説明

高粘度液体用容器の逆さキャップ

【課題】モールドからの取り出し性に優れる高粘度液体用容器の逆さキャップ12の提供。
【解決手段】このキャップ12は、樹脂組成物をモールド内で加熱及び加圧することにより形成されている。このキャップ12は、その上部に注ぎ口20を有する円筒状の胴体14と、この注ぎ口20を塞ぐ蓋16と、この胴体14と蓋16とを回動自在に連結する蝶番18とを備えている。この蓋16は、上記胴体14の上部に嵌め合わされる本体24と、その上側においてこの本体24から突出するフランジ26とを備えている。このフランジ26は、切欠き36を備えている。上下方向において、この切欠き36と上記蝶番18とは重複した位置にある。好ましくは、このキャップ12では、上記胴体14の最大幅に対する上記蓋16の最大幅の比は1.01以上3.00以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度液体用容器の逆さキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
シャンプーの容器は、ボトルと、このボトルに装着されたキャップとを備えている。大容量のボトルが用いられるとき、この容器においては、アキュームレーターと誘導管とを有するディスペンサーがキャップとして用いられる。この容器では、このディスペンサーのサドルを押し下げることにより、ボトルに投入されたシャンプーが排出される。
【0003】
使用により、シャンプーの液面は徐々に下方に移行していき、やがて、シャンプーに浸かっていた誘導管の吸引口が現れる。この状態になると、ディスペンサーは空気を吸引するようになる。このため、シャンプーが残存しているにも関わらず、サドルを押し下げても、シャンプーが排出されなくなる。ディスペンサーを取り付けたままでは、この容器を逆立てることもできない。
【0004】
シャンプーは、高粘度の液体である。このため、ボトルを逆立てても、このシャンプーが垂れて滴り落ちるまで時間がかかる。シャンプーを使い切るのに、煩わしさを憶える利用者は少なくない。リンス、トリートメント、コンディショナー、ボディーソープ等の液体においても、同様の問題がある。煩わしさを憶えることなく、ボトル内のシャンプーを使い切るために、様々な検討がなされている。
【0005】
図7に示されているのは、従来の高粘度液体用容器の逆さキャップ2である。このキャップ2は、胴体4と蓋6とを備えている。この蓋6は、胴体4に設けられた注ぎ口(図示されず)を塞いでいる。この胴体4と蓋6とは、蝶番8により連結されている。このキャップ2は、ボトルの口にねじ込まれる。
【0006】
このキャップ2では、蓋6に指をかけてこの蓋6を持ち上げると、この蓋6が蝶番8を軸として胴体4に対して回動する。これにより、胴体4の注ぎ口が露出する。
【0007】
このキャップ2の上部には、フランジ10が設けられている。このフランジ10の外径は胴体4の外径よりも大きい。このため、このキャップ2を用いることにより、フランジ10を下にして容器を床面に載置することができる。ボトルが逆立てられた状態で保持されるので、ボトルの底に溜まった液体はその自重で垂下しこのキャップ2の部分に溜まっていく。このため、使用者が蓋6を外すと直ぐに、液体が注ぎ口から排出される。このキャップ2は、液体の使い切りに寄与しうる。このようなキャップ2の一例が、特開2006−240634公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−240634公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
キャップ2は、モールドのキャビティに樹脂組成物を投入し、これを加熱及び加圧することにより成形される。成形後、モールドが開かれ、キャップ2が取り出される。
【0010】
図8には、蓋6が開かれた状態にある図7のキャップ2の断面が示されている。モールドのキャビティが、この図8に示された形態で構成されることがある。
【0011】
図示されているように、蓋6のフランジ10が蝶番8と上下方向において重複している。この重複は、モールドからのキャップ2の取り出しを阻害する。このため、このキャップ2を成形するには、キャップ2の取り出しを考慮したモールドを使用しなければならない。なお、このフランジ10と蝶番8とが重複している部分はアンダーカットとも称される。
【0012】
アンダーカットを有するキャップ2の、モールドからの取り出しが考慮され、このモールドが多数の部品で構成されることがある。このようなモールドは、高価である。しかも、部品点数が多いので、キャップ2の取り出しに時間がかかる。このような形態では、安価でしかも安定にキャップ2を生産することは難しい。
【0013】
本発明の目的は、モールドからの取り出し性に優れる高粘度液体用容器の逆さキャップの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る高粘度液体用容器の逆さキャップは、その上部に注ぎ口を有する円筒状の胴体と、この注ぎ口を塞ぐ蓋と、この胴体と蓋とを回動自在に連結する蝶番とを備えている。この蓋は、上記胴体の上部に嵌め合わされる本体と、この本体から突出するフランジとを備えている。このフランジは、切欠きを備えている。上下方向において、この切欠きと上記蝶番とは重複した位置にある。
【0015】
好ましくは、この高粘度液体用容器の逆さキャップでは、上記胴体の最大幅に対する上記蓋の最大幅の比は1.01以上3.00以下である。
【0016】
本発明に係る高粘度液体用容器は、高粘度の液体が投入されるボトルと、このボトルの口に嵌め合わされる逆さキャップとを備えている。この逆さキャップは、その上部に注ぎ口を有する円筒状の胴体と、この注ぎ口を塞ぐ蓋と、この胴体と蓋とを回動自在に連結する蝶番とを備えている。この蓋は、上記胴体の上部に嵌め合わされる本体と、この本体から半径方向外向きに突出するフランジとを備えている。このフランジは、切欠きを備えている。上下方向において、この切欠きと上記蝶番とは重複した位置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る高粘度液体用容器の逆さキャップでは、上下方向においてフランジの切欠きが蝶番と重複した位置にある。この逆さキャップでは、アンダーカットの形成が抑制されている。この逆さキャップは、モールドから容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態に係る高粘度液体用容器の逆さキャップの正面図であり、図1(b)はその底面図である。
【図2】図2は、図1(b)のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1の逆さキャップのモールドから取り出された直後の状態が示された平面図である。
【図4】図4は、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、図1の逆さキャップの使用状態が示された左側面図である。
【図6】図6(a)は本発明の他の実施形態に係る高粘度液体用容器の逆さキャップの平面図であり、図6(b)はその正面図である。
【図7】図7(a)は従来の高粘度液体用容器の逆さキャップの平面図であり、図6(b)はその正面図である。
【図8】図8は、その蓋が開かれた状態にある図7の逆さキャップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0020】
図1に示されているのは、逆さキャップ12である。図2には、この図1(b)のII−II線に沿った、このキャップ12の断面が示されている。このキャップ12は、ボトル(図示されず)の口に嵌め合わされる。このキャップ12のボトルへの嵌合により、容器が構成される。この容器には、高粘度液体が投入される。この高粘度液体としては、シャンプー、リンス、トリートメント、コンディショナー、ボディーソープ、ハンドソープ、ボディローション、ハンドクリーム及びベビーローションが例示される。
【0021】
キャップ12は、胴体14と、蓋16と、蝶番18とを備えている。胴体14は、円筒状である。この胴体14の上部には、注ぎ口20が設けられている。前述の高粘度液体はこの注ぎ口20を通過しうる。この胴体14の内周面には、雌ねじ22が設けられている。この雌ねじ22は、ボトルの口の雄ネジに対応している。このキャップ12は、ボトルにねじ込まれる。図1(a)に示されているように、この胴体14の外周面には、ローレット加工が施されている。
【0022】
蓋16は、略円板状である。この蓋16は、本体24と、フランジ26とを備えている。本体24は、その上部が閉塞された略円筒状を呈している。このキャップ12では、この本体24は胴体14の上部に嵌め合わされる。これにより、胴体14の注ぎ口20が塞がれる。図2に示されているように、この本体24には、その下面から突出する外筒28と内筒30とが設けられている。内筒30は、外筒28の内側に位置している。この本体24が胴体14に嵌め合わされたとき、注ぎ口20の先端部分は外筒28と内筒30との間に挿入される。
【0023】
フランジ26は、本体24の上側において、この本体24から半径方向外向きに延在している。このフランジ26は、本体24から突出している。このフランジ26の外周32は、略円形状を呈している。このフランジ26を下にしてこのキャップ12が平滑な面に載置されたとき、このフランジ26の上面34がこの面に当接する。
【0024】
図示されているように、このキャップ12のフランジ26には切欠き36が設けられている。この切欠き36は、フランジ26の外周32から半径方向内向きに窪んだ形状を呈している。
【0025】
蝶番18は、胴体14と蓋16とを連結している。このキャップ12では、蓋16のフランジ26に指をかけてこの蓋16を持ち上げると、この蓋16がこの蝶番18を軸として胴体14に対して回動する。このキャップ12では、この蝶番18により、蓋16と胴体14とは回動自在に連結されている。
【0026】
このキャップ12は、樹脂組成物から形成される。この樹脂組成物は、基材樹脂を含む。この基材樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂が例示される。汎用性及び加工性の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリエチレンテレフタレートがより好ましい。なお、これらの再生材料が用いられてもよい。
【0027】
このキャップ12の樹脂組成物は、薬品を含むことができる。この薬品としては、酸化防止剤、着色剤、加工助剤等が例示される。キャップ12の仕様等が考慮され、最適な薬品が最適な量で樹脂組成物に配合される。
【0028】
このキャップ12は、樹脂組成物をモールド(図示されず)内で加熱及び加圧することにより形成される。このモールドには、キャビティが設けられている。このキャビティの形状は、このキャップ12の形状と同等である。このキャビティに樹脂組成物が投入される。投入の時、モールドは加熱されている。
【0029】
樹脂組成物は、キャビティ内で加熱及び加圧される。加熱及び加圧により、樹脂組成物が流動する。このモールドのキャビティ面に、樹脂組成物が押し付けられる。モールドが冷却される。これにより、樹脂組成物が固化し、キャップ12が得られる。冷却後、このキャップ12がモールドから取り出される。
【0030】
図3には、モールドから取り出された直後にあるキャップ12の状態が示されている。図4には、この図3のIV−IV線に沿った断面図が示されている。図示されているように、このキャップ12は蓋16の開いた状態で成形される。換言すれば、このキャップ12の成形に用いられるモールドのキャビティは図3及び図4に示された形態で構成されている。
【0031】
このキャップ12では、上下方向において、フランジ26の切欠き36と蝶番18とが重複した位置にある。このキャップ12では、フランジ26の本体38と蝶番18との重なり合い、換言すれば、アンダーカットの形成が抑制されている。このキャップ12は、モールドからの取り出し性に優れている。
【0032】
このキャップ12では、モールドから取り出す際における、過大な変形が防止される。このキャップ12の形態は、高品質なキャップ12の安定生産に寄与しうる。
【0033】
このキャップ12では、モールドからの取り出し性を考慮して、このモールドを複雑な構成とする必要がない。このキャップ12は、生産コストの低減に寄与しうる。少ない部品点数でモールドを構成することができるので、モールドのメンテナンスも容易である。
【0034】
図5に示されているのは、このキャップ12の使用状態である。このキャップ12は、ボトル40に嵌め合わされている。容器42は、キャップ12のフランジ26を下側にして床面44に載置されている。
【0035】
このキャップ12では、フランジ26の外径が胴体14の外径よりも幅広い上に、このフランジ26の上面34の全体が床面44に当接している。このキャップ12は、容器42が逆立てられた場合の静置安定性に寄与しうる。このキャップ12は、静置安定性を阻害することなく、モールドからの取り出し性の向上が達成されている。
【0036】
このキャップ12によれば、容器42が逆立てられた状態が安定に保持されるので、この容器42のボトル40の底に溜まった液体はその自重で垂下しこのキャップ12の部分に溜まっていく。このため、使用者がこのキャップ12の蓋16を外すと直ぐに、液体が注ぎ口20から排出される。使用者は、液体の排出に煩わしさを憶えることはない。このキャップ12は、液体の使い切りに寄与しうる。
【0037】
図5において、両矢印線WAは、蓋16の最大幅を表している。両矢印線WBは、胴体14の最大幅を表している。この胴体14の最大幅WBに対するこの蓋16の最大幅WAの比(WA/WB)は、1.01以上3.00以下である。この比(WA/WB)が1.01以上に設定されることにより、容器42が逆立てられた場合の静置安定性にこのキャップ12が寄与しうる。この観点から、この比(WA/WB)は1.05以上がより好ましく、1.10以上が特に好ましい。この比(WA/WB)が3.00以下に設定されることにより、容器42が逆立てられて静置された時の占有面積を小さくすることができる。この観点から、この比(WA/WB)は、2.90以下がより好ましく、2.80以下が特に好ましい。
【0038】
図6に示されているのは、本発明の他の実施形態に係る高粘度液体用容器の逆さキャップ46である。キャップ46は、胴体48と、蓋50と、蝶番52とを備えている。このキャップ46では、蓋50以外の構成が図1のキャップ12と同等の構成とされている。
【0039】
蓋50は、本体54と、フランジ56とを備えている。このキャップ46では、このフランジ56以外の構成は図1のキャップ12と同等の構成とされている。
【0040】
このキャップ46では、フランジ56は、本体54の上側において、この本体54から半径方向外向きに延在している。このフランジ56は、本体54から突出している。このフランジ56を下にしてこのキャップ46が平滑な面に載置されたとき、このフランジ56の上面58がこの面に当接する。
【0041】
このフランジ56の外周60は、略六角形状を呈している。このキャップ46は、握られやすい。キャップ46が濡れていても、このキャップ46を把持する手が滑ることなく、このキャップ46がボトルに容易に取り付けられうる。
【0042】
図6(a)に示されているように、このキャップ46のフランジ56には切欠き62が設けられている。この切欠き62は、フランジ56の外周60から半径方向内向きに窪んだ形状を呈している。
【0043】
このキャップ46では、上下方向において、フランジ56の切欠き62と蝶番52とが重複した位置にある。このキャップ46では、アンダーカットの形成が抑制されている。このキャップ46は、モールドからの取り出し性に優れている。
【0044】
このキャップ46では、モールドから取り出す際における、過大な変形が防止される。このキャップ46の形態は、高品質なキャップ46の安定生産に寄与しうる。
【0045】
このキャップ46では、フランジ56が胴体48よりも幅広である上に、このフランジ56の上面58の全体が床面に当接しうる。このキャップ46は、容器が逆立てられた場合の静置安定性に寄与しうる。このキャップ46は、静置安定性を阻害することなく、モールドからの取り出し性の向上が達成されている。
【0046】
このキャップ46によれば、容器が逆立てられた状態が安定に保持されるので、この容器のボトル40の底に溜まった液体はその自重で垂下しこのキャップ46の部分に溜まっていく。このため、使用者がこのキャップ46の蓋50を外すと直ぐに、液体が注ぎ口から排出される。使用者は、液体の排出に煩わしさを憶えることはない。このキャップ46は、液体の使い切りに寄与しうる。
【0047】
図6において、両矢印線WCは蓋50の最大幅を表している。このキャップ46では、その最大幅WCは2つの頂点が結ばれる直線において最大となる長さで示される。両矢印線WDは、胴体48の最大幅を表している。この胴体48の最大幅WDに対するこの蓋50の最大幅WCの比(WC/WD)は、1.01以上3.00以下である。この比(WC/WD)が1.01以上に設定されることにより、このキャップ46が容器が逆立てられた場合の静置安定性に寄与しうる。この観点から、この比(WC/WD)は1.05以上がより好ましく、1.10以上が特に好ましい。この比(WC/WD)が3.00以下に設定されることにより、容器が逆立てられて静置された時の占有面積を小さくすることができる。この観点から、この比(WC/WD)は、2.90以下がより好ましく、2.80以下が特に好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明された逆さキャップは、種々のボトルにも適用されうる。
【符号の説明】
【0049】
2、12、46・・・逆さキャップ
4、14、48・・・胴体
6、16、50・・・蓋
8、18、52・・・蝶番
10、26、56・・・フランジ
36、62・・・切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上部に注ぎ口を有する円筒状の胴体と、この注ぎ口を塞ぐ蓋と、この胴体と蓋とを回動自在に連結する蝶番とを備えており、
この蓋が、上記胴体の上部に嵌め合わされる本体と、この本体から突出するフランジとを備えており、
このフランジが、切欠きを備えており、
上下方向において、この切欠きと上記蝶番とが重複した位置にある、高粘度液体用容器の逆さキャップ。
【請求項2】
上記胴体の最大幅に対する上記蓋の最大幅の比が、1.01以上3.00以下である請求項1に記載の高粘度液体用容器の逆さキャップ。
【請求項3】
高粘度の液体が投入されるボトルと、このボトルの口に嵌め合わされる逆さキャップとを備えており、
この逆さキャップが、その上部に注ぎ口を有する円筒状の胴体と、この注ぎ口を塞ぐ蓋と、この胴体と蓋とを回動自在に連結する蝶番とを備えており、
この蓋が、上記胴体の上部に嵌め合わされる本体と、この本体から半径方向外向きに突出するフランジとを備えており、
このフランジが、切欠きを備えており、
上下方向において、この切欠きと上記蝶番とが重複した位置にある、上記蝶番が位置している、高粘度液体用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−232784(P2012−232784A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102857(P2011−102857)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(505075259)メトロ・ジャパン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】