説明

高純度油回収手段及びこれを備える食品へドロ回収装置

【課題】食品ヘドロ排液から高純度油を回収する高純度油回収手段、及び、食品ヘドロ排液から高純度油を回収すると共に、固形分を回収する食品へドロ回収装置を提供する。
【解決手段】高純度油回収手段は食品へドロを含有する排液50から油脂分51を分離する油水分離手段10と、油水分離手段10の下流側に設けて油脂分51から浮遊物51bを除去して高純度油51aを回収する浮遊物除去手段と、を備える。油水分離手段10は吸入管11に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部16と円錐部16の下端に接続した直管部17からなる漏斗部材15と、漏斗部材15を上下方向に昇降可能とする昇降手段40と、を備える。食品へドロ回収装置1は排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプ35と沈殿ヘドロ含有排液の沈殿物53bを除去する沈殿物除去フィルター31を有する沈殿物回収手段と、高純度油回収手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度油回収手段及びこれを備える食品へドロ回収装置に関する。更に詳しくは、食品ヘドロ排液から高純度の油を回収する高純度油回収手段、及び、食品ヘドロ排液から高純度油を回収する共に、固形分を回収する食品へドロ回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レストラン等の厨房から排出される食品ヘドロを含有する排液は、動植物油が多く含まれているため、そのまま直接下水道等へ排出することは禁止され、油脂分等を除去した後に、排出しなければならない。
通常、排液処理槽として、いわゆるグリストラップ槽が設置されている。厨房から排出され、グリストラップ槽に貯留した食品へドロ排液は、排液上層に油脂分が浮上し、下層には沈殿へドロが堆積される。そのため、これらの油脂分及び沈殿ヘドロをそれぞれ回収することにより浄化した排液を下水道へ排出することになる。
しかし、グリストラップ槽には、油脂分及び沈殿へドロが短期間に蓄積するため、除去作業を頻繁に行わないと、排水管が詰まる原因となったり、腐敗等から悪臭を生ずることにもなる。一方、これらを除去するには、手作業が主であり、煩わしく手間がかかる作業となる。
また、回収した固形分としての油脂分及び沈殿ヘドロは、再利用が困難であることから廃棄されているのが実情である。
回収した油脂分から、浮遊物と水分を除去して、ストーブ、ボイラー等の燃料として再利用することができれば、環境保護という点からも好ましい。
【0003】
ここで、油脂分及び沈殿物をそれぞれ回収除去して、中層の排水を排出する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の装置によれば、上層に溜まる油脂分を回収袋内に戻す油脂分回収手段と、下層に堆積する沈殿物を回収袋に戻す沈殿物回収手段とを備えているため、油脂分及び沈殿物を効率よく回収することができる。
また、水槽における水面付近の浮遊物を取り除く手段が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2の装置によれば、伸縮自在な蛇腹ホースに連結された吸入ヘッドを水面付近にフロート体にて浮かべることで、空気と共に水面付近の浮遊物が吸入ヘッド内に吸い込まれて回収される。
さらに、排水から油分を回収する手段が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。特許文献3の装置によれば、吸入管に連結する吸入口を備えるフロートを排水表面に浮かべ、吸入管を通じて油分を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−1282号公報
【特許文献2】特開平5−15565号公報
【特許文献3】特開平7−275855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の装置では、油脂分回収手段は、油脂分を吸入する吸入口が固定されているため、排水の高さによっては、油脂分を吸入することができない。すなわち、吸入口の位置が、排水の油脂層にあるときは油脂のみを吸入できるが、吸入口の位置が、油脂層下部の水層にあるときは、水分を吸入してしまうことになり、効率的に油脂分のみを吸入することが困難である。
また、特許文献2の装置では、蛇腹ホースに連結されたフロート体を用いるため、排水面の高さが変わっても、吸入口の位置を略水面付近に保つことができるが、蛇腹の上下変動により、表面から下部の水分をかなりの割合で吸い込んでしまうことになる。
さらに、特許文献3の装置では、蛇腹は用いていないが、フロートと吸入口は一体であるため、やはりフロートの上下変動により、吸入口の高さが変動し、表面から下部の水分をかなりの割合で吸い込んでしまうことになる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するものであり、食品ヘドロ排液から高純度油を回収する高純度油回収手段、及び、食品ヘドロを含有する排液から高純度油を回収する共に、固形分を回収する食品へドロ回収装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の通りである。
1.食品へドロを含有する排液を貯留する排液槽と、該排液槽中に設けられ前記排液から油脂分を分離する油水分離手段と、該油水分離手段の下流側に設けて該油脂分から浮遊物を除去して高純度油を回収する浮遊物除去手段と、を備える高純度油回収手段であって、
前記油水分離手段は、液面に垂直に立設した吸入管と、前記吸入管に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部と該円錐部の下端に接続した直管部とからなる漏斗部材と、前記漏斗部材を上下方向に昇降可能とする昇降手段と、を備え、
前記円錐部の内部を排液で満たした前記漏斗部材を、前記昇降手段により上昇させることにより、前記直管部の内面と前記吸入管外面とで形成される隙間から、該直管部下端に設けた流出部を通じて前記排液中の水分を排出した後、更に前記漏斗部材を上昇させることにより、前記吸入管の内部に前記排液中の油脂分を回収することを特徴とする高純度油回収手段。
2.前記吸入管の吸入口の上端部上面は、上方に向かって拡開した傾斜面を形成し、該傾斜面と、前記漏斗部材の円錐部の傾斜面が、水平方向に対して略同一角度に傾斜している1.に記載の高純度油回収手段。
3.前記上端部は、外部側方に突出して形成され、前記直管部の上部は、管内部方向に突出して形成されることにより、前記隙間から油脂分の流出を防ぐ2.に記載の高純度油回収手段。
4.前記直管部下端には、前記吸入管に対してスライド可能に前記漏斗部材の昇降を案内するガイド部が突出して形成されている1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
5.前記昇降手段は、前記漏斗部材の上端に架橋してなる支持部材と、該支持部材に固定された第1ロッドと、該第1ロッドの上端に接続した第2ロッドと、該第2ロッドをクランクシャフトを介して回転駆動するモーターと、からなり、
前記第1ロッドの上端に設けた第1軸孔が、前記第2ロッドの下端に設けた軸で軸支され、該第2ロッド上端に設けた第2軸孔が、前記クランクシャフトの先端軸で軸支され、
前記第1軸孔又は第2軸孔のいずれか一方は、上下方向に幅の広い長孔である1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
6.前記浮遊物除去手段は、浮遊物除去フィルターと、該浮遊物除去フィルターの下流側に設けられているシリンダーポンプと、からなる1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
7.前記シリンダーポンプの下流側に、更に、前記高純度油を回収する回収槽を設け、該回収層は、仕切り板で区画された複数の槽からなり、高純度油を区画された槽の上流側から下流側にオーバーフローさせるように構成され、順次オーバーフローして最下流側に設けた槽において更に純度の高い高純度油を回収する7.に記載の高純度油回収手段。
8.排液槽内の食品ヘドロを含有する排液から固形分を回収すると共に、高純度油を回収する食品へドロ回収装置であって、前記排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプと前記沈殿ヘドロ含有排液中の沈殿物を除去する沈殿物除去フィルターとを有することにより該沈殿ヘドロ含有排液から該沈殿物を除去する沈殿物回収手段と、1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段と、を備えたことを特徴とする食品へドロ回収装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高純度油回収手段は、液面に垂直に立設した吸入管と、吸入管に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部と該円錐部の下端に接続した直管部とからなる漏斗部材と、前記漏斗部材を上下方向に昇降可能とする昇降手段と、を備えている。
この構成により、円錐部の内部を排液で満たした漏斗部材を上昇させることにより、まず、比重の大きな水分がその重力により、直管部の内面と吸入管外面とで形成される隙間から、直管部下端に設けた流出部を通じて排出される。
そして、水分を排出した後、更に前記漏斗部材を上昇させることにより、残分である油脂分を吸入管の内部に回収することができる。
【0009】
吸入管の吸入口の上端部上面が、上方に向かって拡開した傾斜面を形成し、傾斜面と、漏斗部材の円錐部の傾斜面が、水平方向に対して略同一角度に傾斜している場合には、油脂分の流れをよくすることができるため、油脂分の回収を効率よく行うことができる。
上端部が、外部側方に突出して形成され、直管部の上部は、管内部方向に突出して形成されることにより、直管部の内面と吸入管外面とで形成される隙間を狭くすることができ、水分より粘性の大きい油脂分の流出を防ぐことができる。
【0010】
直管部下端には、吸入管に対してスライド可能に漏斗部材の昇降を案内するガイド部が突出して形成されている場合には、漏斗部材を吸入管に対して傾斜することなく昇降させることができる。
前記昇降手段が、漏斗部材の上端に架橋してなる支持部材と、支持部材に固定された第1ロッドと、第1ロッドの上端に接続した第2ロッドと、第2ロッドをクランクシャフトを介して回転駆動するモーターと、からなり、第1ロッドの上端に設けた第1軸孔が、第2ロッドの下端に設けた軸で軸支され、第2ロッド上端に設けた第2軸孔が、クランクシャフトの先端軸で軸支され、第1軸孔又は第2軸孔のいずれか一方が、上下方向に幅の広い長孔である場合には、漏斗部材の円錐部に油脂分を回収する際、支持部材が、吸入管上端に当接した状態を一時維持することができる。こうすることで、排液が漏斗部材へ流入する際、漏斗部材近傍の排液の変動を抑制し、油脂分の回収効率を高めることができる。
【0011】
浮遊物除去手段は、浮遊物除去フィルターと、浮遊物除去フィルターの下流側に設けられているシリンダーポンプと、からなる場合には、油脂分のうちの浮遊物を除去して、液体分としての高純度油を効率的に得ることができる。
シリンダーポンプの下流側に、更に、高純度油を回収する回収槽を設け、回収層は、仕切り板で区画された複数の槽からなり、高純度油を区画された槽の上流側から下流側にオーバーフローさせるように構成され、順次オーバーフローして最下流側に設けた槽におい高純度油を回収するようにすれば、更に純度の高い高純度油を回収することができる。
【0012】
本発明の食品へドロ回収装置によれば、排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプと沈殿ヘドロ含有排液中の沈殿物を除去する沈殿物除去フィルターとを有することにより該沈殿ヘドロ含有排液から該沈殿物を除去する沈殿物回収手段と、請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段と、を備えているため、食品ヘドロを含有する排液から高純度油を回収する共に、固形分を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を説明する説明図である。
【図2】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を、図1の説明図に続く説明図である。
【図3】本発明の実施例に係り油水分離手段の要部を示す模式的な断面図である。
【図4】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を示す模式的な斜視図である。
【図5】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を示す模式的な斜視図である。
【図6】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を示す模式的な斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係り油水分離手段の動作を示す模式的な斜視図である。
【図8】本発明の実施例に係り油水分離手段を排液槽に設置した場合の一例を示す模式的な断面図である。
【図9】本発明の実施例に係る食品へドロ回収装置のうちの油水分離手段を除いた部分を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図1〜9を参照しながら本発明を詳しく説明する。尚、本発明は、かかる図に記載された具体例に示すものに限られず、目的、用途に応じて種々変更したものとすることができる。
本発明において、「固形分」とは、水、油等の液体分を除いた残渣であり、食品へドロ中の浮遊物、沈殿物などである。性状としては、固体としての塊状、粉末状、及びこれらと水、油等の液体分との混合により泥状となったもの等も含む。
【0015】
[1]高純度油回収手段
本発明の高純度油回収手段は、食品へドロからなる排液を貯留する排液槽と、該排液槽中に設けられ前記排液から油脂分を分離する油水分離手段と、該油水分離手段の下流側に設けて該油脂分から浮遊物を除去して高純度油を回収する浮遊物除去手段と、を備える。
【0016】
前記「排液槽」には、食品へドロからなる排液が投入され、沈殿ヘドロ及び油脂分を除去した後、浄化された水分が外部へ排出される。通常、レストラン等におけるグリストラップ槽を意味する。排液槽は、1槽のみから構成されるものでもよいが、連続する複数の槽から構成されるものであることが好ましい。例えば、図8に示す排液槽80は、第1槽80a、第2槽80b、第1槽80cから構成される。
第1槽80aに食品へドロ排液50が食品へドロ流入管81から投入された後、沈殿ヘドロと油脂分を除去して浄化された排液が第2槽80bに流入し、更に排液が第2槽80bから80cへと流入して、ほとんど水分のみとなり浄化された排液が流出管85から外部へ排出される。
【0017】
前記「油水分離手段」は、排液から油脂分を分離する手段であって、液面に垂直に立設した吸入管と、前記吸入管に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部と該円錐部の下端に接続した直管部とからなる漏斗部材と、前記漏斗部材を上下方向に昇降可能とする昇降手段と、を備え、前記円錐部の内部を排液で満たした前記漏斗部材を、前記昇降手段により上昇させることにより、前記直管部の内面と前記吸入管外面とで形成される隙間から、該直管部下端に設けた流出部を通じて前記排液中の水分を排出した後、更に前記漏斗部材を上昇させることにより、前記吸入管の内部に前記排液中の油脂分を回収することを特徴とする。
例えば図1に示すように、液面に垂直に立設した吸入管11と、吸入管11に緩挿された漏斗部材15と、漏斗部材15を上下方向に昇降可能とする昇降手段40を備えている。
【0018】
前記「吸入管」は、液面に垂直に立設して形成され、その上部から油脂分を吸入する部材である。この「油脂分」は、食品へドロ排液の浮遊物及び油であり、液体としての油分のほか浮遊物としての固形分を含む。また、水分その他の成分がある程度含まれているものも含む。
例えば図3に示す吸入管11のように、吸入口の上端部11a上面は、上方に向かって拡開した傾斜面11a1を形成し、傾斜面11a1と、前記漏斗部材の円錐部16の傾斜面16aが、水平方向に対して略同一角度に傾斜していることが好ましい。こうすることで、図1(3)、図2(4)に示すように、油脂分が吸入管11内部に流入しやすくすることができる。
【0019】
前記「漏斗部材」は、吸入管に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部と該円錐部の下端に接続した直管部とからなる。例えば図3に示すように、漏斗部材15は、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部16と円錐部の下端に接続した直管部17とからなる。この構成により、吸入管11と漏斗部材15の隙間19から流出部17cを通じて水分を排出することができる。
【0020】
図3に示すように、吸入管11の上端部11aは、外部側方に突出して形成され、漏斗部材15の直管部17の上部17aは、管内部方向に突出して形成されることが好ましい。隙間19を狭く設定することにより、油脂分の粘性により、隙間19から油脂分の流出を防ぐことができる。上端部11aの外側面11a2と直管部17の上部17aの突出面17a1で形成される隙間19は、食品へドロの種類にもよるが通常0.1〜0.2mm程度であることが好ましい。
【0021】
前記直管部下端には、吸入管に対してスライド可能に漏斗部材の昇降を案内するガイド部が突出して形成されていることが好ましい。例えば図3に示す漏斗部材15の直管部下端には、吸入管11に対してスライド可能に漏斗部材15の昇降を案内するガイド部17bが突出して形成されている。このため、漏斗部材15を吸入管11に対して傾斜することなく昇降させることができ、円錐部16に汲み上げた油脂分の流出を防ぐことができる。
【0022】
前記「昇降手段」は、前記漏斗部材を排液中に沈んだ状態から、前記油脂分を吸入管に回収するまでの状態を往復移動させる手段であれば特に限定はなく、手動式、電動式を問わない。
昇降手段は、前記漏斗部材の上端に架橋してなる支持部材と、該支持部材に固定された第1ロッドと、該第1ロッドの上端に接続した第2ロッドと、該第2ロッドをクランク軸を介して回転駆動するモーターと、からなり、前記第1ロッドの上端に設けた第1軸孔が、前記第2ロッドの下端に設けた軸で軸支され、該第2ロッド上端に設けた第2軸孔が、前記クランク軸で軸支され、前記第1軸孔又は第2軸孔のいずれか一方は、上下方向に幅の広い長孔であることが好ましい。
【0023】
例えば、図1(1)に示す昇降手段40は、漏斗部材15の上端に架橋してなる支持部材41と、支持部材に固定された第1ロッド42と、第1ロッド42の上端に接続した第2ロッド43と、第2ロッド43をクランクシャフト44を介して回転駆動するモーター45と、からなり、第1ロッド42の上端に設けた第1軸孔42hが、第2ロッド43の下端に設けた軸43pで軸支され、第2ロッド上端に設けた第2軸孔43hが、クランクシャフト44の先端軸44pで軸支され、第2軸孔43hが、上下方向に幅の広い長孔である。この昇降手段40では、第2軸孔43hを長孔としているが、第1軸孔42hを長孔としてもよい。
このように、第1軸孔又は第2軸孔のいずれか一方が長孔であることにより、図2(5)の状態から(6)の状態にクランクシャフト44が回転しても、支持部材41が吸入管11の上端部11aの先端に当接した状態を一時維持することができる。こうすることで、排液が漏斗部材へ流入する際、漏斗部材近傍の排液の変動を抑制し、油脂分の回収効率を高めることができる。
【0024】
(動作)
油水分離手段の動作について以下、説明する。油水分離手段の動作は、食品へドロ排液の貯留された排液槽の上層部の油脂分及び水分を回収する第1工程と、水分を除去する第2工程と、油脂分を回収する第3工程と、を備えている。図1及び図2を参照しながら、具体的に説明する。
【0025】
モーター45の回転により、図1(1)、(2)、(3)、図2(4)、(5)、(6)の順へと進んで1サイクルを構成する。図2(6)の状態が図1(1)の状態と同一である。
(第1工程)
図1(1)及び図4に示すように、吸入管11の上端に支持部材41が当接するまで、漏斗部材15を排液中に浸漬する。そうすると、排液槽の上層部の油脂分51と油脂分51の下層にある水分52とが同時に漏斗部材15内に流入する。
【0026】
(第2工程)
図1(2)及び図5に示すように、モーター45の回転により、漏斗部材15が上昇すると、油脂分51より比重の大きな水分52が漏斗部材15と吸入管11の隙間より排出され、流出部17cから流出する。
水分52の排出と共に、漏斗部材15が上昇して、漏斗部材15と吸入管11の隙間が更に狭くなる。図3に示すように、隙間19が上端部11aの外側面11a2と直管部17の上部17aの突出面17a1で形成される位置まで漏斗部材15が上昇すると、その隙間からは、油脂分の粘性のため、油脂分はほとんど流出することがない。この隙間19は0.1〜0.2mmであることが好ましい。
発明者の実験では、突出面17a1の内径36.0mm、外側面11a2の外径35.8mm(すなわち、隙間は0.1mm)としたところ、油脂分がほとんど流出しないことを確認した。
【0027】
(第3工程)
図1(3)及び図6に示すように、漏斗部材15の円錐部上と吸入管の上端部上に蓄えられた油脂分は、漏斗部材15の上昇に伴い、円錐部傾斜面によって送出されて、吸入管11の内部に回収される。
図2(4)に示すように、漏斗部材円錐部の傾斜面と、吸入管上端部の傾斜面が、水平方向に対して略同一角度に傾斜している場合には、これらの傾斜面同士が面一となることにより、残った油脂分51をより確実に吸入管内部に回収することができる。
【0028】
第3工程後、図2(5)に示すように、モーターの回転により、再び漏斗部材15を支持部材41の下端が吸入管11aの上端部に当接するまで下降させる。こうすることで、再び排液を漏斗部材に流入させることができる。更にモーターを回転させても、図2(6)に示すように、長孔43hの効果により、支持部材41の下端が吸入管11aの上端部に当接したままである。長孔43hの作用効果については前述の通りであるためその説明を省略する。
【0029】
前記「昇降手段」は、前記の実施例以外にも、例えば、支持部材41に鎖状のチェーンを取付け、そのチェーンをクランクシャフト44にて昇降するようにすることも可能である。チェーンの弛みにより、クランクシャフト44が回転しても、支持部材41が吸入管11の上端部11aの先端に当接した状態を一時維持することができる。この方法によれば、前記の実施例のように長孔を用いた構成にする必要がなく、部品の簡素化を図ることができる。
このように、昇降手段はこれらの他にも種々の構成があり、これらの実施例に限定されるものではない。
またチェーンを利用することで、漏斗部材15の下方にガイド部材を備え、漏斗部材の下端がガイド部材の上面に当接する方法をとることで、支持部材41が吸入管11の上端部11aの先端に当接する方法によらなくても、漏斗部材の一時停止を図ることができる。
このように、漏斗部材を一時停止させる手段は、同様の効果を有すれば、前記の方法に限定されず、他にも種々の方法を採用することができる。
【0030】
図4〜図7に示すように、漏斗部材15の昇降を案内する円柱状のガイド部材95が備えられていることが好ましい。こうすることで、漏斗部材15が揺動することなく、昇降することができる。
ガイド部材は、これらの図に示されたものに限定されず、漏斗部材15の昇降を案内する機能を有すれば、種々の手段を採用することができる。
【0031】
前記「浮遊物除去手段」は、油水分離手段の下流側に設けて該油脂分から浮遊物を除去して高純度油を回収する手段である。
前記「浮遊物」とは、主として、排液の上層部に浮遊している固形分であるが、水分、油分等の液体及びこれらの混合物を含有しているものも含む。例えば、レストランから排出される天かすが一例として挙げられる。
浮遊物除去手段は、浮遊物が除去できれば特に限定はないが、例えば、図9に示すように、浮遊物除去フィルター21と、浮遊物除去フィルター21の下流側に設けられているシリンダーポンプ25と、からなるものとすることができる。
シリンダーポンプ25は、浮遊物除去フィルター21の下流側に設けられていることが好ましく、こうすることで、シリンダーポンプ25内に浮遊物等の固形分の流入を回避でき、ポンプの稼動に支障をきたすことがなくなる。
【0032】
浮遊物除去フィルター21は、網目状の濾過材を備えていて、濾過をする作用をすることによって浮遊物が除去できれば材質は特に限定はなく、濾過材の目の粗さも排液の種類に応じて種々のものを選択することができる。
【0033】
シリンダーポンプ25は、吸入管11(図1参照。)に排出された油脂分を、吸入管11に接続する油脂分回収パイプ92を通じて吸引する。そして、浮遊物除去フィルター21による浮遊物51bの除去を促進すると共に、高純度油51aを回収するまでの流れを形成する役割を果たす。
シリンダーポンプ25は、モーター26により駆動され、シリンダ25a内に設け往復移動するピストン25cによって吸入、排出を繰り返すことで吸入した排液を送出する構造のポンプである。すなわち、吸入するときは、吸入弁25a1が開き、送出するときは、吸入弁25a1を閉じ、排出弁25b1を開いて、排液を送出することができる。
シリンダーポンプによれば、エアーを吸い込んでも、エアーの吸入による送液トラブルがないという特長を有している。
シリンダーポンプ25は常時稼動していてもよいが、吸入管11内に油脂分がある程度溜る毎に間歇的に稼動することもできる。
【0034】
前記シリンダーポンプの下流側に、更に、前記高純度油を回収する回収槽を設け、該回収層は、仕切り板で区画された複数の槽からなり、高純度油を区画された槽の上流側から下流側にオーバーフローさせるように構成され、順次オーバーフローして最下流側に設けた槽において更に純度の高い高純度油を回収することが好ましい。
例えば図9に示すように、シリンダーポンプ25の下流側に、更に、高純度油を回収する回収槽70を設け、回収槽70は、仕切り板で区画された仕切り板で区画された槽71、72からなる。高純度油51aを区画された槽71から下流側の槽72にオーバーフローさせるように構成され、槽72から更にオーバーフローさせて、回収管78を介して、回収タンク73に更に純度の高い高純度油を回収することができる。
一方、槽71の下層に溜まった比重の大きな水分は、水分回収槽74へ導いてオーバーフローさせ、水分回収管75を介して外部へ排出することができる。
【0035】
[2]食品へドロ回収装置
本発明の食品へドロ回収装置は、排液槽内の食品ヘドロを含有する排液から固形分を回収すると共に、高純度油を回収する食品へドロ回収装置であって、
前記排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプと前記沈殿ヘドロ含有排液中の沈殿物を除去する沈殿物除去フィルターとを有することにより該沈殿ヘドロ含有排液から該沈殿物を除去する沈殿物回収手段と、前記高純度油回収手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】
前記「排液槽」については、上記[1]の高純度油回収手段における内容がそのまま適用されるため、その説明は省略する。
前記「固形分」は、食品へドロ含有排液全体における固形分であり、排液の液面近傍の油脂分中の浮遊物及び、排液底部近傍の沈殿ヘドロ中の沈殿物の両方を含む。
例えば図9に示す浮遊物51b及び沈殿物53bが固形分であり、この固形分は、いずれも不燃物として回収して処理することができる。
前記「沈殿物回収手段」は、例えば図9に示すように、排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプ35と、沈殿ヘドロ含有排液から沈殿物を除去する沈殿物除去フィルター31とを有する。
【0037】
また、前記「シリンダーポンプ35」は、「シリンダーポンプ25」とその構成、及び作用効果は同様であるため、その説明を省略する。
図9に示すように、シリンダーポンプ35は、沈殿物除去フィルター31の下流側に設けられていることが好ましい。こうすることで、沈殿物除去フィルター31によって、沈殿物の除去された高純度油が、シリンダーポンプ35内に固形分が流入するのを回避でき、ポンプの稼動に支障をきたすのを防ぐことができる。
前記「高純度油回収手段」は、[1]の高純度油回収手段と構成及び作用効果は同様であるため、その説明は省略する。
【0038】
(動作)
本発明の食品へドロ回収装置の動作について、以下具体的に説明する。
沈殿物回収手段は、例えば図8に示すように、排液槽80のうちの第1槽80aの底部近傍に沈殿する沈殿へドロ53を含有する沈殿ヘドロ含有排液を沈殿ヘドロ回収管91を通じて吸引し、その後、図9に示すように、沈殿物除去タンク30内の沈殿物除去フィルター31により沈殿物53bを濾過する。そして、排液としての水分53aを、ピストンポンプ35を介して、排出管38を通して外部へ排出する。
また、高純度油回収手段により、排液槽80の液面近傍の油脂分から高純度油を回収することができる。高純度油回収手段の動作については、前述の通りであるため、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の高純度油回収手段及びこれを備える食品へドロ回収装置は、レストラン、ファーストフード店等の外食産業の分野における排液処理の技術の分野において好適に用いられる。
【符号の説明】
【0040】
1;食品へドロ回収装置、10;油水分離手段、11;吸入管、11a;上端部、11a1;上端部上面、15;漏斗部材、16;円錐部、16a;傾斜面、17;直管部、17a;直管部の上部、17b;ガイド部、17c;流出部、19;隙間、21;浮遊物除去フィルター、25、35;シリンダーポンプ、31;沈殿物除去フィルター、
40;昇降手段、41;支持部材、42;第1ロッド、42h;第2軸孔、43;第2ロッド、43p;軸、44;クランクシャフト、44p;先端軸、45;モーター、50;排液、51;油脂分、51a;高純度油、51b;浮遊物、53b;沈殿物、70;回収槽、80;排液槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品へドロを含有する排液を貯留する排液槽と、該排液槽中に設けられ前記排液から油脂分を分離する油水分離手段と、該油水分離手段の下流側に設けて該油脂分から浮遊物を除去して高純度油を回収する浮遊物除去手段と、を備える高純度油回収手段であって、
前記油水分離手段は、液面に垂直に立設した吸入管と、前記吸入管に緩挿され、上方に向かって拡径した漏斗状の円錐部と該円錐部の下端に接続した直管部とからなる漏斗部材と、前記漏斗部材を上下方向に昇降可能とする昇降手段と、を備え、
前記円錐部の内部を排液で満たした前記漏斗部材を、前記昇降手段により上昇させることにより、前記直管部の内面と前記吸入管外面とで形成される隙間から、該直管部下端に設けた流出部を通じて前記排液中の水分を排出した後、更に前記漏斗部材を上昇させることにより、前記吸入管の内部に前記排液中の油脂分を回収することを特徴とする高純度油回収手段。
【請求項2】
前記吸入管の吸入口の上端部上面は、上方に向かって拡開した傾斜面を形成し、該傾斜面と、前記漏斗部材の円錐部の傾斜面が、水平方向に対して略同一角度に傾斜している請求項1に記載の高純度油回収手段。
【請求項3】
前記上端部は、外部側方に突出して形成され、前記直管部の上部は、管内部方向に突出して形成されることにより、前記隙間から油脂分の流出を防ぐ請求項2に記載の高純度油回収手段。
【請求項4】
前記直管部下端には、前記吸入管に対してスライド可能に前記漏斗部材の昇降を案内するガイド部が突出して形成されている請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
【請求項5】
前記昇降手段は、前記漏斗部材の上端に架橋してなる支持部材と、該支持部材に固定された第1ロッドと、該第1ロッドの上端に接続した第2ロッドと、該第2ロッドをクランクシャフトを介して回転駆動するモーターと、からなり、
前記第1ロッドの上端に設けた第1軸孔が、前記第2ロッドの下端に設けた軸で軸支され、該第2ロッド上端に設けた第2軸孔が、前記クランクシャフトの先端軸で軸支され、
前記第1軸孔又は第2軸孔のいずれか一方は、上下方向に幅の広い長孔である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
【請求項6】
前記浮遊物除去手段は、浮遊物除去フィルターと、該浮遊物除去フィルターの下流側に設けられているシリンダーポンプと、からなる請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段。
【請求項7】
前記シリンダーポンプの下流側に、更に、前記高純度油を回収する回収槽を設け、該回収層は、仕切り板で区画された複数の槽からなり、高純度油を区画された槽の上流側から下流側にオーバーフローさせるように構成され、順次オーバーフローして最下流側に設けた槽において更に純度の高い高純度油を回収する請求項6に記載の高純度油回収手段。
【請求項8】
排液槽内の食品ヘドロを含有する排液から固形分を回収すると共に、高純度油を回収する食品へドロ回収装置であって、
前記排液槽内底部近傍の沈殿ヘドロ含有排液を輸送するシリンダーポンプと前記沈殿ヘドロ含有排液中の沈殿物を除去する沈殿物除去フィルターとを有することにより該沈殿ヘドロ含有排液から該沈殿物を除去する沈殿物回収手段と、請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の高純度油回収手段と、を備えたことを特徴とする食品へドロ回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−121017(P2011−121017A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282454(P2009−282454)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(597142549)興進工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】