説明

高温蒸気タービンのロータセクションを互いにロックするための方法ならびに高温蒸気タービンのロータ

【課題】単純な構造を有すると共に最適なトルク点で接合個所をロックすることのできるロータを提供する。
【解決手段】第1のロータセクション10がねじ山付き突出部12を有しており、第2のロータセクション20が、ねじ山付き中空室22を有しており、該ねじ山付き中空室内に、一次的な接合システムを形成するためにねじ山付き突出部がねじ込み式に収容されており、一次的な接合システムの緩みを阻止するためのロックシステムが設けられていて、該ロックシステムが、第1のロック中空室30と第2のロック中空室30とを有していて、ロック通路32内に、両ロック中空室内に部分的に突入して延びるロック部材35を有しており、一方のロック中空室が、一方のロータセクションを貫いて延びており、他方のロック中空室が、他方のロータセクション内に部分的に突入して延びていて、該他方のロータセクション内部で終わっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、600℃よりも高い温度での運転のために適した、分割された高温蒸気タービンロータに関する。本発明は、特にロータセクション接合システムおよび該ロータセクション接合システムをロック(係止)するロックシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な蒸気タービンロータはその軸方向長さに沿って多種多様の状態にさらされている。種々異なる状態のためには唯1種の材料だけでは最適とは云えないので、ロータを、それぞれ別の材料から製造された複数のセクションから組み立てることが望ましい。これらのセクションから1つの完全な形のロータを形成するためには、これらのセクションが一般に接合されなければならない。
【0003】
ロータセクションを接合するための1つの手段は溶接による接合である。しかし、幾つかの材料は、溶接が困難となるか、または不可能である。このような場合には、別の材料が選択されなければならないか、あるいは別の択一的な接合方法が提供されなければならない。択一的な接合方法の1つには、ボルトの使用がある。欧州特許出願公開第1378629号明細書に記載されている1例では、1つの方法として、高温蒸気タービンの鍛造された複数のセクションを個別にボルトによって締め合わせることが挙げられている。ボルトは接合個所の完全な負荷にさらされるので、接合個所の完全性を維持するためには、著しい数のボルトが必要となる。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許第343462号明細書には、別の択一的な接合方法が記載されている。この方法の内容は、1つのセクションから突出して延びているねじ山付き突出部を、隣接したセクションに設けられたねじ山付き中空室内にねじ込むことによってロータセクションを接合することである。接合されたセクションが曲げ負荷交番および振動に基づいて軸方向で互いに分離してしまうことを阻止するために、ねじ山付き突出部にも、隣接したディスクにも、直交方向でロック部材が差し通されるので、このロック部材はロータの完全な直径にわたって延びている。1つのアッセンブリにつき、2つのロック部材が設けられている。これらのロック部材は互いに90゜を成しかつロータ軸線に対して直角に配置されている。
【0005】
上記方法が大型の蒸気タービンに使用される場合、一般にロータセクションの製造時にロータサイズおよびロック部材の長さ要求に基づき、ロータを通じてロック部材のための複数の中空室を予め穿孔しておくことが必要となる。接合個所の製造の前にロック中空室のための最適の部位を予め規定することは、ほとんど不可能であるので、このことが、接合個所の過度に弱い締付けを招くことは不可避となる。したがって、ロック部材は、該ロック部材が所要の接合力の一部に抵抗するように設計されていなければならない。このことはロック部材のサイズを拡大させ、かつそのデザインを一層複雑化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1378629号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許第343462号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、公知のロックシステムの不都合のうちの少なくとも幾つかの不都合を克服するか、または軽減することのできる、単独のねじ込み手段によって接合される、高温蒸気タービンのロックされるべきロータセクションを備えたロータおよびこのようなロータセクションをロックするための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、本発明によれば、600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに設けられた、軸方向で隣接し合う第1のロータセクションと第2のロータセクションとを互いにロックするための方法であって、当該方法は:
第1のロータセクションに、該第1のロータセクションの回転軸線に沿って軸方向に延びかつ該第1のロータセクションに対して同心的であるねじ山付き突出部を設け;
第2のロータセクションに、前記ねじ山付き突出部をねじ込み式に収容するために配置構成されているねじ山付き中空室を設け;
ただし、前記ねじ山付き突出部と前記ねじ山付き中空室とは、一次的な接合個所のコンポーネントである;
ことを包含する方法において、
当該方法が、以下のステップ:
a) ロータの回転軸線とは同心的でない第1のロック中空室を形成し、ただし該第1のロック中空室は、該第1のロック中空室を通じてロック部材を収容するために設計されており、しかも該第1のロック中空室は両ロータセクションのいずれか一方のロータセクションを貫いてロータセクション表面にまで形成されており、該ロータセクション表面は、一次的な接合個所が形成されると、他方のロータセクションのロータセクション表面に少なくとも部分的に接触する;
b) 前記ステップa)の前か、または前記ステップa)の後に、前記ねじ山付き突出部と前記ねじ山付き中空室とをねじ込み式に螺合接合することによって一次的な接合個所を形成し;
c) 前記ステップa)およびb)の後に第1のロック中空室から、部分的に他方のロータセクションに突入して延びて該他方のロータセクション内で終わる第2のロック中空室を形成し;
d)前記ステップc)の後に第1のロック中空室内にロック部材を挿入して、該ロック部材が部分的に第1のロック中空室内にも第2のロック中空室内にも位置するようにし、これにより、一次的な接合システムの螺合緩みを阻止するロックシステムを形成する;
より成るステップを包含することを特徴とする、蒸気タービンに設けられた、軸方向で隣接し合う第1のロータセクションと第2のロータセクションとを互いにロックするための方法により解決される。
【0009】
さらに、上記課題は、本発明によれば、600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに用いられる軸方向のロータ、つまり軸流ロータであって、第1のロータセクションと第2のロータセクションとが設けられていて、
第1のロータセクションが、1つの端面と、該端面を起点として軸方向に延びかつ第1のロータセクションと同心的に形成されたねじ山付き突出部とを有しており、
軸方向で第1のロータセクションに並んで位置する第2のロータセクションが、第1のロータセクションと第2のロータセクションとの間の一次的な接合システムを形成するために前記ねじ山付き突出部がねじ込み式に収容されるねじ山付き中空室を有しており、
前記一次的な接合システムの螺合緩みを阻止するためのロックシステムが設けられていて、該ロックシステムが、第1のロック中空室と第2のロック中空室とを有しており、第1および第2の両ロック中空室が、第1のロータセクションもしくは第2のロータセクション内に延びていて、ロータ軸線に対して非同心的に形成されており、しかも両ロック中空室は、1つのロック通路を形成するために両ロック中空室が互いに位置合わせもしくは位置整合されるように配置されており、
さらに、前記ロックシステムが、前記ロック通路内に、第1および第2のロック中空室の位置合わせを維持するために第1および第2のロック中空室内に部分的に突入して延びるロック部材を有している、
形式のロータにおいて、
両ロック中空室の一方のロック中空室が、前記ロータセクションのうちの一方のロータセクションを貫いて延びており、他方のロック中空室が、他方のロータセクション内に部分的に突入して延びていて、該他方のロータセクション内部で終わっていることを特徴とする、600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに用いられる軸方向のロータにより解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、600℃よりも高い温度での運転のために配置構成された蒸気タービンの軸方向で隣接し合った第1のロータセクションと第2のロータセクションとを互いにロック(係止)するための方法が提供される。この場合、両ロータセクションは一次接合システムを用いて接合される。この一次的な接合システムは、第1のロータセクションから軸方向に延びかつ第1のロータセクションに対して同心的に形成されたねじ山付き突出部と、このねじ山付き突出部をねじ込み式に収容するように配置構成されている、第2のロータセクションに設けられたねじ山付き中空室とを有している。本発明による方法は、以下に挙げるステップを有している:
a) ロータの回転軸線とは同心的でない第1のロック中空室を形成し、ただし該第1のロック中空室は、該第1のロック中空室を通じてロック部材を収容するために設計されており、しかも該第1のロック中空室は両ロータセクションのいずれか一方のロータセクションを貫いてロータセクション表面にまで形成されており、該ロータセクション表面は、両ロータセクションが接合されると、他方のロータセクションのロータセクション表面に少なくとも部分的に接触するように配置構成されており;
b) 前記ステップa)の前か、または前記ステップa)の後に、一次的な接合システムを用いて両ロータセクションをねじ込み式に螺合接合し;
c) 前記ステップa)およびb)の後に第1のロック中空室から、部分的に他方のロータセクションに突入して延びる第2のロック中空室を形成し;
d)前記ステップc)の後に第1のロック中空室内にロック部材を挿入して、該ロック部材が部分的に第1のロック中空室内にも第2のロック中空室内にも位置するようにし、これにより、一次的な接合システムの螺合緩みを阻止するロックシステムを形成する。
【0011】
一次的な接合システムは、ねじ込み螺合の緩みを阻止するために、少なくとも1つのロック部材を用いてロックされている。ロック部材は、ロータセクションのいずれか一方を半径方向または軸方向で完全に貫通することなしに、部分的に第1のロック中空室内にも第2のロック中空室内にも位置している。第2のロック中空室はロータセクション内に部分的にのみ突入して延びているので、第2のロック中空室は比較的簡単に形成され、すなわち一次的な接合個所の形成後に形成され得る。このことは、ロータセクションを最適のトルク点でロックすることを可能にする。
【0012】
本発明の有利な実施形態では、第1のロック中空室および第2のロック中空室がそれぞれ3つ形成され、これらのロック中空室内に3つのロック部材が挿入される。このような配置は接合されたロータセクションをバランスするための改善されたバランス能力を提供する。
【0013】
さらに、上で説明した方法により接合された、隣接して接合されたロータセクションが提供される。
【0014】
本発明の別の実施態様および利点は以下に図面につき説明する実施形態において説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一次的な接合システムとロックシステムとを備えた高温蒸気タービンロータのロータセクションの1実施形態を示す概略図である。
【図2】図1に示したロータセクションのうちの一方のロータセクションの端面を示す図である。
【図3】図1に示した一次的な接合システムと同じ一次的な接合システムと、別の実施形態によるロックシステムとにより接合されたロータセクションを示す概略図である。
【図4】図3の示したロータセクションのうちの一方のロータセクションの端面を示す図である。
【図5】軸方向のスペーサを示す、図1または図3のVで示した部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。図面中、同じ構成要素に一貫して関連性を与えるために、同一の構成要素には同じ符号を使用する。以下の説明においては、本発明を分かり易くするために、説明目的で多数の固有のデータが挙げられているが、もちろん、本発明はこれらの固有のデータなしに実施され得るものである。そうでない場合には、本発明の説明を容易にするために、周知の構造、装置または特徴が、単純化された形で示されている。
【0017】
図1には、600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンのために適しているマルチセクション型ロータの2つのロータセクション10,20だけが図示されている。第1のロータセクション10と第2のロータセクション20とが図示されており、両ロータセクション10,20は1つの一次的な接合システムにより接合されており、これにより両ロータセクションは、1つの共通の回転軸線を共有している。本明細書中、「一次的な接合」とは、必要となる所要の接合強さを提供するために、公知の方法の使用下に設計されている接合個所として定義されている。したがって、付加的な接合強さを提供するために、付加的な接合手段は必要にならないが、しかし別の目的のためには必要となり得る。
【0018】
1実施形態において、一次的な接合システムはねじ山付き突出部12を有している。このねじ山付き突出部12は、第1のロータセクション10の一方の端面15を起点として軸方向に延びていて、両ロータセクション10,20の回転軸線と同心的な軸線を有している。
【0019】
軸方向で第1のロータセクション10に並んで配置された第2のロータセクション20は、対応するねじ山付き中空室22を有している。このねじ山付き中空室22内には、ねじ山付き突出部12がねじ込み式に収容される。ねじ山付き中空室22内へのねじ山付き突出部12のこのねじ込み式の収容は、一次的な接合個所を形成する。一次的な接合個所の実施形態は図1および図3に示されている。
【0020】
たとえばロータの温度交番負荷または荷重変化に基づいた一次的な接合システムの解離または螺合緩みを阻止するために、1実施形態により、ロックシステムが提供される。ロックシステムの目的は、接合力に寄与することなく一次的な接合システムの位置を維持することにある。図1に示した実施形態では、ロックシステムが、第1のロータセクション10を貫いて延びる第1のロック中空室30と、第2のロータセクション20内に部分的に突入して延びる第2のロック中空室30とを有している。本明細書中、「ロータセクションを貫いて延びる」とは、1つのロータセクション10;20の2つの表面の間を貫いて延びることを意味する。たとえば、図1に図示されているように1つのロータセクション、この場合第1のロータセクション10の2つの端面15の間に延びるロック中空室30と、図3に図示されているように1つのロータセクション、この場合第2のロータセクション20の外側の表面とねじ山付き中空室22との間に延びるロック中空室30とは、それぞれ「ロータセクション10;20を貫いて延びる」ロック中空室30の例を示している。こうして、「ロータセクションを貫いて延びる」は、一方の表面のみを起点として延びて内部でロータセクション10,20内に設けられた成形部分のところで終わることを意味する「ロータセクション内に部分的に突入して延びる」とは区別される。
【0021】
図1および図2に示したようなロック中空室の、非同心的な位置により、挿入されたロック部材35がロータセクション10,20を係止もしくはロックすることが可能になる。挿入は、ロック部材35が少なくとも部分的に両ロック中空室30に突入して延びるように行われる。このためには、両ロック中空室30が第1第2の両ロータセクション10,20の相対的な回転位置決めにより位置調整されて、両ロック中空室30が1つの連続したロック通路32を形成すれば十分となり得る。ロック部材35は一般にボルト、ピンまたは別の同等の部材である。こうして、ロックシステムは、一次的な接合手段のねじ込み螺合の緩みを阻止するために設計されている。図示されていない実施形態では、ロック中空室30がロータセクション10,20の回転軸線に対して傾けられている。
【0022】
1実施形態では、図3に示したように、第1のロータセクション10の表面と第2のロータセクション20の表面との間に、孔を備えた半径方向のスペーサ37が設けられているので、ロック部材35はこの孔を貫通する。半径方向のスペーサ37の使用は、図3に示した実施形態に限定されるものではなく、図1に示した実施形態または考えられ得る別の実施形態と相まっても使用され得る。択一的には、図3に示した実施形態をこのような特徴なしに実現することもできる。第1のロータセクション10の熱膨張率と第2のロータセクション20の熱膨張率とが互いに異なっているアッセンブリのためには、半径方向のスペーサ37が、温度変化時、たとえばタービンのスイッチオン時またはスイッチオフ時におけるロック通路32内のロック部材35の緩みを最小限に抑えるための手段を提供し、したがって、半径方向のスペーサ37はロック部材35の解離ポテンシャルまたは螺合緩みポテンシャルを制限する。
【0023】
図3には、さらに、ロック中空室30の一方のロック中空室30が、第1のロータセクション10のねじ山付き突出部12内に部分的にのみ突入して延び、他方のロック中空室30が、第2のロータセクション20を貫いて外側の表面からねじ山付き中空室22にまで延びる実施形態が示されている。たとえば第1のロータセクション10と第2のロータセクション20との相対的な回転位置による両ロック中空室30の位置合わせにより、1つの連通したロック通路32が形成され、このロック通路32内に、ロック部材35を挿入することができ、これにより図1につき説明したロック機能性と同じロック機能性が得られる。
【0024】
この実施形態の別の変化形では、第2のロータセクション20内に延びているロック中空室30の起点となる外側の表面が、図3に示したような翼支持スリット40の内側の表面を形成している。運転時には、一般に翼基部がこの表面を覆い、こうしてこの手段によってロック中空室30と結びつけられた空気力学的な損失が回避され得る。翼支持スリット40の位置に応じて、ロック通路32のためには、ロータ回転軸線に対する垂直線から離れる方向に折り曲げられていることが有利になる場合がある。このことは、部分的には、第2のロック中空室30が部分的にのみ第1のロータセクション10に突入して延びているので、ロック部材35の所要の長さが減じられており、これによりロック中空室30内への挿入時に、ロック部材35を翼支持スリット40内に配置する際のジオメトリ的(幾何学的)な制限が最小限に抑えられるという事実によって可能となる。
【0025】
さらに別の実施形態では、ロック中空室30の3つのペアが、相応する3つのロック通路32を形成している。このような配置は図2および図4に図示されている。ロック中空室30を3つしか有しないことが有利になる。なぜならば、この配置はロータをバランスすることを容易にするからである。しかし、別の個数のロック通路32が設けられていてもよい。さらに図2および図4に図示されているように、有利にロック中空室30がロータセクション10,20の全周にわたって均一に分配されていると、バランシングは一層改善される。
【0026】
2つの隣接し合ったロータセクション10,20の接合領域の拡大図である図5には、両ロータセクション10,20の間の軸方向のスペーサ38の位置が示されている。軸方向のスペーサ38は1実施形態では単独の部材であるが、別の実施形態では、軸方向のスペーサ38は1つよりも多い部材、たとえば2つの半割リングから成っている。軸方向ADにおける所定の厚さを有する軸方向のスペーサ38は、ロータセクション10,20の熱膨張特性とは異なる熱膨張特性を有する材料から製造されている。スペーサ38の目的は、隣接し合ったロータセクション10,20の熱膨張および/または熱収縮とは無関係に、一次的な接合システムの軸方向ADにおける一貫したねじ込み力を確保することにある。たとえば熱膨張が一次的な接合個所の過度に強い締付けを招く恐れのある実施形態では、軸方向のスペーサ38が、ロータセクション材料よりも低い熱膨張率を有している。たとえば熱収縮が一次的な接合個所の過度に強い締付けを招く恐れのある実施形態では、軸方向のスペーサ38が、ロータセクション材料よりも高い熱膨張率を有している。いずれの場合にも、軸方向のスペーサ38の材料および半径方向の厚さは、一次的な接合個所の配置構成、ロータセクション10,20の材料、ロータセクション10,20がさらされる温度範囲を考慮して、軸方向のスペーサ38の適正な機能を確保するために選択されなければならない。
【0027】
1つの例示的な方法により、600℃を超える温度における運転のために設計された蒸気タービンの軸方向で隣接し合った2つのロータセクション10,20を接合するための方法が提供される。このようなロータセクション10,20は、たとえば図1〜図5に示されている。ロータセクション10,20は一次的な接合システムを有しており、この一次的な接合システムは第1のロータセクション10にねじ山付き突出部12を有している。このねじ山付き突出部12はロータセクション10,20のいずれか一方のロータセクションのロータの回転軸線に沿って軸方向にかつ当該ロータセクションに対して同心的に延びている。さらに、一次的な接合システムは第2のロータセクション20にねじ山付き中空室22を有している。ねじ山付き中空室22は、ねじ山付き突出部12をねじ込み式に収容するために配置構成されている。当該方法は、第1のロック中空室30をロータの回転軸線と非同心的に形成することを包含している。この第1のロック中空室30は、ロック部材35をこのロック中空室30を通じて収容するために設計されている。第1のロック中空室30は両ロータセクション10,20の一方のロータセクションを貫いてロータセクション表面に通じるように形成されており、このロータセクション表面は、両ロータセクション10,20が接合されると、他方のロータセクション10,20のロータセクション表面に少なくとも部分的に接触するように配置構成されている。このような表面は、たとえば図1に示したように一方のロータ端面15であるか、または図3に示したようにねじ山付き中空室22の内側の表面であってよい。第1のロック中空室30の形成前にロータセクション10,20が接合されることを必要とする特殊な位置調整要求は存在しないので、第1のロック中空室30の形成はロータセクション10,20の接合前か、または接合後に行われ得る。
【0028】
第1のロック中空室30の形成のステップの前か、または後に、両ロータセクション10,20は一次的な接合システムによって接合される。1実施形態では、接合後の一次的な接合システムの弛緩を低減し、かつ一次的な接合個所の緩みを最小限に抑えるために、一次的な接合個所は、最終的な接合個所が形成される前に少なくとも2回形成されかつ解消される。
【0029】
第1のロック中空室30の前記両接合・形成ステップが終了した後に、第1のロック中空室30から第2のロック中空室30が形成される。このことは、たとえば第1のロック中空室30を通じてドリルビットを送ることによって達成される。このことは、第1のロック中空室30と第2のロック中空室30との位置合わせを確保する。1実施形態では、第2のロック中空室30は、該第2のロック中空室30が部分的に他方のロータセクション10,20に突入して延びて、該他方のロータセクション10,20内で終わるように形成される。第2のロック中空室30はロータセクション10,20のいずれをも貫通しないので、第2のロック中空室30は比較的迅速にかつ容易に形成され得ると共に、こうして一次的な接合個所の形成後における部分中空室の形成時における実際の困難性が克服される。この点における第2のロック中空室30の形成は、一次的な接合個所の最適なトルク点を有するロータセクション10,20のロックを可能にする。
【0030】
最後のステップは、ロック中空室30内へのロック部材35の挿入である。これにより、ロック部材35は部分的に第1のロック中空室30内にも、第2のロック中空室30内にも位置する。こうして、ロック部材35は一次的な接合システムのねじ螺合の緩みを阻止する。1実施形態では、ロック部材の挿入が、第1のロータセクション10と第2のロータセクション20との間に位置する孔を有する半径方向のスペーサ37を通じた挿入である。
【0031】
軸方向のスペーサ38を有する実施形態では、当該方法が、第1のロータセクション10と第2のロータセクション20との間の一次的な接合個所の軸方向の形成前におけるロータスペーサの組付けを有している。
【0032】
本発明は、ロータへの後装備プロセスの一部として実施され得る。このことがそうである場合、本発明の一部を形成する種々のコンポーネントは既存の部分の改良によって製造され得る。それにゆえに、本発明のコンテクスト内で、本発明の特徴を提供することは、改良とオリジナルの製造とを含んでいる。
【0033】
以上、本発明を実際の実施例とみなされる実施形態につき説明したが、当業者であれば、本発明が別の固有の形で体現され得ることは明らかである。それゆえに、上で説明した実施形態はいかなる視点からも単に例示的なものであるに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【符号の説明】
【0034】
10 ロータセクション
12 ねじ山付き突出部
15 端面
20 ロータセクション
22 ねじ山付き中空室
30 ロック中空室
32 ロック通路
35 ロック部材
37 半径方向のスペーサ
38 軸方向のスペーサ
40 翼支持スリット
AD 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに設けられた、軸方向で隣接し合う第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)とを互いにロックするための方法であって、当該方法は:
第1のロータセクション(10)に、該第1のロータセクション(10)の回転軸線に沿って軸方向に延びかつ該第1のロータセクション(10)に対して同心的であるねじ山付き突出部(12)を設け;
第2のロータセクション(20)に、前記ねじ山付き突出部(12)をねじ込み式に収容するために配置構成されているねじ山付き中空室(22)を設け;
ただし、前記ねじ山付き突出部(12)と前記ねじ山付き中空室(22)とは、一次的な接合個所のコンポーネントである;
ことを包含する方法において、
当該方法が、以下のステップ:
a) ロータの回転軸線とは同心的でない第1のロック中空室(30)を形成し、ただし該第1のロック中空室(30)は、該第1のロック中空室(30)を通じてロック部材(35)を収容するために設計されており、しかも該第1のロック中空室(30)は両ロータセクション(10,20)のいずれか一方のロータセクションを貫いてロータセクション表面にまで形成されており、該ロータセクション表面は、一次的な接合個所が形成されると、他方のロータセクション(20,10)のロータセクション表面に少なくとも部分的に接触する;
b) 前記ステップa)の前か、または前記ステップa)の後に、前記ねじ山付き突出部(12)と前記ねじ山付き中空室(22)とをねじ込み式に螺合接合することによって一次的な接合個所を形成し;
c) 前記ステップa)およびb)の後に第1のロック中空室(30)から、部分的に他方のロータセクション(20)に突入して延びて該他方のロータセクション(20)内で終わる第2のロック中空室(30)を形成し;
d)前記ステップc)の後に第1のロック中空室(30)内にロック部材(35)を挿入して、該ロック部材(35)が部分的に第1のロック中空室(30)内にも第2のロック中空室(30)内にも位置するようにし、これにより、一次的な接合システムの螺合緩みを阻止するロックシステムを形成する;
より成るステップを包含することを特徴とする、蒸気タービンに設けられた、軸方向で隣接し合う第1のロータセクションと第2のロータセクションとを互いにロックするための方法。
【請求項2】
ステップa)で3つの第1のロック中空室(30)を形成し;
ステップc)で3つの第2のロック中空室(30)を形成し;
ステップd)で3つのロック部材(35)を挿入する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップb)が、最終的な接合個所の形成前に少なくとも2回、一次的な接合個所の形成・解消を行うことを包含する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ステップb)が、さらに、一次的な接合個所の形成中に第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)との間に軸方向のスペーサ(38)を軸方向で組み付けることを包含する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ステップd)が、第1のロータセクション(10)の表面と第2のロータセクション(20)の表面との間に、スペーサ孔を備えた半径方向のスペーサ部材(37)を、ロック部材(35)が半径方向のスペーサ孔を貫通するように配置することを包含する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに用いられる軸方向のロータであって、第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)とが設けられていて、
第1のロータセクション(10)が、1つの端面(15)と、該端面(15)を起点として軸方向に延びかつ第1のロータセクション(10)と同心的に形成されたねじ山付き突出部(12)とを有しており、
軸方向で第1のロータセクション(10)に並んで位置する第2のロータセクション(20)が、第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)との間の一次的な接合システムを形成するために前記ねじ山付き突出部(12)がねじ込み式に収容されるねじ山付き中空室(22)を有しており、
前記一次的な接合システムの螺合緩みを阻止するためのロックシステムが設けられていて、該ロックシステムが、第1のロック中空室(30)と第2のロック中空室(30)とを有しており、第1および第2の両ロック中空室(30)が、第1のロータセクション(10)もしくは第2のロータセクション(20)内に延びていて、ロータ軸線に対して非同心的に形成されており、しかも両ロック中空室(30)は、1つのロック通路(32)を形成するために両ロック中空室(30)が互いに位置合わせされるように配置されており、
さらに、前記ロックシステムが、前記ロック通路(32)内に、第1および第2のロック中空室(30)の位置合わせを維持するために第1および第2のロック中空室(30)内に部分的に突入して延びるロック部材(35)を有している、
形式のロータにおいて、
両ロック中空室の一方のロック中空室(30)が、前記ロータセクション(10,20)のうちの一方のロータセクションを貫いて延びており、他方のロック中空室(30)が、他方のロータセクション(10,20)内に部分的に突入して延びていて、該他方のロータセクション内部で終わっていることを特徴とする、600℃よりも高い温度で運転される蒸気タービンに用いられる軸方向のロータ。
【請求項7】
第1のロック中空室(30)が、部分的にのみ第1のロータセクション(10)内に突入して延びている、請求項6記載のロータ。
【請求項8】
第2のロータセクション(20)に、翼基部を収容するための翼支持スリット(40)が設けられており、第2のロック中空室(30)が、該翼支持スリット(40)から離れる方向に延びている、請求項7記載のロータ。
【請求項9】
第2のロック中空室(30)が、同じくねじ山付き中空室(22)の表面から離れる方向に延びており、第1のロック中空室(30)が、前記ねじ山付き突出部(12)内に突入して延びている、請求項7記載のロータ。
【請求項10】
第2のロック中空室(30)が、部分的にのみ第2のロータセクション(20)内に突入して延びている、請求項6記載のロータ。
【請求項11】
第1のロック中空室(30)が、第1のロータセクション(10)を貫いて延びている、請求項10記載のロータ。
【請求項12】
当該ロータが、3つの第1のロック中空室(30)と、3つの第2のロック中空室(30)とを有している、請求項6から11までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項13】
前記ロック中空室(30)が、ロータ回転軸線と、該ロータ回転軸線の垂直線とから離れる方向に折り曲げられている、請求項6から11までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項14】
第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)との間に、孔を備えた半径方向のスペーサ(37)が設けられていて、ロック部材(35)が、該半径方向のスペーサ(37)の前記孔を貫通している、請求項6から13までのいずれか1項記載のロータ。
【請求項15】
軸方向で第1のロータセクション(10)と第2のロータセクション(20)との間に、軸方向のスペーサ(38)が設けられている、請求項6から13までのいずれか1項記載のロータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122589(P2011−122589A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273615(P2010−273615)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】