説明

高水分含有量のサクサクした充填焼き菓子

【課題】焼かれる場合に高水分含有量で高ガラス温度(Tg)を有するケーシングを配合することによって、長期間にわたってサクサクした質感のケーシングおよび湿潤した軟らかい質感のフィリングを有する、保存安定性のあるサクサクした充填焼き菓子を得ること。
【解決手段】アルファ化澱粉を添加することによって、焼く間に澱粉ゼラチン化度を増大させてTgを増大させることを実現できる。高Tg焼いたケーシングは、多量の高水分含有フィラーを使用して、サクサクした充填焼き菓子の実質的に質感のある2つに分かれるものに保存安定性を提供することを可能にする。充填焼き菓子は、高い焼いたケーシング含水量での変形またはピーク力に対して予想外に高い耐性を示す。焼き菓子はパッケージから出してすぐに食べることができ、消費のためまたはサクサクした質感のケーシングの実現のためにトーストし、電子レンジ処理し、またはさらに焼く、調理、もしくは加熱する必要はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼いたフルーツ充填菓子または充填フルーツクリスプなどのクリスプである、高水分含有量の軟らかいフィリング(filling)および高水分含有ケーシング(外被:casing)を有する保存安定性の充填焼き菓子に関する。本発明はまた、長期間にわたってサクサクしている、高水分含有量の軟らかいフィリングおよび高水分含有ケーシングを有する保存安定性充填焼き菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高水分含有フィリングを使用する、フルーツフィリングなどの軟らかい湿潤フィリングを有する充填菓子の製造では、フィリングおよびケーシングの水分活性または相対湿度が平衡状態で同じになるまで、フィリングとケーシングとの間で水分が移動する。一般に、菓子が防湿パッケージ内にパッケージされる際に達する平衡には数日から数カ月かかることがある。焼き製品は、焼いて低含水量にすることによってサクサクしたものにすることができる。例えば、トースターペストリーまたはパンは、トーストして低含水量にすることによってサクサクしたものにすることができる。高水分含有フィリングから低含水量ケーシングに水分が移動する際、ケーシングの質感は、サクサク感を喪失し、軟らかく湿気を帯びることがある。FIG NEWTONS(登録商標)などの幾つかの菓子製品では、軟らかい湿潤フィリングおよび軟らかい湿潤した焼いたケーシングが望ましい。しかし、サクサクしたケーシングおよび軟らかい湿潤フィリングを有する充填焼き菓子を製造するためには、一般に高水分含有フィリングを使用して、サクサクしたケーシングをサクサクしなくなる点まで軟化する。この問題を改善するために、高水分含有フィリングの量を著しく低減することができ、または菓子製品を調理、焼く、もしくはトースターペストリー製品のようにトーストしてケーシングの含水量を低減し、サクサク感を出すことができる。しかし、高水分含有フィリングの量を低減するまたはフィリングの含水量を低減してケーシングのサクサク感を増大することによって、フィリングに軟らかく湿潤した滑らかな口当たりまたは質感を実現することができなくなる。また、製品の調理またはトーストには、消費者による追加のステップが必要となり、すぐに食べられる製品の便利さが失われる。ケーシングの含水量を低減するためのトーストまたは電子レンジなどによる製品のさらなる加熱によって、フィリングの含水量が著しく低減することもあり、その結果フィリングの湿潤した軟らかい口当たりが喪失する。加熱は、特にFIG NEWTON(登録商標)などの視覚的に明確なフィリングを含む開口端を有する製品において、ケーシングからのフィリングの望ましくない流出または漏出を生じることもある。
【0003】
水分バリア材料の使用による水分移動の低減が開示されている(例えば、Koppaの特許文献1および特許文献2参照)。押出機は、3重の同時押出し製品を提供し、この製品は、中間層によって取り囲まれたまたは包囲された内側層を有し、この中間層は、第3の最外層によって取り囲まれ、または包囲されている。内側層は、焼いた時に噛み応えのある湿潤した質感を有する生地であり、外側層は、焼いた後にサクサクした質感を有する生地である。所望の製品安定性および保存期間を実現するために、2つの生地層間にバリア材料が注入される。しかし、この手法は特別な押出装置を要し、バリア材料を配合物に入れる。
【0004】
多量の水分が焼いたケーシングに移動する際、澱粉などのケーシング成分のガラス転移温度(Tg)が次第に低下すると思われる。ガラス転移温度(Tg)が体温(例えば、37℃)未満または室温未満などに低下する際、成分によって相が溶けまたは変化して、軟らかい質感または口当たりが付与され、サクサク感が喪失する。
【0005】
ガラス転移は、製品特性を支配することができる物理化学的イベントまたは状態変化として定義することができる(例えば、非特許文献1参照)。ガラス形成水性食品ポリマーは、食品の熱、機械、および構造特性を媒介する。水などの低分子量溶媒による可塑化は、水性食品ポリマーのガラス転移の温度の位置を調節する(例えば、非特許文献2参照、非特許文献3参照)。澱粉ゼラチン化および老化の選択された態様に対する食品ポリマー科学手法である(例えば、非特許文献4参照)。水によって、完全に非晶質のまたは部分的に結晶性の食品のTgが低下することが開示されている(例えば、非特許文献5参照)。Slade&Levineによって説明されるように、処理および製品保存中の食材についての構造特性の関係は、熱ガラス転移温度に影響を受ける。
【0006】
熱ガラス転移は、加速流動性の粘弾性のゴム様の液体状態が存在する温度を超え、ガラス様の脆性の低流動性状態が生じる温度未満の温度を定義する(水性食品系の構造/特性関係に対するポリマー科学手法:炭水化物−水系の非平衡挙動(例えば、非特許文献6参照))。
【0007】
またTgは、機械特性を付与する分子量(MW)に伴って変わる。数平均MW(Mn)が増加するにつれて、Tgは、最大一般にMn=1.25×103から105の、ゴム様の粘弾性のネットワークにおけるエンタングルメントカップリング領域に対するプラトー限界まで増加し、次いで横ばいになる(例えば、非特許文献7参照)。同じ分子量および類似構造の一連の化合物内でも、Tg値は実質的に変化できることに留意されたい。
【0008】
可塑剤として作用する水は、完全に非晶質のポリマーのTgおよび部分的に結晶性のポリマーのTgとTmの両方に影響を及ぼすことが周知である(例えば、非特許文献8参照)。一定温度で含水量を増大させる直接的な可塑作用は、一定の水分で温度を上昇させる作用に等しく、低いTgで一次構造上の緩和移動を可能にする可動性を増大させる(Rowland、1980)。
【0009】
水可塑剤によって、最も生物学的な材料のTgが、約30%以上の含水量で(Levine&Slide 1988)、約200℃(無水ポリマー澱粉、グルテン、ゼラチンに対して(Levine&Slade 1988))から約−10℃に低下することが開示されている(例えば、非特許文献9参照)。高バイオポリマー乾燥について、Tgはおよそ200℃に等しく、Tgは、低含水量において水1wt%ごとに10℃+/−5℃減少し、Tgは水分約20%ではおよそ室温である。
【0010】
含水量約10%から約25%の関数としてのゼラチン化もちトウモロコシ澱粉の熱ガラス転移曲線が開示されている(例えば、非特許文献10参照)。軟化するための開始温度に関してTMAによって報告された白色角食パン(white pan bread)のガラス転移が開示された(例えば、非特許文献11参照)。165℃で始まり、0%から10%まで水分1wt%につき10℃減少し、10%から20%まで水分wt%につき5℃減少し、それによって水16.6%においてTg=20℃を通過する、パンに関するTg対含水量。
【0011】
糖の種類および量を利用して、糖の結晶化を操作し、焼き製品の質感を制御することができることが開示されている(例えば、Hongらの特許文献3参照)。例えば、ショ糖は結晶化可能な糖であり、焼き製品にサクサクした質感を提供する一方、高果糖コーンシロップなどの保湿剤糖類は、焼き製品に軟らかいまたは噛み応えのある質感を提供する。マルトデキストリンは脆性を付与するが、保湿剤と組み合わせると、サクサクした質感および良好なクッキースプレッドを付与することが開示されている(例えば、Finleyらの特許文献4参照)。
【0012】
糖は、水との可塑化共溶媒として挙動するが、水のみよりも良好であり、したがって糖の存在下のゼラチン化温度は、水のみでの澱粉のゼラチン化温度と比較して高い。天然の澱粉のゼラチン化に対する、ショ糖および他の糖類の逆可塑作用が開示されている(Slade Levine 1987)。
【0013】
ショ糖−水についての開示された状態図(例えば、非特許文献12参照)は、クッキーおよびクラッカーの製造に関するものであり、ここで最終製品の質感は、ショ糖と粉ポリマーとの構造機能関係にある程度依存する。
【0014】
低MW糖類を実質的に含まないクラッカー配合物において含水量10%で生じる室温ガラス転移が開示されており(例えば、非特許文献13および非特許文献14)、それに対し連続的な非晶質マトリックスは、糖を配合した濃厚なクラッカーについて水分約8%室温Tgに対して形成されたグルテンおよびゼラチン化澱粉(後者は粉の全澱粉含量の70%を含む)の3次元ネットワークになろう。
【0015】
クッキー様の質感を有するフルーツジュース菓子のガラス転移温度(Tg)の上昇が開示されている(例えば、Gimmlerらの特許文献5参照)。澱粉加水分解物(例えば、マルトデキストリン)およびアルファ化澱粉を使用してTgを調節し、サクサクした質感を提供する。最終製品のガラス転移温度(Tg)は室温を超え、好ましくは少なくとも約30℃であり、約60℃以下である。
【0016】
トースト可能な冷凍で安定な焼いた充填ワッフルが開示されている(例えば、Gambinoらの特許文献6参照)。充填ワッフルは、内部フィリング材料を取り囲むバターベースの外側ケーシング材料を有している。含水量および水分活性レベルが、外側ケーシング材料のそれよりも低いフィリング材料を利用することによって、トースト可能な冷凍で安定な充填ワッフルを形成することができる。充填ワッフルは、冷凍で保存することができ、外側ケーシング材料を焼くまたは焦がすことなく、内部フィリング材料を完全に加熱することなく、従来のトースターで急速に再加熱することができる。
【0017】
消費前に調理または加熱するようにされた電子レンジ利用可能な食品が開示されている(例えば、Robertsらの特許文献7参照)。その食品は、調理または加熱の際に水分を発生するフィリングの核、調理または加熱の際にサクサクするようにされた外側コーティング、およびその核とコーティングとの間に配置された少なくとも1つの中間バリア層を含む。中間バリア層は、製品の調理または加熱の際の、核と外側コーティングとの間の水分移動を実質的に防止するようになっている。中間バリア層は、少なくとも1つのパスタ層を含む。
【0018】
トースターペストリーを製造するための生地およびフィリングが開示されている(例えば、Brownらの特許文献8参照)。トースターペストリー用の生地は、生地のための成分の約25重量%から約44重量%の小麦粉、生地のための成分の約13重量%から約35重量%の小麦澱粉、生地のための成分の約1.5重量%から約2.5重量%のショートニング、および生地のための成分の約25重量%から約35重量%の水を含む成分ブレンドを形成すること、立方体の形態のパフペストリーショートニングを添加して、パフペストリーショートニングの量がペストリーの成分の約5重量%から約15重量%の範囲になるようにすること、ならびに成分をブレンドして、成分の残りのショートニングの立方体異種混合物が得られるようにすることによって製造される。生地は層構造に形成され、この層構造は、ペストリーフィリングで被覆された生地の単一ベースシートを含み、その上に生地のペストリーブレンドの単一のトップシートが適用される。
【0019】
異種材料から構成される第1の層および第2の層を有する、完全に焼いたまたは揚げた多層トースター用製品が開示されている(例えば、Baumannらの特許文献9参照)。第1の層は、トースター用製品に必要とされる構造特性を提供し、第2の層は、味、質感、および他の感覚刺激特性などの強化された特徴を提供する。多層トースター製品は、異種の生地またはバター種を含有し、フィリングおよび/または微粒子および/またはトッピングをさらに含むことができる。
【0020】
クリーミーな滑らかな低水分活性を含有する充填クラッカー菓子およびオーブンで焼いたサクサクしたクラッカーに包み込まれた安定な焼いたフィラーを、そのフィラーの困難なレオロジーにも関わらず効率性および一貫性を伴って調製する方法が開示された(例えば、Mihalosらの特許文献10参照)。油相、水相、および固相を含む滑らかな質感の焼くことが可能なフィリングは、成分をブレンドし、高せん断を伴って混合して、1.5×105センチポアズを超える粘度を有する均質なフィラーを形成することによって調製される。クラッカー生地の上部および底部シートも調製され、その底部は所定の水平速度で移動して、複数の開口を含むデポジッターから、焼くことが可能なフィリングの複数の連続的な流れまたは断続的な流れをその上に配置する。次いで、上部生地シートを底部シート上に配置し、シートを所定のパターンでカットし、かつ/またはそれにミシン目を入れて、焼いていない生地およびフィリングの複合物を成形する。最後に、複合物を十分に焼いて、質感のある微生物学的安定性を示すサクサクした外側のクラストを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,715,803号明細書
【特許文献2】米国特許第4,748,031号明細書
【特許文献3】米国特許第4,455,333号明細書
【特許文献4】米国特許第5,080,919号明細書
【特許文献5】米国特許第5,523,106号明細書
【特許文献6】米国特許出願第US20020039612A1号明細書
【特許文献7】国際公開第0511266A1号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0084567A1号明細書
【特許文献9】米国特許第6,267,998号明細書
【特許文献10】米国特許公開第2005/0249845A1号明細書
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】A History of the Glassy State in Foods, ed. Blanshard &P.J. Lillford, Univ. Nottingham Press, Nottingham, UK, pp. 1-12(1983)
【非特許文献2】Sears & Darby, The Technology of Plasticizers, Wiley-Interscience,New York(1982)
【非特許文献3】Slade & Levine, "Structural stability of intermediate moisture, foods- a new understanding?;"
【非特許文献4】Food Structure-Its Creation and Evaluation, eds. J.M.V. Blanshard and J.R. Mitchell, Butterworths, London, pp. 115-47,(1989)
【非特許文献5】Frontiers in Carbohydrate Research-1:Food Applications, ed. R.P. Millane, J.N. BeMiller and R. Chandrasekaran, Elsevier Applied Science, London, pp. 215-70)
【非特許文献6】Slade & Levine, Water Relationships in Foods, eds. H. Levine and L. Slade. Plenum Press, New York, pp. 29-101(1991)
【非特許文献7】Graessley, Viscoelasticity and flow in polymer melts and concentrated solutions, Physical Properties of Polymers, eds. J.E.. Mark, A. Eisenberg, W.W. Graessley, L. Mandelkrn and J.L. Koenig.American Chemical Society, Washington DC, pp 97-153(1984)
【非特許文献8】Rowland, Water in Polymers,ACS Symp. Ser. 127, American Chemical Society, Washington,DC.(1980)
【非特許文献9】Atkins, Basic principles of mechanical failure in biological systems, Food Structure and Behaviour, eds. J.M.V. Blanshard and P. Lillford. Academic Press, London, pp. 149-76(1987)
【非特許文献10】Kalichevsky, The glass transition of amylopectin measured by DSC, DMTA and NMR Carbohydr. Polym, 18, 77-88(1992)
【非特許文献11】Le Meste,. Glass transition of bread. Cereal Foods World, 37, 264-7(1992)
【非特許文献12】Slade & Levine, Beyond water activity:recent advances based on an alternative approach to the assessment of food quality and safety. Crit. Rev. Food Sci. Nutri., 30, 115-360(1991)
【非特許文献13】Amemiya, J. & Menjivar, J.A., Mechanical properties of cereal-based food cellular systems. American Association of Cereal Chemist, 77th Annual Meeting, abs. 207, Sept. 22, Minneapolis, MN.;((1992)
【非特許文献14】Slade & Levine, Journal of Food Engineering 24 pp.431-509; page 477,(1995)
【非特許文献15】Atwell et al., "The Terminology And Methodology Associated With Basic Starch Phenomena," Cereal Foods World, Vol.33, No.3, pgs.306-311(March 1988)
【非特許文献16】B. Borde et al J. Carbohydrate Polymers 48(2002)83-86
【非特許文献17】Roos and Karel, Paper no. 7a, AIChE Summer Meeting, San Diego, Aug. 19-22, 1990, "Phase Transitions of Mixtures of Amorphous Food Components."
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明は、焼いたケーシングおよび焼いたフィリングの両方が高水分含有量を有し、フィリングが多量に存在しても、長期間にわたってサクサクしている焼いたケーシングを有する、フルーツ充填クラッカーなどの保存安定性のあるサクサクした充填焼き菓子を提供する。ケーシングとフィラーとの間の水分バリアを必要とすることなしに、長期間にわたってサクサクした焼いたケーシングおよび湿潤した軟らかいフィリングの質感のある2つに分かれるもの(dichotomy)が実現される。水分バリアを提供するための三重共押出し装置の使用は必要とされない。製品は、従来の生地シート装置およびフィリングデポジット装置を使用して製造することができる。本発明の焼き菓子は、パッケージから出してすぐに食べることができ、消費のためまたはサクサクした質感のケーシングの実現のためにトーストし、電子レンジ処理し、またはさらに焼く、調理、もしくは加熱する必要はない。ケーシングは、実質的に室温およびヒトの体温を超える温度でもサクサクしたままである。サクサクした充填焼き菓子は、視覚的に明らかなフィリングを提供するための開口端を伴って製造することができ、フィリングは、ケーシングからフィラーが漏出または流出することなくケーシング全ての縁部にのばして配置できる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、少なくとも実質的にまたは完全に焼いたフィリングを包み込み、または取り囲む焼いたケーシングを有するサクサクした充填焼き菓子を提供する。焼いたフィリングは、軟らかい質感を有し、フィリングの重量に対して少なくとも約10重量%、好ましくは約12重量%から約25重量%の含水量を有する。焼いたケーシングは澱粉を含有し、高水分含有フィリングと平衡したケーシングの重量に対して少なくとも約6重量%、例えば約6重量%から約12重量%、好ましくは約7重量%から約10重量%の含水量で、サクサクした質感を有する。ケーシングの固形糖含量は、ケーシングの重量に対して約20重量%未満に、例えば約12重量%未満にすることができる。本発明の菓子は、高水分含有量において、2mm直径のプローブを有する質感分析器で測定して、少なくとも約400g、好ましくは少なくとも約750gの変形またはピーク力に対して予想外に高い耐性を有する。
【0025】
澱粉ゼラチン化を増加させる高Tg成分および焼き条件を使用してケーシングのガラス転移温度(Tg)を制御することによって、ケーシングおよびフィリングの高水分含有量において長期間にわたってサクサクした質感を実現することができる。焼いたケーシングの高水分含有量の状態において、焼いたケーシングのガラス転移温度(Tg)は、少なくとも約75℃、好ましくは少なくとも約85℃、最も好ましくは約100℃から約125℃である。また、焼いたケーシングの澱粉のエンタルピーが、示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約6J/g未満、好ましくは澱粉約5J/g未満になるように、ケーシングの澱粉の澱粉ゼラチン化度が制御される。
【0026】
使用できる高Tg成分、またはサクサク感を高めもしくは質感を増すための物質は、アルファ化澱粉、好ましくはアルファ化もち澱粉を、ケーシングの重量に対して約5重量%から約30重量%、好ましくは約10重量%から約25重量%の量で含む。アルファ化澱粉の澱粉ゼラチン化度は、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは完全にゼラチン化することができる。小麦粉などの粉からの澱粉を、高水分条件、高温、長い焼き時間、またはそれらの組合下で焼き、粉澱粉のゼラチン化を増大させ、粉澱粉および焼いたケーシングのTgを高めることができる。
【0027】
充填焼き菓子は、ケーシングおよびフィリングの重量に対して約40重量%から約60重量%のケーシングの量で、多量のフィリングを含有することができる。フィリングがケーシングから著しくまたは全く漏出または流出せずに、サクサクした充填焼き菓子の両端部でフィリングが可視化であるように、サクサクした充填焼き菓子を製造することができる。フィリングがケーシングの最も縁部まで充填されるように、フィリングを配置できる。本発明の実施形態では、ケーシングに孔を開けて、ケーシングの両側の層を一緒に固定することができる。使用できる例示的な高水分含有フィリングは、1つまたは複数のフルーツフィリング、野菜フィリング、またはチーズフィリングである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】示差走査熱量測定(DSC)による全熱流曲線または溶融プロファイルおよび本発明の焼き菓子、市販の充填製品、および天然粉の粉澱粉ゼラチン化度を示す図である。
【図2】本発明の焼き菓子、本発明で使用されるアルファ化もちトウモロコシ澱粉、および固形コーンシロップの熱ガラス転移温度の決定のためのDSCによる逆熱流曲線である。
【図3】本発明のサクサクした充填焼き菓子の、変形に対する耐性として測定されたサクサク感のプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
焼かれる場合に高水分含有量で高ガラス温度(Tg)を有するケーシングを配合することによって、長期間にわたってサクサクした質感のケーシングおよび湿潤した軟らかい質感のフィリングを有する、微生物学的に保存安定性のあるサクサクした充填焼き菓子が得られる。高Tg焼いたケーシングは、多量の高水分または高水分含有フィラーを使用して、フィラーの強い風味効果およびサクサクした充填焼き菓子の、実質的に質感のある2つに分かれるものを提供することを可能にする。焼いた後には、相当な量の水が高水分含有フィラーからケーシングに移動することができるが、焼いたケーシングのサクサクした質感は、水分平衡を得る間およびその後も維持される。本発明の充填焼き菓子は、高い焼いたケーシング含水量での変形またはピーク力に対して予想外に高い耐性を有する。本発明の実施形態では、充填焼き菓子は、焼いたケーシングの含水量がケーシングの重量に対して少なくとも約6重量%である場合、2mm直径のプローブを有する質感分析機で測定して、少なくとも約400g、好ましくは少なくとも約750gの変形またはピーク力に対して耐性を有することができる。本発明の焼き菓子は、パッケージから出してすぐに食べることができ、消費のためまたはサクサクした質感のケーシングの実現のためにトーストし、電子レンジ処理し、またはさらに焼く、調理、もしくは加熱する必要はない。本発明の焼き菓子には、非発酵および発酵した、減脂肪、低脂肪、および無脂肪の焼き製品、ならびに脂肪分の高い非発酵および発酵焼き製品が含まれる。
【0030】
本発明のサクサクした焼いたケーシングは、澱粉ベースであり、澱粉を含む。焼いたケーシングのガラス転移温度(Tg)は、消費の際に製品によってサクサクした口当たりが提供されるように、少なくとも約6重量%の焼いたケーシング含水量で室温およびヒトの体温を超える。本発明の実施形態では、焼いたケーシングのガラス転移温度(Tg)は、少なくとも約75℃、好ましくは少なくとも約85℃、最も好ましくは約100℃から約125℃にすることができる。また、焼いたケーシングの澱粉のエンタルピーが、示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約6J/g未満、好ましくは澱粉約5J/g未満になるように、ケーシングの澱粉の澱粉ゼラチン化度が制御される。
【0031】
澱粉ゼラチン化度の増大によって、澱粉のエンタルピーは減少し、澱粉のガラス転移温度は上昇する。ケーシングの澱粉のゼラチン化度の増大は、ケーシング生地を焼く間に、アルファ化澱粉を添加することによって実現することができる。澱粉粉または小麦粉などの粉に含まれる澱粉は、一般に、焼く前には本質的にゼラチン化されていない。焼く間、生地のより高い水分含有量、澱粉のゼラチン化温度を超える焼き温度、およびより長い焼いた時間によって、澱粉のより高い澱粉ゼラチン化度が促進される傾向がある。生地のより高い水分含有量は、配合水を生地に添加することによって、および焼く間に高水分含有量のフィリングから生地に水分が移動することによって実現することができる。さらに、脂肪および糖類などの他の生地成分は、焼く間に実現することができる澱粉ゼラチン化度に影響を及ぼす。例えば、脂肪は澱粉顆粒をコーティングし、それによって顆粒への透水を防止する傾向があり、糖類は澱粉と水分を奪い合い、それによって澱粉のゼラチン化に利用可能な水の量を低減し、その結果澱粉ゼラチン化度を低減する傾向がある。
【0032】
一般に、澱粉ゼラチン化は、a)澱粉の重量に対して一般に少なくとも約30重量%の十分な量の水が添加され、澱粉と混合される場合、ならびにb)澱粉の温度が、少なくとも約80℃(176°F)、好ましくは100℃(212°F)、またはそれ以上に上昇する場合に生じる。ゼラチン化温度は、澱粉との相互反応に利用可能な水の量に依存して決まる。一般に、利用可能な水の量が少ないほど、ゼラチン化温度が高くなる。ゼラチン化は、顆粒の膨張、天然結晶溶融、複屈折性の喪失、および澱粉可溶化などの特性の不可逆的変化に現れる、澱粉顆粒内の分子秩序の崩壊(分裂)と定義することができる。ゼラチン化の最初の段階の温度およびそれが生じる温度範囲は、澱粉濃度、観測方法、顆粒の種類、および観測下での顆粒集団内の不均一性に支配される。ペースト化は、澱粉の溶解におけるゼラチン化後の第2段階の現象である。それには、顆粒膨張の増大、顆粒からの分子成分(即ち、アミロースに次いでアミロペクチン)のしみだし、および最終的には顆粒の全ての破壊が伴う(例えば、非特許文献15参照)。本発明の実施形態では、アルファ化澱粉の澱粉顆粒は、少なくとも約90%ゼラチン化し、好ましくは少なくとも約95%ゼラチン化し、最も好ましくは完全にゼラチン化することができる。
【0033】
アルファ化澱粉によって焼いたケーシングのTgが上昇し、望ましくない脆性または硬質の質感が回避される限り、本発明で使用されるアルファ化澱粉は、いかなる供給源にも由来することができる。使用できる澱粉の例は、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、小麦、米、サゴ、タピオカ、もちトウモロコシ、モロコシ、マメ澱粉、醸造者の使用済み穀物、およびそれらの混合物である。本発明では、アルファ化もちトウモロコシ澱粉などのアルファ化もち澱粉が好ましい。
【0034】
本発明で使用できるアルファ化もち澱粉またはアルファ化高アミロペクチン含量の澱粉には、アルファ化もちトウモロコシ澱粉、アルファ化もち米澱粉、およびそれらの混合物が含まれる。焼いたケーシングのTgの大幅な上昇を実現すると同時に、粘着性、生地の拡張性、および生地の機械加工性を提供するのに好ましいアルファ化もち澱粉は、A.E.Staley Manufacturing Company製の改変トウモロコシ澱粉X−Pand’R F4−612などの改変もちトウモロコシ澱粉である。好ましいアルファ化もちトウモロコシ澱粉は、化学的に改変されず、酸加水分解もされていない。好ましくは、アルファ化もち澱粉は、約6重量%以下の含水量および約5から約6のpHを有する。ブラベンダーによるアルファ化もち澱粉の中間粘度は、25℃で少なくとも680BUにすることができ、25℃でピーク粘度を達成するために要する時間は最長20分である。アルファ化もち澱粉の粒経分布は、50−メッシュスクリーンで保持されるものが約20重量%以下にし、200−メッシュスクリーンを通過するものが約30%以下にすることができる。粒経が小さすぎると、アルファ化澱粉が主に表面上で水和する傾向がある。アルファ化もち澱粉の粒経の増大によって、アルファ化ジャガイモ澱粉、および任意選択で改変ジャガイモ澱粉と均一に乾燥ブレンドを形成するアルファ化もち澱粉の能力が増大する傾向があり、塊を形成するその傾向が低減される。
【0035】
ケーシングの重量に対して約5重量%から約30重量%、好ましくは約10重量%から約25重量%の量で使用できる、アルファ化もちトウモロコシ澱粉などのアルファ化澱粉あるいは他の高Tg成分またはサクサク感を高めもしくは質感を増すための物質。
【0036】
本発明の実施形態で使用できる他の高Tg成分またはサクサク感もしくは質感を増すための物質の具体例には、食用バイオポリマー、またはケーシングの少なくとも約6重量%の焼いたフィリング含水量において少なくとも約75℃のTgを示す、アミロペクチン、フィトグリコーゲン、押出し澱粉、プルラン、およびデキストランなどの澱粉誘導体が含まれる(例えば、非特許文献16および非特許文献17参照)。
【0037】
本発明で製造される製品の質感を改変するために使用できるプロセス適合成分には、ショ糖、果糖、ラクトース、デキストロース、ガラクトース、マルトデキストリン、固形コーンシロップ、水素化澱粉加水分解物、タンパク質加水分解物、グルコースシロップ、それらの混合物などの糖類が含まれる。果糖、マルトース、ラクトース、およびデキストロースなどの還元糖、または還元糖の混合物を使用して、褐変を促進することができる。その容易な利用可能性および一般にはそのより増大した褐変および風味発生作用により、果糖が好ましい還元糖である。果糖の例示的供給源には、転化シロップ、高果糖コーンシロップ、糖蜜、ブラウンシュガー、メープルシロップ、それらの混合物などが含まれる。
【0038】
糖などの質感を増す成分は、結晶性もしくは顆粒ショ糖、顆粒ブラウンシュガー、または結晶性果糖などの固体もしくは結晶形態、またはショ糖シロップもしくは高果糖コーンシロップなどの液体形態の他の成分と混合することができる。本発明の実施形態では、高果糖コーンシロップ、マルトース、ソルボース、ガラクトース、コーンシロップ、グルコースシロップ、転化シロップ、蜂蜜、糖蜜、果糖、ラクトース、デキストロース、およびそれらの混合物などの保湿剤糖類を使用して、焼き製品の硬度を低減し、風味および色を提供することができる。
【0039】
保湿剤糖類に加えて、糖類ではない、またはショ糖と比較して低甘味度を有する他の保湿剤または保湿剤水溶液を生地に使用することもできる。例えば、グリセロール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、およびソルビトールなどの糖アルコール、ならびに他のポリオールを保湿剤として使用することができる。保湿剤ポリオール(即ち多価アルコール)のさらなる例には、グリコール、例えばプロピレングリコールおよび水素化グルコースシロップが含まれる。他の保湿剤には、糖エステル、デキストリン、水素化澱粉加水分解物、および他の澱粉加水分解生成物が含まれる。
【0040】
本発明の実施形態では、生地の全固形糖含量または保湿剤である質感を高める成分含量は、焼いたケーシングまたは生地の重量に対してゼロから約20重量%まで、例えば約12重量%未満の範囲にすることができ、風味の高い菓子は、一般に甘い菓子よりも少ない全糖固形分の量を有する。本発明の生地に入れるのに好ましい糖類は、結晶性ショ糖およびコーンシロップである。
【0041】
本発明の小麦ベースの菓子に使用される小麦粉は、一般的な小麦もしくはコムギ(triticum aestivum)の粉、および/またはクラブ小麦粉にすることができる。ダラム(Durham)小麦は一般に、サクサク感よりも硬質な質感を提供する。本発明の実施形態では、質感に悪影響を及ぼさない量で、例えば小麦粉の約10重量%までダラム小麦を含むことができる。一般的な小麦粉が好ましい。小麦粉は、冬小麦または春小麦からのものにすることができ、軟質または硬質であってもよい。軟質または硬質小麦は、赤または白のいずれかであってよい。様々な小麦粉の混合物を本発明で使用することができる。本発明で使用される小麦粉は、過度に漂白されないことが好ましく、なぜならば過度に漂白した粉は、ケーキ様のサクサクしていない質感をもたらす傾向があるからである。小麦粉のタンパク質またはグルテン含量は、約室温から約125°Fの温度でシート化可能な生地を提供するのに十分でなければならない。本発明では、クッキーやクラッカー製品に使用される従来の小麦粉を使用することができる。小麦粉の例示的グルテン含量は、粉の約7重量%から約11重量%の範囲にすることができる。
【0042】
小麦粉は、生地または焼いたケーシングの重量の約30重量%から約80重量%、好ましくは約40重量%から約65重量%の量で使用することができる。米粉、トウモロコシ粉、燕麦粉などの他の粉は、パサパサした発泡スチロール様の歯応えの良くない質感をもたらす傾向がある。それらは、風味およびサクサクした歯応えの良い質感に悪影響を及ぼさない量で使用することができる。
【0043】
別段の指定が無い限り、全ての重量パーセンテージは、風味チップ、ナッツ、レーズンなどの含有物を除く、本発明の生地または配合物を形成する全成分の全重量に対するものである。したがって「生地の重量」は、含有物の重量を含んでいない。
【0044】
本発明の生地の含水量は、生地の適切な形成、機械加工、およびカッティングを可能にする所望のガラス転移温度(Tg)および一貫性を提供するのに十分でなければならない。本発明の生地の全含水量は、別個に添加される成分として含まれる任意の水、ならびに粉(通常、約12重量%から約14重量%の水分を含有する)から提供される水分、および配合物に含まれる高果糖コーンシロップ、転化シロップ、または他の液体保湿剤などの他の生地添加物の含水量を含むことになる。
【0045】
別個に添加される水を含み、生地またはバターの水分の全ての供給源を考慮すると、本発明の生地またはバターの全含水量は、一般に生地またはバターの重量に対して約50重量%未満、好ましくは約35重量%未満である。一般に、生地含水量がより低いと、所要熱量がより低くなり、気泡および泡立ちが少なくなり、澱粉ゼラチン化が少なくなる。本発明のサクサクした充填焼き菓子の製造では、生地は、一般に生地の重量に対して約20重量%より多く、一般に約23重量%から約33重量%、好ましくは25重量%から約30重量%の含水量を有することができる。
【0046】
本発明の生地および焼き製品を得るために使用できる油性組成物は、焼き用途に有用な任意の知られているショートニングまたは脂肪のブレンドもしくは組成物を含むことができ、それらは、従来の食用乳化剤を含むことができる。分画され、部分的に水素化され、かつ/またはエステル化されている植物油、ラード、魚油、およびそれらの組合せは、本発明で使用できる例示的なショートニングまたは脂肪である。プロセス適合性の食用の減カロリーまたは低カロリー性の、部分的に可消化性または非消化性脂肪、脂肪代替物、またはショ糖ポリエステルもしくはトリアシルグリセリドなどの合成脂肪を使用することもできる。硬質および軟質脂肪またはショートニングおよび油の混合物を使用して、油性組成物に所望の一貫性または溶融プロファイルを実現することができる。本発明で使用する油性組成物を得るために使用できる食用トリグリセリドの具体例には、大豆油、パーム核油、パーム油、菜種油、サフラワー油、ゴマ油、ヒマワリ種子油、およびそれらの混合物などの野菜供給源に由来する、天然に生じるトリグリセリドが含まれる。イワシ油、ニシン油、ババス油、ラード、および獣脂などの魚油および動物油を使用することもできる。脂肪酸の合成トリグリセリドならびに天然トリグリセリドを使用して、油性組成物を得ることもできる。脂肪酸は、8個から24個の炭素原子の鎖長を有することができる。例えば約75°Fから約95°Fの室温で固形または半固形のショートニングまたは脂肪を使用することができる。本発明での使用に好ましい油性組成物は、大豆油を含む。
【0047】
本発明のサクサクした充填焼き菓子の製造では、生地は、一般に粉の重量に対して約30重量%未満、一般に約10重量%から約20重量%の脂肪または油含量を有することができる。
【0048】
本発明に従って製造できる焼き製品には、減カロリー焼き製品が含まれ、それらは減脂肪、低脂肪、または無脂肪製品でもある。本明細書で使用されるように、減脂肪食品は、その脂肪含量が標準または従来製品から少なくとも25重量%低減された製品である。低脂肪製品は、参照量またはラベルの一人分当たり脂肪3グラム以下の脂肪含量を有する。しかし、低参照量(即ち、30グラム以下またはテーブルスプーン2杯以下の参照量)については、低脂肪製品は、製品50グラム当たり3グラム以下の脂肪含量を有する。無脂肪またはゼロ脂肪製品は、参照量当たりまたはラベルの一人分当たり脂肪0.5グラム未満の脂肪含量を有する。塩味クラッカーなどの付け合わせ用クラッカーについては、参照量は15グラムである。菓子として使用されるクラッカーおよびクッキーについては、参照量は30グラムである。そのため低脂肪クラッカーまたはクッキーの脂肪含量は、したがって最終製品の全重量に対して50グラム当たり脂肪3グラム以下、または脂肪約6%以下となろう。無脂肪付け合わせ用クラッカーは、最終製品の重量に対して15グラム当たり0.5グラム未満、または約3.33%未満の脂肪含量を有することになろう。
【0049】
前述のものに加えて、本発明で使用される生地は、クラッカーおよびクッキーに従来使用される他の添加物を含むことができる。このような添加物は、例えば、乳副生成物、酵素改変粉乳、乳清、イヌリンもしくは他のフルクトオリゴ糖などの可溶性もしくは不溶性食用繊維、難消化性澱粉、燕麦繊維、トウモロコシふすま、小麦ふすま、燕麦ふすま、米ぬか、および可溶性ポリデキストロース、卵もしくは卵の副生成物、ココア、ピーナツバター、バニラもしくは他の風味剤、ポリデキストロース、ホロセルロース、微結晶性セルロースなどの粉代替物もしくは増量剤、それらの混合物等、ならびにナッツ、レーズン、ココナッツなどの含有物もしくは微粒子、チョコレートチップ、バタースコッチチップ、ホワイトチョコレートチップ、ピーナツバタチップ、キャラメルチップなどの風味付けチップなどを、従来の量で含むことができる。好ましい実施形態では、難消化性澱粉または燕麦繊維などの不溶性繊維を、ケーシングに使用することができる。本発明の実施形態では、繊維、チョコレートチップ、または他の風味チップなどのこれらの添加物は、生地の重量に対して約25重量%まで、例えば約10重量%から約20重量%の量で使用することができる。
【0050】
焼き製品に含有物として適しているタンパク質源を本発明の生地に入れて、メイラード褐変を促進することができる。タンパク質源は、非脂肪乾燥固形乳、乾燥または粉末卵、それらの混合物などを含むことができる。タンパク質源の量は、生地の重量に対して例えば約5重量%までの範囲にすることができる。
【0051】
本発明の生地組成物は、生地の重量に対して約5重量%までの発酵系を含有することができる。使用できる化学的発酵剤またはpH調節剤の具体例には、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、リン酸酸性カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸2アンモニウム、酒石酸、それらの混合物などのアルカリ性材料および酸性材料等が含まれる。単独でまたは化学的発酵剤と共に、酵母を使用することができる。
【0052】
本発明の実施形態には、アミラーゼおよびプロテアーゼなどのクラッカー製品に従来使用される酵素を、従来の量で使用することができる。
【0053】
本発明の生地は、プロピオン酸カルシウム、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸などの抗真菌剤または保存剤を含むことができる。微生物上の保存安定性を確保するために、例示的な量は、生地の約1重量%までの範囲にすることができる。
【0054】
本発明の生地には、効果的な乳化量で乳化剤を入れることができる。使用できる例示的な乳化剤には、モノ−およびジ−グリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、ステアロイル乳酸塩、およびそれらの混合物が含まれる。使用できるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルの具体例は、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレアート(ポリソルベート80)、およびそれらの混合物などの水溶性ポリソルベートである。使用できる天然レシチンの具体例には、大豆、菜種、ヒマワリ、またはトウモロコシなどの植物由来のもの、卵黄などの動物源由来のものが含まれる。大豆油由来のレシチンが好ましい。ステアロイル乳酸塩の具体例は、ステアロイル乳酸ナトリウム、ステアロイル乳酸カルシウム、およびそれらの混合物などのアルカリおよびアルカリ土類ステアロイル乳酸塩である。使用できる乳化剤の例示的量は、生地の約3重量%までの範囲である。
【0055】
本発明の実施形態では、本発明で使用される生地は、ショ糖などの乾燥成分、乳清、ココア、および塩などの乾燥風味および添加成分を、アルファ化もちトウモロコシ澱粉と混合して、少なくとも実質的に均質な乾燥プレブレンドを得ることによって製造できる。次いで乾燥プレブレンドを、ショートニングまたは脂肪、高果糖コーンシロップ、水、および乳化剤などの液体成分と共にクリーム状にして、少なくとも実質的に均質なクリーム化混合物を得ることができる。次いで、クリーム化混合物を、粉、発酵剤、および任意選択で燕麦繊維、塩、もしくは乳清などの残りの任意の他の少量乾燥成分と混合して、少なくとも実質的に均質な生地を得ることができる。次いで、チョコレートチップなどの微粒子風味成分などの含有物を生地と混合して、少なくとも実質的に均質な最終生地を得ることができる。
【0056】
次いで生地を分割し、従来の生地シート機を使用して2つのシートを形成してフィリングと共に積層にすることができる。上部および底部シートの生地シートの厚さは、少なくとも実質的に同じか、または異なっていてもよい。
【0057】
本発明で使用されるフィリングは従来の方法で製造することができ、一般に、転化糖、糖またはショ糖、リンゴ粉末、フルーツピューレ、および水を含むことができる。改変された食用澱粉およびペクチンなどのガムを添加して質感の一助にし、焼く間にオーブン中での広がりを制御することができる。天然および人工風味剤、食用酸、および塩が、風味剤として使用される。保湿剤としてグリセリンを使用して、フィラーの質感を軟化し、相対湿度(RH)または水分活性(Aw)を制御することもできる。安息香酸ナトリウムなどの保存剤を、フィリング組成物に使用することもできる。フィリングまたはフィラーは、フィリングの重量に対して、少なくとも約1重量%、一般に約1.1重量%から約5重量%、例えば約1.2重量%から約2.5重量%のフルーツもしくは野菜繊維を有することができ、またはフルクトオリゴ糖もしくはポリキストロースなどの他の繊維を添加することができる。本発明の実施形態では、以下の水分、相対湿度、および焼き可能性についての基準を満たすか、または満たすように改変されている、市販で利用可能なフィラーを含む任意の食用フィリングまたはフィラーを使用することができる。
【0058】
【表1】

【0059】
本発明の好ましい実施形態では、フィリングは、イヌリンまたは他のフルクトオリゴ糖、難消化性澱粉、燕麦繊維、トウモロコシふすま、小麦ふすま、燕麦ふすま、米ぬか、および可溶性ポリデキストロース、ならびにそれらの混合物などの可溶性または不溶性繊維を含有することができる。イヌリンまたは他のフルクトオリゴ糖およびポリデキストロースなどの可溶性繊維は、フィリングへの使用に好ましい。フィリングの重量に対して約25重量%まで、例えば約10重量%から約20重量%の繊維を、フィリングに使用することができる。
【0060】
使用できる例示的フィリングは、リンゴ、リンゴ−シナモン、ストロベリー、ラズベリー、ミックスベリー、ピーチ、チェリー、バナナ、およびオレンジフィリングなどの1つまたは複数のフルーツフィリング、ブロッコリー、カリフラワー、ニンジン、グリーンピース、およびミックス野菜フィリングなどの野菜フィリング、チーズフィリング、肉フィリング、ピーナツバターフィリング、ジャムフィリング、およびゼリーフィリングである。
【0061】
フィリングおよび生地シートは、従来の生地積層およびフィリングデポジット装置を使用して一緒に積層することができ、底部生地層、上部生地層、および2つの生地層によって挟まれるまたは取り囲まれるまたは封入されるフィリングを有する片部にカットすることができる。生地シートまたは層を製造し、生地層とフィリングを積層し、積層を片部に形成する例示的装置および方法が記載されており(例えば、Mihalosらの特許文献10)、その開示の全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0062】
本発明の実施形態では、ケーシング生地は従来の生地ミキサーで製造することができる。所望に応じて完全に混合し寝かせたら、上部の生地シートおよび底部の生地シートを調製するために、生地を2つの別個のシート装置に供給することができる。底部および上部シートの両方を、同じ方法で形成することができる。それぞれにつき、供給ホッパーから生地をシート化し、カットシート積層器などの従来の生地シート機または積層機に供給することができる。生地シートを1つの非積層シートとして製造することができ、または2から8つの層、例えば約4から6つの層に積層し、計量することができる。振りアーム付き積層機などの他の積層機を使用することもできる。好ましい実施形態では、底部生地シートおよび上部生地シートのそれぞれは、単一層の非積層生地シートである。
【0063】
シートの厚さの制御は、三段階で、最初の計量ロール、中間の計量ロール、および最後の計量ロールで実現することができる。生地シートの最終的な厚さは、好ましくは約0.035インチから約0.055インチ、より好ましくは約0.04インチから約0.05インチにすることができる。シート化および計量後、シートを解放コンベアー上で約5秒から20秒間程解放し、次いで孔を開けるためのピンを使用して開孔することができる。生地層を別々または同時に開孔して、層とフィリングを一緒に固定することができる。好ましい実施形態では、積層製品が平らになるまたは崩れるのを回避するために、上層またはシートのみを開孔してから、フィリングおよび底部層との積層が行われる。好ましい実施形態では、開孔した穴は、フィリングがケーシングの焼いた上部生地層を介して視覚的に明らかになるのに十分大きい。開孔は、製品の長さに沿って3列の5つの開孔した穴を含むことができ、中央の列は他の外側の2列からオフセットになっている。
【0064】
底部生地シートは、デポジッターの下を均一な所定速度で移動することができる。デポジッターは、好ましくは、焼くことが可能なフィリングの好ましくは複数の連続流を、生地の底部シート上に配置できる。その流れは、断続的に配置できるが、製品端部および側部または最も外側の周囲にのび、端部から視覚的に明らかであるフィリングを有する菓子製品の製造においては、連続流が好ましい。デポジッターは、複数のデポジッター開口を含み、その複数の開口のそれぞれから所定の速度でフィリングを流すことができる。デポジッターは、2軸スクリューおよび複数の排出口の水車デポジッターを備えるVEMAG(HP−15Cモデル)Robot真空フィラーとしてRobert Reiser&Coから製造されている種類のものにすることができる。開口の数は、他の要素の中でも製品の寸法、線の幅、およびカッター設計に依存することになろう。
【0065】
生地の底部シート上にフィリングリボンを配置した後、焼くことが可能なフィリングをその上に有する生地の底部シート上に、開孔した生地の上部を配置する。次いで、所定の領域で生地シートに圧力を適用して、焼くことが可能なフィリングの最も外側の周囲で生地のシート間の焼くことが可能なフィリングを少なくとも部分的に封止し、所定のパターンで生地をカットし、かつ/またはそれにミシン目を入れて、焼いていない生地およびフィリングの複合物を形成する。カットは、機械方向または生地シートの移動方向で行って、複合物の複数の帯を提供することができる。特定の製品構成に応じて、複数の片部をそれらの間で不完全にカットし、即ちそれにミシン目を入れることができ、または製品が所望に応じて容易に分離するように、本質的に完全にカットすることができる。好ましい実施形態では、フィラーの複数流を、底部生地シート上に展開し、積層し、または配置することができ、それらを生地の上部シートで被覆する。好ましい実施形態では、封止およびカットは、生地または棚状のもの(ledge)の長手方向の端を生成するのではなく、機械の横方向、または生地層の移動方向に対して垂直方向に、生地および充填焼き菓子の連続的な滑らかなわずかに曲線を描いた横断面を生成する。
【0066】
本発明の実施形態では、往復または回転カッター(連続生地供給およびフィラーデポジットの場合に関連)を使用して、複合物または積層物の細片を機械の横方向にカットし、この片を実質的に全横幅に沿って、カット端部で露出したフィリングを有する複合物または積層の個々の片部を得ることができる。
【0067】
焼く前に、生地およびフィラーの積層物または複合物を、トッパー、ソルター、または他の装置に通過させて、焼く前の所望の最終物を得ることができる。例えば、シナモン、糖、およびフルーツジュースを含有するトッピングを適用することができる。
【0068】
次いで、積層物または複合物の細片を焼いて、充填焼き菓子の最終含水量にすることができる。強制空気および直接ガス燃焼オーブンなどの、クラッカーのための典型的なオーブンを使用することができる。
【0069】
焼いた時間および温度は、様々な生地またはバター配合、オーブンの種類などにより変わることになるが、一般に商業用の焼き時間は約2.5分から約13分の範囲にすることができ、焼き温度は約250°Fから約600°Fの範囲にすることができる。例えば、5つの区域の間接的ガス燃焼オーブンでは、第1区域は約300°Fから約350°Fにすることができ、第2区域は約480°Fから約500°Fにすることができ、第3区域は約500°Fから約560°Fにすることができ、第4区域は約460°Fから約475°Fにすることができ、第5区域は約390°Fから約425°Fにすることができ、焼いた時間は約9分から約11分にすることができる。
【0070】
一般に製品は、オーブン中でのメイラード褐変反応により、十分な風味を有するキツネ色に焼かれる。焼きは一般に、焼く前の製品の積層物または複合物が、全重量の約14重量%から約18重量%の水分を喪失するように実施される。例えば、積層物または複合物である充填生地片を焼いて、焼く間の合計約16重量%の水分喪失につき、正味含水量の約25重量%から最終正味含水量の約21重量%に減少することができる。焼いた充填製品はすぐに食べられるものであり、さらなる焼きまたはトーストを必要としない。
【0071】
焼いた後、チョコレートトッピング、トッピングオイル、スパイス、糖類、アイシング、クリームなどの従来の菓子のトッピングを適用することができる。例えば、1つまたは複数の糖類およびショートニングまたは脂肪の混合物を含むアイシングを、充填焼き菓子の上にストライプとして適用することができる。
【0072】
次いで、充填焼き菓子を冷却し、ポリホイルパックなどの水分バリアパッケージでパッケージングし、保存用カートンに入れることができる。
【0073】
本発明の焼いた充填製品は、保存剤なしの微生物上の保存安定性のために、約0.7未満、好ましくは約0.6未満、例えば、約0.40から約0.6の平衡で、相対的な蒸気圧、相対湿度(RH)、または「水分活性」(Aw)を有することができる。しかし製品の全含水量は、含有物を除き、焼き製品の重量に対して少なくとも約6重量%、一般に少なくとも約8重量%、例えば約9重量%から約15重量%である。粉、アルファ化もちトウモロコシ澱粉、1つまたは複数の糖類、および他の成分は、本発明のサクサクした充填焼き菓子の焼いたケーシング全体にわたり実質的に均一に最小限に分布している。
【0074】
本発明のサクサクした充填焼き菓子は、適切な水分バリアパッケージにパッケージされる場合、少なくとも約3カ月、好ましくは少なくとも約6カ月、最も好ましくは少なくとも約12カ月間、サクサクしたケーシングおよび軟らかい湿潤フィリングの微生物学的保存安定性および保存安定性のある、質感のある2つに分かれるものを有することができる。好ましい実施形態では、サクサクした充填焼き菓子はバー(棒)の形態にすることができ、FIG NEWTON(登録商標)のように両側の開端部でフィリングが露出している。フィリングは、そのバーの長手側の部分に沿って露出されまたは可視化することができる。バーの横断面は、ケーシング層の上部の全横幅にわたり滑らかな曲線または弧を有することができ、バーの長さに沿った周囲の端部は平らではない。バーのケーシングの底部層は、実質的に平らにすることができる。バーの横断面は、弦で形成される円の扇形または半円形のような形状にすることができる。ケーシングは好ましくは、押出し製品と同じように、全くまたは実質的に膨張する(puffing)ことのない、実質的に均一な発酵細胞構造を示す。本発明の実施形態では、バーは、約3インチから約4インチの長さ、約1.25インチから約1.75インチの幅、および約0.25インチから約0.5インチの厚さを有することができる。
【0075】
本発明を以下の実施例でさらに例示するが、別段の指定が無い限り全ての部、比、およびパーセンテージは重量によるものであり、全ての温度は°Fであり、全ての圧力は大気である。
【実施例1】
【0076】
この実施例では、生地を調製し、充填層にした細片に形成し、焼き、分析して、焼き製品中の粉澱粉のゼラチン化度を決定する。次いで、アルファ化もちトウモロコシ澱粉を配合物に添加し、最終製品の熱ガラス転移特性を分析する。
【0077】
A.生地調製物
生地は、粉、水、脂肪、糖類、質感を増す澱粉、および発酵剤からなる。粉は、約8%のタンパク質含量、約13重量%の含水量、および約0.48重量%の灰含量を有する。配合物の糖類および水を、0.35の糖類対水分比(S/W)比に調節し、粉1cwt当たり全溶媒(糖+シロップ+配合水)44.5gを得、それによって粉の澱粉ゼラチン化を可能にする固形糖類濃度において十分な水分を提供する。糖対水分比は、配合物に全糖固形分を加算し、その配合物に添加した全水分(即ち、シロップの水および配合物の水)で除算することによって決定する。生地を調製するための成分およびそれらの相対量、成分および生地の含水量、ならびに成分の乾燥重量は、以下の通りである。
【0078】
【表2】

【0079】
成分は2段階で混合することができる。脂肪、糖、コーンシロップ、および塩を弱火で0.5分間混合することができる。水ジャケット付きミキサーを使用することができ、生地の温度標的は110°Fであり、約106°Fから約114°Fの範囲である。第1段階の混合後、残りの成分である粉、ソーダ、重炭酸アンモニウム、プロテアーゼ、および水を添加することができる。重炭酸アンモニウムおよびプロテアーゼは、全配合水から提供された少量の冷水に、それぞれ個別に分散させることができる。生地を弱火で約8分間混合して、少なくとも実質的に均質な生地を得ることができる。配合水の温度は、温度範囲が150°Fから170°Fで、約160°Fに設定することができる。
【0080】
B.フィリングおよび形成
生地を分割し、生地シート器を使用して2つのシートに形成することができる。底部シートの生地の厚さは約0.049インチにすることができ、上部シートについては生地の厚さは約0.040インチにすることができる。底部生地シートがフィラーデポジッターの下を通過するときに、フィリングをシートにわたって連続的な約1.5インチ幅のレーンで広げることができる。開孔穴を有する上部シートを置き、層になった生地を、回転カッターで1.5インチ、3.75インチ、厚さ0.39インチの片部にカットすることができる。
【0081】
使用するフィリングは、フルーツフィリング、または転化糖、糖、リンゴ粉末、フルーツピューレ、水、改変された食用澱粉、ペクチン、天然および人工風味剤、食用酸、塩、グリセリン、および安息香酸ナトリウムを含有するフィラーにすることができる。フィラーは、約1.35重量%のフルーツまたは野菜繊維を有することができる。フィラーは、以下の水分、相対湿度、および焼き可能性についての基準を満たす。
1.Erh Aw約0.64%、
2.焼きの広がり約2.2インチ、*
3.pH約3.0、
4.Brix(固形)約76.5%、および
5.フィリングの重量に対して含水量、約21.8重量%。
【0082】
フィラーは製品縁部まで達しており、フィラーは各開口端で可視である。シナモン、糖、およびフルーツジュースのトッピング含有物を適用することができる。各層の重量は以下の通りにすることができる。
シート化/押出し/回転/洗浄/トッピング(1片)
・上部および底部(2片)生地重量=10.0(9.5〜10.5)グラム
・フィリング+上部および底部生地重量=16.5(16.0〜17.0)グラム
・洗浄+フィリング+上部および底部重量=16.75(16.25〜17.25)グラム
・トッピング+洗浄+フィリング+上部および底部=17.0(16.5〜17.5)グラム
・長さ:3.75(3.65〜3.85)インチ
・幅:1.5(1.4〜1.6)インチ
【0083】
C.焼き
積層生地およびフィラー細片を焼いて、オーブン内のメイラード褐変反応によってキツネ色の十分な風味を有する充填菓子製品を得ることができる。7区域での直接ガス燃焼オーブンを使用して、焼く間の合計約16重量%の水分喪失につき、正味含水量の約25重量%から最終正味含水量の約11.9重量%に減少するようにすることができる。製品はすぐに食べられるものであり、さらなる焼きまたはトーストを必要としない。製品をパッケージし、熱ガラス転移の前に少なくとも1カ月間保持することができ、質感分析を実施する。
【0084】
D.粉の澱粉ゼラチン化度を決定するための分析
焼き製品の溶融プロファイルおよび粉の澱粉ゼラチン化度を、変調示差走査熱量測定(MDSC)によって決定することができる。分析技術は、定常速度で課される加熱および冷却のプログラム化鋸歯パターンで、定常速度で材料を加熱することを含む。温度変動は糖類の低温結晶化などの重複する熱的事象を分けるので、温度変動によって、より正確な熱溶融分析が可能になる。
【0085】
焼いた生地の粉澱粉を特徴付けるために使用する計器および方法は、
a.計器:TA InstrumentsのDSC Q1000制御ソフトウェア、TA InstrumentsのQ1000モジュール、およびTA InstrumentsのRCSユニットを含むTA Instrumentsの示差走査熱量計(DSC)。
b.サンプル焼き型(Pan):ゴム製O−リングを備えたパーキン−エルマーステンレス鋼高圧カプセル。
c.サンプル調製:成分を、サンプル重量対水重量1:1の比で水と混合する。DSCサンプル焼き型で約35ミリグラムから50ミリグラムを秤量し、粉重量ベースでエンタルピーを算出する(例えば、50mg−より少量の添加水−より少量の粉ではない固形=粉重量)。測定エンタルピーを、対等な水分ベースの未加工の粉成分と比較する。
d.計器較正:MDSCを、ベースライン、セル定数、温度、および熱容量に関して、知られている方法で較正する。
1.ベースライン較正:2つの空のサンプル焼き型を使用して、温度範囲10℃から150℃にわたり、加熱率5℃/分でベースライン傾斜およびベースラインオフセットを決定する。
2.セル定数較正:標準としてインジウムを使用する。
3.温度較正:インジウムを使用して1点で較正。
e.方法は、
1:20.00℃で平衡
2:80秒毎に+/−1.00℃調整
3:データ保存:オン
4:130.00℃まで傾斜2.50℃/分
5:1.00分間等温
6:データ保存:オフ
7:方法の終了
【0086】
MDSC較正データ分析ソフトウェアプログラムを使用して、較正モードの機器で適切なMDSC目盛修正を行う。サファイアを使用して、知られている方法で熱容量を較正する。50℃から150℃で速度傾斜2.5℃を使用して、変調モードでDSCを用いてサンプルを特徴付ける。結果を分析するために、57.5℃から80℃で全熱流曲線を組み入れて、焼き製品に残っている結晶性澱粉のエンタルピーを測定する。サンプルは少なくとも二回実施される。
【0087】
焼き製品、市販の充填製品、および天然粉のMDSC分析結果を、図1に示す。溶融開始は約55℃で生じ、吸熱ピークまたは融点は約70℃であり、溶融の終点は約85℃で生じる。ソフトウェアによって、吸熱ピークのエンタルピーJ/gを算出する。焼き製品の粉のエンタルピー値は、澱粉約4.0J/gから澱粉約5.0J/gの範囲であったが、主要な市販充填製品であるFig Newtons(登録商標)およびトースターペストリーについてそれぞれ記録された澱粉エンタルピー値7.6J/gおよび7.9J/gよりも実質的に低い。本発明に従って配合した製品は、他の市販の充填製品よりもかなりゼラチン化した澱粉を有していたが、これは焼いた後にサクサクした製品の質感を残すために特に重要な特徴的な材料特性である。各製品の融点およびエンタルピーは、
【0088】
【表3】

【0089】
である。
【0090】
E.質感を増す澱粉との配合
アルファ化もちトウモロコシ澱粉を配合物に添加し、最終製品の熱ガラス転移特性を分析する。大部分のクッキーおよびセミスイートビスケットの質感は糖類組成によって定義され、それらの固有の材料特性により、周囲温度において6重量%を超える含水量ではサクサクしていない。
【0091】
生地調製物、フィリング、成形、および焼きを、先のセクションA、B、およびCで記載の方法で実施した。アルファ化もちトウモロコシ澱粉に、以下に例示の配合に従って粉100lb当たり11lbの量で粉を添加した。
【0092】
【表4】

【0093】
熱特性を測定する前に、焼き製品を封止パッケージ中で少なくとも1カ月間平衡させた。含水量5重量%超、最も可能性が高くは約8重量%から約9重量%まで完全に平衡させた後、測定した製品は、室温を著しく超える熱ガラス転移を有していたが、これは、サクサクしたガラス状態の材料に関連するサクサク感の材料特性を例示するものである。
【0094】
変調示差走査熱量測定(MDSC)によって、熱ガラス転移温度を決定した。この技術では、分析する材料を、定常速度で課される加熱および冷却のプログラム化鋸歯パターンで、定常速度で加熱する。温度変動は糖類の低温結晶化などの重複する熱的事象を分けるので、温度変動によって熱ガラス転移点のより正確な分析が可能になる。
【0095】
製品の熱ガラス転移温度を特徴付けるために使用する機器および方法は、
a.機器:TA InstrumentsのDSC Q1000制御ソフトウェア、TA InstrumentsのQ1000モジュール、およびTA InstrumentsのRCSユニットを含むTA Instrumentsの示差走査熱量計(DSC)。
b.サンプル焼き型:ゴム製O−リングを備えたパーキン−エルマーステンレス鋼高圧カプセル。
c.サンプル調製:ステンレス鋼サンプル焼き型で約35ミリグラムから50ミリグラムを秤量し、焼き型内の全重量に配合物中のアルファ化もちトウモロコシ澱粉の焼き重量パーセントを乗じて、熱流量/gを決定するために使用される重量を算出し、したがって未加工の材料および最終製品の比較を行うことができた。ソフトウェアは、自動的にガラス転移を算出する。
d.機器較正:MDSCを、ベースライン、セル定数、温度、および熱容量に関して、知られている方法で較正する。
1.ベースライン較正:2つの空のサンプル焼き型を使用して、温度範囲10℃から150℃にわたり、加熱率5℃/分でベースライン傾斜およびベースラインオフセットを決定する。
2.セル定数較正:標準としてインジウムを使用する。
3.温度較正:インジウムを使用して1点で較正。
e.使用した方法は:MDSC較正データ分析ソフトウェアプログラムを使用して、較正モードの機器で適切なMDSC目盛修正を行う。サファイアを使用して、知られている方法で熱容量を較正する。以下のパラメータを使用して、変調モードでMDSCを用いてサンプルを特徴付ける。
方法ログ:
1:データ保存:オフ
2:110.00℃で平衡
3:4.00℃で平衡
4:80秒毎に+/−1.00℃調整
5:データ保存:オン
6:155.00℃まで傾斜5.00℃/分
7:データ保存:オフ
サンプルは少なくとも二回実施される。
【0096】
逆熱流信号の屈折として、含水量約10重量%におけるアルファ化もちトウモロコシ澱粉の熱ガラス転移温度を図2に示す。転移は112.75℃で生じるが、このことは、澱粉が室温でガラス様のサクサクした状態であることを意味する。112.75℃の熱転移は、含水量が約3重量%において固形42DEデキストロースシロップで観測された72℃の熱ガラス転移と比較することができる。図2に示すように、熱ガラス転移を、含水量が約8重量%の製品中、温度110℃として、20℃の温度範囲にわたって約15mW/mgの強度で測定する。各製品のガラス転移温度(Tg)および含水量は、以下の通りである。
【0097】
【表5】

【0098】
アルファ化もちトウモロコシ澱粉は、ゼラチン化粉澱粉と共に作用して、高水分においてサクサクした質感をもたらす。本発明に従って配合した製品は、約107℃で可視的な熱転移を有するが、これは、サクサクした製品の質感に関連する特徴的な材料特性である。
【実施例2】
【0099】
この実施例では、実施例1に従って充填、成形、および焼き、アルファ化もちトウモロコシ澱粉を含有する生地を、サクサクした質感について分析した。25Kgロードセルを備えた質感分析機器(TA−XT2、Texture Technologies Corp/、ニューヨーク州スカーズデール)を使用して、平衡製品の質感を決定する。この試験は、2mm直径のステンレス鋼プローブで製品を穿刺すると同時に、変形または脆性(ピーク力、g)への耐性を測定することからなっていた。Texture Expert Exceedソフトウェア(Texture Technologies Corp.、ニューヨーク州スカーズデール)を使用して、データを収集する。図3は、最終製品のサクサクしたプロファイルを示す。最初のピークは鋭く、約1431gという予想外に大きい力を有しており、これはプローブが上部のクラストを穿刺する際のサクサク感を示すものである。次いで、軟らかく耐性の低いフィリングにプローブを通過させた後、プローブが底部のクラストを穿刺する際に、予想外に大きいおよそ同じ力の第2の鋭いピークが生じた。クラストの、変形に対するはっきりした実質的な耐性は、より幅広いピーク、低耐性(約250g)を示す市販の充填製品Fig Newtons(登録商標)ならびにやはりより幅広いピーク(即ち軟らかく変形可能)および低耐性(約190g)を示すトースターペストリーと比較することができる。結果を以下の表に示す。
【0100】
【表6】

【0101】
先および図3に示すように本発明に従って配合された製品は、市販の充填製品よりも予想外に高いサクサク感を有している(変形に対するより高い耐性、鋭いピーク)。
【実施例3】
【0102】
この実施例では、配合物にフルクトオリゴ糖を添加して、繊維含量を増強することができる。生地の調製、充填、成形、および焼きは、実施例1に記載のやり方で実施することができる。フルクトオリゴ糖は、以下に列挙した配合に従って、粉100lb当たり約22lbの量で添加することができる。
【0103】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟らかい質感およびフィリングの重量に対して少なくとも約10重量%の含水量を有する焼いたフィリングと、澱粉を含み且つサクサクした質感を有する焼いたケーシングとを含み、前記焼いたケーシングが、ケーシングの重量に対して少なくとも約6重量%の含水量および少なくとも約75℃のガラス転移温度(Tg)を有し、前記ケーシングの澱粉のエンタルピーが、示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約6J/g未満であることを特徴とする、サクサクした充填焼き菓子。
【請求項2】
前記澱粉が、アルファ化澱粉および小麦粉に含まれる澱粉を含むことを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項3】
前記アルファ化澱粉がアルファ化もちトウモロコシ澱粉を含むことを特徴とする、請求項2に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項4】
前記ガラス転移温度(Tg)が少なくとも約85℃であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項5】
前記ガラス転移温度(Tg)が約100℃から約125℃であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項6】
前記ケーシングがクラッカーであり、前記フィリングがフルーツフィリングであることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項7】
前記ケーシングが小麦粉およびアルファ化澱粉を含み、アルファ化澱粉の量が、ケーシングの重量に対して約5重量%から約30重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項8】
前記ケーシングが小麦粉およびアルファ化澱粉を含み、アルファ化澱粉の量が、ケーシングの重量に対して約10重量%から約25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項9】
前記ケーシングの含水量が、約7重量%から約10重量%であり、前記フィリングの含水量が約12重量%から約25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項10】
前記ケーシングが小麦粉およびアルファ化澱粉を含み、前記ケーシングの澱粉のエンタルピーが示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約5J/g未満であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項11】
ケーシングの量が、ケーシングおよびフィリングの重量に対して約40重量%から約60重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項12】
前記フィリングが、サクサクした充填焼き菓子の両端部で可視であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項13】
前記アルファ化澱粉が少なくとも約95%ゼラチン化されていることを特徴とする、請求項7に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項14】
前記フィリングが、フルーツフィリング、野菜フィリング、およびチーズフィリングからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項15】
前記ケーシングの固形糖含量が、ケーシングの重量に対して約20重量%未満であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項16】
前記フィリングが、ケーシングの縁部まで充填されていることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項17】
2mm直径のプローブを有する質感分析器で測定して、少なくとも約400gの変形またはピーク力に耐性を有することを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項18】
前記フィリングおよび前記ケーシングが、約70%未満のおよそ同じ相対湿度を有し、前記ケーシングの含水量が約7重量%から約10重量%であり、前記フィリングの含水量が約12重量%から約25重量%であることを特徴とする、請求項1に記載のサクサクした充填焼き菓子。
【請求項19】
a)粉および水を含む成分を混合して生地を形成するステップ、
b)前記生地を下方生地シートおよび上方生地シートにシート化するステップ、
c)前記下方生地シート上にフィリングを配置するステップ、
d)前記フィリングおよび前記下方生地シート上に前記上方生地シートを積層して積層を得るステップ、
e)片部の2つの両端部が露出したフィリングを有するように、前記積層を片部にカットするステップ、ならびに
f)前記片部を焼いて、軟らかい質感およびフィリングの重量に対して少なくとも約10重量%の含水量を有する焼いたフィリングと、澱粉を含み且つサクサクした質感、ケーシングの重量に対して少なくとも約6重量%の含水量、および少なくとも約75℃のガラス転移温度(Tg)を有する焼いたケーシングとを含み、前記ケーシングの澱粉のエンタルピーが、示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約6J/g未満である、サクサクした充填焼き菓子を得るステップ
を含むことを特徴とする、サクサクした充填焼き菓子の製造方法。
【請求項20】
前記澱粉が、アルファ化澱粉および小麦粉に含まれる澱粉を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アルファ化澱粉が、アルファ化もちトウモロコシ澱粉を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ガラス転移温度(Tg)が少なくとも約85℃であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ガラス転移温度(Tg)が約100℃から約125℃であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記焼いたケーシングが、小麦粉およびアルファ化澱粉を含み、アルファ化澱粉の量が、前記ケーシングの重量に対して約5重量%から約30重量%であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記焼いたケーシングが、小麦粉およびアルファ化澱粉を含み、前記ケーシングの澱粉のエンタルピーが、示差走査熱量測定(DSC)で測定して澱粉約5J/g未満であることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記フィリングが、ケーシングの縁部まで充填されていることを特徴とする、請求項25に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−219489(P2009−219489A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−46909(P2009−46909)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】