説明

高機能水生成システム

【課題】熱交換により得た凝縮水を比較的簡単な構成で高機能水化し、高機能水として利用することができる高機能水生成システムを提供することを目的とする。
【解決手段】冷水製造機3内を減圧する蒸気エゼクタ4と、この蒸気エゼクタ4を通過した蒸気を凝縮させる熱交換機5と、この熱交換機5内を減圧する水封式真空ポンプ6と、前記熱交換機5内から高機能水を排出する排出ポンプ7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凝縮水を高機能水化してそれを有効利用する高機能水生成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷水製造装置,真空解凍機,真空冷却機,蒸煮冷却装置などの被減圧機内を減圧するために蒸気エゼクタを用いたシステムがある。特許文献1には、図3に示されるように、真空解凍機101内を蒸気エゼクタ102を用いて減圧するシステムが開示されている。図3において、ボイラ100で発生した蒸気は、蒸気エゼクタ102を通過して熱交換機103へ送られ、ここで凝縮水となり、水封式真空ポンプ106により排出される。すなわち、蒸気が蒸気エゼクタ102を通過することで、蒸気エゼクタ102内部に負圧領域が形成され、真空解凍機101内が減圧される。熱交換機103には、ストレーナ104と電磁弁105を介して冷却用の水が供給されており、蒸気エゼクタ102からの蒸気は、この冷却用の水と熱交換を行い凝縮水となる。熱交換機103の下流側に設けられた水封式真空ポンプ106は、蒸気エゼクタ102の出口との差圧を設けて積極的に凝縮水を排出している。
【特許文献1】特開2004−357627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、熱交換により得られた凝縮水は、水封式真空ポンプ106により排水口へ排出されており、凝縮水の有効利用がなされていなかった。すなわち、排水口には凝縮水に加え、水封式真空ポンプ106からの封水および熱交換機103からの温水が混在した液体が排出されており、この排出水をボイラなどへ給水として利用する場合には、高機能水化するための別途設備が必要となる。また、熱交換機103へ供給される冷却用の水は、熱交換後もそのまま排出されており、ボイラ100から発生する蒸気を高い熱効率で利用するシステムとなっていなかった。
【0004】
この発明は、このような従来技術の問題点を解決することを目的とする。具体的には、熱交換により得られた凝縮水を比較的簡単な構成で高機能水化し、高機能水として利用することができる高機能水生成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、蒸気発生部からの蒸気供給ラインに設けられ、かつ適宜な被減圧部と接続された蒸気エゼクタと、この蒸気エゼクタを通過した蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と、この間接式凝縮部内を減圧する減圧手段と、前記間接式凝縮部内から高機能水を排出する高機能水排出手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】
高機能水とは、脱気された純水を含む概念である。また、前記被減圧部は、冷水製造機,真空解凍機,真空冷却機,真空式脱気塔,蒸煮冷却装置などを含む概念である。
【0007】
前記間接式凝縮部は、熱交換によって蒸気を凝縮するもので、下部に高機能水を溜めることのできる空間を備えるものであってもよい。凝縮を間接式に行うことで、凝縮水に不純物の混入を避けることができる。
【0008】
前記高機能水排出手段は、ポンプやエゼクタを含む概念であるが、減圧状態である前記
間接式凝縮部内の高機能水を排出できる排出処理能力を有するものであればよい。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記高機能水排出手段の下流に前記高機能水を溜める貯留タンクと、この貯留タンクから高機能水を補給水として高機能水使用装置へ供給する高機能水供給ラインとを備えたことを特徴としている。
【0010】
前記高機能水使用装置は、蒸気発生部(たとえば、ボイラ)や冷却塔を含む概念であるが、高機能水を利用するものであればよい。高機能水をボイラへ補給水として供給すれば、高機能水は温水なので給水予熱効果を有するとともに、純水であるのでスケール防止効果があり、脱気されているので、ボイラの腐食防止効果がある。また、高機能水を冷却塔へ補給水として供給すれば、濃縮を抑制することによりレジオネラ菌,藻,スライム等の発生を抑制することができる。
【0011】
前記高機能水供給ラインを複数の高機能水使用装置へ供給するようにすることもでき、供給ラインの途中に各高機能水使用装置に使用する水を最適化するための薬注装置を設けることもできる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、高機能水を補給水として各種の高機能水使用装置へ供給することができ、高機能水を有効に利用することができる。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明は、蒸気発生部からの蒸気供給ラインに設けられ、かつ適宜な被減圧部と接続された蒸気エゼクタと、この蒸気エゼクタを通過した蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と、この間接式凝縮部に接続され、高機能水を溜める高機能水タンクと、この高機能水タンクに接続される減圧手段と、前記高機能水タンク内の高機能水を排出する高機能水排出手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、前記高機能水タンクを設けたので、高機能水を貯留するタンク部を構成する必要がなくなるとともに、既存の間接式凝縮部に高機能水タンクを接続すればよく、間接式凝縮部の下部に前記タンク部を構成するための空間を備えるための改良を施す必要もない。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、比較的簡単な構成で蒸気からの凝縮水を高機能化することができるので、高機能水として有効利用を図ることができる。
【実施例1】
【0016】
以下、この発明を実施した高機能水生成システムの具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、第一実施例の高機能水生成システムを示している。
【0017】
図1において、この第一実施例の高機能水生成システムは、蒸気発生部1(たとえば、コージェネシステムにおける廃熱ボイラなどであり、以下、単に「ボイラ1」と云う。)からの蒸気供給ライン2に設けられ、被減圧部の一例である冷水製造機3と接続された蒸気エゼクタ4と、この蒸気エゼクタ4を通過した蒸気を凝縮させる間接式凝縮部5(この実施例においては、たとえばシェルアンドチューブ式熱交換機であり、以下、単に「熱交換機5」と云う。)と、この熱交換機5の下部に設けられ、凝縮水を溜めることができる空間14と、前記熱交換機5内を減圧する減圧手段としての水封式真空ポンプ6と、前記熱交換機5内から高機能水の排出手段としての排出ポンプ7と、この排出ポンプ7の下流に高機能水を溜める貯留タンク8と、この貯留タンク8からの高機能水を補給水として、高機能水使用装置である前記ボイラ1または冷却塔9へ供給する高機能水供給ライン10,10などから構成されている。
【0018】
前記蒸気エゼクタ4は、前記ボイラ1からの蒸気を通過させることで、内部に負圧領域を形成して冷水製造機3内を減圧する。
【0019】
前記冷水製造機3は、前記蒸気エゼクタ4により減圧状態となり、そこへ処理水供給ポンプ11から処理水を導入すると、処理水は蒸発して潜熱を奪われて冷水となる。得られた冷水は、冷水送水ポンプ12により各所へ送られて利用される。
【0020】
前記熱交換機5には、蒸気を導入する複数のチューブ13,13,…が所定間隔を空けて立設されており、冷却用の水が給水ライン20から前記熱交換機5内へ導入され、前記各チューブ13の外側と接触することにより、熱交換を行う。冷却用の水は、熱交換したあと、前記冷却塔9により冷却されて、再び前記熱交換機5へ導入される。
【0021】
前記水封式真空ポンプ6は、前記熱交換機5内を減圧状態にすることで、前記蒸気エゼクタ4からの蒸気を積極的に前記熱交換機5内へ導く役割と、前記熱交換機5内の非凝縮性ガスである空気を排出する役割を有するので、前記各チューブ13の下流であって、前記空間14の上方に接続されている。
【0022】
前記排出ポンプ7は、前記熱交換機5から凝縮水を排出するためのものであるが、凝縮水が前記水封式真空ポンプ6へ吸い込まれない程度の排出処理能力を備えている。
【0023】
前記貯留タンク8は、前記熱交換機5により得られた凝縮水を貯留するためのものである。前記貯留タンク8内の凝縮水は、前記各高機能水供給ライン10を介して、前記ボイラ1および前記冷却塔9へ補給水としてそれぞれ供給される。
【0024】
前記ボイラ1から発生する蒸気は、前記蒸気エゼクタ4を通過し、前記熱交換機5へ送られて前記各チューブ13内へ導かれる。前記熱交換機5内は、前記水封式真空ポンプ6により非凝縮性ガスである空気が排出されるので、凝縮水に空気が溶存せず、これにより前記熱交換機5内の凝縮水は、脱気されたものになる。また、蒸気は前記熱交換機5へ導入される冷却用の水と熱交換を行うことで凝縮し、前記空間14に溜まる。こうして得られた凝縮水は、前記ボイラ1および前記冷水製造機3からの不純物のない蒸気を凝縮した純水であり、脱気されているので高機能水として再利用できる。高機能水は、前記貯留タンク8に貯留され、前記各高機能水供給ライン10を介して補給水として前記ボイラ1および前記冷却塔9へそれぞれ供給される。
【0025】
この第一実施例では、前記排出ポンプ7の処理量を制御するための制御部を設けていないが、前記空間14内の水位を計測する水位計(図示省略)を設置して、前記空間14から凝縮水がなくならないように、かつ前記水封式真空ポンプ6が凝縮水を吸い込まないようにすると、前記排出ポンプ7の空回転の防止および前記水封式真空ポンプ6による凝縮水の排出を防止することができるのでより好ましい。
【0026】
また、図1に示されるように、pH調整剤などを注入する薬注装置15を設置して、前記ボイラ1へ供給される高機能水の最適化を図ることも好適である。
【0027】
この第一実施例によれば、前記熱交換機5内を減圧状態にしているので、前記熱交換機5へ導入される前記ボイラ1および前記冷水製造機3からの蒸気に混入する非凝縮性ガスが排出されて脱気されるとともに、熱交換により凝縮して純水にすることができる。また、前記熱交換機5へ導入する冷却用水を熱交換後に凝縮水と混ぜないこと、および熱交換を間接的に行うので凝縮水に不純物などが混入することがなく、したがって比較的簡単な構成で蒸気からの凝縮水を高機能水として利用することができる。この高機能水を前記ボ
イラ1に補給水として用いた場合は、脱気された純水なので、スケールおよび腐食の防止に寄与することができ、また前記冷却塔9に補給水として用いた場合は、カルシウムやマグネシウムなどの硬度分のない純水なので、レジオネラ菌,スライム,藻などの発生を抑制することができる。
【実施例2】
【0028】
図2は、第二実施例の高機能水生成システムを示している。図2において、この第二実施例の高機能水生成システムは、図1における第一実施例の高機能水生成システムと比べて以下の相違する構成となっている。その他の構成は、第一実施例の構成と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0029】
まず、第二間接式凝縮部16(たとえば、シェルアンドチューブ式熱交換機であり、以下、単に「第二熱交換機16」と云う。)の下部には、前記第一実施例における前記空間14が設けられておらず、代わりに高機能水タンク17が接続されている。つぎに、高機能水を溜める前記貯留タンク8が設けられていない。さらに、前記高機能水タンク17から前記ボイラ1および前記冷却塔9へ高機能水をそれぞれ供給する第二高機能水供給ライン18,18が設けられ、それらの経路中には前記高機能水タンク17内の高機能水を排出する高機能水排出手段である第二排出ポンプ19,19がそれぞれ設けられている。
【0030】
前記高機能水タンク17は、前記第二熱交換機16の下部に接続されて凝縮水を溜める。前記高機能水タンク17の下部には、前記各高機能水補給ライン18がそれぞれ接続されており、凝縮水は、これらを介して前記ボイラ1および前記冷却塔9へ補給水としてそれぞれ供給される。
【0031】
前記水封式真空ポンプ6は、前記高機能水タンク17に溜まる凝縮水の水位よりも上方に取り付けられており、前記高機能水タンク17内を減圧状態にすることで、前記蒸気エゼクタ4からの蒸気を積極的に前記第二熱交換機16内へ導入するとともに、前記高機能水タンク17内の非凝縮性ガスを排出する。
【0032】
前記各第二排出ポンプ19は、減圧状態の前記高機能水タンク17から高機能水を排出するだけの排出処理能力を有している。
【0033】
この第二実施例によれば、第一実施例と同様の効果に加え、前記高機能水タンク17を備えているので、既存の熱交換機内部の変更をする必要がなく、別構成として下部に取り付けることができる。また、第一実施例における前記貯留タンク8が不要となるので、システム全体として簡便な構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る実施例1の説明図
【図2】本発明に係る実施例2の説明図
【図3】従来技術の説明図
【符号の説明】
【0035】
3 冷水製造機(被減圧部)
4 蒸気エゼクタ
5 熱交換機(間接式凝縮部)
6 水封式真空ポンプ(減圧手段)
7 排出ポンプ(高機能水排出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発生部からの蒸気供給ラインに設けられ、かつ適宜な被減圧部と接続された蒸気エゼクタと、この蒸気エゼクタを通過した蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と、この間接式凝縮部内を減圧する減圧手段と、前記間接式凝縮部内から高機能水を排出する高機能水排出手段とを備えることを特徴とする高機能水生成システム。
【請求項2】
前記高機能水排出手段の下流に前記高機能水を溜める貯留タンクと、この貯留タンクから高機能水を補給水として高機能水使用装置へ供給する高機能水供給ラインとを備えることを特徴とする請求項1に記載の高機能水生成システム。
【請求項3】
蒸気発生部からの蒸気供給ラインに設けられ、かつ適宜な被減圧部と接続された蒸気エゼクタと、この蒸気エゼクタを通過した蒸気を凝縮させる間接式凝縮部と、この間接式凝縮部に接続され、高機能水を溜める高機能水タンクと、この高機能水タンクに接続される減圧手段と、前記高機能水タンク内の高機能水を排出する高機能水排出手段とを備えることを特徴とする高機能水生成システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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