高炉羽口ブロック形状
【課題】羽口金物と羽口ブロックとが干渉して羽口ブロック内の羽口金物を損傷させる恐れがなく、また羽口ブロックが損傷する恐れもなく、かつ高炉羽口ブロック同士の結合強度が増し、ずれ等に対する構造的安定性の高い高炉羽口ブロック形状を提供する。
【解決手段】高炉内に高温空気を供給する羽口5を構成する羽口金物を収容保持する高炉羽口ブロック1であり、この高炉羽口ブロック1を並べてその構造物を製作するときに、高炉羽口ブロック1間にキーレンガ91を配置する高炉羽口ブロック形状である。
【解決手段】高炉内に高温空気を供給する羽口5を構成する羽口金物を収容保持する高炉羽口ブロック1であり、この高炉羽口ブロック1を並べてその構造物を製作するときに、高炉羽口ブロック1間にキーレンガ91を配置する高炉羽口ブロック形状である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の中に高温の空気を吹き込む羽口の耐火構造物である高炉羽口ブロックの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉においては、周知のごとく熱風炉において高温に加熱された空気を高炉内に吹き込む送風口として羽口が設けられている。この羽口は、高炉の高さ方向の下方寄りで中段部位に高炉円周方向に沿って複数個設けられている。
図16に示すように、高炉羽口ブロック100は、羽口108が金属製の略円筒形状の羽口金物109により構成されており、羽口金物109の周りを、耐火物である複数の羽口ブロック101,102,103,104,105,106で保持する構成となっている。この高炉羽口ブロック100は、従来においては、図示のように複数の耐火物を組み合わせて形成されている。
【0003】
しかしながら、高炉羽口ブロック100は、上述のように組み合わせ構造が採用されているために、高炉の稼動中の受熱により周囲や高炉羽口ブロック100自身の耐火物部分や金物部分が熱膨張することで、高炉羽口ブロック100を形成している耐火物にずれを生じるという問題が発生していた。
【0004】
そこで、例えば特許第2836006号では、図23に示すような、隣り合う羽口ブロックの目地8が例えば羽口108の径方向に一直線状に並ばない(貫通しない)構造とすることで、高炉羽口ブロック100を形成している各羽口ブロック同士の高炉周方向のずれ(横ずれ)の発生を起こり難くする工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2836006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献に記載されている構造は、個々の羽口ブロック内における横ずれを防止できるのみで、羽口ブロックの上下方向のずれ(縦ずれ)や羽口前後方向のずれ(迫り出し)を防止できないという問題がある。
したがって、上下前後のずれが発生した場合、羽口金物108と各羽口ブロック101,102,103,104,105,106とが干渉して羽口ブロック内の羽口金物108を損傷させる恐れがあるほか、羽口ブロック同士が損傷することもあった。
また、例えば羽口ブロック内に上下方向に貫通した縦目地があると、羽口下部ライニングの熱膨脹や変質による異常膨張が発生し、部分的な迫上がり及び高低差が生じ構造的に不安定になる恐れがあった。
【0007】
本発明の課題は、高炉羽口ブロック同士の横ずれや上下ずれ並びに前後ずれを防止できて結合強度が増し構造的安定性の高い高炉羽口ブロック形状であって、また、羽口金物と羽口ブロックとが干渉を抑えてそれらの損傷をも回避できる高炉羽口ブロック形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は下記(1)〜(8)に記載の発明により解決することができる。
(1)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉内に高温空気を供給する羽口を構成する高炉羽口ブロックを複数並べた構造体を製作するときに、前記羽口ブロック間の目地を構成する側面壁に、両側面壁に食い込むキー部材を設置することを特徴とする。(請求項1)
【0009】
このように、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材が設置されていることにより、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対して結合力を強固にすることができる。
【0010】
(2)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックは羽口の内壁を構成する羽口金物を分割形成された耐火物で全周囲にわたって囲む構造とすることを特徴とする。(請求項2)
【0011】
このように、高炉羽口ブロックを分割成型品とキー部材を配置することにより、従来の組み合わせにて構成されたものに比べて、羽口ブロック内にずれが生じることがなく、羽口金物と羽口ブロックとの不測の干渉による両部材の損傷を防止することができる。
【0012】
(3)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックを、上下方向に複数に分割して横目地を有する構造とし、この横目地と高炉羽口ブロック間の目地との交差部分にキー部材を配置することを特徴とする。(請求項3)
このように、横目地と縦目地との交差する位置にキー部材を設けることにより、左右・上下に繋がった目地をキー部材にて一直線状ではないように構成することができるので、目地部分でのブロック間のずれを左右上下同時に防止できる。
【0013】
(4)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を羽口の中心軸線とほぼ平行になるように設け、且つ前記キー部材の中心を、高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することを特徴とする。(請求項4)
【0014】
このように、キー部材を、その少なくともひとつを高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することにより、高炉の長期間の過酷な使用状態によるキー部材の損傷を遅らせることができ、キー部材の機能を長く維持することができる。
【0015】
(5)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地表面に露出するようにすることを特徴とする。(請求項5)
【0016】
このように、キー部材を、目地に露出するように設けることにより、このキー部材を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後の開口した溝にキー部材を差込み挿入することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性に優れている。
【0017】
(6)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地の全長にわたって設けることを特徴とする。(請求項6)
【0018】
このように、キー部材を、羽口ブロック間の目地の全体幅にわたる長さで設けることで、キー部材を目地の表裏に露出するように配置できるので、このキー部材を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後に、ブロック表裏のいずれの方向からも挿入することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性に優れている。
【0019】
(7)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地表面に露出しないようにすることを特徴とする。(請求項7)
【0020】
このように、キー部材を、羽口ブロック間の目地の全体幅にわたらない長さにして該目地から露出しないようにすることにより、目地の損傷を抑えることができ、耐用性を高めることができる。また、さらに、このキー部材を配置すれば、ブロック間ずれ方向防止機能を上下方向若しくは左右方向並びに前後方向のブロック間のずれ防止が可能となり、例えば羽口ブロックの迫り出しに対する抵抗性も高くなり、構造的安定性を高めることができる。
【0021】
(8)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、離れて略平行に設けられる複数の目地間を掛け渡すように配置することを特徴とする。(請求項8)
【0022】
このように、キー部材を設ける際に、略平行に配置される目地間を掛け渡すように設けることにより、一つのキー部材により複数の目地部分のずれ防止作用を達成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材を設置するもので、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対して該キー部材による引っ掛かり作用を利用して結合力を強固にすることができ、高炉羽口ブロックの構造物の長期にわたる構造安定性を高めることができる。また、羽口ブロック同士のずれを抑えることが出来るので、羽口金物や羽口ブロック自身の損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる第1実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図2】図1に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿った部分の断面図である。
【図4】本発明にかかる第2実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図5】図4に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明にかかる第3実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図7】図6に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明にかかる第4実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図9】図8に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図10】本発明にかかる第5実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図11】図10に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図12】図11のC−C線に沿った部分の断面図である。
【図13】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図15】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図16】従来の高炉羽口ブロックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。
なお、図1〜図3は第1実施形態の説明図であり、図1は高炉羽口ブロックの斜視図、図2は図1に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図、図3は図1のA−A線に沿った部分の断面図である。
図4及び図5は第2実施形態の説明図であり、図4は高炉羽口ブロックの斜視図、図5は図4に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図6及び図7は第3実施形態の説明図であり、図6は高炉羽口ブロックの斜視図、図7は図6に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図8及び図9は第4実施形態の説明図であり、図8は高炉羽口ブロックの斜視図、図9は図8に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図10〜図12は第5実施形態の説明図であり、図10は高炉羽口ブロックの斜視図、図11は図10に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図、図12は図11のC−C線に沿った部分の断面図である。
図13〜図15は本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【0026】
以下、本発明にかかる第1実施形態を、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
第1実施形態おいては、図1に示すように、高炉羽口ブロック1は、高炉内に高温空気を供給する羽口5が貫通するように構成されている。また、この羽口5は羽口金物3により構成されており、この羽口金物3を収容保持するように、上下に二分された上ブロック1aと下ブロック1bとからなる耐火物にて形成されている。
【0027】
この羽口5を構成する羽口金物3としては、例えば銅製の部材にて形成することができ、形状として円筒形状でも良いが、一般的には、炉内側である前面壁2の側が小径となる裁頭円錐筒体状(図3においては円筒形状として図示してある)に構成することができる。
【0028】
また、この高炉羽口ブロック1は、図示のごとく、上ブロック1aと下ブロック1bとによって羽口金物3を全周囲にわたって囲む構造で、横目地4の左右端部には溝7の半分を構成する凹みが形成されている。
【0029】
本実施形態の高炉羽口ブロック1は、この高炉羽口ブロック1を複数並べた構造物を製作するときに、図2に示すように、その縦目地8及び横目地4を構成する壁面(図1では側面壁6に溝7が形成された状態となっている)の交差部分の溝7にキー部材であるキーレンガ91を設置する。
このように、縦目地8及び横目地4を構成する交差部分にキーレンガ91が設置されると、このキーレンガ91によって、各ブロック間の上下左右方向の動きが規制される。
【0030】
また、本実施形態における高炉羽口ブロック1においては、溝7は、高炉羽口ブロック1同士が並べられたときの縦目地8及び横目地4(図2参照)の表面(前面壁2側)に露出するように構成されている。すなわち、溝7は、側面壁6の前後方向の長さ全体にわたって形成されている。
【0031】
なお、溝7の長さは側面壁6の全体(羽口ブロック間の縦目地の全体)にわたっていなくても溝7が目地に露出するように構成することもできる。この構成は、溝7が前面壁2あるいは後方側壁(前面壁の反対側)の何れかに開口していることで、溝7にキーレンガ91を設置するとき、高炉羽口ブロック1同士を並べた後でも挿入することができる。
【0032】
なお、本実施形態のように、溝7が側面壁6の全長にわたって形成されている場合には、この溝7にキーレンガ91を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後でも、ブロック表裏のいずれの方向から挿入する形態を採用することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性は極めて優れている。
【0033】
以下、本発明にかかる第2実施形態について図4および図5を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック21は、上下方向に3分割された上ブロック21a、中ブロック21b、下ブロック21cからなり、溝27が縦目地8を構成するブロック側面壁26にブロック前後方向にそって二個ずつ4個形成される。
また、溝27は横目地4の端部に位置するように形成されており、縦目地8と横目地4との交差部分にキーレンガ93を配置することができる。
したがって、高炉羽口ブロック21間の組み合わせ構造を強固にすることができる。
本実施形態についても、溝27がブロック側面壁26の前後方向全長にわたって形成されていることにより、前掲の第1実施形態と同様にブロック間の結合力とブロックの施工性が優れるという効果を得ることが出来る。
【0034】
以下、本発明にかかる第3実施形態について図6及び図7を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック31は、大きな溝37が縦目地8を構成するブロック側面壁36に形成される。そして、この高炉羽口ブロック31は、上下方向に3分割された上ブロック31a、中ブロック31b、下ブロック31cからなり、二つの横目地4が溝37内に位置するようになっている。
この溝37には、キーレンガ94が、離れて略平行に設けられる複数の横目地4間を掛け渡すように配置される。
【0035】
このように、キーレンガ94を、二つの横目地4間を掛け渡すように設けることにより、一つのキー部材により複数の目地部分のずれ防止作用を達成することができ、横に並んで施工される高炉羽口ブロック31間の組み合わせ構造を強固にすることができる。
【0036】
また、本実施形態については、溝37がブロック側面壁36の前後方向の全幅にわたって形成されているので、前掲の第1実施形態と同様に高炉羽口ブロック36を並べてからキーレンガ94を設置できる等のブロック間の結合力とブロックの施工性が優れるという効果を得ることが出来る。
【0037】
以下、本発明にかかる第4実施形態を、図8及び図9を参照して詳細に説明する。
第4実施形態においては、羽口金物3を収容保持するように、上下に二分された上ブロック51aと下ブロック51bとからなる耐火物にて形成されている。
また、この高炉羽口ブロック51は、図示のごとく、上ブロック51aと下ブロック51bとにより羽口金物3を全周囲にわたって囲む構造で、横目地4の左右端部には溝57を構成するような凹みが形成され、さらに下ブロック51bには溝57を備えている。
【0038】
本実施形態の高炉羽口ブロック51は、この高炉羽口ブロック51を複数並べた構造物を製作するときに、その縦目地8及び横目地4を構成する壁面の交差部分にキーレンガ96と縦目地8のみに設けられるもう一つのキーレンガ96を設置することができる。
このように、縦目地8及び横目地4を構成する交差部分にキーレンガ96が設置されると、このキーレンガ96によって、各ブロック間の上下左右方向の動きが規制され、また、下側の他のキーレンガ96によってもずれ防止作用を持たせることができる。
【0039】
また、下側のキーレンガ96は、その設置位置が、高炉羽口ブロック51の全高の下方1/2以下になるので、下側のキーレンガ96において、高炉の長期間の過酷な使用状態によるキー部材の損傷を遅らせることができ、キーレンガ96の機能を長く維持することができる。
【0040】
以下、本発明にかかる第5実施形態について図10〜図12を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック71は、上下ブロック71a,71bを有し、溝77が縦目地8を構成するブロック側面壁46のブロック上下方向に沿って形成され、溝78が横目地4に対応する個所に設けられている。また、この横目地78はブロック後方側に開口している。
このように溝77が縦方向に沿って溝78が横方向に沿って設けられることにより、キーレンガ98とキーレンガ99とを設けることが出来、これにより高炉羽口ブロック71間の組み合わせ構造を極めて強固にすることができる。
【0041】
本実施形態については、溝77がブロック側面壁76の上下方向全高にわたって形成され、ブロック上面壁79a及び下面壁79bに開口しているので、前掲の第1実施形態と同様に高炉羽口ブロック77を並べてからキーレンガ98を設置できる等の効果を得ることが出来る。キーレンガ99はブロック後方壁に露出しているが、ブロック前面壁72の側(炉内側)にキーレンガが露出しないので、縦横目地の損傷等を抑えることができる。
【0042】
以下、本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成されるキーレンガの変形例について説明する。
上記の各実施形態に適応したキーレンガは、直方体の形状を採用したが、本発明においては上記実施形態に限定するものではなく、例えば図13〜図15に示すような形状を採用することできる。
図13には、円柱形状のキーレンガ81を示す。
このキーレンガ81を受容する溝は、図示しないが、半円筒形の溝となる。
図14には、横断面が菱形形状のキーレンガ82を示す。
このキーレンガ82を受容する溝は、図示しないが、横断面が三角形状の溝となる。
図15には、球状のキーレンガ83を示す。
このキーレンガ83を受容する溝は、図示しないが、半球状形状の溝となる。
また、キーレンガの形状は楕円柱状や多角柱状なども高炉羽口ブロックの形状やサイズに合わせて適宜選択することができる。
【0043】
以下、本発明にかかる高炉羽口ブロック形状の施工方法を、図1から図3に示す第1実施形態を参照して説明する。
まず、高炉を製作する一つの構成として、高炉内に高温空気を供給する羽口の構造体を作成する。このとき、例えば、多数の羽口を円形状に並べてこの構造体を製作する。
【0044】
このとき、予め羽口金物3を収容保持した高炉羽口ブロック1を、複数並べたて組み立てるとき、高炉羽口ブロック1間の縦目地8を構成する側面壁に設けられた溝7同士を対面するようにするとともに、溝7間を埋めるキーレンガ91を設置するとともに、縦目地材料を設けて横に繋げていく(図2では二個のみ図示してある)。
【0045】
このように、高炉羽口ブロック1間の縦目地8及び横目地4にキーレンガ91が設置されるので、高炉羽口ブロック同士の結合強度が増し、ずれ等に対する構造的安定性が強化される。
【0046】
本発明は上記実施形態に限るものではなく種々変更可能である。例えば、溝の数や溝の向きならびに形状あるいは1目地あたりのキーレンガの数においても、目地のブロック高さ方向または目地のブロック前後方向に複数個設けてもよい。また、キーレンガを目地の高さ方向に複数個設ける場合、そのうちの少なくともひとつのキーレンガの中心が高炉羽口ブロック全高の下方1/2以下であると長期間キーレンガが有効に機能するため好ましく、さらにブロック下側壁面から高炉羽口ブロック全高の15〜35%の位置がより恒久的にキーレンガが有効に機能するのでより好ましい。これは、高炉羽口ブロック1の損傷は上部より進行するため、キーレンガ90は下部にある方が好ましく、また、高炉羽口ブロック全高の15%以下では高炉羽口ブロック1の強度に支障があるからである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材を設置するので、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対してこのキー部材によって結合力を強固にすることができ、高炉羽口ブロックの構造物の長期にわたる構造安定性を高めることができるなど所期性能を長期にわたって維持でき産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0048】
1,21,31,51,71 高炉羽口ブロック
2,32,52,62,72 ブロック前面壁
3 羽口金物
4 横目地
5 羽口
6,26,36,46,76 ブロック側面壁
7,27,37,57,77,78 溝
8 縦目地
9a,29a,39a,79a ブロック上面壁
9b,29b,39b,79b ブロック底面壁
81,82,83、91,93,94,96,98,99 キーレンガ(キー部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉の中に高温の空気を吹き込む羽口の耐火構造物である高炉羽口ブロックの形状に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉においては、周知のごとく熱風炉において高温に加熱された空気を高炉内に吹き込む送風口として羽口が設けられている。この羽口は、高炉の高さ方向の下方寄りで中段部位に高炉円周方向に沿って複数個設けられている。
図16に示すように、高炉羽口ブロック100は、羽口108が金属製の略円筒形状の羽口金物109により構成されており、羽口金物109の周りを、耐火物である複数の羽口ブロック101,102,103,104,105,106で保持する構成となっている。この高炉羽口ブロック100は、従来においては、図示のように複数の耐火物を組み合わせて形成されている。
【0003】
しかしながら、高炉羽口ブロック100は、上述のように組み合わせ構造が採用されているために、高炉の稼動中の受熱により周囲や高炉羽口ブロック100自身の耐火物部分や金物部分が熱膨張することで、高炉羽口ブロック100を形成している耐火物にずれを生じるという問題が発生していた。
【0004】
そこで、例えば特許第2836006号では、図23に示すような、隣り合う羽口ブロックの目地8が例えば羽口108の径方向に一直線状に並ばない(貫通しない)構造とすることで、高炉羽口ブロック100を形成している各羽口ブロック同士の高炉周方向のずれ(横ずれ)の発生を起こり難くする工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許2836006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献に記載されている構造は、個々の羽口ブロック内における横ずれを防止できるのみで、羽口ブロックの上下方向のずれ(縦ずれ)や羽口前後方向のずれ(迫り出し)を防止できないという問題がある。
したがって、上下前後のずれが発生した場合、羽口金物108と各羽口ブロック101,102,103,104,105,106とが干渉して羽口ブロック内の羽口金物108を損傷させる恐れがあるほか、羽口ブロック同士が損傷することもあった。
また、例えば羽口ブロック内に上下方向に貫通した縦目地があると、羽口下部ライニングの熱膨脹や変質による異常膨張が発生し、部分的な迫上がり及び高低差が生じ構造的に不安定になる恐れがあった。
【0007】
本発明の課題は、高炉羽口ブロック同士の横ずれや上下ずれ並びに前後ずれを防止できて結合強度が増し構造的安定性の高い高炉羽口ブロック形状であって、また、羽口金物と羽口ブロックとが干渉を抑えてそれらの損傷をも回避できる高炉羽口ブロック形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は下記(1)〜(8)に記載の発明により解決することができる。
(1)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉内に高温空気を供給する羽口を構成する高炉羽口ブロックを複数並べた構造体を製作するときに、前記羽口ブロック間の目地を構成する側面壁に、両側面壁に食い込むキー部材を設置することを特徴とする。(請求項1)
【0009】
このように、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材が設置されていることにより、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対して結合力を強固にすることができる。
【0010】
(2)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックは羽口の内壁を構成する羽口金物を分割形成された耐火物で全周囲にわたって囲む構造とすることを特徴とする。(請求項2)
【0011】
このように、高炉羽口ブロックを分割成型品とキー部材を配置することにより、従来の組み合わせにて構成されたものに比べて、羽口ブロック内にずれが生じることがなく、羽口金物と羽口ブロックとの不測の干渉による両部材の損傷を防止することができる。
【0012】
(3)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックを、上下方向に複数に分割して横目地を有する構造とし、この横目地と高炉羽口ブロック間の目地との交差部分にキー部材を配置することを特徴とする。(請求項3)
このように、横目地と縦目地との交差する位置にキー部材を設けることにより、左右・上下に繋がった目地をキー部材にて一直線状ではないように構成することができるので、目地部分でのブロック間のずれを左右上下同時に防止できる。
【0013】
(4)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を羽口の中心軸線とほぼ平行になるように設け、且つ前記キー部材の中心を、高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することを特徴とする。(請求項4)
【0014】
このように、キー部材を、その少なくともひとつを高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することにより、高炉の長期間の過酷な使用状態によるキー部材の損傷を遅らせることができ、キー部材の機能を長く維持することができる。
【0015】
(5)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地表面に露出するようにすることを特徴とする。(請求項5)
【0016】
このように、キー部材を、目地に露出するように設けることにより、このキー部材を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後の開口した溝にキー部材を差込み挿入することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性に優れている。
【0017】
(6)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地の全長にわたって設けることを特徴とする。(請求項6)
【0018】
このように、キー部材を、羽口ブロック間の目地の全体幅にわたる長さで設けることで、キー部材を目地の表裏に露出するように配置できるので、このキー部材を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後に、ブロック表裏のいずれの方向からも挿入することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性に優れている。
【0019】
(7)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、目地表面に露出しないようにすることを特徴とする。(請求項7)
【0020】
このように、キー部材を、羽口ブロック間の目地の全体幅にわたらない長さにして該目地から露出しないようにすることにより、目地の損傷を抑えることができ、耐用性を高めることができる。また、さらに、このキー部材を配置すれば、ブロック間ずれ方向防止機能を上下方向若しくは左右方向並びに前後方向のブロック間のずれ防止が可能となり、例えば羽口ブロックの迫り出しに対する抵抗性も高くなり、構造的安定性を高めることができる。
【0021】
(8)本発明にかかる高炉羽口ブロック形状は、キー部材を、離れて略平行に設けられる複数の目地間を掛け渡すように配置することを特徴とする。(請求項8)
【0022】
このように、キー部材を設ける際に、略平行に配置される目地間を掛け渡すように設けることにより、一つのキー部材により複数の目地部分のずれ防止作用を達成することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の高炉羽口ブロック形状は、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材を設置するもので、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対して該キー部材による引っ掛かり作用を利用して結合力を強固にすることができ、高炉羽口ブロックの構造物の長期にわたる構造安定性を高めることができる。また、羽口ブロック同士のずれを抑えることが出来るので、羽口金物や羽口ブロック自身の損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる第1実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図2】図1に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿った部分の断面図である。
【図4】本発明にかかる第2実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図5】図4に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図6】本発明にかかる第3実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図7】図6に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図8】本発明にかかる第4実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図9】図8に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図10】本発明にかかる第5実施形態の高炉羽口ブロックの斜視図である。
【図11】図10に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
【図12】図11のC−C線に沿った部分の断面図である。
【図13】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図14】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図15】本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【図16】従来の高炉羽口ブロックの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施形態について図面を参照して説明する。
なお、図1〜図3は第1実施形態の説明図であり、図1は高炉羽口ブロックの斜視図、図2は図1に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図、図3は図1のA−A線に沿った部分の断面図である。
図4及び図5は第2実施形態の説明図であり、図4は高炉羽口ブロックの斜視図、図5は図4に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図6及び図7は第3実施形態の説明図であり、図6は高炉羽口ブロックの斜視図、図7は図6に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図8及び図9は第4実施形態の説明図であり、図8は高炉羽口ブロックの斜視図、図9は図8に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図である。
図10〜図12は第5実施形態の説明図であり、図10は高炉羽口ブロックの斜視図、図11は図10に示す高炉羽口ブロックの構造物を製作するときの並べた状態を示す斜視図、図12は図11のC−C線に沿った部分の断面図である。
図13〜図15は本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成される溝に設置するキーレンガの変形例を示す斜視図である。
【0026】
以下、本発明にかかる第1実施形態を、図1〜図3を参照して詳細に説明する。
第1実施形態おいては、図1に示すように、高炉羽口ブロック1は、高炉内に高温空気を供給する羽口5が貫通するように構成されている。また、この羽口5は羽口金物3により構成されており、この羽口金物3を収容保持するように、上下に二分された上ブロック1aと下ブロック1bとからなる耐火物にて形成されている。
【0027】
この羽口5を構成する羽口金物3としては、例えば銅製の部材にて形成することができ、形状として円筒形状でも良いが、一般的には、炉内側である前面壁2の側が小径となる裁頭円錐筒体状(図3においては円筒形状として図示してある)に構成することができる。
【0028】
また、この高炉羽口ブロック1は、図示のごとく、上ブロック1aと下ブロック1bとによって羽口金物3を全周囲にわたって囲む構造で、横目地4の左右端部には溝7の半分を構成する凹みが形成されている。
【0029】
本実施形態の高炉羽口ブロック1は、この高炉羽口ブロック1を複数並べた構造物を製作するときに、図2に示すように、その縦目地8及び横目地4を構成する壁面(図1では側面壁6に溝7が形成された状態となっている)の交差部分の溝7にキー部材であるキーレンガ91を設置する。
このように、縦目地8及び横目地4を構成する交差部分にキーレンガ91が設置されると、このキーレンガ91によって、各ブロック間の上下左右方向の動きが規制される。
【0030】
また、本実施形態における高炉羽口ブロック1においては、溝7は、高炉羽口ブロック1同士が並べられたときの縦目地8及び横目地4(図2参照)の表面(前面壁2側)に露出するように構成されている。すなわち、溝7は、側面壁6の前後方向の長さ全体にわたって形成されている。
【0031】
なお、溝7の長さは側面壁6の全体(羽口ブロック間の縦目地の全体)にわたっていなくても溝7が目地に露出するように構成することもできる。この構成は、溝7が前面壁2あるいは後方側壁(前面壁の反対側)の何れかに開口していることで、溝7にキーレンガ91を設置するとき、高炉羽口ブロック1同士を並べた後でも挿入することができる。
【0032】
なお、本実施形態のように、溝7が側面壁6の全長にわたって形成されている場合には、この溝7にキーレンガ91を設置するときに、羽口ブロック同士を並べた後でも、ブロック表裏のいずれの方向から挿入する形態を採用することができ、ブロック間の結合力とブロックの施工性は極めて優れている。
【0033】
以下、本発明にかかる第2実施形態について図4および図5を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック21は、上下方向に3分割された上ブロック21a、中ブロック21b、下ブロック21cからなり、溝27が縦目地8を構成するブロック側面壁26にブロック前後方向にそって二個ずつ4個形成される。
また、溝27は横目地4の端部に位置するように形成されており、縦目地8と横目地4との交差部分にキーレンガ93を配置することができる。
したがって、高炉羽口ブロック21間の組み合わせ構造を強固にすることができる。
本実施形態についても、溝27がブロック側面壁26の前後方向全長にわたって形成されていることにより、前掲の第1実施形態と同様にブロック間の結合力とブロックの施工性が優れるという効果を得ることが出来る。
【0034】
以下、本発明にかかる第3実施形態について図6及び図7を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック31は、大きな溝37が縦目地8を構成するブロック側面壁36に形成される。そして、この高炉羽口ブロック31は、上下方向に3分割された上ブロック31a、中ブロック31b、下ブロック31cからなり、二つの横目地4が溝37内に位置するようになっている。
この溝37には、キーレンガ94が、離れて略平行に設けられる複数の横目地4間を掛け渡すように配置される。
【0035】
このように、キーレンガ94を、二つの横目地4間を掛け渡すように設けることにより、一つのキー部材により複数の目地部分のずれ防止作用を達成することができ、横に並んで施工される高炉羽口ブロック31間の組み合わせ構造を強固にすることができる。
【0036】
また、本実施形態については、溝37がブロック側面壁36の前後方向の全幅にわたって形成されているので、前掲の第1実施形態と同様に高炉羽口ブロック36を並べてからキーレンガ94を設置できる等のブロック間の結合力とブロックの施工性が優れるという効果を得ることが出来る。
【0037】
以下、本発明にかかる第4実施形態を、図8及び図9を参照して詳細に説明する。
第4実施形態においては、羽口金物3を収容保持するように、上下に二分された上ブロック51aと下ブロック51bとからなる耐火物にて形成されている。
また、この高炉羽口ブロック51は、図示のごとく、上ブロック51aと下ブロック51bとにより羽口金物3を全周囲にわたって囲む構造で、横目地4の左右端部には溝57を構成するような凹みが形成され、さらに下ブロック51bには溝57を備えている。
【0038】
本実施形態の高炉羽口ブロック51は、この高炉羽口ブロック51を複数並べた構造物を製作するときに、その縦目地8及び横目地4を構成する壁面の交差部分にキーレンガ96と縦目地8のみに設けられるもう一つのキーレンガ96を設置することができる。
このように、縦目地8及び横目地4を構成する交差部分にキーレンガ96が設置されると、このキーレンガ96によって、各ブロック間の上下左右方向の動きが規制され、また、下側の他のキーレンガ96によってもずれ防止作用を持たせることができる。
【0039】
また、下側のキーレンガ96は、その設置位置が、高炉羽口ブロック51の全高の下方1/2以下になるので、下側のキーレンガ96において、高炉の長期間の過酷な使用状態によるキー部材の損傷を遅らせることができ、キーレンガ96の機能を長く維持することができる。
【0040】
以下、本発明にかかる第5実施形態について図10〜図12を参照して説明する。
本実施形態にかかる高炉羽口ブロック71は、上下ブロック71a,71bを有し、溝77が縦目地8を構成するブロック側面壁46のブロック上下方向に沿って形成され、溝78が横目地4に対応する個所に設けられている。また、この横目地78はブロック後方側に開口している。
このように溝77が縦方向に沿って溝78が横方向に沿って設けられることにより、キーレンガ98とキーレンガ99とを設けることが出来、これにより高炉羽口ブロック71間の組み合わせ構造を極めて強固にすることができる。
【0041】
本実施形態については、溝77がブロック側面壁76の上下方向全高にわたって形成され、ブロック上面壁79a及び下面壁79bに開口しているので、前掲の第1実施形態と同様に高炉羽口ブロック77を並べてからキーレンガ98を設置できる等の効果を得ることが出来る。キーレンガ99はブロック後方壁に露出しているが、ブロック前面壁72の側(炉内側)にキーレンガが露出しないので、縦横目地の損傷等を抑えることができる。
【0042】
以下、本発明にかかる高炉羽口ブロックにおいて形成されるキーレンガの変形例について説明する。
上記の各実施形態に適応したキーレンガは、直方体の形状を採用したが、本発明においては上記実施形態に限定するものではなく、例えば図13〜図15に示すような形状を採用することできる。
図13には、円柱形状のキーレンガ81を示す。
このキーレンガ81を受容する溝は、図示しないが、半円筒形の溝となる。
図14には、横断面が菱形形状のキーレンガ82を示す。
このキーレンガ82を受容する溝は、図示しないが、横断面が三角形状の溝となる。
図15には、球状のキーレンガ83を示す。
このキーレンガ83を受容する溝は、図示しないが、半球状形状の溝となる。
また、キーレンガの形状は楕円柱状や多角柱状なども高炉羽口ブロックの形状やサイズに合わせて適宜選択することができる。
【0043】
以下、本発明にかかる高炉羽口ブロック形状の施工方法を、図1から図3に示す第1実施形態を参照して説明する。
まず、高炉を製作する一つの構成として、高炉内に高温空気を供給する羽口の構造体を作成する。このとき、例えば、多数の羽口を円形状に並べてこの構造体を製作する。
【0044】
このとき、予め羽口金物3を収容保持した高炉羽口ブロック1を、複数並べたて組み立てるとき、高炉羽口ブロック1間の縦目地8を構成する側面壁に設けられた溝7同士を対面するようにするとともに、溝7間を埋めるキーレンガ91を設置するとともに、縦目地材料を設けて横に繋げていく(図2では二個のみ図示してある)。
【0045】
このように、高炉羽口ブロック1間の縦目地8及び横目地4にキーレンガ91が設置されるので、高炉羽口ブロック同士の結合強度が増し、ずれ等に対する構造的安定性が強化される。
【0046】
本発明は上記実施形態に限るものではなく種々変更可能である。例えば、溝の数や溝の向きならびに形状あるいは1目地あたりのキーレンガの数においても、目地のブロック高さ方向または目地のブロック前後方向に複数個設けてもよい。また、キーレンガを目地の高さ方向に複数個設ける場合、そのうちの少なくともひとつのキーレンガの中心が高炉羽口ブロック全高の下方1/2以下であると長期間キーレンガが有効に機能するため好ましく、さらにブロック下側壁面から高炉羽口ブロック全高の15〜35%の位置がより恒久的にキーレンガが有効に機能するのでより好ましい。これは、高炉羽口ブロック1の損傷は上部より進行するため、キーレンガ90は下部にある方が好ましく、また、高炉羽口ブロック全高の15%以下では高炉羽口ブロック1の強度に支障があるからである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、高炉羽口ブロックを複数並べるときの目地を構成する側面壁にキー部材を設置するので、高炉羽口ブロックを組み合わせるときに、このキー部材によってブロック同士のずれに対してこのキー部材によって結合力を強固にすることができ、高炉羽口ブロックの構造物の長期にわたる構造安定性を高めることができるなど所期性能を長期にわたって維持でき産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0048】
1,21,31,51,71 高炉羽口ブロック
2,32,52,62,72 ブロック前面壁
3 羽口金物
4 横目地
5 羽口
6,26,36,46,76 ブロック側面壁
7,27,37,57,77,78 溝
8 縦目地
9a,29a,39a,79a ブロック上面壁
9b,29b,39b,79b ブロック底面壁
81,82,83、91,93,94,96,98,99 キーレンガ(キー部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉内に高温空気を供給する羽口を構成する高炉羽口ブロックを複数並べた構造体を製作するときに、前記羽口ブロック間の目地を構成する側面壁に、両側面壁に食い込むキー部材を設置することを特徴とする高炉羽口ブロック形状。
【請求項2】
前記高炉羽口ブロックは前記羽口の内壁を構成する羽口金物を分割形成された耐火物で全周囲にわたって囲む構造とすることを特徴とする請求項1に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項3】
前記高炉羽口ブロックが上下方向に複数に分割されて横目地を有する構造であり、前記横目地と前記高炉羽口ブロック間の目地との交差部分に前記キー部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項4】
前記キー部材を前記羽口の中心軸線とほぼ平行になるように設け、且つ前記キー部材の中心を、前記高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することを特徴とする請求項2または3に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項5】
前記キー部材を、目地表面に露出するようにすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項6】
前記キー部材を、前記目地の全長にわたって設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項7】
前記キー部材を、目地表面に露出しないようにすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項8】
前記キー部材を、離れて略平行に設けられる複数の目地間を掛け渡すように配置することを特徴とする請求項3〜7の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項1】
高炉内に高温空気を供給する羽口を構成する高炉羽口ブロックを複数並べた構造体を製作するときに、前記羽口ブロック間の目地を構成する側面壁に、両側面壁に食い込むキー部材を設置することを特徴とする高炉羽口ブロック形状。
【請求項2】
前記高炉羽口ブロックは前記羽口の内壁を構成する羽口金物を分割形成された耐火物で全周囲にわたって囲む構造とすることを特徴とする請求項1に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項3】
前記高炉羽口ブロックが上下方向に複数に分割されて横目地を有する構造であり、前記横目地と前記高炉羽口ブロック間の目地との交差部分に前記キー部材を配置することを特徴とする請求項1に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項4】
前記キー部材を前記羽口の中心軸線とほぼ平行になるように設け、且つ前記キー部材の中心を、前記高炉羽口ブロックの全高の下方1/2以下になるように配置することを特徴とする請求項2または3に記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項5】
前記キー部材を、目地表面に露出するようにすることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項6】
前記キー部材を、前記目地の全長にわたって設けることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項7】
前記キー部材を、目地表面に露出しないようにすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【請求項8】
前記キー部材を、離れて略平行に設けられる複数の目地間を掛け渡すように配置することを特徴とする請求項3〜7の何れかに記載の高炉羽口ブロック形状。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−168851(P2011−168851A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34694(P2010−34694)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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