説明

高流動性エンジニアリング熱可塑性組成物およびそれから製造される製品

熱可塑性ホストポリマーと、低分子量の流動性改質剤ポリマーとから製造される高流動性エンジニアリング熱可塑性組成物、およびそれから製造される製品を開示する。流動性改質剤ポリマーは、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーとを重合させることによって製造される。高流動性エンジニアリング熱可塑性プラスチックは、衝撃強さまたは耐熱性を犠牲にすることなく、改善された流動性および加工性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、熱可塑性ポリマーおよび低分子量のビニル芳香族/(メタ)アクリレート高分子改質剤から製造される、成形用途のための流動性改質熱可塑性組成物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2002年12月10日出願の米国仮特許出願第60/432,269号の優先権を主張する正式出願である。
【背景技術】
【0003】
[発明の背景]
様々なエンジニアリング用途で使用するための熱可塑性プラスチックおよび熱可塑性ブレンドは、高耐熱性、高衝撃強さ、高成形性および加工性、ならびに場合によっては良好な透明性などの種々の有利な物理特性を示さなければならない。エンジニアリング熱可塑性プラスチックの中でも、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステルおよびポリエーテルは、その強靭性および比較的高い軟化温度のために、特に普及している成分である。これらの有利な機械特性および熱特性、ならびにその良好な電気特性によって、これらの樹脂は、電子機器用ハウジングおよび自動車部品分野を含む様々な分野において、エンジニアリングプラスチックに広く適用可能とされる。しかしながら、その溶融流動特性が比較的悪いため、ポリカーボネートおよびその他のエンジニアリングプラスチックは1種以上の更なるポリマーおよび添加剤とブレンドして、その溶融流動特性を改善することが多い。一般に、エンジニアリング熱可塑性プラスチックの溶融流動特性を改善するためのこれまでの試みは、より低い融点の物質および/またはより低い溶融粘度を有するより安価なポリマーを熱可塑性プラスチック中に取り込むことなどであった。残念なことに、得られるブレンドは、一般に、衝撃強さおよび耐熱性などのその他の価値の高い特徴を犠牲にして、改善された溶融流動特性を示す。特に、熱可塑性材料が薄壁であり、高衝撃強さおよび耐熱性とを必要とする電子機器用ハウジングの成形に使用される場合には、この代償は許容できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、高い耐熱性および衝撃強さなどのその他の望ましい物理特性を保持しながら、成形性および加工性の増大を示す熱可塑性組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[発明の概要]
本発明は、熱可塑性プラスチックおよび熱可塑性ブレンドのための流動性促進剤として低分子量のビニル芳香族/(メタ)アクリレートポリマーを使用して、衝撃および熱に対する耐性の良好なバランスを保持しながら、成形用途のために成形性および流動性が改善された熱可塑性組成物を提供する。本発明の熱可塑性組成物は、電子機器、自動車部品、器具および他の物品のための不透明および透明ハウジング、特に成形中に高せん断力にさらされるものを成形するのに適する。代表的な用途は、携帯電話、ラップトップコンピュータ、パーソナルコンピュータのCPUとモニター、およびその他の電子機器のためのハウジング、ならびに自動車のコントロールおよびインジケータパネル、ミラー、ヘッドランプなどのためのハウジングなどの大型成形部品または薄壁成形部品である。組成物は、層間剥離または添加剤のジューシングが発生することなく、場合によっては組成物の透明性を損なうことなく、優れた流動性および成形性、ならびに優れた表面の外観と高い機械特性、熱特性および衝撃特性とを保証する。
【0006】
本発明の1種の態様は、ホストポリマーと、低分子量を有する流動性改質剤(流れ調整剤)ポリマーとから製造される高流動性熱可塑性組成物を提供し、この流動性改質剤ポリマーは15,000未満の重量平均分子量を有すると共に、少なくとも1種の(メタ)アクリレートおよび任意の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから製造され、流動性改質剤とホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)は2.2未満である。好ましい実施形態は、1.75未満のR.E.D.を有する。また、好ましい実施形態では、流動性改質剤の重量平均分子量は10,000未満である。非常に好ましい実施形態は、5,000の重量平均分子量を有する流動性改質剤を含む。
【0007】
本発明の別の態様は、流動性改質剤ポリマーと、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、透明ABS樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるホストポリマーとから製造される高流動性熱可塑性組成物を提供する。非常に好ましい実施形態は、ポリカーボネートホストポリマーまたはポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンドを含む。あるいは、ホストポリマーは、ポリアミド、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、PETG、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0008】
ホストポリマーは約50〜約99重量パーセントの量で存在し、流動性改質剤ポリマーは約1〜約20重量パーセントの量で存在する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この流動性改質剤ポリマーは、(b1)1〜100%の(メタ)アクリレートモノマーと、(b2)0〜99%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと、(b3)(b1)および(b2)と共重合することができる0〜99%の別のモノマーまたはモノマー混合物とを含む。好ましい実施形態は、約1〜約70重量パーセントの少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、約30〜約99重量パーセントの少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとからなる流動性改質剤ポリマーを含む。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物は、ホストポリマーよりも少なくとも5パーセント高いメルトフローインデックスを有する。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強さは、ホストポリマーのノッチ付アイゾッド衝撃強さと40%以下異なる。
【0012】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物の熱変形温度は、ホストポリマーの熱変形温度と10℃以下異なる。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物のビカー軟化温度は、ホストポリマーのビカー軟化温度と10℃以下異なる。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物は、ホストポリマーの曇り度と約1%未満異なる曇り度を有する透明組成物である。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、流動性改質剤ポリマーおよびホストポリマーから製造される高流動性ポリマー組成物を提供し、この組成物は少なくとも1種の添加剤をさらに含み、この添加剤は、衝撃改質剤、鉱物充填剤、顔料、染料、または難燃剤である。
【0016】
本発明の更なる態様は、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンまたはスチレン誘導体であり、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーが、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸、および無水マレイン酸からなる群から選択される流動性熱可塑性組成物を提供する。
【0017】
本発明による適切な組成物の1つの非限定的な例は、(A)ポリカーボネート(PC)類、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(PC/ABS)ブレンド、ポリエステルおよびポリエステルベースのブレンド、ポリアミドおよびポリアミドベースのブレンド、ポリフェニレンエーテル(PPE)ベースのブレンド、および透明ABSから選択される、50〜99%のエンジニアリング熱可塑性プラスチック、(B)(b1)1〜100%の(メタ)アクリレートモノマー、(b2)0〜99%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、ならびに(b3)(b1)および(b2)と共重合可能な0〜99%の他のモノマーまたはモノマー混合物を重合させることによって得られる、1〜20%の低分子量ポリマー、(C)0〜20%の衝撃改質剤、(D)0〜50%の鉱物充填剤または補強剤、(E)0〜10%の適切な顔料または染料、および(F)0〜25%の難燃剤または難燃剤混合物を含有する。
【0018】
本発明の別の態様は、約15,000未満の重量平均分子量(Mw)を有する流動性改質剤ポリマーとの混合によって、ホストポリマーの流動性を増大させるための方法を提供する。この場合も、流動性改質剤ポリマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーおよび任意の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーから製造され、流動性改質剤とホストポリマーとの間の相対エネルギー差は2.2未満である。
【0019】
本発明のさらに別の態様は、ホストポリマーおよび流動性改質剤ポリマーから製造される高流動性組成物から製造される成形物品を提供する。
【0020】
本発明の別の態様は、物品が、自動車部品または電子機器用ハウジングである成形物品を製造するための方法を提供する。物品は、コンピュータ、コンピュータモニター、キーボード、プリンタ、ファックス機、電話、携帯電話などの移動通信装置、カメラ、電源プラグ、電気スイッチ、電気コネクタ、電気コントロールパネル、遠距離通信コネクタ、遠距離通信スイッチ、自動車コントロールパネル、自動車インジケータパネル、ミラーの取付台、自動車ヘッドランプ、自動車バンパー、自動車の計器盤、自動車ボンネット、エンジンカバー、発電機カバー、バッテリーカバー、空気マニホールド、自動車ホースおよびコネクタ、トラクターボンネット、自動車パネル、トラクターパネル、芝刈り機デッキ、芝生用品、写真複写機や写真複写機用トレイを含む事務機器、コーヒーメーカー、アイロン、電気掃除機および扇風機などの家庭用電気機器、テレビ、DVDプレーヤー、冷蔵庫、洗濯機、および乾燥機などの大型器具用のハウジングか、あるいはコンピュータ、コンピュータモニター、キーボード、プリンター、ファックス機、電話、携帯電話などの移動通信装置、カメラ、電源プラグ、電気スイッチ、電気コネクタ、電気コントロールパネル、遠距離通信コネクタ、遠距離通信スイッチ、自動車コントロールパネル、自動車インジケータパネル、ミラーの取付台、自動車ヘッドランプ、自動車バンパー、自動車の計器盤、自動車ボンネット、エンジンカバー、発電機カバー、バッテリーカバー、空気マニホールド、自動車ホースおよびコネクタ、トラクターボンネット、自動車パネル、トラクターパネル、芝刈り機デッキ、芝生用品、写真複写機や写真複写機用トレイを含む事務機器、コーヒーメーカー、アイロン、電気掃除機および扇風機などの家庭用電気機器、テレビ、DVDプレーヤー、冷蔵庫、洗濯機、および乾燥機などの大型器具用の部品であってもよい。
【0021】
本発明の別の態様は、ホストポリマーおよび低分子量の流動性改質剤ポリマーを含む高流動性熱可塑性組成物を提供し、この流動性改質剤ポリマーはアクリロニトリルを実質的に含有しない。
【0022】
本発明の別の態様は、ホストポリマーと、約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む流動性改質剤ポリマーとを混合することからなる、ホストポリマーの流動性を増大させるための方法であって、組成物は、流動性改質剤ポリマーとホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする方法を提供する。
【0023】
本発明の別の態様は、ホストポリマーと、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーおよび任意に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む低分子量の流動性改質剤ポリマーとを混合して、流動性改質熱可塑性組成物を形成する工程、およびこの流動性改質熱可塑性組成物を成形する工程を有する、高流動性エンジニアリング熱可塑性組成物を製造する方法であって、この混合および成形工程は最高加工温度を有し、さらにこの流動性改質剤ポリマーは、最高加工温度において約10%未満の重量損失を受ける方法を提供する。この方法の様々な実施形態では、流動性改質剤ポリマーの重量平均分子量は約15,000未満であり、最高加工温度は少なくとも180℃である。
【0024】
本発明の別の態様は、ホストポリマーと、約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む流動性改質剤ポリマーとを混合して、流動性改質剤ポリマーとホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする流動性改質熱可塑性組成物を形成する工程、および、流動性改質熱可塑性組成物を成形する工程からなる高流動性熱可塑性組成物の加工方法であって、混合および成形工程が約350℃までの最高加工温度を有し、さらに流動性改質剤ポリマーが、最高加工温度において約10%未満の重量損失を受ける方法を提供する。最高加工温度は180°Cを超えることが好ましい。
【0025】
本発明の別の態様は、混合および成形工程が100,000秒−1を超えるせん断速度で実行される、高流動性熱可塑性組成物の加工方法を提供する。代替方法は、300,000秒−1または500,000秒−1を超えるせん断速度で実行され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[発明の詳細な説明]
本発明の第1の態様は、低分子量のビニル芳香族/(メタ)アクリレート流動性改質剤ポリマーとブレンドされたホストポリマーから製造される高流動性熱可塑性組成物を提供する。
【0027】
本発明は、エンジニアリング熱可塑性組成物において、低Mwのビニル芳香族/(メタ)アクリレート樹脂を流動性促進剤として使用することができ、特に非常に高いせん断速度にさらされる射出成形用に成形性(流動性としても知られる)が改善された、かかる組成物が提供されるという本発明者らの発見に基づく。10,000秒−1よりも大きい、非常に高いせん断速度が含まれる。また、非常に高いせん断速度には、50,000秒−1よりも大きいせん断速度、100,000秒−1よりも大きいせん断速度、200,000秒−1よりも大きいせん断速度、300,000秒−1よりも大きいせん断速度、400,000秒−1よりも大きいせん断速度、500,000秒−1よりも大きいせん断速度、および1,000,000−1よりも大きいせん断速度が含まれる。改質された熱可塑性プラスチックから製造された成形製品は、層間剥離、添加剤のジューシング(juicing)、またはブルーミングの問題なしに、あるいはこの当する場合には透明性を損なうことなく、衝撃特性、機械特性、および耐熱特性の良好なバランスを維持している。
【0028】
熱可塑性組成物は、機械特性、衝撃特性、および熱特性の満足できるバランス、ならびに必要とされる場合には透明性を損失することなく、ますます薄い壁が要求される電子機器用ハウジングおよび自動車部品に有用である。さらに、薄壁または大型の複雑な部品の成形には、極端な温度条件を用いることにより、粘度、したがってモールド内でのせん断速度を最小限にすることが必要とされる。本発明の流動性改質剤は、所与の温度で、現在入手可能な他の流動性改質剤よりもはるかに低い溶融粘度を有する配合物を提供する。このことは、成形プロセス中のせん断速度および応力の低下を提供し、および/または、より低い温度の成形を可能にし、したがって、エネルギーコストの節約が図れる。
【0029】
本発明の特定の理論へ束縛されることなく、本発明者らは、流動性改質剤(FM)の優れた性能が、その非常に高いホストポリマーとの適合性および/または混和性によって説明され得ることを確信している。本発明において、適合性および/または混和性は、本発明では、流動性改質剤とホストポリマーの間の分子間相互作用を最適化することによってコントロールされる。これらの相互作用には、ロンドン分散力および双極子間相互作用を含むファンデルワールス力および/または水素結合が含まれるが、これらに限定されない。所与のホストポリマーとの適度に高い分子間相互作用と、適度に低い分子量との組み合わせを有する流動性改質剤は、適合性の最適化への解答を提供すると思われる。ホストポリマーとのこの高い適合性によって、流動性改質剤は、熱特性、機械特性、および衝撃特性に対する悪影響を最小限にしながら、流動性を最大限にし、組成物の溶融粘度を最小限にすることができると思われる。また、この高い適合性は、高温および高せん断速度の成形技術分野においてよく起こる層間剥離、ブルーミング、ジューシング、およびその他の相分離効果を防止すると思われる。高い適合性は、さらに、透明ホストポリマーと流動性改質剤との間にかなりの屈折率(R.I.)のミスマッチが存在するときでさえ、本発明の透明組成物で観察される高い透明性に寄与していると思われる。
【0030】
流動性改質剤ポリマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、任意に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとを重合させることにより製造される低分子量ポリマーである。低分子量の流動性改質剤ポリマーは、場合によっては、得られる熱可塑性組成物の衝撃強さおよび耐熱性などの機械特性に実質的に悪影響を及ぼすことなく、流動性促進剤としての役割を果たすのに十分低い分子量を有するいかなる流動性改質剤ポリマーでもよい。本発明の様々な実施形態では、流動性改質剤は、ゲル透過クロマトグラフィを用いて測定される15,000未満のMを有するポリマーである。したがって、低分子量の流動性改質剤ポリマーには、10,000未満のMを有するポリマー、9,000未満のMを有するポリマー、8,000未満のMを有するポリマー、7,000未満のMを有するポリマー、6,000未満のMを有するポリマー、5,000未満のMを有するポリマー、4,000未満のMを有するポリマー、3,000未満のMを有するポリマー、2,000未満のMを有するポリマー、1,000未満のMを有するポリマー、および500未満のMを有するポリマーも含まれる。
【0031】
低分子量を有することに加えて、そのモノマー組成により、これらの流動性改質剤はホストポリマーと実質的に適合性でもある。所与のブレンドの適合性を決定する1つの方法は、ポリマーハンドブック、第4版、675〜688頁、およびハンセンの溶解パラメータ−ユーザーズハンドブック(Hansen Solubility Parameters−A Users Handbook)、C.M. Hansen著、CRC Press、2000年、1〜13頁(参照によって本明細書に援用される)に記載されるように、流動性改質剤とホストプラスチックの間の溶解パラメータの差を計算することによる。溶解パラメータの差は次のように定義される。
ij=[4(δDi−δDj+(δPi−δPj+(δHi−δHj0.5
式中、iは流動性改質剤、jはホストプラスチック、δは分散溶解パラメータ、δは極性溶解パラメータ、δは水素結合溶解パラメータを示す。
【0032】
一般に、ホストポリマーと流動性改質剤との間の溶解パラメータの差を低減することによって、熱可塑性組成物の機械特性は最大限にされ、層間剥離、ブルーミング、ジューシング、およびその他の相−分離タイプの問題の悪影響は最小限にされる。適合性の非常に良好な尺度は、ハンセンの溶解パラメータ−ユーザーズハンドブック、C.M. Hansen著、CRC Press、2000年、1〜13頁に定義されるように、流動性改質剤とホストプラスチックとの間の相対エネルギー差(R.E.D.数)によって決定される。R.E.D.数は、次のように定義される。
R.E.D.=Rij/R
式中、Rは、ハンセンの溶解パラメータ−ユーザーズハンドブック、C.M. Hansen著、CRC Press、2000年、1〜13頁に定義されるように、ホストプラスチックの相互作用半径である。一般に、R.E.D.数を低減することによって、熱可塑性組成物の機械特性は最大限にされ、層間剥離、ブルーミング、ジューシング、およびその他の相−分離タイプの問題の悪影響は最小限にされる。したがって、様々な実施形態において、組成物は、約2.2未満のR.E.D.数を有し得る。好ましくは、R.E.D.数は1.75未満である。これには、R.E.D.数が約1.0未満、約0.8未満、約0.6未満、またはさらに約0.5未満である実施形態が含まれる。
【0033】
改質熱可塑性組成物の改善された流動特性は、未改質ホストポリマーのメルトフローインデックスと比較して、改質ホストポリマー(すなわち、ホストポリマーと流動性改質剤ポリマーを合わせたもの)のメルトフローインデックス(MFI)が増大することによって示すことができる。MFIは、所定の温度および負荷で、オリフィスを通る熱可塑性プラスチックの押出速度の尺度を提供する。MFIについてのASTM D−1238試験は、所与の試験片のMFIを測定するための一般的な標準化試験を規定している。ホストポリマーに添加される流動性改質剤の量は、ホストプラスチックおよび流動性改質剤の性質、ならびに最終製品の対象とされる用途などの因子によって大幅に変動し得るが、本発明の様々な実施形態において、流動性改質剤は、ASTM D−1238で測定される改質熱可塑性プラスチック(すなわち、ホストポリマーと流動性改質剤ポリマーを合わせたもの)のMFIを、未改質熱可塑性プラスチックと比較して、少なくとも5%増大させるのに十分な量で存在し得る。これには、ASTM D−1238で測定されるMFIが、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、および少なくとも50%増大される実施形態が含まれる。様々な実施形態において、高流動性熱可塑性組成物は、約1〜約20重量パーセントの流動性改質剤ポリマーを含有することができる。これには、約1〜約10重量パーセントの流動性改質剤ポリマーを含有する組成物、および約1〜約5重量パーセントの流動性改質剤ポリマーを含有する組成物が含まれる。
【0034】
本発明の流動性改質剤の利点は、衝撃強さまたは耐熱性を犠牲にすることなく、改善された流動性、すなわち加工性を提供することである。このことは、改質熱可塑性組成物およびそれから製造された製品の高い衝撃強さによって実証され得る。材料の衝撃強さは、単に、材料の試験片を破壊するために必要とされるエネルギー量の尺度である。衝撃強さについてのASTM D−256試験は、ノッチ付試験片の衝撃強さ(すなわち、「ノッチ付衝撃強さ」)を測定するための一般的な標準化試験を規定している。本発明の改質熱可塑性プラスチックのノッチ付衝撃強さは、ホストプラスチックおよび流動性改質剤の性質、ならびに改質熱可塑性プラスチック自体の対象とされる用途および加工条件を含む様々な因子に応じて変動し得る。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、改質ホストポリマーおよびそれから製造される組成物は、未改質ホストプラスチックと比較して、わずか−40%変化するノッチ付衝撃強さを示す。これには、ASTM D−256に従って測定される衝撃抵抗が、−30%、−20%、−10%、および0%変化する実施形態が含まれる。本発明のいくつかの実施形態では、改質ホストポリマーおよびそれから製造される組成物は、未改質ホストプラスチックと比較した場合に、+40%変化するノッチ付衝撃強さを示す。これには、ASTMD−256に従って測定される衝撃抵抗が、+30%、+20%、+10%および0%変化する実施形態が含まれる。
【0035】
改質熱可塑性組成物の耐熱性は、組成物の熱変形温度(HDT)によって、あるいは組成物のビカー軟化温度(VST)によって測定することができる。HDTまたはVSTは、材料の試験片が曲げ荷重を受ける場合に任意の変形が生じる温度の尺度を規定している。HDTおよびVSTについてのASTM D−648試験は、試験片のHDTを測定するための一般的な標準化試験を規定している。ノッチ付衝撃強さと同様に、本発明の改質熱可塑性プラスチックのHDTまたはVSTは、ホストプラスチックおよび流動性改質剤の性質、ならびに改質熱可塑性プラスチック自体の対象とされる用途および加工条件を含む様々な因子によって変動し得る。しかしながら、本発明のいくつかの実施形態では、改質ホストポリマーおよびそれから製造される組成物は、未改質ホストプラスチックと比較した場合に、ASTM D−648に従って測定されるHDTまたはVSTが−10℃変化することが示される。これには、ASTM D−648に従って測定されるHDTが、−7℃、−5℃、−2℃、および0℃変化する実施形態が含まれる。本発明のいくつかの実施形態では、改質ホストポリマーは、未改質ホストプラスチックと比較した場合に、ASTM D−648に従って測定されるHDTまたはVSTが+10℃まで変化することが示される。これには、ASTM D−648に従って測定されるHDTが、+7℃、+5℃、+2℃、および0℃変化する実施形態が含まれる。
【0036】
特定の用途では、透明な熱可塑性組成物を提供することが望ましい。現在入手可能な流動性促進剤の多くとは異なり、本発明の流動性促進剤は、ポリカーボネート、透明ポリエステル、および透明ABS樹脂などの透明熱可塑性ホストポリマーの透明度を大幅に低下させることはない。したがって、高流動性の透明熱可塑性プラスチックは、透明エンジニアリング熱可塑性プラスチックから始めて、低分子量の流動剤を添加することで得られる。流動性改質熱可塑性プラスチックの透明度は、材料の曇り度によって測定することができる。曇り度は、透明材料を通過するときの光の散乱の尺度である。曇り度についてのASTM D−1003試験は、試験片の曇り度を測定するための一般的な標準化試験を規定している。透明ホストポリマーを組み合わせて本発明の流動性改質剤を用いると、未改質ホストプラスチックの曇り度と比較した場合に、ASTM D−1003により測定される曇り度が+1.0%変化した、高流動性の透明熱可塑性組成物が得られる。これには、ASTM D−1003に従って測定される曇り度が、+0.7%、+0.5%、+0.2%および0%変化する実施形態が含まれる。また、これには、ASTM D−1003に従って測定される曇り度が、−1.0%、−0.7%、−0.5%、−0.2%、および0%変化する実施形態も含まれる。
【0037】
ホストポリマーは、成形用途で使用するどのエンジニアリング熱可塑性プラスチックまたは熱可塑性プラスチックのブレンドでもよい。適切なホストポリマーの例には、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、および透明ABS樹脂が含まれるが、これらに限定されない。その有利な機械特性のために、ポリカーボネート、またはアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂などのエラストマー状グラフトポリマー樹脂とポリカーボネートとのブレンドは、特に適切なホストポリマーである。
【0038】
組成物中に含有されるポリカーボネートホストポリマーは、当この技術分野において知られるどの脂肪族または芳香族ホモポリカーボネートまたはコポリカーボネートでもよい。これらのポリカーボネートは、従来のプロセスに従って製造することができる。本発明の組成物において使用するのに適する熱可塑性芳香族ポリカーボネートには、二価フェノールと、ホスゲンなどのカーボネート前駆体またはカーボネート化合物との反応によって一般的に製造されるポリカーボネートが含まれる。適切な二価フェノールの例としては、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルフィド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)−ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホキシド、ビス−(ヒドロキシフェニル)−スルホン、α,α−ビス−(ヒドロキシフェニル)−ジイソプロピルベンゼン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
適切な二価フェノールの具体的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)と、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカンと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカンと、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテルと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのジヒドロキシジアリールスルフィドと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのジヒドロキシジアリールスルホキシドと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのジヒドロキシジアリールスルホンと、4,4’−ジヒドロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニルとが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
PC/ABSまたは透明ABSホストポリマーで使用するためのABS樹脂は、当この技術分野においてよく知られている。ホストポリマーにおいて使用するのに適するABS樹脂は、一般に、ジエンゴムにグラフトされた剛性グラフトポリマーから形成される。通常、ABS樹脂は、ブタジエンエラストマーをベースとした不連続エラストマー相上にスチレンおよびアクリロニトリルモノマーから形成される連続相を有する。これらの樹脂において、2種の相は、通常、スチレン/アクリロニトリルコポリマーをポリブタジエンにグラフトさせることによって結合される。しかしながら、本発明で使用するのに適切なABS樹脂の範囲は、スチレン以外のモノビニリデン芳香族モノマーと、アクリロニトリルモノマー以外の、またはアクリロニトリルモノマーに加えて、アクリレートまたはメタクリレートモノマーとから形成されるエラストマー樹脂も包含する。さらに、ジエンゴムは、ブタジエンゴムに限定されない。PC/ABSホストポリマーブレンド中のPCおよびABSの相対的な割合は広範囲にわたって変動し、組成物の対象とされる用途に部分的に依存し得る。1種の典型的な実施形態では、PC/ABSホストポリマーブレンドは、約95〜約50重量パーセントのPCおよび約5〜約50重量パーセントのABSを含有する。
【0041】
透明な用途において流動性改質熱可塑性プラスチックが使用される場合、透明ABSは、特に適切なホストポリマーである。従来の透明ABS樹脂は、ポリブタジエンの存在下でメタクリル酸メチル(MMA)、スチレン(ST)およびアクリロニトリル(AN)をグラフト重合させることによって製造されるゴム強化樹脂である。グラフト重合により得られるMMA/ST/ANターポリマーは、ポリブタジエンの屈折率に近い屈折率を示す。
【0042】
ポリアミドは、本発明の組成物において使用するのに適切なホストポリマーの別の例である。ポリアミド(PA)はよく知られており、市販されている。これらの熱可塑性ポリマーは、ポリマー主鎖中に反復性アミド基を含有する一連のポリマーを包含する。様々なポリアミドの混合物も、様々なポリアミドのコポリマーも、ホストポリマーとして有用である。ポリアミドは、米国特許第2,071,250号、同第2,071,251号、同第2,130,523号、同第2,130,948号、同第2,241,322号、同第2,312,966号、および同第2,512,606号に記載される(これらは、参照によって本明細書中に援用される)ような、多数のよく知られたプロセスによって得ることができる。例えば、ナイロン−6は、カプロラクタムの重合生成物である。ナイロン−6,6は、アジピン酸および1,6−ジアミノヘキサンの縮合生成物である。同様に、ナイロン4,6は、アジピン酸と1,4−ジアミノブタンとの間の縮合生成物である。アジピン酸に加えて、ナイロン製造用としてその他の有用な二酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ならびにテレフタル酸およびイソフタル酸などが挙げられる。その他の有用なジアミンとしては、m−キシリエンジアミン、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。カプロラクタムと二酸およびジアミンとのコポリマーも有用である。本発明で使用するのに適切なポリアミドの例としては、PA6、PA6,6、PA6,12、PA11、PA12、およびPA6,9として知られているポリアミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
ポリエステルも、組成物中のホストポリマーとして使用され得る。ポリエステルは当この技術分野においてよく知られており、ヒドロキシカルボン酸またはジカルボン酸とジヒドロキシ化合物との重縮合により生成された様々なポリマーを含む。本発明での使用に適するポリエステルは熱可塑性ポリエステルであり、ポリマーの骨格に繰返しカルボン酸エステル基を所有する全てのへテロ鎖巨大分子化合物を含む。様々なポリエステルの混合物も、様々なポリエステルコポリマーも、ホストポリマーとして有用である。適切なポリエステルの例としては、ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、PETG、ポリ(エチレン−co−シクロヘキシルジメタノールテレフタレート)、非晶質ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、およびポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
またポリフェニレンエーテルも、本発明の組成物においてホストポリマーとして使用するのに適切である。ポリフェニレンエーテル樹脂という用語は、非置換のポリフェニレンエーテルポリマー、置換ポリフェニレンエーテルポリマー(芳香環が置換される)、およびこれらのブレンドを含む。様々なポリフェニレンエーテルの混合物も、様々なポリフェニレンコポリマーもホストポリマーとして有用である。ポリフェニレンオキシド(PPO)は、ポリフェニレンエーテルの1種の非限定的な例である。
【0045】
また、上記に挙げられた2種以上の熱可塑性ポリマーのブレンド、あるいは上記に挙げられた熱可塑性ポリマーと、その他のポリマーとのブレンドも、ホストポリマーとして有用であり得る。適切なブレンドの例としては、PC/PBT、PC/PETブレンドなどのポリカーボネート/ポリエステルブレンド、ポリアクリレートとポリスチレンとのブレンド、ポリアミド/ABSおよびポリアミド/ポリオレフィン(ポリエチレン、またはポリプロピレンなど)などのポリオレフィンまたはABS樹脂を含有するブレンド、ならびにポリフェニレンエーテルとポリスチレン(高衝撃性ポリスチレンを含む)またはポリアミドとのブレンドが挙げられる。ホストポリマー自体が2種以上のポリマーのブレンドである場合、本明細書の全体を通して引用される重量パーセントは、マルチポリマーブレンドの全重量パーセントに関係する。
【0046】
本発明の流動性改質剤は、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、任意の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとを重合させることにより製造される低分子量ポリマーおよびコポリマーである。本明細書で使用されているように、(メタ)アクリレートという用語は、アクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーの両方を示すことが意図されている。いくつかのホストポリマー、特にABSなどのグラフトポリマー樹脂を含むものは、それ自体がビニル芳香族モノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーの両方を含有し得るが、低分子量の流動性改質剤は、本発明の組成物の別個の成分であることに留意すべきである。特に、流動性改質剤は、ジエンベースのグラフトポリマーまたは他のゴムベースのポリマーではない。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態では、流動性改質剤ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーのみを含有する。他の実施形態では、流動性改質剤ポリマーは、約1〜約99重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約99〜約1重量パーセントのビニル芳香族モノマーを含有する。これには、約1〜約70重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約30〜約99重量パーセントのビニル芳香族モノマーを含有する実施形態が含まれ、さらに、約1〜約80重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約20〜約99重量パーセントのビニル芳香族モノマーを含有する実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、流動性改質剤ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニル芳香族モノマーと重合することができる約0〜約99重量パーセントの少なくとも1種の他のモノマーまたは他のモノマーの混合物も含有する。これには、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニル芳香族モノマーと重合することができる約1〜約70重量パーセントの少なくとも1種の他のモノマーまたは他のモノマーの混合物を含有する実施形態が含まれる。
【0048】
典型的な(メタ)アクリレートモノマーには、官能性および非官能性の両方のモノマーが含まれる。適切なアクリレートモノマーおよびメタクリレートモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸i−アミル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸n−デシル、アクリル酸メチルシクロへキシル、アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−プロピル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸i−アミル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルブチル、メタクリル酸メチルシクロへキシル、メタクリル酸シンナミル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、およびメタクリル酸イソボルニルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用するためのエポキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの例には、アクリレートおよびメタクリレートの両方が含まれる。これらのモノマーの例としては、アクリル酸グリシジルおよびメタクリル酸グリシジルなどの1,2−エポキシ基を含有するものが挙げられるが、これらに限定されない。エポキシ官能性モノマーのメタクリル酸グリシジルは、特に適切なモノマーである。酸官能性モノマーの例には、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれるが、これらに限定されない。ヒドロキシ官能性モノマーの例には、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)およびメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)が含まれるが、これらに限定されない。アミン官能性モノマーの例には、メタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEMA)およびアクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAEA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
ビニル芳香族モノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、o−およびp−ジビニルベンゼン、α−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレンおよびp−クロロ−α−メチルスチレン、o、mまたはp−ブロモスチレン、ならびにジ−ブロモスチレンなどの、スチレンおよびスチレン誘導体の両方を含む。ビニルトルエンは、流動性改質剤において使用するのに適する芳香族モノマーの更なる例である。
【0050】
ビニル芳香族モノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーに加えて、改質剤ポリマーは、芳香族ビニルモノマーおよびメタクリレートモノマーと共重合することができる他のモノマーを含むことができる。このような更なるモノマーとしては、無水マレイン酸、マレイン酸とそのモノエステルおよびジエステル、フマル酸とそのモノエステルおよびジエステル、酢酸ビニルおよびビニルアルコールのエステル、α−オレフィンおよびジエンモノマー、塩化ビニル、アクリロニトリルがあるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明の様々な実施形態において、改質ポリマーは、ニトリルまたはアクリロニトリルモノマーを含有しない。多くのニトリルおよびアクリロニトリルモノマーは有毒なので、このことは有利である。
【0052】
ホストポリマーおよび改質剤ポリマーに加えて、高流動性熱可塑性組成物は、任意に、衝撃改質剤、無機または鉱物充填剤、補強剤、顔料、染料、および難燃剤などの他の添加剤を含むことができる。
【0053】
熱可塑性組成物のための衝撃改質剤は当この技術分野においてよく知られており、市販されている。衝撃改質剤の例としては、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)衝撃改質剤などのアクリル系衝撃改質剤、スチレン−ブタジエン(SB)衝撃改質剤、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)衝撃改質剤、およびスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)衝撃改質剤を含む熱可塑性エラストマーベースの改質剤がある。
【0054】
熱可塑性組成物で使用するための無機および鉱物充填剤ならびに補強剤は、当この技術分野においてよく知られている。これらは、通常、熱可塑性組成物の機械強度および/または耐久性を改善する目的で、ポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂に添加される。例としては、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスビーズ、カーボンブラック、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化チタン、アルミナシリカアスベスト、タルク、クレーマイカおよび石英粉末が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記のいずれかの混合物が使用されてもよい。
【0055】
熱可塑性組成物と共に使用するための様々な難燃剤もよく知られている。恐らく、これらのうち最も普及しているのは、ホスフェートおよびホスホネートベースの難燃剤である。従来からよく知られた難燃剤の例には、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、リン酸ジフェニルクレシル、レゾルシノールジフェニルホスフェートおよび種々の他のオリゴマーホスフェートなどの有機リン酸エステルがある。テトラフルオロエチレンポリマーも、難燃性を提供するために、このようなリン酸エステルと組み合わせて使用される。これらのリンベースの難燃剤の多くは、付随的に、流動性促進剤の役割を果たす。残念ながら、これらのホスフェートベースの難燃剤は、難燃性および流動性を改善することができるが、充填率が高い場合には、これらの難燃剤は、熱可塑性組成物の衝撃強さおよび耐熱性に対してマイナス効果を有する傾向もある。したがって、本発明の組成物によって提供される従来技術の組成物を越える1種の利点は、本明細書に開示される流動性改質剤を使用することで、難燃性、衝撃強さ、または耐熱性を犠牲にすることなく、ホスフェート難燃剤の量を低減できることである。
【0056】
本発明の流動性改質剤のもう1種の利点は、炎に対して中立であること、すなわち、組成物の難燃性を改善も低減もしないことである。本発明の流動性改質剤のもう1種の利点は、最も流動性が高い組成物における場合でも、UL−94試験において液だれを増大させないことである。したがって、流動性改質剤は、難燃性または非難燃性の組成物のいずれにおいても使用され得る。
【0057】
本発明の流動性改質熱可塑性プラスチックは、様々な用途にうまく適する。熱可塑性プラスチックから製造され得る製品の例には、電子機器、事務機器、例えば、コンピュータ、モニター、キーボード、プリンタ、ファックス機、電話、ノートブックおよびハンドヘルドコンピュータ、ならびにカメラ、電源プラグ、電気スイッチおよびコントロール、ならびに遠距離通信用コネクタおよびスイッチのためのハウジングが含まれるが、これらに限定されない。さらに、組成物を用いて、コントロールおよびインジケータパネル、ミラー、ヘッドランプ、自動車バンパーおよび計器盤、トラクターのボンネットおよびパネル、芝刈り機デッキ、芝生および庭園用具のハウジング、および様々な他の大型構造部品を含む、自動車産業における様々な部品を製造することができる。
【0058】
本発明のもう1種の態様は、流動性改質剤ポリマーと混合することによりホストポリマーの流動性を増大させる方法を提供する。この場合もやはり、改質剤ポリマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、任意の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーとから製造される。適切なホストポリマーおよび流動性改質剤ポリマーは、上記に詳細に記載されている。
【0059】
低分子量の流動性改質剤ポリマーは、当この技術分野においてよく知られている標準技法に従って製造することができる。このような技法には、連続バルク重合プロセス、バッチおよびセミバッチ重合プロセスが含まれるが、これらに限定されない。低分子量の流動性改質剤ポリマーにうまく適する製造技法は、米国特許第6,605,681号に記載されており、その開示全体は参照によって本明細書中に援用される。簡単に言うと、このプロセスは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、任意の少なくとも1種のビニル芳香族モノマーと、任意のビニル芳香族モノマーおよび(メタ)アクリレートモノマーと重合可能な1種以上の他のモノマーとを、反応器内に連続的に装入することを含む。反応器内に装入されるモノマーの割合は、上記で議論した流動性改質剤ポリマーに含まれる割合と同じでもよい。したがって、反応器には、(メタ)アクリレートモノマーのみが装入されてもよい。あるいは、反応器には、約1〜約99重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約99〜約1重量パーセントのビニル芳香族モノマーが装入されてもよい。これには、反応器に約1〜約70重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約30〜約99重量パーセントのビニル芳香族モノマーが装入される実施形態が含まれ、さらに、反応器に約1〜約80重量パーセントの(メタ)アクリレートモノマーおよび約20〜約99重量パーセントのビニル芳香族モノマーが装入される実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、反応器には、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニル芳香族モノマーと重合することができる約0〜約99重量パーセントの少なくとも1種の他のモノマーまたは他のモノマーの混合物も装入される。これには、(メタ)アクリレートモノマーおよび/またはビニル芳香族モノマーと重合することができる約1〜約70重量パーセントの少なくとも1種の他のモノマーまたは他のモノマーの混合物が反応器に装入される実施形態が含まれる。
【0060】
また、反応器には、任意の少なくとも1種のフリーラジカル重合開始剤および/または1種以上の溶媒が装入されてもよい。適切な開始剤および溶媒の例は、米国特許第6,605,681号において提供される。簡潔に言うと、本発明によるプロセスを実行するのに適切な開始剤は、一次反応で熱分解してラジカルになる化合物であるが、これは、重要な要素ではない。適切な開始剤には、90℃以上の温度におけるラジカル分解プロセスの半減期が約1時間のものが含まれ、さらに、100℃以上の温度におけるラジカル分解プロセスの半減期が約10時間のものが含まれる。100℃よりもかなり低い温度において約10時間の半減期を有するその他のものが使用されてもよい。適切な開始剤は、例えば、1−t−アミルアゾ−1−シアノシクロヘキサン、アゾ−ビス−イソブチロニトリルおよび1−t−ブチルアゾ−シアノシクロヘキサン、2,2’−アゾ−ビス−(2−メチル)ブチロニトリルなどの脂肪族アゾ化合物、ならびにt−ブチルペルオクトエート(t−butylperoctoate)、過安息香酸t−ブチル、過酸化ジクミル、過酸化ジ−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、過酸化ジ−t−アミルなどの過酸化物およびヒドロペルオキシドである。さらに、二過酸化物(di-peroxide)開始剤は、単独で使用されてもよいし、他の開始剤と組み合わせて使用されてもよい。このような二過酸化物開始剤には、1,4−ビス−(t−ブチルペルオキシカルボ)シクロヘキサン、1,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、および2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−へキシン、ならびにこの技術分野においてよく知られている他の同様の開始剤が含まれるが、これらに限定されない。開始剤の過酸化ジ−t−ブチルおよび過酸化ジ−t−アミルは、本発明での使用に特に適する。
【0061】
開始剤は、モノマーと共に添加され得る。開始剤は、任意の適切な量で添加され得るが、好ましくは、全開始剤は、供給材料中、モノマー1モルあたり約0.0005〜約0.06モルの量で添加される。このために、開始剤はモノマー供給材料と混合されるか、あるいは、別個の供給材料としてプロセスに添加される。
【0062】
溶媒は、モノマーと一緒に反応器に供給されてもよいし、別々に供給されてもよい。溶媒は、本明細書中に記載される連続工程の高温においてエポキシ官能性アクリルモノマーのエポキシ官能性と反応しないものを含む、当この技術分野においてよく知られているどんな溶媒でもよい。溶媒を適切に選択することによって、本発明の連続高温反応の間、ゲル粒子の形成を減少させることができる。このような溶媒には、キシレン、トルエン、エチル−ベンゼン、Aromatic−100 、Aromatic1509 、Aromatic2009 、(Aromaticは全てExxonから入手可能)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチル−イソブチルケトン、n−メチルピロリジノン、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。使用される場合、溶媒は、反応器条件およびモノマー供給材料を考慮して、所望される量で存在する。1種の実施形態では、1種以上の溶媒は、モノマーの全重量に対して40重量%までの量で存在し、特定の実施形態では15重量%までの量で存在する。
【0063】
反応器は、モノマーの重合を引き起こして、モノマーから高分子生成物を生成するために有効な温度で、有効な時間の間保持される。
【0064】
本発明の連続プロセスは、反応器中の短い滞留時間を可能にする。滞留時間は、一般に1時間よりも短く、15分よりも短い場合もある。もう1種の実施形態では、一般に滞留時間は、通常30分より短く、20分より短いこともある。
【0065】
本発明のプロセスは、連続構成において当この技術分野でよく知られる任意のタイプの反応器を用いて実行され得る。このような反応器には、連続攪拌タンク型反応器(「CSTR」)、管型反応器、ループ型反応器、押出機反応器、または連続動作に適した任意の反応器が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
プロセスを実行するのに適切であることが分かっているCSTRの形態は、連続装入されるモノマー組成物の温度を上昇させることで、取り除かれる以外の重合熱を除去して、予め選択された反応器内の重合温度を保持するのに十分な冷却コイルおよび/または冷却ジャケットが備えられたタンク型反応器である。このようなCSTRには、少なくとも1つ、通常は複数の攪拌機が備えられて、十分に混合される反応ゾーンを提供することができる。このようなCSTRは、20から100%充満までの様々な充填レベルで動作され得る(液体充満反応器、LFR)。1種の実施形態では、反応器は50%充満より多いが、100%充満より少ない。もう1種の実施形態では、反応器は100%液体充満である。
【0067】
本発明の低分子量の流動性改質剤ポリマーは、高い熱安定性を有する。したがって、これらのポリマーを他の流動性改質剤よりも高温で加工することが可能である。本発明の流動性改質剤の高い熱安定性は、本発明のプロセス自体が高温の連続プロセスで実行されるという事実と関連している。1種の実施形態では、温度は約180℃〜約350℃の範囲であり、これには、温度が約190℃〜約325℃の範囲である実施形態が含まれ、さらに、温度が約200℃〜約300℃の範囲である実施形態が含まれる。もう1種の実施形態では、温度は、約200℃〜約275℃の範囲でよい。その高温合成のために、本発明の流動性改質剤は、同様の温度範囲で加工されるエンジニアリング熱可塑性組成物において、後で混合および成形用途で使用される際に、高い熱安定性を示す。これに対して、現在入手可能な他の流動性改質剤は、これらの条件で劣化を受け、ガスを発生する。
【0068】
流動性改質剤ポリマーの熱安定性の1種の尺度は、熱重量分析(TGA)によって提供される。TGAは、高分子試験片の重量損失を温度の関数としてモニタリングする。様々な実施形態において、本発明の流動性改質剤は、改質熱可塑性組成物の加工で用いられる最高の加工温度において10パーセント未満の重量損失を特徴とする。これには、流動性改質剤の重量損失が5パーセント未満である実施形態が含まれ、さらに、改質熱可塑性組成物の最高加工温度において流動性改質剤の重量損失が3パーセント未満である実施形態が含まれる。いくつかの実施形態では、流動性改質剤の重量損失は、改質熱可塑性組成物の最高加工温度において1パーセント未満である。いくつかの実施形態では、改質熱可塑性組成物の最高加工温度において流動性改質剤の重量損失ゼロが測定される。
【0069】
ホストポリマー、流動性改質剤、および任意的な構成要素は、従来の任意の技法に従ってブレンドすることができる。例えば、シングルまたはツインスクリュー押出機、混合ロール、リボンブレンダーまたは同時混練機(co−kneader)を含む配混合装置で成分をブレンドすることができるが、これらに限定されない。熱可塑性組成物は、射出成形、ブロー成形、圧縮成形、および押出成形などのよく知られた種々の成形技法よって成形され得る。いくつかの場合には、流動性改質熱可塑性組成物の加工中に実現される最高加工温度は、少なくとも180℃であり、場合によっては、約180〜約350℃であろう。これには、実現される最高加工温度が少なくとも190℃であり、場合によっては約190〜約325℃である場合が含まれる。その他の実施形態では、最高加工温度は少なくとも200℃であり、約200〜約300℃、あるいはさらに約200〜約275℃であり得る。
【0070】
以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をさらに説明する。
〔実施例〕
【0071】
他に示されない限りは、以下において、例示される全ての混合は、250RPMで動作するLeistritzの40mmツインスクリュー同時回転押出機において実行した。クランピング力が50メートルトンであり、28mmの射出スクリューおよびProcanIIプロセスモニタリングシステムが取り付けられたBoy50射出成形機において、ASTM試験片の射出成形を行った。混合の前に、そして次に射出成形の前に、全ての熱可塑性プラスチックおよびコンパウンドを、それぞれ、熱可塑性プラスチック製造業者の推奨事項に従って乾燥させた。成形の前に水分レベルを0.05%(w/w)より低く保持した。
【0072】
[I.高流動性ポリカーボネート組成物]
[流動性改質剤の調製I]
射出成形用途のためのポリカーボネート配合物の高流動性を得るために、米国特許第6,605,681号(その開示全体は、参照によって本明細書中に援用される)の教示に従って、2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システム中で、以下にFM A−Dと呼ばれる4つの異なるスチレン−アクリル系流動性改質剤を設計および調製した。特定の合成条件および特徴付けのパラメータは、以下の表1に示す。以下で使用される略語は、次のように定義される。STY=スチレン、BMA=メタクリル酸ブチル、MMA=メタクリル酸メチル、GMA=メタクリル酸グリシジル、BA=アクリル酸ブチル、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル、A−100=Aromatic100溶媒(Exxon)。
【0073】
【表1】

【実施例1】
【0074】
[透明ポリカーボネートの射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、260℃〜290℃の温度プロファイルを用いて、97部のポリカーボネート(Lexan141、G.E.Plastics(GEP))を3部の本発明の流動性改質剤A、BおよびCと配合、乾燥ブレンド、および混合した。射出成形押出機のバレルおよびノズル温度を275℃〜280℃に、射出圧力を9.31MPaに保持しながら、上記配合物をASTM試験片に射出成形し、成形温度は88℃に制御した。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、HDT、機械特性および透明度の極めて優れたバランスを示した。ポリカーボネートと本発明のFMとの間の屈折率(R.I.)のミスマッチにもかかわらず、最終成形製品において高い透明度が達成されるという事実は、ポリカーボネートにおいて、低いRED数により与えられるこれらのFMの高い混和性を示す。これらのコンパウンドは、携帯電話ハウジングおよび他の電子機器用ハウジングなど、透明度が必要とされる高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表2に示す。
【0075】
【表2】

【実施例2】
【0076】
[薄壁部品の不透明ポリカーボネート射出成形用途のための流動性および衝撃性促進配合物]
薄壁成形において極めて優れた流動性および衝撃抵抗を示す流動性促進ポリカーボネート配合物を生成するために、100部のポリカーボネート(GEPからのLexan EXL1414)を、3部の本発明の流動性改質剤D、5部のメタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン(MBS)アクリル系衝撃改質剤(Rohm & Haas Company, Philadelphia, PA)、および4部のTiOと乾燥ブレンドした。上記配合物を250℃〜270℃の温度プロファイルで混合した。次に、90%の射出速度、8.2MPaの射出圧力および280℃〜305℃の温度プロファイルで得られる激しく高いせん断速度で、コンパウンドおよび未改質コントロールを5×5×1mmのラジアルフローモールド内に射出成形した。成形は、層間剥離または添加剤ジューシングの兆候なしに極めて優れた成形性および衝撃抵抗を示した。これらのコンパウンドは、電子機器のハウジングなど、高衝撃耐性および高クラック耐性が必要とされる高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
[II.高流動性PC/ABSブレンド組成物]
[流動性改質剤の調製II]
射出成形用途のためのPC/ABS配合物の高流動性を得るために、米国特許第6,605,681号の教示に従って、2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システム中で、以下にFM E〜Hと記載する4つの異なるスチレン−アクリル系流動性改質剤を設計および調製した。特定の合成条件および特徴付けのパラメータは、以下の表4に示す。以下で使用される略語は、次のように定義される。STY=スチレン、BMA=メタクリル酸ブチル、BA=アクリル酸ブチル、AMS=α−メチルスチレン、AA=アクリル酸、MAH=無水マレイン酸、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル、A−100=Aromatic100溶媒(Exxon)、MAK=メチルアミルケトン。
【0079】
【表4】

【実施例3】
【0080】
[流動性、ビカー軟化温度(VST)および衝撃抵抗の非常に優れたバランスを有するPC/ABS(低ABS)射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、260℃〜275℃の温度プロファイルを用いて、95〜97部の低ABS含量のPC/ABSブレンド(GEPからのCycoloy1200)を3〜5部の本発明の流動性改質剤E、FおよびGと乾燥ブレンドおよび混合した。275℃〜280℃のゾーン1からノズルまでの温度プロファイルを用い、5.17MPaの射出圧力で上記配合物をASTM試験片に射出成形した。モールド温度を88℃に制御した。ASTM D3835−96に記載された方法を用いて、上記配合物の溶融粘度をキャピラリーレオメトリーにより決定した。バレル直径12mm、内径0.5mm、ダイの長さ20mm、およびダイの入射角180°を有するGoettfertのRheolgraph2003キャピラリーレオメーターを用いた。測定は、6分間の予熱時間を用いて300℃で行った。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、およびVSTの極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、極めて優れた衝撃抵抗およびVSTが必要条件である高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。このような用途には、携帯電話および他の電子機器のハウジングが含まれる。比較結果を以下の表5に示す。
【0081】
【表5】

【実施例4】
【0082】
[流動性、VSTおよび衝撃抵抗の極めて優れたバランスを有するPC/ABS(高ABS)射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、95〜97部の高ABS含量のPC/ABSブレンド(GEPからのCycoloy1000HF)を3〜5部の本発明の流動性改質剤E、FおよびGと乾燥ブレンドし、実施例3の条件で混合および射出成形した。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、およびVSTの極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、携帯電話および他の電子機器のハウジングなど、極めて優れた衝撃抵抗およびVSTが必要条件である高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表6に示す。
【0083】
【表6】

【実施例5】
【0084】
[PC/ABS(低ABS)難燃性の射出成形用途のための流動性促進配合物]
極めて優れた流動性、衝撃抵抗および難燃性を示す難燃性(FR)PC/ABS配合物ヲ生成スルタメニ、Brabenderノ15mm円錐型ツインスクリュー同時回転押出機ニオイテ、230℃〜250℃の温度プロファイルを用いて、97.1および95.2部のFR PC/ABS(Bayblend FR2010、Bayer Polymers)を2.9および4.8部の本発明の流動性改質剤EおよびFと配合、乾燥ブレンド、および混合した。Battenfeldの29Mトンの射出成形機を用い、射出成形押出機のバレルおよびノズル温度を240℃〜265℃に保持し、射出圧力14.0MPaで上記配合物をASTM試験片に射出成形し、モールド温度は54℃に制御した。
【0085】
成形部品は、未改質プラスチックと比較して、層間剥離またはジューシングの兆候なしに、成形性、衝撃強さ、VST、および機械特性の極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、電子機器のハウジング、パーソナルケア用品、および家庭用品など、高せん断(薄壁または大型部品)および難燃性を必要とする射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表7に示す。
【0086】
【表7】

【実施例6】
【0087】
[PC/ABS(高ABS)難燃性の射出成形用途のための流動性促進配合物]
極めて優れた流動性、衝撃抵抗および難燃性を示すFR PC/ABS配合物を生成するために、実施例5に記載された条件を用いて、97.1〜95.2部のFR PC/ABS(Bayblend FR2000、Bayer Polymers)を2.9〜4.8部の本発明の流動性改質剤FおよびHと配合、乾燥ブレンド、および混合した。実施例5に記載した条件を用いて、上記配合物を射出成形した。
【0088】
成形部品は、未改質プラスチックと比較して、層間剥離またはジューシングの兆候なしに、成形性、衝撃強さ、VST、および機械特性の極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、電子機器のハウジング、パーソナルケア用品、および家庭用品など、高せん断(薄壁または大型部品)および難燃性を必要とする射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表8に示す。
【0089】
【表8】

【0090】
[III.高流動性ポリエステルおよびポリエステル/熱可塑性ブレンド組成物]
[流動性改質剤の調製III]
射出成形用途のための高流動性ポリエステル配合物を得るために、米国特許第6,605,681号の教示に従って設計し、次に2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システム中で調製した以下にFM JおよびKと記載される2種の異なるスチレン−アクリル系流動性改質剤と共に、本発明の流動性改質剤CおよびFを評価した。特定の合成条件および特徴付けのパラメータを以下の表9に示す。以下で使用される略語は、次のように定義される。STY=スチレン、MMA=メタクリル酸メチル、BA=アクリル酸ブチル、IPA=イソ−プロピルアルコール、DTAP=過酸化ジ−t−アミル、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル、A−100=Aromatic100溶媒(Exxon)。
【0091】
【表9】

【実施例7】
【0092】
[ポリエステル射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、95〜97部のポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)(GEPからのValox325)を3〜5部の本発明の流動性改質剤C、F、JおよびKと乾燥ブレンドし、230℃〜250℃の温度プロファイルを用いて混合した。270℃〜280℃のゾーン1からノズルへの温度プロファイルを用いて、4.14MPaの射出圧力で上記配合物をASTM試験片に射出成形し、モールド温度は65℃に制御した。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、VST、および機械特性の極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、インジケータパネルおよびミラーハウジングを含む自動車部品、ならびに機器およびいくつかの電子機器のためのハウジングなど、成形性、衝撃抵抗、VSTおよび機械特性の優れたバランスが必要条件である高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表10に示す。
【0093】
【表10】

【実施例8】
【0094】
[ガラス繊維強化ポリエステル射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、実施例7と同じ条件下で、95〜97部のガラス繊維強化ポリ(ブチレンテレフタレート)(GEPからのValox420)を3〜5部の本発明の流動性改質剤C、F、JおよびKと乾燥ブレンドし、混合および成形した。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、VST、および機械特性の極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、インジケータパネル、ミラー、およびヘッドランプハウジングを含む自動車部品など、極めて高いVSTと、成形性、衝撃抵抗、および機械特性の優れたバランスとが必要条件である高せん断および複雑なモールド(大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表11に示す。
【0095】
【表11】

【0096】
[IV.高流動性ポリアミド組成物]
[流動性改質剤の調製IV]
射出成形用途のための高流動性ポリアミドおよびポリアミドベースのブレンド配合物を得るために、米国特許出願第09/354,350号の教示に従って設計し、次に2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システムで調製した以下にFM L、M、およびNと記載された3つの他のスチレン−アクリル系流動性改質剤と共に、本発明の流動性改質剤Kを評価した。特定の合成条件および特徴づけのパラメータを以下の表12に示す。以下で使用される略語は、次のように定義される。STY=スチレン、AA=アクリル酸、BA=アクリル酸ブチル、2−EHA=アクリル酸2−エチルへキシル、EA=アクリル酸エチル、IPA=イソ−プロピルアルコール、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル、A−100=Aromatic100溶媒(Exxon)。
【0097】
【表12】

【実施例9】
【0098】
[ポリアミド射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、Brabenderのプラスチコーダミキシングボウルを用いて、95および97部のポリアミド6(Ultramide B3、Bayer Polymers)を3および5部の本発明の流動性改質剤Nと溶融ブレンドした。250℃〜280℃の温度プロファイルを保持して、溶融物を2〜5分間ブレンドした。得られたコンパウンドは、未改質のポリアミド6と比較した場合に、極めて優れた流動特性を示す。比較結果を以下の表13に示す。
【0099】
【表13】

【実施例10】
【0100】
[ポリアミド射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、Brabenderのプラスチコーダミキシングボウルを用いて、95および97部のポリアミド6,6(Zytel L101、DuPont)を3および5部の本発明の流動性改質剤MおよびNと溶融ブレンドした。250℃〜280℃の温度プロファイルを保持して、溶融物を2〜5分間ブレンドした。得られたコンパウンドは、未改質ポリアミド6,6と比較した場合に、極めて優れた流動特性を示す。比較結果を以下の表14に示す。
【0101】
【表14】

【実施例11】
【0102】
[強化ポリアミド射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、82部のポリアミド6,6(PA6,6)(Rhodia)を3部の本発明の流動性改質剤KおよびLと乾燥ブレンドし、15部のガラス繊維(GF)を側方から供給し、270℃〜290℃の温度プロファイルを用いて混合した。280℃〜300℃のゾーン1からノズルまでの温度プロファイルを用いて、上記配合物をASTM試験片に射出成形した。得られた生成物は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、および機械特性の極めて優れたバランスを示す。これらのコンパウンドは、エンジンカバーおよびその他の部品を含むボンネット下方の自動車部品など、成形性、衝撃抵抗、および機械特性の優れたバランスが必要条件である複雑なモールドおよび高せん断(大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表15に示す。
【0103】
【表15】

【0104】
[V.高流動性ポリ(フェニレンエーテル)ブレンド組成物]
射出成形用の流動性増大ポリ(フェニレンエーテル)ベースのブレンド配合物を得るために、米国特許第6,605,681号の教示に従って設計し、次に2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システムで調製した以下にFM Oと記載される別のスチレン−アクリル系流動性改質剤と共に、本発明の流動性改質剤AおよびHを評価した。特定の合成条件および特徴づけのパラメータを以下の表16に示す。以下に使用される略語は次のように定義される。STY=スチレン、AMS=α−メチルスチレン、MAH=無水マレイン酸、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル。
【0105】
【表16】

【実施例12】
【0106】
[ポリ(フェニレンエーテル)ベースのブレンドの射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、240℃〜280℃の温度プロファイルを用いて、Brabenderの15mmの円錐型ツインスクリュー同時回転押出機において、98および96部のPPE、スチレン系ブレンド(Noryl N190、GEP)を2および4部の本発明の流動性改質剤A、H、およびOと配合、乾燥ブレンド、および混合した。Meikiの50トン射出成形機を用い、射出成形機のバレルおよびノズル温度を230℃〜250℃に保持し、0.82MPaの射出圧力で上記組成物をASTM試験片に射出成形し、モールド温度は40℃に制御した。得られたコンパウンドは、未改質PPEブレンドと比較して、ジューシングまたは層間剥離を生じることなく、MFI、成形性、衝撃強さ、VST、および機械特性の極めて優れたバランスを示した。これらのコンパウンドは、コンピュータ装置および他の電子機器など、流動性の増大が必要とされる射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表17に示す。
【0107】
【表17】

【0108】
[V.高流動性透明ABS組成物]
[流動性改質剤の調製VI]
射出成形用の透明ABS配合物の高流動性を得るために、米国特許第6,605,681号の教示に従って、2ガロンのフリーラジカル連続重合反応器システム中で、以下にFM J、P、QおよびRと記載される4つの異なるスチレン−アクリル系流動性改質剤を設計および調製した。特定の合成条件および特徴付けのパラメータを以下の表15に示す。以下で使用される略語は、次のように定義される。STY=スチレン、MMA=メタクリル酸メチル、2−EHA=アクリル酸2−エチルヘキシル、BA=アクリル酸ブチル、DTAP=過酸化ジ−t−アミル、DTBP=過酸化ジ−t−ブチル、IPA=イソ−プロピルアルコール、A−100=Aromatic100溶媒(Exxon)。
【0109】
【表18】

【実施例13】
【0110】
[透明ABS射出成形用途のための流動性促進配合物]
流動性促進配合物を得るために、100部の透明ABS(Cheil ChemicalsからのStarex CT−0520)を3〜9部の本発明の流動性改質剤J、P、Q、およびRと配合し、乾燥ブレンドし、次に30mmのツインスクリュー押出機内で180℃〜200℃の温度プロファイルを用いて混合した。28mmのスクリューが備えられたDM Mekei CoのM−50A射出成形機(50メートルトンのクランピング力)を用いて、上記配合物をASTM試験片に射出成形した。ゾーン1からノズルまで使用した温度プロファイルは、200℃〜190℃に制御した。得られたコンパウンドは、極めて優れたMFIの増大を示した。得られた成形製品は、未改質プラスチックと比較して、成形性、衝撃強さ、HDT、機械特性および透明度の極めて優れたバランスを示した。透明ABSと本発明のFMの間のR.I.のミスマッチにもかかわらず、最終成形製品において高透明度が達成されるという事実は、このプラスチックにおいて、低いRED数によって与えられるこれらのFMの高混和性を示す。これらのコンパウンドは、電子機器のハウジングなど、透明度が必要条件である高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有用である。比較結果を以下の表19および表20に示す。
【0111】
【表19】

【0112】
【表20】

【実施例14】
【0113】
[高温ポリカーボネート用途のための流動性促進配合物]
薄壁成形において熱劣化に対する極めて優れた耐性を示す流動性促進ポリカーボネート配合物を生成するために、98部のポリカーボネートを2部の本発明の流動性改質剤Fと乾燥ブレンドした。上記配合物を文献で推奨される手順を用いて混合し、ペレット化した。270℃および300℃で等温的に、および室温から500℃まで5℃/分の加熱傾斜を用いて動的に動作するTA InstrumentsのAutoTGA2950機器を用い、上記コンパウンドの熱安定性を測定した。コンパウンドは極めて優れた熱安定性を示した。このコンパウンドは、電子機器のハウジングなど、高耐熱性が必要とされる高せん断(薄壁または大型部品)を伴う射出成形用途において有利であり得る。比較結果を表21に示す。
【0114】
【表21】

【0115】
当業者には理解されるように、ありとあらゆる目的のために、特に、書面による説明を提供するという点で、本明細書中に開示される全ての範囲は、ありとあらゆる可能なその部分的な範囲および部分的な範囲の組み合わせも包含する。記載されたどの範囲も、同じ範囲が少なくとも半分、三分の一、四分の一、五分の一、十分の一などに等しく分解されることを十分に表現し、可能にすると容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で議論されるそれぞれの範囲は、より低い三分の一、中間の三分の一、より高い三分の一などに容易に分解され得る。また当業者には理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの全ての言葉は列挙される数を含み、上記のようにその後に部分範囲に分解され得る範囲を示す。
【0116】
好ましい実施形態を説明および記載したが、本発明のそのより広い態様から逸脱することなく、当業者によってそこに変化および修正が成され得ることは理解されるべきである。本発明の様々な特徴は、特許請求の範囲において定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高流動性熱可塑性組成物であって、
(a)ホストポリマー、および
(b)約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーおよび任意に少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む流動性改質剤ポリマーからなり、
前記流動性改質剤と前記ホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする高流動性熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記流動性改質剤ポリマーの重量平均分子量が、10,000未満である請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記流動性改質剤ポリマーの重量平均分子量が、5,000未満である請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記ホストポリマーが、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、透明ABS樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記ホストポリマーがポリカーボネートである請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項6】
前記ホストポリマーが、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンドである請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記ホストポリマーが、ポリアミド、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(プロピレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)、PETG、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなるポリマーの群から選択される請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項8】
前記ホストポリマーが約50〜約99重量パーセントの量で存在し、前記流動性改質剤ポリマーが約1〜約20重量パーセントの量で存在する請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記流動性改質剤ポリマーが、(b1)1〜100%の(メタ)アクリレートモノマー、(b2)0〜99%の少なくとも1種のビニル芳香族モノマー、(b3)(b1)および(b2)と共重合することができる0〜99%の別のモノマーまたは別のモノマー混合物を含む請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項10】
前記流動性改質剤ポリマーが、約1〜約70重量パーセントの少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマー、および約30〜約99重量パーセントの少なくとも1種のビニル芳香族モノマーを含む請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項11】
前記ホストポリマーより少なくとも5パーセント高いメルトフローインデックスを有する請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項12】
前記組成物のノッチ付アイゾッド衝撃強さが、前記ホストポリマーのノッチ付アイゾッド衝撃強さよりも40%以下低い請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項13】
前記組成物の熱変形温度が、前記ホストポリマーの熱変形温度よりも10℃以下低い請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項14】
前記組成物のビカー軟化温度が、前記ホストポリマーのビカー軟化温度よりも10℃以下低い請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項15】
前記組成物が、前記ホストポリマーの曇り度と約1%未満異なる曇り度を有する透明組成物である請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項16】
さらに、衝撃改質剤、鉱物充填剤、顔料、染料、または難燃剤である添加剤を少なくとも1種含む請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種のビニル芳香族モノマーがスチレンまたはスチレン誘導体であり、前記少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーが、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸エチル、アクリル酸および無水マレイン酸からなる群から選択される請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項18】
前記流動性改質剤ポリマーが、アクリロニトリルモノマーを実質的に含有しない請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物。
【請求項19】
請求項1記載の高流動性熱可塑性組成物から製造される成形物品。
【請求項20】
物品が、自動車部品または電子機器用ハウジングである請求項19記載の成形物品。
【請求項21】
物品が、コンピュータ、コンピュータモニター、キーボード、プリンタ、ファックス機、電話、携帯電話などの移動通信装置、カメラ、電源プラグ、電気スイッチ、電気コネクタ、電気コントロールパネル、遠距離通信コネクタ、遠距離通信スイッチ、自動車コントロールパネル、自動車インジケータパネル、ミラーの取付台、自動車ヘッドランプ、自動車バンパー、自動車の計器盤、自動車ボンネット、エンジンカバー、発電機カバー、バッテリーカバー、空気マニホールド、自動車ホースおよびコネクタ、トラクターボンネット、自動車パネル、トラクターパネル、芝刈り機デッキ、芝生用品、複写機や複写機用トレイを含む事務機器、コーヒーメーカー、アイロン、電気掃除機および扇風機などの家庭用電気機器、テレビ、DVDプレーヤー、冷蔵庫、洗濯機、および乾燥機などの大型器具用のハウジングか、あるいはコンピュータ、コンピュータモニター、キーボード、プリンター、ファックス機、電話、携帯電話などの移動通信装置、カメラ、電源プラグ、電気スイッチ、電気コネクタ、電気コントロールパネル、遠距離通信コネクタ、遠距離通信スイッチ、自動車コントロールパネル、自動車インジケータパネル、ミラーの取付台、自動車ヘッドランプ、自動車バンパー、自動車の計器盤、自動車ボンネット、エンジンカバー、発電機カバー、バッテリーカバー、空気マニホールド、自動車ホースおよびコネクタ、トラクターボンネット、自動車パネル、トラクターパネル、芝刈り機デッキ、芝生用品、複写機や複写機用トレイを含む事務機器、コーヒーメーカー、アイロン、電気掃除機および扇風機などの家庭用電気機器、テレビ、DVDプレーヤー、冷蔵庫、洗濯機、および乾燥機などの大型器具用の部品からなる群から選択される請求項19に記載の成形物品。
【請求項22】
高流動性熱可塑性組成物であって、
(a)ポリカーボネートまたはポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンドからなる約50〜約99重量パーセントのホストポリマー、および
(b)15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む約1〜約20重量パーセントの流動性改質剤ポリマーからなり、
前記改質剤ポリマーが約30〜約99重量パーセントの少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび約1〜約70重量パーセントの少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含み
前記流動性改質剤ポリマーと前記ホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする高流動性熱可塑性組成物。
【請求項23】
請求項22記載の高流動性熱可塑性組成物から製造される成形物品。
【請求項24】
ホストポリマーと、約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーを含む流動性改質剤ポリマーとを混合することからなる、ホストポリマーの流動性を増大させるための方法であって、
前記組成物は、前記流動性改質剤ポリマーと前記ホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする方法。
【請求項25】
前記ホストポリマーが、ポリカーボネート、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンド、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、透明ABS樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記ホストポリマーがポリカーボネートである請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記ホストポリマーが、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブレンドである請求項24記載の方法。
【請求項28】
高流動性熱可塑性組成物の加工方法であって、
(a)ホストポリマーと、約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーからなる流動性改質剤ポリマーとを混合して、前記流動性改質剤ポリマーと前記ホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする流動性改質熱可塑性組成物を形成する工程、および
(b)前記流動性改質熱可塑性組成物を成形する工程からなり、
前記混合および成形工程が約350℃までの最高加工温度を有し、さらに前記流動性改質剤ポリマーが、前記最高加工温度において約10%未満の重量損失を受けることを特徴とする方法。
【請求項29】
前記最高加工温度が少なくとも180℃である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記最高加工温度が180℃〜350℃である請求項29記載の方法。
【請求項31】
高流動性熱可塑性組成物の加工方法であって、
(a)ホストポリマーと、約15,000未満の重量平均分子量を有し、少なくとも1種のビニル芳香族モノマーおよび少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーからなる流動性改質剤ポリマーとを混合して、それにより、前記流動性改質剤ポリマーと前記ホストポリマーとの間の相対エネルギー差(R.E.D.)が2.2未満であることを特徴とする流動性改質熱可塑性組成物を形成する工程、および
(b)前記流動性改質熱可塑性組成物を成形する工程からなり、
前記混合および成形工程が、添加剤のジューシングまたは層間剥離を発生することなく、100,000秒−1を超えるせん断速度で実行されることを特徴とする方法。
【請求項32】
前記成形の最大せん断速度が300,000秒−1を超える請求項31記載の方法。
【請求項33】
前記成形の最大せん断速度が500,000秒−1を超える請求項30記載の方法。
【請求項34】
請求項24記載の方法に従って製造された高流動性熱可塑性組成物。
【請求項35】
請求項28記載の方法に従って製造された高流動性熱可塑性組成物。
【請求項36】
請求項31記載の方法に従って製造された高流動性熱可塑性組成物。

【公表番号】特表2006−509862(P2006−509862A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559140(P2004−559140)
【出願日】平成15年11月18日(2003.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2003/037006
【国際公開番号】WO2004/052991
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(303068925)ジョンソン ポリマー エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】