説明

高温用エアフィルタ

【課題】500℃を超える温度域においてもフィルタ濾材の発塵や飛散が全くなく長期に亘り安定して使用することができ、製薬工業、食品工業などのクリーンオーブンや乾燥機あるいは半導体の製造時の導入空気清浄用や原子力施設での焼却炉排ガス処理などに最適、有用な高温用エアフィルタを提供する事を目的とする。
【解決手段】濾材パックをフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した高温用エアフィルタであって、前記濾材パックはガラス繊維同士を無機系バインダ単独で結合した濾材にプリーツ加工を施し、この濾材パックのプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造を有しフィルタ枠と濾材パックのシールに耐熱シール材を用いシール性能をより向上したことを特徴とする高温用エアフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温清浄空気で物品を乾燥するクリーンオーブンや乾燥機、フラットパネルディスプレー製造時の乾燥、焼成などの工程あるいは特殊なRIや焼却炉排ガスなどに付設される空気清浄用の高温用エアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造工業、製薬工業、食品などに用いられるクリーンオーブンや乾燥機には導入空気を清浄化するための高温用エアフィルタが配置されるようになってきた。また、フラットパネルディスプレー製造時の膜つけや微細パターンの形成などのより高温を要求される工程においても導入空気を清浄化するニーズがあり、さらに耐熱度の高い高温用エアフィルタが求められている。
【0003】
従来150℃までの温度に使用されるエアフィルタはガラス繊維を主体とし有機バインダを用いた濾材からなる濾材パックをフィルタ枠内に収容固定したものが使用されている。
【0004】
しかしながら、150℃までの濾材パックは150℃以上の高温空気に濾材が触れると濾材中の有機バインダが炭化し、空気の流出側表面の炭化物が発塵、飛散する不都合をもたらす。また有機バインダの種類にもよるが300℃を超える高温空気にさらされると短時間で有機バインダは燃焼気化し濾材は非常に強度の弱い物となり濾材パックを通過する空気により濾材の繊維が飛散して、ついには濾材パックを構成する濾材が破れる事となり除塵機能が消失する問題があった。
【0005】
さらに、高温用エアフィルタの濾材パックに有機バインダを使用せずに製造された濾材を用いたものも考えられたが、無機繊維は繊維同士のからみが少ないので風圧により濾材が風下側にふくらむ力を受け濾材パック内に引っ張り力が生じて繊維が濾材から外れて飛散したり濾材に亀裂が生じてリークを生じたり繊維自身の飛散で後段が汚染する問題があった。
【0006】
このため、有機バインダを用いないでガラス繊維を主体とした濾材を金網に挟んで濾材パックとしたものも考えられているが、濾材パックを通過する風がもたらす微振動により繊維の飛散あるいは金網の素線同士が擦れ合うことによりこの酸化皮膜が剥がれ落ち自己発塵の原因となる問題があった。
【0007】
以上のようなことから、150℃以上の高温空気に耐え本来の除塵機能を維持するような高温用エアフィルタの要求が非常に強くのぞまれていた。
【発明の開示】

【発明が解決しょうとする課題】
【0008】
本発明の目的は150℃を超えるような高温空気に対しても濾材の発塵、飛散が全くなく且つ500℃を超える温度域においても長期に亘り安定に使用し得る高温用エアフィルタを提供する事を目的とする。
【0009】
また本発明の目的は製薬工業、食品工業などに使用されるクリーンオーブンあるいは原子力関係の焼却施設などに最適な高温用エアフィルタを提供する事を目的とする。
【0010】
また本発明の目的はフラットパネルディスプレー製造時の膜つけや微細パターンの形成などのより高温を要求される工程においても循環空気を清浄化する導入空気清浄用の高温用エアフィルタを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の解決手段は、ガラス繊維からなる濾材パックをフィルタ枠にシール材を介して収納固定した高温用フィルタであって、濾材パックはガラス繊維同士を無機系バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施こし、この濾材のプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造を有することを特徴とした高温用エアフィルタを提供しょうとするものである。
【0012】
本発明の第2の解決手段は、ガラス繊維からなる濾材パックをフィルタ枠にシール材を介して収納固定した高温用フィルタであって、濾材パックはガラス繊維同士を無機系バインダで結合した濾材にプリーツ加工を施こし、この濾材のプリーツ間に波形状アルミ材あるいはSUS材などのセパレータを挿入した構造を有することを特徴とした高温用フィルタを提供しょうとするものである。
【0013】
ここで濾材はガラス繊維同士を混合したガラス繊維を無機系バインダにより結合した構造を有する。この濾材は200〜900μmの厚さを有することが好ましい。
【0014】
無機系バインダとしては例えばシリカ、タルク、カオリン鉱物、ベントナイト(活性ベントナイトを含む)、珪藻土、アルミナ(活性アルミナを含む)、シリカとアルミナの混合物、ケイ酸アルミニム、リボン状構造の含水ケイ酸マグネシウムおよび合成ゼオライトの群から選ばれる少なくとも1種からなる無機系物質を用いることができる。 特に無機バインダとしてはオルガノシランおよびこのオルガノシランの加水分解縮合物であるオルガノシロキサンを原料としたシリカが好ましい。このオルガノシランとしては、例えばテトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、テトラメチルシラン、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラプロピルシラザン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
【0015】
そして、シリカからなる無機系バインダはガラス繊維に対する結合性が高く且つガラス繊維間に形成された結合膜自体の強度も高いため、添加するシリカ量を少なくしても得られた濾材の強度の向上および濾材のプリーツ加工性を向上できる。なお、前記シリカは後述する濾材の製造においてメチルアルコールのようなアルコールの溶液として用いられる。
【0016】
前記濾材を枠体に固定するためのシール材はアルミナ系、ムライト系、シリカ系セラミックスやガラスなどの無機質状物が好ましい。
【0017】
また上記問題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、空調用エアフィルタを構成する濾材を500℃以上に耐えられる無機系バインダを使用したガラス繊維とし、フィルタ枠を500℃以上に耐えられるSUSなどの金属枠とし、シール材を500℃以上に耐えられる素材とし、濾材のプリーツ間に介在させるビード状接着剤あるいは波形状セパレータを500℃以上に耐えられる素材としたので、通過する空気により濾材の繊維が飛散して、濾布が破れるといった事がなく、いつまでも所定の捕集機能を維持できるものである。しかも、ガラス繊維に添加するバインダも目詰まりを生じさせる素材でなくまた添加量もその素材に適した量としたので低圧力損失の高温用エアフィルタを提供できるものである。
【発明の効果】
【0018】
(1)成形シートからなる濾材を耐熱性鋼体で両側面から挟持してプリーツ状の濾材パックとしているため、濾材を長期に亘り安定に保持および良好な高温用エアフィルタの機能を行うことができる。
(2)クリーンオーブンなどの乾燥機に高温用エアフィルタを使用し、500℃以上の高温空気を通過させても、発塵を発生することなく高温の清浄空気を導入させることができる。
(3)濾材パックに金網を使用していないので、濾材の廃棄にあたっては分別廃棄が不要で手間が掛からないといった効果を有している。
(4)本発明の高温用エアフィルタの濾材は従来のものと比較し無機系バインダでの繊維固定から濾材強度が向上し、低圧損、高捕集効率化した点で優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の高温用エアフィルタを図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(実施形態)
図1中の1は濾材パックである。この濾材パック1はプリーツ加工された濾材2間にビード状接着剤3をその濾材2高さ方向の中間付近で水平方向に延びるように塗布し、前記濾材2間を繋ぎ止めることにより構成されている。そして前記濾材パック1はフィルタ枠4内に収納され且つその濾材パック1はシール材5を介してそのフィルタ枠4に固定されている。
【0021】
また図2に示すように濾材間を繋ぐビード状接着剤層に代えてプリーツ加工された濾材間に鋼金属性の波形状のセパレータ6をそれぞれ挿入しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【0022】
なお、本発明で述べた高温用エアフィルタは一般に言われている高性能フィルタ、超高性能フィルタ(ULPA)、中性能フィルタだけでなくプレフィルタでも、ポケット形フィルタであっても良く種々変更しても何ら本発明の要旨を変更するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
500℃を超える温度域においてもフィルタ濾材の発塵、発ガス、繊維の飛散が全くなく長期に亘り安定に使用し得る本発明の高温用エアフィルタはクリーンオーブンや乾燥機などの循環空気清浄用あるいは焼却炉の排ガス処理用などに最適、有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリーツ加工された濾材間をビード状接着剤で繋ぎ止めることにより構成された本発明の高温用エアフィルタを示す斜視図。
【図2】プリーツ加工された濾材間に鋼金属性の波形状のセパレータを挿入して構成した本発明の高温用エアフィルタを示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1・・・濾材パック 2・・・濾材 3・・・ビード状接着剤
4・・・フィルタ枠 5・・・シール材 6・・・波形状のセパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材パックをフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した高温用エアフィルタであって、前記濾材はガラス繊維同士を無機系バインダ単独で結合した濾材パックにプリーツ加工を施し、この濾材パックのプリーツ間をビード状接着剤で繋いだ構造を有することを特徴とする高温用エアフィルタ。
【請求項2】
濾材パックをフィルタ枠内にシール材を介して収納、固定した高温用エアフィルタであって、前記濾材はガラス繊維同士を無機系バインダ単独で結合した濾材にプリーツ加工を施し、この濾材のプリーツ間に波形のセパレータを挿入した構造を有することを特徴とする高温用エアフィルタ。
【請求項3】
フィルタ枠と濾材パックのシールを耐熱性シール材で施したことを特徴とする請求項1と請求項2の高温用エアフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−183927(P2009−183927A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48696(P2008−48696)
【出願日】平成20年2月1日(2008.2.1)
【出願人】(000193047)進和テック株式会社 (36)
【出願人】(390040888)日本エアー・フィルター株式会社 (45)
【Fターム(参考)】