説明

高純度リン酸三マグネシウムの製造方法

【課題】 マグネシウム源として海水起源の水酸化マグネシウムを用いた、フッ素含有量の少ない高純度のリン酸三マグネシウムの製造方法を提供する。
【解決手段】 海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度で焼成して、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液又は硫酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する。次いでこのマグネシウム塩水溶液にアルカリ金属炭酸塩を加えて生成させた正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる方法。あるいは、マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属水酸化物を加えて生成させた水酸化マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸三マグネシウムの製造方法に関し、特に飲食料品のマグネシウム補強剤として特に有用な、フッ素混入量の少ない高純度のリン酸三マグネシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸三マグネシウム(Mg3(PO42)は、飲食料品のマグネシウム補強剤として利用されている。リン酸三マグネシウムとしては、天然の鉱石(ボビーライト、化学式:Mg3(PO42・8H2O)と化学的に合成された化学合成リン酸三マグネシウムとが知られている。
【0003】
特許文献1には、工業的に有利に利用できる化学合成リン酸三マグネシウムの製造方法として、リン酸水素マグネシウムと酸化マグネシウムあるいは正炭酸マグネシウムとを水の存在下で反応させる方法が記載されている。
特許文献2には、水酸化マグネシウムとリン酸とを反応させる方法、あるいは酢酸マグネシウムとリン酸アンモニウムとを反応させる方法によりリン酸マグネシウムを化学的に合成することができる旨の記載がある。
【0004】
化学合成リン酸三マグネシウムの製造原料として利用される水酸化マグネシウムは、一般に、海水に生石灰あるいは消石灰を投入することにより製造されている。また、水酸化マグネシウム以外のマグネシウム化合物は、上記海水起源の水酸化マグネシウムを原料として合成されている。
【0005】
海水起源の水酸化マグネシウムには、海水に含まれているマグネシウム以外の元素が不純物として混入しやすい。特に、フッ素は、海水中での存在量は極めて少量であるが、マグネシウムと化学的に安定なフッ化マグネシウムを生成し易いため、海水起源の水酸化マグネシウムに混入しやすい傾向にある。海水起源の水酸化マグネシウムでは、フッ素の含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として1000μgを超えることもある。
【特許文献1】特公平6−27001号公報
【特許文献2】特開2000−184864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
飲食料品のマグネシウム補強剤として利用するリン酸三マグネシウムは、公定規格において、フッ素含有量が5質量ppm(マグネシウム1g当たりのフッ素含有量として約28μg)以下であることが求められている。しかしながら、上述のようにリン酸三マグネシウムの原料として直接的又は間接的に使用される海水起源の水酸化マグネシウムにはフッ素が混入しやすいという問題がある。
【0007】
本発明者の検討によると、海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の高温度で焼成して得た酸化マグネシウムは、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下にまで低減することが判明した。しかしながら、この高温焼成により得られた酸化マグネシウムは反応性が低いため、前記の特許文献1に記載されているようにリン酸水素マグネシウムとの反応によりリン酸三マグネシウムを生成させるのは難しい。
【0008】
本発明の課題は、高温焼成により得られた酸化マグネシウムを用いてリン酸三マグネシウムを製造する方法、すなわち、海水起源の水酸化マグネシウムをマグネシウム源としながらも、フッ素含有量の少ないリン酸三マグネシウムを工業的に有利に製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度で焼成して得た、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液からなる群より選ばれる鉱酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する工程、該マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属炭酸塩を加えて、正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを生成させる工程、該正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる工程を含む、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として25μg以下のリン酸三マグネシウムの製造方法にある。
【0010】
上記本発明の方法において、鉱酸水溶液が塩酸水溶液であることが好ましい。また、アルカリ金属炭酸塩は炭酸ナトリウムであることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度で焼成して得た、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液からなる群より選ばれる鉱酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する工程、該マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属水酸化物を加えて、水酸化マグネシウムを生成させる工程、該水酸化マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる工程を含む、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として25μg以下のリン酸三マグネシウムの製造方法にもある。
【0012】
上記本発明の方法において、鉱酸水溶液が塩酸水溶液であることが好ましい。また、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法を利用することにより、海水起源の水酸化マグネシウムを製造原料としながらも、フッ素含有量の少ないリン酸三マグネシウムを工業的に有利に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のリン酸三マグネシウムの製造方法において用いるマグネシウム源は、海水起源の水酸化マグネシウムである。海水起源の水酸化マグネシウムとは、海水に生石灰あるいは消石灰を投入する方法(海水法)により得られた水酸化マグネシウムである。海水起源の水酸化マグネシウムの平均粒子径は0.5〜20μmの範囲にあることが好ましい。
【0015】
本発明では、海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度、好ましくは1700〜2000℃の高温度で焼成して酸化マグネシウムとする。海水起源の水酸化マグネシウムは、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として1000質量ppm以上含むこともあるが、これを上記の高温度で焼成することにより、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムが得られる。この高温焼成により得た酸化マグネシウムは、一般にマグネシアクリンカーと呼ばれ、鉄鋼用、セメント用塩基性レンガの原料として知られている。
【0016】
上記の高温焼成により得た酸化マグネシウムは反応性が低いため、本発明の方法では、酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液からなる群より選ばれる鉱酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する。鉱酸水溶液は、塩酸水溶液であることが特に好ましい。マグネシウム塩水溶液のマグネシウム濃度は、1〜30モル%の範囲にあることが好ましい。
【0017】
酸化マグネシウムと鉱酸水溶液との反応は、鉱酸水溶液に酸化マグネシウムを投入してもよいが、酸化マグネシウムの水性分散液に鉱酸水溶液を投入することにより行なうことが好ましい。
【0018】
上記のようにして調製したマグネシウム塩水溶液中に溶解している微量のフッ素分を除去するために、該水溶液に水酸化マグネシウムを350〜900℃の低温度で焼成して得た、反応性が比較的高い酸化マグネシウムを投入し、フッ素分を酸化マグネシウムに吸着させて除去する操作を行なってもよい。この操作での酸化マグネシウムの投入量は、マグネシウム塩水溶液100mLに対して1〜10gの範囲にあることが好ましい。
【0019】
マグネシウム塩水溶液からリン酸三マグネシウムを合成する方法としては、マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属炭酸塩を加えて、正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを生成させ、次いで生成した正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる方法、マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属水酸化物を加えて、水酸化マグネシウムを生成させ、次いで生成した水酸化マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる方法の二つがある。前者のマグネシウム炭酸塩を経由する方法では、生成するリン酸三マグネシウムが五水和物として得られ、後者の水酸化マグネシウムを経由する方法では、生成するリン酸三マグネシウムが八水和物として得られる傾向にある。
【0020】
マグネシウム炭酸塩を経由する方法において、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム及び炭酸カリウムのいずれをも用いることができる。炭酸ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属炭酸塩の投入量は、マグネシウム塩水溶液中のマグネシウム1モルに対して、0.6モル以上、1.2モル以下であることが好ましい。アルカリ金属炭酸塩は、濃度が1〜20質量%のアルカリ金属炭酸塩水溶液としてマグネシウム塩水溶液に投入することが好ましい。
【0021】
マグネシウム塩水溶液とアルカリ金属炭酸塩との反応により生成するマグネシウム炭酸塩の種類は、反応温度により異なる。正炭酸マグネシウム[MgCO3・3H2O]は、反応温度50℃以下(好ましくは20〜40℃)で生成し、塩基性炭酸マグネシウム[mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O、mは3〜5の整数、nは3〜8の整数]は、反応温度55℃以上(好ましくは60〜90℃、特に好ましくは70〜85℃)で生成する。
【0022】
マグネシウム炭酸塩が生成したマグネシウム塩水溶液中には、通常、アルカリ塩が多量に含まれているため、マグネシウム炭酸塩をろ過、回収して、水で洗浄した後に、水性媒体に再度分散させて次のリン酸との反応に用いることが好ましい。
【0023】
マグネシウム炭酸塩の分散液に用いる水性媒体としては、水と水に相溶性を有する有機溶媒の混合物、もしくは水を用いることができる。水が特に好ましい。有機溶媒の例としては、エタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトンを挙げることができる。水と有機溶媒の混合物は、有機溶媒の含有量が50質量%未満であることが好ましい。水性媒体は、アルカリ金属を含まないか、あるいは含んでいてもその含有量100質量ppm以下である。
【0024】
マグネシウム炭酸塩とリン酸との反応は、マグネシウム炭酸塩分散液にリン酸水溶液を投入することにより行なうことが好ましい。リン酸の投入量は、マグネシウム炭酸塩1モルに対して、1/3以上、1モル以下であることが好ましい。
マグネシウム炭酸塩分散液中のマグネシウム炭酸塩の濃度は、0.01〜1.0モル%の範囲にあることが好ましい。
【0025】
水酸化マグネシウムを経由する方法において、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムのいずれをも用いることができる。水酸化ナトリウムが特に好ましい。アルカリ金属水酸化物の添加量は、マグネシウム塩水溶液中のマグネシウム1モルに対して、1.0モル以上、2.5モル以下であることが好ましい。
【0026】
水酸化マグネシウムが生成したマグネシウム塩水溶液中には、通常、アルカリ塩が多量に含まれているため、水酸化マグネシウムをろ過、回収して、水で洗浄した後に、水性媒体に再度分散させて次のリン酸との反応に用いることが好ましい。
【0027】
水酸化マグネシウムとリン酸との反応は、水酸化マグネシウム分散液にリン酸水溶液を投入することにより行なうことが好ましい。リン酸の投入量は、水酸化マグネシウム1モルに対して、1/3以上、1モル以下であることが好ましい。
水酸化マグネシウム分散液中の水酸化マグネシウムの濃度は、0.01〜1.0モル%の範囲にあることが好ましい。
【0028】
本発明の方法により製造方法により得られるリン酸三マグネシウムは、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として25μg以下と少ないため、飲料類(例、茶、コーヒー、果汁飲料、アルコール飲料)、食品類(例、麺、パン)、乳製品類(例:牛乳、チーズ)、液体調味料類(ソース)、香辛料(カレー粉)などの各種飲食料品のマグネシウム補強剤として有利に利用することができる。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
海水法により得られた水酸化マグネシウム(平均粒子径:3μm)を用意した。この水酸化マグネシウムのフッ素含有量をランタン−アリザリンコンブキソン法により、マグネシウム含有量をキレート滴定法によりそれぞれ測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、1100μgであった。
【0030】
上記の水酸化マグネシウム740gを、ガス炉を用いて2000℃の温度で1時間焼成して、酸化マグネシウム500gを得た。得られた酸化マグネシウムのフッ素含有量及びマグネシウム含有量を前記の方法によりそれぞれ測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、40質量ppmであった。
【0031】
上記の酸化マグネシウムを400g量り取り、これを水2000gに分散させた。次いで、この分散液に濃塩酸2000gを30分間かけて滴下して、酸化マグネシウムを溶解させた。濃塩酸の滴下終了後、不溶分を分離除去して、マグネシウム濃度2.2モル/kgの塩化マグネシウム水溶液4350gを得た。
【0032】
上記の塩化マグネシウム水溶液を3000g量り取り、これを70℃に加熱した。次いで、塩化マグネシウム水溶液を液温70℃に保持しながら、炭酸ナトリウム700gを水4500gに溶解させて調製した炭酸ナトリウム水溶液(液温:70℃)の全量を60分間かけて滴下して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成した塩基性炭酸マグネシウムをろ過、回収して、水で洗浄した後、乾燥した。
【0033】
上記のようにして得た塩基性炭酸マグネシウムを5モル分量り取り、これを水(アルカリ金属の含有量:0.1質量ppm)10kgに分散させて、塩基性炭酸マグネシウム分散液を調製した。次いで、この分散液にリン酸水溶液(濃度:85質量%)380gを30分間かけて滴下した。リン酸水溶液の滴下終了後、分散液をろ過し、固形物を水で洗浄した後、130℃の温度で乾燥した。得られた固形物のX線回折パターンを測定した結果、固形物はリン酸三マグネシウム・五水和物であることが確認された。
このリン酸三マグネシウム・五水和物のフッ素含有量及びマグネシウム含有量を前記の方法によりそれぞれ測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、10質量ppmであった。
【0034】
[実施例2]
実施例1にて使用した水酸化マグネシウム(F/Mg=1100μg)740gを、ガス炉を用いて1700℃の温度で1時間焼成して、酸化マグネシウム500gを得た。得られた酸化マグネシウムのフッ素含有量及びマグネシウム含有量を前記の方法によりそれぞれ測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、60質量ppmであった。
【0035】
上記の酸化マグネシウムを400g量り取り、これを水2000gに分散させた。次いで、この分散液に濃塩酸2000gを30分間かけて滴下して、酸化マグネシウムを溶解させた。濃塩酸の滴下終了後、不溶分を分離除去して、マグネシウム濃度2.2モル/kgの塩化マグネシウム水溶液4350gを得た。
【0036】
上記の塩化マグネシウム水溶液3000g量り取り、これに、水酸化ナトリウム260gを水4500gに溶解させて調製した水酸化ナトリウム水溶液の全量を48時間かけて滴下して、水酸化マグネシウムを生成させた。生成した水酸化マグネシウムをろ過、回収し、水で洗浄した後、乾燥した。
【0037】
上記のようにして得た水酸化マグネシウムを5モル分量り取り、これを水(アルカリ金属の含有量:0.1質量ppm)10kgに分散させて、水酸化マグネシウム分散液を調製した。次いで、この分散液にリン酸水溶液(濃度:85質量%)380gを30分間かけて滴下した。リン酸水溶液の滴下終了後、分散液をろ過し、固形物を水で洗浄した後、130℃の温度で乾燥した。得られた固形物のX線回折パターンを測定した結果、固形物はリン酸三マグネシウム・八水和物であることが確認された。
このリン酸三マグネシウム・八水和物のフッ素含有量及びマグネシウム含有量を上記の方法により測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、20質量ppmであった。
【0038】
[比較例1]
実施例1にて使用した水酸化マグネシウム(マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量:1100μg)580gを、水2000gに分散させて、水酸化マグネシウム分散液を調製した。次いで、この分散液に濃塩酸2000gを30分間かけて滴下して、水酸化マグネシウムを溶解させた。濃塩酸の滴下終了後、不溶分を分離除去して、マグネシウム濃度2.2モル/kgの塩化マグネシウム水溶液4400gを得た。
【0039】
上記の塩化マグネシウム水溶液を3000g量り取り、これを70℃に加熱した。次いで、塩化マグネシウム水溶液を液温70℃に保持しながら、炭酸ナトリウム700gを水4500gに溶解させて調製した炭酸ナトリウム水溶液(液温:70℃)の全量を60分間かけて滴下して、塩基性炭酸マグネシウムを生成させた。生成した塩基性炭酸マグネシウムをろ過、回収して、水で洗浄した後、乾燥した。
【0040】
上記の塩基性炭酸マグネシウムを5モル分量り取り、これを水10(アルカリ金属の含有量:0.1質量ppm)kgに分散させて、塩基性炭酸マグネシウム分散液を調製した。次いで、この分散液にリン酸水溶液(濃度:85質量%)380gを30分間かけて滴下した。リン酸水溶液の滴下終了後、分散液をろ過し、固形物を水で洗浄した後、130℃の温度で乾燥した。得られた固形物のX線回折パターンを測定した結果、固形物はリン酸三マグネシウム・五水和物であることが確認された。
このリン酸三マグネシウム・五水和物のフッ素含有量及びマグネシウム含有量を前記の方法によりそれぞれ測定して、マグネシウム含有量1g当たりのフッ素含有量を求めたところ、1000質量ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度で焼成して得た、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液からなる群より選ばれる鉱酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する工程、該マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属炭酸塩を加えて、正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを生成させる工程、該正炭酸マグネシウムまたは塩基性炭酸マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる工程を含む、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として25μg以下のリン酸三マグネシウムの製造方法。
【請求項2】
鉱酸水溶液が塩酸水溶液である請求項1に記載のリン酸三マグネシウムの製造方法。
【請求項3】
アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムである請求項1に記載のリン酸三マグネシウムの製造方法。
【請求項4】
海水起源の水酸化マグネシウムを1500〜2000℃の温度で焼成して得た、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として100μg以下の酸化マグネシウムを塩酸水溶液、硝酸水溶液及び硫酸水溶液からなる群より選ばれる鉱酸水溶液に溶解してマグネシウム塩水溶液を調製する工程、該マグネシウム塩水溶液にアルカリ金属水酸化物を加えて、水酸化マグネシウムを生成させる工程、該水酸化マグネシウムを水性媒体中にてリン酸と反応させる工程を含む、フッ素含有量がマグネシウム1g当たりの含有量として25μg以下のリン酸三マグネシウムの製造方法。
【請求項5】
鉱酸水溶液が塩酸水溶液である請求項4に記載のリン酸三マグネシウムの製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムである請求項4に記載のリン酸三マグネシウムの製造方法。

【公開番号】特開2006−169083(P2006−169083A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367938(P2004−367938)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000119988)宇部マテリアルズ株式会社 (120)