説明

高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法

【課題】高炉羽口埋込み温度計による測定温度のうち、炉熱変化と羽口損傷による温度変化を分離し、分離した温度変化に基づき適正な操業アクションを行なうことができる、高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】羽口単位ごとの測定温度についての所定期間での移動平均値に基づき、羽口単位での羽口損耗状況の管理を行う、羽口単位損耗状況管理ステップと、前記羽口単位ごとの測定温度と前記所定期間での移動平均値との差分計算ならびに正規化を行い、得られた羽口単位ごとの値から対象となる出銑口単位での平均値を求め、該平均値に基づき、出銑口単位での炉熱変動状況の管理を行う、出銑口単位での炉熱変動状況管理ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉羽口埋込み温度計による測定温度に基づいて高炉の炉熱管理を行う、高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉羽口埋込み温度計は、高炉各羽口毎に設置され、早期にかつ連続的に高炉内の溶銑の炉熱変化を検知するためのものである。
【0003】
その検知すべき炉熱変化は、数時間単位で変動するものである。高炉の羽口は、円周方向に数10本配置されており、10羽口毎に、それらの下方に1つの出銑口が設けられている。各羽口の温度レベルは、羽口交換からの日数によって、損耗状況に応じ、その絶対温度レベルが違うため、出銑口毎に該当する羽口の温度を平均化する等の信号処理を実施し、炉熱変化を検知すると共に、操業アクションに使用してきた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−222610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高炉羽口埋込み温度計による測定温度には、数時間単位で変動する炉熱変化と、羽口交換周期である1年程度の間で徐々に変化する羽口損耗による温度変化とが含まれており、出銑口毎に該当する羽口の温度を単純に平均化する信号処理だけでは上手く両者の温度変化を分離できていない。このため、炉熱変化に対応した操業アクションも誤認による過修正や、対応遅れを誘発し、意図した炉熱変動抑止効果を達成できていないといった問題がある。
【0006】
本発明は、これら従来技術の問題点に鑑み、高炉羽口埋込み温度計による測定温度のうち、炉熱変化と羽口損耗による温度変化を分離し、分離した温度変化に基づき適正な操業アクションを行なうことができる、高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を有する。
【0008】
[1] 高炉羽口埋込み温度計による測定温度に基づいて高炉の炉熱管理を行う、高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法であって、羽口単位ごとの測定温度についての所定期間での移動平均値に基づき、羽口単位での羽口損耗状況の管理を行う、羽口単位損耗状況管理ステップと、前記羽口単位ごとの測定温度と前記所定期間での移動平均値との差分計算ならびに正規化を行い、得られた羽口単位ごとの値から対象となる出銑口単位での平均値を求め、該平均値に基づき、出銑口単位での炉熱変動状況の管理を行う、出銑口単位での炉熱変動状況管理ステップとを有することを特徴とする高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法。
【0009】
[2] 上記[1]に記載の高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法において、前記羽口単位損耗状況管理ステップは、前記移動平均値が予め決めた閾値レベルを超えた場合には、次の休風タイミングでの羽口交換を計画する管理であり、前記出銑口単位での炉熱変動状況管理ステップは、前記出銑口単位で求めた平均値が減少すれば、対象羽口からの送風温度上昇や、原料条件変更という操業アクションを実施し、逆に平均値が上昇すれば、前述と逆の操業アクションをとるという管理であることを特徴とする高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、羽口単位ごとの測定温度についての所定期間での移動平均値に基づき、羽口単位での羽口損耗状況の管理を行い、さらに前記羽口単位ごとの測定温度と前記所定期間での移動平均値との差分計算ならびに正規化を行い、得られた羽口単位ごとの値から対象となる出銑口単位での平均値を求め、該平均値に基づき、出銑口単位での炉熱変動状況の管理を行うようにしたので、炉熱変動アクションの早期化および適正化、ならびに羽口損耗状況の的確な把握と、事前対応による突発トラブル防止が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法の処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、炉熱の変化による温度変動と、羽口損耗による温度変化は、前者が数時間周期での変動であるのに対し、羽口損耗は、羽口交換周期である1年程度の長い周期で徐々に変化するという、この周期の違いから信号を分離することにヒントを得て、想到したものである。
【0013】
図1は、本発明に係る高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法の処理手順例を示す図である。総数N本の羽口があり、この羽口k本毎に、それらの下方に1つの出銑口がある場合(出銑口総数h本)を想定している(例えば、羽口40本、羽口10本ごとに1出銑口(出銑口総数4本)など)。
【0014】
先ず、#1羽口の埋込み温度計の現在の実績値を収集する。そして、過去分の実績値を用いて移動平均処理を行う。過去分の実績値については、予め決めた所定期間(例えば、3日間分など)の温度実績値を対象とする。移動平均処理を行うのは、数時間周期での変動の影響を除き、長周期の温度変化の影響を明確にするためである。
【0015】
上記で移動平均処理した、#1羽口埋込み温度移動平均値は、まず保存・記憶して長周期の温度変化推移の管理、すなわち#1羽口の損耗状況の管理に用いる。具体的には、ある閾値レベルを決めておき、その閾値レベルを超えた場合には、次の休風タイミングでの羽口交換を計画する等の管理となる。ここでの処理は、羽口単位、すなわち、総数N本の羽口毎に行う。
【0016】
なお、閾値レベルについては、例えば、「通常の定期交換した場合の、交換直前の温度の平均」と、「突発で羽口交換をせざるを得なくなった時のデータの平均」の平均(中間)値で設定する。
【0017】
また、上記#1羽口埋込み温度移動平均値は、#1羽口の埋込み温度計の現在の実績値との差分計算に用いて、羽口毎の絶対温度レベルの差を除去するとともに、数時間レベルでの炉熱温度変動を正規化した形の温度変動として計算して、その値を、出銑口単位で平均化処理する(例えば、#1出銑口の平均値は、対応する#1〜k羽口の差分値を平均化する)。
【0018】
なお、正規化した形の温度変動は、例えば、次のようにすれば良い。
#N羽口正規化温度変動=(#N羽口温度実績)−(#N羽口移動平均「ex3日間」実績)
これで、0℃を中心に数時間単位でプラスとマイナスを行き来する温度変動となる。
【0019】
ここで、出銑口単位で求めた平均値が減少すれは、高炉状態は溶銑温度が低下し、炉内反応が停滞していると判断でき、対象羽口からの送風温度上昇や、原料条件変更(例えば、還元剤比増)という操業アクションを実施する。
【0020】
また、逆に平均値が上昇すれば、高炉状態は溶銑温度が上昇し、炉内反応が促進していると判断でき、前述と逆の操業アクション(送風温度下降や、原料条件変更(例えば、還元剤比減)をとる。
【0021】
以上の処理を行うことにより、炉熱変動アクションの早期化および適正化、ならびに羽口損耗状況の的確な把握と、事前対応による突発トラブル防止が実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉羽口埋込み温度計による測定温度に基づいて高炉の炉熱管理を行う、高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法であって、
羽口単位ごとの測定温度についての所定期間での移動平均値に基づき、羽口単位での羽口損耗状況の管理を行う、羽口単位損耗状況管理ステップと、
前記羽口単位ごとの測定温度と前記所定期間での移動平均値との差分計算ならびに正規化を行い、得られた羽口単位ごとの値から対象となる出銑口単位での平均値を求め、該平均値に基づき、出銑口単位での炉熱変動状況の管理を行う、出銑口単位での炉熱変動状況管理ステップとを有することを特徴とする高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法において、
前記羽口単位損耗状況管理ステップは、
前記移動平均値が予め決めた閾値レベルを超えた場合には、次の休風タイミングでの羽口交換を計画する管理であり、
前記出銑口単位での炉熱変動状況管理ステップは、
前記出銑口単位で求めた平均値が減少すれば、対象羽口からの送風温度上昇や、原料条件変更という操業アクションを実施し、逆に平均値が上昇すれば、前述と逆の操業アクションをとるという管理であることを特徴とする高炉羽口埋込み温度計を用いた操業管理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−208237(P2011−208237A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77880(P2010−77880)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】