説明

高比誘電率を有する1成分有機ポリシロキサン材料

【課題】無機質補強充填剤、カーボンブラック及び熱により活性化可能な触媒を含む有機ポリシロキサン材料を提供する。
【解決手段】(A)特定量の脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有する基を有する化合物、(B)特定量のSi結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに(C)特定量の脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基及びSi結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン、(D)特定量の特定BET表面積を有する無機質補強充填剤、(E)特定量の特定BET表面積及び特定OANを有するカーボンブラック、及び(F)特定量の熱により活性化可能な特定触媒を含む、特定比誘電率εrを有する加硫物へと硬化可能な、特定開始温度を有する有機ポリシロキサン材料(O)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質補強充填剤、カーボンブラック及び熱により活性化可能な触媒を含む有機ポリシロキサン材料に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマープラスチックからのケーブルガスケット(Kabelgarnitur)の製造は典型的には、成形方法、例えば射出成形又は機械的注型において又は押出により行われる。慣用の方法は、ケーブル末端に対するケーブルガスケットの冷間収縮である。このためには、このエラストマーは良好な機械的特性、例えば高い破断点伸び(Reissdehnung)、引裂抵抗(Reissfestigkeit)及び引裂強さ(Weiterreisswiderstand)を有しなければならない。
【0003】
これら特性を有する押出可能なシリコーンゴムはDE19938338に記載された1成分付加架橋性シリコーン材料であり、これは脂肪族不飽和基とSi結合した水素との反応(ヒドロシリル化)によって触媒、典型的には白金化合物の存在下で架橋する。
【0004】
中圧及び高圧の領域内でのケーブルの遮断及び結合のためには、ガスケット中の電場制御が必要になる。この電場制御は例えば、高められた比誘電率を有する材料による屈折電場制御(refraktive Feldsteuerung)として達成されることができる。この必要とされる比誘電率は従来のシリコーンゴムでは達成されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】DE19938338
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主題は、
(A)脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有する基を有する化合物100質量部、
(B)Si結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン0.1〜50質量部、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基及びSi結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン100質量部、
(D)DIN EN ISO9277により少なくとも50m2/gのBET表面積を有する無機質補強充填剤10〜100質量部、
(E)ASTM D6556により5〜1100m2/gのBET表面積及びASTM D 2414により10〜500ml/100gのOANを有するカーボンブラック4〜300質量部、及び
(F)Pt、Pa、Rh及びRuから選択される白金属の化合物を含む熱により活性化可能な触媒、有機ポリシロキサン材料(O)中に白金属0.0000001〜0.01質量部が含まれる量で
を含む、IEC 60250により測定して少なくとも6の比誘電率εrを有する加硫物へと硬化可能な、80℃より高い開始温度(Anspringtemperatur)を有する有機ポリシロキサン材料(O)である。
【発明の効果】
【0007】
この硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)は、1成分処方物として少なくとも4週間、特に少なくとも6週間の長さのポットライフを23℃及び周囲圧力で有する。好ましくはこの有機ポリシロキサン材料(O)は、少なくとも1週間、特に少なくとも2週間のポットライフを50℃及び周囲圧力で有する。
【0008】
この有機ポリシロキサン材料(O)は、高められた温度で初めて、低い誘電損失係数で高い比誘電率を有するシリコーンゴムへと迅速に架橋する。このシリコーンゴムは、良好な機械的特性、特に高い破断点伸び、引裂抵抗及び引裂強さを有する。
【0009】
有機ポリシロキサン材料中で使用される化合物(A)及び(B)又は(C)は、知られているように、架橋が可能なように選択される。したがって、例えば化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも3つのSi結合した水素原子を有するか、又は化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも2つのSi結合した水素原子を有するか、又は化合物(A)及び(B)の代わりに前記の割合で脂肪族不飽和基及びSi結合した水素原子を有するシロキサン(C)が使用される。
【0010】
好ましくは、有機ポリシロキサン材料(O)は成分(A)として、脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含み、その際、今までに付加架橋性材料中に使用された全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を使用することができ、例えば尿素セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマー、アミド−セグメント及び/又はイミド−セグメント及び/又はエステル−アミド−セグメント及び/又はポリスチレン−セグメント及び/又はシラリーレン(Silarylen)−セグメント及び/又はカルボラン−セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマー及びエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することもできる。
【0011】
脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基を有する有機ケイ素化合物(A)としては、好ましくは一般式I
【化1】

[式中、
Rは、脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有さない有機基、
1は、一価の、置換又は非置換の、脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した炭化水素基、
aは、0、1、2又は3及び
bは、0、1又は2を意味し、
但し、a+bの合計が3以下である]の単位から構成される直鎖状又は分枝鎖状の有機ポリシロキサン[但し、1分子につき平均して少なくとも2つの基R1が存在する]が使用される。
【0012】
基Rは、1価又は多価の基であってよく、その際、多価の基、例えば2価、3価及び4価の基は、その際、複数の、例えば2つ、3つ又は4つの一般式(I)のシロキシ単位と相互に結合する。
【0013】
Rは1価の基−F、−Cl、−Br、−OR6、−CN、−SCN、−NCO及びSiC結合した、置換又は非置換の炭化水素基(この基は酸素原子又は基−C(O)−で中断されていてもよい)、並びに2価の、一般式(I)により両側でSi結合した基を包含する。
【0014】
6は、水素原子又は1価の、置換又は非置換の、1〜20つの炭素原子を有する炭化水素基、好ましくはアルキル基及びアリール基を意味してよく、その際水素原子、メチル基及びエチル基が特に好ましい。
【0015】
基Rが、SiC結合した、置換した炭化水素基である場合には、置換基として、ハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、

[式中、R6は上述の意味合いを有し、Phはフェニル基である]
が好ましい。
【0016】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0017】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基、

[式中、R6は、上述した意味合いを有し、n及びmは同じか又は異なる整数0〜10であり、かつPhはフェニル基を指す]である。
【0018】
2価の、一般式(I)により両側でSi結合した基である場合のRについての例は、前記の基Rについて挙げられた1価の例から、付加的結合が水素原子の置換により行われることにより誘導されたようなものである。この種の基の例は、

[式中、xは0又は1であり、m及びnは上述の意味合いを有し、Phはフェニル基である]
である。
【0019】
好ましくは、基Rは、1価の、脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有さない、SiC結合した、置換又は非置換の、1〜18つの炭素原子を有する炭化水素基、特に好ましくは、1価の、脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有さない、SiC結合した、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0020】
基R1は、SiH官能性化合物と付加反応(ヒドロシリル化)することができる任意の基であってよい。
【0021】
基R1が、SiC結合した、置換した炭化水素基である場合には、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基及び−OR6が好ましく、その式中、R6は上述の意味合いを有する。
【0022】
好ましくは、基R1は2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基であり、その際、ビニル基、アリル基及びヘキセニル基が特に好ましく使用される。
【0023】
成分(A)の分子量は、広範囲に、好ましくは102〜106g/molの間で変動することができる。このように、成分(A)は、例えば比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンであってよいが、また、例えば105g/モルの分子量(NMRを用いて測定した数平均)を有する、鎖中(kettenstaendig)又は鎖末端のSi結合したビニル基を提供する高分子量のポリジメチルシロキサンであってもよい。また成分(A)を形成する分子の構造は確定しておらず;特に高分子量の、つまりオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は直鎖状、環状、分枝鎖状又は樹脂状、網目状であってよい。直鎖状及び環状のポリシロキサンは好ましくは式R3SiO1/2、R12SiO1/2、R1RSiO2/2及びR2SiO2/2の単位から構成され、その際、R及びR1は前記の意味を有する。分枝鎖の及び網目状のポリシロキサンは付加的に3官能性及び/又は4官能性単位を含んでよく、その際、式RSiO3/2、R1SiO3/2及びSiO4/2のようなものが好ましい。当然のように、シロキサンに対する成分(A)の基準を満たす種々の混合物を使用してもよい。
【0024】
成分(A)として、そのつど25℃で少なくとも0.01Pa・s、好ましくは少なくとも0.1Pa・s、最高で500000Pa・s、好ましくは最高で100000Pa・sの粘度を有するビニル官能性の、実質的に直鎖状のポリジオルガノシロキサンを使用するのが特に好ましい。
【0025】
有機ケイ素化合物(B)として、従来も付加架橋可能な材料において使用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0026】
Si結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン(B)として、一般式II
【化2】

[式中、
10 は、Rの意味合いを有し、
c 0、1、2又は3及び
d 0、1又は2を意味し、
但し、c+dの合計は3以下である]
の単位から構成される、直鎖状、環状又は分枝鎖状の有機ポリシロキサン[但し、1分子につき平均して少なくとも2つのSi結合した水素原子が存在する]が好ましく使用される。
【0027】
好ましくは、有機ポリシロキサン(B)は、Si結合した水素原子を、有機ポリシロキサン(B)の全質量に対して0.04〜1.7質量%含む。
【0028】
成分(B)の分子量は、同様に広範囲に、好ましくは102〜106g/モルの間で変動することができる。従って、成分(B)は、例えば比較的低分子のSiH官能性オリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであってよいが、また鎖中又は鎖末端のSiH基を提供する高分子のポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂であってよい。また、成分(B)を形成する分子の構造は確定されておらず;特に高分子量の、つまりオリゴマー又はポリマーのSiH含有のシロキサンの構造は直鎖状、環状、分枝鎖状又は樹脂状、網状であってよい。直鎖状及び環状のポリシロキサンは好ましくは式

の単位から構成されている。分枝鎖の及び網目状のポリシロキサンは、付加的に3官能性及び/又は4官能性単位を含み、その際、式R10SiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のようなものが好ましい。当然のように、シロキサンに対する成分(B)の基準を満たす種々の混合物を使用してもよい。特に成分(B)を形成する分子は不可欠なSiH基の他に、場合によって同時に脂肪族不飽和基も含むことができる。低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチル−シロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン、並びに高分子量のSiH含有シロキサン、例えばポリ(ハイドロジェンメチル)シロキサン及びポリ(ジメチルハイドロジェンメチル)シロキサン(25℃で粘度10〜10000mPa・sを有する)、又はメチル基の部分が3,3,3−トリフルオロプロピル基又はフェニル基により置き換えられている類似のSiH含有化合物を使用するのが特に好ましい。
【0029】
成分(B)は好ましくは、SiH基対脂肪族不飽和基のモル比が0.1〜20、特に好ましくは1.0〜5.0にあるような量で有機ポリシロキサン材料(O)中に含まれている。
【0030】
好ましくは、この硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)は、少なくとも0.5質量部、特に少なくとも1質量部、最高で20質量部、特に最高で10質量部の成分(B)を含む。
【0031】
成分(A)及び(B)は市販製品であるか若しくは当該化学分野において慣用の方法により製造可能である。
【0032】
成分(A)及び(B)の代わりに、有機ポリシロキサン材料(O)は、脂肪族の炭素−炭素−多重結合及びSi結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン(C)を含むことができるが、これは好ましくはない。
【0033】
シロキサン(C)が使用される場合には、これは好ましくは、一般式

[式中、R11はRの意味合いを、そしてR12はR1の意味合いを有し、
g 0、1、2又は3、
h 0、1又は2、及び
i 0、1又は2を意味する]
の単位から構成され、但し、1分子につき少なくとも2つの基R12及び少なくとも2つのSi結合した水素原子が存在する。
【0034】
有機ポリシロキサン(C)の例は、

から構成されるようなもの、いわゆるMQ樹脂であり、その際、この樹脂は付加的にR11SiO3/2単位及びR112SiO単位を含んでよく、並びに、実質的にR11212SiO1/2単位、R112SiO単位及びR11HSiO単位[式中、R11及びR12は上述の意味合いを有する]からなる直鎖状有機ポリシロキサンである。
【0035】
有機ポリシロキサン(C)は、好ましくは少なくとも0.01Pa・s、好ましくは少なくとも0.1Pa・s、最高500000Pa・s、好ましくは最高100000Pa・sの平均粘度をそのつど25℃で有する。
【0036】
有機ポリシロキサン(C)は、当該化学分野において通常使用される方法により製造できる。
【0037】
無機質補強充填剤(D)の例は、熱分解又は沈殿ケイ酸並びに酸化アルミニウムであり、その際、熱分解及び沈殿ケイ酸が好ましい。
【0038】
上述のケイ酸充填剤は、親水特性を有するか、又は知られている方法により疎水化されていてよい。親水性充填剤を混入させる場合には、疎水化剤を添加することが必要である。
【0039】
無機質補強充填剤(D)は好ましくは、DIN EN ISO9277により少なくとも80m2/g、特に少なくとも100m2/gのBET表面積を有する。
【0040】
好ましくは、この硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)は、少なくとも10質量部、特に少なくとも20質量部、最高80質量部、特に最高50質量部の充填剤(D)を含む。
【0041】
カーボンブラック(E)は、1種のカーボンブラック又は種々のカーボンブラックの混合物であってよい。カーボンブラック(E)は好ましくは、ASTM D 6556により少なくとも7m2/g、最高1000m2/g、特に好ましくは最高950m2/gのBET表面積を有する。カーボンブラック(E)の構造の尺度としてのOAN(Oil-Adsorption Number)は、ASTM D 2414により、この個々のカーボンブラックに関して、好ましくは少なくとも20ml/100g、特に少なくとも30ml/100g、最高400ml/100g、特に好ましくは最高200ml/100g、とりわけ最高50ml/100gである。
【0042】
好ましくは、この硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)は少なくとも5質量部、特に少なくとも50質量部、最高200質量部、とりわけ最高150質量部のカーボンブラック(E)を含む。
【0043】
熱により活性化可能な触媒(F)は好ましくは白金化合物を含む。好ましくは、この開始温度は少なくとも100℃、特に少なくとも120℃、最高170℃、特に最高150℃である。有機ポリシロキサン材料(O)の開始温度はゲットフェルト−エラストグラフ(Goettfert-Elastograph)を用いて測定され、かつ、10℃/分の加熱速度から算出される。この場合に、最大のトルクの4%値に相応する温度が開始温度として定義される。
【0044】
好ましくは、DE19938338 A1、第1頁51行〜第4頁24行及び第6頁19行〜第7頁及びDE102007047212 A1、段落[0042]〜[0053]に記載されている触媒(F)が使用される。
【0045】
触媒(F)は、好ましくはビス(アルキニル)(1,5−シクロオクタジエン)−白金−錯体、
ビス(アルキニル)(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)白金−錯体、
ビス(アルキニル)(1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン)白金−錯体、及び
ビス(アルキニル)(1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン)白金−錯体、及び
一般式(V)
【化3】

[式中、
7 ハロゲン、1価の負の無機基、CR93、OR9又はSiR93
8 式Cn2n+1(式中n=5〜18)のアルキル又はCm2m-1(式中m=5〜31)、式−(C65-p)−(Co2o+1p(式中、o=1〜31及びp=1〜5)のアリールアルキル、
9 H、1〜18個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状の脂肪族基又は6〜31個の炭素原子を有するアリールアルキル基を意味し、
その際、R7及びR8の水素原子は基−NH2、−COOH、−F、−Br、−Cl、−アリール又は−アルキルで置換されているか又は置換されていない]
の化合物である。
【0046】
好ましくは、基R7としてハロゲン、擬ハロゲン及びアルキル基である。好ましくは基R8としてアルキル基である。
【0047】
好ましくは、触媒(F)が有機ポリシロキサン材料(O)中に、この中に少なくとも0.000005質量部、特に少なくとも0.000001質量部、最高0.0001質量部の白金属が含まれる量で含まれている。触媒(F)の量は、所望の架橋速度およびそのつどの使用並びに経済学的な観点に応じて調整する。有機ポリシロキサン材料(O)は好ましくは、そのつどこの有機ポリシロキサン材料(O)の全質量に対して、好ましくは0.05〜500質量ppm(=100万質量部につき1質量部)、特に好ましくは0.5〜100質量ppm、とりわけ1〜50質量ppmの白金属含有量を生じる量で、触媒(F)を含む。
【0048】
成分(A)〜(F)の他に、有機ポリシロキサン材料(O)は、なおも、従来も付加架橋可能な材料の製造のために使用されていた全ての他の物質を含んでよい。
【0049】
有機ポリシロキサン材料(O)は、選択的に、成分(G)として、更なる添加剤を、70質量%までの割合で、好ましくは0.0001〜40質量%の割合で含んでよい。これら添加剤は例えば不活性充填剤、有機ポリシロキサン(A)、(B)及び(C)とは異なる樹脂状有機ポリシロキサン、分散助剤、溶媒、付着促進剤、顔料、染料、可塑剤、有機ポリマー、熱安定剤その他であることができる。これには、添加剤、例えば珪砂、珪藻土、クレー、白亜、リトポン、グラファイト、金属酸化物、金属カーボナート、金属スルファート、カルボン酸の金属塩、金属塵、繊維、例えばガラス繊維、プラスチック繊維、プラスチック粉末、染料及び顔料が属する。
【0050】
有機ポリシロキサン材料(O)の加工時間、開始温度及び架橋速度の意図した調節に用いられる更なる添加剤(H)が含まれていてよい。これらの抑制剤及び安定剤は、付加架橋性の材料の分野で非常によく知られている。慣例の抑制剤の例は、アセチレン性アルコール、例えば1−エチニル−1−シクロヘキサノール、2−メチル−3−ブチン−2−オール及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ドデシン−3−オール、ポリメチルビニルシクロシロキサン、例えば1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルテトラシクロシロキサン、メチルビニルSiO2/2基及び/又はR2ビニルSiO1/2末端基を有する低分子量のシリコーン油、例えばジビニルテトラメチルジシロキサン、テトラビニルジメチルジシロキサン、トリアルキルシアヌレート、アルキルマレエート、例えばジアリルマレエート、ジメチルマレエート及びジエチルマレエート、アルキルフマレート、例えばジアリルフマレート及びジエチルフマレート、有機ヒドロペルオキシド、例えばクメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド及びピナンヒドロペルオキシド、有機ペルオキシド、有機スルホキシド、有機アミン、ジアミン及びアミド、ホスファン及びホスフィット、ニトリル、トリアゾール、ジアジリジン及びオキシムである。これら抑制剤添加剤(H)の作用はその化学的性質に依存し、この結果、これは個々的に定められなければならない。
【0051】
有機ポリシロキサン材料(O)の抑制剤含有率は、好ましくは0〜50000ppm、特に好ましくは20〜2000ppm、とりわけ100〜1000ppmである。
【0052】
有機ポリシロキサン材料(O)は、必要な場合に、液体中に溶解、分散、懸濁又は乳化されてよい。有機ポリシロキサン材料(O)は、−特に成分の粘度並びに充填物質含有率に応じて−低粘度及び注型可能であってよく、ペースト状の粘稠性を有してよく、粉末状であってよく又はまた展性で高粘度の材料であってよく、例えばそれは、知られているように、専門家がしばしばRTV−1、RTV−2、LSR及びHTVと呼ぶ材料がそういった例であり得る。特に有機ポリシロキサン材料(O)は、高粘性である場合、顆粒の形で調製することができる。架橋した有機ポリシロキサン材料(O)のエラストマー特性に関しては、同様に、極めて軟質なシリコーンゲルに始まって、ゴム状材料をつうじ、ガラス状挙動を有する高架橋されたシリコーンまでの全範囲を含む。
【0053】
有機ポリシロキサン材料(O)の製造は、知られている方法に従って、例えば個々の成分を一様に混合することによって実施することができる。この場合にこの順序は任意であり、しかし、成分(A)〜(E)の一様な混合、及びこの混合物への触媒(F)の添加が好ましい。触媒(F)はこの場合に、固形物質として又は溶液として−適した溶媒中に溶解して又は−いわゆるバッチとして−一様に少量の(A)又は(A)と一緒の(G)と混合して−混入されることができる。
【0054】
この混合は、この場合に、(A)の粘度に応じて、例えば撹拌機を用いて、溶解機中で、ロールで又は混練機中で実施される。触媒(F)は、有機熱可塑性樹脂又は熱可塑性シリコーン樹脂中にカプセル化することもできる。
【0055】
使用される成分(A)〜(H)は、それぞれの係る成分の個々の種類でも、異なる種類の係る成分の少なくとも2種から構成される混合物であってもよい。
【0056】
有機ポリシロキサン材料(O)は、従来知られているヒドロシリル化反応によって架橋可能な材料と同じ条件で架橋されることができる。
【0057】
本発明の更なる一主題は、有機ポリシロキサン材料(O)の架橋により製造された成形体である。
【0058】
有機ポリシロキサン材料(O)の加硫物の誘電率は、そのつどIEC 60250により測定して好ましくは少なくとも7、特に少なくとも8である。
【0059】
この加硫物の相対体積抵抗は、そのつどIEC60093により測定して、好ましくは少なくとも1010Ωcm、特に好ましくは少なくとも1012Ωcm、とりわけ少なくとも1014Ωcmである。
【0060】
この加硫物の誘電損失係数は、そのつどIEC60250により測定して、好ましくは最高tanδ0.5、特に好ましくは最高tanδ0.15、とりわけ最高tanδ0.08である。
【0061】
有機ポリシロキサン材料(O)並びにここから製造される架橋生成物は、従来エラストマーへと架橋可能な有機ポリシロキサン材料又はエラストマーが使用されていた全ての目的のために使用することができる。これには、例えば任意の基体のシリコーンコーティング又は含浸、成形部品の製造、例えば射出成形法、真空押出法、押出法、鋳造成形及び加圧成形、造型成形(Abformung)、並びにシールコンパウンド、包埋コンパウンド及び注形コンパウンドとしての使用が含まれる。好ましくは有機ポリシロキサン材料(O)は、ケーブルガスケットの電場制御のための成形部品として使用される。
【0062】
前記式の全ての存在する記号は、それらの意味をそれぞれ互いに無関係に有する。全ての式中でケイ素原子は四価である。
【0063】
以下に記載される実施例では、部と百分率の全ての表記は、特段の記載がない限りは、質量に対するものである。特に記載がない限り、以下の実施例は、周囲大気の圧力で、つまり約1000hPaで、かつ室温で、つまり約23℃で、もしくは反応物を室温で追加の加熱又は冷却をせずに合する場合に生ずる温度で実施される。CODは、シクロオクタ−1,5−ジエンを意味する。
【0064】
比誘電率をIEC60250により測定した。
誘電損失係数をIEC60250により測定した。
カーボンブラックのBET表面積はASTM D6556に関する。
ケイ酸のBET表面積はDIN EN ISO 9277に関する。
OANはASTM D 2414に関する。
硬度ショアAをISO 868により測定した。
破断点伸びをISO 37により測定した。
引裂抵抗をISO 37により測定した。
引裂強さをASTM D 624 Bにより測定した。
相対体積抵抗をIEC 60093により測定した。
挙げられる貯蔵安定性は、材料粘度の倍化までの期間を挙げる。
【実施例】
【0065】
実施例1:
予備混合物Aの製造:
混練機中で約500000g/molの分子量を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン33部を、水0.5部、ヘキサメチルジシラザン1.3部及び比表面積150m2/gを有する熱分解ケイ酸7部と混合し、均質に混和した。引き続きこの混合物を150℃に加熱した。90分間の待機時間後に、末端OH官能性シロキサン0.5部を添加し、更なる20分間後に表面積200m2/gを有する熱分解ケイ酸4部と混合した。90分間の待機時間後に、この混練機温度を再度25℃に低めた。
【0066】
この予備混合物A44部に、混練機中でASTM D 6556によるBET表面積7〜12m2/g及びASTM D 2414によるOAN35〜40ml/100gを有するカーボンブラック35部、約500000g/molの分子量を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン20部及びSiH架橋剤として、ジメチルシロキシ−及びメチルハイドロジェンシロキシ−及びトリメチルシロキシ−単位から構成されるコポリマ−1.2部(25℃で粘度300〜500mPa・s及びSi結合した水素含有量0.46質量%を有する)を添加し、混合した。
【0067】
これに、ロールで、以下の式
【化4】

の白金錯体940ppmを含む触媒バッチ2部及びビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン中に溶解した10%のエチニルシクロヘキサノールの抑制剤バッチ2部を添加した。
【0068】
実施例2:
実施例1からの触媒の代わりに、触媒として(PtCl2[(P(O−2−tert−ブチルフェニル)3)]2)500ppmを含む触媒バッチ1部及び抑制剤として実施例1に記載の抑制剤バッチ0.1部を使用した。
【0069】
実施例3:
予備混合物Bの製造:
予備混合物A69部に、混練機中でBET表面積910m2/g及びOAN380ml/100gを有するカーボンブラック10部を添加し、約500000g/molの分子量を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン20部及びSiH架橋剤として、ジメチルシロキシ−及びメチルハイドロジェンシロキシ−及びトリメチルシロキシ−単位から構成されるコポリマ−1.2部(25℃で粘度300〜500mPa・s及びSi結合した水素含有量0.46質量%を有する)を添加し、混合した。
【0070】
予備混合物B30部を、予備混合物A100部、実施例1に記載のSiH架橋剤1.1部及び実施例1に記載の抑制剤バッチ0.35部からなる混合物68部と混合し、引き続きロールで実施例1に記載の触媒バッチ2部及び実施例1に記載の抑制剤バッチ1部と混合した。
【0071】
特性:
実施例1:
比誘電率εr:10
誘電損失係数tanδ:0.05
相対体積抵抗:1.10×1015Ωcm
硬度ショアA:36
破断点伸び:600%
引裂抵抗:5MPa
引裂強さ:25N/mm
50℃での貯蔵安定性:>2週間
50℃での2週間の貯蔵後の開始温度:130℃
【0072】
実施例2:
実施例1と同様の機械的特性及び電気的特性
50℃での貯蔵安定性:>2週間
50℃での2週間の貯蔵後の開始温度:140℃
【0073】
実施例3:
比誘電率εr:9
誘電損失係数tanδ:0.03
相対体積抵抗:1.04×1015Ωcm
ショアA硬度:35
破断点伸び:690%
引裂抵抗:5MPa
引裂強さ:25N/mm

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有する基を有する化合物100質量部、
(B)Si結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン0.1〜50質量部、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合した基及びSi結合した水素原子を有する有機ポリシロキサン100質量部、
(D)DIN EN ISO9277により少なくとも50m2/gのBET表面積を有する無機質補強充填剤10〜100質量部、
(E)ASTM D6556により5〜1100m2/gのBET表面積及びASTM D 2414により10〜500ml/100gのOANを有するカーボンブラック4〜300質量部、及び
(F)Pt、Pa、Rh及びRuから選択される白金属の化合物を含む熱により活性化可能な触媒、有機ポリシロキサン材料(O)中に白金属0.0000001〜0.01質量部が含まれる量で
を含む、IEC 60250により測定して少なくとも6の比誘電率εrを有する加硫物へと硬化可能な、80℃より高い開始温度を有する有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項2】
脂肪族不飽和の有機ケイ素化合物(A)が、一般式I
【化1】

[式中、
R 脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有しない有機基、
1 一価の、置換又は非置換の、SiC結合した炭化水素基であって脂肪族の炭素−炭素−多重結合を有するもの、
a 0、1、2又は3及び
b 0、1又は2を意味し、
但し、a+bの合計は3以下である]
の単位から構成される有機ケイ素化合物 有機ポリシロキサン[但し、1分子につき平均して少なくとも2つの基R1が存在する]である、請求項1記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項3】
有機ポリシロキサン(B)は、一般式II
【化2】

[式中、
10 は、Rの意味合いを有し、
c 0、1、2又は3及び
d 0、1又は2を意味し、
但し、c+dの合計は3以下である]
の単位から構成される有機ポリシロキサン[但し、1分子につき平均して少なくとも2つのSi結合した水素原子が存在する]である、請求項1又は2記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項4】
無機質補強充填剤(D)が、熱分解又は沈殿ケイ酸及び酸化アルミニウムから選択される請求項1から3のいずれか1項記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項5】
カーボンブラック(E)のOANがASTM D 2414により少なくとも20ml/100gである請求項1から4のいずれか1項記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項6】
触媒(F)が白金化合物を含む請求項1から5のいずれか1項記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。
【請求項7】
加硫物の誘電損失係数tanδがIEC 60250により最高0.15である請求項1から6のいずれか1項記載の硬化可能な有機ポリシロキサン材料(O)。

【公開番号】特開2012−117064(P2012−117064A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260777(P2011−260777)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】