説明

高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒を使用して蝋質供給材料から製造されたホワイトオイル

【課題】蝋質供給材料から高収量のホワイトオイルを生成する方法を提供する。
【解決手段】100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStであり、粘度指数が、式:粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+105によって算出された値より大きく、シクロパラフィン官能性をもつ分子が18重量%未満であり、流動点が0℃未満であり、かつ、セイボルト色度が+20以上である、ホワイトオイルの組成物。また、100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStであり、粘度指数が、式:粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+95によって算出された値より大きく、シクロパラフィン官能性をもつ分子が5重量%から18重量%未満までであり、マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が1.2重量%未満であり、流動点が0℃未満であり、かつ、セイボルト色度が+20以上である、ホワイトオイルの組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒を使用して蝋質供給材料から1種以上のホワイトオイル(流動パラフィン)を製造する方法、および製造されたホワイトオイルの組成物、に関する。
【背景技術】
【0002】
ホワイトオイルは本質的に無色である。ホワイトオイルは工業級または医用級どちらもある。工業級ホワイトオイルはASDM D156−02によるセイボルト色度(Saybolt color)が+20より大きい。医用級ホワイトオイルはセイボルト色度が+25より大きく、特に、+30に等しい。医用および工業用ホワイトオイルの仕様はFDA178.3620およびFDA178.3620に規定されている通り種々のUVスペクトル範囲において低いUV吸光度を有する。食品向け用途に使用するための医用級ホワイトオイルは100℃における動粘度(kinematic viscosity)が8.5cStより大きく、かつ5重量%沸点が391℃より高い。
【0003】
ホワイトオイルは高い商業的価値を有しているが、一般に、製造するのに経費がかかる、何故ならば、それらは水素化分解、高圧水素処理、および吸着剤または溶剤による処理を含めて多数のプロセス工程を要求するからである。ここに、より低い加工コストでホワイトオイル仕様を満たす油を製造しようとする動機が存在する。要望されているものは、水素化分解を必要としないで高収量で高品質の工業級および医用級ホワイトオイルを生成するプロセスである。要望されているプロセスはまた、水素化異性化脱蝋に低い水素分圧しか要求しないこと及びプロセス工程数を減らすことによってコストを低減させるであろう。やはり要望されているものは、広く多様な用途に使用されてもよいように、高い粘度指数と、シクロパラフィン官能性をもつ分子についての所期組成と、低い流動点とを有するホワイトオイルの組成物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は従来技術の欠点に対する解決を提供するのであるが、従来技術においては、ホワイトオイルを製造するのに使用しているプロセス工程が次のいずれかである:蝋質供給材料から生成されるホワイトオイルの収量を有意に減じる、又は低い選択度と活性度を有する水素化異性化脱蝋触媒を利用している、又は接触脱蝋後に有意な加工を必要とする。接触脱蝋に先立つ水素化分解は蝋質供給材料から生成されるホワイトオイルの収量を低下させるのであるが、かかる水素化分解を要求するプロセスの例は、WO2004/000975、EP1382639A1、EP1366137、EP1366134、EP876446、WO200181508A1、WO200027950A1に記載されている。接触脱蝋後の大規模な加工無しに高収量でホワイトオイルを生成するのに、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒を低い水素分圧下で使用することに関連した利点を認識していなかったプロセスの例は、US特許出願10/744870および10/747152、およびUSP No.6,602,402の中に記載されている。US20040004021A1のような、その他のプロセスは、高い粘度指数を有するホワイトオイルを如何にして製造するかを教示しているが、それらプロセスは、45重量%を超すn−パラフィンを有し且つ非常に低い硫黄と窒素を有する蝋質供給材料を使用する場合には適していない;そして/またはそれらプロセスは蝋質供給材料から高収量のホワイトオイルを生成するようには最適化されてはいない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、
a)蝋質供給材料を、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒の上で、ホワイトオイルを生成するのに十分な条件下で、水素化異性化脱蝋し;そこでは、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒は、1)最小の結晶学的自由直径(crystallographic free diameter)が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が6.0Å以下である孔路(channels)を有し且つ最大の結晶学的自由直径が6.0Åより大きい孔路を有さない1−D 10−環モレキュラーシーブ(1−D 10−ring molecular sieve)、2)貴金属水素化成分(noble metal hydrogenation component)、および3)耐熱性酸化物支持体(refractory oxide support)を有しており;かつ、そこでは、蝋質供給材料は、1)490℃(915°F)より高いT90沸点、2)40重量%を超すn−パラフィン、および3)窒素と硫黄合わせて全体で25ppm未満、を有しており;そして
b)水素化異性化脱蝋工程からの1種以上のホワイトオイルを収集し、そこでは、沸点343℃以上(650°F+)のホワイトオイルの収量が蝋質供給材料の25重量%を超え、かつ、生成されたホワイトオイルが0℃未満の流動点および+20以上のセイボルト色度を有する;
ことによって、1種以上のホワイトオイルを製造する方法に関する。
【0006】
本発明はまた、
a)蝋質供給材料を、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒の上で、ホワイトオイルを生成するのに十分な条件下で、水素化異性化脱蝋し;そこでは、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒は、最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が6.0Å以下である孔路を有し且つ最大の結晶学的自由直径が6.0Åより大きい孔路を有さない1−D 10−環モレキュラーシーブを有しており;かつ、そこでは、蝋質供給材料は、1)490℃(915°F)より高いT90沸点、2)40重量%を超すn−パラフィン、および3)窒素と硫黄合わせて全体で25ppm未満、を有しており;
b)水素化異性化脱蝋工程からの1種以上の工業級ホワイトオイルを収集し、そこでは、1)沸点343℃以上(650°F+)の1種以上の工業級ホワイトオイルの収量が蝋質供給材料の25重量%を超え、かつ、2)生成された1種以上の工業級ホワイトオイルが0℃未満の流動点および+20以上のセイボルト色度を有し;そして
c)1種以上の工業級ホワイトオイルを、RCS試験に合格する1種以上の医用級ホワイトオイルを生成するのに十分な条件で、水素化仕上げする;
ことによって、1種以上の医用級ホワイトオイルを製造する方法に関する。
【0007】
本発明はまた、a)100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStであり;b)100℃における粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+105
によって算出される量よりも大きく;c)シクロパラフィン官能性をもつ分子が18重量%未満であり;d)流動点が0℃未満であり;かつ、e)セイボルト色度が+20以上である、ホワイトオイルに関する。
【0008】
本発明はまた、a)100℃における動粘度が約1.5〜36cStであり;b)粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+95
によって算出される量よりも大きく;c)シクロパラフィン官能性をもつ分子が5重量%から18重量%未満までであり;d)マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が1.2重量%未満であり;e)流動点が0℃未満であり;かつ、f)セイボルト色度が+20以上である、ホワイトオイルに関する。
【0009】
本発明のホワイトオイルは広範囲の用途に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のホワイトオイルの、100℃における動粘度(cSt)−対−粘度指数のプロットを示す。それら曲線は本発明の4つの異なる態様について粘度指数の下限を規定している。それら曲線は工業用または医用ホワイトオイルの100℃における動粘度(cSt)の、「e」を底とする自然対数の関数である。4つの曲線を定義する式がこの図の中に示されている。
【0011】
【図2】100℃における動粘度−対−ノアック揮発度(Noack volatility)(重量%)のプロットを示す。この曲線は本発明のホワイトオイルについてのノアック揮発度の好ましい上限を規定している。ノアック揮発度は、式: ノアック揮発度(重量%)=1000×(工業用または医用ホワイトオイルの100℃における動粘度(cSt))−2.7によって算出される量よりも低い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細)
本発明の方法は、下記の表Iにまとめられている通りの工業用および医用のホワイトオイル仕様を満足するホワイトオイルを生成する。
【0013】
【表1】

【0014】
医用級ホワイトオイルの性質は下記の標準規格によって記載されている:欧州薬局方第3版増補版(European Pharmacopeia 3.sup.rd Edition);米国薬局方第23版増補版;「直接の」食品使用向けには米国FDA仕様CFRセクション172.927;および「間接の」食品接触向けには米国FDA仕様CFRセクション178.3620(a)。医用級ホワイトオイルは化学的に不活性でなければならず、かつ、色、臭いまたは味を実質的に有していてはならない。医用級ホワイトオイル用途向けには、製造業者はホワイトオイルから「硫酸呈色物質(readily carbonizable substances)」(RCS)を除去しなければならない。RCSは強酸で処理したときにホワイトオイルに色変化を起こさせる不純物である。食品医薬品局(the Food and Drug Administration)(FDA)およびホワイトオイル製造業者はRCSに関する厳しい標準規格を有しており、それら標準規格を満たした後でなければホワイトオイルは食品または医薬品用途向けに販売できない。本発明におけるRCS試験はASTM D565−99に従って行われる。ホワイトオイルを規定条件下で濃硫酸で処理し、そして得られた色をそれが試験に合格か否か決定するために参照標準と比較する。ホワイトオイルは油層が色変化を示さず且つ酸層が参照標準比色溶液よりも黒くないときにRCS試験に合格と報告される。
【0015】
蝋質供給材料の選択:
本発明に有効な蝋質供給材料は490℃(915°F)より高いT90沸点をもつ高沸点範囲を有する。加えて、それらは高量のn−パラフィンを有し、一般に、40重量%より高く、好ましくは50重量%より高く、より好ましくは75重量%より高い。それらはまた、非常に低量の窒素および硫黄を有し、一般に、窒素と硫黄は合わせて25ppm未満であり;好ましくは20ppm未満である。これらの性質を満たす蝋質供給材料の例はスラック蝋(slack wax)、脱油(deoiled)スラック蝋、精製フーツオイル(refined foots oil)、蝋質潤滑剤ラフィネート(waxy lubricant raffinates)、n−パラフィン蝋、NAO蝋、化学プラント過程で生成された蝋、脱油石油由来蝋、微結晶質蝋、フィッシャー・トロプシュ蝋(Fischer−Tropsch waxes)、およびそれらの混合物である。本発明において有効な蝋質供給材料の流動点は50℃より高く、好ましくは60℃より高い。
【0016】
本発明に有効な蝋質供給材料は高い沸点範囲を有する。蝋質供給材料のT90沸点は490℃(915°F)より高い。100℃における動粘度が4cStより大きいホワイトオイルの収量を増大させるには、更により高い沸点範囲をもつ蝋質供給材料を使用することが好ましい。好ましくは、蝋のT90は510℃(950°F)より高い。約8.5cStより大きい動粘度をもつホワイトオイルを高収量にするためには、蝋質供給材料がより高い沸点範囲を有すべきであり、好ましくは565℃(1050°F)より高い沸点範囲を有すべきである。フィッシャー・トロプシュ法から更に高い粘度の蝋質供給材料を生成する方法の例はWO199934917A1に教示されている。これらの方法から製造された蝋は510または565℃より高いT90沸点を有するであろう;そして、炭素原子数少なくとも60以上の分子と炭素原子数少なくとも30の分子の重量比が0.20より大きいであろう、または0.40より大きいであろう。
【0017】
好ましい蝋質供給材料は高量のn−パラフィンを有し、そして酸素、窒素、硫黄、およびアルミニウムやコバルトやチタンや鉄やモリブデンやナトリウムや亜鉛や錫やケイ素のような元素が低量である。本発明に有効な好ましい蝋質供給材料はn−パラフィンが40重量%を超えており、酸素が1重量%未満であり、窒素と硫黄が合わせて25ppm未満であり、そしてアルミニウムとコバルトとチタンと鉄とモリブデンとナトリウムと亜鉛と錫とケイ素が合わせて25ppm未満である。より好ましい蝋質供給材料はn−パラフィンが50重量%を超え、酸素が0.8重量%未満であり、窒素と硫黄が合わせて20ppm未満であり、そしてアルミニウムとコバルトとチタンと鉄とモリブデンとナトリウムと亜鉛と錫とケイ素が合わせて20ppm未満である。より好ましい蝋質供給材料はn−パラフィンが75重量%を超え、酸素が0.8重量%未満であり、窒素と硫黄が合わせて20ppm未満であり、そしてアルミニウムとコバルトとチタンと鉄とモリブデンとナトリウムと亜鉛と錫とケイ素が合わせて20ppm未満である。
【0018】
蝋質供給材料の特性を決定するための分析試験方法:
T90沸点はASTM D6352または同等の方法による模擬蒸留(simulated distillation)によって測定される。同等の試験方法は標準方法と実質的に同じ結果を与えるあらゆる分析方法を称する。T90は蝋の90重量%がその温度より低い沸点を有するところの温度を称する。窒素は酸化燃焼およびASTM D4629−96による化学発光検出に先立って蝋を溶融することによって測定される。硫黄はASTM D5453−00による紫外蛍光に先立って蝋を溶融することによって測定される。窒素と硫黄を測定する試験方法はUS 6,503,956の中に更に記載されている。
【0019】
蝋質供給材料の酸素含有量は中性子活性化(neutron activation)によって測定される。アルミニウム、コバルト、チタン、鉄、モリブデン、ナトリウム、亜鉛、錫およびケイ素についての元素分析を行うのに使用される技法は誘導結合プラズマ原子発光分光法(inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy)(ICP−AES)である。この技法においては、試料を石英容器(超純正級)の中に入れ、それに硫酸を加え、それから、試料をプログラミング可能なマッフル炉の中で3日間にわたって灰化する。それから、灰化試料をHClで熟解して水溶液に転換した後に、ICP−AES分析にかける。最も好ましい蝋質供給材料の含油量はASTM D721−02によって測定したときに10重量%未満である。
【0020】
蝋質供給材料の中のノルマルパラフィンの重量%の測定:
蝋含有試料の中のノルマルパラフィン(n−パラフィン)の測定はC7〜C110の個々のn−パラフィンの含有量を0.1重量%の検出限界で測定できる方法を使用するべきである。使用される好ましい方法は次の通りである。
【0021】
蝋の中のノルマルパラフィンの定量分析はガスクロマトグラフィー(GC)によって測定される。GC(キャピラリースプリット/スプリットレス試料導入口(capillary split/splitless inlet)と水素炎イオン化検出器をもったアジャイレント(Agilent)6890または5890)は水素炎イオン化検出器を装備しており、それは炭化水素に対して高感度である。この方法はメチルシリコーンキャピラリーカラムを利用しており、炭化水素混合物を沸点によって分離するのに常套的に使用されている。カラムは溶融シリカ、100%メチルシリコーン、30mの長さ、0.25mmのID、0.1μの膜厚であり、アジャイレントによって支給された。キャリヤーガス(2mL/分)はヘリウムであり、そして水素炎への燃料として水素と空気が使用される。
【0022】
蝋質供給材料を融解して0.1gの均質試料を得る。試料を直ちに二硫化炭素の中に溶解して2重量%溶液にする。必要ならば、溶液を目で見て透明になりそして固形物が無くなるまで加熱し、それからGCに注入する。メチルシリコーンカラムを、下記の温度プログラムを使用して、加熱する:
初期温度:150℃(C7〜C15の炭化水素が存在する場合には、初期温度は50℃)
加熱勾配:6℃/分
最終温度:400℃
最終維持:5分間またはピークが溶出しなくなるまで
【0023】
次いで、カラムは炭素数の増加する順序で、ノルマルパラフィンを非ノルマルパラフィンから有効に分離する。ノルマルパラフィン特異ピークの溶離時間(elution times)を確立するには、既知の参照標準を同じやり方で分析する。標準はASTM D2887のn−パラフィン標準であり、ベンダー(アジャイレントまたはスペルコ(Spelco))から購入され、5重量%ポリワックス(Polywax)500ポリエチレン(オクラホマのペトロライト社(Petrolite Corporation)から購入される)を加えられた。標準は注入前に融解される。参照標準の分析から集めた履歴データもキャピラリーカラムの分解効率を保証する。
【0024】
試料の中にノルマルパラフィンが存在すれば、ノルマルパラフィンのピークは試料の中に存在するその他のタイプの炭化水素から十分に分離されそして容易に同定可能である。ノルマルパラフィンの保持時間の外側で溶離するピークは非ノルマルパラフィンと呼ばれる。試料全体は実験の開始から終了までベースラインホールドを使用して積分される。n−パラフィンが全域から拾い出されそして谷から谷までを積分される。検出ピークの全部を100%に規格化する。結果のピーク同定と計算にはEZChromを使用する。
【0025】
フィッシャー・トロプシュ蝋:
フィッシャー・トロプシュ蝋は本発明に使用するための好ましい蝋質供給材料である。フィッシャー・トロプシュ蝋はフィッシャー・トロプシュ合成の生成物である。フィッシャー・トロプシュ合成中には、水素と一酸化炭素の混合物を含む合成ガスを適切な温度と圧力の反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒と接触させることによって液体および気体の炭化水素が形成される。フィッシャー・トロプシュ反応は代表的には、約300°F〜約700°F(約150℃〜約370℃)の温度、好ましくは約400°F〜約550°F(約205℃〜約230℃)の温度;約10〜約600psia(0.7〜41バール)の圧力、好ましくは30〜300psia(2〜21バール)の圧力;および約100〜約10,000cc/g/hrの触媒空間速度、好ましくは300〜3,000cc/g/hrの触媒空間速度;で行われる。
【0026】
フィッシャー・トロプシュ合成からの生成物はC1〜C200+の炭化水素に及んでもよく、大部分はC5〜C100+の範囲にある。フィッシャー・トロプシュ反応は様々なタイプの反応器、たとえば、1種以上の触媒床を含有する固定床反応器、スラリー反応器、流動床反応器、または異なるタイプの反応器の組合せ、の中で行うことができる。かかる反応過程および反応器は周知であり、そして文献に付記されている。特に好ましいフィッシャー・トロプシュ法はEP0609079の中に教示されており、それは全ての目的のために本明細書の中に完全に組み入れられる。
【0027】
適するフィッシャー・トロプシュ触媒は1種以上の8族の触媒金属、たとえば、Fe、Ni、Co、Ru、およびRe、を含み、コバルトが好ましい。加えて、適する触媒は助触媒(promoter)を含有していてもよい。従って、好ましいフィッシャー・トロプシュ触媒は適する無機支持体材料好ましくは1種以上の耐熱性金属酸化物の上に、有効量のコバルトと、Re、Ru、Pt、Fe、Ni、Th、Zr、HF、U、MgおよびLaのうちの1つ以上を含んでいる。一般に、触媒の中に存在するコバルトの量は触媒組成物全体の約1〜約50重量%である。触媒はまた、ThO2、La2O3、MgO、およびTiO2のような塩基性酸化物助触媒、ZrO2のような助触媒、貴金属(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir)、硬貨用金属(coinage metals)(Cu、Ag、Au)、およびその他の遷移金属たとえばFe、Mn、Ni、およびRe、を含有することができる。適する支持体材料はアルミナ、シリカ、マグネシアおよびチタニア、またはそれらの混合物を挙げられる。コバルト含有触媒の好ましい支持体はチタニアを含む。有効な触媒とその製造はUSP 4,568,663および6,130,184の中に説明されている。
【0028】
高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒:
本発明によれば、蝋質供給材料は1種以上のホワイトオイルを生成するのに十分な条件下で、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒の上で、水素化異性化脱蝋される。好ましくは、水素化異性化脱蝋は0.69MPa(100psia)より高く且つ6.55MPa(950psia)より低い水素分圧で行われて1種以上のホワイトオイルを生成する。
【0029】
高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒は、a)最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が6.0Å以下である孔路を有し且つ最大の結晶学的自由直径が6.0Åより大きい孔路を有さない1−D 10−環モレキュラーシーブ;b)貴金属水素化成分;およびc)耐熱性酸化物支持体を含む。好ましくは、1−D 10−環モレキュラーシーブは、最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が5.7Å以下である孔路を有する。より好ましくは、1−D 10−環モレキュラーシーブは、最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が5.4Å以下である孔路を有する。モレキュラーシーブの孔路の結晶学的自由直径は、本明細書の中に組み入れられる「Atlas of Zeolite Framework Types(ゼオライトの骨組みのタイプの図表集)」第5改定版(2001年、Ch. BaerlocherとW.M. MeierとD.H. Olsonによる;エルゼビエル(Elsevier))第10〜15頁の中に公表されている。
【0030】
モレキュラーシーブの孔路の結晶学的自由直径が分からない場合には、モレキュラーシーブの有効細孔径(effective pore size)は、標準の吸着技法と、最小の動直径(kinetic diameters)がわかっている炭化水素質化合物とを使用して測定できる。Breck, Zeolite Molecular Sieves, 1974(特に第8章);Anderson et al. J. Catalysis 58, 114 (1979);およびUSP No.4,440,871を参照されたい:それらの関連する部分は本明細書の中に組み入れられる。細孔径を求めるのに吸着測定を行うにあったては、標準技法が使用される。具体的分子がモレキュラーシーブ上で、約10分未満に(p/po=0.5;25℃)、その平衡吸着値の少なくとも95%に達しなければ、その具体的分子を排除されたとみなすことが便利である。高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒は代表的には、4.5〜5.3Åの動直径を有する分子を殆ど妨害なしに収容するであろう。
【0031】
本発明の好ましい1−D 10−環モレキュラーシーブはZSM−48、MTT、TON、EUO、MFSおよびFER族のタイプのモレキュラーシーブである。これらのタイプのモレキュラーシーブの混合物も好ましい。より好ましくは、それらはSSZ−32、ZSM−23、ZSM−22、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、およびそれらの混合物である。最も好ましいモレキュラーシーブはSSZ−32、ZSM−23、ZSM−22、およびそれらの混合物である。
【0032】
好ましい態様においては、高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒はその0.5gが管反応器の中に配置されたときに370℃、圧力1200psig、水素流量160mL/分および供給速度1mL/hrでヘキサデカンの少なくとも50%を転化するように十分な活性度を有する。触媒はまた、40%以上の水素化異性化選択度を示す。水素化異性化選択度は次のように求められる:
ノルマルヘキサデカン(n−C16)から他の種への96%転化率に導く条件下で使用されたときの、100×(生成物中の枝分れC16の重量%)/(生成物中の枝分れC16の重量%+生成物中のC13−の重量%)
【0033】
高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒は触媒作用的に活性の貴金属水素化成分を有する。触媒作用的に活性の貴金属は生成物の改良特に粘度指数および安定性の改良に導く。貴金属はRu、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、およびAuである。好ましくは、貴金属は8族元素、すなわち、Re以外のそれら貴金属、である。好ましい8族貴金属は白金、パラジウム、およびそれらの混合物である。白金および/またはパラジウムが使用される場合には、活性金属の全量は代表的には、完全触媒の0.1〜5重量%、通常、0.1〜2重量%、の範囲にあり、そして10重量%を超えない。
【0034】
耐熱性酸化物支持体は触媒向けに通常使用されるそれら酸化物支持体から選ばれ、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、チタニア、およびそれらの組合せが挙げられる。
【0035】
本発明の高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒の例は表IIに示されている。ゼオライト孔路の具体的に示された結晶学的自由直径は表に掲載されている最初のゼオライトのものである。しかしながら、同じ骨組み(framework)のタイプコードの中のゼオライトは示されたものに近い直径を有するであろう。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明において有効でない、そして高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒についての規定を満たさない、モレキュラーシーブの例を、比較用に第III表に示してある。
【0038】
【表3】

【0039】
FER、MTTおよびTONがAELおよびいくつかのその他比較用の骨組みタイプよりも小さい結晶学的自由直径を有することに留意されたい。この理由で、それらはAELよりも選択性である。FER、MTTおよびTONモレキュラーシーブは、色を生じそしてホワイトオイルの製造に更なる加工を要求する環構造をもったオイルをあまり生成しないようである。
【0040】
水素化異性化脱蝋条件:
高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒を使用しての水素化異性化脱蝋が行われる条件は約357℃(675°F)未満の温度を包含する。好ましい温度範囲は約260℃(500°F)〜約357℃(675°F)であり、より好ましくは、約288℃(550°F)〜約343℃(650°F)である。水素分圧は約0.1MPa(14.5psia)から約6.55MPa(950psia)未満までである。好ましくは、水素化異性化脱蝋中の水素分圧は約1.38MPa(200psia)から約5.52MPa(800psia)未満まで;より好ましくは、約1.72MPa(250psia)から約3.45MPa(500psia)未満まで、である。低い圧力下での水素化異性化脱蝋が水素化異性化選択度の向上をもたらし、それは結果として、供給材料のより多くの水素化異性化とより少ない分解を生じ、従って、より高い粘度指数をもつ基油生成物(base oil products)の収量増大を生じる。低圧の水素化異性化脱蝋はUS特許出願10/747152およびUSP No.6,337,010の中に更に十分に記載されており、それらの内容は全体が本明細書の中に組み入れられる。この文脈における水素化異性化脱蝋の圧力は反応器内の水素分圧を称しているが、水素分圧は全圧と実質的に同じである(又はほぼ同じである)。
【0041】
水素は水素化異性化脱蝋反応器の中に、代表的には、水素/供給材料の比が約500標準立方フィート/バレル(SCF/bbl)〜約20,000SCF/bbl、好ましくは約1,000SCF/bbl〜約10,000SCF/bblになるように、存在する。一般に、水素は生成物から分離されそして水素化異性化脱蝋反応器に再循環される。
【0042】
水素化異性化脱蝋用反応器の中の液体毎時空間速度(liquid hourly space velocity)(LHSV)は一般に、約0.2〜約10hr−1、好ましくは約0.5〜約5hr−1である。炭化水素に対する水素の比率は、炭化水素1モル当り約1.0〜約50モルのH、より好ましくは、炭化水素1モル当り約10〜約20モルのH、の範囲内に入る。水素化異性化脱蝋を行うための適する条件はUSP Nos.5,282,958および5,135,638の中に記載されており、それらの内容は全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0043】
蝋質供給材料の中の沸点343℃以上(650°F+)の炭化水素の、水素化異性化脱蝋(および任意的な後続のプロセス工程)中での、沸点343℃以下(650°F−)の生成物への転化率は、好ましくは、20重量%より高く且つ75重量%より低く、より好ましくは、20重量%より高く且つ60重量%より低い。
【0044】
水素化処理:
水素化処理は通常、遊離水素の存在下で行われる触媒作用過程を称し、そこでは、第一の目的は、様々な金属汚染物、たとえば、鉄、ヒ素、アルミニウム、およびコバルト;ヘテロ原子、たとえば、硫黄および窒素;酸素化物(oxygenates);または供給原料(feed stock)由来の芳香族炭、の除去である。一般に、水素化処理操作においては、炭化水素分子の分解、すなわち、大きな炭化水素分子を壊して小さな炭化水素分子にすること、は最低限にされ、そして不飽和炭化水素は完全にまたは部分的に水素化される。本発明の方法に使用される蝋質供給材料は水素化異性化脱蝋に先立って好ましくは水素化処理される。
【0045】
水素化処理操作を行うのに使用される触媒はこの分野では周知である。水素化処理、水素化分解、およびそれらプロセスの各々に使用される代表的な触媒の一般的記述については、たとえば、USP Nos.4,347,121および4,810,357を参照されたく、それらの内容は全体が本明細書の中に組み入れられる。高品質のホワイトオイルを生成するための基油の水素化に適する触媒は多数の特許で教示されており、EP672452、EP0097047A3、EP290100、EP0042461、およびEP672452が挙げられる。適する触媒は8A族(国際純正および応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)の1975年の規定による)からの貴金属、たとえば、アルミナまたは珪質マトリックス上の白金またはパラジウム、および8族および6B族、たとえば、アルミナまたは珪質マトリックス上のニッケル−モリブデンまたはニッケル−錫、が挙げられる。USP No.3,852,207は適する貴金属触媒および穏やかな条件を記載している。他の適する触媒はたとえば、USP Nos.4,157,294および3,904,513の中に記載されている。水素化用の非貴金属たとえばニッケル−モリブデンは通常、最終触媒組成物の中に酸化物として存在するが、次のようなときには、それらの還元形態または硫化物形態で通常用いられる:伴われた具体的金属から、かかる硫化物化合物が容易に形成されるとき。好ましい非貴金属触媒組成物は、対応する酸化物として測定して、約5重量%を超える(好ましくは約5〜40重量%の)モリブデンおよび/またはタングステンと少なくとも0.5重量%(一般に、約1〜15重量%)のニッケルおよび/またはコバルトを含有する。白金のような貴金属を含有する触媒は0.01%を超える金属(好ましくは0.1〜1.0%の金属)を含有する。貴金属の組合せ、たとえば、白金とパラジウムの混合物、が使用されてもよい。
【0046】
代表的な水素化処理条件は広範囲にわたって変動する。一般に、全LHSVは約0.25〜2.0、好ましくは約0.5〜1.5である。水素分圧は200psiaより高く、好ましくは、約500psia〜約2000psiaの範囲である。水素再循環レートは代表的には50SCF/Bblより大きく、そして好ましくは1000〜5000SCF/Bblである。反応器内の温度は約300°F〜約750°F(約150℃〜約400℃)の範囲であろう、好ましくは、約450°F〜約725°F(約230℃〜約385℃)の範囲であろう。本発明の一態様においては、好ましい水素化処理条件は、蝋質供給材料の中の沸点343℃+(650°F+)の炭化水素の、水素化処理中での、蝋質供給材料の中の沸点343℃(650°F)未満の炭化水素への転化率が20重量%未満、好ましくは5重量%未満になるように、選択される。
【0047】
水素化仕上げ:
水素化処理は、改良された性質をもつホワイトオイルを製造するのに、本発明の方法における水素化異性化脱蝋の後の工程として使用されてもよい。この工程はここでは水素化仕上げと呼ばれ、微量の芳香族、オレフィンおよび色物体(color bodies)を除去することによって生成物の酸化安定性、UV安定性および外観を改善することを意図している。この開示に使用されるとき、用語UV安定性はUV光および酸素に曝されたときの潤滑性基油または完成潤滑剤の安定性を称する。不安定性は、通常、凝集塊または曇りとして見える可視沈殿物が形成されるときに又は紫外光および空気への曝露で黒ずんだ色が発現するときに、表示される。水素化仕上げの一般的記載はUSP Nos.3,852,207および4,673,487の中に見出されるであろう。一態様においては、水素化異性化脱蝋反応器からの脱蝋生成物を直接に水素化仕上げ反応器に通す。
【0048】
水素化異性化工程からの生成物の高品質のせいで、穏やかな水素化仕上げを使用するときには、通常のホワイトオイル製造方法によって要求されるものよりも遥かに低い圧力下で行ってもよい。穏やかな水素化仕上げは3.45MPa(500psig)未満の全圧において行われる。高品質ホワイトオイルは約1.38MPa(200psig)〜約3.45MPa(500psig)のような穏やかな水素化用全圧の下でさえ生成される。何ら更なる加工無しに、良好なセイボルト色度と低い流動点をもった1種以上のホワイトオイルが水素化仕上げをもって又はそれ無しで、高収量で収集される。
【0049】
好ましい態様においては、穏やかな水素化仕上げは水素化異性化脱蝋に使用されたのと本質的に同じである水素分圧において行われる。本質的に同じ分圧とは、2つの分圧の差が0.69MPa(100psia)未満であることを意味する。装置では、特に2つの反応器の間では、少量の水素分圧降下があるであろう。2つの反応器の間の全圧の差も、本質的に同じであろう。すなわち、好ましくは、2つの反応器の間の圧力差は0.69MPa(100psia)未満である。水素化異性化脱蝋と水素化仕上げを本質的に同じ圧力で操作するということは装置コストを低減しそして操作を合理化する。
【0050】
場合によっては、水素化異性化脱蝋(水素化仕上げを伴わなかったか又は穏やかな水素化仕上げを伴ったかのどちらか)の後に収集された1種以上のホワイトオイルはそれらのセイボルト色度とUV吸光度を更に改善するために後続の水素化仕上げを受けてもよい。後続の水素化仕上げは約1.38MPa(200psig)〜約10.34MPa(1500psig)の全圧で、好ましくは約1.72MPa(250psig)〜約8.28MPa(1200psig)の全圧で、行われる。後続の水素化仕上げ中の全圧は、RCS試験に不合格の工業級ホワイトオイルをRCS試験に合格する医用級ホワイトオイルに変化させるのに十分であるように選ばれてもよい。
【0051】
本発明の、任意的な、穏やかな水素化仕上げ及び後続の水素化仕上げの工程は約176℃(350°F)〜約288℃(550°F)の温度で、好ましくは約204℃(400°F)〜約260℃(500°F)の温度で、行われる。穏やかな又は後続の水素化仕上げ反応器の中の液体毎時空間速度は約0.2〜約10hr−1であり、好ましくは約0.5〜約5hr−1である。好ましくは、穏やかな水素化仕上げ又は後続の水素化仕上げのための水素化仕上げ触媒は貴金属を含む;白金、パラジウム、またはそれらの混合物が好ましい使用貴金属である。
【0052】
蒸留:
場合によっては、本発明の方法は、水素化異性化脱蝋生成物を、1種以上のホワイトオイルを集める前または集めた後に、蒸留して高沸点の残油留分(bottoms cut)を除去することを包含してもよい。加えて、本方法はホワイトオイルを蒸留して1種より多くの粘度等級にすることを包含してもよく、それによって1種より多くのホワイトオイルが収集される。蒸留は一般に、常圧蒸留または減圧蒸留どちらかによって、または常圧蒸留と減圧蒸留の組合せによって、行われる。常圧蒸留は代表的には、より軽質の蒸留物留分たとえばナフサや中間蒸留物を、約315℃(600°F)〜約399℃(750°F)の初期沸点(initial boiling point)を有する残油留分から分離するのに、使用される。より高い温度では、装置の汚れやホワイトオイルの低収量につながる炭化水素の熱分解が起こる。減圧蒸留は代表的には、ホワイトオイルを様々な沸点範囲留分に分離するのに使用される。ホワイトオイルを様々な沸点範囲留分に蒸留することは1種より多い等級または粘度のホワイトオイルの生成を可能にする。減圧蒸留は、ホワイトオイルの中の高沸点残油留分(それは他の軽質沸点蒸留物留分よりも望ましくないセイボルト色度を有する)を除去するのに使用されてもよい。
【0053】
吸着処理:
場合によっては、本発明のホワイトオイルを異質吸着剤(heterogeneous adsorbent)と接触させてUV吸光度を低下させそしてセイボルト色度を大きくしもよい。この仕方で、工業級ホワイトオイルを医用級ホワイトオイルに高品質化してもよい。一態様においては、ホワイトオイルの全沸点範囲を異質吸着剤と接触させてもよい。場合によっては、高沸点残油留分または異なる粘度等級の一つ以上の蒸留物留分を異質吸着剤と接触させてもよい。適する異質吸着剤の例は活性炭、結晶質モレキュラーシーブ、ゼオライト、シリカ−アルミナ、金属酸化物、およびクレーである。好ましい吸着剤はWO2004/000975、EP278693A、およびUSP No.6,468,418の中に教示されており、それらの全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0054】
ホワイトオイルの収量および特性:
本発明の方法から生成される1種以上のホワイトオイルの収量は非常に高い。高収量は次のことを含めた要因の組合せに起因する:1)高沸点の、高度にパラフィン性の、かつ窒素と硫黄の含有率の低い蝋質供給材料を最初に選択したこと、2)プロセスが水素化分解を必要としないこと、3)水素化異性化脱蝋触媒が高度に選択性かつ活性であること、および4)水素化異性化脱蝋中に要求されるプロセス条件が概して穏やかであること。一般に、沸点343℃(650°F)以上の1種以上のホワイトオイルの収量は蝋質供給材料の25重量%を超え、好ましくは35重量%を超え、そしてより好ましくは45重量%を超える。
【0055】
本発明の方法によって生成されたホワイトオイルはASTM D156−02によるセイボルト色度が+20より大きい、好ましくは+25以上、より好ましくは+29以上、最も好ましくは+30、である。それらは高い粘度指数を有し、好ましくは、次の式によって計算された量よりも大きい粘度指数を有する:
粘度指数(Viscosity Index)=28×Ln(100℃における動粘度)+95
たとえば、100℃における動粘度が3cStである本発明の方法によって生成されたホワイトオイルは好ましくは、126より大きいVIを有するであろう。100℃における動粘度はASTM D445−03によって測定され、そしてセンチストークス(cSt)で報告されている。Ln(100℃における動粘度)は100℃における動粘度の、「e」を底とした自然対数である。より好ましくは、粘度指数は、28×Ln(100℃における動粘度)+105または+115よりも大きい;そしてより好ましくは、粘度指数は、28×Ln(100℃における動粘度)+120より大きい。粘度指数を測定するのに使用される試験方法はASTM D2270−93(1998)である。上に記載した通り、本発明の1種以上のホワイトオイルの粘度指数の4つの好ましい範囲を規定する曲線が図1に示されている。
【0056】
本発明のホワイトオイルは、溶離カラムクロマトグラフィー、ASTM D2549−02、によって測定したときに、飽和物が95重量%を超えている。オレフィンは長持続(long duration)C13核磁気共鳴分光法(NMR)によって検出可能未満の量で存在する。本発明の方法によって生成されたホワイトオイルはシクロパラフィン官能性をもつ分子について所期組成を有している。シクロパラフィン官能性をもつ分子は5重量%から18重量%未満までであり、より代表的には、好ましくは、シクロパラフィン官能性をもつ分子は8〜15重量%である。また、マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子の重量%は非常に低い。好ましくは、マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子は1.2重量%未満、より好ましくは0.8重量%未満、最も好ましくは0.01重量%未満である。
【0057】
シクロパラフィンとマルチシクロパラフィンの組成をもつ分子の組成はフィールドイオン化質量分析(Field Ionization Mass Spectroscopy)(FIMS)を使用して測定される。FIMSスペクトルはVG70VSE質量分析計で得た。試料は40℃から500℃まで50℃/分の速度で加熱される固体プローブを経由して導入された。質量分析計はm/z 40からm/z 1000まで10当り5秒の速度で走査された。取得した質量スペクトルは集計されて一つの「平均化」スペクトルを生じた。各スペクトルはPC−マススペック(MassSpec)からのソフトウェアパッケージを使用して補正されたC13であった。FIMSイオン化効率はほぼ純粋な枝分れパラフィンと高ナフテン性の無芳香族の基原料(base stock)とのブレンドを使用して評価した。これら基油の中のイソパラフィンとシクロパラフィンのイオン化効率は本質的に同じであった。イソパラフィンとシクロパラフィンは本発明のホワイトオイルの中の飽和物の99.9%超を構成している。
【0058】
本発明のホワイトオイルはFIMSによって、パラフィンと種々の数の不飽和をもつ分子とに特徴付けられる。種々の数の不飽和をもつ分子はシクロパラフィン、オレフィン、および芳香族から構成されるかもしれない。本発明のホワイトオイルは芳香族とオレフィンの量が非常に低いので、種々の数の不飽和をもつ分子は種々の数の環をもつシクロパラフィンであると解釈してもよい。従って、本発明のホワイトオイルについては、1−不飽和はモノシクロパラフィンであり、2−不飽和はジシクロパラフィンであり、3−不飽和はトリシクロパラフィンであり、4−不飽和はテトラシクロパラフィンであり、5−不飽和はペンタシクロパラフィンであり、そして6−不飽和はヘキサシクロパラフィンである。芳香族が有意量でホワイトオイルの中に存在するとすれば、それらはFIMS分析では4−不飽和として同定されるであろう。2−不飽和、3−不飽和、4−不飽和、5−不飽和、および6−不飽和の総計が、マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子の重量%である。本発明のホワイトオイルの中の1−不飽和の総計が、モノシクロパラフィン官能性をもつ分子の重量%である。
【0059】
本発明の方法によって生成されたホワイトオイルは低い流動点、一般に、0℃未満の流動点、を有する。好ましくは、流動点は−10℃未満であり、より好ましくは、流動点は−20℃未満である。流動点はASTM D5950−02によって1°増分で測定される。結果は℃で報告される。該ホワイトオイルは100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStである。該ホワイトオイルは40℃における動粘度が約4cSt〜約240cStであってもよく、粘度範囲は蝋質供給材料の沸点範囲と、ホワイトオイルに対して行ったかもしれない蒸留とに依存する。
【0060】
本発明の方法によって生成されたホワイトオイルは芳香族の含有量が低い、好ましくは、0.05重量%未満、より好ましくは、0.01重量%未満である。低量の芳香族を測定するのに使用されるHPLC−UV試験方法は、1999年3月16日のヒューストンでの1999年AlChE春季全国会議で呈示されたD. C. Kramer, et al.,“Influence of Group II & III Base Oil Composition on VI and Oxidation Stability”、およびUS特許出願10/744389の中に記載されており、それらの内容はそれらの全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0061】
本発明のホワイトオイルは工業級または医用級どちらかのホワイトオイルのUV吸光度要件を満たす。好ましくは、本発明のホワイトオイルの280〜289nmのUV吸光度は3.5以下であり、290〜299nmのUV吸光度は3.0以下であり、300〜329nmのUV吸光度は2.0以下であり、そして330〜380nmのUV吸光度は0.7以下である。より好ましくは、本発明のホワイトオイルの280〜289nmのUV吸光度は0.70以下であり、290〜299nmの吸光度は0.60以下であり、300〜329nmの吸光度は0.40以下であり、330〜380nmの吸光度は0.09以下である。UV吸光度はASTM D2269−99を使用して測定される。
【0062】
好ましい態様においては本発明の方法によって生成されたホワイトオイルはノアック揮発度が低く、一般的には、式:
ノアック揮発度(重量%)=1000×(100℃における動粘度)−2.7
(式中、100℃における動粘度(cSt)は−2.7乗されている)
から算出された量よりも低い。たとえば、100℃における動粘度が1.5cStであるホワイトオイルは、好ましくは、335未満のノアック揮発度を有するであろう;100℃における動粘度が3cStであるホワイトオイルは、好ましくは、52未満のノアック揮発度を有するであろう;そして、100℃における動粘度が5cStであるホワイトオイルは、好ましくは、13未満のノアック揮発度を有するであろう。本発明の工業用または医用ホワイトオイルのノアック揮発度についての好ましい上限を規定する曲線のプロットが図2に示されている。ノアック揮発度は、定流量の空気が60分間吹き込まれる(ASTM D5800)試験坩堝の中で大気圧より20mmHg(2.67kPa;26.7ミリバール)低い圧力でそして250℃でオイルを加熱したときに喪失されるオイルの質量を重量%で表わしたものとして定義される。ノアック揮発度を計算するための更に便利な方法、そしてASTM D5800と十分に関係のあるそれ、はASTM D6375−99による熱重量分析器試験(thermo gravimetric analyzer test)(TGA)を使用することによる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
ホワイトオイルの用途:
本発明のホワイトオイルは、パーソナルケア(personal care)製品や医薬製品向けの理想的な基油をつくるであろう。それらの不活性な本性はそれらをして作業を容易にさせるであろうし、同時に、それらは多くの用途において潤滑であり、なめらかであり、やわらかくなるし、延びるし、そして湿気に耐える。それらをUSP(米国薬局方)ワセリン(USP petrolatum)とブレンドして、より望ましい性質をもつ完成USPワセリン、パーソナルケア製品および医薬製品をつくりだしてもよい。本発明の医用級ホワイトオイルはベビーオイルおよびローションからサンスクリーン、ティッシュ(tissues)、皮膚接着剤(skin adhesives)、および抗生物質にまで及ぶ製品の中に使用されてもよい。
【0064】
本発明の方法から製造されたホワイトオイルは、ドウドライバーオイル(dough driver oils)、離型プロセスオイル、および食品級グリースから、穀物サイロにおける粉塵抑制油、動物飼料、殺虫剤、化学薬品および肥料に至るような、広範囲に及ぶ用途に有用性を有するであろう。それらは食品取扱装置を潤滑にするし;包装紙に浸み込ませて食品を新鮮に保つし;甜菜糖、ビネガー、および紙の製造において気泡を制御するし;そして皮なめし過程を向上させるであろう。低流動点のホワイトオイルはホットメルト接着剤の改良に有効であろう、そしてそれらは空調機や、冷蔵庫のコンプレッサーのような低温装置を潤滑にさせるであろう。本方法によって生成された、8.5cStより大きい動粘度を有するホワイトオイルは、食品用途に使用するのに特に適している。特に、それらは食品用途においては可塑剤や離型プロセスオイルとしてばかりでなく3H離型剤(3H release agents)として価値があるであろう。3H離型剤は米国農務省(US Department of Agriculture)によって、食品が加工中に粘着するのを防ぐのを助けるためにグリル、ローフパン(loaf pans)、カッター、ボーニングベンチ(boning benches)、チョッピングブロック(chopping blocks)およびその他硬質表面の上に使用されてもよい物質として規定されている。
【0065】
本発明のホワイトオイルはまた、酸化および熱に対する安定性に優れており、そして高温用途に非常に望ましいものにしている。それらは悪条件下での顕著に長期の使役を提供するであろう。それらは紫外線および色の安定性に優れており、そしてポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、熱可塑性エラストマーおよびその他多数のポリマー配合物の中に内部および/または外部潤滑剤として使用されてもよい。熱可塑性エラストマーの例はスチレンブロック共重合体、線状の三元ブロックのスチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ハロゲン化オレフィンインターポリマーアロイ(halogenated olefin interpolymer alloy)、1,2−ポリブタジエン、イオノマー(ionomer)、フルオロエラストマー、およびトランス−1,4−ポリイソプレンである。
【0066】
本発明の方法によって製造されたホワイトオイルは無色で、低染色性で、かつ無臭であり、従って、優れた紡織繊維潤滑剤(textile fiber lubricants)、たとえば、ニットオイル(knit oils)およびコットンスピンドルオイル(cotton spindle oils)を製造するであろう。それらは毛、綿、絹、および広く様々な合成紡織繊維と適合性であろう。加えて、それらは紙加工助剤(paper processing aid)として、また、色安定性のコーキング材やシーラント向けの加工助剤として使用されてもよい。それらは無色であるので、それらは非常に淡く着色した又は透明なゴムやプラスチック向けの可塑剤および増量剤としての用途を見出すであろう。それらは着色剤にとっての適切な溶剤をつくるであろう。本発明の方法によって製造された低揮発度のホワイトオイルは、ポリスチレン、スチレンブロック共重合体、ポリオレフィン、可撓性の成形ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、およびその他の様々なポリマーの製造において可塑剤として、完成ポリマーの溶融流量(melt flow rate)を改善および制御するのに、特に有効であろう。本発明の方法から製造されたホワイトオイルは低可染性であるのでステンレスの作動油およびアルミニウムの冷間圧延油(cold rolling oil)に用途を見出すであろう。
【0067】
本発明のホワイトオイルはポリマー生産における可塑剤として使用される場合にはポリマー100重量部当り0.1〜20重量部の量で使用されるであろう。可塑剤としてのホワイトオイルの使用例はUSP Nos.6,653,360、6,632,382および4,153,588、およびEP1382639A1の中に与えられている。
【実施例】
【0068】
(実施例1)
コバルトフィッシャー・トロプシュ触媒の上で製造された水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋は80重量%のn−パラフィン、0.8重量%未満の酸素、および972°FのT90沸点を有しており、それを、ホワイトオイルにするための水素化異性化脱蝋する対象に選んだ。この水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋は窒素と硫黄が合わせて25ppm未満であり、そしてアルミニウム、コバルト、チタン、鉄、モリブデン、ナトリウム、亜鉛、錫、および珪素が合わせて25ppm未満であった。この水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋は炭素原子数少なくとも30の分子が30重量%を超えていた。この水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋は炭素原子数少なくとも60以上の分子と炭素原子数少なくとも30の分子の重量比が0.05未満であった。
【0069】
(実施例2)
実施例1に記載した水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋を、耐熱性酸化物支持体上にSSZ−32ゼオライト65重量%と貴金属水素化成分を含有する高度に選択性かつ活性の脱水素化異性化触媒の上で、水素化異性化脱蝋した。水素化異性化脱蝋は600°Fの温度、1hr−1のLHSV、300psigの全圧、および5,000SCF/bblの貫流水素(once−through hydrogen)で行った。水素化異性化脱蝋によって生成されたホワイトオイルを直接に、シリカ−アルミナ上のPt/Pdの水素化仕上げ触媒を含有した第二反応器に、やはり300psigの全圧で、通した。水素化仕上げ反応器の条件は450°Fの温度および2.0hr−1のLHSVであった。水素化仕上げ反応器からの沸点343℃以上(650°F+)の生成物の収量は、水素化異性化反応器に供給された水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋供給材料の約57重量%であった。フィッシャー・トロプシュ蝋の中の沸点343℃以上(650°F+)の生成物の、沸点343℃以下(650°F−)の生成物への転化率は約32%であって(供給材料の中には650°F−が約15重量%存在した)、それは水素化異性化脱蝋触媒の高い活性度を証明している。
【0070】
水素化仕上げ生成物の650°F+の全体試料は100℃における動粘度が4.794cStであり、40℃における動粘度が20.36cStであり、そして流動点が−29℃であった。この650°F+の全体試料の粘度指数は166であった。この粘度指数は、式:
粘度指数=Ln(100℃における動粘度)+120=164
によって算出された量よりも大きかった。水素化異性化および水素化仕上げの反応器の操作約400時間の後には、沸点650°F以上の全体試料のセイボルト色度は+26であった。水素化異性化および水素化仕上げの反応器の操作約800時間の後には、沸点650°F以上の全体のホワイトオイル生成物のセイボルト色度は+22であった。水素化異性化脱蝋および水素化仕上げの工程から収集された生成物は全てが工業用ホワイトオイル仕様を満たしていた。
【0071】
水素化異性化および水素化仕上げの反応器の操作700時間の後に、生成物の730〜950°Fの蒸留留分を取得した。この蒸留留分は100℃における動粘度が4.547cStであり、粘度指数が159であり、そして流動点が−17℃であった。セイボルト色度は+29であった。粘度指数は、式:
粘度指数=Ln(100℃における動粘度)+115=157
によって算出された量より大きかった。
【0072】
本方法の生成物の予想外の優れた色は高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒に要求される低い温度(600°F)に一部起因しているが、本発明者らは優れた色はSAPO−11に比べてSSZ−32の孔路の制限された結晶学的自由直径に主に起因していると考えている。(SAPO−11はそうではないが)SSZ−32は、最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上でありそして最大の結晶学的自由直径が6.0Å以下である孔路を有し且つ最大の結晶学的自由直径が6.0Åより大きい孔路を有さない1−D 10−環モレキュラーシーブを有している。SSZ−32の孔路のこの制限された結晶学的自由直径は、色につながる環(または他の)構造の形成を制限した。これら試料はこのプロセスが300psigの非常に穏やかな水素化仕上げ圧力でさえも工業級および大抵の医用級のホワイトオイル仕様を満たすオイルを生成するということを示している。水素化異性化反応器の長い操作時間の後に、工業級ホワイトオイルを後続の水素化仕上げ反応器によって僅かに高い圧力で処理することによって又は工業級ホワイトオイルを不均質吸着剤で処理することによって、医用級ホワイトオイルが高収量で生成される。
【0073】
(実施例3)
RCS試験は実施例2に記載した650°F+の全体のホワイトオイルと730〜970°Fの蒸留留分のホワイトオイルに対して行った。これらホワイトオイルはいずれもRCS試験に不合格であった。後続の水素化仕上げをこれら2つの試料に対して行った。この水素化仕上げ条件は全圧を300psigから500psigまたは1000psigに増大させたこと以外は先に使用したものと同じであった。後続の水素化仕上げを約325psigより高い圧力で行うことによって製造されたこれらホワイトオイルは厳しいRCS試験に合格した。全てのホワイトオイル試料に対して行った分析の結果を表IVにまとめてある。
【0074】
【表4】

【0075】
高圧での水素化仕上げは紫外線吸光度の改善に有効であり、そして芳香族、オレフィン、および色物体を有意に減少させた。約325psigより高い圧力で第二の時間にわたって水素化仕上げされた試料は食品および医薬品どちらに使用するのにも適する医用級ホワイトオイルであった。
【0076】
これら例は、本発明の方法を使用して工業級ホワイトオイルを穏やかな水素化仕上げ無しに製造した場合には医用級ホワイトオイルを生成するための後続の水素化仕上げ工程がたった一つの水素化仕上げ工程で遂行されてもよいということを証明している。後続の水素化仕上げ中の全圧はUV吸光度を許容レベルに低下させるのに十分であるように又はRCS試験に不合格の工業級ホワイトオイルをRCS試験に合格する医用級ホワイトオイルに変化させるのに十分であるように選択しなければならない。
【0077】
(実施例4)
実施例4は比較用である。
セイソル(Sasol)によって製造されたFe系フィッシャー・トロプシュ蝋の2種の異なる試料は水素化処理に先立って分析したところ、表Vにまとめた通りの性質を有していることがわかった。
【0078】
【表5】

【0079】
T10沸点が756°F、T90沸点が996°F、酸素が0.2重量%未満、そしてn−パラフィンが約79重量%であるフィッシャー・トロプシュ蝋をつくるために、3部のM5 Waxと2部のC80 Waxをブレンドした。これら蝋はどちらも水素化処理してなかった。
【0080】
高沸点分子を取り出すために、このブレンドを蒸留した。蒸留残油は1059°FのT90沸点を有していた。この蒸留残油(蝋質供給材料)を、耐熱性酸化物支持体上の貴金属をもつ低い選択性かつ活性の水素化異性化触媒(Pt/SAPO−11)を使用して、水素化異性化脱蝋した。SAPO−11は、最小の結晶学的自由直径が3.9Å以上である孔路を有する1−D 10−環モレキュラーシーブであるが、孔路の最大の結晶学的自由直径が6.0Åより大きい。
【0081】
SAPO−11の重量%は85重量%であった。水素化異性化脱蝋条件は反応器の全圧が500psig、LHSVが0.8、そして温度が650°Fであった。後続の水素化仕上げは、シリカ−アルミナ上のPd触媒の上で、全圧1000psigで、450°Fで、行った。
【0082】
これらの工程によって生成された潤滑性基油の性質を下記の表VIに示す。
【0083】
【表6】

【0084】
この比較ホワイトオイル例、すなわち、比較用実施例4の基油は、最大の結晶学的自由直径が本発明の高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒にとっての最大の結晶学的自由直径(6.0Å以下)を超えているモレキュラーシーブ(SAPO−11)を用いて製造されたのである。それを高圧(1000psig)で水素化仕上げして良好なセイボルト色度と低いUV吸光度をもつホワイトオイルを生じた。このホワイトオイルのVIは本発明の好ましいホワイトオイルに比べて低いことに留意されたい。VIは、式:
VI=28×Ln(100℃における動粘度)+105=164
によって算出された量よりもかなり低い。このホワイトオイルは、シクロパラフィン官能性をもつ分子についての本発明の所期組成を有していない。
【0085】
(実施例5)
実施例5は比較用である。
950°Fより高いT90沸点を有する水素化処理済みCo系フィッシャー・トロプシュ蝋を、最大の結晶学的自由直径が本発明の高度に選択性かつ活性の蝋水素化異性化触媒の最大の結晶学的自由直径6.0Å以下を超えているモレキュラーシーブ(Pt/SAPO−11)を使用して、水素化異性化脱蝋した。水素化異性化脱蝋条件は反応器の全圧が300psigであり、そして温度が約660〜680°Fであった。後続の水素化仕上げを、シリカ−アルミナ上のPd触媒を使用して、全圧300psigで、450°Fで行った。全沸点範囲生成物の蒸留を行い、そして730〜930°Fの沸点範囲の試料を収集した。
【0086】
これらの工程によって生成された潤滑性基油の性質を下記の表VIIに示す。
【0087】
【表7】

【0088】
この比較用実施例5の基油は、Pt/SAPO−11を使用して水素化異性化脱蝋された潤滑性基油から芳香族と色を除去するのには低圧での水素化仕上げが如何に有効でなかったかを示している。この試料は黒ずんだ色と高い芳香族含有率を有するせいでホワイトオイルとしては資格が得られないであろう。
【0089】
(実施例6)
実施例6は比較用である。
水素化処理済みフィッシャー・トロプシュ蝋(下記の表VIII)を、0.3%のPtと35%のキャタパル(Catapal)アルミナ結合剤を含有したPt/SSZ−32触媒の上で異性化した。この蝋供給材料のT90沸点は915°F未満であったことに留意されたい。実験条件は水素化異性化温度が560°F、LHSVが1.0、反応器の全圧が300psig、そして貫流水素レートが6000SCF/bblであった。反応器流出物を直接に、シリカ−アルミナ上のPt/Pdの水素化仕上げ触媒を含有した第二の穏やかな水素化仕上げ反応器に、やはり300psigの全圧で、通した。その反応器の条件は温度が450°FでありそしてLHSVが1.0であった。表IXには、転化率と収量ばかりでなく、水素化異性化済みストリッパー残油(比較用実施例6の基油)の性質も示してある。
【0090】
【表8】

【0091】
【表9】

【0092】
比較用実施例6の基油は流動点が高すぎて良好な品質のホワイトオイルとは認められなかった。この実施例は、490℃(915°F)より高いT90沸点を有する本発明の蝋質供給材料よりも低いT90沸点(911°F)をもつ供給材料を使用していた。水素化異性化と水素化仕上げの工程を合わせての転化のレベルも流動点を0℃未満にするには不十分であった。更に、この実施例は、フィッシャー・トロプシュ蝋質供給材料の中の650°F+の生成物の、沸点650°F−の生成物への好ましい転化率(20重量%より高く且つ75重量%より低い)を有さなかった。
【0093】
本願に引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、各々個々の刊行物、特許出願または特許の開示が仔細に且つ個別に示されていてその全体を組み込まれていたかのようにそれと同程度にそれらの全体が本明細書の中に組み入れられる。
【0094】
当業者にとっては、上に開示された本発明の例示態様について多数の変形が容易に想定されるであろう。従って、本発明は請求項の範囲内に入る全ての構造および方法を包含するものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStであり;
b.粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+105
によって算出された値より大きく;
c.シクロパラフィン官能性をもつ分子が18重量%未満であり;
d.流動点が0℃未満であり;かつ
e.セイボルト色度が+20以上である、
ホワイトオイル。
【請求項2】
粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+115
によって算出された値より大きい、請求項1のホワイトオイル。
【請求項3】
粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+120
によって算出された値より大きい、請求項2のホワイトオイル。
【請求項4】
流動点が−10℃未満である、請求項1のホワイトオイル。
【請求項5】
流動点が−20℃未満である、請求項4のホワイトオイル。
【請求項6】
セイボルト色度が+25以上である、請求項1のホワイトオイル。
【請求項7】
セイボルト色度が+29以上である、請求項1のホワイトオイル。
【請求項8】
さらに、RCS試験に合格している、請求項1のホワイトオイル。
【請求項9】
280〜289nmのUV吸光度が3.5以下であり、290〜299nmのUV吸光度が3.0以下であり、300〜329nmのUV吸光度が2.0以下であり、そして330〜380nmのUV吸光度が0.7以下である、請求項1のホワイトオイル。
【請求項10】
280〜289nmのUV吸光度が0.70以下であり、290〜299nmのUV吸光度が0.60以下であり、300〜329nmのUV吸光度が0.40以下であり、そして330〜380nmのUV吸光度が0.09以下である、請求項9のホワイトオイル。
【請求項11】
マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が1.2重量%未満である、請求項1のホワイトオイル。
【請求項12】
マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が0.01重量%未満である、請求項11のホワイトオイル。
【請求項13】
さらに、ノアック揮発度が、式:
ノアック揮発度(重量%)=1000×(100℃における動粘度)−2.7
によって算出された量より低い、請求項1のホワイトオイル。
【請求項14】
0.05重量%未満の芳香族を有している、請求項1のホワイトオイル。
【請求項15】
a.100℃における動粘度が約1.5cSt〜36cStであり;
b.粘度指数が、式:
粘度指数=28×Ln(100℃における動粘度)+95
によって算出された値より大きく;
c.シクロパラフィン官能性をもつ分子が5重量%から18重量%未満までであり;
d.マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が1.2重量%未満であり;
e.流動点が0℃未満であり;かつ
f.セイボルト色度が+20以上である、
ホワイトオイル。
【請求項16】
マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が0.08重量%未満である、請求項15のホワイトオイル。
【請求項17】
マルチシクロパラフィン官能性をもつ分子が0.01重量%未満である、請求項16のホワイトオイル。
【請求項18】
セイボルト色度が+29以上であり、そしてRCS試験に合格している、請求項15のホワイトオイル、
【請求項19】
さらに、ノアック揮発度が、式:
ノアック揮発度(重量%)=1000×(100℃における動粘度)−2.7
によって算出された量より低い、請求項15のホワイトオイル。
【請求項20】
シクロパラフィン官能性をもつ分子が8〜15重量%である、請求項15のホワイトオイル。
【請求項21】
流動点が−10℃未満である、請求項15のホワイトオイル。
【請求項22】
0.05重量%未満の芳香族を有している、請求項15のホワイトオイル。


【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−102335(P2012−102335A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−441(P2012−441)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2007−522548(P2007−522548)の分割
【原出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】