説明

高強度セッコウ

【課題】
セッコウの圧縮強度は3日で概ね12〜15N/mm程度の強度発現である。これをケイ酸水溶液により強度増加をはかる技術である。したがって、セッコウ硬化体を軽量化することも可能である。また、結晶セッコウ、二水セッコウ、廃セッコウの粉末を焼成することなく硬化させ、土壌固化やボ−ド版の製造が可能になる技術である。
【解決手段】ケイ酸水溶液により高強度セッコウを製造し、軽量化する。また、廃セッコウを焼成しないで硬化させる方法の技術開発。いずれもケイ酸水溶液による方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
セッコウといえば紀元前から建築、土木分野に使用されている代表的な水硬性材料で、建築材料、土木材料として多方面に非常に多く使用され、現在に至っているものである。本発明は従来のセッコウの強度よりも高強度のセッコウを製造するための技術である。セッコウは地球上のあらゆるところで使用され、今日に至っているが、セッコウ単未で高強度にすることは不可能であった。セッコウ単未で使用するには各種セッコウボ−ド製品等があるが、セッコウは概ねセメントや高炉水砕スラグなど、他の水硬性材料と混合して使用しているのが実情である。むしろ、セメントや高炉スラグなどにセッコウを補助的に混合して活用する技術が多い。セッコウ単未で高強度が得られればその波及効果は極めて大きく、いろいろな分野に活用でき、新規技術を展開することが期待できる。
【背景技術】
【0002】
セッコウを建築材料として使用する場合、施工があし易く、防火性、断熱性、遮音性、寸法安定性などに優れ、安価であるが、耐水性に劣るなどの特性を持っている。さらに軽量化すれば強度不足になり難点でもある。
【0003】
セッコウ硬化体の圧縮強度や曲げ強度はセメントと比べて弱く、そのため、セッコウボ−ドの端部が欠けたり、ボ−ド自体に亀裂が入ったりすることが多い。また、セッコウの密度は2.32g/cmと比較的重く、施工時の持ち運びが厄介であり、一層の軽量化が望まれている。
【0004】
セッコウを土木材料として使用する場合、セメントと混合してエトリンガイトを生成し、強度の向上をはかる土壌改良材に有効である。しかしながら、このような土壌改良材は土壌のpHが高アルカリ性になり、環境面からも危惧される。中性の環境下で固化することが期待されている。
【0005】
セッコウの活用は古今東西古くから行われている技術であるが、結晶セッコウ、二水セッコウは120℃位に焼成して、焼きセッコウにしてからでないと硬化することはできない。焼成した焼きセッコウは水と混練して二水セッコウになり、強度発現ができる。ここに低温ではあるがエネルギ−が必要不可欠である。このことは古くから行われた技術である。
【0006】
最近は住宅やビルを解体したときに発生する廃セッコウの処理が問題である。これはセッコウボ−ド版に紙材が付着しており、これを剥がすことが現実として難しい。このまま地中に廃棄するにしても土壌に含まれる硫酸塩還元菌による作用で、有害な硫化水素ガスを発生し、環境面でも問題が起こるのでその対策が欠かせないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はセッコウに関連する種々の技術の中で、解決しようとしているのは、主要な課題は次の3点にある。
1. 焼きセッコウの水和反応により得られる生成物、いわゆる、セッコウ自 体の強度を増加させる技術。
2. また、結晶セッコウ、二水セッコウを焼成しないで、このままの形で硬 化させ強度を発現させる技術。
3. また、廃セッコウボ−ドを焼成しないで硬化発現させる技術。
【課題を解決するための手段】
【0008】
セッコウ自体の強度を発現させる方法として、セメント、スラグ、フライアッシュ、シリカヒュ−ムなどを強度の補助材として使うのではなく、ケイ酸水溶液を用いることによって強度の増加が認められた。合成したケイ酸水溶液の化学式を特定することは難しいが、主にHSiO、HSiで示されるものである。ここに微量のナトリウム分が含有し、溶液のpHは目的によって酸性からアルカリ性まで自由に変動させることが可能である。酸性側ではpH 2.0〜6.0、中でも酸性側で使用する場合は2.5〜5.5が望ましい。アルカリ性で使用する場合は8.0〜13.5、中でも8.2〜12.5が望ましい。粘性はほとんど水と同じ25℃で2.0mPa・Sである。
【0009】
焼きセッコウを水で混練すると水和反応が起こり、二水セッコウとなって強度が発現する。同様に焼きセッコウをケイ酸水溶液で混練すると水和反応が起こり、二水セッコウとなって強度が発現する。この場合、酸性のケイ酸水溶液で混練した場合、アルカリ性の混練水で硬化させた場合、いずれも材齢3日、7日、28日、90日の圧縮強度を比較した。この結果より、28日材齢でみると、酸性、アルカリ性のケイ酸水溶液にかかわらず水で混練したものよりも強度の発現は顕著であった。28日材齢では、ケイ酸水溶液で混練した方の圧縮強度は水で混練したものよりおよそ2倍になっている。
【0010】
二水セッコウを水で混練しても強度発現はない。これを約120℃位に焼成すれば焼きセッコウになるが、焼成しないでこのままの形で硬化させることが可能である。本申請の特許は、ケイ酸水溶液で混練すると強度発現が起こることを明らかにした。酸性のケイ酸水溶液で混練した場合、アルカリ性の混練水で硬化させた場合、いずれも材齢3日、7日、28日、90日の圧縮強度を比較した。この結果より、28日材齢でみると、アルカリ性のケイ酸水溶液で混練した方が酸性の場合よりも強度の発現が大きい。二水セッコウ自体を酸性のケイ酸水溶液で硬化させたものを〔参考写真−1〕に、アルカリ性のケイ酸水溶液で硬化させたものを〔参考写真−2〕に示す。また、廃セッコウをアルカリ性のケイ酸水溶液で硬化させたものを〔参考写真−3〕に示す。
【0011】
廃セッコウは化学式では二水セッコウと同種のものである。しかし、廃セッコウはほとんどセッコウボ−ド版を粉砕して粉末にしたもので、ボ−ド版に接着している紙材も粉砕されて混入することになる。実際の活用技術では、この廃セッコウを焼成して焼きセッコウにして利用する。もしくは、廃セッコウを水に浸積させて紙材を剥離し、これを乾燥させて同様に加熱処理して利用しなければならない。本申請の特許は、ケイ酸水溶液で混練すると廃セッコウも同様に強度発現が起こることを明らかにした。酸性のケイ酸水溶液で混練した場合、アルカリ性の混練水で硬化させた場合、いずれも材齢3日、7日、28日、90日の圧縮強度を比較した。この結果より、28日材齢でみると、アルカリ性のケイ酸水溶で混練した方が強度の発現が顕著である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は従来のセッコウの強度をおよそ2倍にすることにより、その波及効果は極めて大きい。建築材料としては、軽量のセッコウボ−ドを製造することができる。また、軽量にすることにより、空隙が多くできるので断熱効果をもたせることも可能である。断熱材の他にも吹き付けセッコウにより断熱効果も期待できる。
【0013】
土木材料としては従来のセメント系固化材では土壌のpHが高アルカリ性になり問題である。しかし、高強度セッコウができれば中性の固化材として極めて有効な材料になり得る。したがって、廃セッコウを焼成することなく、また、付着する紙材を剥離することもなく硬化させることができるので、土壌固化は廃セッコウを無処理のままケイ酸水溶液で混練することにより可能である。
【0014】
微細な亀裂をケイ酸水溶液で注入するか、また、大きな亀裂であればセッコウをケイ酸水溶液で混練したセッコウペ−ストを注入するのがよい。もしくはケイ酸水溶液で混練したセッコウペ−ストを貼り付け、塗布、吹き付け等の工法によって補修面の化粧を施すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
焼きセッコウ、または二水セッコウ、もしくは廃セッコウのいずれもケイ酸水溶液と混練することによって強度の発現が起こる。これらの粉末は概ね75〜150μm 程度に粉砕されていれば良好である。この場合、ケイ酸水溶液/各種セッコウ粉末 の溶液粉末比は30〜200%であり、良好な比率は50〜100%である。混練した後、型枠に流し込み、硬化する。溶液粉末比にもよるが、数分で硬化してくる。硬化が速すぎる場合は混合するケイ酸水溶液のpHをアルカリ性から少し酸性側にするか、もしくは適当な遅延剤などで調整が可能である。また、ケイ酸水溶液は酸性で使用す場合はpH2.5〜4.0である。アルカリ性で使用する場合はpH8.2〜9.5である。
【実施例】
【0016】
実際に焼きセッコウ、または二水セッコウ、もしくは廃セッコウをケイ酸水溶液で混練した場合の圧縮強度を図1に示す。二水セッコウ、もしくは廃セッコウの強度は3日から発現が期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
従来から使用されていたセッコウの強度を増加させることにより、軽量化しても従来程度の強度を確保できることは極めて新規性がある。また、廃セッコウは焼成しなくても強度の発現が期待でき、極めて環境に配慮した技術である。このことは産業上極めて優位である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】 各種セッコウの材齢による発現強度 (N/mm
【符号の説明】
【0019】
図1における横軸の 番号1,2,3,4,5,6は
1.焼きセッコウ×水
2.焼きセッコウ×酸性 ケイ酸水溶液
3.焼きセッコウ×アルカリ性 ケイ酸水溶液
4.二水セッコウ×酸性 ケイ酸水溶液
5.焼きセッコウ×アルカリ性 ケイ酸水溶液
6.廃セッコウ×アルカリ性 ケイ酸水溶液
グラフの左から、材齢 90日,28日,7日,3日の順、
ただし、廃セッコウは 材齢 90日,28日,7日 の順

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼きセッコウの水和反応により得られる生成物自体の強度を、ケイ酸水溶液で混練することによる強度発現を計る技術。
【請求項2】
同時に発砲させてセッコウボ−ドを作製し、軽量化する技術。
【請求項3】
結晶セッコウ、二水セッコウを焼成しないで、ケイ酸水溶液で混練することによる強度発現を計る技術。
【請求項4】
廃セッコウの粉末を焼成しないでケイ酸水溶液で混練することにより強度発現を計り、土壌固化処理用に適用する技術。
【請求項5】
廃セッコウの粉末を焼成しないでケイ酸水溶液で混練し、ボ−ド版を作製する技術。

【図1】
image rotate