説明

高炉用出銑孔閉塞材

【課題】耐食性に優れ、従って長時間出銑が可能な、窒化珪素を含有する高炉用出銑孔閉塞材を提供すること。
【解決手段】ロー石、アルミナ、炭化珪素、粘土質原料、カーボン質原料から2種以上を含有する耐火骨材に、窒化珪素を20〜40重量%とマグネシア粉末を1〜10重量%併用してなり、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合されてなることを特徴とする高炉用出銑孔閉塞材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉用出銑孔閉塞材に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉用出銑孔閉塞材(以下、単に「出銑孔閉塞材」ともいう)の重要な特性として、(1)マッドガンによる高炉出銑口への充填を容易に行うことができる押し出し性を有し、かつ出銑口開孔時の被掘削性が良好なこと、(2)充填後の閉塞材が短時間で硬化し、出銑時の溶銑及びスラグの摩耗損傷に耐えること、(3)使用時の溶銑及びスラグによる化学的侵食に耐え、出銑口径の拡大が小さく、安定した出銑が長時間維持できる耐食性を有すること、が挙げられる。
【0003】
特許文献1(特開平10-324576号公報)のように出銑孔閉塞材の特性を満足させるための対策として、バインダーとして固定炭素32.5%以上の無水コールタールを使用し、耐火材料として窒化珪素、ロー石、シャモット、アルミナ、スピネル及びマグネシアなどの使用が記載されているが、その中でマグネシアの有効な添加量については規定されていない。特に窒化珪素とマグネシアを併用することの有効性についての記述は無い。
【0004】
特許文献2(特開平08-119753号公報)では、出銑孔閉塞材にマグネシアが30〜65重量%、炭素(C)が5〜20重量%、残部がアルミナとなる化学組成を有する、マグネシアを主原料とする出銑孔閉塞材が記載されているが、マグネシアを主原料として使用しており、窒化珪素の焼結助材としての使用ではなく、本発明に係る出銑孔閉塞材と根本的に特性の異なる出銑孔閉塞材に関する記載である。
【0005】
一般的に、窒化珪素は出銑孔閉塞材の主要成分として使用されており、耐食性の向上にも寄与しているが、元来、窒化珪素は単独では焼結しない原料であり、焼結助剤が必要なものである。
しかし、出銑孔閉塞材として使用している場合は、シリカ、アルミナ、などの酸化物およびSiC、カーボンなどと配合混錬されるため、他の成分が焼結助剤として働いた可能性はあるものの、窒化珪素の特性を十分に引き出しているとは言い難い。
【0006】
そこで、窒化珪素の特性を引き出すための焼結助剤の添加が有効であると考えられるが、窒化珪素に有効な焼結助剤およびその有効量の検討は、出銑孔閉塞材においては十分には行われていないのが現状である。
【特許文献1】特開平10-324576号公報
【特許文献2】特開平08-119753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、耐食性に優れ、従って長時間出銑が可能な、窒化珪素を含有する高炉用出銑孔閉塞材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
出銑孔閉塞材には一般に窒化珪素あるいは鉄窒化珪素が20重量%〜40重量%と主要構成原料として使用されている。しかしながら窒化珪素の純粋なものは焼結が困難であり、Al2O3やY2O3などの焼結助剤が必要である。出銑孔閉塞材にはシリカ、アルミナ、炭化珪素、カーボン質原料、粘土質原料など、複数の原料と共に混練されるため、あるいは窒化珪素自体に不純物が含まれているため、若干の助剤としての効果が発現していた可能性は考えられるものの、焼結助剤としての有効な活用は成されていない。実際に窒化珪素の添加量を変化させた場合に、出銑孔閉塞材の強度特性に明らかな変化は認められない。強度特性を高めるには金属添加物(Siなど)の添加が必要であった。
そこで、上記従来技術を鑑み、検討した結果、窒化珪素の焼結助材としてマグネシア粉末を少量活用することで、著しい耐食性の向上が認められた。即ち、窒化珪素20〜40重量%に対し焼結助剤としてマグネシア粉末を1〜10重量%添加し、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合することにより耐食性の向上が認められた。
【0009】
即ち、本発明は、ロー石、アルミナ、炭化珪素、粘土質原料、カーボン質原料から2種以上を含有する耐火骨材に、窒化珪素を20〜40重量%とマグネシア粉末を1〜10重量%併用してなり、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合されてなることを特徴とする高炉用出銑孔閉塞材、である。
【発明の効果】
【0010】
高炉用出銑孔閉塞材において、ロー石、アルミナ、炭化珪素、粘土質原料、カーボン質原料から2種以上を含有する耐火骨材に窒化珪素20〜40重量%とマグネシア粉1〜10重量%を併用し、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合することにより、従来の窒化珪素を主体とする高炉用出銑孔閉塞材の耐食性を更に向上させ、出銑時間の延長および深度の延長が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の高炉用出銑孔閉塞材は、ロー石、アルミナ、炭化珪素、粘土質原料、カーボン質原料から2種以上を含有する耐火骨材に、窒化珪素20〜40重量%とマグネシア粉末を1〜10重量%併用してなり、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合してなる。
【0012】
以下、本発明の構成成分について説明する。
【0013】
ロー石としては、3.0mm以下の粒度のものを使用するのが好ましい。
アルミナとしては、3.0mm以下の粒度のものを使用するのが好ましい。
炭化珪素としては、2.0mm以下の粒度のものを使用するのが好ましい。
【0014】
カーボン質原料としては、黒鉛、コークス、石炭ピッチ等が挙げられる。カーボン質原料はスラグ浸透、過焼結抑制を目的として添加されるものである。
【0015】
また、充填作業性に必要な保形性や滑り性を付与するために、粘土質原料が添加されることが好ましい。粘土質原料としては、木節粘土、蛙目粘土、ボールクレー等が挙げられる。
【0016】
窒化珪素としては、1mm以下の粒度のものを使用するのが好ましい。
マグネシア粉末としては、1mm以下の粒度のものを使用するのが好ましい。
【0017】
高炉用出銑孔閉塞材において、窒化珪素添加量が20重量%未満の場合では耐食性の低下が認められ、一方、40重量%を超えると窒化珪素を増量するだけの効果が薄れる。従って、窒化珪素の添加が出銑孔閉塞材の耐食性の向上に有効に効果を発揮する添加量は20〜40重量%である。窒化珪素添加量はより好ましくは30〜35重量%である。
【0018】
高炉用出銑孔閉塞材において、マグネシア粉末添加量が1重量%未満の場合では耐食性向上の効果が少なく、一方、10重量%を超えると出銑孔閉塞材中に存在するアルミナ成分と反応しスピネルを形成するため、その反応による膨張で強度の低下を生じることにより、耐食性が低下する。従って、マグネシア粉末の添加が出銑孔閉塞材の耐食性の向上に有効に効果を発揮する添加量は1〜10重量%である。マグネシア粉末添加量はより好ましくは3〜7重量%である。
【0019】
マグネシア粉末と窒化珪素との配合は、重量比にて、MgO/Si3N4=0.05〜0.25とする。0.05未満では明らかな効果が発揮されず、0.25を超えた場合は、出銑孔閉塞材中に存在するアルミナ成分と反応しスピネルを形成するため、その反応による膨張で強度の低下を生じる為である。MgO/Si3N4=0.1〜0.2とすることが好ましい。
【実施例】
【0020】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の出銑孔閉塞材を説明する。
【0021】
表1に示す配合割合で耐火性原料の配合物を作成し、得られた配合原料を約5分間混練し、60℃に保温したバインダーを添加して約1時間混練した。尚、本実施例および比較例では、バインダーとして無水コールタールを使用した。バインダーの添加量は押し出し抵抗測定(マーシャル試験)による総荷重が約350kgfとなるように調整した。この押し出し抵抗圧力は、図1に示す形状のステンレス製試料ホルダー(L1=9cm、L2=6cm、L3=26cm、L4=12cm、L5=2cm)に、60℃で保温した練り土を充填し、図2に示す試料押し出し用面板(A)、前記試料ホルダー(B)、台座(C)、及びシリンダーヘッド(D)から構成される測定装置を用いて、シリンダーヘッド(D)の押し出し速度を10mm/secとした時の押し出し抵抗を試料押し出し用面板(A)に掛かる総荷重として測定したものである。
【0022】
そして、約5MPaの成形圧で40×40×160mmに成形し、1350℃で3時間にわたり還元加熱後の供試体について曲げ強さおよび見掛気孔率の測定を行った。
【0023】
更に、耐食性試験は、回転アーク炉侵食試験法により、銑鉄と高炉スラグを侵食剤として使用し、還元雰囲気、1550℃で10時間にわたり試験を行った後、供試体を切断し、侵食寸法を測定し、比較例1の侵食寸法を100とした時の侵食寸法を指数化して溶損指数としたものである。溶損指数は小さい程、耐食性が良いことを示す。
【0024】
これらの結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
実施例1は窒化珪素を30重量%含有すると共にマグネシア粉末を2重量%添加したものである。一方、比較例1は窒化珪素を30重量%含有すると共にマグネシア粉末は未添加のものであり、実施例1と比較例1の違いはマグネシア粉末の有無である。実施例1は比較例1と比較し、曲げ強さが高まり、気孔率の低下も認められ、耐食性試験により、耐食性の向上が認められた。
【0027】
実施例2ではマグネシア粉末の添加量が5重量%であり、実施例1よりマグネシア添加量は増加しているが、曲げ強さ、気孔率は同程度である。耐食性は実施例1と比較し更に良好な結果を示した。
【0028】
比較例2はマグネシア粉末の添加量を15重量%まで増量したものである。マグネシア粉末を15重量%まで増量した場合は強度の低下が認められた。これは出銑孔閉塞材中のAl2O3成分とマグネシア粉末との間でのスピネル反応により膨張が生じたものであり、マグネシア粉末の添加量としては過剰であると考えられる。
【0029】
比較例3は窒化珪素を15重量%、マグネシア粉末を3重量%添加したものである。実施例および比較例1と比較し、曲げ強さの低下は見られないものの、耐食性の低下が見られた。この結果より窒化珪素の添加量として20重量%以上を必要とすることが明らかである。
【0030】
比較例4は窒化珪素20重量%、マグネシア粉末を10重量%添加したものである。比較例3と同じく、強度と耐食性の低下が認められた。窒化珪素添加量に対するマグネシア粉末の添加量が多く(MgO/Si3N4=0.50)、過剰なマグネシア粉末がアルミナ成分と反応しスピネル反応により膨張が生じたものと考えられる。
【0031】
比較例5は窒化珪素40重量%、マグネシア粉末を1重量%添加したものである。窒化珪素添加量を40重量%まで増加するも、実施例1および実施例2と比較し耐食性が低く、窒化珪素の増量効果が認められなかった。マグネシア添加量が少なく(MgO/Si3N4=0.03)、窒化珪素の焼結助材としての効果が発揮されていないものと考えられる。
【0032】
これらの実験結果より、マグネシア粉末を少量添加することにより、窒化珪素主体の出銑孔閉塞材の耐食性を向上させることが可能である。
また、上記実施例および比較例においては、バインダーとして無水コールタールを使用した例を説明したが、石油系タール、レジン系バインダー等を使用することも可能であり、上記実施例と同様な結果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施例において、押し出し抵抗圧力を測定するために使用した、スレンレス製試料ホルダーの形状を説明するための図である。
【図2】本実施例において、押し出し抵抗圧力を測定するために使用した、測定装置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
L1 9cm
L2 6cm
L3 26cm
L4 12cm
L5 2cm
A 試料押し出し用面板
B 試料ホルダー
C 台座
D シリンダーヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロー石、アルミナ、炭化珪素、粘土質原料、カーボン質原料から2種以上を含有する耐火骨材に、窒化珪素を20〜40重量%とマグネシア粉末を1〜10重量%併用してなり、且つ、重量比にてMgO/Si3N4=0.05〜0.25となるように配合されてなることを特徴とする高炉用出銑孔閉塞材。

【図1】
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【図2】
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