説明

高濃度の二酸化塩素ガスを担持し、使用時には二酸化塩素ガスの残量が視認でき、かつ美観ならびに長期保存安定性に優れ使用時の濃度管理が可能である高濃度二酸化塩素ガス担持物とその使用および保存方法

【課題】 高濃度の二酸化塩素ガスを担持し、長期間の保存が可能であり、使用時に任意の量を除放させ、さらに使用中二酸化塩素ガス担持量の残量が視認できる空間の浄化剤が従来はなかったため、空間の微生物、悪臭、その他化学物質の除去を可能とする美観に優れた二酸化塩素ガス担持体の開発、製造、使用、保存方法
【解決手段】
pH6.0以下の透明なシリカゲルに対し、亜塩素酸ナトリウム溶液を含浸させ、35℃以下の条件下で減圧乾燥を行い、製造した高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲル重量に対して1%以上のシリカゲルを添加し、0.3nm以上100000nm以下の微細孔を1以上有する二酸化塩素ガス透過性フィルムに密封し、炭酸ガス透過性を10ml/(m・day/MPa)以下に、かつ水蒸気透過度を5g/(m・day)以下にした袋または容器に100torr以下に減圧しヒートシールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素の有する細菌・カビ・ウイルスなど微生物の殺菌および不活化、ならびに悪臭物質の分解効果、アレルゲンタンパク質の変性効果を利用した生鮮食品の觧度保持剤ならびに消臭剤および空間内の微生物量を減少させ花粉や各種アレルゲンの原因となるタンパク質を変性させる空間浄化剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化塩素は強い酸化剤として、殺菌、ウイルスの不活化、消臭、水の異臭味の除去、除鉄、除マンガン効果が高く、水道水などを含めた水の浄化剤としては50年以上にわたって産業的に利用されてきた。これらの水の処理剤としては二酸化塩素そのものを水に溶解させることにより比較的安全に利用できるため、現在も温浴施設などにおけるレジオネラ菌対策などに利用されている。
【0003】
しかし、水ではなく空間内に浮遊する微生物の除去、不活化を目的とした場合、二酸化塩素は爆発性を有する危険なガスであり、また、塩素の刺激臭もあるため従来は以下にあげる先行技術文献のように極低濃度の二酸化塩素をゲル状にするか、もしくは固体酸と混合し使用時の空間内の湿度によって微弱な二酸化塩素ガスを放出させる方法しかなく、現在危惧されている、新型インフルエンザなどの微小な飛沫や空気感染によって感染が拡大するような細菌やウイルス禍においては、抑止力あるいは予防力たりえるだけの能力を有するものではなかった。
【0004】
そのため、これまでの先行技術文献の用途は限定的な鮮度保持剤や消臭剤などに用いるより他なく二酸化塩素の効果を十分に活用としているとはいえなかった。
【0005】
先行技術文献の詳細を類型化すると、二酸化塩素をガスとして除放させ継続的に空間内のガス濃度を維持する方法としては大きく分けて3種類の方法が提案されている。
【0006】
第一の方法は、亜塩素酸塩溶液を吸水性の樹脂に吸着させゲル化し、使用時に酸化剤あるいは活性剤などを添加することで二酸化塩素ガスを除放させる方法である。
【0007】
第二の方法は、特許出願公開平11−27808、特許第4109165号で提案されている方法であり、第一の方法の欠点を改善している。具体的には亜塩素酸塩溶液を吸水性の樹脂に吸着させ、ゲル化する際に粘土質や二酸化塩素ガスを吹き込む方法である。このようにすることで事前に二酸化塩素を含有したゲル剤を作っておく事が可能になり、使用する際に酸化剤や活性剤を添加する手間が必要ないとされている。また、二酸化塩素ガスの除放性の点でも長期にわたり安定したガス濃度の維持が可能であるとされている。
【0008】
第三の方法は、特許出願公開昭60−161307、特許出願公開昭64−71804、特許出願公開平9−202706、特許出願公開2002−370910において提案されている方法であり、具体的には多孔質無機固体酸としての性質を持つ物質に亜塩素酸塩溶液を含浸また、亜塩素酸塩を混和することにより砂状の二酸化塩素ガス担体を形成する。さらに詳しくは固体酸としてシリカアルミナや結晶性シリカゼオライトやシリカゲルに亜塩素酸塩溶液を含浸させ反応抑制剤として炭酸カリウムや無機鉱物を加え反応を抑制させつつ、使用時には周囲の湿度を利用して固体酸と亜塩素酸塩の反応を促し二酸化塩素ガスを放出させる方法である。
【0009】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許出願公開昭60−161307
【特許文献2】特許出願公開昭64−71804
【特許文献3】特許出願公開平9−202706
【特許文献4】特許出願公開2002−370910
【特許文献5】特許出願公開平11−27808
【特許文献6】特許第4109165号
【特許文献7】特許出願公開平6−233985
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
まず第一の方法の問題点は、使用時に酸化剤あるいは活性剤などを添加するため手間がかかり、また酸化剤、活性剤などの容器などを別途用意する必要があるためコスト的に不利であること、さらに酸化剤、活性剤などを添加直後から数日〜数週間の間濃度高くなりすぎるため、濃度を長期間にわたって均一に保つ事が難しい点にある。また、時間の経過に伴いガスが放出されていくわけであるが、二酸化塩素ガスの放出が停止したタイミングが極めてわかりにくく、そのため効果がすでに失われているにも拘らず、そのまま放置してしまうという欠点がある。
【0012】
次に第二の方法の問題点は、事前に二酸化塩素ゲルを形成させている点で第一の方法の活性剤添加という手間を省略できる優れた方法であるが、二酸化塩素への反応が徐々に進行していくため、密閉容器内で長期保管時には容器内部の二酸化塩素濃度が高くなり容器の破損や劣化を招くことが極めて多く、かといって濃度を低くすると効果の有効範囲や有効時間の低減を招く。また、ゲル化剤として使用する各種ガムやポリアクリル酸などが二酸化塩素によって劣化し、離水したりゲルを形成できなくなったりしてしまう。しかも水溶性ゲルとして調整した場合、加速試験や過酷試験が難しく長期保存安定性を適切に試験によって確認することができない。また、すでに容器内で二酸化塩素がゲル状で密閉保存されている場合、使用開封時に一度に放出されてしまうため、使用直後においてはやはり第一の方法と同様に高濃度になってしまう。
さらに吸水性樹脂などでゲル化した場合、使用時期の後半になるとゲルは白くなってしまい二酸化塩素ガスがまだ放出されているかが視認できないため、交換のタイミングがわからない点は第一の方法と同じである。
その結果市場に流通している製品は、結局活性剤を使用前に添加するという第一の方法と大差ないものになってしまっている。
【0013】
ところで、二酸化塩素ガスが放出している状態を「オン」の状態として、二酸化塩素ガスが放出されていない状態を「オフ」の状態と呼んだ場合、第一の方法では「オン」と「オフ」の切り替え方法が、「活性剤の添加」という物理的な方法による一方、第二の方法では常に「オン」の状態にあるということを意味する。この第二の方法では確かに「活性剤の添加」という切り替えを行う必要はなくなったが、それはすなわち常時「オン」の状態にしているが故であって、本質的な解決にはなっていない。そのため容器の劣化や破損が副次的に発生し、使用時の初期濃度が高くなるため除法性が得られず、結果、活性剤を使用時に添加するという状態になっているのである。
【0014】
最後に第三の方法の問題点は、シリカアルミナや結晶性シリカゼオライトと亜塩素酸塩を混和する方法の場合、外観は砂と同様の状態になるため、やはり効果の終了時期が視認できない。
【0015】
また、「特許出願公開昭60−161307」にあるシリカアルミナによる亜塩素酸塩溶液を含浸する方法ではシリカアルミナの酸強度について説明がないが、仮に二酸化塩素が十分に発生しうる固体酸としての酸強度があるとすると、高温の50℃での減圧乾燥という方法で乾燥させた場合、このような高い温度下では二酸化塩素ガスがシリカアルミナから放散されすぎるため大量生産時には多大な危険性を伴うため実用化は難しい。逆に十分な酸強度のないシリカアルミナを選択した場合、使用時に二酸化塩素ガスが十分に発生しない。
【0015】
さらに、結晶性シリカゼオライトと混和する方法では二酸化塩素ガスの発生量を抑制するためにpH6.5〜9.0にする方法が提案されているが、これらの固体酸に亜塩素酸塩を含浸させ二酸化塩素ガスを発生させる方法は、使用時の周囲の環境における湿度に応じて二酸化塩素が生成されることを利用した方法であり、高濃度の二酸化塩素ガスを放散させることはできず、また、濃度を任意に管理することもできず周囲の環境にただ任せるしかない、つまり「オン」と「オフ」の関係でいえば、周囲の環境によって緩やかに「オン」の状態に以降していくという方法であり主体的に切り替えることができない点が問題であった。
【0016】
また、この文献によればpHを6.0以下にした場合は二酸化塩素ガスが発生しすぎるとされている。このようにこの方法では濃度を任意に制御することができないため、低濃度の反応になるようにpHを制御せねばならなかった。
【0017】
一方で前述の「オン」と「オフ」の制御に関しては、この第三の方法の場合、乾燥させることによって、制御を行っているわけであるが、亜塩素酸塩が持つ潮解性のために、pHに拘らず乾燥工程を厳密にしない限り、またしたとしても、潮解性によって単純に混和しただけでは、保存期間が長くなるに従って二酸化塩素ガスが発生してしまう。すなわちこの方法においても「オフ」の状態が亜塩素酸塩が持つ潮解性のために曖昧になり第二の方法が有した問題点を本質において解決できていない。
【0018】
シリカゲルに亜塩素酸塩溶液を含浸させる方法では、反応を抑制するために炭酸ナトリウム過酸化水素付加物を加えているが、そもそもこの文献においては多孔質物質の選択肢がセラミックス、珪藻土、シリカゲル、活性アルミナなど多岐にわたり、これらはその物性が各々異なるため、単一安定した製品にはなりえない。また、シリカゲルにおいてもそのpHを含め物性が異なるためこの文献からは二酸化塩素の安定した放出がありえるかがわからない。
仮にpHが中性からアルカリ性の領域下にあるとすると、亜塩素酸塩を含浸させただけでは十分な二酸化塩素ガスの放出は期待できない。また、pHが酸性下にあるシリカゲルを用いた場合は、含浸させただけでは二酸化塩素ガスが多量に発生し、量産させることは極めて難しい。
さらにこれらのシリカゲルを利用した提案においても、反応を抑制させ濃度の長期間にわたる維持のために、最終的に他の炭酸ナトリウム過酸化水素付加物や石膏などの物質と混和し錠剤などに成型するため、やはり使用終了のタイミングがわからない。
このシリカゲルを用いた内容は、単に亜塩素酸塩溶液の吸着を行う素材としてシリカゲルを利用し、反応を抑制させるために工夫を行った内容であるため、シリカアルミナや結晶性シリカゼオライトを用いた方法と本質的に同じであり、その問題点も共有している。
また、これらの方法は基本的に亜塩素酸を担体に担持させる際に周囲の湿度でもって反応が起こり、継続していく機序であるため、一度反応が開始した後は容易に反応を停止させることができない点も問題である。
【0019】
基本的にこの第三の方法は、亜塩素酸塩と何らかの担体を混合させる際にほとんど反応させないようにするための特許技術であって、そのため使用時の二酸化塩素の放出が使用時の環境に依存し、なりゆきまかせのものになってしまう点が以下に提示する本発明との根本的な相違である。
【0020】
また、「特許出願公開平6−233985」はシリカゲルなど多孔性無機質担体に二酸化塩素ガスを吸着させ、その吸着させた物質に加圧空気を送り込むことで、二酸化塩素ガスを一気に放出させる提案であるが、この方法では製造時に高濃度の二酸化塩素ガスを取り扱わねばならず生産が不安定かつ危険を伴うため実用は極めて難しい。
【0021】
すなわち従来の先行技術文献に記載されたすべての方法は、結局以下にあげる3つの問題点が解決または明記されていないのである。
【0022】
第一の問題点は、製品コンセプトの問題である。生産時に高濃度の二酸化塩素を担持させ安定して大量生産することができないために、従来技術はすべて亜塩素酸塩と酸性物質を混合する際に反応を抑制し、微弱な二酸化塩素しか発生しないように反応を抑えた状態で製造し、使用時に周囲の湿度や活性剤の添加などによって二酸化塩素ガスを放出するという技術であり製品である。
しかし、このような製品では、活性剤を添加する場合には手間がかかり、亜塩素酸塩と酸性担体を混合成型した製品では、使用時の周辺環境に二酸化塩素濃度が依存するため、事前に使用時の濃度を定めることができず、二酸化塩素の発生量が著しく増減し、使用環境の二酸化塩素濃度を制御できないため、殺菌やウイルス対策の用途としては用いることができず、消臭剤としての位置づけしか現実的にはできなかった。
【0023】
第二の問題点は、使用時の濃度の問題である。二酸化塩素は高濃度では人体に有害であり、その水準は米国産業衛生専門家会議(ACGIH)が指針を出している。それによれば、短期曝露濃度として0.3ppm、長期曝露濃度として0.1ppmであり、第一の問題で指摘した通り、従来技術の製品はすべて濃度管理ができないため、使用初期にはこの許容濃度を超えることが多く、本来であれば欠陥製品として販売すべきでないものも小屋内ではまだ法整備がなされていないため、市場ではこの点の安全性が明瞭でないものも販売されている。塩素臭として二酸化塩素が知覚できる水準ではすでに高濃度であり、細菌やウイルスなどの微生物や悪臭物質、アレルゲンの分解などに有効な濃度はより低い濃度で可能である。すなわち人間が知覚できない程度の極低濃度で二酸化塩素濃度を維持し、かつ、二酸化塩素濃度がなくなった時点がわかる製品でない限り、空間に浮遊する細菌やウイルスの殺菌・不活化を謳うことは利用者が誤謬を招く可能性があり問題がある。
このように従来の技術に基づく製品は、高濃度の二酸化塩素を安定して何らかの担体に担持させ、使用時には安定した除放ができず、使用者はその効果の終了のタイミングもわからないなど使用時の濃度に関して極めて曖昧な製品しか従来の技術ではできなかった。
【0024】
第三の問題点は、保存安定性の問題である。一般消費者市場において安定して製品を供給するためには最低1年、通常は3年の保存安定性を担保しなければならないとされている。従来の技術では高濃度の二酸化塩素を安定して保存する方法が確立されていないがために、第一の問題点で指摘した製品コンセプトの問題につながっている。
その上従来技術では、亜塩素酸塩と担体を混合した際に微弱に反応させる製品や吸水性樹脂で二酸化塩素をゲル化した製品では高温、高湿度下で保存安定性が得られず、また、過度に反応を抑制しゲル化など1剤にした製品の場合、使用時に二酸化塩素がほとんど放出せず本来の二酸化塩素ガスの効果が得られない。その結果、活性剤を添加するタイプの製品以外は市場から実質的に消えている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は上記の三つの問題点を解決する手段として、鋭意検討を重ねた結果従来技術とはまったく逆のアプローチを取ることによって本発明に至った。まず第一の問題点の解決方法として高濃度の二酸化塩素ガスを安定して大量に生産する方法を確立する方法を発明した。 従来の技術では高濃度の二酸化塩素を含有したガス組成体は安定した製造方法が確立されていなかったわけであるが、 本発明者は透明なpH6.0以下のシリカゲルに亜塩素酸塩水溶液を含浸させた際の反応熱を制御し温度を35℃以下に保ち、減圧乾燥させることによって高濃度の二酸化塩素ガスを発生させ吸着させることを可能にしたことを第一の特徴とする。
【0026】
第二の問題点の解決方法は、透明なシリカゲルに高濃度の二酸化塩素ガスを担持させ、二酸化塩素本来の黄褐色の色調の濃淡をもってガスの担持、除放状況が視認できるようにし、かつ短時間に担持させた二酸化塩素ガスが放出されないように高濃度二酸化塩素担持シリカゲルを二酸化塩素ガスを任意の期間一定の濃度で除放するために0.3nm以上100000nm以下の微細孔を1つ以上有した袋に内包し使用することを第二の特徴とする。
【0027】
第三の問題点の解決方法は、高濃度の二酸化塩素ガスを担持させたシリカゲルを長期にわたって保存させるために、炭酸ガス透過性を10ml/m・day/MPa以下かつ透湿度を5g/m・day以下の素材を任意に積層した袋、または容器を任意に選択し、作成された高濃度の二酸化塩素ガスを担持したシリカゲルの重量に対して相対湿度20%以下においてガス吸着率が8以上になるシリカゲルを1%以上のぞましくは20%〜25%を混和し、さらに100torr以下に減圧した上で密封する方法によって、密閉された袋または容器内で平衡な二酸化塩素ガスの担持状態を維持できることを見いだした。これにより従来の先行技術における問題点であった保存性の問題が解決され、長期保存安定性が担保された。
【発明の効果】
【0028】
本発明による高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルは、黄褐色の色をした硬質なビーズ状に生成される。保存は長期間にわたり二酸化塩素ガスの吸脱着が袋または容器内で平衡状態を保つため、使用直前まで劣化が少なく、さらに使用後は周囲の湿度に左右されることなく、使用時の袋あるいは容器のガス透過性に正の相関でもってガスの放出量が制御される。
その結果、効果の終了時には透明なビーズ状に変化し、その交換タイミングが一目にして瞭然となり、しかも内包する袋または容器の二酸化塩素ガス透過性を制御することによって、担持させた二酸化塩素ガスを用途に応じて任意の濃度で放出させることが可能となり、空間の殺菌、ウイルスの不活化、悪臭物質の消臭、アレルゲンの分解、鮮度保持が極めて簡便に行えるようになった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明において使用される亜塩素酸塩としては、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムのような亜塩素酸アルカリ金属塩、亜塩素酸カルシウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩があげられるが、亜塩素酸ナトリウムがもっとも入手しやすく使用上もコストの面でも問題なく利用できる。亜塩素酸塩溶液としては市販の亜塩素酸ナトリウムの固形物を精製水に溶解させ25%に調整したものも使用可能であるし、30%に調整した物でも使用可能である。さらにはすでに溶液として市販されている32%あるいは25%として調整されている亜塩素酸ナトリウム溶液をそのまま用いても問題ないがより高濃度の亜塩素酸塩溶液を用いることで、必然的により高濃度の二酸化塩ガス担持シリカゲルを製造することができる。この時亜塩素酸塩の濃度は20%未満では濃度が低く効率が悪くなるため、25%〜35%に調製することが望ましい。
【0030】
亜塩素酸塩を吸着反応させるシリカゲルとしてはpHが6.0以下に調整された物で相対湿度20%以下での吸着率が8以上であればどのようなものでも使用が可能であるが、外観上割れを防止するという点からは耐水性の高いシリカゲルを用いることが望ましい。
【0031】
減圧乾燥においては、市販されている一般的な真空乾燥機または凍結真空乾燥機を用いることができる。周知の通り減圧下においてはその度合いに応じて、沸点が降下する。さらに通常の温風乾燥ではシリカゲルのような多孔質体の乾燥においては、表面に水がにじみ出てから蒸発させねばならず、二酸化塩素が溶液として漏出してしまうため効率が良くない。減圧乾燥法であればこの点、より短時間で不要な水分を昇華させることができる。
また、亜塩素酸ナトリウム溶液をシリカゲルに含浸させることによる反応熱を利用し、水分の昇華にともなう温度低下を防ぐことができる。この時、温度が35℃を超えると二酸化塩素ガスの脱離が激しくなり作業効率が低下するため、温度は35℃以下で行うことが望ましい。
【0032】
本発明において減圧乾燥は反応を抑制するためではなく、反応を促進させ、より高濃度の二酸化塩素を生成させるためであり、かつ温度を制御することによって高濃度に生成した二酸化塩素を高濃度にシリカゲルに担持させることができる。この時減圧させる程度は、乾燥を十全に行える程度であればよく、ー5℃〜25℃の範囲で沸点降下に応じた減圧を行えばよい。添加する亜塩素酸塩溶液はシリカゲル重量に対して10%以上60%以下で任意に選択することができるが、製造効率と二酸化塩素の生成及び担持の効率において25%以上35%以下の範囲の亜塩素酸塩濃度の溶液をシリカゲル重量に対して35%以上50%以下添加することが望ましい。
【0033】
装置におけるコスト的機能的な制約がなければ、もっとも効率の良い方法は凍結真空乾燥機を用いる方法である。この方法によれば高濃度の二酸化塩素ガス担持シリカゲルを生成しつつ脱離を最小限に抑えた最も効率の良い製造を行うことが可能である。
【0034】
保存においては、まず、前述の方法によって作成した高濃度の二酸化塩素ガスを担持した直後のシリカゲルは二酸化塩素ガスが急速に離脱し放出しやすいため、二酸化塩素の脱離を抑制するために、シリカゲルを追加で添加する。添加する量は放出量と吸着量が平衡に保たれる量がよく、望ましい添加量はシリカゲルの吸着能力にも左右されるが最低1%以上必要であり、望ましくは10%以上、さらに望ましくは18%から23%を添加する。この時乾燥工程を経ているため、相対湿度は充分に低下している。このような相対湿度が低い環境下においてはシリカゲルの種類による性能の変化はわずかであるので、この時追加で加えるシリカゲルは任意のものを用いることができる。
【0035】
高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルは、そのまま開放系において静置した場合、数日ですべての二酸化塩素ガスを放出してしまう。そこで、本発明においては製造した高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルを二酸化塩素の分子よりも大きく、かつ、霧雨などの水滴の大きさよりも小さい微細孔、すなわち0.3nm以上かつ100000nm以下の微細孔を有する防水透湿性素材の袋に密封する。
この時上記範囲内の微細孔の大きさと数を増減させることによって、高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルから除放される二酸化塩素ガスの量を制御し、任意の期間低濃度の二酸化塩素ガスで対象となる空間の衛生管理を行うことができる。このような性質を有する袋としては、食品の鮮度保持用の袋やおむつなどに使用される防水透湿性素材を広く利用できる。
【0036】
通気流量が5000cc/min以上のものを使用した場合、約3日〜1週間程度の二酸化塩素ガス除放性が得られる。より長期間の除放性を得たい場合は、20〜200cc/minの袋を使用することで実現することができる。
【0037】
二酸化塩素ガスを担持させたシリカゲルと追加したシリカゲルを単純に混和した上で、透湿度が5g/m・day以下の袋または容器に入れ、100torr以下に真空密封シーリングを行うことで、密閉された袋の内部に外部から水蒸気が入る量は包装体の透湿度に依存する。その結果内部の相対湿度はほとんど上昇せず、二酸化塩素ガスを担持させたシリカゲルから脱離する二酸化塩素ガスについては、追加で添加するシリカゲルによって吸着されシリカゲル全体の二酸化塩素濃度を均一に保ち、保存時においてシリカゲルからの二酸化塩素ガスの吸脱着を平衡状態に保つことができる。また、炭酸ガス透過性が10ml/m・day/MPa以下であれば、袋内から外部への二酸化塩素ガスの脱離をほとんど抑制できるため袋内部の吸脱着によって長期間の保存安定性を持たせることが可能である。透湿度および炭酸ガス透過性については、その値が少なければ少ないほどより長期間の保存安定性が得られるため、上記値は最低限の長期保存安定性を担保する値であって、その値に拘泥するのではなく入手しうるもっとも優れたガスバリア性のフィルムを使用することが望ましいのは言うまでもない。
【0038】
上記のような袋ないし容器としてはもっとも簡便なものとして生鮮食品の真空パックなどに用いるフィルム素材であり、EVOHあるいはシリカ蒸着によってガスバリア性を付与したフィルムであれば様々な企業が出しているガスバリア性フィルムで問題なく使用できる。以下に示す例では三菱樹脂製テックバリアHXを使用した。
【0039】
上記のような方法で作成する高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルは、亜塩素酸ナトリウム(日本カーリット製)25gを精製水75gに溶解させ、出来た亜塩素酸ナトリウム25%溶液100gを300gのRD形シリカゲルに加える。シリカゲルの温度が約30℃程度であることを確認し、真空乾燥機によって減圧乾燥させる。得られた高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルにRD形のシリカゲルを100g加え混和した上で、真空パックに用いるSivmPET12/ON15/LLDPE50でフィルムが構成された袋に再度100torrに減圧した上でヒートシーリングすることによって得られる。
【0040】
次に実施例、ならびに比較例によって本発明の効果を説明する。
【0041】
表1は、実施例1、比較例1、比較例2の各方法によって製造した二酸化塩素ガス担持シリカゲルが保持している二酸化塩素量を比較したものである。各方法によって製造したガス担持体から100gを粉砕し1Lの水に分散し1時間後DPDグリシン法によって二酸化塩素濃度を測定した。
【0042】
表2は、実施例2、比較例3、比較例4の各方法によって製造したガス担持体に関する外観上の経時変化とガスの保持量を比較した。
【0043】
表3は、実施例3、比較例5、比較例6、比較例7の各方法によって製造した二酸化塩素ガス担持シリカゲルを40℃、相対湿度85%以上に1ヶ月保存した後の各二酸化塩素ガス担持シリカゲルが保持している二酸化塩素ガス量の減少率を比較した。
【0044】
表4は、実施例4、比較例8、比較例9の各試料を1mの実験設備に入れ、内部の二酸化塩素ガス濃度を経時的に測定した。測定にあたってはガステック社の二酸化塩素ガス検知管23Mおよび23Lを使用した。
【0045】
表5は、実施例5と不織布マスクを日本食品分析センターに送り、不織布マスクを滅菌後、芽胞菌、大腸菌、サルモネラ菌の菌液を添加し、実施例5と同じ容器内に設置した際の菌数の変化を測定した。
【実施例1】
【0046】
亜塩素酸ナトリウム(日本カーリット製)25gを精製水75gに溶解し、比表面積720m/g、細孔径2.2nmのRD形シリカゲル(富士シリシア化学製)300gに含浸させ、35℃に達した時点で100torrに減圧乾燥させたもの。
【比較例1】
【0047】
実施例1と同様に含浸させた上で、50℃で温風乾燥させたもの。
【比較例2】
【0048】
実施例1と同様に含浸させた上で、真空乾燥させなかったもの。
【0049】
【表1】

【実施例2】
【0050】
実施例1の方法で製造した二酸化塩素ガス担持シリカゲルをガラス容器に100gを入れ、シリコン性通気栓で閉じたもの。
【比較例3】
【0051】
シリカアルミナ300gに亜塩素酸ナトリウム25gを加え均一に混合させたものを実施例2と同様のガラス容器に100gを入れ、シリコン性通気栓で閉じたもの。
【比較例4】
【0052】
亜塩素酸ナトリウム25gを精製水75gに入れ、二酸化塩素ガスを溶解させた後、吸水性樹脂に膨潤ゲル化させたものを実施例2と同様のガラス容器に100gを入れ、シリコン性通気栓で閉じたもの。
【0053】
【表2】

【実施例3】
【0054】
実施例1の方法で製造した高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲル75gにRD形シリカゲル25gを加え混合した後、SivmPET12/ON15/LLDPE50の3層で積層されたフィルムに入れ100torrに減圧しヒートシールによって密閉したもの。
【比較例5】
【0055】
実施例3と同様に製造後、OPP袋に密閉したもの。
【比較例6】
【0056】
比較例4と同様にして製造したゲルをPE製容器に密閉したもの。
【比較例7】
実施例3と同様の方法で製造した後にRD形シリカゲルを添加しないまま密閉したもの。
【0057】
【表3】

【実施例4】
【0058】
実施例1の方法で製造した高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲル75gにRD型シリカゲル25gを加え混合した後、微細孔を有し通気量50cc/minの防水透湿性袋に密封たもの。
【比較例8】
【0059】
亜塩素酸ナトリウム25%溶液50gにゲル化剤として吸水性樹脂10gおよびクエン酸5gを添加しゲル化させたもの。
【比較例9】
【0060】
市販されている安定化二酸化塩素ゲル100gを使用。
【表4】

※1:ガス検知管による検出上限値以上
※2:ガス検知管による検出下限値未満
【実施例5】
【0061】
実施例1の方法で製造した高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲル75gにRD型シリカゲル25gを加え混合した後、20gを計量し、微細孔を有し通気量20cc/minの防水透湿性袋に密封したもの。
【表5】

※1:検出限界未満
【0062】
表1から明らかな通り、本発明によって製造した実施例1の二酸化塩素ガス担持シリカゲルは他の比較例1および比較例2や3と比べて数倍以上のガスを担持させている。また、比較例1の方法で製造したものは製造時に極めて高濃度の二酸化塩素ガスがシリカゲルから脱離したため製造自体が困難であった。
【0063】
表2から本発明によって製造した二酸化塩素ガス担持シリカゲルは、二酸化塩素ガスの脱離に従って、シリカゲルの色が濃い黄褐色から透明へと変化した一方で、他の比較例3では外観の変化はなく、比較例4では1週間ほどでゲルが白く変化し、使用終了のタイミングがわからなくなった。
【0064】
表3から本発明による実施例3の方法で保存したものは、過酷な環境下においても高い安定性を維持していた一方、比較例5は40%ほど二酸化塩素濃度が低下し、比較例6の方法にいたっては容器が劣化し軽く力を入れただけで破損した。
【0065】
表4から本発明による実施例4の方法で使用したものは、長期間にわたって対象となる空間について濃度変化が緩やかに推移した。測定に使用した検知管の測定範囲に基づいて対象空間を1mとしたが、約10畳(1.62m×10)天井高2.6mとして濃度を希釈した場合、従来技術の比較例8では初期にはACGIHに定める長期曝露濃度、短期曝露濃度をともに超える値を示した。一方、実施例4では常にACGIHの基準を上回ることなく緩やかに濃度が推移し、実用性の高さが確認できた。比較例9は保存性の問題を改善するために安定化二酸化塩素をゲル化することで、消臭効果を謳った市販されている製品であるが、表4に示す通りまったく二酸化塩素ガス濃度が検出できず、実用的な効果は得られない可能性が示唆された。
【0066】
表5から本発明によって実施例5の試料を用いることで、もっとも殺菌剤に耐性のある芽胞菌でさえ6時間後には99.998%以上の殺菌効果を得られた。他の大腸菌、サルモネラなどに関しては1時間後の時点で大腸菌において検出限界以下まで、サルモネラについても99.99%以上の殺菌効果が得られており、N95マスクなど高価なマスクを使い捨てにせず使用できることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によって得られた高濃度二酸化塩素担持シリカゲルは従来の二酸化塩素除放性を標榜する製品とは根本的に異なり、対象空間に対する濃度管理が完璧であり、さらにその使用期限も視認して把握することが可能であることから、消臭のように効果を知覚できる用途に限らず、空間の衛生管理に広く用いることが可能となる。具体的には、不特定多数の利用者が集まりかつ閉鎖された空間である、駅、地下街、各種商業施設、図書館、社会福祉施設、学校などの空間のインフルエンザ予防などに使用可能であり、さらには従来使い捨てすることが前提であったマスクなども極めて低いコストで簡便に滅菌水準の消毒が行えることから、再利用することも可能である。
このように優れた効果を得られるものでありながら、黄色の透明硬質なビーズは美観にも優れ陳腐な消臭剤などを設置しがたい施設でも広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH6以下に調整された多孔質ケイ酸塩に亜塩素酸塩水溶液を含浸させ、35℃以下に温度を制御した状態で減圧乾燥下で反応させることを特徴とする高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲル
【請求項2】
請求項1に記載の高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルの重量に対して20%(重量比換算)以上のシリカゲルを加え、炭酸ガス透過性10ml/(m・day/MPa)以下かつ水蒸気透過度5g/(m・day)以下の容器または袋に入れ、かつ、100torr以下に減圧密封することによって袋内部の二酸化塩素ガスのシリカゲルからの脱離量と吸着量を平衡状態に保つことを特徴とする保存方法
【請求項3】
請求項1に記載の高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルの重量に対して1%(重量比換算)以上のシリカゲルを加え、0.3nm以上100000nm以下の微細孔を1以上有する二酸化塩素ガス透過性フィルムに入れ密封し、二酸化塩素ガスを除放させることを特徴とする空間および水の衛生管理用高濃度二酸化塩素ガス担持シリカゲルの使用方法

【公開番号】特開2010−254669(P2010−254669A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61498(P2010−61498)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(508133053)有限会社クリーンケア (4)
【Fターム(参考)】