説明

高嵩密度洗剤組成物

【課題】 洗濯時の機械力が低い条件で使用した場合や低水温であっても、優れた溶解性、洗浄力を確保することができる高嵩密度洗剤組成物の提供。
【解決手段】 (a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有しており、(a)成分/(b)成分の質量比が1/5〜1/1、(b)成分/(c)成分の質量比が1/2〜2/1である高嵩密度洗剤組成物。
(a)成分:一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及び/又はポリグリセリルモノエーテル R−O−(C362n−H (I)式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を示し、nはグリセリンの縮合度であり、1〜7の数を示す。)
(b)成分:炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩
(c)成分:炭素数10〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高嵩密度洗剤組成物に関し、より詳しくは、洗濯時の機械力が低い条件で使用した場合や低水温であっても、優れた溶解性、洗浄力を発揮することができる高嵩密度洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年上市されている洗濯機は、『洗濯を簡単に済ませてしまいたい』という消費者ニーズに対応し、大容量化(一度に多くの衣類が洗える)傾向にあり、また洗濯時間に短時間洗濯モードの設定等がなされている。更に『衣類を大切に洗いたい』というニーズに対し、弱攪拌モードの設定が行われ、衣類いたみの軽減を訴求している。加えて、環境・エネルギーや経済性への対応から、節水、低温洗濯、運転時間の短縮への潮流がある。
【0003】
この潮流は、いずれも洗濯機の仕事量(機械力×時間の意)を低下させる方向であり、その結果、洗剤粒子の溶解速度の低下によって洗浄力の低下が生じ、洗濯終了時に粉末洗剤の溶け残り、洗剤粒子の衣類残留が増大することがある。
【0004】
溶解性を改善する試みとして、例えば特許文献1にはゼオライトを含有したクラッチャースラリーを調製する際に、クエン酸塩を添加して、噴霧乾燥して得られるビーズの強度を向上させ、そのビーズに界面活性剤を塗布して、高い溶解性特性を有する、平均粒径の大きい高嵩密度洗剤粒子群を含有してなる洗浄剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、150μm未満の粒子10重量%未満及び1700μmより大きい粒子10重量%未満を有するベース粉末に、クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の充填剤粒子を有する洗剤組成物が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、粒度分布により溶解性が改善された高密度粒状洗剤が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及びゼオライトを含有してなる高嵩密度粒状洗剤組成物であって、上記ノニオン界面活性剤の含有量が3〜9質量%であり、上記ゼオライトの含有量が26〜35質量%であることを特徴とする高嵩密度粒状洗剤組成物が開示されている。
【特許文献1】特開平5−247497号公報
【特許文献2】特表平7−509267号公報
【特許文献3】特開平11−35998号公報
【特許文献4】特開2003−105379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、洗濯時の機械力や水温が低くても優れた溶解性、洗浄力を発揮することができる高嵩密度洗剤組成物とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有しており、(a)成分/(b)成分の質量比が1/5〜1/1、(b)成分/(c)成分の質量比が1/2〜2/1である高嵩密度洗剤組成物とその製造方法を提供する。
【0010】
(a)成分:一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及び/又はポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22の炭化水素基を示し、nはグリセリンの縮合度であり、1〜7の数を示す。)
(b)成分:炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩
(c)成分:炭素数10〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩
【発明の効果】
【0011】
本発明の高嵩密度洗剤組成物によれば、洗濯時の機械力が低い条件で使用した場合や低水温であっても、優れた溶解性、洗浄力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<(a)成分>
本発明の(a)成分は、一般式(I)で示されるグリセリルモノエーテル、ポリグリセリルモノエーテル又はそれらを併用したもの(以下、これらを総称して「グリセリルモノエーテル等」という)である。
【0013】
一般式(I)中のRは、直鎖、分岐鎖、飽和、不飽和の何れでも良く、炭素数6〜22、更に12〜14、特に12のアルキル基が好ましい。
【0014】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12〜14、特に炭素数12及び14のアルキル基であるグリセリルモノエーテル等の比率が、合計で40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、更に90質量%以上、最も好ましくは95%以上である。
【0015】
(a)成分は、一般式(I)中のnが3〜5であるものが好ましい。なお、(a)成分が、一般式(I)中のnが単一のもののみからなる場合は結晶化しやすいため、特に低温で水への溶解性が劣り、その結果、洗浄力は低下する傾向を示す。一方、(a)成分が、一般式(I)中のnが異なる複数のグリセリルモノエーテル等を含む場合、結晶化が抑制されるため低温でも高い溶解性を示し、その結果良好な洗浄性能が得られる。従って、(a)成分は、一般式(I)中のnが異なる複数のグリセリルモノエーテル等からなるものが好ましく、特にnが3〜5で、且つn=3及び4、n=3及び5、n=4及び5、又はn=3、4及び5のグリセリルモノエーテル等を含むものがより好ましく、特にn=3、4及び5のグリセリルモノエーテル等を含むものが好ましい。
【0016】
一般式(I)中のnは、洗浄力の観点から、n=4が最も好ましく、(a)成分中、n=4であるグリセリルモノエーテル等の比率が10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、特に30質量%以上であることが好ましい。
【0017】
また、一般式(I)中のnが1又は2であるグリセリルモノエーテル等の比率は合計で50質量%未満、更に35質量%以下であることが好ましい。更に、(a)成分中、nが1であるグリセリルモノエーテル等の含有量が30質量%未満、更に20質量%以下であることが好ましい。
【0018】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるグリセリルモノエーテル等が好ましく、その比率が40質量%以上であることが低温溶解性の観点から好ましい。前記比率は、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上である。また、低温での洗浄性能の観点から上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
【0019】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12及び/又は炭素数14のアルキル基であって、且つnが3〜5であるポリグリセリルモノエーテルの合計の比率を99質量%以下とした場合には、低温での溶解性が著しく向上し、その結果洗浄性能が大きく向上する効果が得られる。一般にこの含有量が低いほど低温での溶解性は向上するが、同時に常温での洗浄性能が低下する傾向にあるため、上記した下限値と上限値の範囲が好ましい。
【0020】
(a)成分は、一般式(I)中のRが炭素数12のアルキル基で、nが3〜5であるグリセリルモノエーテル等(a−1)と、一般式(I)中のRが炭素数14のアルキル基で、nが3〜5であるグリセリルモノエーテル等(a−2)の両方を含んでいることが好ましい。更に(a−1)成分及び(a−2)成分は、いずれもnの異なる複数のグリセリルモノエーテル等、特にn=3、4、5の3種のグリセリルモノエーテル等を含有することが好ましい。(a)成分中の(a−1)成分及び(a−2)成分の合計の比率は40質量%以上であることが好ましい。
【0021】
(a)成分を構成するグリセリンの縮合度nの質量割合〔(a)成分中の質量割合〕は、ガスクロマトグラフィー(GC)法のエリア%から求めることができる。
【0022】
本発明の(a)成分は、例えば、炭素数6〜22のアルコールに所定量の2,3−エポキシ−1−プロパノール(グリシドール)をアルカリ触媒の存在下で反応させることで得られる。また、特開2000−160190号公報の段落0007〜0011に記載されたような方法で製造することもできる。
【0023】
なお、一般式(I)中のn=3〜5のグリセリルモノエーテル等が所定比率にあるものを用いるため、必要に応じて反応物を蒸留等により精製することで、所定範囲の縮合度の化合物を得ることができる。
【0024】
例えば、一般式(I)中のn=1、2のものは、減圧下で蒸留することにより留去することができる。n=1、2の成分を減らすことで、3〜5モル成分の割合を増やすことができる。蒸留装置に限定は無いが、薄膜蒸留を行うことにより、これら成分を効率的に分離することができる。至適蒸留温度は、真空度によって大きく変化するが、真空度が0.13kPaの場合、150℃以上300℃以下、好ましくは170℃以上300℃以下、さらに200℃以上300℃以下が好ましい。300℃以上の温度で蒸留すると着色等品質の劣化が生じる場合がある。
【0025】
また例えば、一般式(I)中のn=6モル以上のものを取り除く場合は、カラムによる分離を行うことができる。カラムによる分離は、条件を工夫することにより、n=1、2成分の除去に利用することもできる。
【0026】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、(a)成分の含有量は1〜12質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましく、3〜8質量%が更に好ましく、4〜6質量%が特に好ましい。
【0027】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩であり、下記一般式(II)で表される化合物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
【化1】

【0029】
〔式中、R1は炭素数8〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、R2は炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、Mはカチオンである〕。
【0030】
一般式(II)において、R1は、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、好ましくは炭素数12〜18、特に好ましくは14〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。
【0031】
一般式(II)において、R2は、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、好ましくは1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
【0032】
Mは、アルカリ金属、アンモニウム等のカチオンが好ましく、アルカリ金属の具体例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でもナトリウム、カリウムが好ましい。
【0033】
(b)成分は、公知の製法によって得られる。例えば、油脂に低級アルコールを反応させて得られた脂肪酸低級アルキルエステルを無水硫酸等でスルホン化し、最後に苛性アルカリ等で中和することによって製造することができる。前記原料油脂としては、ヤシ油、パーム核油、豚油、牛脂、米ヌカ油、パーム油、魚油等が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、(b)成分は5〜20質量%が好ましく、6〜18質量%がより好ましく、7〜15質量%が更に好ましく、8〜12質量%が特に好ましい。
【0035】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、(a)成分/(b)成分の質量比を特定することによりさらに優れた効果が得られる。その範囲は1/5〜1/1であり、1/4〜3/4が好ましく、1/3〜2/3がより好ましい。
【0036】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、炭素数10〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩であり、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より炭素数12〜18が好ましい。アルカリ金属の具体例としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でもナトリウム、カリウムが好ましい。
【0037】
これらの脂肪酸塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合、例えば、脂肪酸塩の炭素数が12以上であり、且つ不飽和結合を1つ有する不飽和脂肪酸又はその塩の割合が30〜99質量%、又は、不飽和結合を2つ以上有する不飽和脂肪酸又はその塩の割合が10質量%未満であることが、洗浄力の点で好ましい。
【0038】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より(c)成分は3〜16質量%が好ましく、4〜14質量%がより好ましく、5〜12質量%が更に好ましく、6〜10質量%が特に好ましい。
【0039】
本発明の組成物中、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、(b)成分/(c)成分の質量比を特定することによりさらに優れた効果が得られる。その範囲は1/2〜2/1であり、3/5〜8/5が好ましく、4/5〜7/5がより好ましい。
【0040】
本発明の組成物中の界面活性剤合計量中、溶解性の観点より、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量が70質量%以上が好ましく、75質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、85質量%以上が特に好ましい。
【0041】
本発明の組成物中では、溶解性、造粒性の観点より、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量は、15〜30質量%が好ましく、18〜28質量%がより好ましく、15〜25質量%が更に好ましい。
【0042】
<その他成分>
本発明の組成物は、(a)成分、(b)成分及び(c)成分以外の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
(b)成分及び(c)成分以外の陰イオン界面活性剤としては、高級アルコール若しくはそのエトキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。特に、アルキル鎖の炭素数が10〜18(好ましくは12〜14)の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニア塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0044】
(a)成分以外の非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド(以下「EO」という)付加物、若しくはEO/プロピレンオキシド(以下「PO」という)付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。特に炭素数が10〜16のアルコールのEO1〜10モル付加物が皮脂汚れの除去、耐硬水性、生分解性の点で好ましい。
【0045】
本発明の組成物は、溶解性、洗浄性能、造粒性の観点より、更に、(d)結晶性アルミノ珪酸塩から選ばれる少なくとも1種、及び(e)炭酸塩から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、より好ましくは組成物中の(d)成分の含有量が15〜35質量%、(e)成分の含有量が15〜45質量%、(d)成分と(e)成分の合計含有量が40〜75質量%であり、(d)成分と(e)成分の質量比[(d)/(e)]が1/3〜2/1である。
【0046】
<(d)成分>
(d)成分の結晶性アルミノ珪酸塩としては、チャバザイト、モンデナイト、エリオナイト、ホージャサイト、クリノプチロライト等の天然ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、オメガ型ゼオライト、P型ゼオライト、MAP型ゼオライト等の合成ゼオライトが挙げられる。
【0047】
<(e)成分>
(e)成分の炭酸塩としては、日本化学会編化学便覧(丸善出版)記載の炭酸塩であり、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、炭酸ニッケル、炭酸銅及び炭酸アンモニウム等が挙げられる。これらの炭酸塩は単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0048】
また、ここでいう炭酸塩は、水和物の形態であってもよく、水和物としては、炭酸ナトリウム10水塩、炭酸ナトリウム7水塩、炭酸ナトリウム1水塩、炭酸カリウム2水塩等が挙げられる。
【0049】
上記炭酸塩の中で、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム10水塩、炭酸ナトリウム7水塩、炭酸ナトリウム1水塩、炭酸カリウム2水塩等が好ましく、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム10水塩、炭酸ナトリウム7水塩、炭酸ナトリウム1水塩、炭酸カリウム2水塩等が好ましい。
【0050】
<(f)成分>
本発明の組成物は、洗浄性能の点で、(f)成分として水溶性ポリマーを含有することが好ましく、組成物中の水溶性ポリマーの含有量は0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0051】
水溶性ポリマーとしては、カルボン酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、糖類等が挙げられる。中でも金属イオン封鎖能、固体汚れ・粒子汚れの分散能及び再汚染防止能の点で、重量平均分子量が千〜10万のカルボン酸系ポリマーが好ましい。特に、アクリル酸−マレイン酸コポリマーの塩、ポリアクリル酸塩が好ましい。ここで、塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物には、洗剤の分野で公知のビルダー(硫酸ナトリウム等)、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤(ベントナイト等)、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、抑泡剤(シリコーン等)、香料、酵素(セルラーゼ、プロテアーゼ、ペプチナーゼ、リパーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ等)、着色剤等を含有させることができる。
【0053】
本発明の組成物は、溶解性、生産性の観点で、組成物中の水分(JIS K 3362:1998記載の過熱減量法による)は、1〜10質量%が好ましく、2〜8質量%がより好ましく、3〜6質量%が更に好ましい。
【0054】
本発明の組成物において「高嵩密度」は、JIS K 3362:1998により規定された方法で測定する見掛け嵩密度が500g/L以上であることを意味する。
【0055】
本発明の組成物は、溶解性の点で、見掛け嵩密度が1600g/L以下であることが好ましく、1300g/L以下であることがより好ましく、1000g/L以下であることが更に好ましい。また、利便性や廃棄物(製品の収容・包装に用いる箱等)低減の点で、見掛け嵩密度は500g/L以上であることが好ましく、600g/L以上であることがより好ましく、700g/L以上であることが更に好ましい。
【0056】
本発明の組成物は、溶解性の点で、JIS Z 8801の標準篩を用いて5分間振動させた後、篩目のサイズによる質量分率から求める平均粒径が150〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは150〜800μm、更に好ましくは180〜600μmである。
【0057】
本発明の組成物は、洗浄性能、損傷性の点で、JIS K 3362:1998記載の20℃で測定する0.1質量%水溶液のpHが8〜12であることが好ましく、9〜11.5であることがより好ましく、9.5〜11であることが更に好ましく、10〜11であることが特に好ましい。
【0058】
本発明の組成物は、流動性及び非ケーキング性の点で、表面被覆剤により表面改質を行うことが好ましい。
【0059】
表面被覆剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、二酸化ケイ素、ベントナイト、タルク、クレイ、非晶質シリカ誘導体、結晶性シリケート化合物等のシリケート化合物、金属石鹸、粉末の界面活性剤等の微粉体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ソーダ、アクリル酸とマレイン酸のコポリマー又はその塩等のポリカルボン酸塩等の水溶性ポリマー、脂肪酸が挙げられる。中でもアルミノケイ酸塩、ベントナイトが好ましい。
【0060】
本発明の組成物は、応用技術として利便性の点で、更に圧縮して錠剤形態にしても良いし、1回の使用量を水溶性又は水不溶性の容器に収納することもできる。
【0061】
本発明の組成物は、衣料用洗浄剤として好適に使用されるものであり、その使用方法は、特に制限されないが、低機械力の洗濯条件で洗濯する場合において、特に有用である。なお、ここでいう低機械力とは、例えばMechanical Action(MA)試験布を用いて、洗濯した場合、円形の穴のほつれた糸の本数の総和で示されるMA値が30以下であることを意味する。
【0062】
<製造方法>
以上のような成分を含有する本発明の組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば、噴霧乾燥法、ドライ中和法、乾燥造粒法、ドライブレンド法、流動層乾燥法、薄膜乾燥法、押出し造粒法、転動造粒法、攪拌造粒法、圧密造粒法、界面活性剤担持法又はこれらから選択して組み合わせた方法を適用して、製造することができる。
【0063】
本発明の組成物の製造に際しては、得られる組成物の溶解性を向上させる観点から、(a)成分及び(b)成分を予め混合した後、(c)成分を混合する工程を有することが好ましい。このような工程の順序にするのは、(b)成分の結晶化が(a)成分により阻害され、それにより、組成物の溶解性が向上されるものと考えられるためである。
【実施例】
【0064】
実施例及び比較例
[1]洗剤粒子の製造
表1に示す成分の内、所定量の(a)成分と(b)成分を予め80℃で混合した後、二軸押出機を用いて残りの成分を混合した。得られた粒子を粉砕し、平均粒径を400μmに調整した。この方法により洗剤粒子1−10を製造した。下記に示す方法で溶解率を求めた。
(a)成分:一般式(I)中のRがC12のアルキル基、nが1〜7であり、nが4.0モル、nが3〜5モルのものの割合が52質量%であるポリグリセリルモノアルキルエーテルを用いた。
(b)成分:炭素数16の飽和α−スルホ脂肪酸アルキルエステルナトリウム塩、エステル化率96%、スルホン化率99%を用いた。
(c)成分:パルミチン酸ナトリウム、和光純薬(株)製、試薬特級を用いた。
(d)成分:平均粒径3μmのA型ゼオライト、ゼオビルダー(株)製を用いた
(e)成分:炭酸ナトリウム(デンス灰)、セントラル硝子(株)製を用いた。
(f)成分:平均分子量10000のポリアクリル酸ナトリウム、花王(株)製、オリゴマーDを用いた。
AEノニオン:炭素数C12,エチレンオキサイドが平均8モル付加したポリオキシエチレンアルキルエーテル、花王(株)製、エマルゲン508Kを用いた。
LAS:アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムとして花王(株)製ネオペレックスG15を用いた。
硫酸ナトリウム:四国化成(株)製の無水ボウ硝を用いた。
【0065】
[2]洗剤溶解試験
5℃に温調した水道水(硬度2.6°DH)1L中に洗剤0.6667gを投入し、長さ3.5センチ、直径1センチの紡錘状撹拌子を800回転させて1分間撹拌した後、目開き38μmのステンレス製メッシュでろ過し、105℃で2時間乾燥後の重量から、溶解率を求めた。
溶解率(%)=(最初の洗剤量0.6667g−乾燥後の残量)/最初の洗剤量0.6667g×100
[3]洗浄試験の方法
松下(株)製全自動洗濯機NA-F70APに[1]で製造した洗剤粒子26.67g、下記の通り調製した汚染布を縫いつけた台布5枚、DANISH TECHNOLOGOCAL INSTITUE社製のMA(Machine Action)試験布3枚、設定した浴比になるように木綿の肌着を投入し、水量40L、標準コースで洗濯を行った。なお、MA試験布は、前記5枚の台布の下部、中央(2枚目と3枚目の間)、上部に位置するように置いた。洗濯に用いた水は2007年8月27日に和歌山市内で得られた水道水を温調して使用した(硬度は2.6°DH)。洗浄時の浴比、水温を表2に示す。洗濯された汚染布を台布からはずし、160℃・30秒の条件でプレスにより乾燥後、下記に示す式から洗浄率を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(白布の反射率−洗浄前の反射率)×100
反射率は、日本電色工業(株)製NDR-10DPで460nmフィルターを使用して測定した。
【0066】
<ほうれん草汚染布の調製>
市販のほうれん草をミキサーにより粉砕した後、生成した液体部分を木綿布により濾別した。得られた液体0.5gを6cm×6cmの木綿金布#2023上に均一に塗布し、20℃で12時間乾燥させた。得られた汚染布10枚を、30センチ四方の木綿の台布5枚に2枚ずつ縫いつけたものを洗浄試験に供した。
【0067】
<耐機械力の測定>
洗浄後に取り出したMA試験布3枚を乾燥させ、ほつれた糸の数を数え、MA試験布1枚あたりのほつれた平均本数をMA値とした。MA値が大きいほど洗浄時の機械力が高いことを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有しており、(a)成分/(b)成分の質量比が1/5〜1/1、(b)成分/(c)成分の質量比が1/2〜2/1である高嵩密度洗剤組成物。
(a)成分:一般式(I)で表されるグリセリルモノエーテル及び/又はポリグリセリルモノエーテル
R−O−(C362n−H (I)
(式中、Rは炭素数6〜22のアルキル基及び/又はアルケニル基を示し、nはグリセリンの縮合度であり、1〜7の数を示す。)
(b)成分:炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩
(c)成分:炭素数10〜20の飽和又は不飽和脂肪酸のアルカリ金属塩
【請求項2】
(a)成分中、一般式(I)のRが炭素数12及び又は炭素数14のアルキル基であって、且つグリセリンの縮合度nが3〜5である化合物の比率が40質量%以上である請求項1記載の高嵩密度洗剤組成物。
【請求項3】
(a)成分、(b)成分及び(c)成分の合計量が界面活性剤合計量の70質量%以上である請求項1又は2何れか記載の高嵩密度洗剤組成物。
【請求項4】
(a)成分、(b)成分及び(c)成分の組成物中の合計量が15〜30質量%である請求項1〜3の何れか1項記載の高嵩密度洗剤組成物。
【請求項5】
(a)成分及び(b)成分を予め混合し、その後に(c)成分を混合する工程を有する請求項1〜4の何れか1項記載の高嵩密度洗剤組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−114395(P2009−114395A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−291507(P2007−291507)
【出願日】平成19年11月9日(2007.11.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】