説明

高温圧縮試験装置

【課題】 試験体に付与する荷重の分解能を高めることにより、試験体に付与する荷重の制御をより高精度とすることが可能な高温圧縮試験装置を提供する。
【解決手段】 高温炉16と、高温炉16内に進入することにより、高温炉16内に収納された試験体23をその両側から押圧する第1加圧棒21および第2加圧棒22と、クロスヘッド11と、試験体23に付与された圧力を検出するロードセル26と、試験体23の変位量を検出する変位検出計25と、第1加圧棒21とクロスヘッド11との間に配設された弾性機構13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、試験体に対して高温下で圧力を付与することにより試験体の圧縮試験を行う高温圧縮試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような高温圧縮試験機は、耐火物等からなる試験体を、高温、高圧状態に維持して、耐火物の実際の使用状態に近似した条件で特性を評価する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−155607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
試験体としてこのような耐火物を使用して試験を実行するときの規格としては、JIS(日本工業規格)R2207:耐火物の熱膨張の試験方法、JISR2209:耐火れんがの荷重軟化点の試験方法、JISR2658:耐火れんがの圧縮クリープ試験方法等が設定されており、各規格毎に、加熱方法、温度計測方法、変位計測方法等が規定されている。
【0005】
このような規格においては、試験体に付与する試験力を一定に維持した状態で試験を実行することが求められている。例えば、JISR2207―2においては、0.01MPa(メガパスカル)の圧力をプラスマイナス1N(ニュートン)の荷重精度で保持することが要求される。また、JISR2209およびJISR2658では、圧力を0.2MPaに対してプラスマイナス0.04MPaの精度で保持することが要求される。なお、この試験力の保持は、加熱中も継続される必要があるが、加熱中においては試験体に圧力を付与する加熱棒が熱膨張により伸長することから、試験体に圧力を付与する加熱棒を加圧方向とは逆方向に微動させる必要がある。
【0006】
ところで、このような試験装置において試験体に付加を付与する加圧機構の位置制御分解能は、例えば、0.03μm程度となっている。また、この加圧機構の剛性は200乃至400kN/mm程度であり、試験体に直接圧力を付与する加圧棒の剛性は20kN/mm程度である。このため、試験装置における加圧機構全体の剛性は、20kN/mm程度となる。従って、位置精度分解能あたりの荷重の変化量は、試験装置における加圧機構全体の剛性と加圧機構の位置制御分解能とを乗算した0.6N程度となる。
【0007】
この荷重の変化量は、規格が要求するプラスマイナス1Nの荷重精度と同程度のオーダーである。このため、PID制御等を利用して荷重の制御を行ったとしても、荷重の制御のための加圧機構の分解能が十分でないことから、試験体に付与する荷重の制御を十分に高精度とすることは困難となる。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、試験体に付与する荷重の分解能を高めることにより、試験体に付与する荷重の制御をより高精度とすることが可能な高温圧縮試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、試験体に対して高温下で圧力を付与することにより試験体の圧縮試験を行う高温圧縮試験装置において、前記試験体を収納可能な高温炉と、前記高温炉内に収納された試験体をその両側から押圧する第1、第2の加圧部材と、前記第1の加圧部材に対して押圧力を付与する加圧機構と、前記第2の加圧部材を支持する支持部材と、前記試験体に付与された圧力を検出するロードセルと、前記試験体の変位量を検出する変位検出計と、前記加圧機構と前記試験体との間、または、前記支持部材と前記試験体との間に配設された弾性機構とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1の加圧部材は、前記高温炉内に進入して試験体を押圧する第1加圧棒から構成されるとともに、前記加圧機構は、前記試験体に対する押圧力の付与方向に移動するクロスヘッドであり、前記弾性機構は、前記第1加圧棒と前記クロスヘッドとの間に配設される。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記弾性機構は、前記第1加圧棒と前記クロスヘッドとの間に配設された圧縮ばねを含んでいる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第2の加圧部材は、前記高温炉内に進入して試験体を押圧する第2加圧棒から構成されるとともに、前記支持部材は、前記ロードセルを介して前記第2加圧棒を支持する基台であり、前記弾性機構は、前記第2加圧棒と前記基台との間に配設される。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記弾性機構は、前記第2加圧棒と前記基台との間に配設された圧縮ばねを含んでいる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、加圧機構と試験体との間、または、支持部材と試験体との間に配設された弾性機構の作用で装置の剛性を低下させることにより、試験体に付与する荷重の分解能を高めることができ、試験体に付与する荷重の制御をより高精度とすることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、耐熱性を有する第1加圧棒を高温炉に進入させるとともに、この第1加圧棒に対してクロスヘッドで押圧力を付与する場合において、弾性機構を第1加圧棒とクロスヘッドとの間に配設することにより、試験体に付与する荷重の分解能を高めることが可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、圧縮ばねの弾性を選択することにより、試験体に付与する荷重の分解能を適切な値とすることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、耐熱性を有する第2加圧棒を高温炉に進入させるとともに、この第2加圧棒を基台で支持する場合において、弾性機構を第2加圧棒と基台との間に配設することにより、試験体に付与する荷重の分解能を高めることが可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、圧縮ばねの弾性を選択することにより、試験体に付与する荷重の分解能を適切な値とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る高温圧縮試験装置の正面図である。
【図2】この発明に係る高温圧縮試験装置における高温炉16付近の拡大図である。
【図3】この発明に係る高温圧縮試験装置における弾性機構13を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る高温圧縮試験装置の正面図である。
【0021】
この高温圧縮試験装置は、試験体23に対して高温下で圧力を付与することにより試験体の圧縮試験を行うためのものであり、試験体23を収納可能な高温炉16と、この高温炉16内に進入して試験体23を押圧するための第1加圧棒21および第2加圧棒22と、第1加圧棒21を介して試験体23に圧力を付与するクロスヘッド11と、試験体23に付与された圧力を検出するロードセル26と、試験体23の変位量を検出するための変位検出計25と、クロスヘッド11と第1加圧棒21との間に配設された弾性機構13とを備える。
【0022】
ロードセル26は、装置の基台18上に固定されている。また、クロスヘッド11の両端部には、基台18の左右に立設されたフレーム12内に配置される一対のねじ棹と螺合する図示しないナット部が配設されている。そして、一対のねじ棹が図示しないモータの駆動で回転することにより、クロスヘッド11は上下方向に移動する。すなわち、このクロスヘッド11は、試験体23に対する圧力の付与方向に移動することにより、高温炉16内に収納された試験体23に対して、第1加圧棒21を介して圧力を付与するための加圧機構として機能する。
【0023】
なお、このようなクロスヘッド11を使用して第1加圧棒に対して圧力を付与する代わりに、第1加圧棒21を直接押圧するその他のアクチュエータを使用してもよい。
【0024】
高温炉16は、チャンバー15と、このチャンバー15の周囲に形成された加熱部14とから構成される。この高温炉16には、チャンバー15内にアルゴン等の不活性ガスを導入するための不活性ガス供給部17が付設されている。
【0025】
図2は、この発明に係る高温圧縮試験装置における試験体23付近の拡大図である。
【0026】
第2加圧棒22は、支持台46上に固定されており、その上端部は、高温炉16内に進入している。同様に、第1加圧棒21の下端部は、高温炉16内に進入している。これらの第1加圧棒21および第2加圧棒22の材質としては、高温炉16内の摂氏1500度程度の雰囲気下でも影響を受けないように、例えば、黒鉛が使用される。そして、上述したように、高温炉16内を不活性ガスによりパージすることで、第1、第2加圧棒21、22への高温時の酸化の影響を防止している。
【0027】
支持台46は、ロードセル26上に配設されている。このため、ロードセル26により、この支持台46からロードセル26に付与される押圧力を測定することで、試験体23に付与された圧力を測定することが可能となる。
【0028】
第1加圧棒21には凸部43が形成されており、この凸部43からは、支持台46を貫通するL字状部材45が延設されている。同様に、第2加圧棒22には凸部44が形成されており、この凸部44からは、支持台46を貫通するL字状部材47が延設されている。そして、これらのL字状部材45、47間には、これらのL字状部材45、47間の距離を測定することにより試験体23の変位量を検出するための変位検出計25が配設されている。また、第2加圧棒22の側方には、高温炉16内の温度を測定するための温度センサ24が配設されている。
【0029】
図3は、この発明に係る高温圧縮試験装置における弾性機構13を示す拡大図である。
【0030】
この弾性機構13は、クロスヘッド11と第1加圧棒21との間に配設されるものであり、第1加圧棒21の上端に当接する当接部31を備えた押圧部材32を備える。この押圧部材32は、クロスヘッド11に固定されたガイド部材41とスライド部材42とを介して、クロスヘッド11に対して移動可能に配設されている。
【0031】
また、この押圧部材32は、連結部材36を介して一対の支持棒37と連結されている。これらに支持棒37の上端には止め部材38が付設されており、支持棒37の外周部における止め部材38とクロスヘッド11との間の領域には、ばね39が配設されている。このため、押圧部材32は、これらの支持棒37およびばね39の作用により、クロスヘッド11に対して釣支される。
【0032】
さらに、クロスヘッド11には、固定軸34を介して固定板35が固定されており、クロスヘッド11に対してスライド可能な押圧部材32とこの固定板35との間には、圧縮ばね33が配設されている。このため、クロスヘッド11により付与された押圧力は、弾性機構13における圧縮ばね33、押圧部材32および第1加圧棒21を介して、試験体23に付与されることになる。
【0033】
以上のような構成を有する高温圧縮試験装置においては、試験体23を高温炉16内における第1加圧棒21と第2加圧棒22との間に配置し、クロスヘッド11を図示しないモータの駆動により下降させることにより、試験体23を高温加熱下で圧縮する。そして、そのときの試験体23の変位量が変位検出計25により測定され、そのときに試験体23に付与された押圧力がロードセル26により測定される。また、そのときの高温炉16内の温度は、温度センサ24により測定される。
【0034】
このとき、上述したように、一般的な高温加圧試験装置における加圧機構全体の剛性は、従来であれば、第1、第2加圧棒21、22の剛性で決定される。しかしながら、この発明に係る高温圧縮試験装置においては、第1加圧棒21とクロスヘッド11との間に弾性機構13が配設されていることから、圧縮ばね33の弾性を調整することにより、この剛性を変更することが可能となる。
【0035】
上述したように、一般的な高圧圧縮試験装置において試験体に付加を付与する加圧機構の位置制御分解能は、試験体23に直接圧力を付与する第1、第2加圧棒の剛性である20kN/mm程度である。このため、位置精度分解能あたりの荷重の変化量は、この剛性である20kN/mmと、加圧機構の位置制御分解能である0.03μmとを乗算した0.6N程度となる。
【0036】
これに対して、例えば、圧縮ばね33の剛性を100N/mm程度に設定した場合においては、位置精度分解能あたりの荷重の変化量は、この剛性である100N/mmと加圧機構の位置制御分解能である0.03μmとを乗算した0.003N程度まで細かくすることが可能となる。この荷重の変化量は、規格が要求するプラスマイナス1Nの荷重精度に比べて、大幅に小さいことから、荷重の制御のための加圧機構の分解能が十分よいことになり、試験体23に付与する荷重の制御を十分に高精度とすることが可能となる。
【0037】
なお、上述した実施形態においては、加圧機構を構成するクロスヘッド11と第1加圧棒21との間に弾性機構13を配設している。しかしながら、この弾性機構13は、クロスヘッド11と試験体23の間のいずれかの位置に配設すればよい。例えば、第1加圧棒21として弾性体を使用することにより、この第1加圧棒21をクロスヘッド11と試験体23の間に配設した弾性機構として使用することも可能である。
【0038】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
【0039】
上述した第1実施形態においては、加圧機構として機能するクロスヘッド11と試験体23との間に弾性機構13を配設しているが、この第2実施形態においては、支持部材として機能する基台18と試験片23との間に、上述した弾性機構13と同様の弾性機構を配設するものである。より具体的には、基台18とロードセル26との間、ロードセル26と支持台46との間、あるいは、支持台46と第2加圧棒22との間のいずれかの位置に、上述した弾性機構13と同様、圧縮ばねを備えた弾性機構を配設するものである。このような構成を採用した場合においても、荷重の制御のための加圧機構の分解能を十分よくすることで、試験体23に付与する荷重の制御を十分に高精度とすることが可能となる。
【0040】
なお、上述した実施形態においては、弾性機構として圧縮ばねを備えたものを使用している。しかしながら、例えば、板バネなど圧縮ばね以外のばね等を使用してもよい。また、例えば、ゴム等の所定の弾性力を有するばね以外の弾性部材を使用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
11 クロスヘッド
13 弾性機構
14 加熱部
15 チャンバー
16 高温炉
17 不活性ガス供給部
18 基台
21 第1加圧棒
22 第2加圧棒
23 試験体
24 温度センサ
25 変位検出計
26 ロードセル
32 押圧部材
33 圧縮ばね
35 固定板
37 支持棒
46 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験体に対して高温下で圧力を付与することにより試験体の圧縮試験を行う高温圧縮試験装置において、
前記試験体を収納可能な高温炉と、
前記高温炉内に収納された試験体をその両側から押圧する第1、第2の加圧部材と、
前記第1の加圧部材に対して押圧力を付与する加圧機構と、
前記第2の加圧部材を支持する支持部材と、
前記試験体に付与された圧力を検出するロードセルと、
前記試験体の変位量を検出する変位検出計と、
前記加圧機構と前記試験体との間、または、前記支持部材と前記試験体との間に配設された弾性機構と、
を備えたことを特徴とする高温圧縮試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高温圧縮試験装置において、
前記第1の加圧部材は、前記高温炉内に進入して試験体を押圧する第1加圧棒から構成されるとともに、
前記加圧機構は、前記試験体に対する押圧力の付与方向に移動するクロスヘッドであり、
前記弾性機構は、前記第1加圧棒と前記クロスヘッドとの間に配設される高温圧縮試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の高温圧縮試験装置において、
前記弾性機構は、前記第1加圧棒と前記クロスヘッドとの間に配設された圧縮ばねを含む高温圧縮試験装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高温圧縮試験装置において、
前記第2の加圧部材は、前記高温炉内に進入して試験体を押圧する第2加圧棒から構成されるとともに、
前記支持部材は、前記ロードセルを介して前記第2加圧棒を支持する基台であり、
前記弾性機構は、前記第2加圧棒と前記基台との間に配設される高温圧縮試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載の高温圧縮試験装置において、
前記弾性機構は、前記第2加圧棒と前記基台との間に配設された圧縮ばねを含む高温圧縮試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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