説明

高純度メタクリル酸の製造法

【課題】新たな化学物質を用いない高純度メタクリル酸の調製法の提供。
【解決手段】(i)蒸留カラムおよびカラム付属部品を含む、少なくとも一つの蒸留ユニットを含む高純度メタクリル酸の調製用装置を提供し;(ii)粗メタクリル酸フィードを前記装置に提供し;(iii)前記の少なくとも一つの蒸留ユニットにおいて蒸留することにより、前記粗メタクリル酸フィードを精製し;(iv)4−メトキシフェノール(MEHQ)禁止剤を前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;(v)O含有ガスを前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;(vi)MEHQの粗メタクリル酸フィードへの添加率を一定量に維持するようにMEHQの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節し;(vii)OとMEHQのモル比を制御するようにO含有ガスの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に純粋な、すなわち、少なくとも99%の純度であり、さらに0.05%以下の水分を有するメタクリル酸の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクリル酸(「MAA」)およびメタクリレートエステル、たとえば、メチルメタクリレート(「MMA」)は広範囲の用途において用いられる。典型的な最終用途としては:アクリル系プラスチックシート;成形用樹脂;ポリ塩化ビニル改質剤;加工助剤;アクリル系ラッカー;床磨き剤;シーラント;オートトランスミッション液;クランクケースオイル改質剤;自動車コーティング;イオン交換樹脂;セメント改質剤;水処理ポリマー;電子用接着剤;金属コーティングおよびアクリル繊維が挙げられる。MAAおよびメタクリレートエステルは、これらが使用される生成物に付与する硬度のために、これらの用途および他の用途において特に貴重である。これらはさらに、これらが用いられる生成物において、化学安定性および光安定性、ならびに紫外線耐性を向上させる。従って、MAAおよびメタクリレートエステルは、優れた透明度、強度および耐候性を要求する用途において用いられることが多い。MAA市場は、非常にコスト感受性であり、従ってプロセス収率における改良はわずかであっても、有意なコスト節減につながり得る。
【0003】
非常に低いパーセンテージの不純物を有するMAAが非常に望ましい。不純物レベルが5重量%未満のMAAは本発明において氷メタクリル酸(「GMAA」)と称する。1重量%未満の不純物レベルを有し、0.05重量%以下が水であるMAAは、本明細書において高純度氷メタクリル酸(「HPMAA」)と称する。
【0004】
MAAを精製するための公知プロセスは、流れを過剰の硫酸で処理して、水の一部を除去することを含む。このプロセスでは、直接エステル化エステルのバッチ製造における使用に十分な純度のMAAが得られるが、望ましくないイオウ含有残留物も生じる。さらに、MAAは95%まで精製されず、従って、GMAAまたはHPMAA生成物の要件を満たさない。さらに、このようなMAAから水を除去するための公知プロセスの結果、収率の損失が増大し、さらなる廃棄物が生じる。従って、GMAA(すなわち、少なくとも95%の純度のMAA)およびHPMAA(すなわち、99%の純度で、さらに0.05%未満の水分を有するMAA)の規格は、公知精製プロセスでは得られない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、製造業者にとって減少した製造費でHPMAAを製造する方法が必要とされている。さらに、少なくとも99%の純度と0.5%未満の水の生成物規格を一貫して満たすHPMAAを製造することも必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、HPMAAの経済的な製造法を提供することにより、従来技術に内在する問題を解決する。本発明は、様々な不純物(一般に、軽不純物(light impurities)、重不純物(heavy impurities)、および水)をMAA流れから除去して、結果として得られる生成物が少なくとも99%の純度で、0.05%以下の水を含むようにするために、蒸留カラムを使用することにより、MAAを精製してHPMAAにすることを含む。
【0007】
従って、高純度の氷メタクリル酸の調製法が提供され、該方法は:
(i)第一蒸留カラム、第二蒸留カラムおよび第三蒸留カラムを提供し;
(ii)メタクリル酸、ライトエンドおよびヘビーエンドを含む粗メタクリル酸を前記第一蒸留カラムの上部に供給し;
(iii)前記第一蒸留カラムにおいて前記粗メタクリル酸を蒸留して、ライトエンドを含む第一オーバーヘッド蒸気流れならびにメタクリル酸およびヘビーエンドを含む第一ボトム液体流れを形成し;
(iv)前記第一ボトム液体流れを前記第二蒸留カラムの中心部分に供給し;
(v)前記第二蒸留カラムにおいて前記第一ボトム液体流れを蒸留して、メタクリル酸およびライトエンドを含む第二オーバーヘッド蒸気流れおよびヘビーエンドを含む第二ボトム液体流れを形成し;
(vi)前記第二オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を前記第三蒸留カラムの上部に供給し;
(vii)前記第三蒸留カラムにおいて前記第二オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を蒸留して、ライトエンドを含む第三オーバーヘッド蒸気流れおよびメタクリル酸を含む第三ボトム液体流れを形成することを含み、前記メタクリル酸は1重量%以下のレベルの不純物レベルを有し、0.05重量%以下が水である。
【0008】
さらに、高純度氷メタクリル酸の調製法が提供され、該方法は:
(i)第一蒸留カラム、第二蒸留カラムおよび第三蒸留カラムを提供し;
(ii)メタクリル酸、ライトエンドおよびヘビーエンドを含む粗メタクリル酸を前記第一蒸留カラムの上部に供給し;
(iii)前記第一蒸留カラムにおいて前記粗メタクリル酸を蒸留して、ライトエンドを含む第一オーバーヘッド蒸気流れならびにメタクリル酸およびヘビーエンドを含む第一ボトム液体流れを形成し;
(iv)前記第一ボトム液体流れを前記第二蒸留カラムの中心部分に供給し;
(v)前記第二蒸留カラムにおいて前記第一ボトム液体流れを蒸留して、メタクリル酸およびライトエンドを含む第二オーバーヘッド蒸気流れならびにヘビーエンドを含む第二ボトム液体流れを形成し;
(vi)前記第二オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を前記第三蒸留カラムの上部に供給し;
(vii)前記第三蒸留カラムにおいて前記第二オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を蒸留して、前記第三蒸留カラムの下部からメタクリル酸を含む第一液体副流を回収しながら、ライトエンドを含む第三オーバーヘッド蒸気流れおよびヘビーエンドを含む第三ボトム液体流れを形成し(ここにおいて、前記メタクリル酸は1重量%以下のレベルの不純物を有し、0.05重量%以下は水である);
(viii)前記第三ボトム液体流れを前記第二蒸留カラムの前記中心部分に供給することを含む。
【0009】
さらに、高純度氷メタクリル酸のさらなる調製法が提供され、該方法は:
(i)第一蒸留カラム、第二蒸留カラムおよび第三蒸留カラムを提供し;
(ii)メタクリル酸、ライトエンドおよびヘビーエンドを含む粗メタクリル酸を前記第一蒸留カラムの中心部分に供給し;
(iii)前記第一蒸留カラムにおいて前記粗メタクリル酸を蒸留して、メタクリル酸およびライトエンドを含む第一オーバーヘッド蒸気流れおよびヘビーエンドを含む第一ボトム液体流れを形成し;
(iv)前記第一オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を前記第二蒸留カラムの上部に供給し;
(v)前記第二蒸留カラムにおいて前記第一オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を蒸留して、ライトエンドを含む第二オーバーヘッド蒸気流れならびにメタクリル酸およびヘビーエンドを含む第二ボトム液体流れを形成し;
(vi)前記第二ボトム液体流れを前記第三蒸留カラムの中心部分に供給し;
(vii)前記第三蒸留カラムにおいて前記第二ボトム液体流れを蒸留して、メタクリル酸を含む第三オーバーヘッド蒸気流れ(ここにおいて、前記メタクリル酸は1重量%以下のレベルの不純物を有し、0.05重量%以下が水である)およびヘビーエンドを含む第三ボトム液体流れを形成し;
(viii)前記第三オーバーヘッド蒸気流れの少なくとも一部を前記第三蒸留カラムの上部に供給し;
(ix)前記第一蒸留カラムの前記中心部分に前記第三ボトム液体流れを供給することを含む。
【0010】
さらに、本発明は高純度氷メタクリル酸を調製するための装置も提供し、該装置は:
(i)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第一蒸留カラム;
(ii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第二蒸留カラム;
(iii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第三蒸留カラム;
(iv)前記第一蒸留カラムの前記上部に連結された第一インレットライン;
(v)前記第一蒸留カラムの前記頭頂部に連結された第一アウトレットライン;
(vi)前記第一蒸留カラムの前記底部および前記第二蒸留カラムの前記中心部分を連結する第二アウトレットライン;
(vii)前記第二蒸留カラムの前記頭頂部を前記第二蒸留カラムの上部および前記第三蒸留カラムの前記上部と連結する第三アウトレットライン;
(viii)前記第二蒸留カラムの前記底部と連結する第四アウトレットライン;
(ix)前記第三蒸留カラムの前記頭頂部と連結する第五アウトレットライン;
(x)前記第三蒸留カラムの前記底部と連結する第六アウトレットラインを含む。
【0011】
さらに、本発明は高純度氷メタクリル酸を調製するための装置も提供し、該装置は:
(i)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第一蒸留カラム;
(ii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第二蒸留カラム;
(iii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第三蒸留カラム;
(iv)前記第一蒸留カラムの前記上部に連結された第一インレットライン;
(v)前記第一蒸留カラムの前記頭頂部に連結された第一アウトレットライン;
(vi)前記第一蒸留カラムの前記底部および前記第二蒸留カラムの前記中心部分を連結する第二アウトレットライン;
(vii)前記第二蒸留カラムの前記頭頂部を前記第二蒸留カラムの前記上部および前記第三蒸留カラムの前記上部と連結する第三アウトレットライン;
(viii)前記第二蒸留カラムの前記底部と連結する第四アウトレットライン;
(ix)前記第三蒸留カラムの前記頭頂部と連結する第五アウトレットライン;
(x)前記第三蒸留カラムの前記下部と連結する第六アウトレットライン;
(xi)前記第三蒸留カラムの前記底部を前記第二蒸留カラムの前記中心部分と連結する第七アウトレットラインを含む。
【0012】
さらに、本発明は高純度氷メタクリル酸を調製する装置をさらに提供し、前記装置は:
(i)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第一蒸留カラム;
(ii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第二蒸留カラム;
(iii)頭頂部、底部、前記頭頂部に隣接する上部、前記底部に隣接する下部ならびに前記上部および前記下部の間の中心部分を有する第三蒸留カラム;
(iv)前記第一蒸留カラムの前記中心部分に連結された第一インレットライン;
(v)前記第一蒸留カラムの前記頭頂部分を前記第一蒸留カラムの前記上部および前記第二蒸留カラムの前記上部と連結する第一アウトレットライン;
(vi)前記第一蒸留カラムの前記底部と連結する第二アウトレットライン;
(vii)前記第二蒸留カラムの前記頭頂部と連結する第三アウトレットライン;
(viii)前記第二蒸留カラムの前記底部を前記第三蒸留カラムの前記中心部分と連結する第四アウトレットライン;
(ix)前記第三蒸留カラムの前記頭頂部を前記第三蒸留カラムの前記上部および生成物抜き取りラインと連結する第五アウトレットライン;
(x)前記第三蒸留カラムの前記底部を前記第一蒸留カラムの前記中心部分と連結する第六アウトレットラインを含む。
【0013】
明確にするために、以下の定義を本明細書において用いる:「頭頂部(top)」は、蒸留カラムの最上部に存在する蒸気空間であり;「底部(bottom)」とは、蒸留カラムの最底部に存在する液だめであり;「上部(upper section)」とは、蒸留カラムのほぼ1/3の最上部であり、「頭頂部」の下で、頭頂部に隣接する部分であり;「下部(lower section)」とは、蒸留カラムのほぼ1/3の最下部であり、「底部」の上にあり、底部に隣接する部分であり;「中心部分(center section)」とは、蒸留カラムの「上部」と「下部」の間のほぼ1/3の部分であり;「ライン」とは、蒸気および/または液体をユニット中に、ユニットから、または2以上のユニット間で輸送するための流体接続部であり、一般的な周辺装置、たとえば、バルブ、コンデンサー、流量計などを含んでもよい。
【0014】
他のさらなる目的、特徴および利点は、本発明のいくつかの態様の以下の記載から明らかになるであろう。これらの態様は、開示の目的で提示され、添付の図面と関連させて検討することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下の記載を添付の図面と合わせて参照することにより、本発明の態様およびその利点をより完全に理解することが出来る。
図1は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明の一態様の流れ図である。
図2は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明の別の態様の流れ図である。
図3は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明のもう一つの態様の流れ図である。
【0016】
本発明は、メタクリル酸(「MAA」)を精製して、高純度メタクリル酸(「HPMAA」)にする方法を包含する。HPMAAは、1%未満の不純物および0.05%以下の水を有すると定義される。本発明の方法において有利に精製できるMAAフィードストックは、任意の利用可能な工業プロセスから得ることができ;かかるプロセスの例としては、これらに限定されないが、イソブタン/イソブチレンベースのプロセス、エチレンベースのプロセス、またはプロピレンベースのプロセスが挙げられる。MAAを製造するためのプロピレンベースのプロセスの一例は、アセトンシアノヒドリン(「ACH」)フィードストックを加水分解、クラッキング、反応、および分離の工程に供することを含む。かかるMAA製造法において、ACHを過剰の硫酸と反応させて、ACHを加水分解する。次いで、加水分解された混合物をクラッキングトレインにおいてクラッキングし、次いで水と反応させて、粗MAAを形成する。最後に、粗MAA流れを次いで冷却し、MAA生成物流れと下層イオウ含有残留物流れに分離させる(本質的に重力式分離)。MAA生成物流れを次いで本発明の方法により精製する。
【0017】
図1に示すHPMAAを製造するための本発明の方法の一態様において、粗MAA流れをライン100を通して3つの不純物除去装置の第一の装置、HPMAA軽留分カラム110に供給する。HPMAA軽留分カラム110において、ライトエンド、たとえば、アセトンおよび水をライン105により除去する。HPMAA軽留分カラム110は、カラム付属部品も含み、ここにおいて「カラム付属部品」とは、あらゆる二次的装置およびカラムに連結された関連する配管、たとえば、真空装置、リボイラー、コンデンサー、ポンプ、ならびに、フィードライン、ボトムライン、オーバーヘッドライン、ベントライン、禁止剤添加ライン、酸素添加ライン、還流ライン、およびランダウンラインを含むが、これらに限定されないプロセスラインを意味する。
【0018】
HPMAA軽留分カラム110およびそのカラム付属部品は、好ましくは腐食に対して耐性の物質から構築される。腐食作用に耐性の好適な構成材料としては、これらに限定されないが:300シリーズステンレス鋼、904L、6−molyステンレス鋼、HASTELLOY(たとえば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、およびジルコニウムが挙げられる。いくつかの態様において、製造業者は、被覆されたベース金属を用いることにより建築費を減少させることができる。「被覆されたベース金属」とは、ガラス、エポキシ、エラストマー、フルオロポリマー(たとえば、TEFLON)、または前記腐食耐性金属のうちのひとつなどの腐食に耐性のあるカバーと組み合わされた炭素鋼などの一般に腐食耐性でないと考えられる物質である。被覆されたベース金属は、腐食に耐性のあるカバーをベース金属上に配置し、任意にベース金属とカバーを接着させることにより構築される。カバーはベース金属がプロセス流れと接触するのを防止する。被覆されたベース金属構築物は、大直径パイプ(3.8cm以上の呼称直径)および高流速運転における熱交換器チューブ(0.15メートル/秒以上の流体速度)および、構造強度を提供するために相当な厚さの金属(3mm以上の金属の厚さ)が用いられる他の成分について特に好ましい。前記の物質、たとえば、300シリーズステンレス鋼、904L、6−moly、ステンレス鋼、HASTELLOY(たとえば、B、B−2、B−3、C−22、およびC−276)、タンタル、およびジルコニウム、ならびに被覆されたベース金属を本明細書において「腐食耐性物質」と称する。
【0019】
内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングをHPMAA軽留分カラム110において所望により用いることができる。もし存在するならば、内部部品はカラム自体と同じ物質で作ることができるか、または1以上の異なる物質から作ることができる。たとえば、カラムの上部は300シリーズステンレス鋼パッキングを含んでもよく、一方、カラムの下部はHASTELLOY B−2パッキングを含んでもよい。トレイは、HPMAA軽留分カラム110における使用に好ましい。有孔プレートトレイは、MAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので、特に好ましい。本明細書において用いられる「有孔プレートトレイ(perforated plate trays)」なる用語は、平面部分と前記平面部分を貫通する多数の孔を含む任意のトレイを意味する。これらに限定されないが、堰、降下管、バフル、ディストリビューター、バルブキャップ、およびドレン口を含む任意のトレイ機構が存在してもよい。有孔プレートトレイの例としては、シーブトレイ(sieve tray)、デュアルフロートレイ(dual flow tray)、およびバルブ+有孔トレイの組み合わせが挙げられる。トレイを用いるならば、2から10の有孔プレートトレイを用いるのが好ましい。
【0020】
カラムの底部での温度を最低限に抑えるために、HPMAA軽留分カラム110は真空下で操作されるのが好ましい。たとえば、好ましい態様において、カラムの底部での圧力は、50mmHgから80mmHgに維持され、カラムの底部は70℃から110℃で操作される。
【0021】
少なくとも一つの熱交換器をHPMAA軽留分カラム110の加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気(desuperheated steam)がこれらの交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これは蒸留カラムの内部であっても、外部であってもよい。渦ブレーカーもHPMAA軽留分カラム110の底部において有用である。
【0022】
水溶性またはアルコール溶解性重合禁止剤をHPMAA軽留分カラム110に添加するのが有用であることが多い。好適な例としては、これらに限定されないが:
ヒドロキノン(HQ);
4−メトキシフェノール(MEHQ);
4−エトキシフェノール;
4−プロポキシフェノール;
4−ブトキシフェノール;
4−ヘプトキシフェノール;
ヒドロキノンモノベンジルエーテル;
1,2−ジヒドロキシベンゼン;
2−メトキシフェノール;
2,5−ジクロロヒドロキノン;
2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン;
2−アセチルヒドロキノン;
ヒドロキノンモノベンゾエート;
1,4−ジメルカプトベンゼン;
1,2−ジメルカプトベンゼン;
2,3,5−トリメチルヒドロキノン;
4−アミノフェノール;
2−アミノフェノール;
2−N,N−ジメチルアミノフェノール;
2−メルカプトフェノール;
4−メルカプトフェノール;
カテコールモノブチルエーテル;
4−エチルアミノフェノール;
2,3−ジヒドロキシアセトフェノン;
ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル;
2−メチルチオフェノール;
t−ブチルカテコール;
ジ−tert−ブチルニトロキシド;
ジ−tert−アミルニトロキシド;
2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ;
2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;
3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ;
2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ;
2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−カルボン酸;
2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ;
4−ニトロソフェノレートの塩;
2−ニトロソフェノール;
4−ニトロソフェノール;
銅ジメチルジチオカルバメート;
銅ジエチルジチオカルバメート;
銅ジブチルジチオカルバメート;
銅サリチレート;
メチレンブルー;
鉄;
フェノチアジン(PTZ);
3−オキソフェノチアジン;
5−オキソフェノチアジン;
フェノチアジンダイマー;
1,4−ベンゼンジアミン;
N−(1,4−ジメチルペンチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;
N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン;
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンおよびその塩;
酸化窒素;
ニトロソベンゼン;
p−ベンゾキノン;または
その異性体、その2以上の混合物;前記の1以上と分子酸素の混合物が挙げられる。禁止剤は単独または適当な希釈剤と組み合わせて用いることができる。好ましい希釈剤としては、これらに限定されないが、MAA、水、およびアセトンを含む有機混合物が挙げられる。
【0023】
ヒドロキノン(「HQ」)禁止剤がHPMAA軽留分カラム110における使用に特に好ましく、直接、または希釈剤と組み合わせてHPMAA軽留分カラム110およびその付属部品の全体にわたって1以上の位置において添加することができる。使用するならば、禁止剤を10000kgのHPMAA軽留分カラムフィードあたり1kg〜10kgのHQの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは、10000kgのHPMAA軽留分カラムフィードあたり1.3kg〜8kgのHQの割合であり;最も好ましくは、10000kgのHPMAA軽留分カラムフィードあたり1.5kg〜5kgのHQである。
【0024】
フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMeHQを用いる場合、禁止剤の効力を向上させるために酸素含有ガスを蒸留カラムに添加するのがさらに好ましい。本明細書において用いられる「酸素含有ガス」なる用語は、0.01%から100%までの酸素を含む任意のガスを意味する。酸素含有ガスは、HPMAA軽留分カラム110およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。操作温度および圧力は可燃限界および精製システム内の酸素溶解度に影響を及ぼし、これらの特性は、酸素含有ガスについて用いられる適当な酸素濃度を決定する場合に考慮すべきである。このような因子の考慮は、当業者の能力範囲内であり、純粋な酸素または大気のいずれかが通常用いられる。驚くべきことに、本発明者らは、酸素添加に関して従来考慮されていない精製システム内で抑制の効率に影響を及ぼす重要な因子−すなわち、モノマー含有溶液それ自体の中の高酸素濃度を回避することを見いだした。酸素濃度が禁止剤濃度に比較して高い場合、モノマーラジカルの形成を促進することにより重合の速度を実際に増大させることができる。この理由から、禁止剤が存在しない場合に酸素含有ガスを添加することは推奨されない。さらに、酸素含有ガスおよび禁止剤が精製システムに添加される場合、酸素含有ガスは禁止剤添加率に関して規定された比において添加されるのが好ましい。最適の酸素対禁止剤比は使用される禁止剤に関して変わるであろう。特に、HQが選択された禁止剤である場合、精製システムに添加される酸素含有ガスフィードとHQ禁止剤フィードの比は0.65モルから10モルO/モルHQに維持され;より好ましくは1モルから8.5モルO/モルHQ;最も好ましくは1.5モルから6モルO/モルHQに維持される。MEHQが選択された禁止剤である場合、精製システムに添加される酸素含有ガスフィードとMEHQ禁止剤フィードの比は、1モルから11.5モルO/モルMEHQに維持されるのが好ましく;より好ましくは1.5モルから9モルO/モルMEHQ;最も好ましくは2モルから6モルO/モルMEHQに維持される。
【0025】
ライトエンド、たとえば、アセトンおよび水は多少のMAAと共にライン105を通してHPMAA軽留分カラム110の頭頂部から除去され;この流れはほかの場所(たとえば、MAAプロセスにおける)での使用のために再循環してもよいし、あるいはアセトン回収容器に向けてもよい。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA軽留分カラム110およびコンデンサー、および連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースはこの目的に関して有効である。
【0026】
HPMAA軽留分カラム110から除去した後、流れ105を凝縮するならば、流れにおけるMAAの凍結を回避するために、コンデンサーにおいて16℃より高い温度の冷却剤を用いることができる。好ましい態様において、16℃から35℃の範囲の調整された水がコンデンサー冷却剤として用いられる。一態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効力を向上させるために、凝縮物の一部をコンデンサーに戻し、任意に蒸気インレットラインに戻すことができる。凝縮物は自由に再循環ラインから流出するか、またはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に適用することができる。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を促進するために、この凝縮物再循環流れに添加される。特に好ましい態様において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部は、重合可能な凝縮物を洗い流すために、HPMAA軽留分カラム110および/またはその付属部品の内部表面上に凝縮物を噴霧する装置を通してもよい。
【0027】
もう一つの態様において、分縮装置が用いられ、ここにおいて、流れ105は、少なくとも一つのMAA/水流れおよび一つの水/アセトン流れを含む2以上の流れに分割される。このようにして、MAA/水流れはMAAプロセスに直接再循環することができ、水/アセトン流れはもう一つのプロセス、たとえばアセトン回収操作、スクラバー、またはフレアに向けることができる。
【0028】
HPMAA軽留分カラム110ボトム流れ115は、MAAおよびヘビーエンド、たとえば、ヒドロキシイソ酪酸(「HIBA」)を含み、実質的にアセトンおよび水を含まない。流れ115は第二の不純物除去装置、HPMAA重留分カラム120に供給される。HPMAA重留分カラム120において、粗MAA製造プロセスにおいて製造される重不純物がMAAから分離される。残存するHIBAは後の処理工程において分解する傾向があるので、HIBAを除去することが特に重要である。HPMAA重留分カラム120およびそのカラム付属部品は、好ましくは、HPMAA軽留分カラム110についてすでに記載したように、腐食耐性物質で構成される。
【0029】
内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングは、望ましいならばHPMAA重留分カラム120において用いることができる。内部部品は、もし存在するならば、カラムそれ自体と同じ物質で作られていてもよいし、1以上の異なる物質で作られていてもよく;たとえば、HPMAA重留分カラム120の上部は300シリーズステンレス鋼トレイを含んでもよく、一方、カラムの下部は904Lトレイを含む。トレイはHPMAA重留分カラム120において好ましい。有孔プレートトレイがMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので、特に好ましい。トレイを用いるならば、5〜15の有孔プレートトレイを用いるのが好ましい。底部温度を最低限に抑えるために、重留分カラム120を真空下で操作するのが好ましい。たとえば、好ましい態様において、カラムの底部での圧力は60mmHgから100mmHgに維持され、カラムの底部は75℃から115℃で操作される。
【0030】
少なくとも一つの熱交換器をHPMAA重留分カラム120の加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これはカラムの内部であってもよいし、または外部であってもよい。渦ブレーカーもカラム120の底部において有用である。
【0031】
1以上の禁止剤、たとえば前記のものをHPMAA重留分カラム120に希釈剤の有無にかかわらず添加するのが有用であることが多い。MEHQが好ましい禁止剤であり、直接または希釈剤、たとえば、MAAと共に、HPMAA重留分カラム120およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。用いるならば、MEHQは10000kgのHPMAA重留分カラムフィード流れ115あたり1kgから15kgのMEHQの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA重留分カラムフィードにつき1.5kgから12kgのMEHQであり;最も好ましくは10000kgのHPMAA重留分カラムフィードあたり2kgから9kgのMEHQである。
【0032】
前記のように、フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMEHQを用いる場合、禁止剤の効力を向上させるために、酸素含有ガスを蒸留カラムに添加するのがさらに好ましい。酸素含有ガスをHPMAA重留分カラム120およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA重留分カラム120の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載したものと同じである。
【0033】
ヘビーエンド、たとえば、HIBAおよび他の不純物はHPMAA重留分カラム120の底部からライン130を通って除去される。HPMAA重留分カラム底部流れ130は廃棄してもよいが、燃料有用物は廃棄する前に回収するのが好ましい。任意に、ボトム流れ130は、残留MAAを回収するために独立したストリッピングシステムにおいてさらに処理することができる。独立したストリッピングシステムの一態様において、ボトム流れ130は1以上のガラスでライニングされたストリッピング容器において生蒸気(MAA含有重留分カラムボトム流れと直接接触する蒸気)で加熱することができる。MAAの回収を最大にするために、ストリッピング容器を減圧で操作するのが好ましい。回収されたMAAをMAAプロセスに戻すことができる。
【0034】
縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA重留分カラム120ならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースがこの目的について有効である。
【0035】
HPMAA重留分カラムオーバーヘッド流れ125は、相当量のMAAならびに水、アセトン、および他のライトエンドを含む。オーバーヘッド流れ125を少なくとも部分的に凝縮する。オーバーヘッド流れ125がこのように凝縮されるならば、流れにおけるMAAの凍結を回避するために調整された水をコンデンサーにおいて用いることができる。流れ165の必要とされる純度を維持するために、凝縮物の一部をHPMAA重留分カラム120に還流ライン155を通して戻すことが必要である場合が多く;戻される凝縮物のフラクションは、HPMAA重留分カラム120の操作条件および所望のMAA純度レベルに応じて0%から100%まで変わり得る。好ましい態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させるために、凝縮物の一部はコンデンサーおよび任意に蒸気インレットラインに戻すことができる。凝縮物は再循環ラインから自由に流出するか、またはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁上に施用させる。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を向上させるためにこの凝縮物再循環流れを介して添加することができる。特に好ましい態様において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部を、重合可能な凝縮物を洗い流すために、HPMAA重留分カラム120および/またはその付属部品の内部表面上に凝縮物を噴霧する装置を通す。MAAおよびライトエンド不純物を含む残留する凝縮物を次いでライン165を通ってHPMAA仕上げカラム140に移す。
【0036】
残存する水、アセトン、および他のライトエンドをHPMAA仕上げカラム140からオーバーヘッド流れ135を介して除去する。分縮装置が好ましく、ここにおいて、オーバーヘッド流れ135は部分的に凝縮されて液体になる。オーバーヘッド流れ135がこのように凝集されるならば、流れにおけるMAAの凍結を回避するために調整された水をコンデンサーにおいて用いることができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA仕上げカラム140ならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースがこの目的について好ましい。好ましい態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効率を向上させるために、凝縮物の一部をコンデンサーおよび任意に蒸気インレットラインに再循環することができる。凝縮物は再循環ラインから自由に流出してもよいし、あるいはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁上に施用してもよい。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を向上させるために、この凝縮物再循環流れを介して添加することができる。特に好ましい態様において、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部を、重合可能な凝縮物を洗い流すために、HPMAA仕上げカラム140および/またはその付属部品の内部表面上に凝縮物を噴霧する装置を通す。
【0037】
HPMAA生成物流れ150は、99%以上の純度を有し、0.05%未満の水を含む、カラムの底部からHPMAA仕上げカラム140を出る。重合を抑制するために保存前にHPMAA流れ150を冷却するのが好ましい。いくつかの例において、ポリマーまたは他の望ましくない成分が流れ中に存在し、従って、任意の微量成分のポリマーまたは他の望ましくない成分を保存前に除去するために、HPMAA生成物流れを濾過することが望ましい。HPMAA仕上げカラム140およびそのカラム付属部品は、HPMAA軽留分カラム110についてすでに記載したように腐食耐性物質で構築されるのが好ましい。内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングを望ましいならばHPMAA仕上げカラム140において用いることができる。内部部品はもし存在するならば、HPMAA仕上げカラム140それ自体と同じ物質で作られていてもよいし、あるいは1以上の異なる物質で作られていてもよい。たとえば、HPMAA仕上げカラム140の上部はステンレス鋼パッキングを含むことができ、一方、カラムの下部はジルコニウムトレイを含むことができる。有孔トレイはMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので特に好ましい。トレイを用いるならば、2〜10の有孔トレイを用いるのが好ましい。
【0038】
好ましくは、カラムの底部における温度を最低限に抑えるためにHPMAA仕上げカラム140は真空下で操作される。たとえば、好ましい態様において、カラムの底部での圧力は50mmHg〜80mmHgに維持され、カラムの底部は70℃から110℃の間で操作される。
【0039】
少なくとも一つの熱交換器を仕上げカラムの加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これは蒸留カラムの内部であってもよいし、外部であってもよい。渦ブレーカーもHPMAA仕上げカラム140の底部において有用である。
【0040】
禁止剤、たとえば前記のようなものをHPMAA仕上げカラム140に希釈剤の有無にかかわらず添加するのが有用である場合が多い。このような禁止剤は、HPMAA仕上げカラム140およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA仕上げカラム140の好ましい禁止剤はMEHQである。HPMAA生成物流れ150における生成物禁止剤規格を越えない割合で禁止剤を添加するのが好ましい。任意に、HPMAA生成物流れ禁止剤濃度が確実に最終生成物規格内になるようにするために様々な量のMEHQである禁止剤をHPMAA生成物流れ150に直接添加することができる。
【0041】
前記のように、フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMEHQを用いる場合、禁止剤の効力を向上させるために酸素含有ガスを蒸留カラムに添加するのがさらに好ましい。酸素含有ガスはHPMAA仕上げカラム140およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA仕上げカラム140の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載されたものと同じである。
【0042】
HPMAA精製システムのもう一つの態様を図2に示し、これはHPMAA生成物流れのサイドドロー配置を利用する。当業者にとっては、この態様の図1に示すシステムに対する類似性は明らかであろう。はじめの2つの不純物除去装置(カラム210および220)の構成および機能は、前の態様において記載したもの(それぞれカラム110および120)と本質的に同じである。同様に、カラム210および220およびそのカラム付属部品は、HPMAA軽留分カラム110についてすでに記載したのと同様に腐食耐性物質で構築されているのが好ましい。ライン265を通ってカラム220を出る物質はほぼHPMAA品質の中間体流れであり;この流れをHPMAA仕上げカラム240においてさらに精製することができ、ここにおいて、水およびライトエンドがオーバーヘッド流れ235によりカラムの上部から除去される。しかしながら、図2の態様において、HPMAAは、第三の不純物除去装置であるHPMAA仕上げカラム240の底部からではなく側部から抜き取られる。ヘビーエンドを含む仕上げカラムボトム流れ245は、MAA収率を最大にするために、たとえばカラム220(図示)または任意にカラム210に再循環させることができる。HPMAA仕上げカラム240およびそのカラム付属部品は、HPMAA軽留分カラム110についてすでに記載したように、腐食耐性物質で構築されているのが好ましい。
【0043】
水、アセトン、および他のライトエンドはHPMAA仕上げカラム240からオーバーヘッド流れ235により除去される。分縮装置が好ましく、ここにおいて、オーバーヘッド流れ235は部分的に凝縮されて液体になる。オーバーヘッド流れ235がこのように凝縮されるならば、流れにおけるMAAの凍結を回避するために、調整された水をコンデンサーにおいて用いることができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA仕上げカラム240ならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースがこの目的に関して有用である。トレイをHPMAA仕上げカラム240において用いる場合、有孔トレイがMAAポリマーの蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので好ましく;2〜10の有孔トレイが特に好ましい。好ましい態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効力を向上させるために、凝集物の一部をコンデンサーおよび任意に蒸気インレットラインに戻すことができる。凝集物は再循環ラインから自由に流出させてもよいし、チューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に施用してもよい。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を向上させるために、これは凝集物再循環流れにより添加することができる。特に好ましい態様において、重合可能な凝集物を洗い流すために、この凝集物再循環流れの少なくとも一部を、HPMAA仕上げカラム140および/またはその付属部品の内部表面上に凝集物を噴霧する装置に通すことができる。
【0044】
HPMAA生成物流れ250はカラムの側部からHPMAA仕上げカラム240を出、99%以上の純度を有し、0.05%未満の水を含む。生成物流れ250は好ましくは重合を抑制するために貯蔵前に冷却される。生成物流れを、カラムの底部からではなく、カラムの側部(本明細書においては「サイドドロー(side−draw)」配置と称する)から生成物を除去することにより、HPMAA仕上げカラム240の操作が向上される。カラムの底部で最高温度が起こるので、ポリマーまたは他の望ましくない不純物が形成され、カラムの底部から直接抜き取られるHPMAA生成物中に存在する。図1に示す前記態様において記載するように生成物流れ250を任意に濾過することができるが、この態様におけるサイドドロー配列の使用は、HPMAA生成物流れにおける潜在的な不純物量を減少させる。従って、濾過の必要性が最小限に抑えられ、運転費を減少させることができ、製造業者らに有利である。
【0045】
図2に示すように、ヘビーエンド不純物はHPMAA仕上げカラム240の底部において蓄積するが、これは流れ245により除去され、HPMAA重留分カラム220に再循環される。この再循環工程により、流れ245において存在するMAAはカラム220において生成物として回収される。流れ245において存在する任意のヘビーエンドおよび望ましくない不純物は、流れ230中の他のヘビーエンドと共にカラム220を出る。ヘビーエンド流れ245は別法として軽留分カラム210に再循環することができるが、この工程は図2において示す態様と機能的に等価であり、したがって製造者に同様に有利である。
【0046】
禁止剤、たとえば、前記のようなものをHPMAA仕上げカラム240に、任意に希釈剤と共に添加することは有用であることが多い。禁止剤はHPMAA仕上げカラム240およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。
【0047】
HPMAA生成物流れのサイドドロー除去はHPMAA仕上げカラム240の禁止剤選択を増大させる。これは、禁止剤が一般に底部から蒸留カラムを出る重い成分であるという事実による。従って、生成物流れをカラムの底部から抜き取る場合、添加された禁止剤はこれと共に出ていく。対照的に、生成物をカラムの側部から抜き取る場合、禁止剤の全てが生成物と共に抜き取られず、禁止剤カラムの底部に落下して除去される。従って、図1に示す態様において、最終生成物規格内のこれらの禁止剤はHPMAA仕上げカラム140において用いることができ;一方、図2において示す態様において、さらに広範囲の禁止剤をHPMAA仕上げカラム240において用いることができる。
【0048】
PTZはカラム240の底部におけるポリマー形成を最小限に抑えるために特に有用であり、好ましい。用いるならば、PTZを10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードにつき0.005kg〜8kgのPTZの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードあたり0.01kg〜5kgのPTZ;最も好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードあたり0.05kg〜1kgのPTZである。
【0049】
HQ禁止剤を用いるならば、禁止剤を10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードあたり1kg〜10kgのHQの割合で添加(任意に希釈剤と共に)するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードあたり1.3kg〜8kgのHQであり;最も好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム240フィードあたり1.5kg〜5kgのHQである。
【0050】
MEHQ禁止剤もこの態様においてHPMAA仕上げカラム240に添加することができ、直接またはMAA等の希釈剤と共に、HPMAA仕上げカラム240およびその付属部品全体にわたって添加することができる。HPMAA仕上げカラム240のサイドドロー配置のために、HPMAA仕上げカラム140におけるよりも高いMEHQ禁止剤添加率を用いることが可能である。一般に、前記のようなHPMAA仕上げカラム140についてのMEHQ添加率が用いられるならば、HPMAA仕上げカラム240において満足のいく性能が達成される。任意に、HPMAA生成物流れ禁止剤濃度が最終生成物規格範囲内になることを確実にするために、様々な量のMEHQ禁止剤をHPMAA生成物流れ250に直接添加することができる。
【0051】
前記のように、フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMEHQを用いる場合、禁止剤の効力を向上させるために酸素含有ガスを蒸留カラムに添加するのがさらに好ましい。酸素含有ガスをHPMAA仕上げカラム240およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA仕上げカラム240の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載したものと同じである。
【0052】
HPMAA精製システムのもう一つの態様を図3に示す。この態様において、粗MAA流れ300を精製してHPMAAにするために、3つの不純物除去装置を用いる。粗MAA流れ300をまず3つの不純物除去装置の最初のもの、HPMAA重留分カラム310に供給する。HPMAA重留分カラム310において、HIBAを含むヘビーエンドをまずライン315によりカラムの底部から除去する。この態様において早期にヘビーエンドを除去することにより、次の2つのカラムにおいてHIBAが分解して水およびライトエンドになるのが防止される。
【0053】
HPMAA重留分カラム310およびそのカラム付属部品は、好ましくはHPMAA軽留分カラム110に関してすでに記載したように腐食耐性物質で構築される。内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングはHPMAA重留分カラム310において所望により用いることができる。内部部品は、もし存在するならば、カラム自体と同じ物質で作られていてもよいし、あるいは1以上の異なる物質で構築してもよい。トレイはHPMAA重留分カラム310において好ましい。有孔プレートトレイはMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので特に好ましい。トレイを用いるならば、5から15の有孔トレイを用いるのが好ましい。カラムの底部での温度を最低限に抑えるためにHPMAA重留分カラム310を真空下で操作するのが好ましい。たとえば、好ましい態様において、カラムの底部での圧力は60mmHgから100mmHgに維持され、カラムの底部は75℃から115℃で操作される。好ましくは、少なくとも1つの熱交換器をHPMAA重留分カラム310の加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これはカラムの内部であってもよいし、外部であってもよい。渦ブレーカーもHPMAA重留分カラム310の底部において用いることができる。
【0054】
禁止剤、たとえば、前記のようなものを希釈剤の有無にかかわらずHPMAA重留分カラム310に添加することが有用であることが多い。HQ禁止剤が特に好ましく、直接、または水などの希釈剤と共に、HPMAA重留分カラム310およびその付属品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。用いるならば、禁止剤を10000kgのHPMAA重留分カラムフィードあたり1kg〜10kgのHQの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA重留分カラムフィードあたり1.3kg〜8kgのHQであり;最も好ましくは10000kgのHPMAA重留分カラムフィードあたり1.5kg〜5kgのHQである。
【0055】
前記のように、禁止剤の効力を向上させるために、フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMEHQを用いる場合、酸素含有ガスを蒸留カラムに添加することがさらに有利である。酸素含有ガスはHPMAA重留分カラム310およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA重留分カラム310の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載したものと同じである。
【0056】
HIBA、他のヘビーエンド、および不純物は、ライン315を通って重留分カラム310の底部から除去され、これは廃棄してもよいし、あるいは燃料有価物として回収してもよい。任意に、重留分カラム底部は、残存するMAAを回収するために、独立したストリッピングシステムにおいてさらに処理することができる。独立したストリッピングシステムの一態様において、重留分カラム底部を1以上のガラスでライニングされたストリッピング容器において生蒸気で加熱する。MAAの回収を最大にするためにストリッピング容器を減圧下で操作するのが好ましい。
【0057】
HPMAA重留分カラムオーバーヘッド流れ305は相当量のMAAならびに水、アセトン、他のライトエンド、および微量のヘビーエンドを含む。HPMAA重留分カラムオーバーヘッド流れ305は好ましくは少なくとも部分的に凝縮される。
【0058】
流れ365の必要とされる純度を維持するために、凝縮物の一部を還流ライン355を通って重留分カラムに戻すことが必要であることが多く;戻される凝縮物のフラクションは、HPMAA重留分カラム310の操作条件および所望のMAA純度レベルに応じて0%から100%である。残存する凝集物を次いでライン365を通って第二の不純物除去装置であるHPMAA軽留分カラム320に移す。流れにおけるMAAの凍結を回避するために調整された水を重留分カラムコンデンサーにおいて用いることができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA重留分カラムならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は、好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースがこの目的について有効である。好ましい態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効力を向上させるために凝縮物の一部をコンデンサー、および任意に蒸気インレットラインに再循環させることができる。凝縮物は再循環ラインから自由に流出させてもよいし、あるいはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に施用してもよい。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を向上させるために、この凝縮物再循環流れに添加することができる。特に好ましい態様において、重合可能な凝縮物を洗い流すために、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部をHPMAA重留分カラム310および/またはその付属部品を通すことができる。
【0059】
HPMAA軽留分カラム320は、水、アセトン、および他の軽不純物を流れ325によりMAAから除去する。HPMAA軽留分カラム320およびそのカラム付属部品は、HPMAA軽留分カラム110についてすでに記載したように腐食耐性物質で構成されるのが好ましい。内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングは所望によりHPMAA軽留分カラム320において用いることができる。内部部品は、もし存在するならばカラムそれ自身と同じ物質で作られていてもよいし、あるいは1以上の異なる物質で構成されていてもよい。有孔プレートトレイはMAAポリマー蓄積に対して耐性であることが判明しているので特に好ましい。トレイを用いるならば、2〜10の有孔プレートトレイを用いるのが好ましい。カラムの底部での温度を最低限に抑えるためにHPMAA軽留分カラム320を真空下で操作するのが好ましい。たとえば、好ましい態様において、カラムの底部での圧力は50mmHgから80mmHgに維持され、カラムの底部は70℃から110℃で操作される。少なくとも一つの熱交換器をHPMAA軽留分カラム320の加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気が熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これはカラムの内部であってもよいし、外部であってもよい。渦ブレーカーもHPMAA軽留分カラム320の底部において有用である。
【0060】
1以上の禁止剤、たとえば前記のものをHPMAA軽留分カラム320に添加するのが有用であることが多い。禁止剤は、カラムに直接、または希釈剤と共に、HPMAA軽留分カラム320およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。PTZはカラム底部におけるポリマー形成を最小限に抑えるために特に有用であり、好ましい。
【0061】
PTZをHPMAA軽留分カラム320において用いるならば、これは10000kgのカラムフィードあたり0.05kg〜12kgのPTZの割合で添加する(任意に希釈剤と共に)のが好ましく;より好ましくは10000kgのカラムフィードあたり0.1kg〜10kgのPTZであり;最も好ましくは10000kgのカラムフィードあたり0.4kg〜5kgのPTZである。
【0062】
HQをHPMAA軽留分カラム320において用いるならば、10000kgのカラムフィードあたり1kgから10kgのHQの割合で添加する(任意に希釈剤とともに)のが好ましく;より好ましくは10000kgのカラムフィードあたり1.3kgから8kgのHQであり;最も好ましくは10000kgのカラムフィードあたり1.5kgから5kgのHQである。
【0063】
前記のように、フェノール系禁止剤、たとえば、HQおよびMEHQを用いる場合、禁止剤の効力を向上させるために酸素含有ガスを蒸留カラムに添加するのがさらに好ましい。酸素含有ガスは、HPMAA軽留分カラム320およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA軽留分カラム320の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載したものと同じである。
【0064】
MAA、アセトン、および水はHPMAA軽留分カラム320の頭頂部からライン325を通って抜き取られる。分縮装置が好ましく、ここにおいて流れ325は少なくとも部分的に縮合されて液体になる。流れ325がこのように凝縮されるならば、流れにおけるMAAの凍結を回避するために、調整された水をコンデンサーにおいて用いることができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA軽留分カラム320ならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持され;断熱および電気または蒸気トレースがこの目的に関して有効である。好ましい態様において、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効力を向上させるために、凝縮物の一部をコンデンサーおよび任意に蒸気インレットラインに再循環させることができる。凝縮物は再循環ラインから自由に流出させてもよいし、あるいはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に施用してもよい。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、これは禁止剤の分布を向上させるためにこの凝集物再循環流れに添加することができる。特に好ましい態様において、重合可能な凝縮物を洗い流すために、この凝集物再循環流れの少なくとも一部をHPMAA重留分カラム320および/またはその付属部品の内部表面上に凝縮物を噴霧する装置に通すことができる。
【0065】
少量のヘビーエンドを有する高純度MAA流れ330を軽留分カラムの底部から除去し、第三および最後の不純物除去装置であるHPMAA仕上げカラム340に供給する。HPMAA仕上げカラム340において、MAAは残存するヘビーエンド不純物から分離されて、HPMAAを得る。
【0066】
HPMAA仕上げカラム340およびそのカラム付属部品は、HPMAA軽留分カラム110に関してすでに記載したように腐食耐性物質で構成されているのが好ましい。内部部品、たとえば、トレイまたはパッキングをHPMAA仕上げカラム340において所望により用いることができる。内部部品がもし存在するならば、これはカラム自体と同じ物質で作られていてもよいし、あるいは1以上の異なる物質から構成されていてもよい。有孔プレートトレイはMAAポリマー蓄積に対して特に耐性であることが判明しているので特に好ましい。トレイを用いるならば、5〜15の有孔プレートトレイを用いるのが好ましい。HPMAA仕上げカラム340は、任意の残存する微量のHIBAを除去の分解が回避されるように操作されるのが好ましい。好ましくは、HPMAA仕上げカラム340は、底部温度を最低限に抑えるために、真空下(すなわち、大気圧以下)で操作される。たとえば、好ましい態様において、HPMAA仕上げカラム340の底部での圧力は60mmHgから100mmHgに維持され、HPMAA仕上げカラム340の底部は75℃から115℃で操作される。
【0067】
少なくとも一つの熱交換器を仕上げカラムの加熱装置として用いることができる。デスパーヒーティド蒸気は熱交換器の熱源として好ましい。リボイラーを熱交換器として用いるならば、これはカラムの内部であってもよいし、外部であってもよい。渦ブレーカーもHPMAA仕上げカラム340の底部において有用である。
【0068】
99%以上純度レベルを有し、0.05%未満の水を有するHPMAAはライン335を通ってHPMAA仕上げカラム340を出、少なくとも部分的に凝縮される。流れにおけるMAAの凍結を回避するために調整された水をコンデンサーにおいて用いることができる。HPMAA生成物の必要とされる純度を維持するために、還流ライン360を通ってHPMAA仕上げカラム340に凝縮物の一部を戻す必要があることが多く;戻される凝縮物のフラクションは、HPMAA仕上げカラム340の操作条件および所望のHPMAA純度レベルに応じて0%から100%まで変化し得る。残存する凝縮物は、99%以上の純度レベルを有し、0.05%未満の水を含み、HPMAA生成物流れ350を介してカラムの頭頂部から出ていく。重合を抑制するために、保存前にHPMAA生成物を冷却することができる。縮合重合を最小限に抑えるために、HPMAA仕上げカラム340ならびにコンデンサーおよび連結蒸気ラインを含むその付属部品上の蒸気空間は好ましくはMAAの露点より高い温度に維持される。断熱および電気または蒸気過熱がこの目的に関して適している。好ましい態様において、HPMAA仕上げカラム340凝縮物の一部は、汚れを最小限に抑え、コンデンサー効力を向上させるために、コンデンサー、および任意に蒸気インレットラインに再循環することができる。凝縮物は再循環ラインから自由に流出させてもよいし、あるいはチューブシート、コンデンサー内部表面、および/またはインレット蒸気ライン内壁に施用してもよい。禁止剤をコンデンサーに添加するならば、禁止剤の分布を向上させるためにこの凝縮物再循環流れに添加することができる。特に好ましい態様において、重合可能な凝縮物を洗い流すために、この凝縮物再循環流れの少なくとも一部をHPMAA仕上げカラム340および/またはその付属部品の内部表面上に凝縮物を噴霧する装置に通すことができる。
【0069】
HIBAおよび他の不純物はライン345を通ってHPMAA仕上げカラム340の底部から除去される。MAAの回収は、この流れをHPMAA重留分カラム310に再循環することにより最大になる。
【0070】
1以上の禁止剤、たとえば前記のようなものをHPMAA仕上げカラム340に、任意に希釈剤と共にを添加することが有用であることが多い。このような禁止剤はHPMAA仕上げカラム340およびその付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。PTZはHPMAA仕上げカラム340の底部におけるポリマー形成を最小限に抑えるために特に有用であり、好ましい。用いるならば、PTZは10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり0.005kg〜8kgのPTZの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり0.01kgから5kgのPTZであり;最も好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり0.05kgから1kgのPTZである。HQが用いられるならば、禁止剤を、10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり1kgから10kgのHQの割合で添加するのが好ましく;より好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり1.3kg〜8kgのHQであり;最も好ましくは10000kgのHPMAA仕上げカラム340フィードあたり1.5kg〜5kgのHQである。
【0071】
MEHQもHPMAA仕上げカラム340に直接、またはMAAなどの希釈剤と共に、HPMAA仕上げカラム340およびその関連する装置における1以上の位置において添加することができる。MEHQを用いるならば、禁止剤を10000kgのフィード流れ330あたり1kg〜15kgのMeHQの割合で添加するのが好ましい。しかしながら、HPMAA生成物はオーバーヘッドから抜き取られるので、HPMAA仕上げカラム340に対するMEHQの禁止剤添加の割合をこの範囲に限定することは重要ではない。当業者には、HPMAAはオーバーヘッドで抜き取られるので、好ましい禁止剤添加比を越えている場合でさえも、生成物を所望の規格内にすることが可能であることは明らかであろう;しかしながら、好ましい禁止剤比を越える操作は効率が悪い。
【0072】
1以上の禁止剤をHPMAA仕上げカラム340に直接導入するならば、各禁止剤の添加比は前記の比と比較して減少させることができる。仕上げカラムにおいて用いられる禁止剤およびそのそれぞれの添加比に関係なく、HPMAA生成物流れ禁止剤濃度が最終生成物規格内になることを確実にするために様々な量のMEHQ禁止剤を流れ350に直接添加することができる。
【0073】
前記のように、フェノール系禁止剤、たとえばHQおよびMEHQを用いる場合、禁止剤の有効性を向上させるために酸素含有ガスを蒸留カラムに添加することがさらに好ましい。酸素含有ガスはHPMAA仕上げカラム340およびそのカラム付属部品全体にわたって1以上の位置において添加することができる。HPMAA仕上げカラム340の操作条件および装置および推奨される酸素対禁止剤比は、HPMAA軽留分カラム110に関連して記載したものと同じである。
【0074】
限定するためでなく例示のために、禁止剤を酸素含有ガスと組み合わせて使用することを説明するために、本発明の範囲内に含まれるHPMAA精製システムの操作に関連して次の記載を提示する。
【実施例1】
【0075】
80%より高いMAAを含む粗MAAフィード流れをHPMAA軽留分カラム110に4545kg/時の割合で供給する。カラムの底部での圧力は65mmHgであり、カラムの底部での温度は90℃から100℃に維持される。水中3.5%のHQを含む禁止剤溶液をHPMAA軽留分カラムおよびその付属部品全体にわたって複数の位置において添加して、23kg/時の全体的な溶液フィード速度を得る。リボイラー循環ラインに5kg/時の割合で大気を添加する。結果として得られる禁止剤に対する酸素含有ガス添加の割合は、1モルのHQにつき4.5モルOであり、蒸留カラムにおけるポリマー形成は有効に抑制される。
【実施例2】
【0076】
90%より高いMAAを含むMAAフィード流れを、HPMAA重留分カラム120に9090kg/時の割合で供給する。カラムの底部での圧力は60mmHgであり、カラムの底部での温度は100℃から105℃に維持される。GMAA中2.5%MEHQを含む禁止剤溶液をHPMAA重留分カラムおよびその付属部品全体にわたって複数の位置において添加して、126kg/時の全体的な溶液供給速度を得る。大気をリボイラー循環ラインに9kg/時の割合で添加する。結果として得られる禁止剤に対する酸素含有ガス添加の割合は、MEHQ1モルあたり2.6モルのOであり、蒸留カラムにおけるポリマー形成は有効に抑制される。
【0077】
本発明は従って、目的を実行し、記載した目的および利点の両方、ならびに本発明に固有の他の利点を達成するためによく適用される。本発明を本発明の特定の態様を参照して図示し、記載し、定義したが、このような参照は本発明を限定するものではなく、このような制限は考えられない。本発明は、当業者には思いつくように、相当の修正、変更および形態および/または機能における同等物の置換が可能である。図示し、記載した本発明の態様は例示のみであり、本発明の範囲を網羅しない。従って、本発明は、あらゆる点において同等物と完全に認知される添付の請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明の一態様の流れ図である。
【図2】図2は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明の別の態様の流れ図である。
【図3】図3は、HPMAAを製造するためのプロセスの本発明のもう一つの態様の流れ図である。
【符号の説明】
【0079】
100,105:ライン、110,320:HPMAA軽留分カラム、115:HPMAA軽留分カラムボトム流れ、120,310:HPMAA重留分カラム、125,135:オーバーヘッド流れ、130:ライン、140,240,340:HPMAA仕上げカラム、145,150:HPMAA生成物流れ、155:還流ライン、165,200,205,215,225,230,235,245,250,255,265,300,305,315,325,335,345,355,360,365:流れ、210,220:カラム、330:高純度MAA流れ、350:MAA生成物流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度メタクリル酸の調製法であって;
(i)蒸留カラムおよびカラム付属部品を含む、少なくとも一つの蒸留ユニットを含む高純度メタクリル酸の調製用装置を提供し;
(ii)粗メタクリル酸フィードを前記装置に提供し;
(iii)前記の少なくとも一つの蒸留ユニットにおいて蒸留することにより、前記粗メタクリル酸フィードを精製し;
(iv)4−メトキシフェノール(MEHQ)禁止剤を前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;
(v)O含有ガスを前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;
(vi)MEHQの粗メタクリル酸フィードへの添加率を1kgMEHQ/10000kg粗メタクリル酸フィードから15kgMEHQ/10000kg粗メタクリル酸フィードの間に維持するようにMEHQの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節し;
(vii)OとMEHQのモル比を1.0モルO/モルMEHQから11.5モルO/モルMEHQの間に維持するようにO含有ガスの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節することを含む方法。
【請求項2】
高純度メタクリル酸の調製法であって;
(i)蒸留カラムおよびカラム付属部品を含む、少なくとも一つの蒸留ユニットを含む高純度メタクリル酸の調製用装置を提供し;
(ii)粗メタクリル酸フィードを前記装置に提供し;
(iii)前記の少なくとも一つの蒸留ユニットにおいて蒸留することにより、前記粗メタクリル酸フィードを精製し;
(iv)ヒドロキノン(HQ)禁止剤を前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;
(v)O含有ガスを前記の少なくとも一つの蒸留ユニットに提供し;
(vi)HQの粗メタクリル酸フィードへの添加率を1kgHQ/10000kg粗メタクリル酸フィードから10kgHQ/10000kg粗メタクリル酸フィードの間に維持するようにHQの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節し;
(vii)OとHQのモル比を0.65モルO/モルHQから10モルO/モルHQの間に維持するようにO含有ガスの前記の少なくとも一つの蒸留ユニットへの添加率を調節することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−101013(P2008−101013A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−302251(P2007−302251)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【分割の表示】特願2003−123900(P2003−123900)の分割
【原出願日】平成15年4月28日(2003.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】