【0089】
ステップ1008では、1つ以上のミラーを用いて、平行レーザ光から分割された参照光を高速でPRCに誘導し、多ビットデータのページを読み出す、あるいは書き込む。そのようなミラーは、液晶相アレイまたは高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーであってもよい。結果として、ステップ1010では、多ビットホログラムがPRCに格納される(参照光と入力光による干渉縞に基づく)。
【0090】
(結論)
ここで本発明の好ましい実施形態の説明を終了する。本発明の実施形態にしたがって、多重ホログラムによる高度ホログラフィックメモリ技術を用いて、データの記録および読み出し中のランダムアクセスが可能な、高密度・高速ホログラフィックデータ記憶を実現することができる。
【0091】
本発明の好ましい実施形態についての上記の説明は、例証と説明の目的で提示してきた。これは包括的なものではなく、本発明を開示される正確な形式に限定するものではない。上記の教示を踏まえ、多くの修正および変更が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によっても、また添付の特許請求の範囲によっても制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の1つ以上の実施形態による、液晶BSSLMを使用する概略アーキテクチャを示している。
【図2】図2は、本発明の1つ以上の実施形態による、電気光学的光ステアリングを示している。
【図3】図3は、本発明の1つ以上の実施形態による、リアルタイム光学的パターン認識のために、ホログラフィックに格納され、取得されたフィルタデータを使用する光相関器のシステムアーキテクチャを示している。
【図4A】図4Aは、本発明の1つ以上の実施形態による、光ステアリングのためのMEMSミラーを使用する、ホログラフィックメモリシステムアーキテクチャを示している。
【図4B】図4Bは、本発明の1つ以上の実施形態による、DMDSLMを使用する、ホログラフィックメモリシステムアーキテクチャを示している。
【図5】図5は、本発明の1つ以上の実施形態による、デュアルチャネル・多重ホログラムメモリシステムを示している。
【図6A】図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できる、DMDSLMの写真を示している。
【図6B】図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できる、DMDSLMの写真を示している。
【図7】図7は、本発明の1つ以上の実施形態による、デジタルビットの機能として、最大フレームレートを示している。
【図8】図8は、先行技術の高精細度テレビおよび投影型ディスプレイ(DLPシステム)に使用される、DMD素子を示している。
【図9】図9は、本発明の1つ以上の実施形態による、ホログラフィックメモリに使用できるDMDSLMの詳細アーキテクチャを示している。
【図10】図10は、本発明の1つ以上の実施形態による、多ビットデータをホログラフィックメモリに格納するための方法を示すフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、次の同時係属かつ同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法119条(e)項の利益を主張するものであり、この出願は本明細書に参考のために援用される:
2005年11月15日にTien−Hsin Chaoによって出願された米国仮特許出願第60/735,655号(代理人管理番号第176.32−US−P1/CIT−4524P号)。
【0002】
本願は、次の米国特許出願に関連し、これらの出願は本明細書に参考のために援用される:
2006年8月4日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、George F.Reyes、およびHanying Zhouによって出願された、題名「HOLOGRAPHIC MEMORY USING BEAM STEERING」の米国実用出願第11/462,495号(代理人管理番号第176.18−US−D1/CIT−3875D号)であり、この出願は2004年4月15日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、George F.Reyes、およびHanying Zhouによって出願された、題名「HOLOGRAPHIC MEMORY USING BEAM STEERING」の米国実用出願第10/824,722号(代理人管理番号第176.18−US−U1/CIT−3875号)の米国特許法120条の利益を主張し、さらに後者の出願は次の同時係属かつ同一人に譲渡された米国仮特許出願の米国特許法119条(e)項の利益を主張するものであり、これらの出願は本明細書に参考のために援用される:
2003年4月18日にTien−Hsin Chao、Hanying Zhou、およびGeorge F.Reyesによって出願された、題名「COMPACT HOLOGRAPHIC DATA STORAGE SYSTEM」の米国仮特許出願第60/463,821号(代理人管理番号第176.18−US−P1(CIT−3875−P)号)、および
2004年1月9日にTien−Hsin Chao、Jay C.Hanan、およびGeorge F.Reyesによって出願された、題名「HIGH DENSITY HIGH RATE HOLOGRAPHIC MEMORY USING A MEMS MIRROR BEAM STEERING DEVICE」の米国仮特許出願第60/535,205号(代理人管理番号第176.18−US−P2(CIT−3875−P2)号)。
【0003】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発についての声明)
本願発明は、NASA契約に基づいた研究の実施において成され、契約者が所有権を保持すると定められた、一般法96−517(米国特許法202条)の規定に従うことを条件としている。
【0004】
(発明の分野)
本発明は、概してホログラフィに関し、具体的には超高密度・超広帯域幅ホログラフィックメモリに関する。
【背景技術】
【0005】
(関連技術の記載)
多くの装置(例えば、コンパクトディスクやデジタルビデオディスク)は、光を利用して、データの格納、読み出しを行なう。しかし、先行技術の光学式記憶方法では転送能力および容量が限定されている。この先行技術の不利な点を克服するために、ホログラフィックメモリが利用できる。ホログラフィックメモリは、記録媒体の表面下に情報を格納し、その記録媒体の体積を記憶に使用する。しかし、ホログラフィックメモリは、データの記録および/または記憶媒体からのデータの読み出しに関して、速度限界を有する場合がある。さらに、ホログラフィックメモリ密度も制限されている場合がある。これらの問題は、メモリと先行技術のホログラフィックメモリシステムのさらなる必要性を記載することにより、より理解され得る。
【0006】
パーソナルコンピュータおよび市販電子機器市場により推進される現在の技術は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、およびフラッシュメモリを具体化した様々なものを開発することに焦点を当てている。DRAMおよびSRAMは、ともに揮発性である。これらの密度は、ダイ当たり256Mビットに近い。最新の3Dマルチチップモジュール(MCM)実装技術は、最大100Gbの記憶容量を有するソリッドステートレコーダ(SSR)を作成するために使用されてきた。不揮発性であるフラッシュメモリは、急速に人気を得てきている。先行技術では、ダイ当たり256Mビットのフラッシュメモリ密度が存在する。高密度SSRも、3D MCM技術を用いて作成できる。しかし、フラッシュメモリは、克服できない2つの限界に直面している。1つは、耐久性の限界(読み出し/書き込みサイクルを繰り返した後の破損)、もう1つは放射線耐性の低さ(超高密度実装用の電源回路の簡易化による)である。
【0007】
NASAの将来の任務は、地球科学任務に対応するために、大容量の高速搭載データ記憶を必要とする可能性がある。地球科学観測に関しては、1999年のジェット推進研究所とゴダード宇宙飛行センター(GFSC)との共同研究(「高速データ転送機器研究」)は、ダウンリンク間に格納される搭載科学データ(ハイパースペクトルおよび合成アパーチャレーダーなどの高速データ転送機器によって収集されたデータ)は、2003年には最大40テラバイト(Tb)となると指摘していた。しかし、2003年の搭載記憶能力は、わずか4Tbと推定され、これは要求のわずか10%に過ぎない。記憶能力ははるかに遅れを取っており、現在、搭載記憶要求のわずか1%にしか対応しないと考えられる。
【0008】
その結果、先行技術の電子メモリは、NASA任務の需要を満たすことができない。したがって、必要とされるものは、不揮発性、耐放射線性、長期耐久性を満足し、同時に全てのNASA任務に要求される高密度、高転送速度、低電力、質量、および体積を満たす新しいメモリ技術である。
【0009】
体積ホログラフィは、主に高密度データ記憶技術とみなされてきた。体積ホログラフィでは、(コンパクトディスク[CD]および/またはデジタルビデオディスク[DVD]などでのように)表面領域を使用するだけであることに代えて、記録媒体の体積を記憶用に使用する。従来、レーザを発射する場合、光分割器を用いて2つの光を生成する。1つの光は、物体または信号光/波面と称され、生バイナリデータのページをクリアおよびダークボックスとして表示する空間光変調器(SLM)を通って進行する。バイナリコードのページからの情報は、信号光によって感光性ニオブ酸リチウム結晶(または、結晶の代わりにフォトポリマなどのその他のホログラフィック材料)に伝送される。第2の光は(光分割器により生成)、参照光と称され、結晶への別の経路を通って前進する。2つの光が出会うと、生成された干渉縞が、信号光によって伝送されたデータをホログラム(ホログラフィック格子とも称される)として結晶中の特定の領域に格納する。
【0010】
データを格納するために使用される参照光の角度によって、種々のデータのページを結晶の同じ領域に格納することができる。結晶に格納されたデータを取得するために、参照光は、そのデータのページを格納するために入射した時と全く同じ角度で、結晶内に投影される。参照光が、全く同じ角度で投影されないと、そのページ取得は失敗となる。光は、結晶によって回折されるので、特定の位置に格納されたページの再生成が可能になる。再生成されたページは、次に電荷結合装置(例えば、CCDカメラ)上に投影することができるが、これはデータを解釈し、コンピュータに転送することができる。
【0011】
したがって、上述のように、データが符号化された複雑な信号波面は、選択的かつコヒーレントな参照光への干渉によって、精巧なホログラフィック格子として媒体内部に記録される。信号波面は、同じ対応する参照光を用いて読み出すことによって、後に回復される。
【0012】
ブラッグの法則は、回折光強度は、回折光が空間的にコヒーレントであり、構造的に同相である場合にのみ有意であると定めている。ブラッグの法則を用いて、しばしば結晶によって分散された光の干渉縞が説明される。結晶の高い空間性と、波長のブラッグ選択性により、多数のホログラムを同じ体積の中に選択的に格納し、読み出すことができる。これにより、1波長当たり1ビットの立方体データ記憶の体積密度、およびホログラム当たり最大メガバイト台に至るデータの固有パラメータが可能となる。
【0013】
さらに、先行技術のホログラフィックメモリ密度は、バイナリホログラム(ピクセル値は、0か1のいずれか)を使用することによって、1テラバイトに到達し得る。そのようなシステムにより、最大1Gビット/秒の転送速度が達成できる。しかし、そのようなシステムは、現在の多くの記憶が必要とするよりも依然として少なくとも1桁小さい。
【0014】
そのようなシステムに使用される、先行技術のバイナリ値によるホログラムを用いた記憶密度と転送速度は、システムの体積および電力消費を著しく増加させずに、1桁上げることはできない。したがって、新規のホログラフィックメモリアーキテクチャは、密度/帯域幅の必要性を満たすと同時に、多くの用途(例えば、NASAや国防総省での用途)における体積/質量/電力消費制約に対応するために必要であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
それ故に、先行技術は、上述のように、十分なメモリ能力を提供することができない。先行技術のホログラフィックメモリシステムは、そのような能力を提供することを目的として発展してきた。しかし、先行技術のホログラフィックメモリシステムは、記憶容量/密度、効率性、速度、耐放射線性などをさらに一層向上できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
数値的に記録し、光波面全体を再構成するための手法として、デジタルホログラフィは、計測学、ディスプレイ、データ記憶、および認証などの分野で非常に関心が高い。高い光スループットと良好な回折効率を示す高速空間光変調器は、デジタルホログラムの適切な光再構成を提供するために必要である。
【0017】
本発明の1つ以上の実施形態は、ホログラフィック媒体の記憶密度を著しく増加させる多重ホログラム記録および読み出しシステムを使用する。このことから、デジタルマイクロミラーデバイスSLM(あるいは可変ミラーデバイスSLM)(DMDSLMと称される)は、ミラーの物理的移動が原因で見られる悪影響を伴わずに、透過型LCDと比較して、優れた光スループット、回折効率、コントラスト、およびグレースケール範囲を提供するために用いられる。そのようなDMDSLMは、本発明の大きな利益を提供するために、バイナリあるいはパルス幅変調(PWM)のいずれかのモードで使用することができる。
【0018】
さらに、本発明は、入力光にDMDSLMを使用する能力と、参照光の高速光ステアリングとを組み合わせる。
【0019】
以上の点を考慮して、本発明のホログラフィックメモリシステムは、多ビットホログラム(multibit hologram)を格納するように構成されたフォトリフラクティブ結晶を使用する。シングルレーザダイオード(single laser diode)は、平行レーザ光を放出して、フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から多ビットデータのページを読み出すように構成される。多重空間光変調器は、多ビットデータのページを平行レーザ光から分割される入力光上に符号化するために使用される。第1の画像化リレーレンズの対は、多重空間光変調器とフォトリフラクティブ結晶との間に位置付けられ、フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面で、多ビット空間光変調器画像を画像化する。次に、ミラーを使用して、平行レーザ光から分割された参照光をフォトリフラクティブ結晶に高速で誘導し、多ビットデータのページを読み出す、あるいは書き込む。そのような高速光ステアリング装置は、液晶相アレイまたは微小電子機械システム(MEMS)ミラーのいずれかを備えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図面を参照すると、同じ参照番号は、全体を通して一致する部分を表している。
【0021】
以下の記載において、その一部を成す添付の図面を照会するが、これは例として、本発明のいくつかの実施形態において示されている。本発明の範囲から逸脱することなく、その他の実施形態を使用してもよく、構造を変更してもよいことを理解すべきである。
【0022】
(概要)
本発明の1つ以上の実施形態は、超高密度(テラバイト)と超広帯域幅(ギガビット/秒)ホログラフィックメモリのための、新しい概念とシステムアーキテクチャを提供する。多重ホログラム記録および読み出しシステムは、先行技術のバイナリホログラムの代わりに使用される。例えば、先行技術のホログラフィックメモリ密度は、バイナリホログラム(例えば、1ピクセル値は、0あるいは1のいずれか)を使用することによって、1テラバイトに到達できる。多重ホログラムを使用することによって、3ビット(8値)ホログラムを用いて、記憶密度を最大8テラバイトに増加させることができる。8ビットホログラムは、先行技術のシステムの体積、質量、および電力消費を著しく増加させることなく、記憶密度を256テラバイトに増加させることができる。
【0023】
(ホログラフィックデータ記憶)
上述のように、ホログラフィックデータ記憶は、フォトリフラクティブ結晶内の多数のホログラムに、データを格納する事ができる。ホログラムは、ページデータ(画像またはバイナリビット)を伝送するデータ光と参照レーザ光によって生じる光干渉縞を(立方体形フォトリフラクティブ結晶に)記録することによって形成される。これらの画像は、フーリエ領域に格納され、ホログラム内に3次元の膨大な冗長性が構築されるため、格納されたホログラムは、媒体内の欠陥あるいは点欠陥を起こすことがないであろう。
【0024】
LiNbO3フォトリフラクティブ結晶は、その均一性、高い電気光学係数、高い光感受性、および商業的入手性から、最も完成したホログラフィックメモリ用記録材料である。ホログラフィックデータ記憶を使用することの1つの独自の利点は、その耐放射線性である。フォトリフラクティブ結晶に格納されたホログラムは、放射線耐性であると実験的に実証されている。例えば、ニオブ酸リチウムホログラフィックメモリを空間に流入すると、取得された結晶は表面損傷を受けただけで、そのホログラム記録のための光感受性は保持された。
【0025】
(光ステアリング使用小型ホログラフィックメモリ)
ホログラフィックメモリシステムにおいて高速データ転送速度を達成するために必要な1つの重要な側面は、レーザ光ステアリング法である。種々の方法/システムを用いて、光ステアリング使用での速度を向上させることができる。
【0026】
(液晶光ステアリング素子)
本発明の1つ以上の実施形態による、液晶光ステアリング空間光変調器(BSSLM)は、高速光ステアリングに使用される。図1は、本発明の1つ以上の実施形態による、液晶BSSLMを使用した概略アーキテクチャを示している。アーキテクチャ100は、多重ホログラム記録のための書き込みモジュール102と、ホログラム読み出しのための読み出しモジュール104から成る。
【0027】
書き込みモジュール102は、コヒーレント光源としてのレーザダイオード106A、角度多重光ステアリングのための1対の縦続接続したBSSLM108(各対において、1つは透過型108A、1つは反射型108B)、記憶のデータ入力のためのデータSLM110、光形成のための2つの立方体形分割器107Aと107B、およびホログラム記録のためのフォトリフラクティブ結晶112を含む。
【0028】
読み出しモジュール104もフォトリフラクティブ結晶112を共有する。読み出しモジュールは、書き込みレーザダイオード106Aと同じ波長を有するレーザダイオード106B、位相共役読み出し光(読み出し光は、書き込み光と反対に向けられる)を生成するための1対の縦続接続したBSSLM113Aと113B、共有フォトリフラクティブ結晶112、立方体形光分割器、読み出しホログラムを記録するための光検出器アレイ114を含む。システムは、多重ホログラムを格納するための角度多重化方式と、各ホログラムを読み出すための位相共役光とを使用する。
【0029】
ホログラムの書き込みでは、平行レーザ光106Aが、第1の立方体形光分割器107Aで2つの部分に分割する。水平に偏向した光は、第2の立方体形光分割器107Bを横切って進行し、データSLM110に衝突した後、入力データを読み出す。データ伝送光109は、次にデータ書き込み光と同様にPR結晶112内に反射する。
【0030】
レーザ光111の残りの部分は、垂直に進行し、BSSLM108Aを通過してから、第2の反射型BSSLM108Bに反射する。両BSSLM108は、格子周期によって決定される角度偏向を伴う光ステアリングが可能な1次元ブレーズド位相格子である。2つのBSSLM108を直交に縦続接続することにより、2次元光ステアリングが達成できる。あるいは、単一の2D光ステアリングSLMを使用することもできる。偏向したレーザ光111は、PR結晶112に向けられ、干渉格子(ホログラム)を形成する。個々のホログラムは、それぞれ固有の参照角で書き込まれ、この角度(あるいはその共役角)でしか読み出されない。順次記録における参照光角度111を変えることにより、記録媒体に非常に多数のホログラムを記録することができる。
【0031】
ホログラムの読み出しについては、革新的な位相共役アーキテクチャが図1に示される。位相共役方式は、最低限の歪み(低いビット誤り率)で、レンズを使用しないホログラム読み出しを可能にする。図1に示されるように、透過型113Aおよび反射型113B BSSLMの第2の対は、位相共役読み出し光(書き込み参照光に対して)を提供するために用いられる。光がPR結晶112に衝突した後、記録されたホログラムから回折した光は、位相共役特性により、PR結晶112から出て入力データ光経路を引き返す。その後この光は、光学部品の焦点を合わせ、対応するデータページを再構成する必要なく、PR結晶112に記録および格納されたように、光検出器アレイ114に直接衝突する。
【0032】
(電気光学的光ステアリング)
本発明の代替実施形態では、図2に示されるような電気光学的光ステアリングを使用できる。平行レーザ光202は、まず偏光光分割器204Aに入射し、2つの光に分割される。入力光は、データSLM206、レンズ208A、ミラー210A、ミラー210B、ミラー210C、レンズ208Bを順次通過し、それからPRC214(Fe:LiNbO3フォトリフラクティブ結晶)に入射する。
【0033】
レンズの対208Aと208Bは、データSLM206のスループット画像をPRC214に中継するであろう。ミラーの組210A〜210Cは、光路長を折り畳み、長くし、参照光の長さと等しくする。
【0034】
参照光は、光分割器204Aを出射した後、光分割器204B、BSSLM212A、光分割器204B(再度)、レンズ208C、光分割器204C、BSSLM212B、光分割器204C(再度)、レンズ208Dを通過し、PRC214に到達する。
【0035】
データ光と参照光は、PRC214の体積内で交差し、90°の記録配列を形成する。両光は、入射面(参照および信号光によって形成される面)と直角の方向に偏光する。レンズの対208Cと208Dは、BSSLM212AをPRC214表面に中継する。BSSLM212Aは、C軸と平行に、水平面(またはx軸)に沿って参照光を走査する。BSSLM212Bは、参照光を垂直面(y軸、またはフラクタル面)に誘導する。ホログラフィックデータ記録において、入力データの各ページにより形成される干渉縞は、PR結晶214に記録される。参照光の角度(および位置)は、入力データのページごとに変更される。読み出しでは、データ光を中断し、参照光を作用させてPR結晶214を照射する。
【0036】
ホログラフィック波面再構成の原理によって、特定の参照光角度に対応する、格納されたページデータを読み出すことができる。読み出しデータ光は、PRC214から出射して、ミラー210Dとレンズ208Eを通過し、光検出器(PD)アレイ216に到達する。レンズの組208A、208B、および208Eは、入力SLM206をPDアレイ216に中継することに留意されたい。レンズの組によって生じる拡大率は、データSLM206とPDアレイ216のアスペクト比によって決定される。
【0037】
図2に図示されるように、直交配置に縦続接続した2つの1次元BSSLM212Aおよび212Bを用いることにより、ホログラフィックデータの高密度記録および取得を可能にするブレッドボード構成で、2次元角度フラクタル多重化方式が形成される。
【0038】
実験では、ホログラムは、まずx方向(面内)の角度変更により多重化され、y方向の角度は変更されなかった。1列のホログラムの記録が終了した後、y方向(入射面と直角)の角度が変更され、x方向の角度変更とともにホログラムの次の列が記録された。xおよびyの両角度変更は、完全にコンピュータ制御され、ランダムにアクセスできる。それにより、高品質ホログラムの長いビデオクリップの記録と取得を行なうことができる。
【0039】
電気光学的光ステアリング方式を使用することの利点には、機械的動作を伴わないこと、高い転送速度(1Gb/秒)、ランダムアクセスデータアドレス指定、低体積、および低電力がありうる。
【0040】
(光ステアリング空間光変調器)
上述のBSSLMは、セラミックPGA(ピン・グリッド・アレイ)キャリアのVLSI裏面上に実装された素子で実現できる。ネマチックツイスト液晶(NTLC)を充填した4096画素の1次元アレイは、SLM(空間光変調器)表面上に展開されている。素子の開口サイズは7.4μm×7.4μmであり、各画素の寸法は1.18μm×7.4μmである。そのような実施形態の応答時間は、200フレーム/秒に到達し得る。
【0041】
さらに、上記の実施形態におけるNTLCは、強誘電性液晶(FLC)と置き換えてもよい。FLCを使用すると、速度を1桁上げることができる(すなわち、>2000フレーム/秒)。
【0042】
上述のように、ホログラフィックデータ記憶の角度多重化のために、そのような電気光学的光ステアリング装置を使用することのいくつかの利点には、機械的に動作する部分がないこと、ランダムアクセスが可能な光ステアリング、低電圧/電力消費、大開口操作、AOベースの装置のように嵩張る周波数補償用光学部品が必要ないことが含まれる。
【0043】
上記に加え、カスタム位相−アレイプロファイルドライバを、BSSLMへの駆動プロファイルのダウンロードのためのLabView(商標)ベースのシステムHW/SW制御装置と共に使用してもよい。
【0044】
(ホログラフィックメモリの記憶容量および転送速度)
本発明の実施形態にしたがって、多様なサイズおよびタイプの素子を使用することができる。
【0045】
例えば、最大160,000ページ(すなわち、160Gbのメモリ)のホログラムを、それぞれの参照光に対して角度多重化を行なうための走査ミラーを用いて、体積1cm3のLiNbO3 PR結晶に格納できることが実証されている。しかし、機械的に制御される動作部を必要とする走査ミラー方式は、宇宙飛行には適さない。したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、高速かつ高解像度の全電気光学制御の角度多重化方式を提供することができる。この点から、上述のように、本発明は全位相光ステアリング装置BSSLMを使用することができる。
【0046】
透過型および反射型の両BSSLMを、高度ホログラフィックメモリ(AHM)システムに使用することができる。透過型BSSLM装置の例としては、約64の解像可能な点を有する1×1024アレイがある。反射型BSSLM装置の例としては、シリコンベースの1D回折光ステアリング装置がある。そのような反射型BSSLM装置は、およそ128の解像可能な点を有する1×4096アレイであってもよい。本発明の実施形態にしたがって、解像可能な点の数がより大きい(約180)装置を提供することもできる。したがって、縦続接続したBSSLMの解像可能な点の合計は、約11,520であってもよい。光ステアリングのために2つの縦続接続したBSSLMを使用することによって、合計10,000ページを超えるホログラムを、1立方センチメートルのPR結晶に保存し、読み出すことができる。各ページが約1000×1000画素のデータ(1Mバイト)を格納できることから、総記憶容量は、10ギガバイトに到達し得る。
【0047】
別の例では、開口サイズ7.4mm×7.4mmで、1×4096アレイを使用してもよい。あるいは、アレイサイズを2.5mm×2.5mm(1in2)に拡大してもよく、対応するアレイ密度は1×12000となる。したがって、解像可能な角度の数は、2666にまで増加する。
【0048】
上記の情報から、本発明のホログラフィックメモリ構成で使用される液晶BSSLMは、高密度ホログラフィック記憶にとって適切であり得ることがわかる場合がある。BSSLMの性能をさらにアップグレードすることにより、ホログラフィックメモリブレッドボードに記録できるホログラムの総数は、容易に20,000を超え得る。そのようなホログラフィックブレッドボードは、2000ホログラムをx次元(角度方向)の各列とy次元(フラクタル方向)の10列に記録することによって構成できる。
【0049】
そのようなホログラフィックメモリシステムの記憶容量は、アップグレードした電気光学的BSSLMを使用すると、1000画素×1000画素の入力ページの場合、20Gbを上回る。これは5000画素×5000画素の入力ページを使用すると、500Gbにまで増加する。さらに小型化すると、ホログラフィックメモリを5cm×5cm×1cmの立方体にまで縮小することが可能となる。そのようなホログラフィックメモリの立方体をメモリカード上に複数積み重ねることにより(例えば、1枚のカードに10×10の立方体)、カード1枚当たり2〜50Tbの記憶容量が達成できる。そのようなホログラフィックメモリシステムの転送速度は、200Mb/秒(1Mの画素ページで200ページ/秒)から5Gb/秒(25Mの画素ページで200ページ/秒)の範囲となり得る。
【0050】
(光学的パターンによる巨大記憶の必要性に対応するための高度ホログラフィックメモリ(AHM)技術の適用)
AHM技術は、光学的パターン認識システムによる巨大データ記憶の必要性に対応することができる。この関連で、グレースケール光相関器が、大規模に開発され、パターン認識に適用されてきた。本発明は、リアルタイム自動標的認識(ATR)のための小型グレースケール光相関器(GOC)302を提供する。図3に示されるように、そのような光相関器302は、入力された画像のインコヒーレント−コヒーレント変換に対し8ビットグレースケール解像度を有する液晶空間光変調器(LC SLM)304を採用してもよい。図3は、ホログラフィックに格納され、取得されたフィルタデータを用いて、リアルタイム光学的パターン認識を行なう、光相関器302のシステムアーキテクチャを示している。高密度ホログラフィックメモリ306からのグレースケールMACH(最大平均相関高)フィルタデータを含む読み出しデータは、GOC302のフィルタSLMドライバ308に直接送り込み、リアルタイムATRを可能にする。
【0051】
フーリエ変換面において、両極振幅(実数)SLMを用いて、相関フィルタを符号化することができる。能力を符号化する実数相関フィルタは、歪み不変相関計算のための非常に強力な最適フィルタ計算アルゴリズムである最大平均相関高(MACH)の使用を可能にしてきた。
【0052】
GOC302を用いる、より多用途のATRの主な限界のうちの1つは、電子メモリの厳しいサイズ制限である。そのようなGOC302は、1000フレーム/秒の速度で相関フィルタを更新することができる。各フィルタは、512画素×512画素から成り、8ビットグレースケール解像度を有する。したがって、相関器302を全速で作動させるために、フィルタのデータスループットは、2ギガビット/秒となるであろう。転送速度は、磁気ハードディスクをはるかに上回る。SDRAMのみが、適切なデータ転送速度で使用できる。しかし、適当な数である1000フィルタを搭載するには、2ギガビットのSDRAMメモリを必要とするであろう。メモリボードのサイズと電力消費は、空および宇宙を運ばれるシステムにとっては過剰であり、対応できない。したがって、本発明は、GOC302を使用するリアルタイムパターン認識のための代替的なメモリソリューションとして、ホログラフィックメモリ306を使用する。
【0053】
更新可能な光相関器用にホログラフィックメモリシステムを使用することの固有の利点には、高い記憶密度、ランダムアクセス、高いデータ転送速度、およびグレースケール画像記憶能力がある。これら3つの特徴は全て、GOC302のメモリ要件を十分に満たす。
【0054】
(ホログラフィックメモリを備える光相関器を用いた光学的パターン認識の実験的検証)
本発明の1つ以上の実施形態は、光学的に実装されたMACH(最大平均相関高)相関フィルタを備えるポータブルGOCを用いる。
【0055】
実験的検証により、リアルタイム光学的パターン認識が説明されている。そのような実験的試験において、カムコーダサイズのGOCを使用して、リアルタイムパターン認識を行なうことができるCHDS(小型ホログラフィックデータ記憶)ブレッドボードを使用して、MACH相関フィルタの格納、読み出しを行なうことができる。この実験ステップは、以下のように説明できる。まず、MACH相関フィルタを作成するために、1組のトレーニング画像を選択することができる。次に、これらのMACHフィルタをCHDSブレッドボード内に記録し、続いてGOCのフィルタドライバ内に読み出し、ダウンロードしてよい。取得されたホログラフィックフィルタ画像のダイナミックレンジは、次に、慎重に保存することで、8ビット解像度を保持することができる。
【0056】
リアルタイム光学的パターン認識走操作では、図3に示されるように、大きなMACH相関フィルタデータバンクが、まず音響に基づくホログラフィックメモリ306に格納されるであろう。読み出しホログラフィックデータは、次にGOC302のフィルタSLMドライバ308に直接送り込まれ、高速フィルタ更新の必要に対応する。
【0057】
ホログラフィックに取得されたMACHフィルタ画像が、GOC302のフィルタSLM308内にダウンロードされた後、以前の飛行試験で記録された入力場面のビデオを入力SLM304送り込むことができる。入力された標的に関連する、種々の回転、スケール、視点での鋭利な相関ピークを、相関出力から得ることができる。
【0058】
(1Dおよび2D電気光学的光ステアリングを備えるホログラフィックメモリブレッドボード)
本発明の1つ以上の実施形態は、ブックサイズの1Dホログラフィックメモリブレッドボードに実装してもよい。そのような実装は、光ステアリングにBSSLM装置を使用して、ホログラフィックデータの記録および取得における多重化の必要性を満たすことの実行可能性を実証できる。さらに、そのようなシステムは、単一のBSSLMを使用してもよく、角度多重化のための1D光ステアリングを実証することができる。上記に加え、典型的なそのようなシステムは30cm×20cm×5cmでよく、これは電話帳のサイズである。
【0059】
あるいは、実施形態は、2D電気光学的な角度−フラクタル光ステアリングを備えるCDサイズの小型ホログラフィックメモリブレッドボードに実装してもよい。そのようなCDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードは、10cm×10cm×1cmの非常に小型のホログラフィックメモリモジュールとすることができる。コンパクトサイズのVLSIベースのBSSLMは、光学部品の高度な設計を伴って、システムの体積をブックサイズからCDサイズへと大幅に縮小できる。そのようなブレッドボードは、10GBのホログラフィックデータを記録することができる。さらに、このシステム設計は、アップグレードバージョンが利用可能な場合に、キーデバイスの容易な置換を可能にする。そのようなキーデバイスには、空間光変調器、BSSLM、およびPD(光検出器)アレイが含まれる。さらに、システム記憶容量は、高解像度BSSLMの使用により、2桁増加することができる。
【0060】
CDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードは、包括的なLabViewベースのシステム制御装置を備えて作成することができる。したがって、システムを完全統合した上で自律的なデータ記録および取得が可能である。
【0061】
したがって、上述のように、高度ホログラフィックメモリ技術を使用して、データ記録および読み出し時にランダムアクセスできる、高密度・高速ホログラフィックデータ記憶を可能にできる。液晶光ステアリング装置を使用することによって達成される革新的なE−O(電気光学的)光ステアリング方式が、これまで示されてきた。さらに、CDサイズのホログラフィックメモリブレッドボードを統合して使用し、ホログラフィックデータを記録および取得することもできる。そのようなブレッドボードは小型であり、入力ページのサイズに応じて、10Gb〜250Gbの範囲の記憶容量を有する。
【0062】
(高速光ステアリング用MEMSミラー)
液晶(LC)BSSLM位相アレイは、小型ホログラフィックメモリブレッドボードにおける高速光ステアリングのための使用には成功してきたが、光スループットの効率性を改善することは有益であろう。LC BSSLMにおける位相アレイによるスループット光の光回折によって、多数の回折次数(回折したレーザ光の第1次数以外)が存在するが、これらはホログラム記録に使用される。1次で100%回折効率を達成することは非常に困難なため、相当の量のレーザ光エネルギーが、ゼロ次および高次の回線に拡散する。高次光はスプリアス干渉を引き起こし、しばしば記録されたホログラムの信号対雑音比を低下させる。
【0063】
したがって、本発明の1つ以上の実施形態は、光ステアリング装置として、回折の代わりに光偏向を使用する高速走査ミラーを提供する。先行技術は、レーザ光ステアリング目的でのガルバノメータ制御ミラーの使用を説明している。しかし、ガルバノメータミラーは相当な質量を有するため、その走査速度が厳しく制限される可能性がある(例えば、ビデオ速度程度)。先行技術の限界を考慮して、本発明は、小型ホログラフィックメモリシステムにおける高速光ステアリングのために、新たなMEMS(微小電子機械システム)ミラー技術の使用を提供する。
【0064】
微小電子機械システム(MEMS)は、微細加工技術によって、機械構成部品、センサ、アクチュエータ、および電子装置を一般的なシリコン基板上で統合したものである。電子装置は、集積回路(IC)処理シーケンス(例えば、CMOS、バイポーラ、またはBICMOS処理)を用いて加工されるが、微小機械構成部品は、互換性のある「マイクロマシニング」プロセスを用いて加工される。このプロセスでは、シリコンウエハーの一部を選択的にエッチングで取り除く、あるいは新しい構造層を追加して、機械および電気機械素子を形成する。
【0065】
MEMSマイクロミラーは、微視的世界にまで「縮小」されたミラーである。そのようなMEMSマイクロミラーは、光ファイバの分野での適用を含め、種々の使途が可能である。あるいは、MEMSマイクロミラーは、ホログラフィックメモリシステムにおける光ステアリングに使用することもできる。
【0066】
これらのマイクロミラーの加工方法は、片持ち梁構造の加工方法と類似している(あるいは同一である)が、プロセスが完了した後、アルミニウムなどの反射層を梁の上に置いてもよい点が異なる。
【0067】
MEMSマイクロミラーは、ミラーの誘導に静電アクチュエーションを使用する。正電荷と負電荷は互いを誘引する(また、同じ電荷は反発する)ため、片持ち梁を形成して、その上に交互の正−負電荷を付与している間に正電荷を維持できれば、静電気によって、片持ち梁が上下に共振する。
【0068】
上記を考慮すると、MEMSミラーは、ホログラフィックメモリシステムにおける光ステアリング装置として、魅力的となりうる。光ステアリング装置としてMEMSミラーを使用することの利点には、高い光スループットの効率性(>99%反射力)、優れた光質(ミラーから反射した光は、回折光ステアリング装置のように、スプリアス回折を生成しない)、低質量、および高速が挙げられる。
【0069】
光ステアリングにMEMSミラーを使用するホログラフィックメモリシステムアーキテクチャが、図4Aに示されている。システム配置の詳細は、平行レーザ光400がまず偏光光分割器402に入射し、出射する際に2つの光に分割されることを示している。入力光は、データSLM(空間光変調器)404、および画像リレーレンズの対406A〜406B(それぞれ焦点距離f1およびf2を有するレンズL1およびL2とも称される)を順次通過し、それから鉄ドープニオブ酸リチウム(Fe:LiNbO3)のフォトリフラクティブ結晶(PRC)408に衝突する。画像化リレーレンズの対406A〜406Bを使用して、入力SLM404の画像サイズを測定し、PRC408の入力瞳のサイズと一致させる。画像化リレーレンズの対406A〜406Bは、PRC408の裏側に設置されたCCD410の記録面上で、入力SLM404画像を鮮明に画像化することもできる。
【0070】
PRC408は、大容量の書換可能なホログラフィックメモリ記録が可能なホログラフィック記録装置である。他方の光(参照光)は、まず画像化リレーレンズの対406C〜406D(それぞれレンズL3およびL4とも称される)を通過してから、MEMSミラー412に衝突する。レーザ光は、次にMEMSミラー412によって、既定の増分角度だけ偏向される。偏向された参照光は、継続して第3の画像化リレーレンズの対406E〜406F(それぞれレンズL5およびL6とも称される)を通過し、PRC408に到達する。参照光とデータ光は、PRC408の体積内で交差し、90°の記録配列を形成する。レンズの対406C〜406Dの焦点長さ/距離(例えばf3+f4)および開口サイズは、入力SLM404の開口とMEMSミラー412の開口とのスケール差を補正するように選択する。同様に、レンズの対406E〜406Fは、MEMSミラー412とPRC408入射瞳とのスケール差に一致するように選択した寸法(例えば、焦点距離f5およびf6)を有する。
【0071】
MEMSミラー412は、C軸と平行に、水平面(x軸)に沿って参照光を走査する。ホログラフィックデータを記録するとき、MEMSミラー412から偏向された角度は、それぞれの新しいデータページに対して、わずかな増分だけ変更される。したがって、各ページの入力データ光と特異的に配向された参照光との間に形成された干渉縞は、角度多重化方式でPR結晶408に記録される。
【0072】
読み出しにおいては、データ光は中断され、参照光を作用させてPR結晶408を照射する。ホログラフィック波面再構成の原理によって、特定の参照光角度に対応する、格納されたページデータが読み出される。読み出しデータ光は、CCD410記録面上で鮮明に画像化される。
【0073】
(多重空間光変調器)
本発明の1つ以上の実施形態は、多重(複数相)空間光変調器を使用する。そのようなSLMの例には可変ミラーデバイスがあるが、これはデジタルマイクロミラーデバイス(DMDSLM)とも称され、Texas Instrumentsから入手可能である。ここで使用するDMDSLMという用語は、全ての形式の複数相空間光変調器を指し、これには可変ミラーデバイスまたはデジタルマイクロミラーデバイスも含まれる。
【0074】
本発明のホログラフィックメモリシステムアーキテクチャは、最大12ビットの高速データ入力変換のためのDMDSLM、データ読み出しと転送のための適合するCMOS光検出器アレイ、さらに光ステアリングのための動作部分を伴わない光ステアリング装置(上述のような液晶相アレイまたは高速MEMSミラー)、ホログラフィックデータ記録のためのフォトリフラクティブ結晶、および関連する画像/光形成用光学部品を使用する。先行技術のバイナリ(2層)SLMの代わりに、時間多重化および多重DMDSLMを使用することにより、多ビットホログラムを記録し、システムの体積を増加させずに、記憶密度を増加させることができる(3ビットホログラムでは8倍増加、8ビットホログラムでは256倍増加)。DMDSLMは、優れた転送速度(7.6Gビット/秒以上)に関する能力も提供する。したがって、その結果得られるホログラムメモリシステムは、高密度、広帯域幅、および少ない体積を同時に実現する。
【0075】
図4Bは、本発明の1つ以上の実施形態による、多重ホログラフィックメモリシステムを示している。図示されているように、青色レーザアセンブリは、レーザを放出し、これはコリメータを通過して、平行光を生成する。平行光は、ミラーM5およびM6で反射して、光分割器に到達する。参照光は、画像リレーレンズの対f5とf6、およびミラーf1を通過して高速光ステアリングミラーに到達する。その後、光は画像化リレーレンズの対f3およびf4を通過し、PRCに到達する。データ/入力光は、光分割器からDMDSLM(例えば、Texas Instruments(商標)による)、ミラーM4、画像リレーレンズの対f1anおよびf1bへと通過する。このデータ/入力光は、ミラーM2によって反射され、PRCに到達し、ここで干渉縞の形で多ビット/多重ホログラムを記録することができる。焦点長さの違いが、適宜図面に示されている。図示されているように、画像化リレーレンズの対f1a/f1bは、多重空間光変調器とフォトリフラクティブ結晶との間に位置付けられ、多ビット空間光変調器画像をフォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化する。
【0076】
データを読み出すためには、入力光(PRCの格納された多ビットデータを含む)は、PRCから反射され、画像リレーレンズの対f2A/f2Bを通過し、ミラーM3へ、そしてBasler CMOSセンサ上へと到達する。
【0077】
図5は、本発明の1つ以上の実施形態による、デュアルチャネル・多重ホログラムメモリシステムを示している。システム500中に示されるように、入力データは、青色ダイオードレーザ光502(データ光)と参照光504とに分割される。データ光502は、DMDSLMの対(DMDSLM#1およびDMDSLM#2)を通過して、多重/多ビット光を生成する。この多重/多ビット光は、画像化リレーレンズの対506として図示される光学部品を経由して、ブロック型フォトリフラクティブ結晶(PRC508)上で集束される。参照光504は、走査ミラー510を経由して、PRC508に向けられ、そこで複数層/ビットで干渉縞が記録される。
【0078】
データを読み出すためには、参照光504を用いてPRC508を照射し、その出力がCMOSセンサ506上に記録される。
【0079】
上記を考慮して、DMDSLMは、ホログラフィックメモリシステム/立方体500への入力装置として使用される。そのようなDMDの使用により、7.6Gb/秒の転送速度が提供されるが、これは先行技術の強誘電性液晶SLMの約8倍の速度である。さらに、DMDSLMは、2000:1のハイコントラストで、8〜10ビットグレースケール解像度を処理できるため、PRC508内での多重デジタルホログラムを可能にする。そのような多重ホログラムは、3ビット解像度を維持する。したがって、データ記憶密度は、1ビット/画素から8ビット/画素(1バイト/画素)へと増加し、その結果、先行技術では775GBであったのに対し、6.2テラバイトの記録を可能とする。
【0080】
図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できるDMDSLMの写真を示している。そのようなDMDSLMは、先行技術のデジタル光プロセッサ(DLP)に使用されてきた。DLP技術は、ハイコントラストを備え、明るく、シームレスで、かつデジタル制御のみが達成できるカラーおよびグレースケールの精度を有する、デジタル・高解像度・カラー投影型ディスプレイを可能にする。DLPシステムでは、DMDのそれぞれのミラーが画素を表す。DMDの合計サイズを用いると、16平方μm(16μm×16μm)の各ミラーが1.64cm×1.23cmの開口サイズを実現することにより、1024画素×768画素の解像度が実現できる。さらに、DLPシステムにおいて、8または10ビット解像度と、7.6Gb/秒(または最大9.7Gb/秒)のデータ転送/スループット速度とを利用することができる。そのようなスループットは、バイナリデータでは9,700fps、3ビットデータでは1,220fps、8ビットデータでは38fpsを提供する。さらに、高精細度(1920×1080解像度)では、20.1Gb/秒のスループット速度が可能である。図7は、本発明の1つ以上の実施形態による、デジタルビットの機能としての最大フレームレートを示している。図示されているように、ビット/フレーム数が増加すると、最大フレームレートは減少する。
【0081】
また図8は、先行技術の高精細度テレビおよび投影型ディスプレイ(DLPシステム)で使用されるDMD装置を図解している。さらに、図8は、バイナリ・パルス幅変調方式の例である。この簡単な例では、DMDアレイは、一定強度の光(図示せず)で照射され、4ビットワードのみがアレイに入力され、16の可能なグレーレベルを表している。投影レンズは、各画素から反射した光を遠隔にある投影画面上で集束、増幅させる。明確にするために、中央列のみがアドレス指定されている。その他は暗状態(0000)にアドレス指定されたと仮定される。各ライトスイッチのメモリ要素に、電気的ワードを各ワードの最上位のビット(MSB)から始めて、1ビットずつ入力する。
【0082】
アレイ全体のライトスイッチがMSBでアドレス指定ができると、個々の画素が有効になり(リセットされ)、それらのMSB状態(1または0)に対応して応答することができる。各ビット時間中に、次のビットがメモリアレイに読み出される。各ビット時間の終了時に、画素はリセットされ、次のアドレスビットに対応して応答する。このプロセスは、全てのアドレスビットがメモリに読み出されるまで繰り返される。
【0083】
入射光はライトスイッチから反射し、電気的ワードの各ビットに表される継続時間を有する光束に切り替え、あるいは変調される。観察者にとっては、この光束は、4ビットの入力ワードの値に表される一定強度を有する光を身体で感じる目の積分時間と比較して、非常に短い時間に発生する。
【0084】
上記を考慮して、図9に図示されるような、本発明のホログラフィックメモリに使用できるDMDSLMの詳細アーキテクチャを検討することができる。各画素のアドレス回路と電気機械的上部構造は、16平方μmのアルミニウムマイクロミラーの+10°からp;10°までの高速かつ正確な回転という、1つの単純な機能に対応している。図8には、2つの画素のアーキテクチャが図解されているが、ここでは下部の構造が見えるよう、ミラーは半透明で示されている。DMD画素は、CMOS SRAMセル/基板上に加工された、モノリシックに集積したMEMS上部構造セルである。犠牲層のプラズマエッチングにより、上部構造の金属層間に空隙が形成される。この空隙により、構造は、2つの弾性トーションヒンジを中心に自由に回転できる。ミラーは下部のヨークに接続されるが、これらは、2つの薄いトーションヒンジによって浮き上がり、ポストを支持している。ヨークは、下部のヨークアドレス電極に静電気により付着される。ミラーは、ミラーアドレス電極に静電気により付着される。ミラーとヨークは、ヨークが、ヨークと同電位の機械的ストッパに当って停止するまで回転する。機械的ストッパの位置は、ミラーの回転角度を+10°または−10°に制限する。
【0085】
下記の表1は、本発明の1つ以上の実施形態による、多重デジタルホログラム用いたデータ転送速度を示している。表1に記載の装置には、Texas Instruments製のDMDSLM、Red Lake(商標)製のCMOSセンサ、Chromux(商標)製のMEMSミラーが含まれる。
【0086】
【表1】
表2は、本発明の1つ以上の実施形態による、多重デジタルホログラムを用いた記憶密度を示している。
【0087】
【表2】
(論理フロー)
図10は、多ビットデータをホログラフィックメモリに格納するための方法を示すフローチャートである。ステップ1000では、シングルレーザダイオードが、フォトリフラクティブ結晶に多ビットホログラムを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から多ビットホログラムを読み出すために、平行レーザ光を放出する。ステップ1002では、平行レーザ光が、参照光と入力光に分割される。
【0088】
ステップ1004では、多重空間光変調器(DMDSLM)が、多ビットデータのページを平行レーザ光から分割される入力光上に符号化する。ステップ1006では、多重空間光変調器とPRCとの間に設置された第1の画像化リレーレンズの対が、PRCの裏側の平面に、入力光(符号化されたデータを有する)(多ビット空間光変調器画像とも称される)を誘導/集束させる。上述のように、DMDSLMは、デジタルマイクロミラーデバイスであってもよい(例えば、Texas Instrumentsから入手可能)。
【0089】
ステップ1008では、1つ以上のミラーを用いて、平行レーザ光から分割された参照光を高速でPRCに誘導し、多ビットデータのページを読み出す、あるいは書き込む。そのようなミラーは、液晶相アレイまたは高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーであってもよい。結果として、ステップ1010では、多ビットホログラムがPRCに格納される(参照光と入力光による干渉縞に基づく)。
【0090】
(結論)
ここで本発明の好ましい実施形態の説明を終了する。本発明の実施形態にしたがって、多重ホログラムによる高度ホログラフィックメモリ技術を用いて、データの記録および読み出し中のランダムアクセスが可能な、高密度・高速ホログラフィックデータ記憶を実現することができる。
【0091】
本発明の好ましい実施形態についての上記の説明は、例証と説明の目的で提示してきた。これは包括的なものではなく、本発明を開示される正確な形式に限定するものではない。上記の教示を踏まえ、多くの修正および変更が可能である。本発明の範囲は、この詳細な説明によっても、また添付の特許請求の範囲によっても制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明の1つ以上の実施形態による、液晶BSSLMを使用する概略アーキテクチャを示している。
【図2】図2は、本発明の1つ以上の実施形態による、電気光学的光ステアリングを示している。
【図3】図3は、本発明の1つ以上の実施形態による、リアルタイム光学的パターン認識のために、ホログラフィックに格納され、取得されたフィルタデータを使用する光相関器のシステムアーキテクチャを示している。
【図4A】図4Aは、本発明の1つ以上の実施形態による、光ステアリングのためのMEMSミラーを使用する、ホログラフィックメモリシステムアーキテクチャを示している。
【図4B】図4Bは、本発明の1つ以上の実施形態による、DMDSLMを使用する、ホログラフィックメモリシステムアーキテクチャを示している。
【図5】図5は、本発明の1つ以上の実施形態による、デュアルチャネル・多重ホログラムメモリシステムを示している。
【図6A】図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できる、DMDSLMの写真を示している。
【図6B】図6Aおよび6Bは、本発明の1つ以上の実施形態にしたがって使用できる、DMDSLMの写真を示している。
【図7】図7は、本発明の1つ以上の実施形態による、デジタルビットの機能として、最大フレームレートを示している。
【図8】図8は、先行技術の高精細度テレビおよび投影型ディスプレイ(DLPシステム)に使用される、DMD素子を示している。
【図9】図9は、本発明の1つ以上の実施形態による、ホログラフィックメモリに使用できるDMDSLMの詳細アーキテクチャを示している。
【図10】図10は、本発明の1つ以上の実施形態による、多ビットデータをホログラフィックメモリに格納するための方法を示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多ビットホログラムを格納するように構成されたフォトリフラクティブ結晶と、
(b)平行レーザ光を放出して、該フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつ該フォトリフラクティブ結晶から多ビットデータのページを読み出すように構成されたシングルレーザダイオードと、
(c)該多ビットデータのページを、該平行レーザ光から分割される入力光上に符号化するための多重空間光変調器と、
(d) 多ビット空間光変調器画像を該フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化するための、該多重空間光変調器と該フォトリフラクティブ結晶との間に配置された第1の画像化リレーレンズの対と、
(e) 該平行レーザ光から分割される参照光を該フォトリフラクティブ結晶に高速で誘導して、多ビットデータのページを読み出す、または書き込むように構成された1つ以上のミラーと
を備える、ホログラフィックメモリシステム。
【請求項2】
前記平行レーザ光から取得した前記参照光および前記入力光は、前記フォトリフラクティブ結晶に干渉縞を生成し、前記多ビットホログラムを記録する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のミラーは、高速の微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
平行レーザ光を放出して、フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から該多ビットデータのページを読み出すシングルレーザダイオードと、
該平行レーザ光を参照光と入力光とに分割することと、
該入力光を多重空間光変調器に通過させ、該入力光内にデータのページを符号化することと、
該入力光を第1の画像化リレーレンズの対に通過させ、多ビット空間光変調器画像を該フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化することと、
該参照光を該フォトリフラクティブ結晶に高速で誘導する1つ以上のミラーと、
該多ビットデータのページを、該誘導された参照光および該入力光によって生成された干渉縞の形で、該フォトリフラクティブ結晶に格納することと
を含む、データをホログラフィックメモリに格納する方法。
【請求項7】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のミラーは、高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
多ビットデータの1つ以上のページを格納する手段と、
平行レーザ光を放出して、該格納する手段に書き込み、かつ該格納する手段から読み出す手段と、
該多ビットデータのページを、平行レーザ光から分割される入力光上に符号化する多重空間光変調器手段と、
多ビット空間光変調器画像を該格納する手段の裏側の平面上で画像化する手段と、
該平行レーザ光から分割される参照光を、該格納する手段に高速で誘導し、多ビットデータのページを読み出す、または書き込むように構成された1つ以上のミラーと
を備える、データをホログラフィックメモリに格納するための装置。
【請求項11】
前記平行レーザ光から取得した前記参照光および前記入力光は、前記格納する手段に干渉縞を生成し、多ビットホログラムを記録する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ以上のミラーは、高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項1】
(a)多ビットホログラムを格納するように構成されたフォトリフラクティブ結晶と、
(b)平行レーザ光を放出して、該フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつ該フォトリフラクティブ結晶から多ビットデータのページを読み出すように構成されたシングルレーザダイオードと、
(c)該多ビットデータのページを、該平行レーザ光から分割される入力光上に符号化するための多重空間光変調器と、
(d) 多ビット空間光変調器画像を該フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化するための、該多重空間光変調器と該フォトリフラクティブ結晶との間に配置された第1の画像化リレーレンズの対と、
(e) 該平行レーザ光から分割される参照光を該フォトリフラクティブ結晶に高速で誘導して、多ビットデータのページを読み出す、または書き込むように構成された1つ以上のミラーと
を備える、ホログラフィックメモリシステム。
【請求項2】
前記平行レーザ光から取得した前記参照光および前記入力光は、前記フォトリフラクティブ結晶に干渉縞を生成し、前記多ビットホログラムを記録する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上のミラーは、高速の微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
平行レーザ光を放出して、フォトリフラクティブ結晶に多ビットデータのページを書き込み、かつフォトリフラクティブ結晶から該多ビットデータのページを読み出すシングルレーザダイオードと、
該平行レーザ光を参照光と入力光とに分割することと、
該入力光を多重空間光変調器に通過させ、該入力光内にデータのページを符号化することと、
該入力光を第1の画像化リレーレンズの対に通過させ、多ビット空間光変調器画像を該フォトリフラクティブ結晶の裏側の平面上で画像化することと、
該参照光を該フォトリフラクティブ結晶に高速で誘導する1つ以上のミラーと、
該多ビットデータのページを、該誘導された参照光および該入力光によって生成された干渉縞の形で、該フォトリフラクティブ結晶に格納することと
を含む、データをホログラフィックメモリに格納する方法。
【請求項7】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上のミラーは、高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
多ビットデータの1つ以上のページを格納する手段と、
平行レーザ光を放出して、該格納する手段に書き込み、かつ該格納する手段から読み出す手段と、
該多ビットデータのページを、平行レーザ光から分割される入力光上に符号化する多重空間光変調器手段と、
多ビット空間光変調器画像を該格納する手段の裏側の平面上で画像化する手段と、
該平行レーザ光から分割される参照光を、該格納する手段に高速で誘導し、多ビットデータのページを読み出す、または書き込むように構成された1つ以上のミラーと
を備える、データをホログラフィックメモリに格納するための装置。
【請求項11】
前記平行レーザ光から取得した前記参照光および前記入力光は、前記格納する手段に干渉縞を生成し、多ビットホログラムを記録する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記多重空間光変調器は、デジタルマイクロミラーデバイスを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記1つ以上のミラーは、液晶相アレイを備える、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ以上のミラーは、高速微小電子機械システム(MEMS)ミラーを備える、請求項10に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−516323(P2009−516323A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541337(P2008−541337)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/044478
【国際公開番号】WO2007/059273
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(305053547)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/044478
【国際公開番号】WO2007/059273
【国際公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(305053547)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (18)
【Fターム(参考)】
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