説明

高純度コロイダルシリカの製造方法

【解決課題】 コロイダルシリカの原料となる珪酸アルカリ水溶液に含まれるCu、Mn、Ni、Fe、Zn、Cr等の金属性不純物の除去効率が高く、且つ低コストの高純度のコロイダルシリカの製造方法を提供することにある。
【解決手段】 窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る高純度活性珪酸水溶液製造工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。及び、更に、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させるコロイダルシリカ水溶液精製工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒担体、クロマト充填剤、シリカガラス、樹脂用フィラー、研磨組成物等のシリカ製品に用いられる高純度コロイダルシリカの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、珪酸アルカリを原料として製造されるコロイダルシリカは、触媒担体、クロマト充填剤、シリカガラス、樹脂用フィラー、研磨組成物、ブラウン管製造における蛍光体の接着バインダー、電池中の電解液のゲル化剤および揺変や飛散防止剤、無機接着剤、塗料など様々な用途に用いられてきた。しかし、珪酸アルカリを原料としたコロイダルシリカは、原料の珪酸アルカリ水溶液に含まれる金属性不純物Cu、Mn、Ni、Fe、Zn、Cr等を含有し、触媒担体、クロマト充填剤、シリカガラス、樹脂用フィラー、研磨組成物などの用途では金属性不純物汚染が常に課題として掲げられていた。たとえば、半導体シリコンウエハの研磨加工に用いる研磨組成物では、研磨材中に存在する金属性不純物、特にCuはウエハ内部に深く拡散し、ウエハ品質を劣化させ、ウエハによって形成された半導体デバイスの特性を著しく低下させるという事実が明らかとなっている。そのため金属性不純物の混入を嫌う分野においては、これら金属性不純物を実質的に含まない純度の高いシリカ原料から製造された高価なコロイダルシリカ製品を使用している。
【0003】
珪酸アルカリ水溶液を用いてコロイダルシリカやシリカゲルを製造する工程で不純物を除去する方法は数多く提案されている。例えば特許文献1には、高純度コロイダルシリカの製造方法として、珪酸アルカリ水溶液を純水で希釈した後、H形強酸性陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし活性珪酸の水溶液を得、さらに酸を加えて強酸性とした後H形強酸性陽イオン交換樹脂、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させ高純度の活性珪酸とした後、粒子成長させて高純度コロイダルシリカを製造する方法が記載されている。特許文献2には、上記方法の酸と同時にシュウ酸を加えた後、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂とH形強酸性陽イオン交換樹脂に接触させる方法が記載されている。特許文献3には、珪酸アルカリ水溶液を純水で希釈した後、H形強酸性陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし(活性珪酸の作成)、さらに酸を加えて強酸性とした後、限外ろ過膜を用いて不純物を除去して得られたオリゴ珪酸溶液(高純度の活性珪酸)の一部に、アンモニアまたはアミンを加え加熱を行いヒールゾルを調製し、これに残りのオリゴ珪酸溶液を徐々に滴下し高純度シリカゾルを得る方法が記載されている。特許文献4には、上記同様に酸処理した珪酸アルカリ水溶液を、H形強酸性陽イオン交換樹脂、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させ、これにアルカリ金属水酸化物水溶液を加え60〜150℃に加熱することにより安定な水性ゾル生成させ、さらに限外ろ過膜を介して水を除き、次いでH形強酸性陽イオン交換樹脂、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させ、最後にアンモニアを加えてシリカ以外の多価金属酸化物を実質的に含まない安定な水性シリカゾルを生成する方法が記載されている。いずれの方法も酸性にした珪酸溶液をイオン交換樹脂に接触させて不純物イオンを除去する手段が基本になっている。これは不純金属成分が単なる金属カチオンの形態ではなく、水酸化物、酸化物、アニオン性酸化物、水和カチオン、金属珪酸塩など様々な形態で混在しているため、煩雑な工程が必要となると推定される。
【0004】
また、特許文献5及び6には、活性珪酸にキレート化剤を添加し最終工程でキレート化された不純物を限外濾過で除く方法、キレート樹脂により金属成分を除去した後さらにキレート化剤を添加し最終工程でキレート化された不純物を限外濾過で除く方法が記載されている。
【特許文献1】特開平5−97422号公報 第2頁 特許請求の範囲
【特許文献2】特開平4−231319号公報 第2頁 請求項1
【特許文献3】特開昭61−158810号公報 第1頁 請求項1
【特許文献4】特開平4−2606号公報 第1頁 特許請求の範囲
【特許文献5】特開2001−294417号公報 第1頁 請求項1
【特許文献6】特開2003−89786号公報 第2頁 請求項7
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の方法では工程が煩雑に長いばかりでなく、希薄な珪酸液を強酸性にするために大量の酸を使用しなくてはならず、その酸を後工程で除去しなくてはならず、そのアニオン交換法による除去では樹脂の再生にまた数倍のアルカリを必要とし、コスト的に問題がある。特許文献2ではシュウ酸の添加とアニオン交換樹脂の使用が記載されているが、この方法はFe、Alのような3価金属には効果があるが、2価金属Cu、Ni、Znには効果が低く、特にNi、Znには全く効果がない。
【0006】
特許文献5及び6の方法は、キレート化された不純物や余剰のキレート化剤の除去方法が限外濾過のため、必ず微量が排出されずに残るという問題がある。シリカコロイド粒子の限外濾過は、シリカを常に水分散のコロイド状態を保ったまま水相部分を系外に排出する方法のため、不純成分は薄まりながら減っていくが、必ず微量が排出されずに残ることになる。
【0007】
従って、本発明の課題は、コロイダルシリカの原料となる珪酸アルカリ水溶液に含まれるCu、Mn、Ni、Fe、Zn、Cr等の金属性不純物の除去効率が高く、且つ低コストの高純度のコロイダルシリカの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(i)特定のキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を調製し、その特定のキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を陰イオン交換体に接触させることにより、金属性不純物の含有量が極めて少ない高純度の活性珪酸水溶液を得ることができ、その高純度の活性珪酸水溶液を用いて製造されるコロイダルシリカが極めて高純度であること、(ii)特定のキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を調製し、そのキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカの成長を行い、得られるキレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させることにより、金属性不純物の含有量が極めて少ない高純度のコロイダルシリカ水溶液が得られること、(iii)コロイダルシリカに、特定のキレート化剤を混合して、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを調製し、そのキレート化剤を含有するコロイダルシリカを陰イオン交換体に接触させることにより、コロイダリシリカ表面に吸着している金属性不純物及びコロイダルシリカの分散媒である水に溶解又は水酸化物の形態で分散した金属性不純物を効果的に除去できるので、コロイダルシリカ中の金属性不純物の含有量を少なくできること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明(1)は、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る高純度活性珪酸水溶液製造工程を有する高純度コロイダルシリカの製造方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明(2)は、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカ粒子の成長を行い、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度コロイダルシリカ水溶液を得る高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を有する高純度コロイダルシリカの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明(3)は、珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得る前記本発明(1)又は(2)記載の高純度コロイダルシリカの製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明(4)は、珪酸アルカリ水溶液に窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させ、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得る前記本発明(1)又は(2)記載の高純度コロイダルシリカの製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明(5)は、更に、コロイダルシリカに、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合し、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させるコロイダルシリカ精製工程を有する前記本発明(1)〜(4)いずれか記載の高純度コロイダルシリカの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料となる珪酸アルカリに含まれている金属性不純物の含有量が極めて少ない高純度のコロイダルシリカを低コストで製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第一の実施の形態に係る高純度コロイダルシリカの製造方法(以下、第一の形態の製造方法とも記載する。)について説明する。第一の形態の製造方法は、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を調製し、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させる高純度活性珪酸水溶液製造工程を有する。
【0016】
窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を調製する方法としては、例えば、下記(A)又は(B)の方法が挙げられる。
(A)珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合する方法。
(B)珪酸アルカリ水溶液に窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させる方法。
【0017】
すなわち、高純度活性珪酸水溶液製造工程において、キレート化剤を混合する時期は、珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させる前又は後のいずれであってもよい。なお、本発明において、活性珪酸水溶液とは、珪酸アルカリ水溶液をH形の陽イオン交換体に接触させることにより得られる、珪酸アルカリ水溶液中のアルカリ金属イオンの全部又は大部分が水素イオンでイオン交換された珪酸水溶液のことをいう。
【0018】
珪酸アルカリ水溶液としては、特に制限されないが、通常水ガラス(水ガラス1号〜4号等)と呼ばれる珪酸ナトリウム水溶液を、水で希釈したものが好適に用いられる。水ガラスは、比較的安価であり、且つ容易に手に入れることができる。また、固体のメタ珪酸アルカリを、水に溶解させて珪酸アルカリ水溶液を調製することもできる。また、ナトリウムイオンを嫌う製品の場合は、珪酸カリウム水溶液又は珪酸リチウム水溶液等、用途に応じて適宜使い分けることができる。
【0019】
珪酸アルカリ水溶液のシリカ濃度は、特に制限されないが、好ましくは3〜10重量%、特に好ましくは4〜7重量%である。なお、本発明において、シリカ濃度とは、珪酸アルカリ水溶液、活性珪酸水溶液又はコロイダルシリカ等に含まれるSiOの重量割合をいう。
【0020】
H形陽イオン交換体としては、イオン交換樹脂、イオン交換膜、ゼオライト等の無機化合物等が挙げられるが、強酸性陽イオン交換樹脂及び弱酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。
【0021】
珪酸アルカリ水溶液又はキレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液と、H形陽イオン交換体を接触させる方法としては、特に制限されず、例えば、珪酸アルカリ水溶液又はキレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液に、H形陽イオン交換体を添加し、攪拌する方法、又は珪酸アルカリ水溶液又はキレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を、H形陽イオン交換体が充填されているカラムに通過させる方法が挙げられるが、これらのうち、カラムに通過させる方法が好ましい。
【0022】
キレート化剤としては、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤であって、金属の多座配位子として金属と結合し、陰イオン錯体を形成するものであれば、本発明の効果を損なわない限り、任意のものを用いることができる。キレート化剤としては、分子中にイミノ二酢酸骨格を構造の一部に有する化合物又は水溶性の有機リン酸が好ましい。
【0023】
金属イオンに配位結合する能力を持っている原子(ドナー原子)には、窒素原子、酸素原子、燐原子、硫黄原子等があるが、これらのドナー原子のうち、窒素原子は、Cu、Mn、Ni、Fe、Znのような3d軌道に電子を持つ金属イオンと強い配位結合を形成することができる。また、ニトリロトリメチレンホスホン酸のようにN−C−P構造をもつと、さらに配位結合が強くなる。
【0024】
キレート化剤としては、具体的には、例えば、(1)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、(2)ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、(3)ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、(4)ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、(5)トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、(6)ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、(7)1,3−プロパンジアミン四酢酸(1,3−PDTA)、(8)ニトリロ三酢酸(NTA)、(9)ジピコリン酸、(10)ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTP)若しくは(11)ヒドロキシエタンジホスホン酸、又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩が挙げられる。(1)〜(11)の塩としては、具体的には、例えば、(1a)エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸三アンモニウム、エチレンジアミン四酢酸四アンモニウム、(2a)ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三アンモニウム、(3a)ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸二ナトリウム、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸二アンモニウム、(4a)ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸五アンモニウム、(5a)トリエチレンテトラミン六酢酸六ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸六アンモニウム、(6a)ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二アンモニウム、(10a)ニトリロトリメチレンホスホン酸四ナトリウム、ニトリロトリメチレンホスホン酸五ナトリウム、(11a)ヒドロキシエタンジホスホン酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム等が挙げられる。また、キレート化剤は、結晶水を含むものであっても、無水物であってもよい。また、キレート化剤は、1種単独又は2種類以上の併用であってもよく、併用する場合、任意の割合で用いることができる。
【0025】
キレート化剤は、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液又はキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液中で、金属性不純物である金属イオン(以下、不純物金属イオンと記載する。)の多座配位子として、不純物金属イオンと結合し、陰イオン錯体を形成するが、そのためには、キレート化剤が不純物金属イオンの陽電荷を満たしてなお余りある陰電荷を有することが必要である。従って、キレート化剤の陰電荷の価数は、2以上であることが好ましく、3以上であることが、多価の不純物金属イオンとの反応で電荷が中和され難く、金属性不純物の除去効果が高い点で特に好ましく、4以上であることが更に好ましい。
【0026】
ただし、キレート化剤と不純物金属イオンは1対1で結合するとは限らず、2対1等、1の不純物金属イオンに対して、2以上のキレート化剤が配位する場合もあるので、キレート化剤の価数とキレート化剤の不純物金属イオンの除去性能の関係は一概には定まらない。
【0027】
本発明で使用されるキレート化剤の量は、原料の珪酸アルカリ水溶液に含まれる金属性不純物の量をもとにして決定できるが、珪酸アルカリ水溶液の種類により異なり、使用量の範囲は特に限定することはできない。キレート化剤が混合される珪酸アルカリ水溶液又は活性珪酸水溶液中のシリカ1kgに対してのキレート化剤の混合量は、珪酸アルカリ水溶液に含まれる金属性不純物のうちAlは格段と量が多いのでこれを除去するかどうかでも、使用量は大きく異なる。Alを対象にしない場合にはシリカ1kgに対して5mmol(ミリモル)が最小量であり、Alも対象にする場合にはシリカ1kgに対して20mmolが最小量である。金属性不純物の除去効果を高める場合には、金属性不純物の量の1〜5倍当量まで添加することが好ましい。従って目安となる使用量の範囲は、キレート化剤が混合される珪酸アルカリ水溶液又は活性珪酸水溶液中のシリカ1kgに対して5〜100mmolである。
【0028】
キレート化剤を添加する方法としては、予め活性珪酸水溶液又は珪酸アルカリ水溶液を攪拌下、キレート化剤を添加することが好ましい。また、キレート化剤を活性珪酸水溶液又は珪酸アルカリ水溶液に添加した後、攪拌等を行い、キレート化剤及び不純物金属イオンを接触させる。そして、接触により、キレート化剤及び不純物金属イオンの陰イオン錯体が形成される。
【0029】
また、必要に応じてキレート化剤を混合する前の珪酸アルカリ水溶液又は活性珪酸水溶液を、OH形強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて脱アニオンしてもよい。
【0030】
また、活性珪酸水溶液又は珪酸アルカリ水溶液に、キレート化剤を混合する前、混合する際又は混合した後に、過酸化水素等の酸化剤又はアスコルビン酸等の還元剤を添加することができる。同種の金属性不純物であっても、イオンの価数が異なると、キレート化剤との結合性が異なることがあり、十分に金属性不純物の除去効果が得られない場合がある。そこで、酸化剤又は還元剤を添加することにより、同種の金属性不純物については、イオンの価数を同じにすることができ、そのことにより金属性不純物の除去効果が高まる。すなわち、酸化剤又は還元剤を併用することが、金属性不純物の除去効果が高まる点で好ましい。酸化剤又は還元剤の含有量は、特に限定されないが、好ましくは活性珪酸水溶液又は珪酸アルカリ水溶液中のシリカ1kgに対して、0.5〜10mmolである。
【0031】
また、前記(A)の方法において、キレート化剤を混合する前の活性珪酸水溶液のpHは、通常2〜4であるが、キレート化剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム等のアルカリ性であるキレート化剤を混合すると、pHが中性に近づき、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液の安定性が失われ、シリカがゲル化を起こすおそれがある。これを防ぐために、キレート化剤を混合する前に酸を添加して、活性珪酸水溶液のpHを調節することができる。酸としては、特に制限されないが、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸が好ましい。また、酸性のキレート化剤も好ましい。なお、酸の酸根であるアニオンは、後記する陰イオン交換体との接触により除去される。
【0032】
キレート化剤を混合した活性珪酸水溶液は、次の工程に移る前に少なくとも30分間攪拌を続け、キレート化剤と不純物金属イオンとの接触を充分にすることが好ましい。この操作により、不純物金属イオンとキレート化剤の陰イオン錯体が形成される。
【0033】
次に、このようにして得られるキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させる。
【0034】
陰イオン交換体としては、特に制限されず、例えば、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト等の無機化合物、陰イオン交換膜、陰イオン交換樹脂等が挙げられる。これらのうち、強塩基性陰イオン交換樹脂及び弱塩基性陰イオン交換樹脂が好ましい。また、陰イオン交換体は、イオン交換基の対イオン種が水酸イオン(OH)であるOH形が好ましいが、目的に応じて、対イオン種が、塩化物イオン(Cl)であるCl形、硝酸イオン(NO)であるNO形、酢酸イオン(CHCOO)であるCHCOO形等を、適宜に選定することができ、また、それらを2以上を組み合わせることもできる。また、OH形の陰イオン交換体を用いる場合、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム等のアルカリ金属塩であるキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させると、イオン交換により接触後の活性珪酸水溶液の水酸イオン濃度が高まり、pHが中性化され、活性珪酸水溶液の安定性が失われ、シリカがゲル化を起こすおそれがある。このような場合は、陰イオン交換体として、OH形以外の陰イオン交換体を用いることが好ましい。
【0035】
キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させる方法としては、特に制限されず、従来から既に様々な提案があり、それら公知のいかなる方法も採用することができる。例えば、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液に、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌する方法、又は強塩基性陰イオン交換樹脂若しくは弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を通過させる方法が挙げられる。
【0036】
このように、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させることにより、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液中に存在するキレート化剤及び不純物金属イオンにより形成されている陰イオン錯体を、陰イオン交換体に捕捉させ、除去することができるので、金属性不純物の含有量が極めて少ない高純度活性珪酸水溶液を得ることができる。
【0037】
また、本発明の高純度活性珪酸水溶液製造工程を行う際の温度は、特に制限されないが、通常0〜50℃、好ましくは5〜30℃である。
【0038】
次に、高純度活性珪酸水溶液製造工程により得られる高純度活性珪酸水溶液を用いて、コロイダルシリカ粒子成長工程を行うことにより、コロイダルシリカ粒子を成長させ、コロイダルシリカ水溶液を得ることができる。この成長工程は、常法に準じて行うことができ、例えばコロイダルシリカ粒子の成長のため、pHが8以上となるようアルカリ剤を添加し、60〜100℃に加熱することにより行うことができる。密閉容器中で100℃より高い温度で水熱処理することもできる。また、ビルドアップの方法をとり、pHが8以上の60〜100℃の種ゾルに、活性珪酸水溶液を添加していく方法もある。また、希釈珪酸アルカリ水溶液に活性珪酸水溶液を添加していくビルドアップの方法も可能である。アルカリ剤としてはNaOH、KOHなどのアルカリ金属水酸化物や、アミン、第4級アンモニウム水酸化物などの有機塩基を使用することができる。またそれらの珪酸アルカリ水溶液を使用することもできる。ただし、上記のコロイダルシリカ粒子を成長させる方法は、一例にすぎず、本発明においては、他の公知いかなる方法も採用することができる。
【0039】
次に、コロイダルシリカ粒子成長工程を行うことにより得られるコロイダルシリカ水溶液は、濃縮工程が施される。濃縮工程は、所望のシリカ濃度となるまでコロイダルシリカ水溶液中の水分の除去し、コロイダルシリカの濃縮を行う工程である。そして、濃縮工程を行うことにより、所望のシリカ濃度の高純度コロイダルシリカを得ることができる。濃縮を行う方法としては、特に限定されないが、加熱により水分を蒸発させる方法、又は限外濾過により水分を除去する方法が好ましい。
【0040】
限外濾過膜について説明する。限外濾過膜が適用される分離は対象粒子が1nmから数ミクロンであるが、溶解した高分子物質をも対象とするため、ナノメータ域では濾過精度を分画分子量で表現している。限外濾過により水分を除去する方法では、分画分子量15000以下の限外濾過膜を好適に使用することができる。この範囲の膜を使用すると1nm以上の粒子は分離することが出来る。更に好ましくは分画分子量3000〜15000の限外濾過膜を使用する。3000未満の膜では濾過抵抗が大きすぎて処理時間が長くなり不経済であり、15000を超えると、精製度が低くなる。膜の材質はポリスルホン、ポリアクリルニトリル、焼結金属、セラミック、カーボンなどがあり、いずれも使用することができるが、耐熱性や濾過速度などからポリスルホン製が使用しやすい。膜の形状はスパイラル形、チューブラー形、中空糸形などあり、いずれも使用することができるが、中空糸形がコンパクトで使用しやすい。 限外濾過によりシリカ濃度が10〜60重量%となるように濃縮するのがよい。
【0041】
濃縮工程により得られる高純度コロイダルシリカは、高純度活性珪酸水溶液を用いて得られるものなので、金属性不純物の含有量が極めて少ない。
【0042】
また、本発明の高純度コロイダルシリカの製造方法は、更に、コロイダルシリカ精製工程を有することができる。
【0043】
コロイダルシリカ精製工程は、コロイダルシリカに、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合し、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させることにより行われる。
【0044】
コロイダルシリカ精製工程に使用されるコロイダルシリカは、前記コロイダルシリカ粒子成長工程により得られるコロイダルシリカ水溶液、濃縮工程により得られる高純度コロイダルシリカ、又はそれらを希釈若しくは濃縮して、シリカ濃度を調製したものであってもよい。
【0045】
コロイダルシリカ精製工程に使用されるコロイダルシリカ中のシリカ濃度は、0.1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。また、コロイダルシリカのpHは、2〜12、好ましくは3〜10である。また、コロイダルシリカ中のシリカの平均粒子径は、5〜500nm、好ましくは10〜100nmである。
【0046】
コロイダルシリカ精製工程に使用されるキレート化剤については、前記高純度活性珪酸水溶液製造工程の説明で記載したものと同様なので、その説明を省略する。なお、コロイダルシリカ精製工程に使用されるキレート化剤は、高純度活性珪酸水溶液製造工程に使用されるキレート化剤と、同一の化合物であってもよいし、異なる化合物であってもよい。
【0047】
そして、コロイダルシリカに、キレート化剤を混合することにより、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得る。
【0048】
コロイダルシリカ精製工程において、混合されるキレート化剤の混合量は、コロイダルシリカに含まれる金属性不純物の量をもとにして決定できるが、コロイダルシリカの原料となる珪酸アルカリ水溶液の種類により異なり、使用量の範囲は特に限定することはできない。キレート化剤が混合されるコロイダルシリカ中のシリカ1kgに対してのキレート化剤の混合量は、コロイダルシリカ精製工程に使用されるコロイダルシリカに含まれる金属不純物のうちAlは格段と量が多いのでこれを除去するかどうかでも、使用量は大きく異なる。Alを対象にしない場合にはシリカ1kgに対して0.5mmolが最小量であり、Alも対象にする場合にはシリカ1kgに対して20mmolが最小量である。金属性不純物の除去効果を高める場合には、金属性不純物の量の1〜5倍当量まで添加することが好ましい。従って目安となる使用量の範囲は、キレート化剤が混合されるコロイダルシリカ中のシリカ1kgに対して0.5〜100mmolである。
【0049】
キレート化剤を添加する方法としては、予めコロイダルシリカを攪拌下、キレート化剤を添加することが好ましい。また、キレート化剤をコロイダルシリカに添加した後、攪拌等を行い、キレート化剤及び不純物金属イオンを接触させる。そして、接触により、キレート化剤及び不純物金属イオンの陰イオン錯体が形成される。
【0050】
キレート化剤を混合したコロイダルシリカは、次の操作に移る前に少なくとも30分間攪拌を続け、キレート化剤と不純物金属イオンとの接触を充分にすることが好ましい。この操作により、不純物金属イオンとキレート化剤の陰イオン錯体が形成される。
【0051】
また、コロイダルシリカに、キレート化剤を混合する前、混合する際又は混合した後に、酸化剤又は還元剤を添加することができる。酸化剤又は還元剤については、前記高純度活性珪酸水溶液製造工程の説明で記載したものと同様である。
【0052】
次いで、上記のようにして得られるキレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させる。
【0053】
コロイダルシリカ精製工程に使用される陰イオン交換体、キレート化剤を含有するコロイダルシリカとの接触方法等については、前記高純度活性珪酸水溶液製造工程の説明で記載したものと同様なので、その説明を省略する。なお、コロイダルシリカ精製工程に使用される陰イオン交換体は、高純度活性珪酸水溶液製造工程に使用される陰イオン交換体と、同種のものであってもよいし、異種のものであってもよい。なお、キレート化剤を含有するコロイダルシリカに、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌する方法の場合は、例えば、攪拌後、適当なメッシュサイズの篩に、コロイダルシリカ及び陰イオン交換樹脂の混合物を通過させることにより、強酸性陰イオン交換樹脂又は弱酸性陰イオン交換樹脂を、接触後のコロイダルシリカから分離することができる。
【0054】
コロイダルシリカ精製工程では、キレート化剤をコロイダルシリカに混合することにより、キレート化剤を、コロイダルシリカ粒子表面に吸着されている不純物金属イオン及び分散媒である水に溶解又は水酸化物等の形態で分散している不純物金属イオンと結合させて陰イオン錯体を形成させ、次いで、生成する陰イオン錯体を、陰イオン交換体に接触させることにより、陰イオン交換体に捕捉させて除去することができる。従って、コロイダルシリカ精製工程を行うことにより、コロイダルシリカ粒子表面に吸着されている金属性不純物及び分散媒である水に溶解又は水酸化物等の形態で分散している金属性不純物の含有量が極めて少ない高純度コロイダルシリカを得ることができる。
【0055】
コロイダルシリカ粒子表面に吸着されている金属性不純物及び分散媒中に含有されている金属性不純物の量は、例えば、以下の方法により測定することができる。(i)高純度コロイダルシリカがアルカリ性の場合は、6%硝酸で中和したものに、高純度コロイダルシリカ水溶液が酸性の場合は、中和をせず、そのまま高純度コロイダルシリカに、6%硝酸を、添加後の硝酸の濃度が0.2mol/kgとなるまで、攪拌しながら添加する。(ii)次いで、純水を添加し、シリカ濃度が10.0重量%となるように調整する。(iii)純水の添加後、1時間放置し、限外濾過をおこない濾水を採取する。(iv)採取した濾水中の金属性不純物の量をICP質量分析装置により分析する。
【0056】
また、コロイダルシリカ精製工程を行う際の温度は、特に制限されないが、通常0〜100℃、好ましくは5〜60℃である。
【0057】
また、コロイダルシリカ精製工程を行った後、必要に応じて、濃縮工程を行い、コロイダルシリカ精製工程で得られる高純度コロイダルシリカを、濃縮することができる。コロイダルシリカ精製工程の後に行う濃縮工程は、前記濃縮工程と同様である。
【0058】
次に、本発明の第二の実施の形態に係る高純度コロイダルシリカの製造方法について説明する(以下、第二の形態の製造方法とも記載する。)。第二の形態の製造方法は、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカ粒子の成長を行い、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を得、次いで、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度コロイダルシリカ水溶液を得る高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を有する。
【0059】
すなわち、第一の形態の製造方法が、コロイダルシリカ粒子成長工程を行う前に、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液と陰イオン交換体との接触を行い、陰イオン錯体を除去する製造方法であるのに対し、第二の形態の製造方法は、コロイダルシリカ粒子成長工程を行った後に、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液と陰イオン交換体との接触を行い、陰イオン錯体を除去する製造方法である。
【0060】
キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得る方法については、第一の形態の製造方法に係る高純度活性珪酸水溶液製造工程の説明で記載したものと同様なので、その説明を省略する。
【0061】
キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカ粒子の成長を行う方法は、高純度活性珪酸水溶液に代え、キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液とする以外は、第一の形態の製造方法に係るコロイダルシリカ粒子成長工程と同様である。また、他の公知のいかなる方法も採用することができる点も同様である。
【0062】
第二の形態の製造方法に係る陰イオン交換体、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液との接触方法等については、第一の形態の製造方法に係る高純度活性珪酸水溶液製造工程の説明で記載したものと同様なので、その説明を省略する。なお、キレート化剤を含有するコロイダルシリカに、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌する方法の場合は、例えば、攪拌後、適当なメッシュサイズの篩に、コロイダルシリカ水溶液及び陰イオン交換樹脂の混合物を通過させることにより、強酸性陰イオン交換樹脂又は弱酸性陰イオン交換樹脂を、接触後のコロイダルシリカ水溶液から分離することができる。
【0063】
次に、高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を行うことにより得られる高純度コロイダルシリカ水溶液は、濃縮工程が施される。第二の形態の製造方法に係る濃縮工程は、第一の形態の製造方法の説明で記載したものと同様なので、その説明を省略する。
【0064】
また、第二の形態の製造方法は、更に、コロイダルシリカ精製工程を有することができる。第二の形態の製造方法に係るコロイダルシリカ精製工程については、第一の形態の製造方法の説明で記載したものと同様な点については、その説明を省略する。
【0065】
コロイダルシリカ精製工程に使用されるコロイダルシリカは、濃縮工程により得られる高純度コロイダルシリカ、又はそれらを希釈若しくは濃縮して、シリカ濃度を調製したものであってもよい。
【0066】
本発明の製造方法により得られる高純度コロイダルシリカは、金属性不純物の含有量が極めて少量であるため、触媒担体、クロマト充填剤、シリカガラス、樹脂用フィラー、研磨組成物等に有用である。
【0067】
水等の分散媒に分散したコロイダリシリカに存在する金属性不純物は次の3形態(i)コロイダルシリカ粒子内部に封入、(ii)コロイダルシリカ粒子表面に吸着、(iii)分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散、で存在する。
【0068】
(i)コロイダルシリカ粒子内部への金属性不純物の封入は、コロイダルシリカ粒子の成長時に、コロイダルシリカの原料となる活性珪酸水溶液中に含まれる金属性不純物の一部が、コロイダルシリカ粒子に取り込まれるために生じる。(ii)コロイダルシリカ粒子表面への金属性不純物の吸着は、主にコロイダルシリカ粒子の形成後、分散媒である水に溶解している金属性不純物の一部が、コロイダルシリカ粒子表面に吸着されるために生じる。(iii)分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散している金属性不純物は、コロイダルシリカ粒子の形成時及び他の製造工程より混入する。
【0069】
本発明の高純度コロイダルシリカの製造方法は、高純度活性珪酸水溶液製造工程を行うことにより、コロイダルシリカ粒子が成長する前の溶媒に存在する金属性不純物を、極めて少なくすることができるので、(i)コロイダルシリカ粒子内部に封入された金属性不純物、及び(iii)分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散している金属性不純物を、極めて少なくすることができる。
【0070】
また、本発明の高純度コロイダルシリカの製造方法は、高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を行うことにより、コロイダルシリカ粒子が成長する前に、溶媒に存在する金属性不純物を、キレート化剤と結合させて、成長中のコロイダルシリカから隔離することができるため、コロイダルシリカの成長時に、その内部に、金属性不純物が取り込まれ難くなるので、(i)コロイダルシリカ粒子内部に封入された金属性不純物を、極めて少なくすることができる。
【0071】
また、更に、コロイダルシリカ精製工程を行うことにより、(ii)コロイダルシリカ粒子表面に吸着された金属性不純物と(iii)分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散する金属性不純物を効果的に除去することができるので、更に金属性不純物の含有量が少ない高純度コロイダルシリカを製造することができる。
【0072】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これは単なる例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
(活性珪酸水溶液の調製)
脱イオン水2810gに、JIS3号珪酸ソーダ(SiO:28.8重量%、NaO:9.8重量%、HO:61.4重量%)520gを加えて均一に混合しシリカ濃度4.5重量%の珪酸ソーダ水溶液を作成した。この珪酸ソーダ水溶液を、予め塩酸によって再生したH形強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトIR−120B、オルガノ社製)1200mlが充填されたカラム(以下、H形強酸性カチオン交換樹脂カラムと記載する。)に通して脱アルカリし、シリカ濃度3.7重量%、pH3.0の活性珪酸水溶液(A)3800gを得た。
【0074】
(活性珪酸水溶液の処理)
次いで、活性珪酸水溶液(A)に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(以下、EDTA−2Naと記載する。)を、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して、26mmolとなるように添加し、混合物を1時間攪拌した。その後、混合物を、予めアンモニア水によって再生したOH形強塩基性アニオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410、オルガノ社製)100mlが充填されたカラム(以下、OH形強塩基性アニオン交換樹脂カラムと記載する。)に通し、シリカ濃度3.0重量%、pH3.2の高純度活性珪酸水溶液(B)を得た。
【0075】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程)
次いで、得られた高純度活性珪酸水溶液(B)に、攪拌下、高純度水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液110gを添加して、pHを9.0とし、98℃まで加熱して、3時間98℃を保持し、攪拌を続けた。3時間後、これを室温まで放冷し、コロイダルシリカ水溶液(C)を得た。次いで、コロイダルシリカ水溶液(C)を、分画分子量6000の中空糸形限外濾過膜(マイクローザUFモジュールSIP−1013、旭化成製)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度20%まで濃縮し、高純度コロイダルシリカ(D)を得た。この高純度コロイダルシリカ(D)のpHは9.7であり、BET法による粒子径は8nmであった。この高純度コロイダルシリカ(D)中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表1のに示した。
【0076】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
得られた高純度コロイダルシリカ(D)に、6%硝酸を添加し、中和した。次いで、更に、6%硝酸を、添加後の硝酸の濃度が0.2mol/kgとなるまで添加した。次いで、純水を添加して、シリカ濃度が10.0重量%となるように調整した。純水の添加後、1時間放置した後、限外濾過をおこない濾水を採取した。採取した濾水中のCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率をICP質量分析装置により分析した。その結果を表1に示した。
【0077】
(実施例2)
(活性珪酸水溶液の調製)
実施例1と同様の方法で、活性珪酸水溶液を調製した。
【0078】
(活性珪酸水溶液の処理)
EDTA−2Naを、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して26mmolとなるように添加することに代え、ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(以下、DTPA−5Naと記載する。)を、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して13mmolとなるように添加する以外は、実施例1と同様の方法で行い、高純度活性珪酸水溶液(E)を得た。
【0079】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程)
高純度活性珪酸水溶液(B)に代え、高純度活性珪酸水溶液(E)とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、高純度コロイダルシリカ(F)を得た。高純度コロイダルシリカ(F)のpHは9.7であり、BET法による粒子径は8nmであった。この高純度コロイダルシリカ(F)中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表1に示した。
【0080】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
高純度コロイダルシリカ(D)に代え、高純度コロイダルシリカ(F)とする以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示した。
【0081】
(比較例1)
(活性珪酸水溶液の調製)
実施例1と同様の方法で行い、活性珪酸水溶液(A)を得た。
【0082】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程1)
高純度活性珪酸水溶液(B)に代え、活性珪酸水溶液(A)とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、コロイダルシリカ(G)を得た。得られたコロイダルシリカ(G)中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表1に示した。
【0083】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
高純度コロイダルシリカ(D)に代え、コロイダルシリカ(G)とする以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示した。
【0084】
(比較例2)
(活性珪酸水溶液の調製)
実施例1と同様の方法で行い、活性珪酸水溶液(A)を得た。
【0085】
(活性珪酸水溶液の処理)
得られた活性珪酸水溶液(A)を、予め塩酸によって再生したH形キレート樹脂(アンバーライトIRC−748、オルガノ社製)100mlが充填されたカラムに通し、シリカ濃度3.0重量%、pH3.0の活性珪酸水溶液(H)を得た。
【0086】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程1)
高純度活性珪酸水溶液(B)に代え、活性珪酸水溶液(H)とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、コロイダルシリカ(I)を得た。得られたコロイダルシリカ(I)中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表1に示した。
【0087】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
高純度コロイダルシリカ(D)に代え、コロイダルシリカ(I)とする以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示した。
【0088】
【表1】

【0089】
(実施例3〜7)
(活性珪酸水溶液の調製)
実施例1と同様の方法で、活性珪酸水溶液(A)を調製した。
【0090】
(活性珪酸水溶液の処理)
EDTA−2Naを、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して26mmolとなるように添加することに代え、表2に記載するキレート化剤を、表2に記載する濃度となるように添加する以外は、実施例1と同様の方法で行い、高純度活性珪酸水溶液を得た。
【0091】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程1)
高純度活性珪酸水溶液(B)に代え、上記のようにして得られた高純度活性珪酸水溶液とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、コロイダルシリカを得た。得られたコロイダルシリカのpHは表2に示すとおりであり、BET法による粒子径はいずれも8nmであった。このコロイダルシリカ中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表2に示した。
【0092】
(コロイダルシリカ精製工程)
上記のようにして得られたコロイダルシリカに、表2に記載するキレート化剤を、添加後の濃度が、コロイダルシリカ中のシリカ1kgに対して表2に記載する濃度となるように添加し、混合物を1時間攪拌した。その後、混合物を、予めアンモニア水によって再生した実施例1で用いたOH形強塩基性アニオン交換樹脂カラムに通したところ、いずれもシリカ濃度12重量%の精製コロイダルシリカを得た。なお、実施例6については、キレート化剤と共に、アスコルビン酸を、コロイダルシリカ中のシリカ1kgに対して2mmolとなるように添加した。
【0093】
(濃縮工程2)
上記のようにして得られた精製コロイダルシリカを、分画分子量6000の中空糸形限外濾過膜(マイクローザUFモジュールSIP−1013、旭化成製)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度20%まで濃縮し、高純度コロイダルシリカを得た。この高純度コロイダルシリカのpHは表2に示すとおりであり、BET法による平均粒子径はいずれも8nmであった。
【0094】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
高純度コロイダルシリカ(D)に代え、上記のようにして得られた高純度コロイダルシリカとする以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表2に示した。
【0095】
(比較例3)
(活性珪酸水溶液の調製)
実施例1と同様の方法で、活性珪酸水溶液(A)を調製した。
【0096】
(活性珪酸水溶液の処理)
EDTA−2Naを、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して26mmolとなるように添加することに代え、シュウ酸を、添加後の濃度が、活性珪酸水溶液(A)中のシリカ1kgに対して26mmolとなるように添加する以外は、実施例1と同様の方法で行い、活性珪酸水溶液(J)を得た。
【0097】
(コロイダルシリカ粒子成長工程及び濃縮工程1)
高純度活性珪酸水溶液(B)に代え、活性珪酸水溶液(J)とする以外は、実施例1と同様の方法で行い、コロイダルシリカ(K)を得た。このコロイダルシリカ(K)中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率を測定した結果を、表2に示した。
【0098】
(コロイダルシリカ精製工程)
表2に記載するキレート化剤を、添加後の濃度が、表2に記載する濃度となるように添加することに代え、シュウ酸を、添加後の濃度が、コロイダルシリカ(K)中のシリカ1kgに対して10mmolとなるように添加する以外は、実施例3と同様の方法で行った。
【0099】
(濃縮工程2)
実施例3と同様の方法で行い、コロイダルシリカ(L)を得た。
【0100】
(コロイダルシリカ粒子表面及び分散媒中の金属性不純物の含有量の測定)
高純度コロイダルシリカ(D)に代え、コロイダルシリカ(L)とする以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果を表2に示した。
【0101】
【表2】

【0102】
実施例1〜6のコロイダルシリカ中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率は、比較例1〜2に比べ、極めて少ないことが確認された。さらに、実施例1〜7のコロイダルシリカ表面に吸着された金属性不純物と分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散する金属性不純物の含有率は、比較例1〜2に比べ、極めて少ないことが確認された。
【0103】
また、実施例1〜2のコロイダルシリカと実施例3〜7のコロイダルシリカは、コロイダルシリカ中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率がほぼ同様であったが、コロイダルシリカ表面に吸着された金属性不純物と分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散する金属性不純物の含有率は、実施例3〜7のコロイダルシリカの方が、少なかった。このことから、コロイダルシリカ水溶液精製工程を行うことにより、コロイダルシリカ表面に吸着された金属性不純物と分散媒に溶解または水酸化物等の形態で分散する金属性不純物の含有率を、極めて少なくすることができることが確認された。
【0104】
(実施例8)
希釈珪酸ソーダにキレート化剤を添加し、ビルドアップの工程後に強塩基性陰イオン交換樹脂と接触させる製造方法の例を示す。
【0105】
脱イオン水2810gにJIS3号珪酸ソーダ(SiO:28.8重量%、NaO:9.5重量%、HO:61.7重量%)520gを加えて均一に混合しシリカ濃度4.5重量%の希釈珪酸ソーダ水溶液を作成した。この希釈珪酸ソーダ水溶液中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率は、それぞれ98μg/kg、530μg/kg、650μg/kg、39500μg/kg、950μg/kgであった。この希釈珪酸ソーダ水溶液を攪拌下にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(EDTA−2Na)粉末を0.72g加えて溶解した。EDTA−2Naの添加量は希釈珪酸ソーダ水溶液中のシリカ1kgに対して13mmolになる。このEDTA−2Naを含有する希釈珪酸ソーダを予め塩酸によって再生した実施例1で用いたH形強酸性カチオン交換樹脂カラムに通して脱アルカリし、シリカ濃度3.7重量%でpH3.2の活性珪酸水溶液3800gを得た。以下、ビルドアップの手法によりコロイダルシリカ粒子成長工程を行った。すなわち、この活性珪酸水溶液の一部475gを採り、攪拌下に高純度水酸化テトラメチルアンモニウムの20%水溶液13.8gを添加してpHを9.0とし、98℃まで加熱して、3時間98℃を保持し、攪拌を続けた。次いで、残部の活性珪酸水溶液3325gを8時間かけて添加した。添加中は98℃を保ち、また、10重量%水酸化テトラメチルアンモニウムを30分おきに添加し、pHを10に保った。活性珪酸水溶液の添加終了後、更に95℃で12時間保った後、50℃まで放冷した。次いで、予め高純度水酸化テトラメチルアンモニウムの10%水溶液によって再生されたOH形陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410、オルガノ社製)100mlが充填されたカラムに通し、シリカ濃度3.0重量%、pH10の高純度コロイダルシリカ水溶液を得た。次いで、分画分子量6000の中空糸形限外濾過膜(マイクローザUFモジュールSIP−1013、旭化成社製)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度30重量%の高純度コロイダルシリカを得た。この高純度コロイダルシリカは、pHが10、BET法による粒子径は15nmであった。また、高純度コロイダルシリカ中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率は、それぞれ24μg/kg、200μg/kg、140μg/kg、12000μg/kg、50μg/kg未満(検出限界未満)であった。
【0106】
(実施例9)
脱イオン水216kgにJIS3号珪酸ソーダ(SiO:28.8重量%、NaO:9.7重量%、HO:61.5重量%)40kgを加えて均一に混合しシリカ濃度4.5重量%の希釈珪酸ソーダ水溶液を作成した。この希釈珪酸ソーダ水溶液中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率は、それぞれ180μg/kg、500μg/kg、450μg/kg、43000μg/kg、280μg/kgであった。この希釈珪酸ソーダ水溶液を攪拌下に、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水塩(EDTA−2Na)粉末を77g加えて溶解した。EDTA−2Naの添加量は希釈珪酸ソーダ水溶液中のシリカ1kgに対して19mmolになる。このEDTA−2Naを含有する希釈珪酸ソーダ水溶液を予め塩酸によって再生したH形強酸性陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120B、オルガノ社製)120Lが充填されたカラムに通して脱アルカリし、シリカ濃度3.8重量%、pH2.8の活性珪酸水溶液300kgを得た。この活性珪酸水溶液中のCu、Mn、Ni、Fe、Znの濃度は変化しておらずカチオン交換ではこれら元素は除去されていなかった。次いで、この活性珪酸水溶液を1時間攪拌して熟成した後、その一部の38kgを、予め5%NaOH水溶液によって再生したOH形陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA−410、オルガノ社製)40Lが充填されたカラムに通し、反応器に仕込み、5%NaOH水溶液を添加して、pHを8.0とし、95℃に加熱して1時間95℃に保った後、残部の262kgの活性珪酸水溶液を、同じOH形陰イオン交換樹脂40Lが充填されたカラムに通しながら、反応器に20時間をかけて添加した。添加中は95℃を保ち、また、5%NaOHを30分おきに添加し、pHを10に保った。活性珪酸水溶液の添加終了後、更に95℃で、1時間保った後、50℃まで放冷した。次いで、分画分子量10000の中空糸形限外濾過膜(マイクローザUFモジュールSLP−3053、旭化成社製)を用いてポンプ循環送液による加圧濾過を行い、シリカ濃度30%の高純度コロイダルシリカを約38kg得た。この高純度コロイダルシリカは、シリカの粒子径が16nm、高純度コロイダルシリカ中のシリカ1kg当たりのCu、Mn、Ni、Fe、Znの含有率は、それぞれ30μg/kg、190μg/kg、110μg/kg、17000μg/kg、50μg/kg未満(検出限界未満)であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の高純度コロイダルシリカの製造方法によれば、金属性不純物の含有量が極めて少なく、触媒担体、クロマト充填剤、シリカガラス、樹脂用フィラー、研磨組成物等に用いることができる高純度コロイダルシリカを、低コストで製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る高純度活性珪酸水溶液製造工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項2】
窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカ粒子の成長を行い、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度コロイダルシリカ水溶液を得る高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項3】
珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項4】
珪酸アルカリ水溶液に窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させ、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項5】
更に、コロイダルシリカに、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合し、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させるコロイダルシリカ精製工程を有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項6】
前記コロイダルシリカ中のシリカ濃度が、0.1〜50重量%であり、前記コロイダルシリカのpHが、2〜12であり、且つ前記コロイダルシリカ中のシリカの平均粒子径が、5〜500nmであることを特徴とする請求項5記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項7】
前記窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤が、イミノ二酢酸骨格を有する化合物又は水溶性の有機リン酸であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項8】
前記窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジピコリン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸若しくはヒドロキシエタンジホスホン酸又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩であることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項9】
前記陰イオン交換体が、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項10】
前記高純度活性珪酸水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液に、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項11】
前記高純度活性珪酸水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を通過させることにより行うことを特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項12】
前記高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液に、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項13】
前記高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を通過させることにより行うことを特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項14】
前記コロイダルシリカ精製工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカと前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカに、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項15】
前記コロイダルシリカ精製工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカと前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカを通過させることにより行うことを特徴とする請求項9記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る高純度活性珪酸水溶液製造工程を有する高純度コロイダルシリカの製造方法であって、該キレート化剤が、イミノ二酢酸骨格を有する化合物であることを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法
【請求項2】
珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、イミノ二酢酸骨格を有する化合物を混合して、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項1記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項3】
珪酸アルカリ水溶液に、イミノ二酢酸骨格を有する化合物を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させ、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項1記載の高純度コロイダルシリカの製造方法
【請求項4】
キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る、高純度活性珪酸水溶液製造工程を有する高純度コロイダルシリカの製造方法であって、該キレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸若しくはジピコリン酸又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩であることを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項5】
珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸若しくはジピコリン酸又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩を混合して、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項4記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項6】
珪酸アルカリ水溶液に、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸若しくはジピコリン酸又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させ、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項4記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項7】
窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を用いてコロイダルシリカ粒子の成長を行い、キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度コロイダルシリカ水溶液を得る高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項8】
珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させて得られる活性珪酸水溶液に、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項7記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項9】
珪酸アルカリ水溶液に窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合して、キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液を得、次いで、該キレート化剤を含有する珪酸アルカリ水溶液をH形陽イオン交換体に接触させ、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を得ることを特徴とする請求項7記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項10】
前記窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤が、イミノ二酢酸骨格を有する化合物又は水溶性の有機リン酸であることを特徴とする請求項7〜9いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項11】
前記窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤が、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジピコリン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸若しくはヒドロキシエタンジホスホン酸又はこれらの誘導体若しくはこれらの塩であることを特徴とする請求項7〜9いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項12】
更に、コロイダルシリカに、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合し、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させるコロイダルシリカ精製工程を有することを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項13】
窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を、陰イオン交換体に接触させ、高純度活性珪酸水溶液を得る高純度活性珪酸水溶液製造工程、該高純度活性珪酸水溶液を用いて、コロイダルシリカ粒子を成長させ、コロイダルシリカ水溶液を得るコロイダルシリカ粒子成長工程、及び該コロイダルシリカ水溶液又は該コロイダルシリカ水溶液の希釈物若しくは濃縮物に、窒素原子又は燐原子を有するキレート化剤を混合し、キレート化剤を含有するコロイダルシリカを得、次いで、該キレート化剤を含有するコロイダルシリカを、陰イオン交換体に接触させるコロイダルシリカ精製工程を有することを特徴とする高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項14】
前記コロイダルシリカ中のシリカ濃度が、0.1〜50重量%であり、前記コロイダルシリカのpHが、2〜12であり、且つ前記コロイダルシリカ中のシリカの平均粒子径が、5〜500nmであることを特徴とする請求項12又は13いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項15】
前記陰イオン交換体が、強塩基性陰イオン交換樹脂又は弱塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1〜14いずれか1項記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項16】
前記高純度活性珪酸水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液に、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項17】
前記高純度活性珪酸水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有する活性珪酸水溶液を通過させることにより行うことを特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項18】
前記高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液に、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項19】
前記高純度コロイダルシリカ水溶液製造工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液と前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカ水溶液を通過させることにより行うことを特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項20】
前記コロイダルシリカ精製工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカと前記陰イオン交換体の接触を、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカに、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂を添加し、攪拌することにより行うこと特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。
【請求項21】
前記コロイダルシリカ精製工程において、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカと前記陰イオン交換体の接触を、前記強塩基性陰イオン交換樹脂又は前記弱塩基性陰イオン交換樹脂が充填されているカラムに、前記キレート化剤を含有するコロイダルシリカを通過させることにより行うことを特徴とする請求項15記載の高純度コロイダルシリカの製造方法。

【公開番号】特開2006−45039(P2006−45039A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232393(P2004−232393)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【特許番号】特許第3691048号(P3691048)
【特許公報発行日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】