説明

高温超電導導体及びそれを用いた高温超電導コイル

【課題】幅が狭い高温超電導線を用いてのコイル内部での転位が可能なコイル設計の自由度の高い高温超電導導体と、これを巻き回して形成した高温超電導コイルを提供する。
【解決手段】金属基板層4、電気絶縁体の中間層5及び酸化物超電導層6を順に積層したテープ状高温超電導線2を、微小間隙を設け幅広面方向に平行に並べ並列化し、並列化した高温超電導線2を、長手方向に所定間隔を設けて接続部10で複数連接したもので、並列化した高温超電導線2は、2本の高温超電導線2の間で、また接続部10で長手方向に隣接する各対応の高温超電導線2との間でも各層の積層順が逆となっていると共に、接続部10で4本の高温超電導線2は、各端部が上下面に固着した2枚の接続用高温超電導線3により電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、酸化物超電導層を設けて形成された高温超電導導体及び高温超電導コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
高温・高磁場中での臨界電流特性に優れた、例えばY(イットリウム)やGd(ガドリニウム)などの希土類元素系の酸化物超電導層を、ハステロイ(Hastelloy;登録商標)等で形成された金属基板上に積層した酸化セリウム等の中間層の上に形成した、第2世代線材と呼ばれる高温超電導線が製造されるようになってきた。それに伴い、この高温超電導線を用いて、例えば、磁気共鳴画像診断装置(MRI)や超電導エネルギー貯蔵装置(SMES)、半導体製造装置などの超電導応用機器に内蔵される超電導コイルを製作することが進められている。
【0003】
そして、超電導コイルを製作する際には、通電電流値を増やすように設計するため、高温超電導線は、幅が広い金属基板を用いて製造した幅広のものとすることが考えられる。しかし、図20に示すように、高温超電導線100を幅広のものとした場合には、励消磁などによって斜線矢印で示す変動磁界(dB/dt)を受けると、変動磁界(dB/dt)を遮蔽するように、高温超電導線100内には輸送電流(I)とは別に磁化電流(I)が発生し、偏流による通電容量の低減及び交流損失の発生が問題となり、その影響は、高温超電導線100の幅が広くなるほど大きくなる。
【0004】
こうした問題に対しては、巻線する際に幅が狭く細い複数の高温超電導線を重ね合わせる方法がとられる。ただし、高温超電導線を重ね合わせた場合には、経験磁場の違いによる偏流を発生させないようにするために、重ね合わせた高温超電導線の相対的な位置を変えること、すなわち、転位が必要となる。しかし、テープ状の高温超電導線の相対的な位置をコイル内部で変えることは困難である。
【0005】
そのため、超電導コイルを複数のユニットコイルを積層し、接続する構成とし、その接続部で高温超電導線の相対的な位置関係を変えることによって転位するようにすることが知られている。
【0006】
例えば、ダブルパンケーキ型超電導コイルの少なくとも1つのユニットにおける超電導導体の一端において内周側に位置する超電導層の巻数を外周側の巻数よりも多くし、他端において両超電導層の相互位置を転位するよう構成する。あるいは、複数枚の高温超電導テープ材を巻き回したコイルユニットを複数個積層した高温超電導コイルで、各コイルユニット間での高温超電導テープ材の接続を、少なくとも2組のテープ材は、一方のコイルユニットの内側からn番目に巻かれた高温超電導テープ材と、他方のコイルユニットの内側からm番目(n≠m)に巻かれた高温超電導テープ材とを接続して、高温超電導テープ材の作るループを貫く磁束の和が略0とするよう構成する。あるいはまた、超電導コイルを、2本の超電導テープ線を束ねて巻線した第1のコイルと第2のコイルによるダブルパンケーキ形状とし、第1のコイルと第2のコイルの最内層に位置する2本の超電導テープ線のみを円周方向の任意の一箇所で入れ替えて構成する等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−308306号公報
【特許文献2】特開2002−184618号公報
【特許文献3】特開2009−246118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、複数のユニットコイルを積層し、その接続部で高温超電導線を転位しようとした場合には、経験磁場が同じであるユニットコイルの数と、重ね合わせた高温超電導線の数とを同じにする必要があり、これが設計する上での厳しい制約条件となる。例えば、円筒型の超電導コイルおいて、ユニットコイルの接続部のみで高温超電導線を転位しようとすると、磁場分布の対称性からユニットコイルを2つずつ積層した構成としなければならず、重ね合わせる高温超電導線の枚数は2枚にする必要があった。このため、こうした従来方法では、通電容量の低減や交流損失の発生を抑制するために高温超電導線の幅を狭くしようとした場合に、コイル形状及び寸法を自由に設計できないという問題が生じる。
【0009】
こうした状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、幅が狭い高温超電導線を用いた場合でも、コイル形状及び寸法の設計自由度を確保するため、コイル内部での転位が可能となる高温超電導導体と、この高温超電導導体を巻き回して形成した高温超電導コイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
高温超電導導体の実施形態は、金属基板層、電気絶縁体の中間層及び酸化物超電導層の各層を順に積層してなる所定長のテープ状の高温超電導線を、互いの間に微小間隙を設け幅広面が同一面を形成するよう平行に並べて並列化し、かつ並列化した前記高温超電導線を、長手方向に所定間隔を設けて接続部で複数連接した高温超電導導体であって、前記並列化した高温超電導線は、並列化したうちの少なくとも1本の前記高温超電導線における各層の積層順が他の前記高温超電導線における各層の積層順と逆となっており、前記接続部は、前記並列化した高温超電導線の連接方向に隣接するもの同士の各端部の上下面に、平板状の2枚の接続用高温超電導線をそれぞれ電気的に接続するように固着することによって形成されている。
【0011】
また、高温超電導コイルの実施形態は、前記高温超電導導体を巻き回し、コイル成形した後に熱硬化性合成樹脂を含浸させて巻線部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コイル設計を行う際にコイル形状及び寸法の設計自由度を十分に確保することができ、設計が容易となり、コイル製作時の巻線作業を容易に実施することができる高温超電導導体を得ることができる。さらには変動磁界(dB/dt)を発生させた場合に、通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導コイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における高温超電導導体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す高温超電導導体の断面図で、図2(a)は断面Uにおける矢視方向の断面図であり、図2(b)は断面Vにおける矢視方向の断面図である。
【図3】(a)および(b)は、各々図1に示す高温超電導導体における輸送電流(I)の経路を示す斜視図である。
【図4】図1に示す高温超電導導体における変動磁界(dB/dt)が印加された場合の誘導電界(E)の状態を示す斜視図である。
【図5】第1の実施形態における高温超電導コイルを示す斜視図である。
【図6】図5に示す高温超電導コイルにおけA部の部分断面図である。
【図7】第1の実施形態における高温超電導導体の第1の変形態を示す部分斜視図である。
【図8】第1の実施形態における高温超電導導体の第2の変形態を示す部分斜視図である。
【図9】第1の実施形態における高温超電導導体の第3の変形態を示す部分斜視図である。
【図10】第1の実施形態における高温超電導導体の第4の変形態を示す部分斜視図である。
【図11】第1の実施形態における高温超電導導体の第5の変形態を示す部分斜視図である。
【図12】第1の実施形態における高温超電導導体の第6の変形態を示す部分斜視図である。
【図13】第1の実施形態における高温超電導コイルの第1の変形態を示す高温超電導導体の斜視図で、図13(a)は高温超電導導体における磁場(B)と磁束(φ)を説明する図であり、図13(b)は高温超電導導体における誘導電界(E)を示す図である。
【図14】第1の実施形態における高温超電導コイルの第2の変形態におけA部の部分断面図である。
【図15】第2の実施形態における高温超電導導体の要部を示す斜視図である。
【図16】図15に示す高温超電導導体の要部の断面図で、図16(a)は断面Wにおける矢視方向の断面図であり、図16(b)は断面Xにおける矢視方向の断面図である。
【図17】第2の実施形態における高温超電導導体を示す斜視図である。
【図18】図17に示す高温超電導導体の断面図で、図18(a)は断面Yにおける矢視方向の断面図であり、図18(b)は断面Zにおける矢視方向の断面図である。
【図19】(a)および(b)は、各々図17に示す高温超電導導体における輸送電流(I)の経路を示す斜視図である。
【図20】従来の技術を説明するための高温超電導線の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1乃至図6により説明する。また、本実施形態における高温超電導導体の第1の変形形態を図7により、第2の変形形態を図8により、第3の変形形態を図9により、第4の変形形態を図10により、第5の変形形態を図11により、第6の変形形態を図12によりそれぞれ説明する。また、本実施形態における高温超電導コイルの第1の変形形態を図13により、第2の変形形態を図14によりそれぞれ説明する。
【0015】
先ず図1乃至図4に示すように、高温超電導導体1は、2本の対をなす所定長のテープ状高温超電導線2と、複数の対をなす高温超電導線2を長手方向に連接するための幅広面(テープ面)の幅が高温超電導線2の幅の略2倍に形成された方形平板状接続用高温超電導線3とによって構成されている。高温超電導線2と接続用高温超電導線3は、図2に示すように、テープ状の金属基板層4の上にそれぞれ等幅に形成された中間層5、酸化物超電導層6、保護層7を順に積層した多層構造となっている。
【0016】
金属基板層4は、例えば、ニッケル基合金のハステロイ(Hastelloy;登録商標)やステンレス鋼などで形成されており、この金属基板層4の上に積層された中間層5は、例えば、酸化セリウムや酸化マグネシウムなどの電気絶縁体の単層もしくは複数層構成となっている。また、中間層5の上に積層された酸化物超電導層6は、例えば、Y(イットリウム)やGd(ガドリニウム)といった希土類(Re)元素が含まれるRe123系などの厚さが、例えば数μmと非常に薄い酸化物層となっている。
【0017】
さらに、酸化物超電導層6の上に積層された保護層7は、例えば、Au(金)やAg(銀)などで形成されている。そして、積層された金属基板層4から保護層7までの全層には、例えば、Cu(銅)等で形成された安定化層8が被覆されている。なお、安定化層8については、金属テープを半田付けすることにより被覆するものでもよく、また多層構造をなしている全層を被覆せず、片方の幅広面のみを覆うようにしてもよい。
【0018】
また、高温超電導導体1を構成する対をなしている2本のテープ状高温超電導線2は、間に微小間隙を設けるようにして、それぞれの幅広面が表裏面(上下面)となるようにして平行に並べられて並列化されており、さらに並列化された2本の高温超電導線2は、各層の積層順が上下逆になっていて、例えば一方の高温超電導線2は金属基板層4が上側に、他方の高温超電導線2は金属基板層4が下側に位置するようになっている。さらにまた、連接した際の前対である2本の高温超電導線2に、所定間隔を設けて長手方向に連接される次の対である後対の2本のテープ状高温超電導線2では、一方の高温超電導線2は金属基板層4が下側に、他方の高温超電導線2は金属基板層4が上側に位置するようになっており、所定間隔を設けて長手方向に隣接する前対、後対の各対応する高温超電導線2の間でも各層の積層順が上下逆となっている。
【0019】
また、前対、後対の2対の高温超電導線2を長手方向前後に接続する接続用高温超電導線3は、隣接する前対、後対の4本の高温超電導線2の端部上下面に、半田9により電気的に接続されるようにそれぞれ固着され、4本の高温超電導線2を2枚の接続用高温超電導線3により挟んだ接続部10が構成されて、前対、後対の4本の高温超電導線2の接続が行われる。そして、2対の高温超電導線2の下面に固着される接続用高温超電導線3の各層の積層順は、図2(a)に図1の断面Uでの矢視方向の断面図を示すように、前対の一方の高温超電導線2の積層順と同じで、金属基板層4が下側に位置し、上面に固着される接続用高温超電導線3は、逆に、前対の他方の高温超電導線2の積層順と同じで、金属基板層4が上側に位置するようになっている。
【0020】
なお、接続用高温超電導線3の各層の積層順は、後対の2本の高温超電導線2に対し図2(b)に図1の断面Vでの矢視方向の断面図を示すように前対の場合とは逆で、下面に固着される接続用高温超電導線3と他方の高温超電導線2の積層順が同じであり、上面に固着される接続用高温超電導線3と一方の高温超電導線2の積層順が同じである。
【0021】
そして、上述のように構成された高温超電導導体1では、中間層5が電気絶縁体で構成されているため、酸化物超電導層6に流れる電流は、中間層5を貫通する方向には流れ出し難くい。したがって、上下の接続用高温超電導線3が固着されて2対の高温超電導線2が連接された接続部10では、酸化物超電導層6に流れる電流は、次のように流れる。
【0022】
すなわち、前対の高温超電導線2と接続用高温超電導線3の接続部分においては、断面Uでの断面図である図2(a)に実線矢印で示すように、一方の高温超電導線2からは上面に固着された接続用高温超電導線3の方向に、また他方の高温超電導線2からは下面に固着された接続用高温超電導線3の方向に流れることになる。さらに、後対の高温超電導線2と接続用高温超電導線3の接続部分においては、断面Vでの断面図である図2(b)に実線矢印で示すように、上面に固着された接続用高温超電導線3から他方の高温超電導線2の方向に、また下面に固着された接続用高温超電導線3から一方の高温超電導線2の方向に流れることになる。
【0023】
これにより、高温超電導導体1に流れる輸送電流(I)の経路は、接続用高温超電導線3を省略する図3に実線矢印で示すように、前対の高温超電導線2の上流対の他方の高温超電導線2を流れた輸送電流(I)は、接続部10で前対の高温超電導線2の一方の高温超電導線2に流れる経路を変え、さらに、次の後対の高温超電導線2の他方の高温超電導線2に接続部10で流れる経路を変える。同様に、前対の高温超電導線2の上流である更に前の対の一方の高温超電導線2を流れた輸送電流(I)は、接続部10で前対の高温超電導線2の他方の高温超電導線2に流れる経路を変え、さらに、次の後対の高温超電導線2の一方の高温超電導線2に接続部10で流れる経路を変える。
【0024】
このように、高温超電導導体1では、長手方向に連接した複数対の高温超電導線2を流れる経路を接続部10で変えながら輸送電流(I)は流れることになる。その結果、高温超電導導体1は、各接続部10で転位した場合と同様の効果を得ることができることになる。すなわち、高温超電導導体1は、輸送電流(I)の流れる経路が制限されることから、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に発生する誘導電界(E)は、図4に実線矢印、点線矢印で示すように、キャンセルされることになり、磁化電流(I)の発生が抑制される。なお、図4では、並列化した対をなす高温超電導線2をそれぞれ実線、点線で示している。
【0025】
また、積層構造が逆の高温超電導線2同士を並列化して長手方向に接続用高温超電導線3を用いて複数対連接するようにして高温超電導導体1を構成しているので、接続部10は簡単な構成となり、その製作は容易となる。さらに、巻線を行う場合も、立体交差等による厚さの増大もないことから、巻線作業も容易となる。
【0026】
以上の通り、高温超電導導体1は、輸送電流(I)が流れる経路を接続部10で転位させた場合と同様に制限されるため、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に発生する誘導電界(E)がキャンセルされ、磁化電流(I)の発生が抑制される。これにより、通電容量の低減や交流損失の発生が少なく、しかも高温超電導導体1の製作が容易なものとなる。そして、高温超電導線2が狭幅のものであっても、コイル設計等を行う際にコイル形状及び寸法の設計自由度を十分に確保することができ、設計が容易となり、コイル製作時の巻線作業も容易なものとなる。
【0027】
次に上述の高温超電導導体1を用いた高温超電導コイルを説明する。図5及び図6において、31は高温超電導コイルであり、この高温超電導コイル31の巻線部32は、転位が施された高温超電導導体1の全周囲にターン間絶縁材33を被覆し、その後に、例えば同心円状に高温超電導導体1を巻き重ね、所謂、シングルパンケーキ形状の所定形状となるよう巻き回し、コイル成形を行った後、さらに、例えば熱硬化性合成樹脂のエポキシ樹脂等の含浸材34の含浸がなされて形成されている。
【0028】
そして、高温超電導コイル31に電流を流した際には、図5中に実線矢印で示すように巻線部32に磁場(B)が発生する。発生した磁場(B)は、その方向を矢印方向、強さの程度を実線の太さで示すような分布を有するものとなる。なお、高温超電導コイル31は、巻線部32に図示しない端子等が設けられており、端子等を介して取り付けるようにすることによって、例えば、磁気共鳴画像診断装置(MRI)や超電導エネルギー貯蔵装置(SMES)、単結晶引き上げ装置などの超電導応用機器に用いられる。
【0029】
このように、上述の1次転位がなされた高温超電導導体1を巻き回して高温超電導コイル31を形成しているため、高温超電導コイル31に変動磁場を発生させた場合においても、通電容量の低減や交流損失の発生が少なくなる。すなわち、本実施形態の高温超電導コイル31は、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導導体1を用いて製作しているため、変動磁界(dB/dt)を発生させた場合に、通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導コイル31とすることができる。
【0030】
なお、上記の本実施形態の高温超電導導体1では、高温超電導導体1の接続用高温超電導線3を方形平板状とし、高温超電導線2の上下面を同位置で挟むように固着したが、例えば図7乃至図9に示す高温超電導導体の第1乃至第3の変形形態のようにしてもよい。
【0031】
すなわち、図7に示す第1の変形形態の高温超電導導体1aは、接続用高温超電導線15は、並列化した対の高温超電導線2と同幅の六角形状の平板で、高温超電導導体1の長手方向の対向する頂点の左右辺が、長手方向に対して90度未満の所定の角度θとなっている長手方向に対し左右対称の形状となっている。一般に、テープ線はその厚みが増すほど曲げるために必要な力が増え、コイル等の巻線をする際に曲げ難くなり、また厚さが急激に変化する接続部10と接続部10以外の境界部分には、巻線等の際に応力が集中して酸化物超電導層6に機械的ダメージを与えて超電導特性を劣化させてしまう虞がある。
【0032】
しかし、接続用高温超電導線15を六角形状、あるいは例示しないが長手方向に対し左右対称の多角形状、長円形状などとして長手方向に幅寸法を先端方向に向けて漸減させる等変えることにより、曲げ難さが急激に変化せず、境界部分に応力が集中し難くなる。
【0033】
図8に示す第2の変形形態の高温超電導導体1bは、接続部10の方形の接続用高温超電導線3の長手方向端部に段差解消部材16を設けた構成としている。段差解消部材16は、例えば銅やステンレス鋼などの金属や、ポリイミド樹脂のカプトン(Kapton;登録商標)やメタ系アラミド樹脂のノーメックス(Nomex;登録商標)などでなる方形薄板で、その厚さを長手方向に接続用高温超電導線3と同じ厚さから漸減するように形成されている。こうした形状を有するため、第1の変形形態と同様に、接続部10と接続部10以外の境界部分で曲げ難さが急激に変化せず、境界部分に応力が集中し難くなる。なお、段差解消部材16の厚さの変化は段階的に変化するものであっても、また方形状に限らず二等辺三角形状であってもよい。
【0034】
さらに、図9に示す第3の変形形態の高温超電導導体1cは、方形平板状の接続用高温超電導線3で、高温超電導線2の上下面を同位置で挟まずに、上面側と下面側とで長手方向に端部位置を異なるようにずらして挟むようにする。これにより、第1の変形形態と同様に、接続部10と接続部10以外の境界部分で曲げ難さが急激に変化しなくなり、境界部分に応力が集中し難くなる。図示しないが上面側と下面側とに設ける接続用高温超電導線の長手方向の寸法を異なるものとしてもよい。
【0035】
また、上記の本実施形態の高温超電導導体1では、高温超電導導体1の対をなす2本の高温超電導線2は、その端部に接続用高温超電導線3を固着して並列化した形態となっているが、例えば図10乃至図12に示す高温超電導導体の第4乃至第6の変形形態のようにしてもよい。
【0036】
すなわち、図10に示す第4の変形形態の高温超電導導体1dでは、2本の高温超電導線2は、間に微小間隙を設け、それぞれの幅広面が表裏面となるようにし平行に並べられた状態で、例えば銅やステンレス鋼などの可撓性を有する金属製形状維持部材のテープ線17が上下面に半田付け等により固着されることにより、あるいは図示しないがテープ線17を平行に並べられた2本の高温超電導線2の周囲に巻きつけることによって一体化されている。
【0037】
このようにすることで、並列化した高温超電導線2の形状が維持でき、巻線作業等する際の取り扱いが容易となり、一体化されていない場合に、取り扱う際に生じる2本の高温超電導線2の間隔が離れるなどして接続用高温超電導線3を用いて一体化されている接続部10の境界部分に応力が集中し、酸化物超電導層6に機械的ダメージを与えて超電導特性を劣化させてしまう虞があるのが、接続部10以外の2本の高温超電導線2を一体化することで防止でき、超電導特性の劣化の虞がなくなる。なお、形状維持部材のテープ線17を、例えばポリイミド樹脂のカプトン(Kapton;登録商標)やメタ系アラミド樹脂のノーメックス(Nomex;登録商標)などの絶縁材料で形成して2本の高温超電導線2の周囲に巻きつけ一体化するようにすれば、形状の維持と共にコイル製作の際のターン間絶縁とすることができる。
【0038】
また、図11に示す第5の変形形態の高温超電導導体1eでは、平行に並べられた2本の高温超電導線2の全周囲を、微小間隙を設けた両線間を含めて、例えばポリイミド樹脂のカプトン(Kapton;登録商標)やホルマール樹脂などの絶縁材料で形成した可撓性を有する形状維持部材の被覆材18で被覆して一体化されている。このようにすることで、並列化した高温超電導線2の形状が維持でき、巻線作業等する際の取り扱いが容易となり、超電導特性を劣化させる虞がなくなる。そして、被覆材18をコイル製作の際のターン間絶縁とすることができる。
【0039】
さらに、図12に示す第6の変形形態の高温超電導導体1fは、平行に並べられた安定化層8を個々に有さず、他の積層構造を前述の高温超電導線2と同じくする2本の高温超電導線2aの全周囲に、形状維持部材を兼ねるよう安定化層8aを、例えば銅めっき等を覆うように施して一体化した、安定化層8aを金属保護層とした構成となっている。このようにすることで、並列化した高温超電導線2aの形状が維持でき、巻線作業等する際の取り扱いが容易となり、超電導特性を劣化させる虞がなくなる。
【0040】
さらにまた、上記の本実施形態における高温超電導コイル31の高温超電導導体1を、例えば図13に示す高温超電導コイルの第1の変形形態のようにしてもよい。
【0041】
図5に示すように、高温超電導コイル31が発生する磁場(B)の強度と方向はコイル内部に分布しているため、高温超電導導体1に印加される磁場(B)も、高温超電導導体1の長手方向に分布することになる。このことから、図13において、本変形形態の高温超電導コイルに用いられる高温超電導導体1gは、転位間隔で面積積分した磁束(φ)が等しくなるように、印加される磁場(B)の分布に合わせて転位の位置、すなわち長手方向に連接した複数対の高温超電導線2bを接続用高温超電導線3で接続する位置(接続部10の間隔)が決定されている。なお、高温超電導線2bは、前述の高温超電導線2と同じ積層構成を有するものとなっている。
【0042】
このように高温超電導コイルの高温超電導導体1gが形成されているので、適正に誘導電界(E)のキャンセルを行うことができ、高温超電導コイルに変動磁界(dB/dt)を発生させた場合においても、通電容量の低減や交流損失の発生が少なくなる。すなわち、本変形形態によれば、上述のような誘導電界(E)のキャンセルが適正になされるよう転位の位置を決定した高温超電導導体1gを用いて高温超電導コイルを製作することで、変動磁界(dB/dt)を発生させた場合に、通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導コイルとすることができる。なお、図13では、高温超電導導体1gの並列化した対をなす高温超電導線2をそれぞれ実線、点線で示し、実線で示す片方だけについて図示したが、点線で示す他方も同様となっている。
【0043】
さらに、上記の本実施形態における高温超電導コイル31を、例えば図14に示す高温超電導コイルの第2の変形形態のようにしてもよい。
【0044】
すなわち、図14において、高温超電導コイル31aの巻線部32aは、ターン間絶縁材33を被覆した高温超電導導体1が、片方の幅広面の外表面に等幅に形成された離形材35を設け離形処理するようにして巻き回され、所定形状にコイル成形された後、含浸材34の含浸がなされて形成されている。離形材35は、例えば、フッ素系樹脂、パラフィン、各種グリース、シリコーンオイル等で形成されている。
【0045】
これにより、高温超電導コイル31aを冷却する際に、高温超電導導体1の高温超電導線2に働く力が緩和され、超電導特性の劣化を抑制することができる。すなわち、高温超電導導体1に用いる高温超電導線2は、厚さ(テープ厚)方向の非常に弱い引張り力でも機械的なダメージを受けて超電導特性が劣化する。一方、コイル製作で用いられる含浸材34、例えばエポキシ樹脂は、高温超電導コイル31aに用いられる他の部材の材質と比べて熱収縮率が大きいため、特に高温超電導コイル31aを冷却する際に高温超電導線2の厚さ(テープ厚)方向に引張り力が生じる。このため、高温超電導導体1の高温超電導線2の厚さ方向の面である幅広面の片方の外表面と含浸材34との間に離形材35を介在させる離形処理をすることで、作用する引張り力が緩和されることになって、超電導特性の劣化が抑制される。その結果、高温超電導コイル31aの冷却時等に生じる高温超電導導体1における超電導特性劣化の虞を少なくすることができる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態を図15乃至図19により説明する。なお、本実施形態は、第1の実施形態の高温超電導導体1を1次転位導体として高次(2次)の転位導体である高温超電導導体を構成したものであるため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本発明の実施形態の構成について説明する。
【0047】
先ず図15及び図16により説明する。符号21は1次転位導体であり、この1次転位導体21は第1の実施形態の高温超電導導体1と同様に構成されている。そして、1次転位導体21の長手方向端部、すなわち、所定長の対をなしている2本の高温超電導線2の長手方向端部には、1本の高温超電導線2の端部上面に端部用高温超電導線22が半田9により固着されている。端部用高温超電導線22は、高温超電導線2の厚さと同寸法の段差が形成された略Z形状に曲折されたもので、高温超電導線2と等幅に形成されており、高温超電導線2と同様に、金属基板層4の上に中間層5、酸化物超電導層6、保護層7を順に積層した多層構造となっていて、積層された全層を覆うように安定化層8が被覆されている。なお、長手方向前後となる前後対の各高温超電導線2間の接続は、接続用高温超電導線3により行われている。
【0048】
また、1次転位導体21の対をなしている2本の高温超電導線2は、間に微小間隙を設け、幅広面が表裏面となるようにして平行に並べられて並列化されている。そして、図16(a)に図15の断面Wでの矢視方向の断面図を示すように、並列化された2本の高温超電導線2は、各層の積層順が上下逆になっていて、一方の高温超電導線2は金属基板層4が上側に、他方の高温超電導線2は金属基板層4が下側に位置するようになっている。また、他方の高温超電導線2の端部上面に固着された端部用高温超電導線22の各層の積層順は、金属基板層4が上側に位置するようになっている。さらに、図16(b)に図15の断面Xでの矢視方向の断面図を示すように、最先端部では、一方の高温超電導線2と端部用高温超電導線22とは各層の積層順が同じで、並列した状態となっている。
【0049】
次に図17乃至図19により説明する。23は高温超電導導体であり、この高温超電導導体23は、上記のように構成された1次転位導体21を用いて2次の転位を施すようにして形成されている。この高温超電導導体23では、1次転位導体21が、上述した第1の実施形態の高温超電導導体1における高温超電導線2に対応するものとして考えることができ、下記するように、同様な形をなすように接続がなされている。
【0050】
高温超電導導体23は、対をなしている2本の高温超電導線2によりそれぞれが形成されて組み合わされた2つの1次転位導体21と、組み合わされた1次転位導体21を複数組、長手方向に連接する幅広面(テープ面)の幅が1次転位導体21の幅の略2倍(高温超電導線2の幅の略4倍)に形成された方形平板状の接続用高温超電導線24とによって構成されている。この接続用高温超電導線24は、図16に示すように高温超電導線2、端部用高温超電導線22と同様、テープ状の金属基板層4の上にそれぞれ等幅に形成された中間層5、酸化物超電導層6、保護層7を順に積層した多層構造となっている。
【0051】
また、高温超電導導体23を構成する組み合わされた2つの1次転位導体21は、間に微小間隙を設けるようにして、それぞれの幅広面が表裏面(上下面)となるようにして平行に並べられて並列化され、並列化された2つの1次転位導体21は、端部用高温超電導線22が固着されている端部での各層の積層順が上下逆になっていて、連接方向の前の組である前組における一方側の1次転位導体21は金属基板層4が下側に、他方側の1次転位導体21は金属基板層4が上側に位置するようになっている。さらに、前組の1次転位導体21に、所定間隔を設けて長手方向に連接される次の組(後の組)である後組の2つの1次転位導体21では、一方側の1次転位導体21は金属基板層4が上側に、他方側の1次転位導体21は金属基板層4が下側に位置するようになっている。
【0052】
さらにまた、長手方向に隣接し前後となる2組の各対をなしている1次転位導体21の端部の上下面、すなわち、端部を形成する高温超電導線2と端部用高温超電導線22の上下面には、電気的に接続されるよう半田9により接続用高温超電導線24がそれぞれ固着されて接続部25が構成され、2組の1次転位導体21の接続が行われる。そして、2組の1次転位導体21の下面に固着される接続用高温超電導線24の各層の積層順は、図18(a)に図17の断面Yでの矢視方向の断面図を示すように、前組の一方側の1次転位導体21の積層順と同じで、金属基板層4が下側に位置し、上面に固着される接続用高温超電導線24は、逆に、前組の他方側の1次転位導体21の積層順と同じで、金属基板層4が上側に位置するようになっている。
【0053】
なお、接続用高温超電導線24の各層の積層順は、後組の2つの1次転位導体21に対し図18(b)に図17の断面Zでの矢視方向の断面図を示すように、前組の場合とは逆で、下面に固着される接続用高温超電導線24と他方側の1次転位導体21の積層順が同じであり、上面に固着される接続用高温超電導線24と一方側の1次転位導体21の積層順が同じである。
【0054】
そして、上述のように構成された高温超電導導体23では、第1の実施形態と同様に、中間層5が電気絶縁体で構成されているため、酸化物超電導層6に流れる電流は、中間層5を貫通する方向には流れ出し難くい。したがって、上下の接続用高温超電導線24が固着されて、前後の2組の1次転位導体21が連接された接続部25では、酸化物超電導層6に流れる電流は、次のように流れる。
【0055】
すなわち、前組の1次転位導体21と接続用高温超電導線24の接続部分においては、断面Yでの断面図の図18(a)に実線矢印で示すように、一方側の1次転位導体21からは上面に固着された接続用高温超電導線24の方向に、また他方側の1次転位導体21からは下面に固着された接続用高温超電導線24の方向に流れることになる。さらに、後組の1次転位導体21と接続用高温超電導線24の接続部分においては、断面Zでの断面図の図18(b)に実線矢印で示すように、上面に固着された接続用高温超電導線24から他方側の1次転位導体21の方向に、また下面に固着された接続用高温超電導線24から一方側の1次転位導体21の方向に流れることになる。
【0056】
これにより、1次転位導体21に流れる輸送電流(I)の経路は、接続用高温超電導線3,24を省略する図19に実線矢印で示すように、前組の2つの1次転位導体21における一方側の1次転位導体21を流れた輸送電流(I)は、接続部25で後組における他方側の1次転位導体21に流れる経路を変える。同様に、前組における他方側の1次転位導体21を流れた輸送電流(I)は、接続部25で後組における一方側の1次転位導体21に流れる経路を変えることになる。なお、各組の1次転位導体21では、第1の実施例におけると同様に、それらの対をなしている2本の高温超電導導体1の間を、接続部10で一方から他方へ、あるいは逆に他方から一方へと輸送電流(I)は、経路を変えながら流れる。
【0057】
このように、高温超電導導体23では、長手方向に連接した複数組の1次転位導体21を流れる経路を変えながら輸送電流(I)は流れることになる。その結果、高温超電導導体23は、各接続部10,25で転位した場合と同様の効果を得ることができることになる。すなわち、前述した第1の実施形態と同様に、高温超電導導体23は、輸送電流(I)の流れる経路が制限され、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に、1次転位導体21の電流経路に発生する誘導電界(E)はキャンセルされることになり、磁化電流(I)の発生が抑制される。
【0058】
また、積層構造が逆の高温超電導線2を並列化して対としたものを複数対長手方向に連接すると共に、対にした高温超電導線2を1次転位導体21とし、同様に、積層構造が逆の1次転位導体21を並列化して組としたものを複数組長手方向に連接するようにして高温超電導導体23を構成しているので、接続部10,25は簡単な構成となり、その製作は容易となる。さらに、巻線を行う場合も、立体交差等による厚さの増大もないことから、巻線作業も容易となる。
【0059】
以上の通り、高温超電導導体23は、輸送電流(I)が流れる経路を接続部10,25で転位させた場合と同様に制限されるため、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に発生する誘導電界(E)がキャンセルされ、磁化電流(I)の発生が抑制される。これにより、通電容量の低減や交流損失の発生が少なく、しかも高温超電導導体23の製作が容易である。そして、高温超電導線2が狭幅のものであっても、コイル設計等を行う際にコイル形状及び寸法の設計自由度を十分に確保することができ、設計が容易となり、コイル製作時の巻線作業も容易なものとなる。
【0060】
なお、転位が2次の転位導体を得る場合について上述したが、転位が3次の転位導体を得る場合は、2次の転位導体を用い、これを、上記における1次転位導体21に置き換えて同様の方法によって構成すればよく、さらに転位を多くした高次(複数次)化する場合には、同様の方法を繰り返していけば得ることができる。
【0061】
すなわち、第1の実施形態の高温超電導導体1を1次転位導体21とし、p次(低次)転位導体(p≧1)からより転位を高次化した(p+1)次(高次)転位導体の高温超電導導体を得る場合、p次(低次)の低次転位導体に、端部での高温超電導線2の各層の積層方向を同方向にし、また端部を同一面にする端部用高温超電導線を電気的に接続する。そして、高温超電導線2の各層の積層方向が同方向となった低次転位導体により、端部での高温超電導線2の各層の積層方向が逆となるようにして並列化を行い並列化した低次転位導体を得る。
【0062】
さらに、この並列化した低次転位導体に、接続部で連接する他の並列化した低次転位導体を、長手方向に隣接する各低次転位導体の間でも端部での高温超電導線2の各層の積層方向が逆となるよう、また端部間に長手方向の所定間隔を設けるようにして配置する。配置された連接する前後の各並列化した低次転位導体の4つの低次転位導体を接続用高温超電導線で電気的に接続して接続部での連接を行い、(p+1)次化(高次)した高温超電導導体を得る。これを繰り返すことで、さらに高次の複数次化した高温超電導導体とすることができる。
【0063】
また、本実施形態の高温超電導導体23も、前述の第1の実施形態の各変形形態と同目的で同様に、接続部25を構成したり、並列化した1次転位導体21をテープ線17や被覆材18などにより一体化したりするようにしてもよい。
【0064】
そして、高温超電導導体23を捲き回すことにより形成した高温超電導コイル(不図示)は、前述の第1の実施形態と同様に、変動磁界(dB/dt)が印加された場合に通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導導体23を用いて製作しているため、変動磁界(dB/dt)を発生させた場合に、通電容量の低減や交流損失の発生が少ない高温超電導コイルとすることができる。
【0065】
以上の実施形態よれば、高温超電導導体においては、コイル形成に際し、幅が狭い高温超電導線を用いてのコイル内部での転位が可能となり、コイル形状及び寸法の設計自由度を十分に確保することができ、また高温超電導コイルにおいては、コイル設計が容易で、コイル製作時の巻線作業等も容易なものとすることができる。
【符号の説明】
【0066】
1,1a,1b,1c,1d,1e,1f,1g,23…高温超電導導体、2,2a,2b…高温超電導線、3,15,24…接続用高温超電導線、4…金属基板層、5…中間層、6…酸化物超電導層、7…保護層、8,8a…安定化層、9…半田、10,25…接続部、16…段差解消部材、17…テープ線、18…被覆材、21…一次転位導体、22…端部用高温超電導線、31,31a…高温超電導コイル、32,32a…巻線部、33…ターン間絶縁材、34…含浸材、35…離形材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板層、電気絶縁体の中間層及び酸化物超電導層の各層を順に積層してなる所定長のテープ状の高温超電導線を、互いの間に微小間隙を設け幅広面が同一面を形成するよう平行に並べて並列化し、かつ並列化した前記高温超電導線を、長手方向に所定間隔を設けて接続部で複数連接した高温超電導導体であって、
前記並列化した高温超電導線は、並列化したうちの少なくとも1本の前記高温超電導線における各層の積層順が他の前記高温超電導線における各層の積層順と逆となっており、 前記接続部は、前記並列化した高温超電導線の連接方向に隣接するもの同士の各端部の上下面に、平板状の2枚の接続用高温超電導線をそれぞれ電気的に接続するように固着することによって形成されていることを特徴とする高温超電導導体。
【請求項2】
前記並列化した高温超電導線は、2本の前記高温超電導線でなり、且つ前記接続部で所定間隔を設けて隣接する2つの前記並列化した高温超電導線は、長手方向に隣接する各対応の前記高温超電導線との間とも各層の積層順が逆となっていると共に、前記接続部での2つの前記並列化した高温超電導線の4本の前記高温超電導線の電気的接続が、前記接続用高温超電導線によりなされていることを特徴とする請求項1記載の高温超電導導体。
【請求項3】
請求項2記載の高温超電導導体を1次転位導体とし、低次転位導体を用いて転位を複数次化した高次転位導体の高温超電導導体であって、
前記低次転位導体の端部で高温超電導線の各層の積層方向が同じ向きになるように、端部用高温超電導線が電気的に接続されていると共に、前記高温超電導線各層の積層方向が同じ向きに揃えられた前記低次転位導体が、端部での前記高温超電導線各層の積層方向が逆になるように並列化されており、かつ並列化された前記低次転位導体と、接続部で長手方向に所定間隔を設けて連接される並列化された前記低次転位導体とが、4つの低次単位導体の長手方向に隣り合うもの同士の端部の前記高温超電導線各層の積層方向が逆になるようにして電気的に接続がなされていることを特徴とする高温超電導導体。
【請求項4】
前記接続用高温超電導線の長手方向の端部の形状が、長手方向に対して幅寸法を先端方向に向けて漸減させるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項5】
前記接続用高温超電導線の長手方向の端部に段差解消部材を配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項6】
前記接続用高温超電導線の長手方向の端部の位置が、前記高温超電導導体の上下面の両側で異なることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項7】
可撓性があるテープ線を固着もしくは巻きつけたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項8】
可撓性がある被覆材で被覆したことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項9】
前記並列化した高温超電導線が、金属保護層により一体化されたことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導導体。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の高温超電導導体を巻き回し、コイル成形した後に熱硬化性合成樹脂を含浸させて巻線部が形成されていることを特徴とする高温超電導コイル。
【請求項11】
接続用高温超電導線で高温超電導線を接続する接続部の長手方向の位置が、コイル内部で前記高温超電導導体が経験する磁束をキャンセルするように決められていることを特徴とする請求項10記載の高温超電導コイル。
【請求項12】
前記高温超電導導体の少なくとも表面の一部に離形処理が施されていることを特徴とする請求項10記載の高温超電導コイル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−222346(P2011−222346A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91214(P2010−91214)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】