説明

高所作業車

【課題】住宅に対するソーラーパネルの施工作業等を行うための作業台であって、作業者や資材等が転落する虞を解消するとともに作業効率を向上させることが可能な作業台を備え、更には、作業台をコンパクトに格納することが可能な高所作業車を提供する。
【解決手段】車体上に昇降自在となって作業台20が設けられ、作業台20の床部21の周囲から上方に延びて手摺部22を備え、揺動開閉自在に設けられる扉部材30と、手摺部22に上下方向に延びる揺動軸を中心に水平揺動自在に設けられ略矩形状の第1上下枠部材51及び第1上下ネットを有する第1アーム部材55とを備え、第1アーム部材55は、第1上下枠部材51及び第1上下ネットが手摺部22の外側に沿って位置する格納位置と、扉部材30に隣接して位置し作業対象からの落下防止部材として機能する展開位置との間で水平揺動可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の屋根の上においてソーラーパネルの施工等の作業をする際に用いられる作業台を備えた高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の建設現場において高所作業をするために用いられる作業台を備えた高所作業車としては種々のものがある。例えば、走行体に対して上下移動自在に設けられる作業台を備え、さらに作業台に対して上下移動自在に設けられる操作ボックスを備えて構成される高所作業車が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この高所作業車では、作業台上の操作ボックスが天井に接触する場合等に、操作ボックスを下に格納した状態とすることができ、このような時に作業台を降下させずに機体の移動ができるため作業効率が向上するという効果が得られる。
【0003】
また、旋回及び起伏動自在に取り付けられたブームの先端部に設けられた作業台を備えた高所作業車も公知となっている。更に、作業台がブームの先端部に設けられた回転機構に支持された2個の分割デッキにより構成され、これらの分割デッキが上記回転機構の回転中心に対して左右側方に配置され、デッキが分割してブームに対して平行に位置する分割姿勢と、デッキが結合してブームに対して垂直に位置する合体姿勢とをとり得る特徴を有するものが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。この作業車では、分割デッキが合体姿勢となったときには作業台上の床面を広く確保できるとともに、分割姿勢となったときには各分割デッキを個別に車両の左右両側に格納させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−63588号公報
【特許文献2】特開平9−263394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設現場等における高所作業時には上記のような作業台を用いて高所作業を行うのが通例であるが、それよりも小規模の、例えば住宅に対するソーラーパネルの施工作業では上記のような作業台を用いないで梯子や組み立て式の足場を利用して作業員が地上と屋根の上とを行き来して作業をすることが多い。こうした作業をする際には特に安全柵のようなものは設けられないため、作業中に作業者が高所から転落する虞があるという問題がある。さらに、ソーラーパネル等の資材、機材は別途荷揚げ装置で揚重し屋根に仮置きしているのが実情である。よって、作業中に資材等が落下する虞があるとともに、特に屋根が小さい場合は資材を置くスペースがなく随時資材の揚重をしながら作業をしなければならないため、作業効率が良くないという課題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題及び課題に鑑みてなされたものであり、住宅に対するソーラーパネルの施工作業等を行うための作業台であって、作業者や資材等が転落する虞を解消するとともに作業効率を向上させることが可能な作業台を備え、更には、作業台をコンパクトに格納することが可能な高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る高所作業車は、走行移動自在な車両の車体上に、昇降装置(例えば、実施形態におけるシザースリンク式昇降装置6)により昇降自在と
なって作業台が設けられた高所作業車において、作業台の床面の周囲から上方に延びて床面を囲むように設けられる手摺部を備え、手摺部における作業台の一側部に人や物が乗降するための開口部が設けられ、手摺部における一側部に繋がって作業台から開口部に向く方向と反対側に延びる部分に垂直軸(例えば、実施形態における第1揺動軸56及び第2揺動軸66)を介して水平揺動自在に設けられ、平板状部材(例えば、実施形態における第1上下枠部材51及び第1上下ネット53)を有する揺動部材(例えば、実施形態における第1ネット揺動部材50)を備え、揺動部材は、平板状部材が手摺部における反対側に延びる部分に沿って位置する格納位置と、平板状部材が一側部に沿って延びるように位置し作業対象からの落下防止部材として機能する展開位置との間で水平揺動可能であることを特徴とする。なお、ここでいう手摺部を備えた作業台としては、側面視枠状に形成される手摺部を備えた作業台のほか、側面視板状に形成される作業台等が含まれる。
【0008】
また、上記平板状部材にその下端部分を中心として上下揺動自在に取り付けられ、上方に揺動して扉部材に沿って位置する格納位置、及び下方に揺動して上記下端部分から略水平に延びて位置する展開位置との間で揺動するように設けられる上下揺動部材を備えることが好ましい。
【0009】
そして、手摺部は、上面視矩形枠状に形成され、揺動部材の垂直軸は、手摺部の作業台から開口部に向く方向の端部に設けられることが好ましい。
【0010】
また、手摺部は、上面視矩形枠状に形成され、揺動部材は、上面視L字状に形成され、L字部分の端部が垂直軸を介して手摺部の作業台から開口部に向く方向の中央部近傍に取り付けられ、格納位置においてL字部分が手摺部の外側に沿って位置して、展開位置においてL字状の折れ曲がった先端の部分が一側部に沿って作業台外方へ延びるように位置するようにしてもよい。
【0011】
更には、手摺部の垂直軸が設けられる側面に、人や物の乗降を可能とする垂直軸側開口部(例えば、実施形態における枠開口部S)が設けられ、揺動部材は、垂直軸を中心に水平揺動自在に設けられ平板状部材を支持する上下一対のアーム部材(例えば、実施形態における第1アーム部材55)からなり、アーム部材は、格納位置及び展開位置において、側面視垂直軸側開口部の上部及び下部に沿って位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明に係る高所作業車では、手摺部に上下方向に延びる揺動軸を中心に水平揺動自在に設けられ平板状部材を有する揺動部材を備え、この平板状部材が作業対象からの落下防止部材として機能するため、作業中において作業者や資材等が作業対象から転落する虞を解消することができる。また、その格納位置においては、平板状部材が手摺部の外側に沿って位置するため、揺動部材をコンパクトに格納できるという効果も得られる。
【0013】
また、上記平板状部材にその下端部分を中心として上下揺動自在に取り付けられる上下揺動部材を備える場合において、作業中にこの上下揺動部材を略水平に延びて位置する展開位置に位置させることにより、作業対象から落下した物を上下揺動部材の上面に載置させることが可能となるため、作業者や資材等が転落する虞を更に低減させることができる。
【0014】
また、手摺部が上面視矩形枠状に形成され、揺動部材の揺動軸が手摺部の作業台から乗降口に向く方向の端部に設けられる場合、その構成を簡易にすることができる。そして、揺動部材が上面視L字状に形成され、その格納位置においてL字部分が手摺部の外側に沿って位置して、展開位置においてL字状の折れ曲がった先端の部分が上記一側部に沿って延びるように位置する場合、コンパクトに格納させることが可能であるとともに落下防止
部材としての防護範囲を広く確保できる効果も得られる。更に、手摺部の垂直軸が設けられる側面に垂直軸側開口部が設けられ、揺動部材をなす上下一対のアーム部材が格納位置及び展開位置において側面視垂直軸側開口部の上部及び下部に沿って位置するように構成されることにより、揺動部材が格納位置及び展開位置のいずれに位置していても手摺部の側面部分に作業者等が乗降可能な乗降口を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る高所作業車の側面図である。
【図2】上記高所作業車の作業台と作業対象物とを示す斜視図である。
【図3】(a)は触針マーカーを下方揺動させた状態の斜視図、(b)は扉部材を下方に開放した状態の斜視図、(c)は第1ネット揺動部材を展開位置にまで揺動させた状態の斜視図、(d)は第1及び第2ネット揺動部材を共に展開位置にまで水平揺動させた状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は第1及び第2ネット揺動部材が共に格納位置にある状態の平面図、(b)は第1ネット揺動部材のみが展開位置にまで揺動した状態の平面図、(c)は第1及び第2ネット揺動部材が共に展開位置にまで揺動した状態の平面図、(d)は更にそれぞれの前後ネットを開放させた状態の平面図である。
【図5】作業台を左方から見た側面図である。(a)は第2ネット揺動部材が格納位置にある状態、(b)は第2ネット揺動部材が展開位置にある状態をそれぞれ示す。
【図6】作業台を左方から見た側面図である。(a)は揺動手摺部を倒した状態、(b)は揺動手摺部を後方に揺動させた状態をそれぞれ示す。
【図7】ロック装置によりアーム部材を手摺部に位置固定させる様子を示した斜視図である。(a)はフック部を反時計回りに、(b)はフック部を時計回りに、そして(c)は更にフック部を反時計回りに揺動させてネット揺動部材を手摺部にロックさせた状態を示す。
【図8】第3ネット揺動部材の格納状態及び展開状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明に係る高所作業車の一例として高所作業車1について説明する。図1に示すように、本実施形態における高所作業車1には、高所に移動自在な作業台20が設けられ、作業者が作業台20に搭乗し、例えば住宅の屋根においてソーラーパネルの施工等を行うため、所望の高所に移動できるようになっているものである。まず、図1を参照しながら高所作業車1の構成について説明する。高所作業車1は、駆動輪2及び従動輪3を有し、駆動輪2と従動輪3との間に履帯4が巻き掛けられて駆動輪2の回転により履帯4が回転動するように構成され走行可能になっている。駆動輪2及び従動輪3の上部には車体5が設けられ、この車体5上にはシザースリンク式昇降装置6が取り付けられており、さらに、このシザースリンク式昇降装置6上には作業者搭乗用の作業台20が取り付けられている。
【0017】
シザースリンク式昇降装置6は、図1に示すように、複数の腕部材を揺動自在に結合してリンク機構を構成したシザースリンク7と、このシザースリンク7を伸縮させる昇降シリンダ8とから構成される。シザースリンク7は、下部において第1段目の前方腕部材7aの下端部が車体5に揺動自在に連結され、後方腕部材7bの下端部が図示しないローラ部材若しくはスライダ部材と摺動レールとにより車両前後方向に摺動自在で、かつ、揺動自在に車体に連結されている。また、このシザースリンク7は、上部において第4段目の後方腕部材7hの上端部が作業台20に揺動自在に連結され、前方腕部材7gの上端部が図示しないローラ部材若しくはスライダ部材と摺動レールにより車両前後方向に摺動自在で、かつ、揺動自在に作業台20に連結されている。また、第1段目の後方腕部材7bには、第1ブラケット9が取り付けられ、第3段目の後方腕部材7fには第2ブラケット10が取り付けられており、さらに、これらの第1及び第2ブラケット9、10に昇降シリ
ンダ8のシリンダ部及びロッド部がそれぞれ取り付けられている。
【0018】
また、高所作業車1は作業台20上に設けられる上部操作装置25(後に詳述)の操作により走行させたり、上記シザースリンク7の伸縮により作業台20を昇降させたりすることが可能となっているが、車体5のこの走行方向に対して左前方、右前方、左後方、及び右後方の4箇所の部分にジャッキ装置12を取り付けることができるようになっている。ジャッキ装置12は、接地部材12aとジャッキ12bとからなり、ジャッキ12bの一端は上記4箇所の部分に取り付け可能となっており、他端に接地部材12aを取り付けられるようになっている。接地部材12aは下端に水平方向に延びる平板部を有し、作業台20を昇降させる場合等にはこの平板部を接地させることにより、高所作業車1の走行移動を規制できるようになっている。
【0019】
作業台20は、図2に示すように、水平方向に延びて形成される床部21と、床部21の上面の周囲から上方に延びて該上面を囲むように設けられる手摺部22と、車体5の走行及びシザースリンク7の伸縮による作業台20の昇降等の操作を行うための上部操作装置25とを備えて構成される。作業台20は、その3つの側面には手摺部22が存在するが、残りの一側部には作業台20を屋根等の作業対象物Bに移動させた状態で、作業台20から人や物の移動を可能にする乗降口が形成される。そして、この乗降口に対して上下に揺動開閉自在に支持される扉部材30が設けられている。以下では、便宜上、各図の矢印に示すように、乗降口の開口方向、すなわち作業台20に対して作業対象物Bが存在する方向を前方向として説明する。
【0020】
また、作業台20について、手摺部22の前側上部及び扉部材30の上部を繋いでチェーン27が左右一対に設けられ、扉部材30を開放させたときには、図3(b)に示すように、チェーン27により扉部材30が手摺部22に繋がれた状態となる。このように構成される作業台20は、扉部材30が住宅の屋根等の作業対象物Bに沿って位置するように作業対象物Bに近づけられ、この近づけられた状態で扉部材30が開放されたときには扉部材30の内面が上方に向くためこの扉部材30を作業者が作業対象物Bへ移動するためのステップとして利用できる。
【0021】
ところで、図2に示すように、本実施形態における高所作業車1においては、扉部材30左右両脇に触針マーカー70が設けられている。この触針マーカー70は、球状に形成され軟性を有して構成される先端部材71と、弾性可撓性を有して構成される棒状部材72と、扉部材30の下端部に設けられる揺動軸73とを備えて構成される。先端部材71は棒状部材72の揺動側先端部に取り付けられ、棒状部材72は揺動軸73を揺動中心として上下に揺動自在に設けられる。また、揺動軸73の近傍にはストッパ(不図示)が設けられ、棒状部材72は、その棒状部が略水平に延びる程度の位置にまで下方に揺動し、このストッパによりそれより下方への揺動が規制されるようになっている。そして、このストッパにより触針マーカー70を下方に揺動させたときにおける先端部材71の前後位置及び上下位置は、扉部材30を下方に開放させたときにおける扉部材30の先端の前後位置及び上下位置と略一致するようになっている。
【0022】
触針マーカー70が以上のように構成されることにより、作業台20に搭乗した作業者は、扉部材30を下方に揺動させる前に、この触針マーカー70を下方に倒して扉部材30が作業対象物Bに干渉するか否かを事前に検知することができる。すなわち、触針マーカー70を下方に揺動させたときに先端部材71が作業対象物Bに当接した場合は扉部材30を開放させるときに作業対象物Bに干渉するということであり、作業者はこれを目視で検知して上部操作装置25を操作して作業台20と作業対象物Bとの距離を長くとることができる。また、触針マーカー70を下方に揺動させたときにおける先端部材71の位置が作業対象物Bから著しく離れている場合は作業台20と作業対象物Bとの距離が長す
ぎるということであり、作業者はこれを目視で検知して上部操作装置25を操作して作業台20を作業対象物Bに近づける操作をすることができる。
【0023】
以上、触針マーカー70を設けることにより作業者は作業台20の作業対象物Bに対する距離を直ちに認識することができる。また、上述した先端部材71としては発泡材のようなものを材料として用いることができ、棒状部材72としては弾性可撓性を有する樹脂等を用いることができるが、先端部材71及び棒状部材72がこのような材料からなる場合、先端部材71が作業対象物Bに当たっても傷つかないうえ、作業対象物Bに付与される力を低減させることができる。なお、先端部材71の形状については必ずしも上記のように球状にしなければならないわけではなく別の形状にしてもよい。また、先端部材71については蛍光塗料等が塗布されているものを使用してもよく、このようなものを用いることにより薄暗い現場等においても先端部材71の位置を認識しやすくすることができる。
【0024】
ところで、本実施形態における高所作業車1の作業台20には、図3及び図4に示すように、水平方向に揺動自在に設けられる第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が設けられている。第1ネット揺動部材50は、後述する展開状態において前後に開口して形成され上下に延びて設けられる第1上下枠部材51と、前後に揺動自在に設けられる第1前後枠部材52と、第1上下枠部材51を覆って取り付けられる第1上下ネット53と、第1前後枠部材52を覆って取り付けられる第1前後ネット54と、第1上下枠部材51及び第1前後枠部材52を水平揺動自在に支持する第1アーム部材55とを備えて構成される。第2ネット揺動部材60も、第1ネット揺動部材50と同様、第2上下枠部材61と、第2前後枠部材62と、第2上下ネット63と、第2前後ネット64と、第2アーム部材65とを備えて構成される(図4(d)参照)。第1アーム部材55は、図4等に示すように、第1揺動軸56を中心に水平揺動自在に上下一対に設けられ、上記第1上下枠部材51及び第1前後枠部材52を支持する。第2アーム部材65も、第1アーム部材55と同様、第2揺動軸66を中心に水平揺動自在に上下一対に設けられ、第2上下枠部材61及び第2前後枠部材62を支持する。
【0025】
第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は、図3(a)及び図4(a)に示すように手摺部22の外方周囲に沿って位置する格納位置と、図3(d)及び図4(d)に示すようにネットが開放される展開位置との間を水平揺動する。まず、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は、その格納位置では図4(a)に示すように、上面視L字状に形成され、手摺部22の右側部の外側に第2揺動軸66を介して第2アーム部材65が水平揺動自在に取り付けられ、その格納位置において第2ネット揺動部材60は手摺部22の右側部から後方に延び後端で左方に折り曲げられ手摺部22の後側部の外側に沿って位置する。また、手摺部22の左側部の外側に第1揺動軸56を介して第1アーム部材55が水平揺動自在に取り付けられ、その格納位置において第1ネット揺動部材50は手摺部22の左側部から後方に延び後端で右方に折り曲げられ手摺部22及び第2ネット揺動部材60の後方部の外側に沿って位置する。この格納位置及び展開位置において第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は後述するロック装置80により位置固定されるようになっている。
【0026】
以上の格納位置から第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60を展開位置にさせる方法について以下で説明する。まず、第1ネット揺動部材50のロック装置80による位置固定を解除して、図4(b)に示すように、第1アーム部材55を第1揺動軸56を中心にして上面視時計回りに揺動させ、第1上下枠部材51及び第1前後枠部材52が前方に向くとともに上記乗降口が形成される一側部に沿って左右に延びるように位置させる。その次に、第2ネット揺動部材60のロック装置80による位置固定を解除して、図4(c)に示すように、第2アーム部材65を第2揺動軸66を中心にして上面視反時
計回りに揺動させ、第2上下枠部材61及び第2前後枠部材62が前方に向くとともに上記一側部に沿って左右に延びるように位置させる。この状態で、第1前後枠部材52を第1上下枠部材51に対して前方に揺動させ第2前後枠部材62を第2上下枠部材61に対して前方に揺動させると、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は、図3(d)及び図4(d)に示すような展開位置になる。
【0027】
なお、第1上下枠部材51の左右上部と後方揺動時の第1前後枠部材52の左右上部とを繋いてチェーン57が左右一対に設けられ、第1前後枠部材52を第1上下枠部材51に対して前方に開放させたときには、このチェーン57により第1前後枠部材52が第1上下枠部材51に繋がれた状態となる。なお、図示は省略するが、第2上下枠部材61の左右上部と後方揺動時の第2前後枠部材62の左右上部とを繋ぐチェーンが、上記チェーン57と同様に設けられている。
【0028】
以上、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60を展開位置に位置させた状態においてもロック装置80により第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60を手摺部22に位置固定させることができる。また、展開位置に位置させた状態においては、これらのネット揺動部材が作業対象物Bに対向して設けられるためこれらのネット揺動部材を共に作業対象物Bにおける落下防止部材として機能させることができるようになっている。
【0029】
また、扉部材30、第1前後枠部材52、及び第2前後枠部材62の上端部には、それぞれ図2及び図3に示すように、扉部材用落下防止フラップ75、第1落下防止フラップ76、及び第2落下防止フラップ(不図示)が吊り下げられている。これらの落下防止フラップは軟性を有するビニル等の材質で構成されており、扉部材30を手摺部22に対して下方に開放揺動させたとき、第1前後枠部材52を第1上下枠部材51に対して前後に揺動させたとき、そして、第2前後枠部材62を第2上下枠部材61に対して前後に揺動させたときに、それらの揺動側端部から下方に垂下がるように移動して、作業対象物Bに接触して位置する。このように、扉部材用落下防止フラップ75、第1落下防止用フラップ76、及び第2落下防止用フラップが設けられることにより、作業対象物B上を落下してくる落下物がこれらの落下防止フラップに引っ掛かるため作業対象物Bから物が落下する事態を抑止することができる。
【0030】
以下では、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60を格納位置及び展開位置に移動させた場合における左右側面の態様について説明する。まず、上述した手摺部22は、左右から見たときには図5及び図6に示すように矩形枠状に形成されており、この枠開口部Sの大きさは、作業者がここから作業台20に乗り降りできる程度となっている。そして、図5に示すように、上述した第1揺動軸56及び第2揺動軸66は、手摺部22の上端部及び下端部に設けられ、第1及び第2アーム部材55,56は、上記格納位置及び展開位置において、上記枠開口部Sの上部及び下部に沿って位置するようになっている。
【0031】
具体的に、第1アーム部材55は、第1ネット揺動部材50の格納状態においては左側部から見たときに手摺部22の右半分の部分に沿って位置し、第1ネット揺動部材50の展開状態においては左側部から見たときに手摺部22の左半分の部分に沿って位置する。また、第2アーム部材65は、第2ネット揺動部材60の格納状態においては右側部から見たときに手摺部22の左半分の部分に沿って位置し(図5(a)参照)、第2ネット揺動部材60の展開状態においては右側部から見たときに手摺部22の右半分の部分に沿って位置する(図5(b)参照)。
【0032】
以上のように、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は、その格納位置
及び展開位置において左右方向から見たときに手摺部22の枠開口部Sに沿って位置するように設けられ、さらに手摺部22が形成する枠部の大きさは作業者が搭乗できる程度のものとなっているため、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が、格納位置及び展開位置のいずれであっても、作業者が搭乗する搭乗口を確保することができる。
【0033】
また、手摺部22の右側面の上下中央部には、前後に跨って揺動手摺部28が設けられている。揺動手摺部28は、棒状部28a、揺動軸部28b、及び先端支持部28cを備えて構成され、棒状部28aはその後端にある揺動軸部28bを中心に上下方向に揺動自在に設けられる。棒状部28aを下方に揺動させた状態においては、その揺動側先端部が先端支持部28cに支持された状態になり(図6(a)参照)、この状態では棒状部28aに上方向から荷重を掛けても先端支持部28cに支持されるため、揺動手摺部28を手摺として利用できる。また、この棒状部28aを上方に揺動させた状態においては、その揺動側先端部が側面視反時計回りに揺動して持ち上げられた状態になり、手摺部22の枠開口部Sが開口した状態になる(図6(b)参照)。この状態にすることにより、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が格納位置、展開位置のいずれに位置していても、作業者がこの枠開口部Sから作業台20に搭乗、または作業台20から降りることができるようになる。
【0034】
以上、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が格納位置、展開位置のいずれであっても作業台20の右側面に搭乗口を確保できるようになっているが、作業台20の左側面、又は左右両方の側面に上記揺動手摺部28を設けることにより、作業台20の左側面、又は左右両方の側面に上記同様の搭乗口を確保するようにしてもよい。以下では、上記格納位置及び展開位置において、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60を手摺部22に沿って位置固定させるときに用いられるロック装置80について説明する。
【0035】
図7に示すように、ロック装置80は、フック部81と、ピン82と、フック揺動部材83と、リンク84とを備えて構成される。フック部81及びフック揺動部材83は、第1アーム部材55及び第2アーム部材65の上面に設けられ、フック部81はリンク84を介して第1アーム部材55及び第2アーム部材65の上面に水平揺動自在に支持され、フック揺動部材83はフック部81の一部から延びる棒状に形成され作業者等が水平方向に揺動操作できるようになっている。ピン82は、左右の手摺部22の上面に前後一対に合計4つ上方に突出して設けられる。リンク84は、長円形状に形成され、一方が第1ピン84aにより第1アーム部材55の上面に取り付けられるとともに他方が第2ピン84bによりフック部81に取り付けられており、フック部81の揺動に応じて第1ピン84aを中心に水平回転自在に設けられる。
【0036】
以上のように構成されるロック装置80により、第1アーム部材55を手摺部22に位置固定させる方法について以下で簡潔に説明する。なお、以下のロック装置80の説明では「図7に示す左右方向」及び「図7に示す時計回り方向」等を単に「左右方向」及び「時計回り方向」等とするが、この方向の定義は便宜的なものであって当然この方向に限定されるものではない。まず、フック部81がピン82の右方向に位置するようにフック揺動部材83を反時計回りに且つ右方向に揺動させた状態で第1アーム部材55を手摺部22に隣接する位置にまで近づける(図7(a)参照)。この状態で図7(b)に示すようにフック揺動部材83を左方向に揺動させてフック部81をピン82に近づけるとともに時計回りに揺動させフック部81をピン82に掛ける。その後、フック揺動部材83を反時計回り且つ左方向に揺動させると、図7(c)に示すように、第2ピン84bが第1ピン84aを中心に反時計回り且つ左方向に移動して、フック部81がピン82を抱え込んだ状態でフック部81がリンク84の第1ピン84aの近傍に入り込み第1アーム部材55が手摺部22に位置固定される。
【0037】
以上、ロック装置80により第1アーム部材55を手摺部22に位置固定させる方法について説明したが、上記フック揺動部材83の揺動操作の逆の順序でフック揺動部材83を操作すれば第1アーム部材55と手摺部22との位置固定を解除できる。また、第2アーム部材65の位置固定、及び位置固定の解除については、上記第1アーム部材55の場合と同様の手順で行うことができ、さらに、格納位置に固定させる場合と展開位置に固定させる場合との位置固定の方法も同じである。
【0038】
以上、本実施形態における高所作業車1は、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が手摺部22に対して水平揺動自在に設けられ、これらの展開位置においては各ネット部が作業対象物Bに対向するように設けられこれらが作業対象物Bからの落下防止部材として機能するため、作業者や資材等が転落する虞を解消させることができる。また、これらのネット揺動部材50,60は、第1上下ネット53、第1前後ネット54、第2上下ネット63、及び第2前後ネット64からなるため、万が一作業者等が落下してもその衝突による衝撃を和らげることができる。
【0039】
また、上述したように、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60は上面視L字状に設けられ、これらの格納位置においては、手摺部22の外周に沿った状態で位置固定されるため、これらのネット揺動部材50,60をコンパクトに格納させることができる。
【0040】
なお、上述した実施形態では、第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60が、第1上下ネット53、第1前後ネット54、第2上下ネット63、及び第2前後ネット64を備え、これらのネット揺動部材により落下物の衝撃を抑える例について説明したが、必ずしもこれらのネット揺動部材を用いなければならないわけではなく、作業対象物Bに対向する部分を別の柔軟部材で構成させる揺動部材を用いた場合においても同様の効果が得られる。
【0041】
また、上面視L字状の第1ネット揺動部材50及び第2ネット揺動部材60の代わりに、図8に示すような、手摺部22の左または右の前端部に揺動軸91を設けて、この揺動軸91を中心に水平旋回自在に設けられる第3ネット揺動部材90を用いてもよい。ただし、この第3ネット揺動部材90を用いた場合は、その展開位置において上述したようなロック装置80により位置固定させることができないため別のロック機構について検討する必要がある。
【0042】
また、上述した実施形態では、上面視逆L字状の第2ネット揺動部材60の外側に上面視L字状の第1ネット揺動部材50が位置して格納される例について説明したが、上面視L字状のネット揺動部材の外側に上面視逆L字状のネット揺動部材が格納される場合も本発明の範疇に含まれ、更に、上記2つのネット揺動部材のうち片方のネット揺動部材がないものについても本発明の範疇に含まれる。
【0043】
そして、上述した実施形態では、上面視矩形枠状に形成される手摺部22を例に挙げて説明したが、手摺部22及び作業台20の形状は上記に限定されない。また、本実施形態では、上下方向に揺動自在に設けられる扉部材30を備える例について説明したが、このような扉部材30を有しない、例えば、スライド移動自在に構成される扉部材を備える作業台、または扉部材そのものがない作業台を備える高所作業車に対しても本発明を適用させることは可能である。
【0044】
また、上記実施形態では、側面視枠状の手摺部22が作業台20に設けられる例について説明したが、本発明が対象とする手摺部及び作業台の構成は上記に限定されることはな
く、例えば側面部が板状に形成される作業台にも本発明を適用させることができる。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、クローラ型の走行装置及びシザースリンク機構を備えた高所作業車1に本発明を適用させた例について説明したが、本発明の適用対象としては上記のような車両に限定されることはなく、例えば、ブームの先端部から上方に延びる垂直ポストを設け、この垂直ポストに作業台が水平旋回自在に設けられる車両、あるいは車輪を備えた作業車やブームの先端部に作業台を備えたような、別のタイプの車両に対しても本発明を適用させることができる。
【符号の説明】
【0046】
B 作業対象物(作業対象)
S 枠開口部(垂直軸側開口部) 1 高所作業車
5 車体
6 シザースリンク式昇降装置(昇降装置)
20 作業台 21 床部
22 手摺部
50 第1ネット揺動部材(揺動部材)
51 第1上下枠部材(平板状部材)
53 第1上下ネット(平板状部材)
55 第1アーム部材(アーム部材) 56 第1揺動軸(垂直軸)
90 第3ネット揺動部材(揺動部材)
91 揺動軸(垂直軸)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行移動自在な車両の車体上に、昇降装置により昇降自在となって作業台が設けられた高所作業車において、
前記作業台の床面の周囲から上方に延びて前記床面を囲むように設けられる手摺部を備え、
前記手摺部における前記作業台の一側部に人や物が乗降するための開口部が設けられ、
前記手摺部における前記一側部に繋がって前記作業台から前記開口部に向く方向と反対側に延びる部分に垂直軸を介して水平揺動自在に設けられ、平板状部材を有する揺動部材を備え、
前記揺動部材は、前記平板状部材が前記手摺部における前記反対側に延びる部分に沿って位置する格納位置と、前記平板状部材が前記一側部に沿って延びるように位置し作業対象からの落下防止部材として機能する展開位置との間で水平揺動可能であることを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
前記平板状部材にその下端部分を中心として上下揺動自在に取り付けられ、上方に揺動して前記扉部材に沿って位置する格納位置、及び下方に揺動して前記下端部分から略水平に延びて位置する展開位置との間で揺動するように設けられる上下揺動部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記手摺部は、上面視矩形枠状に形成され、
前記揺動部材の前記垂直軸は、前記手摺部の前記作業台から前記開口部に向く方向の端部に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記手摺部は、上面視矩形枠状に形成され、
前記揺動部材は、上面視L字状に形成され、前記L字部分の端部が前記垂直軸を介して前記手摺部の前記作業台から前記開口部に向く方向の中央部近傍に取り付けられ、前記格納位置において前記L字部分が前記手摺部の外側に沿って位置して、前記展開位置において前記L字状の折れ曲がった先端の部分が前記一側部に沿って延びるように位置することを特徴とする請求項1または2に記載の高所作業車。
【請求項5】
前記手摺部の前記垂直軸が設けられる側面に、人や物の乗降を可能とする垂直軸側開口部が設けられ、
前記揺動部材は、前記垂直軸を中心に水平揺動自在に設けられ前記平板状部材を支持する上下一対のアーム部材からなり、
前記アーム部材は、前記格納位置及び前記展開位置において、前記側面視前記垂直軸側開口部の上部及び下部に沿って位置することを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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