高密度リポ蛋白コレステロールの測定方法
【課題】安価な材料を用いて、簡便、迅速で特異的に検体中のHDL-Cを測定する方法、HDL-C検出用試薬キット、及びHDL-C検出用乾式分析素子を提供すること。
【解決手段】体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法。
【解決手段】体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)を測定する方法に関する。高密度リポ蛋白コレステロールの血中レベルは動脈硬化疾患の発症予知に有用な指標となることが知られている。
【背景技術】
【0002】
血液中に存在する脂質は、遊離脂肪酸がアルブミンと結合している以外はリポ蛋白の構造の中に組み込まれていて、カイロミクロン(CHM)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、高密度リポ蛋白(HDL)等として存在し、その中のコレステロールは特にVLDL、LDL、HDLに分布している。HDLは動脈硬化による心疾患の予防因子とされており、従ってHDLの代わりに高密度リポ蛋白コレステロール(HDL−C)を測定することは臨床的により重要な意義を有している。現在HDLコレステロールの測定方法としては、超遠心法、電気泳動法、沈澱法が広く知られている。
【0003】
超遠心法は分離操作に長時間が必要であり、また機器そのものが高価で安価な測定が望めない点など日常検査には不向きであり、電気泳動法は電気泳動支持媒体の違いにより分離能が異なり使用条件や使用される検出試薬によって差異が生じるなど、定量面で問題が残っている。従って現在日常検査としては沈澱法が広く使用されている。
【0004】
沈澱法は沈澱試薬としてポリアニオンと2価金属イオンの組合せ等を使用してCHM、LDL、VLDLを沈澱させ、上澄中に残るHDL中のコレステロール、すなわちHDL−コレステロールを化学試薬又は酵素を使用して測定する方法である。沈澱試薬としては、中井継彦著『HDL−代謝・測定・臨床(HDL−Metabolism.Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社.1986年)、諸種の文献・教材書により1960年代初めより周知の硫酸多糖類―アルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類以外の2価金属イオンの組合せ系、無機ポリアニオン塩系、ポリエチレングリコール等が広く利用されている。沈澱試薬の具体例としては、ヘパリン−カルシウム系試薬、デキストラン硫酸−マグネシウム系試薬、燐タングステン酸−マグネシウム系試薬等がある。
【0005】
これらの沈澱法では血清と沈澱試薬を混合し、一定時間放置し、約3000回転/分にて遠心分離させた後、上澄部分を一定量分別し、化学反応又は酵素反応を行いHDL−コレステロールを定量する方法である。
【0006】
沈澱法においては、沈澱試薬にもとづく問題点や遠心分離操作による問題点などがある。そのため、沈澱効率を高めるための沈澱剤の改良としては、特開昭55-78254号公報、特開昭55-93065号公報、特開昭61-263467号公報、特開昭62-19768号公報、特公平1-39553号公報等に諸種の方法が記載されている。
【0007】
また、従来の沈澱法の大きな欠点は、トリグリセリドが多い試薬の場合には遠心分離後に沈殿物が一部浮遊することがある。そのため遠心条件の調整などが必要で問題点が大きい。また、燐タングステン酸塩マグネシウムイオンを用いる方法では、溶液のpHにより沈澱がバラつくことがある。そのためpHの厳密な調整などが必要という問題点がある。
【0008】
また、遠心分離液の上澄液を分別する際、特に液量が少ない場合は、沈澱物の境界領域が目視で判断しにくいため再現性、精度上問題が発生したり、個人差が発生したりして定量分析精度が低下することがある。これらの遠心操作に伴う欠点を改善することが求められている。
【0009】
近年、これらの煩雑な操作法が不要で、自動分析装置において使用可能なダイレクト法が急速に普及してきた。例えば、特開平8-131197号公報には、凝集剤として硫酸化シクロデキストリンを用いて、HDL以外のリポ蛋白と十分に反応させた後に、ポリオキシエチレングリコールで修飾した酵素を作用させて、HDL中のコレステロールを測定する方法が開示されている。WO98/26090号公報には、第一工程でHDL以外のリポ蛋白をカタラーゼで消去し、第二工程でHDLに特異的に作用する活性剤を用いてHDL-Cを測定する方法が開示されている。更に、特開平9-96637号公報には、初めにHDL以外のリポ蛋白に対する抗体を作用させ、ついでHDLを溶解してHDL中のコレステロールを測定する方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、HDL以外のリポ蛋白からの反応を抑えるために、PEGで修飾した酵素や、抗体など、高価な試薬類を用いる必要があった。
【0011】
ドライケミストリーの分野においても沈殿法が主流だったが、近年ダイレクト法を利用したドライ式の新しい試験片が開発され、特許第3686326号に記載されている。特開2005-137360号公報には、カンジダ・ルゴサ由来のリパーゼを使用することで選択性が向上することが記載されている。しかしいずれの試験片においても、完全にHDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを除去することは出来ていない。
【0012】
【非特許文献1】中井継彦 著『HDL−代謝・測定・臨床(HDL−Metabolism.Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社.1986年)
【特許文献1】特開昭55-78254号公報
【特許文献2】特開昭55-93065号公報
【特許文献3】特開昭61-263467号公報
【特許文献4】特開昭62-19768号公報
【特許文献5】特公平1-39553号公報
【特許文献6】特開平8-131197号公報
【特許文献7】WO98/26090号公報
【特許文献8】特開平9-96637号公報
【特許文献9】特許第3686326号
【特許文献10】特開2005-137360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、安価な材料を用いて、簡便、迅速で特異的に検体中のHDL-Cを測定する方法、HDL-C検出用試薬キット、及びHDL-C検出用乾式分析素子を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、HDL-Cを検出する際の酵素として、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp由来のコレステロールエステラーゼ、並びにPseudomonas sp由来のコレステロールオキシダーゼを用いることにより、HDL中のコレステロールを効率よく選択的に測定できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0015】
本発明によれば、体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法が提供される。
【0016】
好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤を用いる。
好ましくは、HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである。
好ましくは、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。
好ましくは、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである。
好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤、及び/又はHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いる。
【0017】
好ましくは、HDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体である。
好ましくは、HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤が、リンタングステン酸又はその塩と2価の金属イオン、デキストラン硫酸と2価の金属イオン、ヘパリンと2価の金属イオン、又はポリオキシエチレンである。
【0018】
好ましくは、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼによりHDL-Cから生成した過酸化水素にペルオキシダーゼと色原体を作用させて発色反応を行うことによってHDL-Cを測定する。
好ましくは、色原体として、4−アミノアンチピリン又はその誘導体、及び前記4−アミノアンチピリン又はその誘導体とカップリングするトリンダー試薬を使用する。
【0019】
好ましくは、水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子を用いてHDL-Cを測定する。
【0020】
本発明の別の側面によれば、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを少なくとも含む、HDL-C検出用試薬キットが提供される。
【0021】
本発明のさらに別の側面によれば、水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子において、水不透過性支持体上の層にSchizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを含むことを特徴とする、HDL-C検出用乾式分析素子が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のHDL-Cの測定方法によれば、検体中のHDL-Cを簡便迅速に、かつ選択的に測定することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明による高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法は、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とする方法である。
【0024】
本発明では、体液試料中のHDL-Cを測定することができる。体液としては、血液又は尿などを用いることができる。体液試料としては、血液又は尿をそのまま使用してもよいし、適当な前処理を施したものを使用してもよい。
【0025】
次に、本発明の方法において使用する試薬類について説明する。
本発明で用いる酵素としては、コレステロールエステラーゼ、及びコレステロールオキシダーゼである。コレステロールエステラーゼに関しては、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼを用いるが、Schizophyllum commune由来のコレステロールエステラーゼが特に好ましい。また、コレステロールオキシダーゼに関しては、Pseudomonas sp由来のコレステロールオキシダーゼを用いる。本発明で用いる酵素は何れも、各微生物由来の酵素であってもよいし、あるいは周知の方法で製造されたリコンビナント品でもよい。
【0026】
Schizophyllum commune由来のコレステロールエステラーゼとしては、東洋紡社製のCOE-302、Pseudomonas sp由来の由来のコレステロールエステラーゼとしては東洋紡社製のCOE-311、LPL-312、LPL-314、旭化成社製のCEN等があげられる。又Pseudomonas sp由来由来のコレステロールオキシダーゼは、キッコーマン社製のCHO-PELやCHO-PEWL等があげられる。
【0027】
本発明では、HDLを優先的に溶解する界面活性剤を用いることが好ましい。HDLを優先的に溶解する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル(一般式1)、及びポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル(一般式2)を用いることができる。
【化1】
【化2】
【0028】
上記一般式のYとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケン基、フェニル基、ヘテロ環基、水酸基、アルキルオキシ基、フェニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、等が挙げられる。Rとしては、水素原子、炭素鎖 1〜8のアルキル基が挙げられ、同一分子内で同一でも異なっても良い。pは、2〜6を表し、mは0〜20を表し、nは5〜100を表す。
【化3】
【0029】
(一般式3)のスチリル基付加モル数zは1〜5であり、z=1〜3であるポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルが好ましい。
特に好ましい(一般式1)組み合わせは、スチリル基(一般式3)、ポリオキシアルキレン付加モル数m=0であるポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルである。ポリオキシエチレン付加モル数の平均値nは5〜100が好ましく、さらにn=5〜50、特にn=10〜50が好ましい。
nの数は単一でなくある幅を持った混合物でもよい。例えばポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルの市販品としてノイゲンEA−157(第一工業製薬社製)が挙げられ、ポリオキシエチレン付加モル数平均値は17であるが、n=約5〜約30の幅を持った混合物となっている。
【0030】
特に好ましい(一般式2)は、ポリオキシアルキレン付加モル数m=0であるポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。ポリオキシエチレン付加モル数の平均値nは5〜100が好ましく、さらにn=5〜50、特にn=10〜50が好ましい。nの数は単一でなくある幅を持った混合物でもよい。例えばポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルの市販品としてエマルゲンB66(花王社製)が挙げられ、ポリオキシエチレン付加モル数平均値は16であるが、n=約5〜約30の幅を持った混合物となっている。
【0031】
このような界面活性剤の市販品の例としては、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルとしてパイオニンD−6512(竹本油脂社製)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルとしてノイゲンEA−157の他、エマルゲンA90(花王社製)、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとしてソルポールT-20(東邦化学工業社製)、ニューコール2609(日本乳化剤社製)、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルとしてエマルゲンB66の他、ペグノール005(東邦化学工業社製)などが挙げられる。
これら界面活性剤を単独で用いることもできるし、混合物として用いることもできる。
【0032】
本発明ではHDL以外のリポ蛋白の溶解を抑制する界面活性剤を用いることができる。HDL以外のリポ蛋白の溶解を抑制する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体から選ばれる界面活性剤があげられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、エマール20C(花王社製)等があげられ、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体としては、プルロニックシリーズ(旭電化社製)等があげられる。
【0033】
本発明ではHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いることができる。リポ蛋白を凝集させる凝集剤としては、中井継彦著『HDL−代謝・測定・臨床―(HDL-Metabolism,Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社、1986年)、諸種の文献・教科書により1960年代初めより周知の硫酸多糖類―アルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類以外の2価の金属イオンの組み合わせ系、無機ポリアニオン塩系、ポリエチレングリコール等を用いることができる。
【0034】
これらの沈澱試薬のうちで、硫酸多糖類―金属イオンの組み合わせ系としては、『Journal of Laboratoryand Clinical Medicine』82巻473頁以降(1973年)に記載のデキストラン硫酸―カルシウム(2+)イオン複合体、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、『Clin,Chem.』24巻931-933頁(1978年)等に記載のデキストラン硫酸―マグネシウム(2+)イオン複合体、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、『Manual of LipidOperations.Lipid Research Clinics Program.Volume I』Pub.No.(NIH)75-628(1978年)に記載のヘパリン単独、ヘパリンナトリウムーマンガンイオンの組合せ、特開昭55-51359に記載のヘパリンーカルシウムイオンーニッケル(2+)イオンの組合せ等の沈澱試薬が好ましい。無機ポリアニオン塩系沈澱試薬としては、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、Clin,Chem.』23巻882-884頁(1977年)、『Clin,Chem.』25巻939-942頁(1979年)、米国特許4 226 713、特公昭63-27659(米国特許4 215 993)、特開平01-39553(米国特許4 251 519)等に記載の燐タングステン酸(塩)−マグネシウム(2+)イオンの組合せが好ましい。より好ましくは、デキストラン硫酸とマグネシウムイオンがあげられる。
【0035】
本発明では、これらの試薬のほかに、コレステロールを検出するための試薬として、周知の酵素試薬、色原体、及びpH緩衝剤が用いられる。
【0036】
具体的には、酵素としてパーオキシダーゼであり、色原体としては、4-アミノアンチピリン(4-AA)及び、水素供与性カップリングして発色するフェノール性又はアニリン性のトリンダー試薬があげられる。トリンダー試薬としては、好ましくは、アニリン性試薬である、同仁研究所製のADPS、ALPS、TOPS、ADOS、DAOS、HDAOS、MAOS、TOOS等があげられる。
【0037】
pH緩衝剤の例としては、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩や『Biochemistry』5巻(2号)、467-477頁(1966年)に記載のGoodのpH緩衝剤などがある。これらのpH緩衝剤は『蛋白質・酵素の基礎実験法』(堀尾武一ほか著、南江堂、1981年)、『Biochemistry』5巻等の文献の記載を参考にして選択することができる。
【0038】
前記緩衝剤のpHは、用いる酵素の指摘pHに応じて決定され、好ましくは、pH5.0〜8.0に調整される。より好ましくは、pH6.0〜7.0に調整される。
【0039】
次に、測定系が溶液の場合における、本発明の測定方法について説明する。試薬液の組成としては、次の(1)〜(6)を含む組成の溶液が好ましい。
(1)Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ
(2)Pseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼ
(3)HDLを優先的に溶解する界面活性剤
(4)パーオキシダーゼ
(5)色原体(4-AA及びトリンダー試薬)
(6)pH緩衝剤
【0040】
これらの試薬を最適な濃度に調整した試薬液1〜1000μL、好ましくは100〜500μLを、約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間、予めインキュベーションする。そこへ溶液試料0.5〜50μL、好ましくは1〜20μLを加える。一定温度でインキュベートしながら、色原体の発色に応じた波長の時間経時変化を測定する。予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により検体中の被験物質の量を求めることができる。
【0041】
必要な酵素量として、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、パーオキシダーゼのいずれの酵素も、0.2〜20U/mLの範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは、1〜10U/mLで用いる。
【0042】
測定系が溶液の場合、使用する界面活性剤としては、高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤のみでもよい。界面活性剤の濃度としては、0.01〜5%の濃度で用いるのが好ましい。より好ましくは、0.1〜1%の濃度で用いる。
【0043】
次に、測定系がドライ試薬である乾式分析素子の構成について説明する。乾式分析素子は、水不透過性支持体の上に、少なくとも1層の接着層及び、多孔性の展開層を有して構成される。
【0044】
前記多孔性層は、繊維質であっても、非繊維質であってもよく、液体試料の展開層として機能するので、液体計量作用を有する層であることが好ましい。液体計量作用とは、層の表面に点着供給された液体試料を、その中に含有する成分を実質的に偏在させることなく、層の面方向に単位面積当りほぼ一定量の割合で広げる作用である。展開層には、展開面積、展開速度等を調節するために、特開昭60-222770、特開昭63-219397、特開昭62-182652に記載のような親水性高分子又は界面活性剤を含有することができる。
【0045】
繊維性の多孔層は、特開昭55−164356号公報、特開昭57−66359号公報、特開昭60−222769号公報等に代表されるような、ポリエステル繊維のものが好ましい。非繊維性多孔層としては、ポリスルホン酸等の有機高分子であることが好ましい。
【0046】
接着層は、前記水不透過性支持体、及び前記多孔層を接着する機能を有するもので、ゼラチン及びこれらの誘導体(例、フタル化ゼラチン)、セルロース誘導体(例、ヒドロキシプロピルセルロース)、アガロース、アクリルアミド重合体、メタアクリルアミド重合体、アクリルアミド又はメタアクリルアミドと各種ビニル性モノマーとの共重合体等の親水性ポリマーが利用できる。
【0047】
親水性ポリマーを含む水溶液を周知の方法で、均一に塗布するが、塗布の方法は公知の方法を利用できる。塗布には、例えば、ディップ塗布、押し出し塗布、ドクター塗布、ホッパー塗布、カーテン塗布等を適宜選択して用いることができる。
【0048】
接着層の上に多孔層を塗布することも出来るが、好ましくは、予め編み物として供給されている布や多孔膜をラミネートするのが好ましい。ラミネートの方法は、特開昭55-164356に記載のように、親水性ポリマーを含む接着層の表面を水で一様に湿潤させておき、その上に布や多孔性膜を重ねて軽くほぼ一様に圧力をかけて接着させる方法で接着させる。接着層の厚さは、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは、1〜20μmである。
【0049】
光透過性支持体の材料として好ましいものはポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、セルローストリアセテート等のセルロースエーテル類である。親水性層の吸水層、検出層、実質的に無孔性の試薬層等を支持体に強固に接着させるために、通常、支持体に下塗り層を設けるか、親水化処理を施す。支持体の厚みは、特に制限されないが、10〜1000μmが好ましく、300〜800μmがより好ましい。光透過性のある支持体の場合、最終的な検出は、支持体側でも、多孔層側でも構わないが、光不透過性の場合、多孔層側から検出する。
【0050】
次に本発明の測定方法に用いられる乾式分析素子に用いられるコレステロール測定用試薬組成物と光学的変化を生じる試薬組成物について説明する。
【0051】
試薬組成物は、第1の多孔性層に含まれてもよいし、接着層と多孔性層との両方に含まれてもよいし、全部又は大部分がいずれかの層に含まれてもよいし、あるいは接着層と多孔性層以外の層に含めてもよい。
【0052】
HDL-C検出用乾式分析素子において、Schizophyllum commune由来、又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、Pseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼ、いずれの酵素も、1平米あたり、0.1〜20kU用いるのが好ましい。より好ましくは、1平米あたり、0.5〜10kU用いる。
【0053】
前記2種類の界面活性剤(即ち、HDLを優先的に溶解する界面活性剤、及びHDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性)は、いずれも1平米あたり、0.2〜20g供給するのが好ましく、より好ましくは、1〜10g供給する。なお、HDLを優先的に溶解する界面活性剤とHDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤の量比は9/1〜5/5が好ましい。より好ましくは、8/2〜6/4の割合で用いる。
【0054】
HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤は、好ましくは硫酸デキストラン(MW=5000000)とマグネシウムイオンを用い、1平米あたり、硫酸デキストランとして、0.05〜10g、塩化マグネシウム6水和物として、1平米当たり、0.01〜20g用いるのが好ましい。より好ましくは、硫酸デキストラン0.1〜5g/m2 塩化マグネシウム6水和物0.5〜10g/m2用いる。
【0055】
前記パーオキシダーゼは、特に由来は限定されないが、西洋ワサビ由来が好ましい。使用量としては、1〜100kU/m2が好ましいが、より好ましくは10〜50kU/m2用いる。
【0056】
前記色原体に関しては、4-アミノアンチピリン(4-AA)とカップリングして発色する前記試薬の組み合わせが好ましく、特に好ましくは、DAOSを用いる。使用する色原体の量は、4-AA及び水素供与性カップリング剤いずれも、0.1〜10g/m2用いるのが好ましい。より好ましくは、0.3〜5g/m2用いる。
【0057】
HDL-Cを検出するための乾式分析素子におけるその他試薬組成物には、必要に応じ、安定化剤、pH緩衝剤、架橋剤(硬膜剤又は硬化剤)、界面活性剤、ポリマー等を含有させることができる。本発明の乾式分析素子の接着層又は多孔層に含有させることができる。
【0058】
前記緩衝剤のpHは、用いる酵素の指摘pHに応じて決定され、好ましくは、pH5.0〜8.0に調整される。より好ましくは、pH6.0〜7.0に調整される。
【0059】
本発明の乾式分析素子は、例えば、一辺約5mmから約30mmの正方形またはほぼ同サイズの円形等の小片に裁断し、特公昭57−283331号公報(対応米国特許4,169,751)、実開昭56−142454号公報(対応米国特許4,387,990)、特開昭57−63452号公報、実開昭58−32350号公報、特表昭58−501144号公報(対応国際公:WO083/00391)等に記載のスライド枠に収めて化学分析スライドとして用いることができ、これは製造,包装,輸送,保存,測定操作等の観点で好ましい。使用目的によっては、長いテープ状でカセットまたはマガジンに収めて用いたり、又は小片を開口のある容器内に収めて用いたり、又は小片を開口カードに貼付または収めて用いたり、あるいは裁断した小片をそのまま用いることなどもできる。
【0060】
本発明の乾式分析素子は、例えば約2μL〜約30μL、好ましくは4μL〜15μLの範囲の水性液体試料液を、多孔性液体試料展開層に点着する。点着した乾式分析素子を約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間インキュベーションする。乾式分析素子内の発色又は変色を光透過性支持体側から反射測光し、予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により検体中の被験物質の量を求めることができる。
【0061】
測定操作は特開昭60−125543号公報、特開昭60−220862号公報、特開昭61−294367号公報、特開昭58−161867号公報(対応米国特許4,424,191)などに記載の化学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析を実施できる。なお、目的や必要精度によっては目視により発色の度合いを判定して、半定量的な測定を行ってもよい。
【0062】
本発明の乾式分析素子は、分析を行うまでは乾燥状態で貯蔵・保管されるため、試薬を用時調製する必要がなく、また一般に乾燥状態の方が試薬の安定性が高いことから、試薬溶液を用時調製しなければならないいわゆる溶液法より簡便性、迅速性に優れている。また、微量の液体試料で、精度の高い検査を迅速に行うことができる検査方法としても優れている。
【0063】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:本発明の酵素を用いた溶液系の測定例
次に示す組成の試薬液を調整した。
MES緩衝剤(pH7.0) 700mmlo/L
コレステロールエステラーゼ(Schizophyllum commune由来) 4.5U/mL
コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 2.8U/mL
パーオキシダーゼ 4.8U/mL
4-アミノアンチピリン(和光純薬社製) 4.0mmol/L
DAOS(同仁研究所社製) 4.0mmol/L
エマルゲンB66(花王社製) 0.62mg/mL
【0065】
HDL、LDLの精製品をのコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記試薬液245μLを予め37℃3分間インキュベートしておき、そこに前記検体5μLを加え、600nmの発色の様子を測定した。その結果、図1に示すように、前記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLは殆ど変化しなかった。
【0066】
比較例1:他の由来のコレステロールエステラーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールエステラーゼのみを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 4.5U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0067】
その結果、図2に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0068】
比較例2:他の由来のコレステロールオキシダーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールオキシダーゼのみを下記の由来のものを使用した。
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 2.8U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0069】
その結果、図3に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0070】
比較例3:他の由来のコレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 4.5U/mL
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 2.8U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0071】
その結果、図4に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0072】
実施例2:本発明の酵素を用いた乾式分析素子
ゼラチン下塗りされている180μmのポリエチレンテレフタレート無色透明平滑フィルムにゼラチン水溶液を乾燥後の厚さが14μmになるように塗布し、乾燥した。次に上記フィルム上に約30g/m2の供給量で水を全面に供給して湿潤させた後、50デニール相当のポリエステル紡績糸を36ゲージ編みしたトリコット編み物布地を軽く圧力をかけて積層し、乾燥させた。次に、上記の布地上に下記組成の水溶液を塗布乾燥した。
【0073】
MES緩衝剤(pH6.6) 18g/m2
コレステロールエステラーゼ(Schizophyllum commune由来)1.9kU/ m2
コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 1.2kU/ m2
パーオキシダーゼ 31kU/ m2
4-アミノアンチピリン(和光純薬社製) 0.4g/ m2
DAOS(同仁研究所社製) 0.4g/ m2
エマルゲンB66(花王社製) 2.0g/ m2
プルロニック F-88(旭電化社製) 1.3g/ m2
デキストラン硫酸(5000,000)(和光純薬社製) 0.7g/ m2
塩化マグネシウム6水和物((和光純薬社製) 4.6g/m2
【0074】
HDL、LDLの精製品をコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記乾式分析素子に、検体10μLを点着し、その後37℃ 6分間インキュベートした。この時の600nmの発色の様子を測定した。その結果、図5に示すように、上記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLのODは殆ど変化しなかった。
【0075】
健常人25人について、本発明の方法とリンタングステン酸による分画法について、多検体相関を調べた。その結果、図6に示すように、本発明は基準の方法に比較して良好な相関を得ることができた。
【0076】
比較例4
実施例2と同様の方法で乾式分析素子を製造するが、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 1.9U/ m2
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 1.2U/ m2
実施例2と同様の検体を使用し、同様の方法で測定した。
【0077】
その結果、図7に示すように、上記方法で製造した分析素子は、HDLに対する反応性も、LDLに対する反応性も低く、HDL特異性もない。
【0078】
実施例3:本発明の酵素を用いた乾式分析素子(2)
実施例2のエマルゲンB66をペグノール005(東邦化学工業社製)、パイオニンD−6512(竹本油脂社製)、エマルゲンA90(花王社製)、ノイゲンEA−157(第一工業製薬社製)、ソルポールT20(東邦化学工業社製)に変える以外は同様の方法で乾式分析素子を製造した。
【0079】
HDL、LDLの精製品をコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記乾式分析素子に、検体10μLを点着し、その後37℃ 6分間インキュベートした。この時の600nmの発色の様子を測定した。その結果、図8〜12に示すように、上記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLのODは殆ど変化しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の酵素を用いた溶液系の測定例(実施例1)の結果を示す。
【図2】図2は、他の由来のコレステロールエステラーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例1)の結果を示す。
【図3】図3は、他の由来のコレステロールオキシダーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例2)の結果を示す。
【図4】図4は、他の由来のコレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例3)の結果を示す。
【図5】図5は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例2)の結果を示す。
【図6】図6は、本発明の方法とリンタングステン酸による分画法について多検体相関を調べた結果を示す。
【図7】図7は、他の由来のコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを用いた乾式分析素子による測定例(比較例4)の結果を示す。
【図8】図8は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ペグノール005)の結果を示す。
【図9】図9は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、パイオニンD−6512)の結果を示す。
【図10】図10は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、エマルゲンA90)の結果を示す。
【図11】図11は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ノイゲンEA−157)の結果を示す。
【図12】図12は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ソルポールT20)の結果を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)を測定する方法に関する。高密度リポ蛋白コレステロールの血中レベルは動脈硬化疾患の発症予知に有用な指標となることが知られている。
【背景技術】
【0002】
血液中に存在する脂質は、遊離脂肪酸がアルブミンと結合している以外はリポ蛋白の構造の中に組み込まれていて、カイロミクロン(CHM)、超低密度リポ蛋白(VLDL)、低密度リポ蛋白(LDL)、高密度リポ蛋白(HDL)等として存在し、その中のコレステロールは特にVLDL、LDL、HDLに分布している。HDLは動脈硬化による心疾患の予防因子とされており、従ってHDLの代わりに高密度リポ蛋白コレステロール(HDL−C)を測定することは臨床的により重要な意義を有している。現在HDLコレステロールの測定方法としては、超遠心法、電気泳動法、沈澱法が広く知られている。
【0003】
超遠心法は分離操作に長時間が必要であり、また機器そのものが高価で安価な測定が望めない点など日常検査には不向きであり、電気泳動法は電気泳動支持媒体の違いにより分離能が異なり使用条件や使用される検出試薬によって差異が生じるなど、定量面で問題が残っている。従って現在日常検査としては沈澱法が広く使用されている。
【0004】
沈澱法は沈澱試薬としてポリアニオンと2価金属イオンの組合せ等を使用してCHM、LDL、VLDLを沈澱させ、上澄中に残るHDL中のコレステロール、すなわちHDL−コレステロールを化学試薬又は酵素を使用して測定する方法である。沈澱試薬としては、中井継彦著『HDL−代謝・測定・臨床(HDL−Metabolism.Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社.1986年)、諸種の文献・教材書により1960年代初めより周知の硫酸多糖類―アルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類以外の2価金属イオンの組合せ系、無機ポリアニオン塩系、ポリエチレングリコール等が広く利用されている。沈澱試薬の具体例としては、ヘパリン−カルシウム系試薬、デキストラン硫酸−マグネシウム系試薬、燐タングステン酸−マグネシウム系試薬等がある。
【0005】
これらの沈澱法では血清と沈澱試薬を混合し、一定時間放置し、約3000回転/分にて遠心分離させた後、上澄部分を一定量分別し、化学反応又は酵素反応を行いHDL−コレステロールを定量する方法である。
【0006】
沈澱法においては、沈澱試薬にもとづく問題点や遠心分離操作による問題点などがある。そのため、沈澱効率を高めるための沈澱剤の改良としては、特開昭55-78254号公報、特開昭55-93065号公報、特開昭61-263467号公報、特開昭62-19768号公報、特公平1-39553号公報等に諸種の方法が記載されている。
【0007】
また、従来の沈澱法の大きな欠点は、トリグリセリドが多い試薬の場合には遠心分離後に沈殿物が一部浮遊することがある。そのため遠心条件の調整などが必要で問題点が大きい。また、燐タングステン酸塩マグネシウムイオンを用いる方法では、溶液のpHにより沈澱がバラつくことがある。そのためpHの厳密な調整などが必要という問題点がある。
【0008】
また、遠心分離液の上澄液を分別する際、特に液量が少ない場合は、沈澱物の境界領域が目視で判断しにくいため再現性、精度上問題が発生したり、個人差が発生したりして定量分析精度が低下することがある。これらの遠心操作に伴う欠点を改善することが求められている。
【0009】
近年、これらの煩雑な操作法が不要で、自動分析装置において使用可能なダイレクト法が急速に普及してきた。例えば、特開平8-131197号公報には、凝集剤として硫酸化シクロデキストリンを用いて、HDL以外のリポ蛋白と十分に反応させた後に、ポリオキシエチレングリコールで修飾した酵素を作用させて、HDL中のコレステロールを測定する方法が開示されている。WO98/26090号公報には、第一工程でHDL以外のリポ蛋白をカタラーゼで消去し、第二工程でHDLに特異的に作用する活性剤を用いてHDL-Cを測定する方法が開示されている。更に、特開平9-96637号公報には、初めにHDL以外のリポ蛋白に対する抗体を作用させ、ついでHDLを溶解してHDL中のコレステロールを測定する方法が記載されている。
【0010】
しかしながら、HDL以外のリポ蛋白からの反応を抑えるために、PEGで修飾した酵素や、抗体など、高価な試薬類を用いる必要があった。
【0011】
ドライケミストリーの分野においても沈殿法が主流だったが、近年ダイレクト法を利用したドライ式の新しい試験片が開発され、特許第3686326号に記載されている。特開2005-137360号公報には、カンジダ・ルゴサ由来のリパーゼを使用することで選択性が向上することが記載されている。しかしいずれの試験片においても、完全にHDL以外のリポ蛋白中のコレステロールを除去することは出来ていない。
【0012】
【非特許文献1】中井継彦 著『HDL−代謝・測定・臨床(HDL−Metabolism.Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社.1986年)
【特許文献1】特開昭55-78254号公報
【特許文献2】特開昭55-93065号公報
【特許文献3】特開昭61-263467号公報
【特許文献4】特開昭62-19768号公報
【特許文献5】特公平1-39553号公報
【特許文献6】特開平8-131197号公報
【特許文献7】WO98/26090号公報
【特許文献8】特開平9-96637号公報
【特許文献9】特許第3686326号
【特許文献10】特開2005-137360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、安価な材料を用いて、簡便、迅速で特異的に検体中のHDL-Cを測定する方法、HDL-C検出用試薬キット、及びHDL-C検出用乾式分析素子を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意研究の結果、HDL-Cを検出する際の酵素として、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp由来のコレステロールエステラーゼ、並びにPseudomonas sp由来のコレステロールオキシダーゼを用いることにより、HDL中のコレステロールを効率よく選択的に測定できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0015】
本発明によれば、体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法が提供される。
【0016】
好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤を用いる。
好ましくは、HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである。
好ましくは、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。
好ましくは、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである。
好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤、及び/又はHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いる。
【0017】
好ましくは、HDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体である。
好ましくは、HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤が、リンタングステン酸又はその塩と2価の金属イオン、デキストラン硫酸と2価の金属イオン、ヘパリンと2価の金属イオン、又はポリオキシエチレンである。
【0018】
好ましくは、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼによりHDL-Cから生成した過酸化水素にペルオキシダーゼと色原体を作用させて発色反応を行うことによってHDL-Cを測定する。
好ましくは、色原体として、4−アミノアンチピリン又はその誘導体、及び前記4−アミノアンチピリン又はその誘導体とカップリングするトリンダー試薬を使用する。
【0019】
好ましくは、水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子を用いてHDL-Cを測定する。
【0020】
本発明の別の側面によれば、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを少なくとも含む、HDL-C検出用試薬キットが提供される。
【0021】
本発明のさらに別の側面によれば、水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子において、水不透過性支持体上の層にSchizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを含むことを特徴とする、HDL-C検出用乾式分析素子が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のHDL-Cの測定方法によれば、検体中のHDL-Cを簡便迅速に、かつ選択的に測定することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明による高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法は、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とする方法である。
【0024】
本発明では、体液試料中のHDL-Cを測定することができる。体液としては、血液又は尿などを用いることができる。体液試料としては、血液又は尿をそのまま使用してもよいし、適当な前処理を施したものを使用してもよい。
【0025】
次に、本発明の方法において使用する試薬類について説明する。
本発明で用いる酵素としては、コレステロールエステラーゼ、及びコレステロールオキシダーゼである。コレステロールエステラーゼに関しては、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼを用いるが、Schizophyllum commune由来のコレステロールエステラーゼが特に好ましい。また、コレステロールオキシダーゼに関しては、Pseudomonas sp由来のコレステロールオキシダーゼを用いる。本発明で用いる酵素は何れも、各微生物由来の酵素であってもよいし、あるいは周知の方法で製造されたリコンビナント品でもよい。
【0026】
Schizophyllum commune由来のコレステロールエステラーゼとしては、東洋紡社製のCOE-302、Pseudomonas sp由来の由来のコレステロールエステラーゼとしては東洋紡社製のCOE-311、LPL-312、LPL-314、旭化成社製のCEN等があげられる。又Pseudomonas sp由来由来のコレステロールオキシダーゼは、キッコーマン社製のCHO-PELやCHO-PEWL等があげられる。
【0027】
本発明では、HDLを優先的に溶解する界面活性剤を用いることが好ましい。HDLを優先的に溶解する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル(一般式1)、及びポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル(一般式2)を用いることができる。
【化1】
【化2】
【0028】
上記一般式のYとしては、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケン基、フェニル基、ヘテロ環基、水酸基、アルキルオキシ基、フェニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、シアノ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニル基、等が挙げられる。Rとしては、水素原子、炭素鎖 1〜8のアルキル基が挙げられ、同一分子内で同一でも異なっても良い。pは、2〜6を表し、mは0〜20を表し、nは5〜100を表す。
【化3】
【0029】
(一般式3)のスチリル基付加モル数zは1〜5であり、z=1〜3であるポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルが好ましい。
特に好ましい(一般式1)組み合わせは、スチリル基(一般式3)、ポリオキシアルキレン付加モル数m=0であるポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルである。ポリオキシエチレン付加モル数の平均値nは5〜100が好ましく、さらにn=5〜50、特にn=10〜50が好ましい。
nの数は単一でなくある幅を持った混合物でもよい。例えばポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルの市販品としてノイゲンEA−157(第一工業製薬社製)が挙げられ、ポリオキシエチレン付加モル数平均値は17であるが、n=約5〜約30の幅を持った混合物となっている。
【0030】
特に好ましい(一般式2)は、ポリオキシアルキレン付加モル数m=0であるポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。ポリオキシエチレン付加モル数の平均値nは5〜100が好ましく、さらにn=5〜50、特にn=10〜50が好ましい。nの数は単一でなくある幅を持った混合物でもよい。例えばポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルの市販品としてエマルゲンB66(花王社製)が挙げられ、ポリオキシエチレン付加モル数平均値は16であるが、n=約5〜約30の幅を持った混合物となっている。
【0031】
このような界面活性剤の市販品の例としては、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルとしてパイオニンD−6512(竹本油脂社製)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルとしてノイゲンEA−157の他、エマルゲンA90(花王社製)、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとしてソルポールT-20(東邦化学工業社製)、ニューコール2609(日本乳化剤社製)、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルとしてエマルゲンB66の他、ペグノール005(東邦化学工業社製)などが挙げられる。
これら界面活性剤を単独で用いることもできるし、混合物として用いることもできる。
【0032】
本発明ではHDL以外のリポ蛋白の溶解を抑制する界面活性剤を用いることができる。HDL以外のリポ蛋白の溶解を抑制する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体から選ばれる界面活性剤があげられる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、エマール20C(花王社製)等があげられ、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体としては、プルロニックシリーズ(旭電化社製)等があげられる。
【0033】
本発明ではHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いることができる。リポ蛋白を凝集させる凝集剤としては、中井継彦著『HDL−代謝・測定・臨床―(HDL-Metabolism,Assay Methods and Clinical Application)』(中外医学社、1986年)、諸種の文献・教科書により1960年代初めより周知の硫酸多糖類―アルカリ土類金属イオン又はアルカリ土類以外の2価の金属イオンの組み合わせ系、無機ポリアニオン塩系、ポリエチレングリコール等を用いることができる。
【0034】
これらの沈澱試薬のうちで、硫酸多糖類―金属イオンの組み合わせ系としては、『Journal of Laboratoryand Clinical Medicine』82巻473頁以降(1973年)に記載のデキストラン硫酸―カルシウム(2+)イオン複合体、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、『Clin,Chem.』24巻931-933頁(1978年)等に記載のデキストラン硫酸―マグネシウム(2+)イオン複合体、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、『Manual of LipidOperations.Lipid Research Clinics Program.Volume I』Pub.No.(NIH)75-628(1978年)に記載のヘパリン単独、ヘパリンナトリウムーマンガンイオンの組合せ、特開昭55-51359に記載のヘパリンーカルシウムイオンーニッケル(2+)イオンの組合せ等の沈澱試薬が好ましい。無機ポリアニオン塩系沈澱試薬としては、『J.Lipid Res.』11巻583-595頁(1970年)、Clin,Chem.』23巻882-884頁(1977年)、『Clin,Chem.』25巻939-942頁(1979年)、米国特許4 226 713、特公昭63-27659(米国特許4 215 993)、特開平01-39553(米国特許4 251 519)等に記載の燐タングステン酸(塩)−マグネシウム(2+)イオンの組合せが好ましい。より好ましくは、デキストラン硫酸とマグネシウムイオンがあげられる。
【0035】
本発明では、これらの試薬のほかに、コレステロールを検出するための試薬として、周知の酵素試薬、色原体、及びpH緩衝剤が用いられる。
【0036】
具体的には、酵素としてパーオキシダーゼであり、色原体としては、4-アミノアンチピリン(4-AA)及び、水素供与性カップリングして発色するフェノール性又はアニリン性のトリンダー試薬があげられる。トリンダー試薬としては、好ましくは、アニリン性試薬である、同仁研究所製のADPS、ALPS、TOPS、ADOS、DAOS、HDAOS、MAOS、TOOS等があげられる。
【0037】
pH緩衝剤の例としては、炭酸塩、硫酸塩、燐酸塩や『Biochemistry』5巻(2号)、467-477頁(1966年)に記載のGoodのpH緩衝剤などがある。これらのpH緩衝剤は『蛋白質・酵素の基礎実験法』(堀尾武一ほか著、南江堂、1981年)、『Biochemistry』5巻等の文献の記載を参考にして選択することができる。
【0038】
前記緩衝剤のpHは、用いる酵素の指摘pHに応じて決定され、好ましくは、pH5.0〜8.0に調整される。より好ましくは、pH6.0〜7.0に調整される。
【0039】
次に、測定系が溶液の場合における、本発明の測定方法について説明する。試薬液の組成としては、次の(1)〜(6)を含む組成の溶液が好ましい。
(1)Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ
(2)Pseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼ
(3)HDLを優先的に溶解する界面活性剤
(4)パーオキシダーゼ
(5)色原体(4-AA及びトリンダー試薬)
(6)pH緩衝剤
【0040】
これらの試薬を最適な濃度に調整した試薬液1〜1000μL、好ましくは100〜500μLを、約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間、予めインキュベーションする。そこへ溶液試料0.5〜50μL、好ましくは1〜20μLを加える。一定温度でインキュベートしながら、色原体の発色に応じた波長の時間経時変化を測定する。予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により検体中の被験物質の量を求めることができる。
【0041】
必要な酵素量として、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、パーオキシダーゼのいずれの酵素も、0.2〜20U/mLの範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは、1〜10U/mLで用いる。
【0042】
測定系が溶液の場合、使用する界面活性剤としては、高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤のみでもよい。界面活性剤の濃度としては、0.01〜5%の濃度で用いるのが好ましい。より好ましくは、0.1〜1%の濃度で用いる。
【0043】
次に、測定系がドライ試薬である乾式分析素子の構成について説明する。乾式分析素子は、水不透過性支持体の上に、少なくとも1層の接着層及び、多孔性の展開層を有して構成される。
【0044】
前記多孔性層は、繊維質であっても、非繊維質であってもよく、液体試料の展開層として機能するので、液体計量作用を有する層であることが好ましい。液体計量作用とは、層の表面に点着供給された液体試料を、その中に含有する成分を実質的に偏在させることなく、層の面方向に単位面積当りほぼ一定量の割合で広げる作用である。展開層には、展開面積、展開速度等を調節するために、特開昭60-222770、特開昭63-219397、特開昭62-182652に記載のような親水性高分子又は界面活性剤を含有することができる。
【0045】
繊維性の多孔層は、特開昭55−164356号公報、特開昭57−66359号公報、特開昭60−222769号公報等に代表されるような、ポリエステル繊維のものが好ましい。非繊維性多孔層としては、ポリスルホン酸等の有機高分子であることが好ましい。
【0046】
接着層は、前記水不透過性支持体、及び前記多孔層を接着する機能を有するもので、ゼラチン及びこれらの誘導体(例、フタル化ゼラチン)、セルロース誘導体(例、ヒドロキシプロピルセルロース)、アガロース、アクリルアミド重合体、メタアクリルアミド重合体、アクリルアミド又はメタアクリルアミドと各種ビニル性モノマーとの共重合体等の親水性ポリマーが利用できる。
【0047】
親水性ポリマーを含む水溶液を周知の方法で、均一に塗布するが、塗布の方法は公知の方法を利用できる。塗布には、例えば、ディップ塗布、押し出し塗布、ドクター塗布、ホッパー塗布、カーテン塗布等を適宜選択して用いることができる。
【0048】
接着層の上に多孔層を塗布することも出来るが、好ましくは、予め編み物として供給されている布や多孔膜をラミネートするのが好ましい。ラミネートの方法は、特開昭55-164356に記載のように、親水性ポリマーを含む接着層の表面を水で一様に湿潤させておき、その上に布や多孔性膜を重ねて軽くほぼ一様に圧力をかけて接着させる方法で接着させる。接着層の厚さは、0.5〜50μmが好ましく、より好ましくは、1〜20μmである。
【0049】
光透過性支持体の材料として好ましいものはポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、セルローストリアセテート等のセルロースエーテル類である。親水性層の吸水層、検出層、実質的に無孔性の試薬層等を支持体に強固に接着させるために、通常、支持体に下塗り層を設けるか、親水化処理を施す。支持体の厚みは、特に制限されないが、10〜1000μmが好ましく、300〜800μmがより好ましい。光透過性のある支持体の場合、最終的な検出は、支持体側でも、多孔層側でも構わないが、光不透過性の場合、多孔層側から検出する。
【0050】
次に本発明の測定方法に用いられる乾式分析素子に用いられるコレステロール測定用試薬組成物と光学的変化を生じる試薬組成物について説明する。
【0051】
試薬組成物は、第1の多孔性層に含まれてもよいし、接着層と多孔性層との両方に含まれてもよいし、全部又は大部分がいずれかの層に含まれてもよいし、あるいは接着層と多孔性層以外の層に含めてもよい。
【0052】
HDL-C検出用乾式分析素子において、Schizophyllum commune由来、又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、Pseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼ、いずれの酵素も、1平米あたり、0.1〜20kU用いるのが好ましい。より好ましくは、1平米あたり、0.5〜10kU用いる。
【0053】
前記2種類の界面活性剤(即ち、HDLを優先的に溶解する界面活性剤、及びHDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性)は、いずれも1平米あたり、0.2〜20g供給するのが好ましく、より好ましくは、1〜10g供給する。なお、HDLを優先的に溶解する界面活性剤とHDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤の量比は9/1〜5/5が好ましい。より好ましくは、8/2〜6/4の割合で用いる。
【0054】
HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤は、好ましくは硫酸デキストラン(MW=5000000)とマグネシウムイオンを用い、1平米あたり、硫酸デキストランとして、0.05〜10g、塩化マグネシウム6水和物として、1平米当たり、0.01〜20g用いるのが好ましい。より好ましくは、硫酸デキストラン0.1〜5g/m2 塩化マグネシウム6水和物0.5〜10g/m2用いる。
【0055】
前記パーオキシダーゼは、特に由来は限定されないが、西洋ワサビ由来が好ましい。使用量としては、1〜100kU/m2が好ましいが、より好ましくは10〜50kU/m2用いる。
【0056】
前記色原体に関しては、4-アミノアンチピリン(4-AA)とカップリングして発色する前記試薬の組み合わせが好ましく、特に好ましくは、DAOSを用いる。使用する色原体の量は、4-AA及び水素供与性カップリング剤いずれも、0.1〜10g/m2用いるのが好ましい。より好ましくは、0.3〜5g/m2用いる。
【0057】
HDL-Cを検出するための乾式分析素子におけるその他試薬組成物には、必要に応じ、安定化剤、pH緩衝剤、架橋剤(硬膜剤又は硬化剤)、界面活性剤、ポリマー等を含有させることができる。本発明の乾式分析素子の接着層又は多孔層に含有させることができる。
【0058】
前記緩衝剤のpHは、用いる酵素の指摘pHに応じて決定され、好ましくは、pH5.0〜8.0に調整される。より好ましくは、pH6.0〜7.0に調整される。
【0059】
本発明の乾式分析素子は、例えば、一辺約5mmから約30mmの正方形またはほぼ同サイズの円形等の小片に裁断し、特公昭57−283331号公報(対応米国特許4,169,751)、実開昭56−142454号公報(対応米国特許4,387,990)、特開昭57−63452号公報、実開昭58−32350号公報、特表昭58−501144号公報(対応国際公:WO083/00391)等に記載のスライド枠に収めて化学分析スライドとして用いることができ、これは製造,包装,輸送,保存,測定操作等の観点で好ましい。使用目的によっては、長いテープ状でカセットまたはマガジンに収めて用いたり、又は小片を開口のある容器内に収めて用いたり、又は小片を開口カードに貼付または収めて用いたり、あるいは裁断した小片をそのまま用いることなどもできる。
【0060】
本発明の乾式分析素子は、例えば約2μL〜約30μL、好ましくは4μL〜15μLの範囲の水性液体試料液を、多孔性液体試料展開層に点着する。点着した乾式分析素子を約20℃〜約45℃の範囲の一定温度で、好ましくは約30℃〜約40℃の範囲内の一定温度で1〜10分間インキュベーションする。乾式分析素子内の発色又は変色を光透過性支持体側から反射測光し、予め作成した検量線を用いて比色測定法の原理により検体中の被験物質の量を求めることができる。
【0061】
測定操作は特開昭60−125543号公報、特開昭60−220862号公報、特開昭61−294367号公報、特開昭58−161867号公報(対応米国特許4,424,191)などに記載の化学分析装置により極めて容易な操作で高精度の定量分析を実施できる。なお、目的や必要精度によっては目視により発色の度合いを判定して、半定量的な測定を行ってもよい。
【0062】
本発明の乾式分析素子は、分析を行うまでは乾燥状態で貯蔵・保管されるため、試薬を用時調製する必要がなく、また一般に乾燥状態の方が試薬の安定性が高いことから、試薬溶液を用時調製しなければならないいわゆる溶液法より簡便性、迅速性に優れている。また、微量の液体試料で、精度の高い検査を迅速に行うことができる検査方法としても優れている。
【0063】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
実施例1:本発明の酵素を用いた溶液系の測定例
次に示す組成の試薬液を調整した。
MES緩衝剤(pH7.0) 700mmlo/L
コレステロールエステラーゼ(Schizophyllum commune由来) 4.5U/mL
コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 2.8U/mL
パーオキシダーゼ 4.8U/mL
4-アミノアンチピリン(和光純薬社製) 4.0mmol/L
DAOS(同仁研究所社製) 4.0mmol/L
エマルゲンB66(花王社製) 0.62mg/mL
【0065】
HDL、LDLの精製品をのコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記試薬液245μLを予め37℃3分間インキュベートしておき、そこに前記検体5μLを加え、600nmの発色の様子を測定した。その結果、図1に示すように、前記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLは殆ど変化しなかった。
【0066】
比較例1:他の由来のコレステロールエステラーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールエステラーゼのみを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 4.5U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0067】
その結果、図2に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0068】
比較例2:他の由来のコレステロールオキシダーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールオキシダーゼのみを下記の由来のものを使用した。
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 2.8U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0069】
その結果、図3に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0070】
比較例3:他の由来のコレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを用いた場合
実施例1と同様の処方で調液した試薬で、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 4.5U/mL
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 2.8U/mL
実施例1と同様の検体を使用し、測定した。
【0071】
その結果、図4に示すように、HDLに対しても、LDLに対しても感度も小さく、特異性も低かった。
【0072】
実施例2:本発明の酵素を用いた乾式分析素子
ゼラチン下塗りされている180μmのポリエチレンテレフタレート無色透明平滑フィルムにゼラチン水溶液を乾燥後の厚さが14μmになるように塗布し、乾燥した。次に上記フィルム上に約30g/m2の供給量で水を全面に供給して湿潤させた後、50デニール相当のポリエステル紡績糸を36ゲージ編みしたトリコット編み物布地を軽く圧力をかけて積層し、乾燥させた。次に、上記の布地上に下記組成の水溶液を塗布乾燥した。
【0073】
MES緩衝剤(pH6.6) 18g/m2
コレステロールエステラーゼ(Schizophyllum commune由来)1.9kU/ m2
コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 1.2kU/ m2
パーオキシダーゼ 31kU/ m2
4-アミノアンチピリン(和光純薬社製) 0.4g/ m2
DAOS(同仁研究所社製) 0.4g/ m2
エマルゲンB66(花王社製) 2.0g/ m2
プルロニック F-88(旭電化社製) 1.3g/ m2
デキストラン硫酸(5000,000)(和光純薬社製) 0.7g/ m2
塩化マグネシウム6水和物((和光純薬社製) 4.6g/m2
【0074】
HDL、LDLの精製品をコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記乾式分析素子に、検体10μLを点着し、その後37℃ 6分間インキュベートした。この時の600nmの発色の様子を測定した。その結果、図5に示すように、上記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLのODは殆ど変化しなかった。
【0075】
健常人25人について、本発明の方法とリンタングステン酸による分画法について、多検体相関を調べた。その結果、図6に示すように、本発明は基準の方法に比較して良好な相関を得ることができた。
【0076】
比較例4
実施例2と同様の方法で乾式分析素子を製造するが、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを下記の由来のものを使用した。
コレステロールエステラーゼ (Chromobacterium viscosum 由来) 1.9U/ m2
コレステロールオキシダーゼ (Microorganism 由来) 1.2U/ m2
実施例2と同様の検体を使用し、同様の方法で測定した。
【0077】
その結果、図7に示すように、上記方法で製造した分析素子は、HDLに対する反応性も、LDLに対する反応性も低く、HDL特異性もない。
【0078】
実施例3:本発明の酵素を用いた乾式分析素子(2)
実施例2のエマルゲンB66をペグノール005(東邦化学工業社製)、パイオニンD−6512(竹本油脂社製)、エマルゲンA90(花王社製)、ノイゲンEA−157(第一工業製薬社製)、ソルポールT20(東邦化学工業社製)に変える以外は同様の方法で乾式分析素子を製造した。
【0079】
HDL、LDLの精製品をコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記乾式分析素子に、検体10μLを点着し、その後37℃ 6分間インキュベートした。この時の600nmの発色の様子を測定した。その結果、図8〜12に示すように、上記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLのODは殆ど変化しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、本発明の酵素を用いた溶液系の測定例(実施例1)の結果を示す。
【図2】図2は、他の由来のコレステロールエステラーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例1)の結果を示す。
【図3】図3は、他の由来のコレステロールオキシダーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例2)の結果を示す。
【図4】図4は、他の由来のコレステロールエステラーゼとコレステロールオキシダーゼを用いた場合の溶液系の測定例(比較例3)の結果を示す。
【図5】図5は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例2)の結果を示す。
【図6】図6は、本発明の方法とリンタングステン酸による分画法について多検体相関を調べた結果を示す。
【図7】図7は、他の由来のコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを用いた乾式分析素子による測定例(比較例4)の結果を示す。
【図8】図8は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ペグノール005)の結果を示す。
【図9】図9は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、パイオニンD−6512)の結果を示す。
【図10】図10は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、エマルゲンA90)の結果を示す。
【図11】図11は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ノイゲンEA−157)の結果を示す。
【図12】図12は、本発明の酵素を用いた乾式分析素子による測定例(実施例3、ソルポールT20)の結果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法。
【請求項2】
高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤を用いる、請求項1に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項3】
HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである、請求項2に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項4】
ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである請求項3に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項5】
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである請求項4に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項6】
高密度リポ蛋白(HDL)以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤、及び/又はHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いる、請求項1から5の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項7】
HDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体である、請求項6に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項8】
HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤が、リンタングステン酸又はその塩と2価の金属イオン、デキストラン硫酸と2価の金属イオン、ヘパリンと2価の金属イオン、又はポリオキシエチレンである、請求項6又は7に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項9】
コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼによりHDL-Cから生成した過酸化水素にペルオキシダーゼと色原体を作用させて発色反応を行うことによってHDL-Cを測定する、請求項1から8の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項10】
色原体として、4−アミノアンチピリン又はその誘導体、及び前記4−アミノアンチピリン又はその誘導体とカップリングするトリンダー試薬を使用する、請求項9に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項11】
水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子を用いてHDL-Cを測定する、請求項1から10の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項12】
Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを少なくとも含む、HDL-C検出用試薬キット。
【請求項13】
水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子において、水不透過性支持体上の層にSchizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを含むことを特徴とする、HDL-C検出用乾式分析素子。
【請求項1】
体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法。
【請求項2】
高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤を用いる、請求項1に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項3】
HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである、請求項2に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項4】
ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである請求項3に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項5】
ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである請求項4に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項6】
高密度リポ蛋白(HDL)以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤、及び/又はHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いる、請求項1から5の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項7】
HDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体である、請求項6に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項8】
HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤が、リンタングステン酸又はその塩と2価の金属イオン、デキストラン硫酸と2価の金属イオン、ヘパリンと2価の金属イオン、又はポリオキシエチレンである、請求項6又は7に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項9】
コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼによりHDL-Cから生成した過酸化水素にペルオキシダーゼと色原体を作用させて発色反応を行うことによってHDL-Cを測定する、請求項1から8の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項10】
色原体として、4−アミノアンチピリン又はその誘導体、及び前記4−アミノアンチピリン又はその誘導体とカップリングするトリンダー試薬を使用する、請求項9に記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項11】
水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子を用いてHDL-Cを測定する、請求項1から10の何れかに記載のHDL-Cの測定方法。
【請求項12】
Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを少なくとも含む、HDL-C検出用試薬キット。
【請求項13】
水不透過性支持体の上に少なくとも接着層及び多孔性展開層を有している乾式分析素子において、水不透過性支持体上の層にSchizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを含むことを特徴とする、HDL-C検出用乾式分析素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−325587(P2007−325587A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122183(P2007−122183)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]