説明

高度発光ドープ金属窒化物粉末を合成するための方法

最初に金属ドーパント合金を形成し、次に、合金を反応器中において制御された条件下で高純度アンモニアと反応させることにより、高発光効率を表すドープ金属窒化物粉末を大量に製造する簡単で安価な方法。得られるドープ金属窒化物粉末は、純粋の非ドープGaN粉末、ドープGaN薄膜、およびZnS粉末に見られるものを遥かに凌ぐ発光効率を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連特許〕
本出願は、それらの両方が2004年4月27日に出願された(1)「高度発光マグネシウムドープ窒化ガリウム粉末を合成するための方法」題の米国特許仮出願第60/566,147号、および(2)「高度発光シリコンドープ窒化ガリウム粉末を合成するための方法」題の米国特許仮出願第60/566,148号からの優先権を主張する。これらの出願は参考のため本明細書に包含される。
【背景技術】
【0002】
ここ数十年において、新世代エレクトロルミネセント(EL)素子で用いる新しい半導体材料に対する探求があった。EL素子には、発光ダイオード(LEDs)、およびコンピュータおよびテレビ画面上に文字、グラフィックスおよび画像を表示するために用いることができると共に、ランプおよびバックライトにおいて用いることができるデバイスである電子発光ディスプレイが含まれる。具体例には、ELランプ、バックライトLCDs、時計光、携帯電話、ゲージ、超薄フラット・パネルディスプレイ、ELワイヤーおよびELパネルが挙げられる。金属窒化物は、大きな直接バンドギャップ、強い原子間結合、および高い熱伝導度を含む、それらをこれら素子で用いる理想的な半導体材料とするいくつかの独特の特性を表す。マグネシウム(Mg)、シリコン(Si)、および希土類元素(Pr、Eu、Er、Tm)などの適するドーパントの導入、および窒化インジウム(InN)との固溶体の形成が、すべての範囲の可視電磁放射線(400〜700nm)を得ることを可能とすることは、また、認識される。マグネシウムは、一般に、p形半導体材料にドープするための最適なアクセプタ不純物として技術上認められているし、シリコンは、一般に、n形半導体材料にドープするための最適なドナー不純物として技術上認められている。
【0003】
今まで、EL照明産業における研究は、主として、GaN薄膜および硫化亜鉛(ZnS)粉末に主眼を置いてきた。GaN粉末および他の金属窒化物粉末は、EL照明産業における衝撃に向けての大きな可能性を有するにも拘わらず、大体は見過ごされてきた。現在のGaN薄膜およびZnS粉末素子は、効率および発光品質において技術が要求するほどに速くは改善されていないので、代替品としての他の半導体材料に目を向けることが必要となってきている。研究は、GaNおよび他の金属窒化物粉末が、適正に製造される場合、改善された発光をもたらす代替半導体材料として用いることが可能であることを示唆する。これらの結果は、本明細書において参考のため包含される「窒化ガリウム粉末合成のための改善されたシステムおよび方法」題の米国一般特許出願第10/997,254号に説明され、立証されてきている。しかし、EL素子中の改善された半導体代替品としてGaNおよび他の金属窒化物粉末を用いることに向けての重要な工程は、粉末中で制御されたn形およびp形ドーピングを達成することができることである。赤から紫までのすべての範囲の可視電磁放射線を表すドープ金属窒化物粉末を合成するためのさらなる必要性がある。
【発明の開示】
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、可視電磁放射線を表し、改善された発光特性を有する高度発光ドープ金属窒化物粉末を、大量に、合成するための方法に関する。本発明における金属窒化物は、III族窒化物半導体(GaN、InN、AlN)、それらの3元合金(AlGaN、InGaN、およびAlInN)、およびそれらの4元合金(AlGaInN)を指す。製造のし易さのせいで、GaNが現在最も一般的に用いられ、金属窒化物系の中での基本材料である。本発明の別の目的は、優れたリン材料の大量生産を可能とする簡単で安価な方法を提供する。好ましい実施形態による方法は、一定の適する時間帯にわたり高温で反応器中金属ドーパント合金を高純度アンモニアと反応させることを含む。
【0005】
本発明の方法は、いかなる特定ドーパントの導入にも限定されない。当業者は、n形半導体材料用のゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)および炭素(C)、およびp形半導体材料用の亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)およびベリリウム(Be)などの多数の材料、および材料の混合物が、金属窒化物粉末中のドーパントとして用いることが可能であることを認識する。現在まで、本方法は、シリコン(Si)、マグネシウム(Mg)、および亜鉛(Zn)をGaNおよびAlGaN粉末中のドーパントとして用いて試験され、検証されてきた。得られるMg−ドープおよびSi−ドープGaN粉末の分析結果は、MgまたはSiをドープしたGaN薄膜よりも3〜4倍良い発光を表示する。加えて、EL材料として金属硫化物に較べて金属窒化物の一般に認められる優れた特性は、得られるドープ金属窒化物粉末がZnS粉末に対して発光のさらにより大きな改善を表示することを示す。さらに、得られるドープ金属窒化物粉末は、窒化化合物中のより強い化学結合がより安定な結晶構造をもたらすので、金属硫化物粉末よりも長い寿命を有する。これは、これまで合成されたドープGaN粉末におけるより少ない欠陥および有意により低い劣化速度によって明白に示される。
【0006】
本発明の好ましい実施形態は、本質的に二つの主要工程:(1)金属−ドーパント合金の形成工程、および(2)反応器中超高純度アンモニアによる金属−ドーパント合金の窒化物形成工程からなる方法である。金属−ドーパント合金は、液体状態の超高純度金属(例えば、99.9995重量%)および最適ドーパント(例えば、SiまたはMg)を、真空下200℃〜1000℃の温度範囲でステンレス鋼容器中に入れ、容器を数時間にわたり機械的に混合して高度に均質な合金を作り出すことにより調製される。ドープ金属窒化物粉末を生成するための得られる金属−ドーパント合金の窒化物形成は、真空下高温で数時間にわたり反応器を通して超高純度アンモニア(例えば、99.9995重量%)を流すことにより反応器中で達成される。好ましい実施形態による方法は、反応物質、生成物、温度および圧力を含むプロセスパラメータの高度な制御を可能とする。
【0007】
本発明を要約する目的のため、本発明の一部の態様、利点および新規な特徴を上に記載してきた。しかし、必ずしもすべてのこうした利点が本発明のあらゆる特定の実施形態により達成することが可能であるとは限らないことは、理解されるべきである。従って、本発明は、必ずしも本明細書において教示するかまたは示唆することが可能であるすべての他の利点を達成するのではなく、本明細書において教示される一つまたはそれ以上の利点を達成するやり方で具現化するかまたは行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
〔詳細な説明〕
本発明の一部の好ましい実施形態および実施例が以下に記載されるが、本発明が、特定的に開示される実施形態を超えて本発明の他の代替実施形態、およびそれらの明らかな修正版および同等物にまで及ぶことは、当業者により理解される。従って、本発明の範囲が本明細書において開示される特定実施形態によって限定されるべきでないことが意図されている。例えば、本発明の範囲は、記載される行為の正確な系列により限定されないし、示されるすべての行為の実施にも限定されない。事象または行為の他の系列、またはすべてではない事象、または事象の同時発生は、本明細書において開示される方法(複数を含む)を実行する上で用いることが可能である。
【0009】
<一般説明>
ドープ金属窒化物粉末を合成する好ましい方法は、メカニカル・ミキサーを用いて金属−ドーパント合金を調製し、得られる金属−ドーパント合金を、反応器中高温で数時間にわたり超高純度アンモニア(例えば、99.9995重量%)と反応させることを含む。好ましい方法は、これまで他の市販されているGaN粉末およびGaN薄膜において見られていた効率を3〜4桁上回る発光効率を有する高度発光粉末を製造する。
【0010】
以下に開示される方法は、ドープGaN粉末を製造するための好ましい方法である。種々のドーパントの物理的および化学的性質の変化のせいで、本方法の好ましい温度および反応時間などのプロセスの一部のパラメータは変動することが可能である。しかし、本方法は同じ行為および事象からなる。当業者は、特定のドーパントまたはドーパントの混合物に対して本発明を遂行するために必要とされるプロセスパラメータの調整を認識する。さらに、当業者は、本発明の主題である同じ方法が、InN、AlN、AlGaN、InGaN、AlInNおよびAlInGaN材料を含む有用な半導体特性を表すことが知られる他のIII族金属窒化物をドープするために用いることが可能であることを認識する。これは、ガリウムの代わりにまたはガリウムに加えてのいずれかでアルミニウム、インジウムまたは両方をドーパントに添加し、混合物を機械的に混合して合金を作り出すことにより達成される。残りの工程は同じである。
【0011】
<ドープGaN粉末を製造する好ましい方法>
高度発光ドープGaN粉末を製造する好ましい方法が以下に開示されると共に、シリコンドープGaN粉末およびマグネシウムドープGaN粉末を製造する好ましい方法のための特定プロセスパラメータが一例として与えられる。以下の方法は、限定としてではなく単に例として提供される。当業者は、変更されるかまたは修正されて本質的に類似の結果を生むことができるであろう多様な決定的でないパラメータを容易に認識する。さらに、当業者は、多様なドーパントおよびドーパントの混合物、および多様なIII族金属窒化物およびそれらの3元および4元合金が本発明の主題である本方法において用いることが可能であると共に、プロセスパラメータ(例えば、温度、圧力、時間)に対する一部の調整が特定のドーパントおよび窒化物の異なる物理的および化学的性質を整えるために必要とされることを認識する。
【0012】
図1に関して、本方法の第一工程において、高度に均質なガリウム−ドーパント合金が調製される。ガリウム金属は融解され、小さな塊のドーパント材料と一緒にアルミナるつぼなどの容器14中に入れられる。ガリウム金属は、好ましくは99.9重量%〜99.9999重量%間範囲の純度、最も好ましくは99.9995重量%などの超高純度からなる。ドーパント塊は、好ましくは99.9重量%〜99.9999重量%間範囲の純度、最も好ましくは99.999重量%などの超高純度からなる。ガリウム金属およびドーパント塊を含有する容器14は、真空12(図1において矢印で表される)下、高温でステンレス鋼密閉容器18中に置かれる。密閉容器18は、高度に均質なガリウム−ドーパント合金20を作り出すために数時間にわたりメカニカルシェーカー10を用いて機械的に混合される。混合時間は、本方法において用いられる温度および真空度、ならびに本方法において用いられる特定ドーパントおよび金属窒化物により変わる。得られるガリウム−ドーパント合金は、市販されているアルミナボートなどの容器22中に注がれる。
【0013】
ガリウム−マグネシウム合金の調製のため、好ましい方法は、密閉容器18を、200℃〜1000℃間範囲の温度、最も好ましくは500℃で、1時間以上、最も好ましくは7時間にわたり約0.001Torrの真空下に置くことを含む。ガリウム−シリコン合金の調製のため、好ましい方法は、密閉容器18を、500℃〜1000℃間範囲の温度、最も好ましくは700℃で、1時間以上、最も好ましくは10時間にわたり約0.001Torrの真空下に置くことを含む。この好ましい方法は、高度に均質なガリウム−マグネシウムまたはガリウム−シリコン合金をもたらす。合金の組成は合金化工程の時間および温度により正確に制御することができ、この実験は2元および3元合金用の公表状態図にぴったりと追随することを示す。0.1at%〜3at%の範囲にあるドーパント濃度は、十分に達成されてきた。当業者は、この範囲がより高いおよびより低い濃度範囲に向けて有意に伸ばすことができることを認識する。Massalski,T.B.,Okamoto,H.,Subramanian,P.R., Kacprzak,L., Binary Alloy Phase Diagrams,2,1822〜1823(1990)を参照すること。
【0014】
図2に関して、ガリウム−ドーパント合金を含有する容器22は管型反応器24中に置かれる。管型反応器は、例えば、最大運転温度1200℃でリンドバーグ管型炉(80cm長さ)中に導入される、両端でステンレス鋼フランジを有する溶融シリカ管(3.5cm内径および120cm長さ)からなる水平石英管型反応器であることが可能である。溶融シリカ管は、そのフランジを通して入口でガス供給系と出口で真空系と接続される。管型反応器の説明は、本明細書において参考のため包含される、R.Garcia,et.al.,“A novel method for the synthesis of sub-microcrystalline wurtzite-type InXGaX-1N powders,”Materials Science and Engineering(B):Solid State Materials for Advanced Technology, B90, 7〜12(2002)に開示されている。勿論、他タイプの反応器または同等の装置は技術上知られているように用いることが可能である。
【0015】
さらに図2に関して、管型反応器24は、同時に電気炉中で900℃〜1200℃間の範囲にある温度に加熱されながら、しっかりと閉じられ排気されて約0.001Torrの真空を作り出し、容器22は管型反応器24の入口26の近くに位置する(「低温領域」と呼ばれる位置)。
【0016】
約1時間後、管型反応器24の中央部30(「高温領域」と呼ばれる位置)は、約1100℃〜1200℃間の温度に達する。マグネシウムドープGaN粉末を製造するための好ましい方法は、管型反応器24の中央部30が最も好ましくは約1100℃に達することを可能とすることを含む。シリコンドープGaN粉末を製造するための好ましい方法は、管型反応器24の中央部30が最も好ましくは約1200℃に達することを可能とすることを含む。上記の条件が合致するとすぐに、真空プロセスを一時停止し、アンモニア32(図2において矢印で表される)が、200cm3/分〜1000cm3/分間の流量で、最も好ましくは約350cm3/分で管型反応器24を通して導かれる。管型反応器24を通して導かれるアンモニア32は、99.99重量%〜99.9999重量%間範囲の純度、最も好ましくは99.9995重量%の超高純度からなる。
【0017】
定常状態に近づくにつれて、合金−アンモニウム溶液が形成され始める。約1時間後定常状態が達成される。続けて図2に関して、合金−アンモニウム溶液を有する容器22は、技術上公知であるように磁気遠隔操縦機を用いて管型反応器24の中央部分すなわち高温領域30に移動される。容器22は1〜20時間範囲、最も好ましくは約10時間にわたり管型反応器24の中央部分30に留まる。この時間の間に、固体ドープGaN生成物(例えば、GaN:MgまたはGaN:Si)が容器22中に形成される。次に、容器22は管型反応器24の入口すなわち低温領域26に戻され、放置されて室温に冷却される。固体生成物が室温に冷却された後、容器22は反応器24から取り出され、固体生成物は技術上公知であるように破砕機中で砕かれ、ドープGaN生成物を破砕して粉末を製造する。結果は、本発明の高度発光ドープGaN粉末である。
【0018】
同じ方法は、ドープInN、AlN、AlGaN、InGaN、AlInNおよびAlInGaN粉末を合成するために用いることが可能である。これは、最適の金属または複数の金属(In、Al、Ga、およびまたはそれらの組合せ)を融解し、融解生成物をドーパントの塊と一緒に第1容器14中に置くことにより達成される。残りの工程は同じである。
【実施例】
【0019】
<分析結果>
本発明は、一般に、種々のドーパントを種々の金属窒化物中に導入して優れた発光特性を表すドープ金属窒化物粉末を製造するための方法を包含するが、一方で、本発明の主題である本方法の試験および検証は、これまで、n形半導体粉末を製造するためのGaN中のSi導入、p形半導体粉末を製造するためのGaN中のMgおよびZn導入、および複合ドープ半導体粉末を製造するためのGaN中のSiおよびMg導入に焦点を合わせてきた。加えて、AlGaN粉末はうまくドープされてきた。これら粉末に対する分析結果は以下に要約される。
【0020】
≪マグネシウムドープGaN粉末≫
日立(Hitachi)S−4700−II電界放射走査型電子顕微鏡を用いて、マグネシウムドープGaN粉末(GaN:Mg)のSEM画像を得た。粉末は、図3(a)および3(b)に示される二つの主要タイプの粒子を有することが観察される。図3(a)は、1〜3ミクロン間の狭い粒径分布を有する主として小さな六方晶系板状体を示す。図3(b)は、10〜20ミクロン間長さの主として大きな円柱状結晶を示す。異なる形態を有する他の粒子は、マグネシウムドープGaN粉末中に存在することが示されるが、しかし、板状体および円柱状結晶が主要形態であった。
【0021】
マグネシウムドープGaN粉末のX線回折分析は、PDFカードNo.76−0703において計算される場合に純粋GaN粉末中に見出されるものに極めて類似した格子パラメータを有する明確な六方晶系ウルツ鉱結晶構造を示した。酸化物、他の窒化物または純粋金属などの他の結晶相は全く存在せず、このことは、本発明により製造されるGaN:Mg粉末の高結晶品質および高純度を実証する。
【0022】
合成されたそのままのものと焼きなましたGaN:Mg粉末の室温光ルミネセンス(PL)スペクトルを、図4(a)に示す。スペクトルは、両方とも、同一条件下で、同一励起源、100ミクロンスリット幅および1桁減衰フィルタ(1 order of magnitude filter)を有するレーザーHe−Cd(325nm)を用いてとった。図4(a)は、GaN:Mgの一般的な広い発光を示し、一つは420nmで(2.95eV、紫)、他方は470nmで(2.64eV、青)集中する。図4(a)は、また、GaN:Mg粉末のPL強度が焼きなまし処理により改善されることを示す。
【0023】
GaN:Mg粉末を、さらに、加速電圧5keVおよびビーム電流0.3nAにより走査型電子顕微鏡において液体ヘリウム温度で行われるカソードルミネセンス(CL)分光法を用いて特徴付けた。図4(b)に示す得られたCLスペクトルは、358nm(3.464eV)、363nm(3.416eV)でのピーク、および370〜450nmの幅広いピークを表す。358nmピークは、多くの場合、GaN薄膜中に観察されるドナー結合エキシトンピークである。363nmピークは、多くの場合、GaN中の積層欠陥に関連する。370〜450nmの幅広いピークは、残留ドナーとマグネシウムアクセプタ準位間の再結合に寄与してきたドナー・アクセプタペアバンドであると信じられる。このピークは、類似の非ドープGaN粉末中には存在せず、従って、これはマグネシウムがアクセプタ準位として組み込まれた証となるものである。
【0024】
これらの分析結果は、高純度マグネシウムドープGaN粉末が本発明により製造されたことを示す。本方法は簡単でもあり安価でもあって、純粋な非ドープGaN粉末およびドープGaN薄膜に見られるものを遥かに凌ぐ発光効率を表すこれら粉末の大量生産を可能とする。マグネシウムドープGaN粉末の発光効率は、さらに、GaNが一般にZnSを超えて表示する優れた半導体特性のせいで、ZnS粉末において見られるものを凌駕する。室温で、GaN:Mg粉末は、2.94eV(422nm)および2.64eV(470nm)周りで明るい青色のカソードルミネセンス発光を表し、このことは材料がEL素子用の良好な候補であることを示す。
【0025】
≪亜鉛ドープGaN粉末≫
GaN粉末は、また、Znをうまくドープしてp形半導体粉末を製造してきた。亜鉛ドーピングは、スペクトルの青色範囲における発光を生みだすマグネシウムドーピングと較べて青緑色範囲における発光を生みだす。ガリウム−亜鉛合金を亜鉛ドープGaN粉末に変換する反応は、これまでのGaN粉末中に導入されるいかなる他のドーパントよりも少ない時間ですむ。
【0026】
≪シリコンドープGaN粉末≫
日立S−4700−II電界放射走査型電子顕微鏡を用いて、シリコンドープGaN(GaN:Si)粉末のSEM画像を得た。粉末は、図5(a)および5(b)に示される二つの主要タイプの粒子を有することが観察される。図5(a)は、1〜3ミクロン間の狭い粒径分布を有する主として小さな板状体を示す。図5(b)は、約10ミクロン長さの主として大きな円柱状結晶を示す。異なる形態を有する他の粒子もシリコンドープGaN粉末中に存在することが示されるが、しかし、板状体および円柱状結晶が主要形態であった。
【0027】
非ドープGaNおよびGaN:Si粉末の図6に示される室温PLスペクトルは、黄色発光(YL)が非ドープGaN粉末によっては放出されないことを示す。しかし、YLは本発明から得られるシリコンドープGaN粉末によって放出される。
【0028】
これらの分析結果は、高品質シリコンドープGaN粉末が本発明により製造されたことを示す。本方法は簡単でもあり安価でもあって、純粋なGaN粉末およびGaN薄膜に見られるものを遥かに凌ぐ発光効率を表すこれら粉末の大量生産を可能とする。さらに、シリコンドープGaN粉末の発光効率は、GaNが一般にZnSを超えて表示する優れた半導体特性のせいで、ZnS粉末において見られるものを凌駕することが好ましい。
【0029】
≪シリコンおよびマグネシウム複合ドープGaN粉末≫
我々はアクセプタおよびドナー不純物を複合ドープした粉末を製造することに成功してきた。特に、シリコンおよびマグネシウムを複合ドープしたGaN粉末は、興味ある性質、最も重要なことには、白色スペクトルに酷似する幅広い発光特性を有することを実証してきた。これは図7中のCLスペクトルに示される。対応エレクトロルミネセンススペクトルは、CLおよびPLスペクトルと極めて似た特性を有する。
【0030】
≪InGaNおよびAlGaN粉末のドーピング≫
我々は70%範囲以下のアルミニウム組成物によるドープAlGaN粉末を製造することに成功してきた。従来技術において、R.ガルシア(Garcia)は高品質InGaN粉末を製造することに成功した。R.Garcia,et.al.,“A novel method for the synthesis of sub-microcrystalline wurtzite-type InXGaX-1N powders,”Materials Science and Engineering(B):参考のため上に包含されるSolid State Materials for Advanced Technology,B90,7〜12(2002)を参照すること。当業者は、本明細書における手順を用いるInGaNのドーピングは実行可能であることが好ましいことを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施において用いられるメカニカル・ミキサーの略図である。
【図2】本発明の実施において用いられる反応器の略図である。
【図3(a)】本発明の好ましい方法により合成されたマグネシウムドープGaN粉末の小さな六方晶系板状体のSEM顕微鏡写真である。
【図3(b)】本発明の好ましい方法により合成されたマグネシウムドープGaN粉末の大きな円柱状結晶体のSEM顕微鏡写真である。
【図4(a)】本発明の好ましい方法により合成された、そのままのものと焼きなましたマグネシウムドープGaN粉末の室温光ルミネセンス(PL)スペクトルである。
【図4(b)】本発明の好ましい方法により合成されたマグネシウムドープGaN粉末の液体ヘリウム温度カソードルミネセンス(CL)スペクトルである。
【図5(a)】本発明の好ましい方法により合成されたシリコンドープGaN粉末の小さな板状体のSEM顕微鏡写真である。
【図5(b)】本発明の好ましい方法により合成されたシリコンドープGaN粉末の大きな円柱状結晶体のSEM顕微鏡写真である。
【図6】本発明の好ましい方法により合成されたシリコンドープGaN粉末の室温PLスペクトルである。
【図7】本発明の好ましい方法により合成されたシリコン−マグネシウム複合ドープGaN粉末の室温CLスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープ金属窒化物粉末を製造する方法において、
金属−ドーパント合金を形成する工程、および金属−ドーパント合金をアンモニア流中で900℃〜1200℃間の温度にさらして、アンモニアを金属−ドーパント合金と反応させて結晶構造を形成する工程を含み、
上記結晶構造は、小さな粒径分布を有する六方晶系板状体と大きな粒径分布を有する大きな円柱状微結晶とを含み、板状体および微結晶の両方が明確なウルツ鉱結晶構造を有することを特徴とする結晶構造である、
ドープ金属窒化物粉末を製造する方法。
【請求項2】
金属がガリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属がインジウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
金属がアルミニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
金属がアルミニウムおよびガリウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
金属がインジウムおよびガリウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
金属がアルミニウムおよびインジウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
金属がインジウム、アルミニウム、およびガリウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ドーパントがマグネシウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ドーパントが亜鉛である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ドーパントがシリコンである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ドーパントがシリコンおよびマグネシウムの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ドーパントがドナー不純物およびアクセプタ不純物の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
固体結晶生成物が破砕機中で砕かれて粉末を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
粉末がさらなる焼きなましを受ける、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
金属が約99重量%を超える高純度からなり、ドーパント塊が約99重量%を超える高純度からなり、アンモニアが約99重量%を超える高純度からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
金属−ドーパント合金が約0.001Torr以上の真空度にさらされる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
アンモニア流量が200cm3/分以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ドープ金属窒化物粉末を製造する方法において、
金属を融解する工程、
得られる金属および小さな塊のドーパントを第1容器中に入れる工程、
第1容器を真空下500℃〜1000℃間の温度で密封される第2のより大きな容器中に置く工程、
数時間にわたり第2容器を機械的に混合して金属−ドーパント合金を生成する工程、
得られる金属−ドーパント合金を第3容器中に置く工程、
第3容器を反応器の低温領域中に置く工程、
反応器を閉じ、反応器を排気して真空を作り出す工程、
反応器を反応器の高温領域が約1100℃〜約1200℃間の温度に達するまで加熱する工程、
反応器を通して定常状態が達成されるまでアンモニアを導く工程、
第3容器を1時間以上にわたり反応器の高温領域中に置いて、第3容器中に固体結晶構造体を生成する工程、
第3容器を反応器の低温領域中に置き、固体結晶構造体を放置して室温に冷却し、反応器から固体結晶構造体を除去する工程、
を含むドープ金属窒化物粉末を製造する方法。
【請求項20】
金属がガリウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
金属がインジウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
金属がアルミニウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
金属がアルミニウムおよびガリウムの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
金属がインジウムおよびガリウムの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
金属がアルミニウムおよびインジウムの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
金属がインジウム、アルミニウム、およびガリウムの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
ドーパントがシリコンである、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
ドーパントがマグネシウムである、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
ドーパントが亜鉛である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
ドーパントがシリコンおよびマグネシウムの混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
ドーパントがドナー不純物およびアクセプタ不純物の混合物である、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
固体結晶生成物が破砕機中で砕かれて粉末を生成する、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
粉末がさらなる焼きなましを受ける、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ガリウム金属が約99重量%を超える高純度からなり、ドーパント塊が約99重量%を超える高純度からなり、アンモニアが約99重量%を超える高純度からなる、請求項19に記載の方法。
【請求項35】
反応器が水平石英管型反応器である、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
第2容器がステンレス鋼製であると共に、第2容器が約0.001Torr以上の真空度に排気される、請求項19に記載の方法。
【請求項37】
反応器が約0.001Torr以上の真空度に排気される、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
アンモニアが反応器を通して200cm3/分以上の流量で導かれる、請求項19に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜38に記載の方法により製造されるドープ金属窒化物粉末。

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−534609(P2007−534609A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−510950(P2007−510950)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/014514
【国際公開番号】WO2005/104767
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504318142)
【Fターム(参考)】