説明

高濃度紅茶ポリフェノール含有容器詰紅茶飲料

【課題】紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するにも関わらず、色調が優れ、クリームダウンが抑制された、適度な苦渋味のある風味の良好な容器詰紅茶飲料とその製造方法、並びに高濃度に紅茶ポリフェノール含有する容器詰紅茶飲料の色調改善方法を提供すること。
【解決手段】高濃度に紅茶ポリフェノールを含有する紅茶飲料におけるタンニン、テアフラビン、カフェインの含量とそれらの比率を望ましい範囲にコントロールする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有する容器詰紅茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
紅茶に含まれる紅茶ポリフェノールには強い抗酸化作用、血中脂質上昇抑制作用、血糖上昇抑制作用や発ガン抑制作用等の様々な生理機能が知られている。これらの生理機能をより良く発現させるためには、体内吸収や作用濃度域の点からその摂取量を増やすことが必要であり、多量の紅茶ポリフェノールを容易に取りやすい飲料形態が望ましい。
しかし従来の容器詰紅茶飲料では、その生理作用を期待するには多量の紅茶飲料を飲用する必要があり、より簡便に多量の紅茶ポリフェノールを摂取するためには、高濃度に紅茶ポリフェノールを含有する容器詰飲料の開発が望まれている。
【0003】
茶飲料を上市する際には、その嗜好性を保持しながらも外観の保存安定性を高めるために様々な技術が開発されてきた。とりわけ紅茶飲料においては色調などの外観は市場性の観点から非常に重要で、特に紅茶中のタンニン成分とカフェインが結合して不溶化することによって沈澱や濁りが生じるクリームダウン(非特許文献1)の防止策として、低温抽出(特許文献1)や酵素処理(特許文献2)、アルカリ処理(特許文献3)による方法などが提案されている。また、紅茶浸出液に特有の橙赤色〜赤褐色の水色には紅茶の製造工程における発酵処理でカテキン類が酸化重合することによって生成するテアフラビン類やテアルビジン類が大きな影響を与えることが知られている。
【0004】
これまでに、非重合体カテキン類を高濃度に含有する容器詰茶飲料の長期保存安定化技術として、カテキン類含量及びカテキン類の異性体率を調整する方法(特許文献4)が開示されているが、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有した容器詰紅茶飲料は検討された例がない。
【特許文献1】特開昭56−117754公報
【特許文献2】特開昭50−154462公報
【特許文献3】特開昭47−16696公報
【特許文献4】特許第3329799号明細書
【非特許文献1】日本缶詰協会,「缶・びん詰,レトルト食品,飲料製造講義II(各論編)」、日本社団法人 日本缶詰協会,平成14年5月20日、p.558−560
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紅茶ポリフェノールを高濃度に含有する容器詰紅茶飲料を得るための一般的な方法としては、単に紅茶葉から従来よりも濃く抽出し、調合する方法、すなわち、飲料に対する茶葉の使用率を上げる手段が挙げられるが、このような方法では水色が黒くなってしまい、紅茶らしからぬ色調を呈したり、またクリームダウンによって濁りや沈殿が発生したり、苦渋味が強くなり過ぎて飲用に適さないなどの種々の問題があり、上市する上で大きな障害となってしまう。
【0006】
また、従来に開示された技術を用いて紅茶ポリフェノールを高濃度に含有する容器詰紅茶飲料を製造しようとした場合、低温抽出法では紅茶ポリフェノールの抽出効率が低いため、高濃度の紅茶ポリフェノール量に調製するのが困難であるし、タンナーゼ等を用いた酵素処理法では酵素分解によって生じる没食子酸が原因で違和感のある酸味が生じる上、処理に長時間を要するため、風味や成分の劣化が避けられない。また、アルカリ処理法では紅茶ポリフェノールが成分変化することによって色調が黒くなったり、中和処理により塩味がついたりするなどの問題がある。
【0007】
高濃度に紅茶ポリフェノールを含有する容器詰紅茶飲料に関しては外観への影響が従来飲用されてきた濃度の場合よりも強く表れるため、上記のような従来技術では不十分であるばかりか、クリームダウンの防止以外に、紅茶ポリフェノールを高濃度に調整した際の色調保持に関しては殆ど検討されておらず、従来に開示された方法では、高濃度紅茶ポリフェノールを含有する容器詰紅茶飲料における問題は解決されていない。本発明の目的は、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するにも関わらず、色調が優れ、クリームダウンが抑制された、適度な苦渋味のある、風味の良好な容器詰紅茶飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、紅茶飲料中における特定成分の含有量とその含有重量比をコントロールすることにより、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有しながらも、色調に優れ、クリームダウンが抑制された、適度な苦渋味のある風味の良好な容器詰紅茶飲料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1記載の本発明は、(A)タンニン:60〜200mg/100mL、(B)テアフラビン類を含有し、その含有重量比[(B)/(A)]が0.07〜0.25である容器詰紅茶飲料を提供するものである。
【0010】
請求項2記載の本発明は、(C)カフェイン:10〜30mg/100mLを含有し、
その含有重量比[(A)/(C)]が4〜14である請求項1記載の容器詰紅茶飲料を提供するものである。
【0011】
請求項3記載の本発明は、紅茶抽出物を添加したものである請求項1又は2記載の容器詰紅茶飲料を提供するものである。
【0012】
請求項4記載の本発明は、紅茶抽出物が(C)カフェイン含量3重量%以下であることを特徴とする請求項3記載の容器詰紅茶飲料を提供するものである。
【0013】
請求項5記載の本発明は、(A)タンニン:60〜200mg/100mL、
(B)テアフラビン類を含有し、
その含有重量比[(B)/(A)]を0.07〜0.25にコントロールすることを特徴とする容器詰紅茶飲料の製造方法を提供するものである。
【0014】
請求項6記載の本発明は、さらに、(C)カフェイン:10〜30mg/100mLを含有し、その含有重量比[(A)/(C)]を4〜14にコントロールすることを特徴とする請求項5記載の容器詰紅茶飲料の製造方法を提供するものである。
【0015】
請求項7記載の本発明は、紅茶抽出物を添加することを特徴とする請求項5または6記載の容器詰紅茶飲料の製造方法を提供するものである。
【0016】
請求項8記載の本発明は、(A)タンニン及び(B)テアフラビン類含量をコントロールすることを特徴とする容器詰紅茶飲料の色調改善方法を提供するものである。
【0017】
請求項9記載の本発明は、さらに(C)カフェイン含量をコントロールすることを特徴とする請求項8記載の容器詰紅茶飲料の色調改善方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば紅茶ポリフェノールを高濃度に含有しているにも関わらず、色調に優れ、クリームダウンが抑制された、適度な苦渋味のある、風味の良好な容器詰紅茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の容器詰紅茶飲料における(A)タンニン含量は60〜200mg/100mLであるが、好ましくは75〜190mg/100mL、さらに好ましくは90〜180mg/100mLである。タンニン含量が60mg/100mLより少ないと十分な生理効果が期待できない。またタンニン含量が200mg/100mLを超えると強烈な苦味、渋味が生じ、日常的に飲用するのに適さない。本発明におけるタンニン量とは酒石酸鉄法によって定量されるポリフェノール類を示す。
【0020】
また(A2)紅茶ポリフェノールとは、上記紅茶中のタンニン成分のうち、紅茶特有のポリフェノール類を指し、茶の生葉などに存在するカテキン類((±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート)が酸化酵素であるポリフェノールオキシダーゼの発酵作用によって酸化重合することで形成されたオリゴマー(テアシネンシン類、テアフラビン類、テアルビジン類等)や、さらに発酵が進むにつれこれら成分が複雑に重合した構造の定かではない化合物をも含んだ物質群であり、つまり、紅茶ポリフェノールは紅茶製造における発酵工程によって二次的に生成する成分を意味する。紅茶飲料中の紅茶ポリフェノール含量はタンニン含量からカテキン類の含量を除いて求められる。
【0021】
本発明の容器詰紅茶飲料における(A2)紅茶ポリフェノール含量は50〜180mg/100mLであり、好ましくは65〜170mg/100mL、さらに好ましくは80〜160mg/100mLである。紅茶ポリフェノール含量がこの範囲にあると、紅茶ポリフェノールを多量に摂取するのが容易であり、強烈な苦味や渋味が生じず風味が良好である。このような、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有させる手段としては、茶飲料に対する茶葉の使用率を上げるか、市販されている紅茶抽出物、紅茶抽出物の濃縮物、紅茶抽出物の精製物を添加すればよい。
【0022】
また、テアフラビン類とは、茶の発酵過程でカテキン類から生成する赤色色素成分であり、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートBおよびテアフラビンジガレートの4種が知られており、本発明の(B)テアフラビン類含量はこれらの総和であり、HPLCによって定量できる。本発明の容器詰紅茶飲料における(B)テアフラビン類と(A)タンニンの含有重量比[(B)/(A)]は、0.07〜0.25であり、好ましくは、0.08〜0.25、さらに好ましくは0.09〜0.25、特に好ましくは0.1〜0.25で含まれる。この比率が0.07未満では紅茶ポリフェノール含量を高濃度になるように調製した際に、紅茶らしからぬ黒みの強い色調となりやすいため、外観上好ましくない。一方、この比率が0.25超えると紅茶ポリフェノールの安定した溶解性保持が困難となる。
【0023】
通常、紅茶葉として市販されている製品を浸出処理して得られる浸出液では、この比率が0.07未満になるため、本発明の紅茶飲料中の(B)テアフラビン類と(A)タンニンの含量が調整された容器詰紅茶飲料を得るためには、テアフラビン含量を調整する手段が必要となる。その手段としては例えば、紅茶浸出液や紅茶抽出物を有機溶媒を用いた分画処理、又は合成吸着樹脂等の分離用担体を用いた吸着処理を利用してテアフラビン含量を高める精製手段を用いることができるが、飲料を調製する際に、一般的な抽出処理に得られる茶浸出液と、上記のようにして得られた紅茶抽出物の精製物とを併用するのが風味の点で好ましく、この他にも、紅茶以外の茶葉から得られた抽出物(例えば緑茶抽出物又はその精製物)をポリフェノール酸化酵素等による酵素処理や化学的な触媒反応によって得られたテアフラビン類を併用して添加してもよい。市販されている紅茶抽出物の精製物としては、栗田工業製「テアフラビン混合物」、長良サイエンス製「紅茶テアフラビン(合成標準試薬)」などが挙げられる。また、このような抽出物やテアフラビンを得る公知手段は、特開平11−225672や特開2002−95415等に詳細に例示されている。
【0024】
テアフラビン類の含量は4〜30mg/100mLであるのが好ましいが、さらに好ましくは5〜30mg/100mL、特に好ましくは6〜30mg/100mLである。
本発明の容器詰紅茶飲料における、(B)テアフラビン類と(A2)紅茶ポリフェノールの含有重量比[(B)/(A2)]は0.08〜0.28であり、好ましくは0.09〜0.28、さらに好ましくは0.1〜0.28である。この比率が0.08より低いと色調が黒くなり、外観上優れない。
【0025】
また、本発明の容器詰紅茶飲料におけるカフェイン含量は10〜30mg/100mL、好ましくは10〜25mg/100mL、さらに好ましくは10〜20mg/100mLである。本発明の容器詰紅茶飲料における(A)タンニンと(C)カフェインの含有重量比[(A)/(C)]は4〜14が好ましい。さらに好ましくは4.5〜14、特に好ましくは5〜10である。カフェイン含量が多いと濁りや沈殿が生じ、外観上好ましくなく、容器詰飲料の市場価値が大きく損なわれる。カフェイン含量はHPLCによって測定できる。
【0026】
また、本発明の容器詰紅茶飲料における(A2)紅茶ポリフェノールと(C)カフェインの含有重量比[(A2)/(C)]は、3.5〜9であるのが好ましい。この比が小さいと濁りや沈殿が発生し、外観上好ましくない。
【0027】
カフェイン含量を調整する方法としては、紅茶抽出液を有機溶媒による分画処理や合成吸着樹脂等の分離用担体を用いた吸着処理を利用してカフェインを除去する手段やこのような手段で調製されたカフェイン含量の少ない紅茶抽出物を添加する手段のほか、有機溶媒、水、超臨界流体化した二酸化炭素などの溶媒に浸してカフェインを選択的に除去された紅茶葉を抽出原料に使用する手段などがあるが、カフェイン含量の少ない紅茶抽出物を用いるのが飲料製造の簡便性の観点から望ましい。このような茶抽出物を得る手段としては、特開平8−109178や特表平10―512582等に詳細に例示されている。
【0028】
本発明における紅茶抽出物中のカフェイン含量は0〜3重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜2重量%、特に好ましくは0〜1重量%である。紅茶抽出物中のカフェイン含量がこの範囲にあると、本発明における容器詰紅茶飲料のカフェイン含有量を所望の範囲にするのが容易であり好ましい。
【0029】
本発明における容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。容器詰飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などで、通常の形態で提供することができる。
【0030】
また本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後に加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で行なわれる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度まで冷却して容器に充填する等の方法が採用される。
【0031】
本発明の紅茶飲料に使用する紅茶としては、ツバキ目ツバキ科ツバキ属の常緑樹である「チャノキ」であるCamellia sinensisの中国種(var.sinensis)やアッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。
【0032】
紅茶を抽出する方法については、常法に従って行い、一般的には、まず原料とする紅茶葉を20〜50倍重量の温水又は熱水にて抽出する。抽出時間、温度は使用する茶の種類や目的により適宜調整するが、通常は60℃以上100℃以下で3〜30分の抽出を行い、必要に応じて抽出中に撹拌を行う。次いで茶殻等の固形成分を濾過や遠心分離により固液分離することにより茶抽出液を得ることができる。
【0033】
また抽出時に水に予めアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。また煮沸脱気や窒素ガスなどの不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつついわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。
紅茶飲料を調合する方法については通常飲料を製造する際の方法で行う。本発明の容器詰紅茶飲料のpHは3〜7であり、好ましくは4〜7、さらに好ましくは5〜6.5である。
【0034】
本発明における紅茶抽出物とは、紅茶葉を原料とし、水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒等によって抽出し濃縮したもの、あるいは抽出し濃縮したものを精製したものである。紅茶抽出物の形態としては、固体、液体、スラリー状など種々の形態のものが挙げられる。本発明で用いられる好適な紅茶抽出物はタンニン含量は15〜80重量%、紅茶ポリフェノール含量は12〜75重量%、テアフラビン含量は1.5〜70重量%、カフェイン含量は3重量%以下のものであり、このような紅茶抽出物は有機溶媒を用いた分画処理や合成吸着樹脂等の分離用担体を用いた吸着処理などの公知技術を適宜利用して得ることができる。
【0035】
本発明の容器詰飲料には、処方上添加してよい成分として、デキストリン、環状オリゴ糖、植物性油脂、動物性油脂、果汁、食品用エキス、酒類、ハーブ・スパイス類、香辛料抽出物、茶類、pH調整剤、甘味料、酸味料、調味料、酵素、糊料、ゲル化剤、増粘多糖類、安定剤、乳化剤、着色料、香料、酸化防止剤、日持向上剤、栄養強化剤、保存料等の副成分を単独あるいは併用して配合してもよい。例えば甘味料としては、砂糖、ぶどう糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパラテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。また、人工甘味剤も使用できる。また、環状オリゴ糖としては、α−、β−、γ−シクロデキストリン及び、分岐α−、β−、γ−シクロデキストリン等が使用できる。酸味料としては、天然成分から抽出した果汁類のほか、クエン酸、コハク酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸ナトリウムなどの有機酸類、有機酸塩類、リン酸、リン酸二ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムなどの無機酸類、無機酸塩類などが挙げられる。
【0036】
(実施例)
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
〈タンニンの測定方法〉
日本食品分析センター編、「五訂 日本食品標準成分分析マニュアルの解説」、中央法規、2001年7月、p.252に記載の公定法(酒石酸鉄試薬法)に従って求めた。
【0038】
〈テアフラビン類の測定方法〉
試料溶液を0.45μm親水性PTFEフィルター(アドバンテック(株)製,DISMIC−13HP)で濾過した後、以下の条件にてHPLCを用いて定量する。
(HPLC分析条件)
装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム(日本ウォーターズ株式会社製)
カラム : CAPCELL PAK UG120(4.6mmI.D.×100mm、SHISEIDO)
移動相A液: 0.05%リン酸水
移動相B液: アセトニトリル:酢酸エチル=985:15
グラジエント:注入20分後から40分にかけてA液81%から77%に達するリニアグラジエント
流速 :1mL/min
検出 : UV280nm
カラム温度:25℃
サンプル量:20μL
【0039】
〈カフェイン、カテキン類の測定方法〉
試料溶液を0.45μm親水性PTFEフィルター(アドバンテック(株)製,DISMIC−13HP)で濾過した後、以下の条件にてHPLCを用いてカフェイン、カテキン類8種((±)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(±)−ガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−カテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート)を定量した。カテキン類はHPLCによって定量した8種の合計である。
(HPLC分析条件)
装置 :アライアンスHPLC/PDAシステム(日本ウォーターズ株式会社製)
カラム :Mightysil RP−18 GP、4.6mmI.D.×150mm(関東化学(株)製)
移動相A液:アセトニトリル:0.05%リン酸水=10:400の溶液
移動相B液:メタノール:アセトニトリル:0.05%リン酸水=200:10:400の溶液
グラジエント :注入3分後から25分後にA液100%からB液100%に達するリニアグラジエント
流速 :1mL/min
検出 :UV275nm(カフェイン)、UV230nm(カテキン類)
カラム温度:40℃
サンプル量:10μL
【0040】
〈紅茶抽出物の製造方法〉
紅茶抽出物A:
市販されている紅茶葉(インド・アッサム産、CTC製法)1.0kgを95℃の熱水10Lに投入後、温度を保持しながら攪拌して30分間抽出した。この抽出液を100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した後、濾過板(NA300、アドバンテック(株)製)で濾過し、抽出濾過液を得た。次いでこの抽出濾過液をロータリーエバポレーターで減圧下、50℃で約1Lまで濃縮した後、凍結乾燥機で乾燥させ、紅茶抽出物Aとして276gを得た。この紅茶抽出物Aの成分分析を行ったところ、タンニン:26.2重量%、紅茶ポリフェノール:22.4重量%、テアフラビン類:2.6重量%、カフェイン:5.9重量%であった。
【0041】
紅茶抽出物B:
100gの紅茶抽出物Aを約40℃の温水500mLに攪拌溶解し、分液漏斗をもちいてクロロホルムで抽出(200mL×6回)した。この抽出残渣をロータリーエバポレーターで濃縮して容存するクロロホルムを留去し、凍結乾燥機で乾燥させ、紅茶抽出物Bとして88gを得た。この紅茶抽出物Bの成分分析を行ったところ、タンニン:29.2重量%、紅茶ポリフェノール:22.4重量%、テアフラビン類:2.8重量%、カフェイン:0.5重量%であった。
【0042】
紅茶抽出物C:
紅茶抽出物A10gを20%のメタノール水溶液1000mLに溶解させ、合成吸着樹脂(ダイヤイオンHP−20、三菱化学(株)製)を充填したガラスカラム(4.0mmI.D.×30cm)に通液した。次いで、50%のメタノール水溶液1500mLで溶出した後、75%のメタノール水溶液で溶出した画分を回収し、これをロータリーエバポレーターで濃縮してメタノールを留去し、凍結乾燥機で乾燥させ、紅茶抽出物Cとして1.03gを得た。この紅茶抽出物Cの成分分析を行ったところ、タンニン:65.6重量%、紅茶ポリフェノール:64.0重量%、テアフラビン類:48.6重量%、カフェイン:1.0重量%であった。
【0043】
〈紅茶抽出液の製造方法〉
紅茶抽出液A:
液体飲料用にブレンドした紅茶葉A50gを80℃に加温した熱水1.5Lに加え、撹拌しながら4分間抽出を行い、100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した。続いて濾紙(No.26、アドバンテック(株)製)を用いて濾過し、抽出液(タンニン含有量280.5mg/100mL、テアフラビン類含有量13.5mg/100mL、カフェイン含有量77.7mg/100mL、紅茶ポリフェノール含有量242.5mg/100mL)を得た。
【0044】
紅茶抽出液B:
液体飲料用にブレンドした紅茶葉B40gを70℃に加温した熱水1Lに加え、攪拌しながら4分間抽出を行い、100メッシュのステンレスフィルターで茶葉を分離した。続いて濾紙(No.26、アドバンテック(株)製)を用いて濾過し抽出液(タンニン161.1mg/100mL、テアフラビン類含有量7.5mg/100mL、カフェイン含有量39.8mg/100mL、紅茶ポリフェノール含有量141.6mg/100mL)を得た。
【0045】
表1の処方に記載した量の紅茶抽出液に紅茶抽出物を添加し、イオン交換水で全量100mLになるよう希釈した。この希釈液にL−アスコルビン酸を300ppm添加した後、炭酸水素ナトリウムでpH6.0に調整し、調合液を得た。この調合液を耐熱性ガラス容器に50gずつ充填して密封後、レトルト殺菌処理(121℃、10分間)を行って本発明の容器詰紅茶飲料を得た。
【0046】
上記方法により得られた容器詰紅茶飲料を用いて、飲料中の成分測定を行い、また外観(色調・濁り・沈殿)評価および官能評価をおこなった。
【0047】
色調に関する評価は目視によりおこなった。評価基準は、紅茶らしい水色を呈しているかによって判断し、◎:非常に良い、○:良い、△:普通、×:悪い、とした。
【0048】
また、濁り・沈殿の有無に関する評価は目視によりおこなった。◎:非常によい、○:良い、△:普通、×:悪い、とした。
【0049】
さらに、パネリスト5名による官能評価試験をおこなった。評価基準は、適度な苦渋味があり風味が良好であるかによって判断し、◎:非常に良い、○:良い、△:普通、×悪い、とした。
【0050】
また、総合評価は外観(色調・濁り・沈殿)評価結果および官能評価結果と紅茶ポリフェノール含量が所望の範囲にあるかの評価をあわせて総合的に評価した。
【0051】
また、表2の処方に従い、実施例と同様の方法で比較例となる容器詰紅茶飲料を得た。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1、2から明らかなように、本発明品1〜11は、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するにも関わらず、タンニン含有量とテアフラビン類含有量を調整することによって、色調に優れ、濁りや沈殿が抑制された、適度な苦渋味のある風味の良好な容器詰紅茶飲料を製造することができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、前記のとおり、紅茶ポリフェノールを高濃度に含有するにも関わらず、色調に優れ、クリームダウンが抑制され、かつ適度な苦渋味のある風味の良好な容器詰紅茶飲料を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)タンニン:60〜200mg/100mL、
(B)テアフラビン類を含有し、
その含有重量比[(B)/(A)]が0.07〜0.25である容器詰紅茶飲料。
【請求項2】
さらに、(C)カフェイン:10〜30mg/100mLを含有し、
その含有重量比[(A)/(C)]が4〜14である請求項1記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項3】
紅茶抽出物を添加したものである請求項1又は2記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項4】
紅茶抽出物中の(C)カフェイン含量が3重量%以下であることを特徴とする請求項3記載の容器詰紅茶飲料。
【請求項5】
(A)タンニン:60〜200mg/100mL、
(B)テアフラビン類を含有し、
その含有重量比[(B)/(A)]を0.07〜0.25にコントロールすることを特徴とする容器詰紅茶飲料の製造方法。
【請求項6】
さらに、(C)カフェイン:10〜30mg/100mLを含有し、
その含有重量比[(A)/(C)]を4〜14にコントロールすることを特徴とする請求項5記載の容器詰紅茶飲料の製造方法。
【請求項7】
紅茶抽出物を添加することを特徴とする請求項5または6記載の容器詰紅茶飲料の製造方法。
【請求項8】
(A)タンニン及び(B)テアフラビン類含量をコントロールすることを特徴とする容器詰紅茶飲料の色調改善方法。
【請求項9】
さらに、カフェイン含量をコントロールすることを特徴とする請求項8記載の容器詰紅茶飲料の色調改善方法。






【公開番号】特開2008−125428(P2008−125428A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313668(P2006−313668)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(303044712)三井農林株式会社 (72)
【Fターム(参考)】