説明

高投与量ドラメクチン製剤

高用量のドラメクチンを提供する動物用組成物、またはドラメクチンと1つまたは複数の他の抗寄生生物薬とを含む高用量動物用組合せ組成物を開示する。こうした組成物は、抗寄生生物効果、および保留時間の顕著な短縮をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、抗寄生生物組成物の分野に関する。特に、本発明は、治療した動物において、効能を示し、短い保留時間をもたらす高用量ドラメクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
広域スペクトル大環状ラクトン、例えば、エバーメクチンおよびミルベマイシン(milbemycin)は、駆虫剤、殺内寄生生物剤(endoparasiticide)、殺外寄生生物剤(ectoparasiticide)、殺ダニ剤および殺虫剤として有用な抗寄生生物薬である。これらの広域スペクトル薬剤を用いて防除することができる寄生生物は、消化管回虫(例えば、オステルタギア属(Ostertagia)種、ヘモンクス属(Haemonchus)種、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)種、クーペリア属(Cooperia)種、ブノストムム属(Bunostomum)種、ストロンギロイデス属(Strongyloides)種、エソファゴストム属(Oesophagostomum)種、およびトリチュリス属(Trichuris)種);肺虫(lungworm)(例えば、牛肺虫(Dictyocaulus viviparus));眼虫(eyeworm)(例えば、テラジア属(Thelazia)種);寄生態の地虫(例えば、ヒフバエ属(Hypoderma)種)、ならびに(ヒトヒフバエ(Dermatobia hominis));刺咬吸血性シラミ(biting and sucking louse)(例えば、ヒツジハジラミ(Damalinia bovis)、ウシジラミ(Haematopinus eurysternus)、ウシホソジラミ(Linognathus vituli)およびケブカウシジラミ(Solenopotes capillatus));マダニ(tick)(例えば、オウシマダニ(Rhipicephalus(Boophilus)microplus));コダニ(mite)(例えば、プソロプテス・ボビス(Psoroptes bovis)およびヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei));ラセンウジバエ(screwworm)(例えば、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax));ならびにノサシバエ(例えば、ノサシバエ(Haematobia irritans))を含む。
【0003】
米国特許第6,063,394号、同第6,699,847号、および同第6,617,314号は、トリグリセリド油(ゴマ油、ヒマシ油、分画ヤシ油)、オレイン酸エチル;中鎖のトリグリセリドまたはグリコールエステルもしくは脂肪酸エステル;一価または多価の脂肪族または芳香族のアルコールおよびそれらの誘導体から選択される共溶媒、ならびに抗酸化剤および保存剤などの補助剤中にエバーメクチンおよび/またはミルベマイシンを含有する注射用組成物に関する。
【0004】
米国特許第6,174,540号は、殺虫剤、殺ダニ剤、殺寄生生物剤、成長促進剤および油溶性NSAIDからなる群から選択される治療剤;水素添加ヒマシ油;ならびにトリアセチン、安息香酸ベンジルもしくはオレイン酸エチルまたはそれらの組合せを含む疎水性担体;ならびにアシル化モノグリセリド、種々の中鎖エステルまたはそれらの組合せを含む長時間作用型の注射用組成物に関する。
【0005】
米国特許第5,089,480号は、エバーメクチンおよびその組成物に関する。米国特許第6,001,822号は、ゴマ油およびオレイン酸エチルからなる溶媒中のドラメクチン溶液を含む医薬組成物に関する。ゴマ油とオレイン酸エチルとの組合せ中に1%(w/v)ドラメクチン(10mg/mL)を含有する注射用ドラメクチン組成物が、ウシにおける寄生生物による感染の治療のために、PfizerからDectomax(登録商標)の商品名で販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,063,394号
【特許文献2】米国特許第6,699,847号
【特許文献3】米国特許第6,617,314号
【特許文献4】米国特許第6,174,540号
【特許文献5】米国特許第5,089,480号
【特許文献6】米国特許第6,001,822号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
治療後、残留する大環状ラクトンが、動物組織中に長期間にわたり見出される場合がある。したがって、動物を、大環状ラクトンを用いて治療した場合、その動物を屠殺してヒトが消費することができない保留時間がある。具体的には、肉牛に単回用量のドラメクチンを、推奨用量200μg/Kg体重で与えた場合、この用量は10mg/110ポンド体重と同等であるが、保留時間は35日である。
【0008】
さらに、多数の寄生生物が、現在市販されている抗寄生生物製品の多くに対して耐性となる恐れがあり、またすでに耐性であることが知られている。耐性と闘うことを目指して、より高用量の抗寄生生物薬が製剤化されている。上記したように、エバーメクチンおよびミルベマイシンは、それらの溶解性が増加することから、ヒマシ油およびオレイン酸エチルを用いて製剤化されている。高い溶解性は続いて、油からの薬物の放出速度に影響を及ぼす高い親油性と同等とみなされる。薬物濃度を増加させると、放出速度がより緩慢になり、より長い保留時間を伴う。場合によっては、高用量のエバーメクチンおよびミルベマイシンが、油と薬物との間の低い分配係数の結果として溶液から沈殿する。こうして沈殿が生じた場合、注射部位における残留薬物濃度が高まる可能性がある。したがって、吸収および放出の速度が緩慢になり、保留時間が延長する。したがって、より高い濃度のエバーメクチンおよび/またはミルベマイシンを投与したウシを、適時に屠殺することができず、それによって、牛群管理コストおよびそれに続いて、消費者価格が高くなる。本発明の組成物は、実質的により短い保留時間で寄生生物に対する有効性を増加させる、高用量のエバーメクチンおよび/またはミルベマイシン、好ましくは、ドラメクチンを提供する。
【0009】
上記で言及した米国特許および刊行物は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、長鎖トリグリセリド、共溶媒、ならびに場合により、保存剤および補助的な賦形剤のそれぞれの1つまたは複数をさらに含む、獣医学的に許容できる抗寄生生物性の高用量ドラメクチン組成物に関する。
【0011】
本発明の別の態様では、この組成物は、(a)3〜6重量%のドラメクチン;(b)39〜60体積%の綿実油;(c)30〜50体積%の安息香酸ベンジル;ならびに場合により、保存剤および補助的な賦形剤のそれぞれの1つまたは複数を含む。
【0012】
本発明の別の態様では、この組成物は、3〜6重量%のドラメクチンを含む。好ましくは、ドラメクチンは、3〜4重量%である。より好ましくは、ドラメクチンは、3.5重量%である。
【0013】
本発明の別の態様では、この組成物は、39〜60体積%の綿実油を含む。好ましくは、50〜60体積%の綿実油、より好ましくは、55体積%の綿実油。
【0014】
本発明の別の態様では、この組成物は、30〜50体積%の安息香酸ベンジルを含む。好ましくは、安息香酸ベンジルは、35〜45体積%、より好ましくは39体積%である。
【0015】
本発明の別の態様では、この組成物は、少なくとも1つの保存剤を含む。好ましくは、保存剤は、トコフェロールである。より好ましくは、保存剤は、酢酸トコフェロールである。
【0016】
本発明の別の態様では、この組成物は、少なくとも1つの補助的な賦形剤を含む。好ましくは、補助的な賦形剤は、ベンジルアルコールである。
【0017】
本発明の別の態様では、この組成物は、保存剤および補助的な賦形剤のそれぞれの少なくとも1つを含む。好ましい保存剤およびより好ましい保存剤、ならびに好ましい補助的な賦形剤は、上記の定義に従う。
【0018】
本発明の別の態様では、この組成物は、3.5重量%のドラメクチン、55体積%の綿実油、39体積%の安息香酸ベンジル、6体積%のベンジルアルコール、および0.05重量%の酢酸トコフェロールを含む。
【0019】
本発明の別の態様は、動物における寄生生物の予防、治療、または防除のための方法であって、有効量の高用量ドラメクチン動物用組成物を、それを必要とする前記動物に投与することを含む方法である。好ましい動物は、家畜である。最も好ましい動物は、ウシである。
【0020】
本発明の別の態様は、高用量ドラメクチン抗寄生生物組成物を非経口投与する方法である。好ましくは、この組成物を、筋肉内または皮下に投与する。より好ましくは、高用量ドラメクチン抗寄生生物組成物を皮下に投与する。
【0021】
本発明の別の態様は、a)ドラメクチン、b)1つまたは複数の他の抗寄生生物薬、c)綿実油、d)安息香酸ベンジル、ならびに場合により、e)保存剤および補助的な賦形剤のそれぞれの1つまたは複数を含む、組合せ動物用組成物である。好ましくは、ドラメクチンは約1〜3重量%であり、他の抗寄生生物薬は、単独でまたは組み合わせて、約1〜3重量%である。
【0022】
本発明の別の態様は、好ましい他の抗寄生生物薬が、イベルメクチン、アバメクチン、エプリノメクチンおよびモキシデクチンから選択される、組合せ動物用組成物である。
【0023】
本発明の別の態様は、ドラメクチンとアバメクチン、ドラメクチンとエプリノメクチン、ドラメクチンとイベルメクチン、およびドラメクチンとモキシデクチンを含む、組合せ動物用組成物である。
【0024】
本発明の別の態様は、ドラメクチンと、アバメクチン、エプリノメクチン、イベルメクチンおよびモキシデクチンから選択される2つの他の抗寄生生物薬とを含む(例えば、ドラメクチンとアバメクチンおよびイベルメクチン;ドラメクチンとイベルメクチンおよびエプリノメクチン;ドラメクチンとイベルメクチンおよびモキシデクチン等)、組合せ動物用組成物である。
【0025】
本発明の別の態様は、a)1〜3重量%のドラメクチン、b)1〜3重量%の1つの、または組み合わせて1〜3重量%の2つ以上の、他の抗寄生生物薬、c)39〜75体積%の綿実油、d)25〜50体積%の安息香酸ベンジル、ならびに場合により、e)保存剤および補助的な薬剤のそれぞれの1つまたは複数を含む、組合せ動物用組成物である。好ましいおよび最も好ましい他の抗寄生生物薬、保存剤および補助的な薬剤は、本明細書の定義に従う。
【0026】
本発明の別の態様は、動物における寄生生物の予防、治療、または防除のための方法であって、有効量の組合せ動物用組成物を、それを必要とする前記動物に投与することを含む方法である。好ましい動物は、家畜である。最も好ましい動物は、ウシである。
【0027】
本発明の別の態様は、この組合せ組成物を非経口投与する方法である。好ましくは、この組合せ組成物を、筋肉内または皮下に投与する。より好ましくは、高用量組合せ組成物を皮下に投与する。
【0028】
本発明の別の態様では、上記の動物用組成物または動物用組合せ組成物は、少なくとも1つまたは複数の脂溶性ビタミンをさらに含む。好ましい脂溶性ビタミンは、ビタミンA、DおよびEである。ビタミン強化組成物のための好ましい保存剤は、フェノール、m−クレゾール、BHAおよびBHTである。より好ましい保存剤は、BHAおよびBHTである。
【0029】
本発明の別の態様は、動物における寄生生物の予防、治療、または防除のための方法であって、脂溶性ビタミン(複数可)を含む動物用組成物または動物用組合せ組成物の有効量を、それを必要とする前記動物に投与することを含む方法である。好ましい動物は、家畜であり、最も好ましい動物は、ウシである。
【0030】
本発明の別の態様は、少なくとも1つまたは複数の脂溶性ビタミンを含む動物用組成物または動物用組合せ組成物を非経口投与する方法である。好ましくは、この組成物を、筋肉内または皮下に投与する。より好ましくは、この組成物を皮下に投与する。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、投与後に動物において、有効な抗寄生生物薬として有用であり、保留時間の短縮をもたらす高用量ドラメクチン組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ウシにおける、ヒトヒフバエ(D.hominis)の幼虫に対する、単回の高用量ドラメクチンおよび高用量イベルメクチンの有効性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
定義
本明細書において記載され、特許請求される本発明のために、以下の用語および句を、以下の通り定義する。
【0034】
「動物」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、分類学上の哺乳綱の一員である個々の動物を指す。動物の非排他的な例として、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギおよびウシが挙げられる。
【0035】
「寄生生物(parasite)」または「寄生生物(parasites)」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、内寄生生物および外寄生生物を指し、それらは、ダニ、昆虫、ぜん虫、およびそれらのそれぞれの幼虫、サナギ、地虫、若虫等を含む。
【0036】
「非経口」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、筋肉内(例えば、筋肉の中)、皮下(例えば、皮膚の下)、皮内(例えば、皮膚自体の中)、および静脈内(例えば、静脈の中)である投与形態を指す。
【0037】
「保存剤(複数可)」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、本発明の組成物に添加して、微生物作用および化学反応から本発明の組成物を保護する1つまたは複数の物質を指す。この用語は、フリーラジカルを捕捉することによって、組成物を化学反応から保護し、それによって、1つの化合物または物質から別の化合物または物質への電子伝達を排除する抗酸化剤(フリーラジカル捕捉剤)を含む。
【0038】
「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」等は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、そのような用語が適用される障害または状態を、後退させること、軽減することまたは予防することを指す。したがって、治療は、本発明の組成物を、投与時には障害または状態に罹患していない動物に投与することを指すことができる。
【0039】
「獣医学的に許容できる」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、物質または組成物が、組成物を構成する他の成分、および/または組成物を用いて治療される動物に対して化学的および/または毒物学的に適合しなければならないことを示す。
【0040】
「保留時間」は、本明細書で使用する場合、別段の記載がない限り、薬物投与の最後の投与後の、動物を屠殺してヒトが消費することができない期間(例えば、数日間)を指す。
【0041】
説明
本発明は、3〜6%(w/v)のドラメクチン、39〜60%(v/v)の綿実油、および30〜50%(v/v)の安息香酸ベンジルを含む高用量ドラメクチン組成物に関する。この組成物は、抗酸化剤、保存剤および共溶媒を含めた、1つまたは複数の補助的な賦形剤を場合により含有することができる。ある量のドラメクチンを、綿実油、安息香酸ベンジル、抗酸化剤としての酢酸トコフェロール、および共溶媒としてのベンジルアルコールと混合することによって、典型的な組成物を調製する。動物に投与するのに安全であると当業者が認識する、他の一般的な、適切な抗寄生生物薬、獣医学的に許容できる植物性または合成の油およびエステル、共溶媒、抗酸化剤ならびに保存剤を使用することができる。しかし、エバーメクチンおよび/またはミルベマイシンを活用する非経口組成物の開発には、こうした薬物と、組成物の他の担体および賦形剤との間の相互作用を理解する必要がある。エバーメクチンおよびミルベマイシンの抗寄生生物薬は、ヒマシ油中における溶解性は高いが、薬剤と油との間の結合親和性により、油から薬剤が容易には放出しない。したがって、薬剤の残留濃度が、注射部位で高い状態を維持する。第2に、エバーメクチンは、他の油(例えば、オレイン酸エチル、分画ヤシ油、ゴマ油および綿実油)中においては、より低い溶解性プロファイルを示す。こうしたより低い溶解性により、組成物を高用量にすることができない。したがって、低い結合親和性を維持しながら、高用量の溶解性を確実にするために、他の共溶媒が必要となる。最後に、高用量エバーメクチンは、組成物の水溶性に応じて、沈殿する場合があり、これは、この薬剤が水相に分配した結果として生じる。
【0042】
本発明において特に重視する活性な抗寄生生物薬は、ドラメクチン(3〜6重量%)である。好ましくは、ドラメクチンは、3〜4重量%、より好ましくは、3.5重量%である。
【0043】
適切な植物油として、長鎖トリグリセリド、例えば、綿実油、ゴマ油、大豆油、トウモロコシ油等が挙げられる。また、C/C10中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol810または812)も使用することができる。
【0044】
適切な共溶媒として、エステル、例えば、安息香酸ベンジル、オレイン酸エチル、クエン酸トリブチル、クエン酸トリブチルアセチル(tributylacetyl citrate)、およびC/C10中鎖プロピレングリコールジエステル(例えば、Miglyol840)が挙げられる。安息香酸ベンジルが、好ましい。これは、安息香酸ベンジルがエステルの中でも独特であり、長鎖トリグリセリドのヒマシ油とは異なり、良好なドラメクチン溶解性を示し、結合親和性が中等度であるためである。さらに、こうした中等度の親和性により、ドラメクチンの注射部位クリアランス速度が、より速い。したがって、こうした綿実油および安息香酸ベンジルの組成物により、ドラメクチンの可溶化状態を維持し、かつ注射部位の吸収、クリアランスを管理することが可能になり、最終的には保留時間が短縮する。
【0045】
また、補助的な賦形剤も、この組成物中で使用することができる。これらの共溶媒は一般に、この組成物に約2〜8体積%の範囲で添加する。適切な補助的な賦形剤として、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、または例えば、ポリエチレングリコールを含めた、他の無毒性ポリヒドロキシアルコールが挙げられる。ベンジルアルコールは、非経口組成物のための軽度の麻酔薬として有用であり、それによって、注射部位の疼痛を低下させ、それに続いて、注射部位の許容を促す。
【0046】
また、保存剤も使用して、この組成物の全体的な安定性を確実にすることができる。この組成物の保存剤を、微生物増殖を制御もしくは阻止するために添加する場合、および/または化学反応を制御もしくは阻止するために抗酸化剤として添加する場合のいずれかに応じて、それぞれの保存剤の量は、この組成物の重量および/または体積に関して約0.01%〜約2%の範囲とすることができる。例えば、酢酸トコフェロールを、約0.01重量%〜約0.10重量%の範囲で添加することができ、BHAおよびBHTはそれぞれ、単一の組成物に、それぞれ約0.05〜0.5%の範囲で添加することができる。非限定的な適切な保存剤として、フェニルエタノール、フェノール、m−クレゾール、ベンザルコニウム、パラベン、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル等が挙げられる。抗酸化剤であるいくつかの非限定的な保存剤として、ビタミンA、カロテノイド、アスコルビン酸、フラボノイド、ポリフェノール、イソチオシアネート、リコピン、システイン、トコフェロール(トコフェロールは、α、β、γ、δトコフェロール、それらの混合物、ならびにトコフェロールのエステル(例えば、酢酸エステルおよびコハク酸エステル)を含む)等が挙げられる。
【0047】
また、本発明の組成物は、ある量の少なくとも1つまたは複数の脂溶性ビタミンも含むことができる。好ましい脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEである。ウシにおける推奨ビタミン必要量は、約2000〜4000IU/kg(ビタミンA)、約275IU/kg(ビタミンD)、および15〜60IU/kg(ビタミンE)の範囲に及ぶ。これらの脂溶性ビタミンは、肝臓および脂肪組織中に主として貯蔵されるので、より高用量を投与することができる。貯蔵されたビタミンは、長時間にわたり緩慢に分泌され、それによって、ビタミン栄養の延長がもたらされる。ビタミンA、DおよびEの単回ボーラス用量はそれぞれ、約100,000〜500,000IU/mL、10,000〜75,000IU/mL、および約5〜300IU/mLの範囲とすることができる。動物の年齢に応じて、ビタミンAの場合、約2000〜5000IU/kg、ビタミンDの場合、約200〜600IU/kg、およびビタミンEの場合、約0.5〜7IU/kgを提供するための用量を投与することができる。長時間にわたり、これらの用量により、1日量として、ビタミンAは、約50〜125IU/kg/日の範囲に及び40日間、および約33〜83IU/kg/日の範囲に及び60日間、ビタミンDは、約5〜22IU/kg/日の範囲に及び40日間、および約3〜15IU/kg/日の範囲に及び60日間、ならびにビタミンEは、約0.02〜0.15IU/kg/日の範囲に及び40日間、および約0.01〜0.10IU/kg/日の範囲に及び60日間もたらされる。
【0048】
動物用投与剤型を調製するための従来の溶解および混合の手順を使用して、本発明の組成物を調製して、この薬物の投与量を容易に制御可能とし、製品の取扱いを容易にすることができる。
【0049】
注射用液剤のための典型的な製造工程を使用して、本発明の組成物(実施例1)を調製した。ドラメクチンを、安息香酸ベンジル中に約55℃で可溶化させた。別個に、酢酸トコフェロールを安息香酸ベンジル中に可溶化させ、次いで、このドラメクチン溶液に添加した。ベンジルアルコールおよび綿実油をこのドラメクチン溶液に添加することによって、これらの賦形剤を可溶化させた。このドラメクチン溶液を、窒素散布も真空も用いずに、約55℃で約1〜2時間混合した。次いで、この溶液に、真空下で窒素を散布した。この溶液を、約25℃まで冷却し、次いで、1ミクロンのプレフィルターおよび0.22ミクロンの滅菌フィルターを用いてろ過した。次いで、このろ過した溶液を、無菌のアンバーガラス製バイアルに入れ、蓋をした。
【0050】
本発明の範囲に属する組成物は、単回注射後に、経済的に重要な内寄生生物および外寄生生物に対する有効性をもたらし、保留時間を顕著に短縮することが示されている。このことは、家畜動物の分野に従事する者にとって、顕著な利点を意味する。これは、本発明が、保留時間を短縮して、有効な高用量による治療を提供するからである。保留時間を顕著に短縮し、かつ動物を内寄生生物および外寄生生物について有効に治療することができるならば、動物、好ましくは、ウシを、用量を投与した後、さらにより早い時期に屠殺して、ヒトが消費することができる。それに続いて、ウシ農場経営者、飼料工場管理者または他の事業体、および最終的には消費者のコストが大幅に低下する。さらに、動物をより早く屠殺することができれば、特に、保留時間の延長の結果として屠殺を妨げるが、効能を示すには低過ぎる残留薬物濃度を示す動物における再感染のリスクも低下する。
【0051】
本発明の高用量組成物を用いて防除することができる寄生生物(成体および幼虫)に属するものには、回虫、肺虫、眼虫、腎虫、地虫、吸血刺咬性シラミ(sucking and biting louse)、マダニおよびキュウセンヒゼンダニ(mange mite)がある。消化管回虫として、例えば、オステルターグ胃虫(Ostertagia ostertagi)(抑制幼虫を含む)、オステルタギア・リラータ(O.lyrata)、ヘモンクス・プラセイ(Haemonchus placei)、ヘモンクス・シミリス(H.similis)、捻転胃虫(H.contortus)、アクセイ毛様線虫(Trichostrongylus axei)、トリコストロンギルス・コルブリフォルミス(T.colubriformis)、トリコストロンギルス・ロンギスピクラリス(T.longispicularis)、クーペリア・オンコホラ(Cooperia oncophora)、クーペリア・ペクチナタ(C.pectinata)、クーペリア・プクチナタ(C.punctata)、クーペリア・スルナバダ(C.surnabada)(同義語、マクマステリ(mcmasteri))、クーペリア・スパチュラ(C.spatula)、ブタ回虫(Ascaris suum)、紅色毛様線虫(Hyostrongylus rubidus)、牛鉤虫(Bunostomum phlebotomum)、ウシ毛頭虫(Capillaria bovis)、ブノストムム・トリゴノセファラム(B.trigonocephalum)、乳頭糞線虫(Strongyloides papillosus)、糞線虫(S.ransomi)、牛腸結節虫(Oesophagostomum radiatum)、豚腸結節虫(O.dentatum)、エソファゴストム・コロンビアナム(O.columbianum)、エソファゴストム・クアドリスピヌラタム(O.quadrispinulatum)、トリチュリス属(Trichuris)種等が挙げられる。他の寄生生物として、肺虫(例えば、牛肺虫(Dictyocaulus viviparus)、およびブタ肺虫属(Metastrongylus)種);眼虫(例えば、テラジア属(Thelazia)種);寄生態の地虫(例えば、ウシバエ(Hypoderma bovis)、キスジウシバエ(H.lineatum)、ヒトヒフバエ(Dermatobia hominis));腎虫(例えば、ブタ腎虫(Stephanurus dentatus));吸血刺咬性シラミ(例えば、ウシジラミ(Haematopinus eurysternus)、ヘマトピヌス・スイス(H.suis)、ウシホソジラミ(Linognathus vituli)、ケブカウシジラミ(Solenopotes capillatus)、ヒツジハジラミ(Damalinia bovis));ラセンウジバエ(例えば、ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)(幼虫);マダニ(オウシマダニ(Rhipicephalus(Boophilus)microplus)、クリイロコイタマダニ(R.sanguineus))、イキソデス・リシヌス(I.ricinus)、イキソデス・ヘキサゴヌス(I.hexagonus)、アメリカイヌカクマダニ(Dermacentor variabilis)、デルマセンター・アンダーソニ(D.andersoni)、デルマセンター・マルギナタス(D.marginatus)、アムブリオマ・マクラタム(Amblyomma maculatum)、アムブリオマ・トリステ(A.triste)、アムブリオマ・パルブム(A.parvum)、アムブリオマ・カジェンネンセ(A.cajennense)、アムブリオマ・オバレ(A.ovale)、アムブリオマ・オブロンゴグタタム(A.oblongoguttatum)、アムブリオマ・オウレオラタム(A.aureolatum)、アムブリオマ・カジェンネンセ(A.cajennense)等);キュウセンヒゼンダニ(例えば、プソロプテス・ボビス(Psoroptes bovis)、ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei));ならびにノサシバエ(例えば、ノサシバエ(Haematobia irritans))が挙げられる。
【0052】
本発明の組成物を、標準的な獣医診療に従って、想定される特定の使用、治療される特定の宿主動物および宿主動物の体重、1つまたは複数の関与する寄生生物、寄生の程度等に適した方法で投与することができる。好ましくは、本発明の組成物を、非経口投与のために製剤化する。より好ましくは、この組成物を、筋肉内および皮下への注射のために製剤化する。適切な動物用投与装置、例として、シリンジ、またはNJ Phillips Injector、Instrument Supplies and Simcrotec等の供給元から入手可能な型の注射銃(injection gun)を使用して、この組成物の注射を達成することができる。注射装置の選択は、いくつかの要因、例として、この組成物の粘度、環境条件において活性な薬物の単位用量を送達する能力等に依存し、標準的な獣医診療に従う。
【0053】
獣医開業医または当業者であれば、特定の動物にとって適した投与量を決定することができ、そうした投与量は、種、年齢、体重および応答により変化させることができる。平均的な用量は、平均的な症例を例示するものである。したがって、より高いまたはより低い投与量範囲を、上記の要因に応じて認めることができ、それらの範囲は、本発明の範囲に属する。
【0054】
本発明の組成物は、上記したように、単独で投与してもよく、または1つもしくは複数の他の抗寄生生物薬と組み合わせて投与してもよい。その場合、2〜6%の薬物組成を組み合わせて、複数の構成成分からなる駆除薬を形成して、さらにより広い範囲の獣医学的有用性をもたらす。したがって、また、本発明は、上記の定義に従って、ドラメクチンおよび少なくとも1つの追加の抗寄生生物薬の有効量、長鎖トリグリセリド、共溶媒、および場合により、保存剤および補助的な賦形剤のそれぞれの1つまたは複数を含む組合せ動物用組成物も想定する。特定のさらなる抗寄生生物薬は、イベルメクチン、エプリノメクチン、アバメクチン、モキシデクチンおよびミルベマイシンを含む。同時に投与するために、ドラメクチンと他の抗寄生生物薬(複数可)とを、単一の医薬組成物中に組み合わせることができる。例えば、保存剤および補助的賦形剤のそれぞれの1つまたは複数を場合により伴わせて、1〜3%の1つの他の抗寄生生物薬と組み合わせた1〜3%のドラメクチン、または組み合わせた重量が約1〜3%である少なくとも2つの他の抗寄生生物薬と組み合わせた1〜3%ドラメクチンを有する綿実油および安息香酸ベンジルの中に、この組成物を製剤化することができる。非排他的な組合せ組成物は、1%のドラメクチンおよび1%のアバメクチン;1.5%のドラメクチン、1%のアバメクチンおよび1%のイベルメクチン;1%のドラメクチン、1%のアバメクチンおよび2%のイベルメクチン等を含む。これらの組合せ動物用組成物は、上記の方法に従って製剤化することができる。
【0055】
例えば、特定の疾患または状態を治療する目的で、活性な化合物の組合せを単一の組成物として投与するのが望ましい場合である限り、本発明に従ってそれらのうちの少なくとも1つがドラメクチンを含有する2つ以上の動物用組成物を、これらの組成物を同時投与するのに適したキットの形態に好都合に組み合わせ得ることは本発明の範囲に属する。
【0056】
したがって、また、本発明は、本発明に従ってそれらのうちの少なくとも1つがドラメクチンを含有する2つ以上の別個の動物用組成物を含むキット、および前記組成物を別個に保持するための手段、例として、容器、分割されたボトル、サシェ、アンプルまたは分割されたフォイル製の包みにも関する。服薬遵守を支援するために、このキットは典型的には、投与のための指示を含み、いわゆるメモリーエイドとともに提供されてもよい。
【0057】
この動物用組成物を適用するために、この薬物を投与するために使用する方法に応じて、多様な方法で包装することができる。一般に、流通のための物品は、その中に適切な形態の動物用組成物を入れた容器を含む。適切な容器は、当業者には周知であり、材料、例として、ボトル(プラスチック製およびガラス製)、サシェ、アンプル、プラスチック製バッグ、金属製の円筒状容器等を含む。また、この容器は、包装の内容物への無分別な接近を阻止するために、不正開封防止集合体も含むことができる。さらに、容器は、その上に、その容器の内容物を記載するラベルも有する。また、このラベルは、適切な警告も含む場合がある。
【0058】
本発明の組成物は、ウシにおいて使用した場合に許容できる。さらに、本発明の組成物は、高い温度および相対湿度(40℃/75%)で6カ月間安定でもある。
【実施例】
【0059】
一般的な実験手順
本発明の実施形態を、以下の実施例により例証する。しかし、本発明の実施形態は、これらの実施例の特定の詳細に限定されず、当業者であれば、それらの他の変更形態が分かるかまたは本開示に照らせば明らかになるであろうことを理解されたい。
【0060】
(実施例1)
以下に記載する、綿実油、安息香酸ベンジルおよびベンジルアルコール中に製剤化して、3.5%(w/v)ドラメクチン(0.7mg/kg)を含有する組成物を調製した。
【0061】
【表1】

【0062】
(実施例2)
比較組成物
40%(v/v)のヒマシ油および60%(v/v)のオレイン酸エチルを含む担体中に、3.0%(w/v)のドラメクチン(0.6mg/kg)を含有する組成物を調製した。
【0063】
(実施例3)
以下に記載する、綿実油および安息香酸ベンジル中に製剤化して、補助的な賦形剤も保存剤も有さない、3.5%(w/v)のドラメクチン(0.7mg/kg)を含有する組成物を調製することができる。
【0064】
【表2】

【0065】
(実施例4)
以下に記載する、綿実油、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールおよび保存剤中に製剤化して、1%(w/v)のドラメクチン(0.2mg/kg)、1%のイベルメクチン(0.2mg/kg)を含有する組合せ組成物を調製することができる。保存剤および/または補助的な賦形剤(ベンジルアルコール)を有しない類似の組成物を調製することができる。
【0066】
【表3】

【0067】
(実施例5)
以下に記載する、綿実油、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールおよび酢酸トコフェロール中に製剤化して、1%(w/v)のドラメクチン(0.2mg/kg)、1%のイベルメクチン(0.2mg/kg)および1%のアバメクチン(0.2mg/kg)を含有する組合せ組成物を調製することができる。トコフェロールおよび/またはベンジルアルコールを有しない類似の組成物を調製することができる。
【0068】
【表4】

【0069】
(実施例6)
以下に記載する、綿実油、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール、ビタミンA、DおよびE中に製剤化して、保存剤であるBHAおよびBHTを有する、1%(w/v)のドラメクチン(0.2mg/kg)、1%(w/v)のアバメクチン(0.2mg/kg)を含有する組成物を調製することができる。それぞれのビタミン(A、Dおよび/またはE)の量を、動物の年齢、健康状態および必要とする補充期間に応じた特定の用量(例えば、IU/kg)のビタミン(複数可)を提供するように、増加または減少させることができる。
【0070】
【表5】

【0071】
油/水の分配
ドラメクチンを単独で、およびドラメクチンと他のエバーメクチンとを含む、いくつかのトリグリセリド油:エステルからなる溶液組成物を調製して、組成物:水の分配係数および薬物が沈殿する程度を、薬物の残留時間を決定する手段として評価した。例えば、薬物/油の親和性が強力である場合、薬物は、油から容易には放出せず、薬物が沈殿する場合、全身的な吸収およびクリアランスはさらにより緩慢になる。クリアランスのより緩慢な速度は、より長い保留時間と同等とみなされる。トリグリセリド油:エステルからなる組成物ビヒクルを、55:45の油:エステルのv/v比で調製した。固体の抗寄生生物薬を、これらのビヒクルに添加し、混合しながら、これらの溶液を加熱することによって溶解させた。室温まで冷却したら、1mlのそれぞれの組成物を、10mLの水に添加し、これらの混合物を、室温で72時間穏やかに回転混合することによって平衡化した。油相と水相とを遠心分離により分離し、必要に応じて、水相をろ過によりさらに清澄化して、沈殿した薬物を除去した。それぞれの組成物について、両方の相および最初の組成物を、HPLCによりアッセイした。結果を、以下の表1に示す。
【0072】
【表6】

【0073】
全体的に、ドラメクチンおよび他のエバーメクチンの単独の場合およびそれらを組み合わせた場合、綿実油/安息香酸ベンジルの組成物は、許容できる高用量における溶解性および組成物:水のlog P値をもたらした。さらに、これらの組成物は、水性環境に曝露させると、薬物の溶解性を維持する良好な能力を示し(例えば、溶液中に、94%以上が残留した)、このことは、より高い、効能を示す用量を提供するが、注射部位において沈殿する傾向は低く、したがって、保留時間が短縮することを示している。同様に、ヒマシ油組成物も、予期したように、許容できる溶解性を示したが、薬物と油との間の強力な親和性に起因して、log Pが顕著に増加した。こうした親和性は、注射部位における薬物クリアランスの顕著な延長をもたらすことが予想される。また、綿実油:オレイン酸エチルの組成物も、良好な溶解性を示したが、水に対する曝露の耐容性が若干減少した結果、薬物の沈殿の若干の増加を生じた。
【0074】
生物学的研究
研究1
45頭のウシ(15頭/群)を、性腺摘除し、性腺摘除した創傷を、ラセンウジバエ(ラセンウジバエ(Cochliomyia hominivorax)の幼虫)の寄生に自然に曝露させた。対照群には、治療を行わなかった。第1の治療群には、比較組成物(実施例2)を、0.6mg/kgの投与量で単回注射した。第2の治療群には、実施例1の組成物を、0.7mg/kgの投与量で単回注射した。以下に示すように、ラセンウジバエに対する有効性を、治療後の第3日から第20日まで、それぞれの治療群について、評価するように指定したそれぞれの日に計算した。
【0075】
【数1】

【0076】
研究1の結果を、表2に示す。
【0077】
【表7】

【0078】
全体的に、これらのデータから、本発明の組成物(実施例1)のラセンウジバエ(C.hominivorax)の幼虫に対する有効性がより早期に出現したことが示されている。
【0079】
研究2
糞便1グラム当たりの卵(EPG)数500超に自然感染させたウシ24頭を、3回のEPG数(第−3日、第−2日および第−1日)の平均に基づいて、3つの治療群に無作為に割り当てた。対照群には、治療を行わなかった。第2の群を、0.6mg/kgの投与量の比較組成物(実施例2)の単回投与を用いて治療した。第3の群を、0.7mg/kgの投与量の実施例1の組成物の単回投与を用いて治療した。ウシを、個々の牛房中で治療後の第14日まで飼育し、第14日に、動物を安楽死させ、死体解剖して、ぜん虫負荷量を評価した。いくつかの種のぜん虫(ヘモンクス属(Haemonchus)(H1)、クーペリア属(Cooperia)(H2)、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)(H3)、エソファゴストム属(Oesophagostomum)(H4)、およびトリチュリス属(Trichuris)(H5))を、それぞれの群から回収し、数えた。ぜん虫のそれぞれの種の数およびそれらの算術平均を、表3に示す。本発明の組成物(実施例1)を用いて治療したウシの群が、それぞれの種について記録した最も低いぜん虫の数を、トリコストロンギルス属(Trichostrongylus)を除いて示し、この属では、比較処方も同様に効能を示した。全体的に、本発明の組成物の場合、虫(全ての種)の総数が、比較組成物の半分未満であった。
【0080】
【表8】

【0081】
研究3
本発明の動物用組成物(実施例1)を、市販されている高用量製品と比較して、ウシのウジ(ヒトヒフバエ(Dermatobia hominis)の幼虫)の寄生に対する有効性を評価した。3つの高用量エバーメクチン組成物を評価した。40頭のウシを、幼虫の寄生の目視検査に基づいて選択した。これらの動物を、ヒトヒフバエ(D.hominis)の幼虫の2回の治療前の数(第−2日および第−1日)の平均に基づいて治療群に無作為に割り当てた。10頭の動物からなる4つの群をそれぞれ、以下の通り形成した。T01は、対照(食塩水)であり、T02には、ドラメクチン3.5%(実施例1)を与え、T03には、イベルメクチン3.15%(Ivomec Gold、Merial)を与え、T04には、イベルメクチン4.0%(MasterLP、OuroFino)を与えた。動物を、研究期間にわたりブラジルの同じ牧場の境界内で飼育した。水およびミネラルサプリメントを、自由に摂取させた。第0日に、ウシに、1mL/50Kgの用量を皮下に投与した。幼虫の小結節を、第−2日、第−1日、第3日、第7日、第14日に、およびその後は、治療後の第133日まで週1回数えた。結果を、図1に示す。ドラメクチン3.5%は、他の高用量の市販されているイベルメクチン組成物と比較して、ヒトヒフバエ(D.hominis)の幼虫に対して優れた治療の持続する有効性を示した。ドラメクチン3.5%、イベルメクチン3.15%およびイベルメクチン4.0%の用量はそれぞれ、90%を超える有効性(幾何平均)を、治療後の第14〜105日、第28〜77日および第28〜84日に達成した。
【0082】
研究4
比較のために、保留時間を、市販されている低用量ドラメクチン、高用量イベルメクチン、およびイベルメクチンとアバメクチンを含有する高用量の組合せについて、高用量ドラメクチン(実施例1)と比べて評価した。これらの保留時間は、それぞれの会社が、Brazilian Ministry of Agriculture(MAPA)に登録したそれらのそれぞれの製品ラベルに報告している、動物組織(骨格の肉、脂肪、腎臓および肝臓)から得られた残留薬物濃度に基づく。製品ラベルは、保留時間を日および月の単位で報告している。一貫性を得るために、保留時間を日単位で示し、1カ月を30日とする。保留時間を、表4に示す。この高用量ドラメクチン組成物は、他の高用量化合物の場合の保留時間の2分の1である保留時間をもたらす。したがって、高用量ドラメクチンを用いた場合には、他の高用量エバーメクチンにより達成し得る場合よりも、治療後のより早い時期に、ウシを屠殺して、肉を消費することができる。
【0083】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)3〜6%w/vのドラメクチン、(b)39〜60%v/vの綿実油、(c)30〜50%v/vの安息香酸ベンジル、ならびに場合により、d)保存剤、補助的な賦形剤および脂溶性ビタミンのそれぞれの1つまたは複数を含む、動物用抗寄生生物組成物。
【請求項2】
1つまたは複数の保存剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つまたは複数の補助的な賦形剤をさらに含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEからなる群から選択される1つまたは複数の脂溶性ビタミンをさらに含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ドラメクチンが3.5%w/vであり、綿実油が55%v/vであり、安息香酸ベンジルが39%v/vであり、補助的な賦形剤がベンジルアルコールであり、保存剤がトコフェロールである、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
ベンジルアルコールが6%であり、トコフェロールが0.05%酢酸トコフェロールである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ドラメクチンが3.5%w/vであり、綿実油が55%v/vであり、安息香酸ベンジルが39%v/vであり、補助的な賦形剤および保存剤をさらに含み、補助的な賦形剤が6%ベンジルアルコールであり、保存剤が0.05%酢酸トコフェロールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
家畜動物における寄生生物の予防、治療または防除のための薬物を調製するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記薬物を前記動物に非経口投与することを含む使用。
【請求項9】
家畜動物における寄生生物の予防、治療または防除のための方法であって、有効量の請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を前記動物に非経口投与することを含む方法。
【請求項10】
(a)1〜3%w/vのドラメクチン、b)1〜3%w/vの1つの、または組み合わせて1〜3%w/vの2つ以上の、アバメクチン、イベルメクチン、エプリノメクチン、モキシデクチンおよびミルベマイシンからなる群から選択される抗寄生生物薬、(c)39〜75%v/vの綿実油、(d)25〜50%v/vの安息香酸ベンジル、ならびに場合により、e)保存剤、補助的な賦形剤および脂溶性ビタミンのそれぞれの1つまたは複数を含む、動物用組合せ抗寄生生物組成物であって、前記ビタミンが、ビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEからなる群から選択される組成物。
【請求項11】
1つまたは複数の保存剤をさらに含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
1つまたは複数の補助的な賦形剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ビタミンA、ビタミンDおよびビタミンEからなる群から選択される1つまたは複数の脂溶性ビタミンをさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
家畜動物における寄生生物の予防、治療または防除のための薬物を調製するための、請求項10から13のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、前記薬物を前記動物に非経口投与することを含む使用。
【請求項15】
家畜動物における寄生生物の予防、治療または防除のための方法であって、有効量の請求項10から13のいずれか一項に記載の組成物を前記動物に非経口投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−517994(P2012−517994A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549707(P2011−549707)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050443
【国際公開番号】WO2010/116267
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】