説明

高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法

【課題】晶析槽壁面等や攪拌翼への結晶付着(スケーリング)等の課題を解決し、高純度のHPAおよび/またはその二量体の結晶を工業的に有利に製造する方法を提供する。
【解決手段】ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶からなる結晶の存在下、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶全体の濃度が5〜23重量%となるよう希釈して晶析し、次いで固液分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドロキシピバルアルデヒド(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロパナール、以下、HPAと称する)とその二量体の結晶を含む水溶液を晶析し、分離、水洗を行い、高純度HPAおよび/またはその二量体の結晶を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にHPAはイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを塩基性触媒存在下でアルドール縮合反応させて合成される。アルドール縮合反応は、酸性条件下、塩基性条件下のいずれでも進行するが、HPAは一分子内にカルボニル基および水酸基を有するため、酸性条件下では、二量体の結晶から四量体へと縮合を起こすことから、上記のように塩基性条件下で反応が行われる(特許文献1〜2参照)。反応終了後、未反応のイソブチルアルデヒドやホルムアルデヒド等の低沸点成分を留去し、HPA含む水溶液を得る。HPAは、ネオペンチルグリコール、スピログリコールなどの有機化合物の合成中間体として利用されることが多く、この反応生成液は精製せず、次工程に用いられることが多い(特許文献3〜4参照)。
【0003】
また、このHPAを含む水溶液に、水を加え希釈して、晶析精製し、高純度のHPAを得る方法が開示されている(特許文献5〜7参照)。ところで、HPAは式(1)で示されるような単量体と二量体の結晶の平衡関係があり(非特許文献1参照)、晶析精製した際、結晶として得られるHPAは二量体の結晶である。この二量体の結晶が単量体と同等の反応性を示すことも先の特許文献3など多くの文献で開示されている。
【0004】
しかしながら、上記の特許文献5では、アルドール縮合反応液に水を添加し、イソブチルアルデヒドを留去した後のHPAおよび/またはその二量体の結晶の合計濃度が23〜30重量%の範囲となるよう調整し晶析を行っており、このように高い濃度で15〜20℃まで冷却し晶析した場合、非常に高粘度のスラリーとなる、もしくは溶液が固まるため、工業的に取り扱いが非常に困難となるという欠点を有している。さらに、得られた濾液中にはHPAおよび/またはその二量体の結晶が多く残存するため、イソブチルアルデヒドで抽出し、有機層を低沸蒸留工程へ循環させることによって、HPAおよび/またはその二量体の結晶を回収し、また水層中へ溶解したイソブチルアルデヒドも蒸留により回収しているが、多量のイソブチルアルデヒドを蒸留塔で留去させるため、エネルギー的に不利である。
【0005】
また、特許文献7では、pH調製剤として塩基性化合物を追加することが必要であり、pHの調整が煩雑となるだけでなく、晶析槽壁面等や攪拌翼への結晶付着(スケーリング)が避けられないなどの欠点を有している。晶析槽壁面等にスケーリングが発生すると、晶析時の冷却が十分に行われなくなり、HPAおよび/またはその二量体の結晶の取得量が大幅に低下するだけでなく、結晶性状が悪化してケーキの含液率が増大する等、工業操作上の問題が多くなる。
【化1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−215904号公報
【特許文献2】特開2000−26356号公報
【特許文献3】特開平1−299239号公報
【特許文献4】特開2005−29563号公報
【特許文献5】特公平6−29206号公報
【特許文献6】特開昭51−68514号公報
【特許文献7】特開2007−70339号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions II,3巻,189−192ページ(1978年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、晶析槽壁面等や攪拌翼への結晶付着(スケーリング)等の上記したような課題を解決し、高純度のHPAおよび/またはその二量体の結晶を工業的に有利に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点を解決する為に高純度HPAおよび/またはその二量体の結晶の製造法について鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
【0010】
即ち本発明は、下記(1)〜(6)記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法に関するものである。
(1)
塩基性触媒存在下でイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを反応させ、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶を含む水溶液を得た後、未反応のイソブチルアルデヒドを含む低沸点成分を留去し、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の存在下、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の全体の濃度が5〜23重量%となるよう希釈して20〜45℃で晶析し、次いで固液分離することを特徴とする高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
(2)
晶析終了後のヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶含むスラリーの一部を残し、そこへヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶を含む水溶液、希釈剤を加えて晶析する(1)記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
(3)
晶析開始前に存在するヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶が0.01〜10重量%の範囲である(1)又は(2)のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
(4)
晶析したスラリーの固液分離で得たろ液を晶析の希釈剤に用いる(1)〜(3)いずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
(5)
希釈剤が水である(1)〜(4)のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
(6)
晶析終了時のスラリーの粘度が2000mPa・s以下である(1)〜(5)のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、HPAおよび/またはその二量体の結晶を種晶として予め存在させ、かつ、HPAおよび/またはその二量体の結晶の濃度を適正範囲に保って晶析を実施することにより、晶析槽壁面や攪拌翼への結晶付着を抑えることが可能となるなど工業的に取り扱いやすい効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明ではHPAとその二量体の結晶を含む水溶液を晶析した後、固液分離することにより高純度HPAおよび/またはその二量体の結晶を得る。本発明において、晶析の原料となるHPAは、塩基性触媒存在下でイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドをアルドール縮合した後、該アルドール縮合反応生成液から、未反応のイソブチルアルデヒドやホルムアルデヒドなどの低沸点成分を蒸留により留去することにより得られる。前述のように、該水溶液は、通常、HPAおよび/またはその二量体の結晶を含んでいる。
【0013】
こうして得られたHPAおよび/またはその二量体の結晶を含む水溶液(以下では、粗HPA水溶液と呼ぶこともある)は必要に応じて希釈する。HPAおよび/またはその二量体の結晶は、水と混合する有機溶媒には極めて高い溶解度を示すため、水と混合する有機溶媒は希釈剤として好ましくない。希釈剤としては水、あるいは本発明における固液分離の際に生じた濾液や洗浄液が使用可能である。水と混合しない溶媒の添加は、後処理が煩雑となるため好ましくない。
【0014】
希釈の際ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶からなる結晶を種晶として存在させる。種晶の存在下に晶析を行うことで、晶析槽の壁面や攪拌翼等への晶析時のスケーリングを防ぐことが出来る。種晶の存在量は晶析開始前の全液量に対し0.01重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜8重量%、更に好ましくは0.5重量%〜7重量%である。種晶をどのように存在させるかについては特に制限はなく、固液分離で得られたもの、もしくは更に精製したものを追加してもよいが、晶析終了後に得られたスラリーに含まれる結晶を一部残し、その結晶をそのまま次回の晶析の種晶として使用することが簡便であり、好ましい方法である。この晶析を行う際、粗HPA水溶液の温度は晶析温度より高いまま混合することが通常の操作であるが、その際に種晶添加量が上記範囲を下回ると、晶析開始前に種晶が完全に溶解してしまい、種晶存在下での晶析が出来なくなる恐れがある。また種晶添加量が上記範囲を上回ると、種晶が多すぎてスラリーの粘度が上昇してしまい、取り扱いが困難となる。
【0015】
希釈後の水溶液中のHPAおよび/またはその二量体の結晶の合計濃度は5〜23重量%、好ましくは10〜22重量%、より好ましくは15〜21重量%となるように調整する。なおこのHPAおよび/またはその二量体の結晶の合計濃度には、種晶分も含まれる。この範囲とすることにより、HPAおよび/またはその二量体の結晶を、高い生産効率で、かつ工業的に安定に得ることができる。希釈後の溶液中のHPAおよび/またはその二量体の結晶の合計濃度が5重量%を下回ると、HPAおよび/またはその二量体の結晶が全く析出しないか、析出しても晶析槽容量に対する生産量が著しく低下するため、工業操作上好ましくない。なお、濾液や洗浄液中にはHPAおよび/またはその二量体の結晶が多く含まれており、排水量低減および回収率向上のためにも、希釈水の代わりに使用することが好ましい。HPAおよび/またはその二量体の結晶の濃度が23重量%を上回ると、非常に高粘度のスラリーとなる、もしくは溶液が固まるため、工業的に取り扱いが非常に困難となり好ましくない。
【0016】
晶析温度は20〜45℃の範囲が好ましく、より好ましくは28〜43℃の範囲である。この温度範囲にすることにより、HPAおよび/またはその二量体の結晶を安定的に、かつ高回収率で析出させることができる。晶析温度を20℃よりも低くした場合、スラリーの流動性が低下もしくは皆無となることがあるばかりでなく、冷却に必要とされるユーティリティーとして過大なものが必要となるため、工業操作上著しく不利である。晶析温度を45℃よりも高くした場合、HPAおよび/またはその二量体の結晶が全く析出しないか、析出してもごく少量に留まるため、これも工業操作上著しく不利となる。
【0017】
スラリーの流動性を保ったまま晶析するには当該スラリー温度におけるスラリー粘度が2000mPa・s以下で晶析を終了することが好ましく、より好ましくは1000mPa・s以下で晶析を終了する。スラリー粘度が2000mPa・sを超えると、スラリーの流動性が低下もしくは皆無となり、工業操作上著しく不利となる。
【実施例】
【0018】
次に本発明を更に具体的に説明する。但し本発明はこれに限定されるものではない。尚、組成分析はガスクロマトグラフィーにより行い、HPAとその二量体の結晶は合算評価した。
[ガスクロマトグラフィー分析条件]
測定試料:約1重量%のアセトン溶液に調製
装置 :GC−6890N(アジレント・テクノロジー株式会社製)
使用カラム:DB−1(アジレント・テクノロジー株式会社製)
分析条件 :injection temp.200℃、
detection temp.250℃
カラム温度:60℃で7分保持→250℃迄6℃/分で昇温→250℃で20分保持
検出器 :水素炎イオン化検出器(FID)
またスラリー粘度の測定は、東機産業製TVB−10型粘度計にて行った。
【0019】
<参考例1>(HPA水溶液の調製)
イソブチルアルデヒド(和光純薬1級)199.5部と40重量%ホルマリン225部を(三菱瓦斯化学品)攪拌しながら、触媒としてトリエチルアミン(和光純薬特級)9.9部を加え、アルドール縮合反応を行った。この反応液を70〜80℃、圧力40kPaで、未反応のイソブチルアルデヒドやトリエチルアミンなどの低沸点成分を留去し、粗HPA水溶液を425部得た。粗HPA水溶液の組成を分析した結果、次のような組成であった。HPA 62.1重量%、ネオペンチルグリコール 1.53重量%、ホルムアルデヒド 1.60重量%、トリエチルアミン 1.30重量%、ギ酸0.41重量%、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノエステル 0.95重量%、水 28.5重量%、その他 3.65重量%であった。
【0020】
<参考例2>(種晶なしで1回目の晶析)
参考例1で得られた粗HPA水溶液260部及び水590部を晶析槽に仕込み、HPAおよび/またはその二量体の結晶の濃度19.0重量%とした。この溶液を攪拌しながら、40℃まで冷却し、39〜40℃で晶析した。90分後、晶析を終了した。このときのスラリー粘度は85mPa・sであった。この後、スラリーの20重量%はそのまま晶析槽に残し、残りの80重量%は遠心分離機を用いて固液分離を行った。このとき、ケーキ洗浄に水を80部使用した。この結果、686部の濾液を回収し、ケーキを73.5部得た。このケーキを窒素気流下、30℃で乾燥し、HPAおよび/またその二量体の結晶57.0部を得た。HPAおよび/またはその二量体の結晶に対する回収率は44.1%であり、このHPAおよび/またはその二量体の結晶をガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度99.0%であった。晶析槽の壁面及び攪拌翼には、うっすらとHPAおよび/またその二量体の結晶が付着していたが、スラリーの流動性及び回収率を妨げることはなかった。
【0021】
<実施例1>(種晶ありでの2回目の晶析)
参考例2でスラリーの20重量%を晶析終了後に残した晶析層へ、参考例1で得た粗HPA水溶液112部と、参考例2で回収したろ液のうち568部を仕込み、HPA濃度を19.0重量%とした。参考例2と同様に40℃まで冷却し、39〜40℃で晶析した。80分後、晶析を終了した。このときのスラリー粘度は、125mP・sであった。参考2と同様にスラリーの20重量%はそのまま晶析槽に残し、残りの80重量%は遠心分離機を用いて固液分離を行った。このとき、ケーキ洗浄に水を80部使用した。この結果、HPAおよび/またはその二量体の結晶57.0部と濾液686部を得た。HPAおよび/またはその二量体の結晶に対する回収率は82.0%(新たに追加した粗HPA水溶液中のHPAおよび/またはその二量体の結晶を基準とする、以下同様)であり、これをガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度99.1%であった。晶析槽の壁面及び攪拌翼には、HPAおよび/またその二量体の結晶は全く付着していなかった。
【0022】
<実施例2>(種晶ありでの1〜10回繰り返し晶析)
実施例1と同様の晶析操作を10回繰り返した。いずれの操作でも、HPAおよび/またはその二量体の結晶濃度は19.0〜20.0重量%となるよう調製した。また、いずれの場合も40℃まで冷却し、39〜40℃で晶析を行うことが出来た。晶析は90分で終了し、スラリー粘度は80〜180mPa・sであった。10回目で得られたHPAおよび/またはその二量体の結晶の回収率は80.5%〜81.0%であり、ガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度は98.8%〜99.0%であった。10回晶析を繰り返した後においても、晶析槽の壁面及び攪拌翼には、HPAおよび/またその二量体の結晶は全く付着していなかった。
【0023】
<比較例1>(種晶なしでの晶析1回目)
晶析終了後のスラリーを晶析槽に全く残さず、全く空の晶析槽に参考例1で得た粗HPA水溶液112部と、参考例2で回収した濾液の568部のみを入れた以外は、参考例2と同様に晶析を実施した。晶析開始後41℃まで冷却し、40〜42℃で晶析した。90分後、晶析を終了した。スラリー粘度は400mPa・sであった。固液分離・乾燥し、濾液680部と、HPAおよび/またはその二量体の結晶50.0部を得た。HPAおよび/またはその二量体の結晶に対する回収率は71.9%であり、これをガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度は98.6%であった。晶析終了後の晶析槽の壁面及び攪拌翼には、HPAおよび/またその二量体の結晶が強固に付着しており、スラリーを全量回収することはできなかった。
【0024】
<比較例2>(種晶なしでの晶析2回目)
比較例1と同様の晶析操作をもう1回繰り返した。晶析槽の壁面に強固なスケーリングが生じたため晶析開始後は43℃までしか冷却することが出来なくなり、43〜45℃で晶析した。固液分離・乾燥し、HPAおよび/またはその二量体の結晶42.0部を得た。HPAおよび/またはその二量体の結晶に対する回収率は60.0%であり、これをガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度は98.3%であった。晶析終了後の晶析槽の壁面及び攪拌翼には、HPAおよび/またその二量体の結晶が付着しており、スラリーを全量回収することはできなかった。
【0025】
<比較例3>(種晶なしでの3回繰返しの晶析)
比較例2と同様の晶析操作を3回繰り返した。晶析槽の壁面に強固なスケーリングが生じたため晶析開始後は44〜46℃までしか冷却することが出来なくなり、44〜47℃で晶析した。90分後、晶析を終了した。スラリー粘度は50〜100mPa・sであった。固液分離・乾燥を行い、HPAおよび/またはその二量体の結晶30.0〜35.0部を得た。HPAおよび/またはその二量体の結晶に対する回収率は、42.8%〜50.0%であり、これをガスクロマトグラフィーで分析した結果、純度は97.9%〜98.2%であった。晶析終了後の晶析槽の壁面及び攪拌翼には、HPAおよび/またその二量体の結晶が付着しており、スラリーを全量回収することはできなかった。
【0026】
上記の通り、種晶を残して晶析を行った実施例では、晶析を繰り返しても、純度と回収率が高レベルに維持されたのに対し、種晶を添加せずに晶析を実施した比較例では、晶析温度が好ましい温度まで下がらなくなったために回収率が低くなった。
【0027】
<比較例4>(HPAおよび/またはその二量体の結晶の濃度25.0重量%での晶析)
参考例1で得られた粗HPA水溶液210部に水312部を加えて、HPAおよび/またはその二量体の結晶の濃度25.0重量%とした以外は、参考例2と同様に晶析を実施したが、晶析開始70分後、スラリー粘度が1000mPa・s以上に上昇し、攪拌が事実上完全に停止してしまい晶析操作の継続が不可能となった。
【0028】
<比較例5>(晶析温度を50℃)
晶析温度を50℃とした以外は、参考1と同様に晶析を実施したが、晶析開始180分後でもスラリーは全く得られず、清澄な溶液のままであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
HPAはネオペンチルグリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールヒドロキシピバリン酸モノエステル、ヒドロキシピバリン酸、スピログリコール、ジオキサングリコールなどの有機化合物の合成中間体であり、簡易的なプロセスで純度の高いHPAを高収率で得ることができるため、本発明の工業的意義は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性触媒存在下でイソブチルアルデヒドとホルムアルデヒドを反応させ、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶を含む水溶液を得た後、未反応のイソブチルアルデヒドを含む低沸点成分を留去し、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の存在下、ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の全体の濃度が5〜23重量%となるよう希釈して20〜45℃で晶析し、次いで固液分離することを特徴とする高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【請求項2】
晶析終了後のヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶含むスラリーの一部を残し、そこへヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶を含む水溶液、希釈剤を加えて晶析する請求項1記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【請求項3】
晶析開始前に存在するヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶が0.01〜10重量%の範囲である請求項1又は2のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【請求項4】
晶析したスラリーの固液分離で得たろ液を晶析の希釈剤に用いる請求項1〜3のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【請求項5】
希釈剤が水である請求項1〜4のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。
【請求項6】
晶析終了時のスラリーの粘度が2000mPa・s以下である請求項1〜5のいずれかに記載の高純度ヒドロキシピバルアルデヒドおよび/またはその二量体の結晶の製造方法。

【公開番号】特開2011−74000(P2011−74000A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226150(P2009−226150)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】