説明

高密度コネクタ

【課題】高速伝送特性のよいコネクタを提供する。
【解決手段】対向する状態に配置された一対の弾性接点板5と、この一対の弾性接点板5をその対向壁面6aの一側端面からそれぞれ連出しているコ字形連結部7と、コ字形連結部7の他側端面から連出した端子板8とを有する2点接触タイプのコンタクト4をコネクタボディ3内に複数並列配置した高密度コネクタである。コ字形連結部7から連出している弾性接点板5の長さをコ字形連結部7の長さよりも長く設定し、端子板8を一方の弾性接点板5の延長線上に位置する状態で連出してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2点接触タイプのコンタクト部材をボディ内に複数並列配置している高密度コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
高密度コネクタのジャック側は、絶縁材製ケーシング内に2点接触タイプのコンタクト部材を複数並列配置してなるものであるが、2点接触タイプのコンタクト部材は、略コ字形に形成された基部の対向壁の一側縁部分からそれぞれ片持ち状に連出した弾性接点板を両者が接近する状態に傾斜して形成し、この連出している弾性接点板の先端寄り部分を接点部に形成し、弾性接点板の有するバネ弾性を利用して、両弾性接点板間に挿入されるプラグ側端子を弾性挟持することで電気的接続を得るようになっている。
【0003】
従来の2点接触タイプのコンタクト部材は、例えば特許文献1の図面に示されているように、コ字形に形成された基部(連結片)の対向して位置している壁面の一端面からそれぞれ弾性接点板を両者が接近する状態に傾斜して形成するとともに、コ字形基部で弾性接点板を連出している対向壁面同士を接続している連結壁部の弾性接点板導出方向とは反対側の端面部分から端子板を連出した形状に形成してあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2887995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記した従来の2点接触タイプのコンタクト部材では、コ字形に形成された基部が長いことから、伝送特性が劣化するという問題があった。また、コ字形に形成された基部を短くして弾性接点板を長く形成することも考えられるが、その場合には、弾性接点板の向かい合っている面の表面積が広く、静電容量が大きくなって、インピーダンスが低くなりすぎ、伝送特性が悪く、高速信号には不向きになるという問題があつた。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであり、高速伝送特性のよいコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、対向する状態に配置された一対の弾性接点板と、この一対の弾性接点板をその対向壁面の一側端面から連出しているコ字形連結部と、コ字形連結部の他側端面から連出した端子板とを有する2点接触タイプのコンタクトをコネクタボディ内に複数並列配置した高密度コネクタであって、
コ字形連結部から連出している弾性接点板の長さをコ字形連結部の長さよりも長く設定し、端子板を一方の弾性接点板の延長線上に位置する状態で連出したことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載した構成に加えて、各コンタクトでのコ字形連結部の対向壁面同士を接続する連結壁部にスリットを設けたことを特徴としている。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載した構成に加えて、コンタクトの弾性接点板にその長手方向に沿うスリット溝を形成し、このスリット溝を形成した弾性接点板を有する各コンタクトをその端子板同士が対面する状態でコネクタボディ内に複数段複数列に配設してあることを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した構成に加えて、弾性接点板に形成されている接点位置と傾斜連出基部との間のアーム長を、一対の弾性接点板を構成する単位接点板で異ならせてあることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した本発明では、コ字形連結部とこの対向壁面から連出した一対の弾性接点板とを有する2点接触タイプのコンタクトにおいて、コ字形連結部から連出している弾性接点板の長さをコ字形連結部の長さよりも長く設定し、端子板を一方の弾性接点板の延長線上に位置する状態で連出しているので、このコンタクトをコネクタボディ内に複数並列配置した場合に、隣り合うコネクタはその側面同士が対面する状態となることから、向かい合う面の表面積が小さくなり、静電容量も小さく抑えられ、インピーダンスも低くなりすぎることが無くなる。これにより、伝送特性がよく、高速信号に対応することができる。
【0012】
請求項2に記載した発明のように、コ字形連結部の連結壁部にスリットを設けた場合には、この連結部での表面積も小さくなり、インピーダンスが安定する。これにより、連結壁部にスリットを設けない場合に比べてより高速な信号にも対応可能となる。
【0013】
また、請求項3に記載した発明のように、コンタクトの弾性接点板にその長手方向に沿うスリットが形成され、このスリットを形成した弾性接点板を有するコンタクトをその端子板同士が対面する状態でコネクタボディに複数段複数列に配設した場合は、コネクタボディにコンタクトを多段に配置して上下に位置するコンタクトの弾性接点板同士が対面する状態になっても、各段間のクロストークの影響が低減し、高速信号にも対応可能となる。
【0014】
さらに、請求項4に記載した発明のように、弾性接点板に形成されている接点位置と傾斜連出基部との間のアーム長を、一対の弾性接点板を構成する単位接点板で異ならせてある場合には、弾性接点板の傾斜連出基部から接点までの連出腕長さが異なることになるから、共振動による断線に対して強くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る高密度コネクタの分解斜視図である。
【図2】単位コンタクトの取り出し斜視図である。
【図3】単位コンタクトの正面図である。
【図4】単位コンタクトの平面図である。
【図5】単位コンタクトの底面図である。
【0016】
この高密度コネクタは、前側ケーシング(1)とこの前側ケーシング(1)に結合可能な後側ケーシング(2)とで構成したコネクタボディ(3)と、このコネクタボディ(3)内に複数段複数列(図1では2段6列)に組み込まれるコンタクト(4)とで構成されている。
【0017】
図1及び図2に示すように各コンタクト(4)は、対向する状態に配置された一対の弾性接点板(5)と、この一対の弾性接点板(5)をその対向壁面(6a)(6b)の一端面から連出しているコ字形連結部(7)と、コ字形連結部(7)の他端面から連出した端子板(8)とで2点接触タイプに構成してある。この弾性接点板(5)の連出長さはコ字形連結部(7)のコンタクト長手方向での長さよりも長く形成してあり、図示したコンタクト(4)では、約2.5倍の長さに形成してある。
【0018】
前記端子板(8)は、コ字形連結部(7)の一方の対向壁面(6b)での弾性接点板(5)を連出してない側の端面からその弾性接点板(5)の連出方向軸の延長線上に位置する状態にコ字形連結部(7)と一体に連出されている。
【0019】
コ字形連結部(7)の対向壁面(6a)(6b)を接続する連結壁部(9)には、連結壁部(9)の表面積を少なくするためにその連結方向に沿うスリツト(10)が形成してある。これにより、コ字形連結部(7)でのインピーダンスが安定することになる。
【0020】
一対の弾性接点板(5)は、略へ字形をした単位接点板(5a)(5b)をその突曲部分(11)が対面する状態で対称に位置させ、この突曲部分(11)の対向面には金メッキが施してあり、突曲部分(11)(11)間に挿入してくるプラグ端子(図示略)への接点としてそれぞれ作用するに構成している。
【0021】
また、前記突曲部分(11)に続く傾斜状に位置している長辺部分(12)をコ字形連結部(7)の対向壁面(6a)(6b)の側端面に基端側部分(12a)を介して一体に連結して、この長辺部分(12)が弾性変形するように構成してある。なお、この傾斜面をなす長辺部分(12)には、複数段に配置した際に、各段間でのクロストークの影響を低減し、インピーダンスを安定させるために、スリット溝(13)がその長手方向に沿う状態で形成してある。
【0022】
また、対向する状態に配置されている一対の弾性接点板(5)は、その長辺部分(12)の傾斜連出基部と接点位置との管の長さが単位接点板(5a)(5b)で異なっている(図3参照)。これにより、単位接点板(5a)(5b)での可動アーム長が一対の単位接点板(5a)(5b)で相互に相違することになるから、共振動を起こしにくくなり、共振動による断線に対応することができる。
【0023】
そして、弾性接点板(5)の一方の側面部分(14)とコ字形連結部(7)の外側面(15)とは同一平面内に位置している(図4及び図5参照)。これにより、並置したコンタクトでのコンタクト間距離を同一にすることができ、コ字形連結部(7)と弾性接点板(5)とでの伝送特性の差を少なくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、HDMIやUSBなどの高速伝送コネクタに使用するコンタクトとして好適である。
【符号の説明】
【0025】
3…コネクタボディ、5…弾性接点板(5a・5b…単位接点板)、6a・6b…対向壁面、7…コ字形連結部、8…4…コンタクト、端子板、9…コ字形連結部の連結壁部、10…スリット、13…スリット溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する状態に配置された一対の弾性接点板(5)と、この一対の弾性接点板(5)をその対向壁面(6a)(6b)の一側端面からそれぞれ連出しているコ字形連結部(7)と、コ字形連結部(7)の他側端面から連出した端子板(8)とを有する2点接触タイプのコンタクト(4)をコネクタボディ(3)内に複数並列配置した高密度コネクタであって、
コ字形連結部(7)から連出している弾性接点板(5)の長さをコ字形連結部(7)の長さよりも長く設定し、端子板(8)を一方の弾性接点板(5)の延長線上に位置する状態で連出したことを特徴とする高密度コネクタ。
【請求項2】
コネクタボディ内(3)に複数並列配置するコンタクト(4)が、コ字形連結部(7)の対向壁面(6a)(6b)同士を接続する連結壁部(9)にスリット(10)を設けたものである請求項1に記載した高密度コネクタ。
【請求項3】
コンタクト(4)の弾性接点板(5)にその長手方向に沿うスリット溝(13)が形成され、このスリット溝(13)を形成した弾性接点板(5)を有するコンタクト(4)をその端子板(8)同士が対面する状態でコネクタボディ(3)内に複数段複数列に配設してある請求項1または請求項2に記載した高密度コネクタ。
【請求項4】
各コンタクト(4)を構成している一対の弾性接点板(5)での接点位置と傾斜連出基部との間のアーム長を、一対の弾性接点板(5)を構成する単位接点板(5a)(5b)で異ならせてある請求項1〜3のいずれか1項に記載した高密度コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−89399(P2013−89399A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227618(P2011−227618)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】