説明

高白色高不透明度封筒用紙

【課題】白色度、不透明度が高く、製袋加工適性と、自動封入封緘機の高速化に適した封緘適性を備えた封筒用紙を提供する。
【解決手段】
次の(1)から(6)の条件を満たす封筒用紙。(1)上質古紙パルプを20〜50質量%配合する。(2)NBKPを5〜20質量%含む。(3)炭酸カルシウム8%以上添加し、灰分5.0〜15%。(4)蛍光染料を添加し、蛍光強度5〜10%。(5)白色度80%以上。(6)不透明度90%以上。さらに、次の(7)から(11)の条件を満たすことが好ましい。(7)坪量70〜120g/m。(8)ステキヒトサイズ度15秒以上。(9)平滑度30〜80秒。(10)クラークこわさ縦70〜240cm/100。(11)吸油度40〜100秒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色度と不透明度が高く、製袋加工適性と高速化された自動封入封緘機に対応できる封緘適性を備えた封筒用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
封筒用紙は、封筒の中身の文字が見えないことが必要とされているが、近年、個人情報の保護が着目されるようになり、ますます封筒の不透明性が求められている。
封筒用紙の中でも、未漂白パルプを使用したものや着色したものは、明度が低いため、比較的坪量が低くても不透明度の確保が容易である。一方、白色の封筒用紙は、印刷のデザインや色調の自由度が高く、高級感を醸し出すことができるので、要望が多いが、不透明度を高くするのは難しい。このような封筒用紙は、白色度が高いことに加え、前述したように中身の情報保護という観点から、高い不透明度が必要である。
封筒の中身が見えないようにするため、封筒を2層構造にしたり、封筒の内側になる面、あるいは外側になる面に、地紋印刷を行ったりすることがある。しかし、資材の種類や製造工程が増えるため、製造コストのアップとなる。
封筒用紙の白色度や不透明度の対策として、一般の印刷用紙と同様に、填料を多く配合したり、蛍光増白剤を添加して見た目の白さを向上させることがなされている。しかし、填料の配合が多くなると、紙の強度や剛度が低下してしまうし、蛍光増白剤の効果には限界がある。
【0003】
近年、銀行,証券会社,クレジットカード会社,百貨店,量販店などでは、封筒を使用した大量のダイレクトメールを顧客に送付している。その場合の封入物の封入封緘は、自動封入封緘機により行われる。
製袋機で製造された封筒のフラップ部の内側には、多くの場合、口糊として、アラビア糊やポリビニルアルコールなどの再湿糊が塗布されている。自動封入封緘機では、封入される複数の封入物を連続フィードして封入し、フラップ部の糊を水で活性化し、フラップ部を折り返して封緘する。そのために、糊が所定の位置に塗布されていない封筒が混入していると接着不良となり、ひどい場合は半開封状態で送付されてしまうことになる。
製袋機では、封筒型紙(封筒の状態に折り畳まれる前の紙)をフィーダーに積載して、1枚づつフィードし、糊が塗布される部分が露出するようにコンベア上に並べ、塗布ロールで糊を塗布し、乾燥する。しかし、封筒の口糊や、胴糊の塗布工程で不良品の発生を抑えることは極めて難しく、紙が重なった状態や曲がった状態でフィードされると糊が所定の位置に塗布されないものや、糊が部分的にしか塗布されないものが製造される。
このように、封筒用紙の紙質が適正な範囲にないと、製袋機で製造される封筒の品質が安定せず、自動封入封緘機で封緘に失敗し不良が発生する原因となってしまう。近年は自動化、高速化が志向されていることもあり、封筒用紙に要求される品質はますます厳しいものとなっている。
【0004】
印刷用紙や封筒用紙に関して、白色度や印刷適性の向上、蛍光強度について特定したものとしては、次のような出願がある。
(特許文献1)
木材パルプを主原料とした中性原紙に、蛍光増白剤、染顔料、水溶性バインダーおよびカチオン性高分子定着剤を主成分とする塗工液を塗工したインクジェット記録用紙であり、かつ、塗工された紙のキセノンフラッシュランプを光源に使用してJISP−8148に規定される測定法により測定されたISO白色度が95%以上、および蛍光強度が7〜15%であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
(課題)記録面に顔料を用いたコーティングを施していない、いわゆる普通紙タイプであり、記録画像の画像濃度、色再現性に優れ、さらに印字部の耐水性と面強度に優れたインクジェット記録用紙を提供する。
(特許文献2)
原紙の両面に、顔料と接着剤を含有する塗被層を少なくとも2層有する印刷用塗被紙において、白紙光沢度が45〜55%、パーカープリントサーフ粗さが0.6〜1.3μm、白色度が87.0〜95.0%、蛍光強度が5.0〜10.0、L*値が92.5〜98.0、かつb*値が−3.5〜−8.0であることを特徴とする印刷用塗被紙。
(課題)写真などの図柄印刷部の冴えや見栄えに優れ、しかも文字印刷の可読性に優れた印刷用塗被紙を提供する。
(特許文献3)
木材パルプ及び/又は古紙パルプからなる原料パルプを長網式抄紙機にて抄紙してなり、乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤を含有し、灰分含有量が10質量%以下であり、横方向のガーレー剛度が1.80〜8.00mNであり、横方向の水中伸度が2.30%以下であることを特徴とするレーザープリンター用封筒用紙。
(課題)封筒としての堅牢さを備え、高湿環境下に保管された状態でレーザープリンターに供給された場合でも、転写抜けや紙シワが発生しないレーザープリンター用封筒と、その封筒の作製に用いる用紙を提供する。
(特許文献4)
原料パルプの20質量%以上を古紙パルプとし、前記原料パルプに中性ロジンサイズ剤及び炭酸カルシウムを灰分が5〜15質量%、不透明度が85%以上となるように添加し、プレス工程と前記乾燥工程との間で、原料パルプにポリアクリルアミド系樹脂を0.15〜0.6g/m2スプレー塗布することにより、前記艶面の紙面pHを5.5〜8.0、75度鏡面白紙光沢度を25〜40%とするとともに、横方向(CD方向)の引裂強さを800〜1300mN、縦方向(MD方向)の引張強さを6〜10kN/mとする、片艶紙の製造方法。
(課題)中性pH領域で抄紙しながらも、ヤンキードライヤーへの湿紙の貼り付きが良好で、片艶紙艶面の白紙光沢が高く、経年劣化を抑えた、また、サイズ性、不透明度、引張強さ、引裂強さのある片艶紙の製造方法を提供する。
しかし、いずれも、製袋加工適性や自動封入封緘機に対応できる封緘適性については、検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−6515号公報
【特許文献2】特開2004−285552号公報
【特許文献3】特開2006−085051号公報
【特許文献4】特開2009−138294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、白色度、不透明度が高く、製袋加工適性と自動封入封緘機の高速化に適した封緘適性を備えた封筒用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、封筒用紙の紙質と、封筒用紙の自動封入封緘機での作業性の関係について検討した結果、封筒用紙のパルプ配合、填料、灰分、蛍光強度、白色度、不透明度、坪量、ステキヒトサイズ度、平滑度、クラークこわさ、吸油度を特定することにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
請求項1に係る発明は、以下の(1)から(6)の条件を満たす封筒用紙である。
(1)上質古紙パルプを20〜50質量%配合する。
(2)NBKPを5〜20質量%含む。
(3)炭酸カルシウム8%以上添加し、灰分5.0〜15%
(4)蛍光染料を添加し、蛍光強度5〜10%
(5)白色度80%以上
(6)不透明度90%以上
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の封筒用紙であって、以下の(7)〜(11)の条件を満たす封筒用紙である。
(7)坪量70〜120g/m
(8)ステキヒトサイズ度15秒以上
(9)平滑度30〜80秒
(10)クラークこわさ縦70〜240cm/100
(11)吸油度40〜100秒
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白色度と不透明度が高く、自動封入封緘機の高速化にも対応できる封筒用紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の封筒用紙の製造には、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、リールパートの各工程からなる抄紙機を用いる。抄紙機の型式は特に限定はなく、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等を使用できる。ドライヤーパートは多筒ドライヤー、ヤンキードライヤーやこれらを組み合わせたものでもよい。オントップ型やギャップフォーマー型のツインワイヤー抄紙機が望ましく、特に両面から均等に脱水するギャップフォーマー型抄紙機が望ましい。
【0011】
本発明の封筒用紙は、原料パルプとして、クラフトパルプ、古紙パルプ、機械パルプ等が使用できる。クラフトパルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等が使用できる。また、古紙パルプとしては、新聞古紙脱墨パルプ、上質古紙脱墨パルプ等の古紙脱墨パルプ(DIP)が使用できる。機械パルプとしては、ストーングラウンドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等を使用することができる。
【0012】
本発明の封筒用紙は、全パルプ中針葉樹クラフトパルプを5〜20質量%含有している。
針葉樹クラフトパルプを5〜20質量%含有することで、封筒の製袋加工に必要な強度と剛度を得ることができる。20質量%より多いと、地合いが悪くなり、糊付部の波打ちやカールなどの問題を生じる。
配合する針葉樹クラフトパルプのカナダ標準ろ水度(CSF)は400〜600mlに調整されていることが好ましい。針葉樹クラフトパルプのカナダ標準ろ水度が400mlより低いと用紙に高い剛度が得られず、600mlより高いと引裂き強さが低くなる。
また、本発明の封筒用紙は、古紙パルプを含有していることが好ましく、リサイクルという点でその配合率は高いほうが良いが、高過ぎると剛度や強度が不足する。
【0013】
本発明の封筒用紙に使用する古紙パルプは、上質古紙脱墨パルプとし、その配合率は20〜50質量%とする。上質古紙脱墨パルプは一般的に上質紙や上質コート紙を原料に脱墨処理した古紙パルプであり、古紙の分類としてケント、色上などが使用されたものである。
古紙パルプは、新聞古紙、雑誌古紙、上質古紙等の各種の古紙から製造されるため、NBKP、LBKP等の化学パルプや前記記載の機械パルプの数種類のパルプを含有している。しかし、使用する古紙の種類を一定とすれば、古紙パルプに含まれる針葉樹クラフトパルプの含有率も一定となり、古紙を配合しても、封筒用紙全体に含まれる針葉樹クラフトパルプの質量比率の予測や調整は可能である。上質古紙パルプの繊維組成(質量%)は、針葉樹クラフトパルプ/広葉樹クラフトパルプ/機械パルプ=8/90/2程度である。繊維組成は、JISP8120:1998紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法により求めることができる。
【0014】
封筒用紙に含まれる針葉樹クラフトパルプの含有率は、針葉樹クラフトパルプの配合率と上質古紙脱墨パルプの配合率を調整することで、前記範囲とすることができる。使用する上質古紙脱墨パルプは、白色度70〜85%、灰分5〜15%が望ましい。このような上質古紙脱墨パルプを使用することで、封筒用紙の白色度と不透明度を高くすることができ、古紙パルプを配合しても白色度、不透明度が高い封筒用紙を得ることができる。
【0015】
本発明の封筒用紙には、インキ発色性、インキ着肉性、不透明度、白色度向上を目的に填料を添加する。特に白色度の高い炭酸カルシウムを灰分として8%以上添加し、封筒用紙の灰分を5.0〜15%としている。
炭酸カルシウムの添加率が8%より低いと、白色度が低くなり、不透明度が不足する。炭酸カルシウムの添加率の上限は特になく、灰分が後述するようになれば良いが、通常は20%までである。これより多いと、炭酸カルシウムが、抄紙機の原料系内に蓄積したり、抄紙機のフェルト汚れが発生し、抄紙の操業性が悪くなる。
炭酸カルシウム以外の填料の種類は特に限定されず、一般の印刷用紙に使用されている填料を使用することができる。具体的には、タルク、クレー、シリカ、二酸化チタン等の無機填料やプラスチックピグメント等の有機填料を使用することができる。
本発明の封筒用紙の灰分(JISP8251)は5.0〜15%とするのが好ましい。灰分が5.0%より低いと不透明度や白色度が不足し、15%より高いと剛度が不足する。
【0016】
そして、炭酸カルシウムとその他の填料を含有させることにより、白色度と不透明度を高くしている。
【0017】
本発明の封筒用紙は、蛍光染料を添加し、蛍光強度が5〜10%となるようにしている。
上質古紙脱墨パルプを使用した場合の蛍光強度がこの範囲であれば、目視白色度が高くなるので好ましい。蛍光染料は内添でも外添でもよく、内添と外添を併用してもよい。
このようにして、白色度(JISP8148)80%以上(好ましくは85%以上)、不透明度(JISP8149)90%以上(好ましくは95%以上)の封筒用紙が得られる。白色度は高いほど印刷効果が高くなる。不透明度が90%以上あれば、封筒の中身の視認が難しくなり、95%以上あれば、封筒の中身が通常の印刷物の場合、ほぼ視認できなくなる。
【0018】
通常、紙の白色度を上げるには、使用するパルプの漂白を進めてパルプの白色度を上げたり、白色度の高い填料を配合する必要があるが、それぞれ、不透明度低下、強度低下の問題がある。蛍光染料を添加することによって白色度を上げれば、不透明度の低下や強度の低下をまねくことがない。
【0019】
本発明の封筒用紙では、原料パルプに硫酸バンド、サイズ剤、嵩向上剤、紙力増強剤等を添加することができる。サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水琥珀酸等のサイズ剤が使用できる。紙力増強剤としては、カチオン澱粉、ポリアクリルアミド系樹脂等が使用できる。その他、必要に応じ、湿潤紙力増強剤、スライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、染料等の添加剤も使用することができる。
【0020】
次に本発明の封筒用紙の紙質について、製袋加工適性と自動封入封緘機に対応できる封緘適性の面から、以下のような特性を持つものとしている。
【0021】
本発明の封筒用紙の坪量は70〜120g/mとされている。
坪量が70g/mより低いと、不透明度が不足し、ダイレクトメール等の個人情報を取り扱う封筒には適さない。坪量が120g/m程度あれば十分な不透明度や剛度を持つ封筒となるが、これより高いとこわさが高くなり過ぎて製袋加工適性が悪くなる場合がある。
本発明の封筒用紙は、ステキヒトサイズ度が15秒以上とされている。
ステキヒトサイズ度は、水溶液系や水分散系の接着剤を使用する場合の接着性に関わってくる。ステキヒトサイズ度が15秒に満たないと、これらの接着剤の用紙への吸収が多くなり、用紙の波打ちが発生したり、接着不良となることがある。
【0022】
本発明の封筒用紙は、平滑度が30〜80秒とされている。平滑度が30秒より低いと、自動封入封緘機で、紙が重なったり、詰りなどによりシワ入りや接着不良を起こす。平滑度が80秒より高いと、摩擦係数が低過ぎて、自動封入封緘機で不揃いのトラブルを起こすことがある。
【0023】
本発明の封筒用紙のクラークこわさ縦が70〜240cm/100とされている。クラークこわさ縦が70cm/100より低いと、製袋機や自動封入封緘機での不揃いやシワ入りとなるおそれがあり、240cm/100より高いと、硬すぎて製袋時の折り不良となるおそれがある。
【0024】
本発明の封筒用紙の吸油度は、40〜100秒とされている。吸油度は、有機溶剤系接着剤や熱溶融型接着剤(ホットメルト)を使用する場合の接着性に関わってくる。吸油度が40秒に満たないと、有機溶剤系接着剤を使用した場合、溶剤成分が用紙の裏に抜け、見栄えが悪くなる。吸油度が100秒を超えるとこれらの接着剤の用紙への吸収が不足して、一度接着しても、接着剤と用紙の間で界面剥離を起こし、剥がれやすくなる。
封筒用紙の吸油度は、使用する填料の種類や填料の添加率、表面処理剤の種類や塗布量、カレンダー処理条件等により、調整することができる。
【0025】
本発明の封筒用紙では、表面処理剤に接着剤を、パイリングなどの表面強度に纏わるトラブルを回避するために配合する。表面強度を高めるための接着剤としては、澱粉類を含むことが好ましい。
【0026】
澱粉類は、親水性である繊維との接着能力が高く、塗布量が少ない場合において紙表面から脱落し易い微細繊維なども強力に接着するため好ましい。前記澱粉類としては、酵素変性澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、疎水化澱粉などが例示される。なお、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースなどの水溶性セルロース化合物、ポリビニルアルコール化合物やポリアクリルアミド類、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白などの蛋白質類やラテックス類などの通常の塗工紙用接着剤を一種類以上併用しても良い。
【0027】
本発明においては、良好な印刷作業性と印刷品質を提供する上で、接着剤の塗布量は片面あたり0.20〜1.0g/mとするのが好ましく、より好ましくは0.20〜0.50g/mとする。接着剤の塗布量が規定量より少ないと紙粉などに代表される表面強度に纏わるトラブルが起こるおそれがあり、規定量より多いと不透明度を低下させる傾向がある。
【0028】
表面処理剤を原紙へ塗布するための装置としては、特に限定さないが、例えばツーロールサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ゲートロールコーターなどのロールコーター、ベベルタイプやベントタイプのブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、グラビアコーターなどの公知公用の装置が使用される。なお、表面処理剤を塗布後の湿潤塗布層を乾燥する方法としては、蒸気乾燥、ガスヒーター乾燥、電気ヒーター乾燥、赤外線ヒーター乾燥などの各種方式が採用できる。
【0029】
本発明の封筒用紙の製造に際しては、ドライヤーで乾燥後に、カレンダー装置により平滑化処理する。カレンダー装置としては、チルドカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の一般に使用されているカレンダー装置が使用できる。目標とする平滑度に応じて、ニップ数やニップ圧、ロール温度、ロール材質、ロール硬度等を設定する。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例により、本発明の効果を具体的に表す。なお、%は特に断りのない限り質量%を表し、添加量は絶乾パルプに対する固形分または有効成分で表す。
【0031】
(実施例1)
LBKP45質量部(白色度85%、350mlCSF)、NBKP10質量部(白色度86%、450mlCSF)、上質古紙脱墨パルプ45質量部(白色度79%、350mlCSF、NBKPの含有率8質量%)からなるパルプ分散液に、硫酸バンド3質量%(有姿)、填料として軽質炭酸カルシウム(東洋電化工業株式会社製、商品名:トヨライトTNC−S360)を12質量%添加し、サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、商品名:サイズパイン811M)0.5質量%、カチオン澱粉(GSJジャパン製、商品名:ジェルトロン24)0.5質量%、歩留り向上剤(ハイモ社製、商品名:ND260)を対パルプ200ppm添加して抄紙した。表面処理剤として、酸化澱粉(王子コーンスターチ株式会社製、商品名:王子エースA)を塗布量が片面当たり0.50g/m、表面サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、商品名:ポリマロンM20)を塗布量が片面当たり0.14g/m、蛍光染料(ケミラジャパン社製、ブランコホアーZ−PS)を塗布量が片面当たり0.10g/mとなるように、表裏同一塗布量でゲートロールコーターを用いて塗布し、乾燥後、ソフトカレンダー処理(線圧10kN/m、温度80℃)し、坪量82.0g/m、水分6.0%の封筒用紙を得た。得られた封筒用紙の評価結果を表1に示す。
【0032】
(実施例2)
LBKP45質量部、NBKP5質量部、上質古紙脱墨パルプ50質量部とし、填料として軽質炭酸カルシウムを8質量%添加した以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(実施例3)
LBKP65質量部、NBKP15質量部、上質古紙脱墨パルプ20質量部とし、填料として軽質炭酸カルシウムを18質量%添加した以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(実施例4)
LBKP45質量部、NBKP10質量部、上質古紙脱墨パルプ45質量部とし、填料として軽質炭酸カルシウムを12質量%添加し、表面処理剤として、酸化澱粉を塗布量が片面当たり0.50g/m、表面サイズ剤を塗布量が片面当たり0.14g/m、蛍光染料を塗布量が片面当たり0.15g/mとなるように、表裏同一塗布量でゲートロールコーターを用いて塗布、乾燥した以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(実施例5)
填料として軽質炭酸カルシウムを14質量%添加し、表面処理剤として、酸化澱粉を塗布量が片面当たり0.50g/m、表面サイズ剤を塗布量が片面当たり0.14g/m、蛍光染料を塗布量が片面当たり0.08g/mとなるように、表裏同一塗布量でゲートロールコーターを用いて塗布、乾燥したことと、坪量70.0g/mとしたこと以外は実施例3と同様に封筒用紙を得た。
(実施例6)
填料として軽質炭酸カルシウムを8質量%添加したことと、坪量を100g/mとしたこと以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(実施例7)
填料として軽質炭酸カルシウムを8質量%添加したことと、坪量を120g/mとしたこと以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
【0033】
(比較例1)
LBKP35質量部、NBKP20質量部、上質古紙脱墨パルプ45質量部とした以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(比較例2)
LBKP75質量部、NBKP10質量部、上質古紙脱墨パルプ15質量部とし、填料として軽質炭酸カルシウムを7質量%添加し、蛍光染料を塗布しなかったこと以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(比較例3)
表面処理剤として、酸化澱粉を塗布量が片面当たり0.50g/m、表面サイズ剤を塗布量が片面当たり0.14g/m、蛍光染料を塗布量が片面当たり0.05g/mとなるように、表裏同一塗布量でゲートロールコーターを用いて塗布、乾燥した以外は実施例2と同様に封筒用紙を得た。
(比較例4)
填料として軽質炭酸カルシウムを23質量%添加し、ソフトカレンダーの処理条件を線圧30kN/m、温度80℃としたこと以外は実施例1と同様に封筒用紙を得た。
(比較例5)
LBKP60質量部、上質古紙脱墨パルプ40質量部とした以外は実施例5と同様に封筒用紙を得た。
(比較例6)
坪量を62g/mとしたこと以外は実施例5と同様に封筒用紙を得た。
(比較例7)
坪量を125g/mとしたこと以外は実施例7と同様に封筒用紙を得た。
(比較例8)
坪量を120g/mとし、ソフトカレンダーの処理条件を線圧5kN/m、温度80℃としたこと以外は、比較例2と同様に封筒用紙を得た。得られた封筒用紙の評価結果を表1に示す。
【0034】
なお、試験方法と評価方法は次のとおりである。
(坪量)JISP8124:1998紙及び板紙−坪量測定方法
(繊維組成)JISP8120:1998紙、板紙及びパルプ−繊維組成試験方法に準拠した。各繊維の重み係数は、NBKP=1.0、LBKP=0.26、MP=1.3とおいた。
(灰分)JISP8251:2003紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法
(白色度)JISP8148:2001紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法
(蛍光強度)日本電色工業株式会社製の分光式白色差計PF−10用い、パルスキセノンランプを光源として使用し、JIS P8148(2001年)に従って測定する白色度において、光路に420nmカットオフフィルターを挿入しない場合から同フィルターを挿入した場合の白色度を引いた値を蛍光強度とした。
(不透明度)JISP8149:2000紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照射法
(ステキヒトサイズ度)JISP8122:2004紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法
(平滑度)JISP8119:1998紙及び板紙−ベック平滑度試験機による平滑度試験方法
(クラークこわさ)JISP8143:2009紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法
(吸油度)旧JISP3001:1995新聞巻取紙に準じて測定した。
(評価)製袋加工機(冨士製袋機工業株式会社:FFDW−3/G−1洋封製袋機)を用い、製袋速度を350枚/分に設定して、封筒用紙を洋封筒に加工した。口糊は、アラビア口糊(再湿糊)を塗布、乾燥した。製袋後、自動封入封緘機にかけた。
製袋機での製袋加工適性と、自動封入封緘機での封緘適性を次の基準で評価した。
(製袋加工適性)
○:折部分、紙揃え部分で不揃いがなく、設定の速度で加工できた。
×:折部分、紙揃え部分で不揃いやシワが発生し、製袋速度を落とさなければならなかった。
(封緘適性)
○:口糊が所定の位置あり着し、フラップが十分に接着していた。
×:一部にフラップの接着不良が見られた。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
表1に示したように、本発明の実施例1〜7では、いずれも白色度、不透明度が高く、製袋加工適性、封緘適性の評価がともに良好であることがわかる。
比較例1は、NBKPの含有率が24質量%と多く、地合いが悪くなり糊付部の波打ちが発生したため、封緘適性の評価が悪くなっている。
比較例2は、炭酸カルシウムの添加率が7%と低いため灰分も4.7%と低く、蛍光染料の添加がないこともあり、白色度、不透明度が低くなっている。
比較例3は、蛍光染料の塗布量が少ないので蛍光強度が3%と低くなっており、白色度が不足している。
比較例4は、炭酸カルシウムの添加量が23質量%で灰分が18%と高いので、クラークこわさ縦が68cm/100と低く、製袋加工適性の評価が劣っている。また、平滑度表が84秒、裏が82秒と高いので、自動封緘機で不揃いが生じた。
比較例5は、NBKPの含有率が3質量%と少なく、クラ−クこわさ縦が66cm/100と低くなっており、製袋加工適性、封緘適性の評価が劣っている。
比較例6は、坪量が62.0g/mと低いため、不透明度が89.2%と低く、こわさ縦が64cm/100と低くなっており、製袋加工適性の評価が悪くなっている。また、ステキヒトサイズ度が12秒と低いので、封緘適性の評価が悪くなっている。
比較例7は、坪量が125.0g/mと高く、こわさ縦が245cm/100と高くなっており、製袋加工適性の評価が悪くなっている。
比較例8は、炭酸カルシウムの添加率が7%と低いため灰分も4.8%と低く、蛍光染料の添加がないこともあり、白色度が低くなっている。また、平滑度表が28秒、裏が27秒と低いので、自動封緘機で詰まりが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の用紙は、高速化された自動封入封緘機で使用される封筒用紙に適しているほか、各種の加工用の用紙としても使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)から(6)の条件を満たす封筒用紙。
(1)上質古紙パルプが20〜50質量%配合されている。
(2)NBKPを5〜20質量%含む。
(3)炭酸カルシウム8%以上添加し、灰分5.0〜15%
(4)蛍光染料を含有し、蛍光強度5〜10%
(5)白色度80%以上
(6)不透明度90%以上
【請求項2】
請求項1に記載の封筒用紙であって、以下の(7)〜(11)の条件を満たす封筒用紙。
(7)坪量70〜120g/m
(8)ステキヒトサイズ度15秒以上
(9)平滑度30〜80秒
(10)クラークこわさ縦70〜240cm/100
(11)吸油度40〜100秒

【公開番号】特開2012−219415(P2012−219415A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88706(P2011−88706)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(304040072)丸住製紙株式会社 (51)
【Fターム(参考)】