説明

高強度ポーラスコンクリート組成物および高強度ポーラスコンクリート硬化体

【課題】 本発明は、透水係数が0.8cm/sec以上である高強度ポーラスコンクリートを提供する。
【解決手段】 粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、ブレーン比表面積が4000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏、および、セメントからなる混合物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水係数が高い、高強度ポーラスコンクリート組成物と、その硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポーラスコンクリートは、歩道、広場、駐車場などの透水性舗装や、透水性ブロックなどに使用されてきた。そして、透水性コンクリート舗装は、透水性アスファルト舗装と比べ、(1)曲げ強度や圧縮強度が高いため、交通荷重による轍の発生や空隙つぶれが少なく、(2)保水性が高く雨水の一時貯留性を有しているため、路面の温度上昇を抑える効果に優れ、(3)供用寿命が数十年と長く、リサイクルが可能なことなどが利点として挙げられる。そして、昨今、温暖化対策や公共構造物の長寿命化が、ますます求められていることから、高透水性かつ高強度という、相反する特性を兼備したポーラスコンクリートは、これらの要望に応えることができる材料として期待されている。
【0003】
かかる状況を受けて、特許文献1には、透水性コンクリート舗装用結合材および透水性コンクリート舗装が提案されている。
すなわち、該結合材は、少なくとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径が2mm以下の細骨材、減水剤、および、水を含むものである。そして、該結合材を用いて製造した舗装版の曲げ強度は5.5MPaで、透水係数は0.7cm/secである(段落0026)。これに更に繊維を含む舗装版の曲げ強度は7.0MPaで、透水係数は0.65cm/secである(段落0028)。また、更に繊維状粒子等を含む舗装版の曲げ強度は7.5MPaで、透水係数は0.63cm/secである(段落0030)。
【0004】
上記のように、該舗装版の透水係数は、0.63〜0.7cm/secである。この舗装版では、低下した透水性等の機能回復のためにおこなうメンテナンスの間隔を長くすることができる。しかしながら、メンテナンス中は道路等を閉鎖する必要があることから、メンテナンスの間隔をより延長することができる透水性舗装が求められていた。
また、曲げ強度を高めるために、繊維を該結合材に混合すると、コンクリートの流動性が低下して、舗装作業に時間がかかり、交通解放が大幅に遅れるという問題もあった。
したがって、透水係数が更に高く、繊維を用いない高強度ポーラスコンクリートが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、前記メンテナンスの間隔をより延長することができる、透水係数が0.8cm/sec以上の高強度ポーラスコンクリートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の範囲の比表面積を有する混和材を含み、特定の範囲のモルタル粗骨材空隙比やペースト細骨材空隙比等を有するポーラスコンクリート硬化体は、透水係数が0.8cm/sec以上と大きいにもかかわらず、強度が十分に高いことを見い出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]を提供する。
[1]粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、
水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、ブレーン比表面積が4000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏、および、セメントからなる混合物
[2]前記[1]に記載の高強度ポーラスコンクリート組成物を硬化させてなる、高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【0009】
[3]透水係数が0.8〜2.0cm/secである、前記[2]に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[4]曲げ強度が4.5N/mm以上である、前記[2]または[3]に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[5]圧縮強度が20N/mm以上である、前記[2]〜[4]のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
[6]空隙率が15〜28%である、前記[2]〜[5]のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透水係数が0.8cm/sec以上の高強度ポーラスコンクリート硬化体等を提供することができる。
また、該硬化体は、透水性舗装や透水性ブロックとして用いた場合に、低下した透水性等の機能回復のためにおこなうメンテナンスの間隔を大幅に延長することができる。
さらに、該硬化体は、都市型集中豪雨にも、十分、対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、上述のとおり、結合材、粗骨材、細骨材、および、水を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である高強度ポーラスコンクリート組成物(以下「組成物」という。)と、これが硬化してなる高強度ポーラスコンクリート硬化体(以下「硬化体」という。)である。
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
結合材
結合材は、(1)BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、(2)ブレーン比表面積が4000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末、および、(3)ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏(以下「混和材(A)」という。)、並びに、(4)セメントからなる混合物である。
【0013】
前記結合材の組成は、好ましくは、混和材(A)の含有率が10〜50質量%、および、セメントの含有率が50〜90質量%であり、より好ましくは、混和材(A)の含有率が20〜40質量%、および、セメントの含有率が60〜80質量%である。混和材(A)の含有率が10質量%未満で、セメントの含有率が90質量%を超えると、硬化体の透水係数を高めることが困難になり、混和材(A)の含有率が50質量%を超え、セメントの含有率が50質量%未満では、硬化体の強度発現性が低下する。
【0014】
また、前記混和材(A)の組成は、好ましくは、ポゾラン質微粉末の含有率が5〜55質量%、高炉スラグ粉末の含有率が20〜80質量%、および、無水石膏の含有率が15〜40質量%であり、より好ましくは、ポゾラン質微粉末の含有率が10〜40質量%、高炉スラグ粉末の含有率が30〜60質量%、および、無水石膏の含有率が20〜35質量%である。混和材(A)の組成が該範囲を外れると、硬化体の長期強度の発現性が、低下する場合がある。
【0015】
次に、結合材に含まれる各成分について説明する。
(1)ポゾラン質微粉末
ポゾラン質微粉末は、単独では水硬性はないが、水酸化カルシウムがあれば、水中で反応して不溶性のゲルを生成し硬化する物質である。
そして、本発明で用いるポゾラン質微粉末として、例えば、シリカフューム、シリカダスト、フライアッシュ、スラグ、火山灰、シリカゾル、沈降性シリカなどが挙げられる。これらの中でも、シリカフュームやシリカダストは、その平均粒径が1μm以下であって粉砕する必要がないため好適である。ここで、粉砕手段として、ボールミルやロッドミルなどが使用できる。
【0016】
また、該ポゾラン質微粉末のBET比表面積は、通常、15〜25m/gであり、好ましくは17〜23m/g、より好ましくは18〜22m/gである。該比表面積が15〜25m/gの範囲を外れると、透水係数が減少するほか、組成物の打設時の作業性が低下する場合がある。
【0017】
(2)高炉スラグ粉末
本発明で用いる高炉スラグ粉末として、JIS A 6206に規定するコンクリート用高炉スラグ微粉末のほか、さらに該微粉末を粉砕したものが用いられる。
高炉スラグ粉末の粉末度は、通常、ブレーン比表面積が4000〜12000cm/gであり、好ましくは5000〜10000cm/gである。該比表面積が4000cm/g未満では潜在水硬性が低く、12000cm/gを超えると、粉砕の手間が増大してコスト高になる。ここで、粉砕手段として、ボールミルやロッドミルなどが使用できる。
【0018】
(3)無水石膏
本発明で用いる無水石膏として、天然無水石膏のほか、石膏ボード等の石膏廃材を加熱処理して得られる再生無水石膏が挙げられる。
また、無水石膏の粉末度は、通常、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gであり、好ましくは4000〜10000cm/gである。該比表面積が3000cm/g未満では、硬化体の強度発現性が低く、12000cm/gを超えると、粉砕の手間が増大してコスト高になる。
【0019】
(4)セメント
本発明で用いるセメントとしては、ポルトランドセメント、普通エコセメント、フライアッシュセメントやシリカセメントが挙げられる。ポルトランドセメントは、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等から選ばれる、少なくとも1種以上が挙げられる。これらの中でも、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、または、超早強ポルトランドセメントは、早期に強度を発現することができる。また、中庸熱ポルトランドセメントは、化学抵抗性や長期の強度が向上する。
【0020】
また、前記ポルトランドセメントは、3CaO・SiOを45〜80質量%、および、3CaO・Alを4〜20質量%含むものが、より好ましく、3CaO・SiOを50〜75質量%、および、3CaO・Alを5〜15質量%含むものが、更に好ましい。3CaO・SiOの含有率が45〜80質量%、および、3CaO・Alの含有率が4〜20質量%の範囲を外れると、組成物の強度発現性が低下する場合がある。
【0021】
粗骨材、細骨材、水
本発明で用いる粗骨材は、特に限定されず、例えば、砂利、砕石、スラグ粗骨材、軽量粗骨材等、または、これらの混合物が挙げられる。
また、細骨材は、特に限定されず、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、硅砂、スラグ細骨材、軽量細骨材等、または、これらの混合物が挙げられる
かかる粗骨材や細骨材は、天然骨材のほか再生骨材も用いることができる。
【0022】
本発明で用いる水も、特に限定されず、水道水やスラッジ水等を用いることができる。また、水結合材比(W/P:100×水の質量/結合材の質量)は、通常、10〜20%であり、好ましくは12〜18%である。水結合材比が10%未満では、セメントの水和に必要な水が不足して硬化が不十分になるおそれがある。また、該比が20%を超えると、モルタルによって硬化体中の空隙が埋められて、空隙率が低下するとともに、硬化体の強度が低下する。
また、前記組成物の水結合材比を低くしつつ、所定の流動性を得るために、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤等から選ばれる、少なくとも1種以上を用いることができる。これらの減水剤として、リグニンスルホン酸塩系、ナフタレンスルホン酸塩系、メラミンスルホン酸塩系、および、ポリカルボン酸塩系のものが挙げられる。
なお、本発明の組成物は、他に、収縮低減剤、AE剤、膨張材、顔料、石炭灰などの混和剤や混和材を含んでもよい。
【0023】
モルタル粗骨材空隙比
モルタル粗骨材空隙比(Km)は、配合特性を表す指標の一つであって、粗骨材を締め固めた状態における粗骨材間の空隙量に対する、モルタルの体積の比を表し、以下の(1)式により算出することができる。
【0024】
【数1】

(式中、mは単位モルタル体積(m)を表し、Vgはコンクリート1m中の粗骨材の実績率から算出される空隙の体積(m)を表し、gは単位粗骨材体積(m)を表し、Ggは粗骨材の実積率(%)を表す。)
【0025】
本発明の組成物のモルタル粗骨材空隙比は、通常、0.35〜0.95であり、好ましくは、0.40〜0.90であり、より好ましくは、0.45〜0.85である。該比が0.35未満では、硬化体の空隙率が高すぎて、十分な強度を得ることができない場合があり、0.95を超えると、硬化体の空隙率が低すぎて、所定の透水性を得ることができない場合がある。
【0026】
ペースト細骨材空隙比
ペースト細骨材空隙比(Kp)も、配合特性を表す指標の一つであって、細骨材を締め固めた状態における細骨材間の空隙量に対する、セメントペーストの体積の比を表し、以下の(2)式により算出することができる。
【0027】
【数2】

(式中、pは単位ペースト体積(m)を表し、Vsはコンクリート1m中の細骨材の実績率から算出される空隙の体積(m)を表し、sは単位細骨材体積(m)を表し、Gsは細骨材の実積率(%)を表す。)
【0028】
本発明の組成物のペースト細骨材空隙比は、通常、1.0以上であり、好ましくは、1.0〜9.0であり、より好ましくは、2.0〜8.0である。該比が1.0未満では、強度発現性が低下し、打設時の作業性も低下する。なお、該比が9.0を超えると、実積率を確保し難く、透水係数が低下するおそれがある。
【0029】
高強度ポーラスコンクリート硬化体
(1)硬化体の透水係数、空隙率、曲げ強度、および、圧縮強度
硬化体の透水係数は、好ましくは、0.8〜2.0cm/secであり、より好ましくは、1.0〜1.8cm/secである。該係数が0.8cm/sec未満では、透水性が十分でなく、2.0cm/secを超えると、強度が低下する場合がある。
【0030】
また、硬化体の空隙率は、好ましくは、15〜28%であり、より好ましくは、18〜25%である。一般に、空隙率と透水係数の間には相関があり、前記透水係数を得るためには、硬化体の空隙率は、15〜28%の範囲が好ましい。
ここで、空隙率の算出方法は、以下の(i)〜(iv)のとおりである。
(i)内径10cm、高さ20cmの鋼製型枠に、組成物を所定の質量(Wtp)投入し、その上に所定の質量(例えば、4kg)のおもりを載置して振動台に乗せ、振動を加えて締め固める。
(ii)該組成物が硬化した後に脱型し、取り出した硬化体の直径と高さを測定して、硬化体のかさ体積(Vtp)を求める。
(iii)配合に基づき、空気が全くないものとして計算した硬化体の理論体積質量(T)を計算して求める。
(iv)下記(3)式に、上で求めた数値を代入して、空隙率(Vvt)を算出する。
【0031】
【表3】

(式中、Vvtは空隙率(%)を表し、Wtpは測定に用いた組成物の質量(kg)を表し、Vtpは硬化体のかさ体積(m)を表し、Tは硬化体の理論体積質量(kg/m)を表す。)
【0032】
硬化体の材齢28日における曲げ強度は、好ましくは、4.5N/mm以上であり、より好ましくは、5.0N/mm以上である。該強度が4.5N/mm未満では、軽交通用車道に要求される曲げ強度の基準値(4.5N/mm)を満たさない。
また、硬化体の材齢28日における圧縮強度は、好ましくは、20N/mm以上であり、より好ましくは、22N/mm以上である。該強度が20N/mm以上であれば、軽交通用車道に要求される圧縮強度(16N/mm以上)を十分に満たすことができる。
【0033】
(2)硬化体の製造方法
硬化体は、配合物を二軸強制練りミキサー等で混練した後、該混練物(組成物)を型枠に投入し、敷均し機や加圧振動機などにより締め固めて、製造することができる。なお、透水性舗装のように、早期の強度発現が必要な硬化体の場合は、必要に応じて、加熱養生や蒸気養生などを施してもよい。また、長期に亘る強度発現が必要な場合は、必要に応じて、密閉養生や水中養生などを施してもよい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.使用した材料
(1)混和材(A)
以下の3成分からなる混和材で、実施例1〜5に用いた。
(i)シリカフューム(BET比表面積20m/g):30質量%
(ii)高炉スラグ微粉末(ブレーン比表面積7000cm/g):40質量%
(iii)天然無水石膏(ブレーン比表面積4000cm/g):30質量%
(2)混和材(B)
シリカフューム(BET比表面積10m/g、平均粒径0.7μm)のみからなる混和材で、比較例1、2に用いた。
(3)混和材(C)
シリカフューム(BET比表面積20m/g)のみからなる混和材で、比較例3に用いた。
(4)ポルトランドセメント
普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:63質量%、CS:11質量%、CA:9質量%、CAF:9質量%
(5)細骨材
静岡県掛川市産の山砂
(6)粗骨材
茨城県桜川市産の硬質砂岩砕石1305
(7)高性能AE減水剤
商品名:レオビルドSP8HV
(BASFポゾリス社製)
【0035】
2.透水係数等の試験方法
表1に示す配合に従って配合物を調製した後、該配合物を二軸強制練りミキサーで混練して、組成物(フレッシュコンクリート)を作製した。
前記作製した組成物を用い、透水係数、材齢28日における曲げ強度、および、材齢28日における圧縮強度を、それぞれ、JCI−SPO3、JIS A 1106、および、JIS A 1108に準じて測定した。
【0036】
また、内径10cm、高さ20cmの鋼製型枠に、前記作製した組成物2.6kgを投入し、その上に4kgのおもりを載置して、振動台に乗せ、振動数3000rpmで、60秒間、振動を加えて締め固めた。次に、該組成物が硬化した後に脱型し、取り出した硬化体の直径と高さを測定して、硬化体のかさ体積を求めた。さらに、表1の配合に基づき、空気が全くないものとして、硬化体の理論体積質量を算出した。さらに、前記組成物の質量(2.6kg)、硬化体のかさ体積、および、硬化体の理論体積質量を、前記(3)式に代入して空隙率を算出した。
以上の全ての結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
透水係数と空隙率について
表2に示すように、結合材が、シリカフュームのみの混和材と普通ポルトランドセメントからなる比較例1〜3では、透水係数が0.45〜0.65cm/secといずれも低い。
これに対して、結合材が混和材(A)と普通ポルトランドセメントとからなる実施例1〜5では、透水係数が1.16〜1.27cm/secであり、いずれも、本発明において目標とする透水係数0.8cm/secを十分に満たすことができ、また、空隙率も22.3〜25.0%と高い。
【0040】
曲げ強度と圧縮強度について
表2に示すように、実施例1〜5において、曲げ強度が4.92〜5.11N/mm、圧縮強度が23.5〜29.5であり、いずれも、軽交通用車道に要求される、曲げ強度4.5N/mm、および、圧縮強度16N/mmよりも十分に高い。
【0041】
3.メンテナンス間隔の評価
表2の実施例4および比較例3のポーラスコンクリート(透水係数測定用硬化体)のメンテナンス間隔の評価を下記の方法で行った。
(1)硬化体(100×100×200mm)の測定面(200cm)に対して、150gの石灰粉(粒径100μm以下、土や細かい砂を模擬したもの)を均一に広げ、その上に水を1500cm流した。
(2)前記(1)の操作を10回繰り返した。
(3)前記10回繰り返した後の硬化体の透水係数を、JCI−SPO3に準じて測定した。
その結果、実施例4のポーラスコンクリートでは、透水係数は0.95cm/secであり、十分な透水性を維持していた。一方、比較例3のポーラスコンクリートでは、透水係数は0.08cm/secであり、透水性は大きく低下した。
【0042】
上記の結果から、本発明の高強度ポーラスコンクリート硬化体は、透水性舗装や透水性ブロックとして用いた場合に、以下の効果を奏するものと期待される。
(i)該硬化体はメンテナンス間隔を大幅に延長することができる。
(ii)該硬化体は透水性が高いため、都市型集中豪雨にも、十分、対応することができる。
(iii)該硬化体は曲げ強度や圧縮強度が高いため、軽交通用車道に使用しても、交通荷重による轍の発生や空隙つぶれがより少なく、供用年数を更に延長することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の高強度ポーラスコンクリート硬化体は、透水係数が0.8cm/sec以上であるため、透水性舗装や透水性ブロックとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗骨材、細骨材、水、および、下記の結合材を、少なくとも含む高強度ポーラスコンクリート組成物であって、
水結合材比が10〜20%、モルタル粗骨材空隙比が0.35〜0.95、および、ペースト細骨材空隙比が1.0以上である、高強度ポーラスコンクリート組成物。
結合材:BET比表面積が15〜25m/gのポゾラン質微粉末、ブレーン比表面積が4000〜12000cm/gの高炉スラグ粉末、ブレーン比表面積が3000〜12000cm/gの無水石膏、および、セメントからなる混合物
【請求項2】
請求項1に記載の高強度ポーラスコンクリート組成物を硬化させてなる、高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項3】
透水係数が0.8〜2.0cm/secである、請求項2に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項4】
曲げ強度が4.5N/mm以上である、請求項2または3に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項5】
圧縮強度が20N/mm以上である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。
【請求項6】
空隙率が15〜28%である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の高強度ポーラスコンクリート硬化体。

【公開番号】特開2012−162413(P2012−162413A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22475(P2011−22475)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】