高炉操業方法
【課題】より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供する。
【解決手段】三重管ランスを構成する内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、微粉炭(PC:固体還元材)、都市ガス(易燃性還元材)、O2(支燃性ガス)の一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込むことにより、例えばO2と共に都市ガスが先に燃焼することで微粉炭が爆発的に拡散し、同時に都市ガスの燃焼熱で微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。また、送風に富化するO2の一部を三重管ランスから吹込むことにより、高炉内のガスバランスを損なうことがなく、O2の過剰供給を回避することができると共に、使用するO2の原単位を低減することができる。
【解決手段】三重管ランスを構成する内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、微粉炭(PC:固体還元材)、都市ガス(易燃性還元材)、O2(支燃性ガス)の一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込むことにより、例えばO2と共に都市ガスが先に燃焼することで微粉炭が爆発的に拡散し、同時に都市ガスの燃焼熱で微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。また、送風に富化するO2の一部を三重管ランスから吹込むことにより、高炉内のガスバランスを損なうことがなく、O2の過剰供給を回避することができると共に、使用するO2の原単位を低減することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉羽口から微粉炭などの固体還元材と、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)や都市ガスなどの易燃性還元材とを吹込んで、燃焼温度を上昇させることにより生産性の向上及び還元材原単位の低減を図る高炉の操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出CO2の抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reducing Agent Rateの略で、銑鉄1t製造当たりの、羽口からの吹込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主に炉頂から装入される固体還元材であるコークス及び羽口から吹込む固体還元材である微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては炭酸ガス排出抑制を達成するためには固体還元材であるコークスや微粉炭などを廃プラ、都市ガス、重油等の水素含有率の高い還元材で置換する方策が有効である。下記特許文献1では、羽口から還元材を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込むことが提案されている。また、下記特許文献2では、同じく羽口から還元材を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管からLNGを吹込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3176680号公報
【特許文献2】特公平1−29847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載される高炉操業方法も、前記特許文献2に記載される高炉操業方法も、従来の微粉炭だけを羽口から吹込む方法に比べれば、燃焼温度の向上や還元材原単位の低減に効果があるものの、更なる改良の余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の高炉操業方法は、羽口から還元材を吹き込むためのランスを三重管とし、当該三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記固体還元材及び易燃性還元材の何れかを外管ランスに吹込むことを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材及び支燃性ガスを隣接する管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材及び支燃性ガスを内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合が25〜95vol%以上であることを特徴とするものである。
また、前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素又は酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を銑鉄1t当たり50〜300kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記固体還元材を銑鉄1t当たり60〜180kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合することを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合使用することを特徴とするものである。
【0010】
また、前記易燃性還元材が都市ガス、天然ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり1〜50kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり10〜35kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
また、前記三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量を85〜800Nm3/hとし、当該外管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
而して、本発明の高炉操業方法によれば、羽口から還元材を吹込むためのランスを三重管とし、その三重管の内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことにより、例えば支燃性ガスと共に易燃性還元材が先に燃焼することで固体還元材が爆発的に拡散し、同時に易燃性還元材の燃焼熱で固体還元材の温度が大幅に上昇し、これにより固体還元材の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の高炉操業方法が適用された高炉の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のランスから微粉炭だけを吹込んだときの燃焼状態の説明図である。
【図3】図2の微粉炭の燃焼メカニズムの説明図である。
【図4】微粉炭と都市ガスを吹込んだときの燃焼メカニズムの説明図である。
【図5】燃焼実験装置の説明図である。
【図6】燃焼実験結果の説明図である。
【図7】燃焼実験結果の燃焼温度の説明図である。
【図8】燃焼実験結果の説明図である。
【図9】燃焼実験結果の燃焼温度の説明図である。
【図10】三重管ランスのウォータージャケットの説明図である。
【図11】三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの流量とランス表面温度の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の高炉操業方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉操業方法が適用された高炉の全体図である。図に示すように、高炉1の羽口3には、熱風を送風するための送風管2が接続され、この送風管2を貫通してランス4が設置されている。羽口3の熱風送風方向先方のコークス堆積層には、レースウエイ5と呼ばれる燃焼空間が存在し、主として、この燃焼空間でコークス燃焼、ガス化が行われる。
【0015】
図2には、ランス4から固体還元材として微粉炭6だけを吹込んだときの燃焼状態を示す。ランス4から羽口3を通過し、レースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、コークス7と共に、その揮発分と固定炭素が燃焼し、燃焼しきれずに残った、一般にチャーと呼ばれる炭素と灰分の集合体は、レースウエイから未燃チャー8として排出される。羽口3の熱風送風方向先方における熱風速度は約200m/secであり、ランス4の先端からレースウエイ5内におけるO2の存在領域は約0.3〜0.5mとされているので、実質的に1/1000秒のレベルで微粉炭粒子の昇温及びO2との接触効率(分散性)の改善が必要となる。なお、高炉内に吹込まれる微粉炭の平均粒径は10〜100μmで使用されている。
【0016】
図3は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC:Pulverized Coal)6のみを吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。羽口3からレースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、レースウエイ5内の火炎からの輻射伝熱によって粒子が加熱し、更に輻射伝熱、伝導伝熱によって粒子が急激に温度上昇し、300℃以上昇温した時点から熱分解が開始し、揮発分に着火して火炎が形成され、燃焼温度は1400〜1700℃に達する。揮発分が放出してしまうと、前述したチャー8となる。チャー8は、主に固定炭素であるので、燃焼反応と共に、炭素溶解反応と呼ばれる反応も生じる。
【0017】
図4は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC)6と共に易燃性還元材として都市ガス9を吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。都市ガス9の主成分はメタンであり、他にエタン、プロパン、ブタンなどを含む。下記表1に都市ガスの組成例を示す。微粉炭6と都市ガス9の吹込み方法は、単純に平行に吹込んだ場合を示している。なお、図中の二点鎖線は、図3に示した微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度を参考に示している。このように微粉炭と都市ガスを同時に吹込む場合、気体ガスである都市ガスが優先的に燃焼し、この燃焼熱によって微粉炭が急速に加熱、昇温すると考えられ、これによりランスに近い位置で燃焼温度が更に上昇する。
【0018】
【表1】
【0019】
このような知見に基づき、図5に示す燃焼実験装置を用いて燃焼実験を行った。実験炉11内には高炉内を模擬するためコークスが充填されており、覗き窓からレースウエイ15の内部を観察することができる。送風管12にはランス14が差し込まれ、燃焼バーナ13で生じた熱風を実験炉11内に所定の送風量で送風することができる。また、この送風管12では、送風の酸素富化量を調整することも可能である。ランス14は、微粉炭及び都市ガスの何れか一方又は双方を送風管12内に吹込むことができる。実験炉11内で生じた排ガスは、サイクロンと呼ばれる分離装置16で排ガスとダストに分離され、排ガスは助燃炉などの排ガス処理設備に送給され、ダストは捕集箱17に捕集される。
【0020】
最初の燃焼実験には、ランス14に単管ランスと二重管ランスの二種類を用い、単管ランスを用いて微粉炭のみを吹込んだ場合、二重管ランスを用い、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々について覗き窓から2色温度計による燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性を測定した。2色温度計は、周知のように、熱放射(高温物体から低温物体への電磁波の移動)を利用して温度計測を行う放射温度計であり、温度が高くなると波長分布が短波長側にずれていくことに着目して、波長分布の温度の変化を計測することで温度を求める波長分布形の一つであり、中でも波長分布を捉えるため、2つの波長における放射エネルギーを計測し、比率から温度を測定するものである。未燃チャーの燃焼状況は、実験炉11の送風管12内のランス14先から150mm、300mmの位置にてプローブで未燃チャーを回収して、樹脂埋め、研磨後、画像解析によってチャー内空隙率を測定し、判定した。
【0021】
微粉炭の諸元は、固定炭素(FC:Fixed Carbon)77.8%、揮発分(VM:Volatile Matter)13.6%、灰分(Ash)8.6%で、吹込み条件は29.8kg/h(溶銑1t当たり100kgに相当)とした(吹込媒体として窒素を使用)。また、都市ガスの吹込み条件は、3.6kg/h(5Nm3/h、溶銑1t当たり10kgに相当)とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量300Nm3/h、流速70m/s、O2富化+5.5(酸素濃度26.5%、空気中酸素濃度21%に対し、5.5%の富化)とした。
【0022】
実験結果の評価は、単管ランスから微粉炭のみ(媒体としてN2を使用)を吹込んだ場合の燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性(主として微粉炭)を基準とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管から都市ガスを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管から都市ガスを吹込み、外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々を評価した。評価は、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
【0023】
図6には、前述した燃焼実験の結果を示す。微粉炭(図ではPC)は搬送ガス(窒素ガスN2を使用)で吹込む。同図から明らかなように、二重管ランスの内側管から固体還元材として微粉炭を吹込み、外側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込む場合には、燃焼位置については改善が見られたが、その他の項目については変化が見られない。これは、微粉炭の外側の都市ガスが先にO2と接触して速やかに燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の加熱速度が上昇したものの、都市ガスの燃焼にO2が消費されてしまい、微粉炭の燃焼に必要なO2が減少して、十分な燃焼温度上昇に至らず、未燃チャーの燃焼状況も改善されなかったと考えられる。一方、二重管ランスの内側管から都市ガスを吹込み、外側管から微粉炭を吹込む場合には、燃焼温度、未燃チャーの燃焼状況について改善が見られ、拡散性については大幅な改善が見られたものの、燃焼位置については変化が見られない。これは、外側の微粉炭領域を通じた内側の都市ガスまでのO2の拡散に時間を要したものの、内側の易燃性の都市ガスが燃焼すれば、爆発的な拡散が生じ、都市ガスの燃焼熱で微粉炭が加熱されて燃焼温度も上昇し、未燃チャーの燃焼状況も改善されたものと考えられる。
【0024】
本願発明者は、この実験結果を踏まえて、図7に示すように、前記実験炉11のランス14に三重管ランスを用い、三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランスから固体還元材として微粉炭を吹込み、中管ランスから易燃性還元材として都市ガスを吹込み、外管ランスから支燃性ガスとして酸素(以下、O2という)を吹込み、都市ガス及びO2の吹込み量、即ち酸素過剰率を種々に変更して燃焼温度の変化を調べた。
【0025】
微粉炭の諸元は、固定炭素FC:77.2%、揮発分VM:12.2%、灰分Ash:10.6%で、吹込み条件は50kg/h(溶銑1t当たり142kgに相当)とした(吹込媒体として窒素を使用)。また、都市ガスの吹込み条件は、5Nm3/h、溶銑1t当たり10kgに相当、又は10Nm3/h、溶銑1t当たり20kgに相当とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量350Nm3/h、O2富化+3.5(酸素濃度24.5%)とした。なお、支燃性ガスとしてO2を吹込む場合には、送風に富化する酸素の一部を用い、炉内に吹き込まれるO2の総量が変化しないようにした。また、支燃性ガスとしては、O2の他、大気を用いることもできる。大気を用いる場合、支燃効果を向上させるため、2%以上、好ましくは10%以上酸素を富化した酸素富化空気を用いることが好ましい。
【0026】
実験結果の燃焼温度を図7に示す。同図から明らかなように、都市ガス及びO2の吹込み量が多いほど、燃焼温度が高くなっている。これには、都市ガスとO2を隣接する管ランスから吹込んだことにより、気体ガスである都市ガスが優先的に燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の温度が急速に上昇したことも良好に作用していると考えられる。
そこで、三重管の管ランスの夫々に吹込む種類を変更して、特に拡散性、燃焼温度、着火性について、前記図6の実験条件と同じ条件で実験を行った。実験結果の評価を図8に示す。評価の基準は、単管ランスから微粉炭のみを吹込んだ場合とし、前述のように、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
【0027】
同図から明らかなように、固体還元材である微粉炭又は易燃性還元材である都市ガスを外管ランスに吹込むことにより、微粉炭又は都市ガスが送風の高温に晒されやすくなり、還元材の着火性が向上する。また、易燃性還元材である都市ガス及び支燃性ガスであるO2を隣接する管ランスから吹込むことにより、O2と都市ガスが先に燃焼することで、固体還元材である微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。また、易燃性還元材である都市ガス及び支燃性ガスであるO2を内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことにより、O2と共に都市ガスが先に燃焼することで固体還元材である微粉炭が爆発的に拡散し、同時に都市ガスの燃焼熱で微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。燃焼温度の向上は燃焼量増加の証左であり、吹込み固体還元材の燃焼量増加により羽口先における堆積微粉量(炉内投入微粉量)が減少し、炉内の通気が改善される。熱バランスが適正であれば、改善された通気余力分、装入コークス(コークス比)を低減することが可能となるので、結果として還元材原単位の低減となる。
【0028】
次いで、本発明者等は、易燃性還元材である都市ガス又は都市ガス及び支燃性ガスであるO2の三重管ランス4から吹込む全ガス量に対する割合を種々に変更して燃焼温度の違いを測定した。これは、例えば、前述のように、都市ガスがO2と共に先に燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の温度が急速に上昇する効果を確認するためである。そこで、下記表2に示すように、CASE7〜11まで、微粉炭の搬送ガスであるN2の流量を15Nm3/h一定とし、都市ガス又は都市ガス及びO2の流量を種々に変更して、三重管ランスの先端から距離165mmの燃焼温度及び距離315mmの燃焼温度を測定した。搬送ガスにN2はの他空気を用いることもできる。
【0029】
【表2】
【0030】
表中には都市ガス又は都市ガス及びO2の流量(O2+都市ガス)及び都市ガスに対するO2の比率(O2/都市ガス)を示す。即ち、CASE7はO2も都市ガスも吹込まない。CASE8は都市ガスのみ5Nm3/h吹込む。CASE9は都市ガスを5Nm3/h、O2を10Nm3/h吹込む。CASE10は都市ガスを5Nm3/h、O2を20Nm3/h吹込む。CASE11は都市ガスを10Nm3/h、O2を20Nm3/h吹込む。また、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合は、CASE7が0vol%、CASE8が25vol%、CASE9が50vol%、CASE10が62.5vol%、CASE11が66.7vol%である。微粉炭諸元及び送風条件、並びに微粉炭、都市ガス、O2の吹込み方は前記図7の場合と同様である。測定結果を図9に示す。
【0031】
同図から明らかなように、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が25vol%未満の領域では、全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が増加するのに伴って燃焼温度が大きく増加していることから、この領域では高い燃焼温度を確保することが困難である。一方、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が25vol%以上の領域では、全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が増加しても燃焼温度が飽和する傾向にあることから、この領域では高い燃焼温度を確保することができる。従って、本実施形態の高炉操業方法では、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合、即ち都市ガス又は都市ガス及びO2の割合を25vol%以上、好ましくは50vol%以上とした。また、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が95vol%を超えると燃焼温度が飽和する傾向が見られたので、上限を95vol%以下とした。また、都市ガスを易燃性還元材例としているが、下記表3に示すように、天然ガス(LNG)も主成分はメタンで都市ガスと同等であり、使用できる。
【0032】
【表3】
【0033】
ところで、前述のような燃焼温度の上昇に伴って、三重管ランスの外管ランスは高温に晒され易くなる。三重管ランスは、例えばステンレス鋼鋼管で構成される。勿論、三重管ランスの外管ランスには所謂ウォータージャケットと呼ばれる水冷が施されているが、ランス先端までは覆うことができない。図10には、三重管ランスのウォータージャケットの状態を示す。
【0034】
図10において、特に、この水冷の及ばない三重管ランスの外管ランスの先端部が熱で変形することが分かった。三重管ランスの外管ランスが変形する、つまり曲がると所望部位に微粉炭や都市ガス又はO2を吹込むことができないし、消耗品であるランスの交換作業に支障がある。また、曲がりにより微粉炭の流れが変化して羽口に当たることも考えられ、そのような場合には羽口が損傷する恐れがある。三重管ランスの外管ランスが曲がると、中管ランスとの隙間が閉塞され、外管ランスからガスが流れなくなると外管ランスが溶損し、場合によっては送風管が破損する可能性もある。ランスが変形したり損耗したりすると、前述のような燃焼温度を確保することができなくなり、ひいては還元材原単位を低減することもできない。
【0035】
水冷できない三重管ランスの外管ランスを冷却するためには、内部に送給されるガスで放熱するしかない。内部に流れるガスに放熱して三重管ランスの外管ランス自体を冷却する場合、ガスの流量がランス温度に影響を与えると考えられる。そこで、本発明者等は、三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ガスの流量調整は、本来、本実施形態で三重管ランスの外管ランスから吹込まれる微粉炭の搬送ガスであるN2を加減した。なお、内管ランスからは都市ガスを、中管ランスからはO2を夫々吹込んだ。測定結果を図11に示す。
【0036】
三重管ランスの内管ランスには、25Aスケジュール160と呼ばれる鋼管を用いた。三重管ランスの中間ランスには、32Aスケジュール40と呼ばれる鋼管を用いた。三重管ランスの外管ランスには、50Aスケジュール80と呼ばれる鋼管を用い、微粉炭の搬送ガスであるN2の合計流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ちなみに、「25A」、「32A」、「50A」はJIS G 3459に規定する鋼管外径の称呼寸法であり、25Aは外径34.0mm、32Aは外径42.7mm、50Aは外径60.5mmである。また、「スケジュール」はJIS G 3459に規定する鋼管の肉厚の称呼寸法であり、25Aスケジュール160は6.4mm、32Aスケジュール40は3.6mm、50Aスケジュール80は5.5mmである。三重管ランスの各管ランスに鋼管を用いる場合、上記の外径、肉厚を有する鋼管とすることが現実的である。なお、ステンレス鋼鋼管の他、普通鋼も利用できる。その場合の鋼管の外径はJIS G 3452に規定され、肉厚はJIS G 3454に規定される。
【0037】
同図に二点鎖線で示すように、三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量の増加に伴ってランス表面の温度が反比例的に低下している。もし、鋼管のサイズが違うと、同じガス合計流量でもガスの流速が異なるため、温度も異なる。鋼管を三重管ランスに使用する場合、三重管ランスの表面温度が880℃を上回るとクリープ変形が起こり、三重管ランスが曲がってしまう。従って、三重管ランスの外管ランスに50Aスケジュール80の鋼管を用い、三重管ランスの表面温度が880℃以下である場合の外管ランスからの吹込みガスの合計流量は85Nm3/h以上であり、その鋼管を用いた場合の三重管ランスの外管ランスの出口流速は20m/sec以上となる。そして、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、三重管ランスの外管ランスの出口流速が20m/sec以上である場合には三重管ランスの外管ランスの表面温度は880℃以下となり、三重管ランスに変形や曲がりは生じない。一方、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量が800Nm3/hを超えたり、出口流速が120m/secを超えたりすると、設備の運用コストの点で実用的でないので、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量の上限を800Nm3/h、出口流速の上限を120m/secとした。即ち、水冷できない三重管ランスの外管ランスを冷却するためには、外管ランスへの吹込みガス流量を調整し、外管ランスの出口流速を20〜120m/secとして冷却するのである。
【0038】
この三重管ランスでは、三重管ランスの外管ランスへの吹込みガス流量を調整し、単管ランスの出口流速を20m/sec以上として、三重管ランスの変形(曲がり)を防止し、それに応じて、銑鉄1t当たり、三重管ランスから吹込む微粉炭などの固体還元材を50〜300kgとする。即ち、ランスには設備制約上の吹込み下限があるため、吹込み還元材比が低下すると、吹込み羽口を間引いて吹込むなどの対応が必要となり、結果として還元材を吹込む羽口と吹込まない羽口が混在し、円周方向に偏差が生じることとなり、高炉の安定操業上好ましくない。従って、固体還元材は銑鉄1t当たり50kg以上とする。また、固体還元材の吹込み還元材比が低下すると、ガスと装入物の熱交換において、熱を供給される側である装入物の比率が増加し、炉頂ガス温度が低下する。この炉頂ガス温度が露点以下となるのを防止する点でも、固体還元材は銑鉄1t当たり50kg以上、好ましくは60kg以上とする。
【0039】
更に、低還元材比操業を志向する上では、通気の制約から、吹込み還元材比には上限があり、吹込み固体還元材比の増加に伴い、炉頂から装入される固体還元材(コークス)比が減少するため、通気が困難になっていくが、許容できる全圧損(送風圧−炉頂圧)を超えると、吹込み還元材を増加しても還元材(コークス)比を低減することができなくなり、安定操業を妨げるほか、操業不可能に至る恐れもある。また、炉頂設備保護のためにも固体還元材は銑鉄1t当たり300kg以下とする。好ましくは銑鉄1t当たり180kg以下とする。
【0040】
また、都市ガス、天然ガス(LNG)などの易燃性還元材は、高い燃焼温度を確保する点から銑鉄1t当たり1kg以上必要であり、上限は羽口及び炉頂機器の保護のため銑鉄1t当たり50kg以下とする。好ましくは銑鉄1t当たり10〜35kgである。
以上の点から、固体還元材/易燃性還元材(各mass%)は、逆算すると、1〜300、好ましくは1〜180となる。
【0041】
更に、三重管ランスで使用する支燃性ガスは、固体還元材、易燃性還元材の燃焼性を確保する点から、酸素又は酸素富化空気を用い、少なくとも銑鉄1t当たり1Nm3以上必要である。上限は製造コストで定まり、銑鉄1t当たり80Nm3以下とする。なお、酸素富化空気は、酸素富化率は2%以上、好ましくは10%以上とする。
また、微粉炭の平均粒子径は10〜100μmで使用されるが、本発明では燃焼性を確保し、ランスからの送給並びにランスまでの供給性を考慮したとき、好ましくは20〜50μmとするとよい。微粉炭の平均粒子径が20μm未満では、燃焼性は優れるが、微粉炭輸送時(気体輸送)にランスが詰まり易く、50μmを超えると微粉炭燃焼性が悪化する恐れがある。
【0042】
また、吹込む固体還元材には、微粉炭を主として、その中に廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材を混合使用してもよい。混合使用の際は、微粉炭の全固体還元材に対する比は80mass%以上とするのが好ましい。即ち、微粉炭と、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材などでは反応による熱量が異なるため、互いの使用比率が近くなると燃焼に偏りが生じ易くなり、操業の不安定となり易い。また、微粉炭と比して、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材等は燃焼反応による発熱量が低位であるため、多量に吹込むと炉頂より装入される固体還元材に対する代替効率が低下するため、微粉炭の割合を80mass%以上とするのが好ましいのである。
【0043】
なお、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材は、6mm以下、好ましくは3mm以下の細粒として微粉炭と混合使用できる。微粉炭との割合は、搬送ガスにより気送される微粉炭と合流させることで混合可能である。予め微粉炭と混合して使用しても構わない。
更に、易燃性還元材には、都市ガス、天然ガス以外に、プロパンガス、水素の他、製鉄所で発生する転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスを用いることもできる。
【0044】
このように、本実施形態の高炉操業方法では、羽口3から還元材を吹込むためのランス4を三重管とし、その三重管の内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、微粉炭(固体還元材)6、都市ガス(易燃性還元材)9、O2(支燃性ガス)の一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込むことにより、例えばO2(支燃性ガス)と共に都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで微粉炭(固体還元材)6が爆発的に拡散し、同時に都市ガス(易燃性還元材)9の燃焼熱で微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
【0045】
また、微粉炭(固体還元材)6及び都市ガス(易燃性還元材)9の何れかを外管ランスに吹込むことにより、微粉炭(固体還元材)6又は都市ガス(易燃性還元材)9が高温に晒されやすくなり、還元材の着火性が向上する。
また、都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)を隣接する管ランスから吹込むことにより、O2(支燃性ガス)と都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで、微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。
【0046】
また、都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)を内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことにより、O2(支燃性ガス)と共に都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで微粉炭(固体還元材)6が爆発的に拡散し、同時に都市ガス(易燃性還元材)9の燃焼熱で微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。
【0047】
また、三重管ランス4から吹込まれる全ガス量に対する都市ガス(易燃性還元材)9又は都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)の割合を25〜95vol%とすることにより、高い燃焼温度を確保することができる。
また、送風に富化する酸素の一部を支燃性ガスとして三重管ランス4の何れかの管ランスから吹込むことにより、高炉内のガスバランスを損なうことがなく、酸素の過剰供給を回避することができる。
【符号の説明】
【0048】
1は高炉、2は送風管、3は羽口、4はランス、5はレースウエイ、6は微粉炭(固体還元材)、7はコークス、8はチャー、9は都市ガス(易燃性還元材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉羽口から微粉炭などの固体還元材と、LNG(Liquefied Natural Gas:液化天然ガス)や都市ガスなどの易燃性還元材とを吹込んで、燃焼温度を上昇させることにより生産性の向上及び還元材原単位の低減を図る高炉の操業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の増加による地球温暖化が問題となっており、製鉄業においても排出CO2の抑制は重要な課題である。これを受け、最近の高炉操業では、低還元材比(低RAR:Reducing Agent Rateの略で、銑鉄1t製造当たりの、羽口からの吹込み還元材と炉頂から装入されるコークスの合計量)操業が強力に推進されている。高炉は、主に炉頂から装入される固体還元材であるコークス及び羽口から吹込む固体還元材である微粉炭を還元材として使用しており、低還元材比、ひいては炭酸ガス排出抑制を達成するためには固体還元材であるコークスや微粉炭などを廃プラ、都市ガス、重油等の水素含有率の高い還元材で置換する方策が有効である。下記特許文献1では、羽口から還元材を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管からLNGを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込むことが提案されている。また、下記特許文献2では、同じく羽口から還元材を吹込むランスを二重管とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管からLNGを吹込むことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3176680号公報
【特許文献2】特公平1−29847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載される高炉操業方法も、前記特許文献2に記載される高炉操業方法も、従来の微粉炭だけを羽口から吹込む方法に比べれば、燃焼温度の向上や還元材原単位の低減に効果があるものの、更なる改良の余地がある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、より一層の燃焼温度の向上及び還元材原単位の低減を可能とする高炉操業方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の高炉操業方法は、羽口から還元材を吹き込むためのランスを三重管とし、当該三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことを特徴とするものである。
【0006】
また、前記固体還元材及び易燃性還元材の何れかを外管ランスに吹込むことを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材及び支燃性ガスを隣接する管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材及び支燃性ガスを内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合が25〜95vol%以上であることを特徴とするものである。
また、前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素又は酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
【0008】
また、前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とするものである。
また、前記固体還元材を銑鉄1t当たり50〜300kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
【0009】
また、前記固体還元材を銑鉄1t当たり60〜180kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合することを特徴とするものである。
また、前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合使用することを特徴とするものである。
【0010】
また、前記易燃性還元材が都市ガス、天然ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とするものである。
また、前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり1〜50kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり10〜35kgの範囲で吹込むことを特徴とするものである。
また、前記三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量を85〜800Nm3/hとし、当該外管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
而して、本発明の高炉操業方法によれば、羽口から還元材を吹込むためのランスを三重管とし、その三重管の内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことにより、例えば支燃性ガスと共に易燃性還元材が先に燃焼することで固体還元材が爆発的に拡散し、同時に易燃性還元材の燃焼熱で固体還元材の温度が大幅に上昇し、これにより固体還元材の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の高炉操業方法が適用された高炉の一実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1のランスから微粉炭だけを吹込んだときの燃焼状態の説明図である。
【図3】図2の微粉炭の燃焼メカニズムの説明図である。
【図4】微粉炭と都市ガスを吹込んだときの燃焼メカニズムの説明図である。
【図5】燃焼実験装置の説明図である。
【図6】燃焼実験結果の説明図である。
【図7】燃焼実験結果の燃焼温度の説明図である。
【図8】燃焼実験結果の説明図である。
【図9】燃焼実験結果の燃焼温度の説明図である。
【図10】三重管ランスのウォータージャケットの説明図である。
【図11】三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの流量とランス表面温度の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の高炉操業方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の高炉操業方法が適用された高炉の全体図である。図に示すように、高炉1の羽口3には、熱風を送風するための送風管2が接続され、この送風管2を貫通してランス4が設置されている。羽口3の熱風送風方向先方のコークス堆積層には、レースウエイ5と呼ばれる燃焼空間が存在し、主として、この燃焼空間でコークス燃焼、ガス化が行われる。
【0015】
図2には、ランス4から固体還元材として微粉炭6だけを吹込んだときの燃焼状態を示す。ランス4から羽口3を通過し、レースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、コークス7と共に、その揮発分と固定炭素が燃焼し、燃焼しきれずに残った、一般にチャーと呼ばれる炭素と灰分の集合体は、レースウエイから未燃チャー8として排出される。羽口3の熱風送風方向先方における熱風速度は約200m/secであり、ランス4の先端からレースウエイ5内におけるO2の存在領域は約0.3〜0.5mとされているので、実質的に1/1000秒のレベルで微粉炭粒子の昇温及びO2との接触効率(分散性)の改善が必要となる。なお、高炉内に吹込まれる微粉炭の平均粒径は10〜100μmで使用されている。
【0016】
図3は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC:Pulverized Coal)6のみを吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。羽口3からレースウエイ5内に吹込まれた微粉炭6は、レースウエイ5内の火炎からの輻射伝熱によって粒子が加熱し、更に輻射伝熱、伝導伝熱によって粒子が急激に温度上昇し、300℃以上昇温した時点から熱分解が開始し、揮発分に着火して火炎が形成され、燃焼温度は1400〜1700℃に達する。揮発分が放出してしまうと、前述したチャー8となる。チャー8は、主に固定炭素であるので、燃焼反応と共に、炭素溶解反応と呼ばれる反応も生じる。
【0017】
図4は、ランス4から送風管2内に微粉炭(図ではPC)6と共に易燃性還元材として都市ガス9を吹込んだ場合の燃焼メカニズムを示す。都市ガス9の主成分はメタンであり、他にエタン、プロパン、ブタンなどを含む。下記表1に都市ガスの組成例を示す。微粉炭6と都市ガス9の吹込み方法は、単純に平行に吹込んだ場合を示している。なお、図中の二点鎖線は、図3に示した微粉炭のみを吹込んだ場合の燃焼温度を参考に示している。このように微粉炭と都市ガスを同時に吹込む場合、気体ガスである都市ガスが優先的に燃焼し、この燃焼熱によって微粉炭が急速に加熱、昇温すると考えられ、これによりランスに近い位置で燃焼温度が更に上昇する。
【0018】
【表1】
【0019】
このような知見に基づき、図5に示す燃焼実験装置を用いて燃焼実験を行った。実験炉11内には高炉内を模擬するためコークスが充填されており、覗き窓からレースウエイ15の内部を観察することができる。送風管12にはランス14が差し込まれ、燃焼バーナ13で生じた熱風を実験炉11内に所定の送風量で送風することができる。また、この送風管12では、送風の酸素富化量を調整することも可能である。ランス14は、微粉炭及び都市ガスの何れか一方又は双方を送風管12内に吹込むことができる。実験炉11内で生じた排ガスは、サイクロンと呼ばれる分離装置16で排ガスとダストに分離され、排ガスは助燃炉などの排ガス処理設備に送給され、ダストは捕集箱17に捕集される。
【0020】
最初の燃焼実験には、ランス14に単管ランスと二重管ランスの二種類を用い、単管ランスを用いて微粉炭のみを吹込んだ場合、二重管ランスを用い、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、二重管ランスの外側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込み、二重管ランスの外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々について覗き窓から2色温度計による燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性を測定した。2色温度計は、周知のように、熱放射(高温物体から低温物体への電磁波の移動)を利用して温度計測を行う放射温度計であり、温度が高くなると波長分布が短波長側にずれていくことに着目して、波長分布の温度の変化を計測することで温度を求める波長分布形の一つであり、中でも波長分布を捉えるため、2つの波長における放射エネルギーを計測し、比率から温度を測定するものである。未燃チャーの燃焼状況は、実験炉11の送風管12内のランス14先から150mm、300mmの位置にてプローブで未燃チャーを回収して、樹脂埋め、研磨後、画像解析によってチャー内空隙率を測定し、判定した。
【0021】
微粉炭の諸元は、固定炭素(FC:Fixed Carbon)77.8%、揮発分(VM:Volatile Matter)13.6%、灰分(Ash)8.6%で、吹込み条件は29.8kg/h(溶銑1t当たり100kgに相当)とした(吹込媒体として窒素を使用)。また、都市ガスの吹込み条件は、3.6kg/h(5Nm3/h、溶銑1t当たり10kgに相当)とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量300Nm3/h、流速70m/s、O2富化+5.5(酸素濃度26.5%、空気中酸素濃度21%に対し、5.5%の富化)とした。
【0022】
実験結果の評価は、単管ランスから微粉炭のみ(媒体としてN2を使用)を吹込んだ場合の燃焼温度、燃焼位置、未燃チャーの燃焼状況、拡散性(主として微粉炭)を基準とし、二重管ランスの内側管から微粉炭を吹込み、外側管から都市ガスを吹込んだ場合、二重管ランスの内側管から都市ガスを吹込み、外側管から微粉炭を吹込んだ場合の夫々を評価した。評価は、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
【0023】
図6には、前述した燃焼実験の結果を示す。微粉炭(図ではPC)は搬送ガス(窒素ガスN2を使用)で吹込む。同図から明らかなように、二重管ランスの内側管から固体還元材として微粉炭を吹込み、外側管から易燃性還元材として都市ガスを吹込む場合には、燃焼位置については改善が見られたが、その他の項目については変化が見られない。これは、微粉炭の外側の都市ガスが先にO2と接触して速やかに燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の加熱速度が上昇したものの、都市ガスの燃焼にO2が消費されてしまい、微粉炭の燃焼に必要なO2が減少して、十分な燃焼温度上昇に至らず、未燃チャーの燃焼状況も改善されなかったと考えられる。一方、二重管ランスの内側管から都市ガスを吹込み、外側管から微粉炭を吹込む場合には、燃焼温度、未燃チャーの燃焼状況について改善が見られ、拡散性については大幅な改善が見られたものの、燃焼位置については変化が見られない。これは、外側の微粉炭領域を通じた内側の都市ガスまでのO2の拡散に時間を要したものの、内側の易燃性の都市ガスが燃焼すれば、爆発的な拡散が生じ、都市ガスの燃焼熱で微粉炭が加熱されて燃焼温度も上昇し、未燃チャーの燃焼状況も改善されたものと考えられる。
【0024】
本願発明者は、この実験結果を踏まえて、図7に示すように、前記実験炉11のランス14に三重管ランスを用い、三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランスから固体還元材として微粉炭を吹込み、中管ランスから易燃性還元材として都市ガスを吹込み、外管ランスから支燃性ガスとして酸素(以下、O2という)を吹込み、都市ガス及びO2の吹込み量、即ち酸素過剰率を種々に変更して燃焼温度の変化を調べた。
【0025】
微粉炭の諸元は、固定炭素FC:77.2%、揮発分VM:12.2%、灰分Ash:10.6%で、吹込み条件は50kg/h(溶銑1t当たり142kgに相当)とした(吹込媒体として窒素を使用)。また、都市ガスの吹込み条件は、5Nm3/h、溶銑1t当たり10kgに相当、又は10Nm3/h、溶銑1t当たり20kgに相当とした。送風条件は、送風温度1200℃、流量350Nm3/h、O2富化+3.5(酸素濃度24.5%)とした。なお、支燃性ガスとしてO2を吹込む場合には、送風に富化する酸素の一部を用い、炉内に吹き込まれるO2の総量が変化しないようにした。また、支燃性ガスとしては、O2の他、大気を用いることもできる。大気を用いる場合、支燃効果を向上させるため、2%以上、好ましくは10%以上酸素を富化した酸素富化空気を用いることが好ましい。
【0026】
実験結果の燃焼温度を図7に示す。同図から明らかなように、都市ガス及びO2の吹込み量が多いほど、燃焼温度が高くなっている。これには、都市ガスとO2を隣接する管ランスから吹込んだことにより、気体ガスである都市ガスが優先的に燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の温度が急速に上昇したことも良好に作用していると考えられる。
そこで、三重管の管ランスの夫々に吹込む種類を変更して、特に拡散性、燃焼温度、着火性について、前記図6の実験条件と同じ条件で実験を行った。実験結果の評価を図8に示す。評価の基準は、単管ランスから微粉炭のみを吹込んだ場合とし、前述のように、微粉炭のみの場合と同程度の場合を△、少し改善された場合を○、大幅に改善された場合を◎で表した。
【0027】
同図から明らかなように、固体還元材である微粉炭又は易燃性還元材である都市ガスを外管ランスに吹込むことにより、微粉炭又は都市ガスが送風の高温に晒されやすくなり、還元材の着火性が向上する。また、易燃性還元材である都市ガス及び支燃性ガスであるO2を隣接する管ランスから吹込むことにより、O2と都市ガスが先に燃焼することで、固体還元材である微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。また、易燃性還元材である都市ガス及び支燃性ガスであるO2を内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことにより、O2と共に都市ガスが先に燃焼することで固体還元材である微粉炭が爆発的に拡散し、同時に都市ガスの燃焼熱で微粉炭の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。燃焼温度の向上は燃焼量増加の証左であり、吹込み固体還元材の燃焼量増加により羽口先における堆積微粉量(炉内投入微粉量)が減少し、炉内の通気が改善される。熱バランスが適正であれば、改善された通気余力分、装入コークス(コークス比)を低減することが可能となるので、結果として還元材原単位の低減となる。
【0028】
次いで、本発明者等は、易燃性還元材である都市ガス又は都市ガス及び支燃性ガスであるO2の三重管ランス4から吹込む全ガス量に対する割合を種々に変更して燃焼温度の違いを測定した。これは、例えば、前述のように、都市ガスがO2と共に先に燃焼し、その燃焼熱で微粉炭の温度が急速に上昇する効果を確認するためである。そこで、下記表2に示すように、CASE7〜11まで、微粉炭の搬送ガスであるN2の流量を15Nm3/h一定とし、都市ガス又は都市ガス及びO2の流量を種々に変更して、三重管ランスの先端から距離165mmの燃焼温度及び距離315mmの燃焼温度を測定した。搬送ガスにN2はの他空気を用いることもできる。
【0029】
【表2】
【0030】
表中には都市ガス又は都市ガス及びO2の流量(O2+都市ガス)及び都市ガスに対するO2の比率(O2/都市ガス)を示す。即ち、CASE7はO2も都市ガスも吹込まない。CASE8は都市ガスのみ5Nm3/h吹込む。CASE9は都市ガスを5Nm3/h、O2を10Nm3/h吹込む。CASE10は都市ガスを5Nm3/h、O2を20Nm3/h吹込む。CASE11は都市ガスを10Nm3/h、O2を20Nm3/h吹込む。また、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合は、CASE7が0vol%、CASE8が25vol%、CASE9が50vol%、CASE10が62.5vol%、CASE11が66.7vol%である。微粉炭諸元及び送風条件、並びに微粉炭、都市ガス、O2の吹込み方は前記図7の場合と同様である。測定結果を図9に示す。
【0031】
同図から明らかなように、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が25vol%未満の領域では、全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が増加するのに伴って燃焼温度が大きく増加していることから、この領域では高い燃焼温度を確保することが困難である。一方、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が25vol%以上の領域では、全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が増加しても燃焼温度が飽和する傾向にあることから、この領域では高い燃焼温度を確保することができる。従って、本実施形態の高炉操業方法では、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合、即ち都市ガス又は都市ガス及びO2の割合を25vol%以上、好ましくは50vol%以上とした。また、三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する都市ガス又は都市ガス及びO2の割合が95vol%を超えると燃焼温度が飽和する傾向が見られたので、上限を95vol%以下とした。また、都市ガスを易燃性還元材例としているが、下記表3に示すように、天然ガス(LNG)も主成分はメタンで都市ガスと同等であり、使用できる。
【0032】
【表3】
【0033】
ところで、前述のような燃焼温度の上昇に伴って、三重管ランスの外管ランスは高温に晒され易くなる。三重管ランスは、例えばステンレス鋼鋼管で構成される。勿論、三重管ランスの外管ランスには所謂ウォータージャケットと呼ばれる水冷が施されているが、ランス先端までは覆うことができない。図10には、三重管ランスのウォータージャケットの状態を示す。
【0034】
図10において、特に、この水冷の及ばない三重管ランスの外管ランスの先端部が熱で変形することが分かった。三重管ランスの外管ランスが変形する、つまり曲がると所望部位に微粉炭や都市ガス又はO2を吹込むことができないし、消耗品であるランスの交換作業に支障がある。また、曲がりにより微粉炭の流れが変化して羽口に当たることも考えられ、そのような場合には羽口が損傷する恐れがある。三重管ランスの外管ランスが曲がると、中管ランスとの隙間が閉塞され、外管ランスからガスが流れなくなると外管ランスが溶損し、場合によっては送風管が破損する可能性もある。ランスが変形したり損耗したりすると、前述のような燃焼温度を確保することができなくなり、ひいては還元材原単位を低減することもできない。
【0035】
水冷できない三重管ランスの外管ランスを冷却するためには、内部に送給されるガスで放熱するしかない。内部に流れるガスに放熱して三重管ランスの外管ランス自体を冷却する場合、ガスの流量がランス温度に影響を与えると考えられる。そこで、本発明者等は、三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ガスの流量調整は、本来、本実施形態で三重管ランスの外管ランスから吹込まれる微粉炭の搬送ガスであるN2を加減した。なお、内管ランスからは都市ガスを、中管ランスからはO2を夫々吹込んだ。測定結果を図11に示す。
【0036】
三重管ランスの内管ランスには、25Aスケジュール160と呼ばれる鋼管を用いた。三重管ランスの中間ランスには、32Aスケジュール40と呼ばれる鋼管を用いた。三重管ランスの外管ランスには、50Aスケジュール80と呼ばれる鋼管を用い、微粉炭の搬送ガスであるN2の合計流量を種々に変更してランス表面の温度を測定した。ちなみに、「25A」、「32A」、「50A」はJIS G 3459に規定する鋼管外径の称呼寸法であり、25Aは外径34.0mm、32Aは外径42.7mm、50Aは外径60.5mmである。また、「スケジュール」はJIS G 3459に規定する鋼管の肉厚の称呼寸法であり、25Aスケジュール160は6.4mm、32Aスケジュール40は3.6mm、50Aスケジュール80は5.5mmである。三重管ランスの各管ランスに鋼管を用いる場合、上記の外径、肉厚を有する鋼管とすることが現実的である。なお、ステンレス鋼鋼管の他、普通鋼も利用できる。その場合の鋼管の外径はJIS G 3452に規定され、肉厚はJIS G 3454に規定される。
【0037】
同図に二点鎖線で示すように、三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量の増加に伴ってランス表面の温度が反比例的に低下している。もし、鋼管のサイズが違うと、同じガス合計流量でもガスの流速が異なるため、温度も異なる。鋼管を三重管ランスに使用する場合、三重管ランスの表面温度が880℃を上回るとクリープ変形が起こり、三重管ランスが曲がってしまう。従って、三重管ランスの外管ランスに50Aスケジュール80の鋼管を用い、三重管ランスの表面温度が880℃以下である場合の外管ランスからの吹込みガスの合計流量は85Nm3/h以上であり、その鋼管を用いた場合の三重管ランスの外管ランスの出口流速は20m/sec以上となる。そして、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量を85Nm3/h以上とし、三重管ランスの外管ランスの出口流速が20m/sec以上である場合には三重管ランスの外管ランスの表面温度は880℃以下となり、三重管ランスに変形や曲がりは生じない。一方、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量が800Nm3/hを超えたり、出口流速が120m/secを超えたりすると、設備の運用コストの点で実用的でないので、三重管ランスの外管ランスの吹込みガスの合計流量の上限を800Nm3/h、出口流速の上限を120m/secとした。即ち、水冷できない三重管ランスの外管ランスを冷却するためには、外管ランスへの吹込みガス流量を調整し、外管ランスの出口流速を20〜120m/secとして冷却するのである。
【0038】
この三重管ランスでは、三重管ランスの外管ランスへの吹込みガス流量を調整し、単管ランスの出口流速を20m/sec以上として、三重管ランスの変形(曲がり)を防止し、それに応じて、銑鉄1t当たり、三重管ランスから吹込む微粉炭などの固体還元材を50〜300kgとする。即ち、ランスには設備制約上の吹込み下限があるため、吹込み還元材比が低下すると、吹込み羽口を間引いて吹込むなどの対応が必要となり、結果として還元材を吹込む羽口と吹込まない羽口が混在し、円周方向に偏差が生じることとなり、高炉の安定操業上好ましくない。従って、固体還元材は銑鉄1t当たり50kg以上とする。また、固体還元材の吹込み還元材比が低下すると、ガスと装入物の熱交換において、熱を供給される側である装入物の比率が増加し、炉頂ガス温度が低下する。この炉頂ガス温度が露点以下となるのを防止する点でも、固体還元材は銑鉄1t当たり50kg以上、好ましくは60kg以上とする。
【0039】
更に、低還元材比操業を志向する上では、通気の制約から、吹込み還元材比には上限があり、吹込み固体還元材比の増加に伴い、炉頂から装入される固体還元材(コークス)比が減少するため、通気が困難になっていくが、許容できる全圧損(送風圧−炉頂圧)を超えると、吹込み還元材を増加しても還元材(コークス)比を低減することができなくなり、安定操業を妨げるほか、操業不可能に至る恐れもある。また、炉頂設備保護のためにも固体還元材は銑鉄1t当たり300kg以下とする。好ましくは銑鉄1t当たり180kg以下とする。
【0040】
また、都市ガス、天然ガス(LNG)などの易燃性還元材は、高い燃焼温度を確保する点から銑鉄1t当たり1kg以上必要であり、上限は羽口及び炉頂機器の保護のため銑鉄1t当たり50kg以下とする。好ましくは銑鉄1t当たり10〜35kgである。
以上の点から、固体還元材/易燃性還元材(各mass%)は、逆算すると、1〜300、好ましくは1〜180となる。
【0041】
更に、三重管ランスで使用する支燃性ガスは、固体還元材、易燃性還元材の燃焼性を確保する点から、酸素又は酸素富化空気を用い、少なくとも銑鉄1t当たり1Nm3以上必要である。上限は製造コストで定まり、銑鉄1t当たり80Nm3以下とする。なお、酸素富化空気は、酸素富化率は2%以上、好ましくは10%以上とする。
また、微粉炭の平均粒子径は10〜100μmで使用されるが、本発明では燃焼性を確保し、ランスからの送給並びにランスまでの供給性を考慮したとき、好ましくは20〜50μmとするとよい。微粉炭の平均粒子径が20μm未満では、燃焼性は優れるが、微粉炭輸送時(気体輸送)にランスが詰まり易く、50μmを超えると微粉炭燃焼性が悪化する恐れがある。
【0042】
また、吹込む固体還元材には、微粉炭を主として、その中に廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材を混合使用してもよい。混合使用の際は、微粉炭の全固体還元材に対する比は80mass%以上とするのが好ましい。即ち、微粉炭と、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材などでは反応による熱量が異なるため、互いの使用比率が近くなると燃焼に偏りが生じ易くなり、操業の不安定となり易い。また、微粉炭と比して、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材等は燃焼反応による発熱量が低位であるため、多量に吹込むと炉頂より装入される固体還元材に対する代替効率が低下するため、微粉炭の割合を80mass%以上とするのが好ましいのである。
【0043】
なお、廃プラスチック、廃棄物固形燃料(RDF)、有機性資源(バイオマス)、廃材は、6mm以下、好ましくは3mm以下の細粒として微粉炭と混合使用できる。微粉炭との割合は、搬送ガスにより気送される微粉炭と合流させることで混合可能である。予め微粉炭と混合して使用しても構わない。
更に、易燃性還元材には、都市ガス、天然ガス以外に、プロパンガス、水素の他、製鉄所で発生する転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスを用いることもできる。
【0044】
このように、本実施形態の高炉操業方法では、羽口3から還元材を吹込むためのランス4を三重管とし、その三重管の内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、微粉炭(固体還元材)6、都市ガス(易燃性還元材)9、O2(支燃性ガス)の一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込むことにより、例えばO2(支燃性ガス)と共に都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで微粉炭(固体還元材)6が爆発的に拡散し、同時に都市ガス(易燃性還元材)9の燃焼熱で微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上し、もって還元材原単位を低減することができる。
【0045】
また、微粉炭(固体還元材)6及び都市ガス(易燃性還元材)9の何れかを外管ランスに吹込むことにより、微粉炭(固体還元材)6又は都市ガス(易燃性還元材)9が高温に晒されやすくなり、還元材の着火性が向上する。
また、都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)を隣接する管ランスから吹込むことにより、O2(支燃性ガス)と都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで、微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。
【0046】
また、都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)を内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことにより、O2(支燃性ガス)と共に都市ガス(易燃性還元材)9が先に燃焼することで微粉炭(固体還元材)6が爆発的に拡散し、同時に都市ガス(易燃性還元材)9の燃焼熱で微粉炭(固体還元材)6の温度が大幅に上昇し、これにより微粉炭(固体還元材)6の加熱速度が上昇して燃焼温度が大幅に向上する。
【0047】
また、三重管ランス4から吹込まれる全ガス量に対する都市ガス(易燃性還元材)9又は都市ガス(易燃性還元材)9及びO2(支燃性ガス)の割合を25〜95vol%とすることにより、高い燃焼温度を確保することができる。
また、送風に富化する酸素の一部を支燃性ガスとして三重管ランス4の何れかの管ランスから吹込むことにより、高炉内のガスバランスを損なうことがなく、酸素の過剰供給を回避することができる。
【符号の説明】
【0048】
1は高炉、2は送風管、3は羽口、4はランス、5はレースウエイ、6は微粉炭(固体還元材)、7はコークス、8はチャー、9は都市ガス(易燃性還元材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽口から還元材を吹き込むためのランスを三重管とし、当該三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
【請求項2】
前記固体還元材及び易燃性還元材の何れかを外管ランスに吹込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記易燃性還元材及び支燃性ガスを隣接する管ランスから吹込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉操業方法。
【請求項4】
前記易燃性還元材及び支燃性ガスを内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項5】
前記三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合が25〜95vol%以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項6】
前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素又は酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項7】
前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とする請求項6に記載の高炉操業方法。
【請求項8】
前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項9】
前記固体還元材を銑鉄1t当たり50〜300kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項8に記載の高炉操業方法。
【請求項10】
前記固体還元材を銑鉄1t当たり60〜180kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項9に記載の高炉操業方法。
【請求項11】
前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合することを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項12】
前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合使用することを特徴とする請求項11に記載の高炉操業方法。
【請求項13】
前記易燃性還元材が都市ガス、天然ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項14】
前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり1〜50kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項13に記載の高炉操業方法。
【請求項15】
前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり10〜35kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項14に記載の高炉操業方法。
【請求項16】
前記三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量を85〜800Nm3/hとし、当該外管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項1】
羽口から還元材を吹き込むためのランスを三重管とし、当該三重管ランスの最も内側の管の内側を内管ランス、最も内側の管と内側から二番目の管の間を中管ランス、内側から二番面の管と最も外側の管との間を外管ランスとした場合、内管ランス、中管ランス、外管ランスの夫々に、固体還元材、易燃性還元材、支燃性ガスの一種類ずつを単独で且つ全ての種類、吹込み、当該三重管ランスで高炉内に吹込むことを特徴とする高炉操業方法。
【請求項2】
前記固体還元材及び易燃性還元材の何れかを外管ランスに吹込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項3】
前記易燃性還元材及び支燃性ガスを隣接する管ランスから吹込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉操業方法。
【請求項4】
前記易燃性還元材及び支燃性ガスを内管ランス及び中管ランスの何れかから吹込むことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項5】
前記三重管ランスから吹込まれる全ガス量に対する易燃性還元材又は易燃性還元材及び支燃性ガスの割合が25〜95vol%以上であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項6】
前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素又は酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項7】
前記三重管ランスの何れかの管ランスから吹込まれる支燃性ガスは酸素富化空気であり、送風に富化する酸素の一部を当該三重管ランスの何れかの管ランスから吹込むことを特徴とする請求項6に記載の高炉操業方法。
【請求項8】
前記固体還元材が微粉炭であることを特徴とする請求項1に記載の高炉操業方法。
【請求項9】
前記固体還元材を銑鉄1t当たり50〜300kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項8に記載の高炉操業方法。
【請求項10】
前記固体還元材を銑鉄1t当たり60〜180kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項9に記載の高炉操業方法。
【請求項11】
前記固体還元材の微粉炭に、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合することを特徴とする請求項8乃至10の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項12】
前記固体還元材の微粉炭の割合を80mass%以上として、廃プラスチック、廃棄物固形燃料、有機性資源、廃材を混合使用することを特徴とする請求項11に記載の高炉操業方法。
【請求項13】
前記易燃性還元材が都市ガス、天然ガス、プロパンガス、水素、転炉ガス、高炉ガス、コークス炉ガスであることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【請求項14】
前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり1〜50kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項13に記載の高炉操業方法。
【請求項15】
前記易燃性還元材を銑鉄1t当たり10〜35kgの範囲で吹込むことを特徴とする請求項14に記載の高炉操業方法。
【請求項16】
前記三重管ランスの外管ランスから吹込まれるガスの合計流量を85〜800Nm3/hとし、当該外管ランスの出口流速を20〜120m/secとしたことを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の高炉操業方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−19006(P2013−19006A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152078(P2011−152078)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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