説明

高膨張泡消火装置

【課題】個室提供型の小規模施設に適した消火装置を提供する。
【解決手段】出入り口に開閉手段Dを有する防護領域Bに設けられ、該防護領域Bの火災を検出すると火災信号を出力する火災検出手段2と、泡水溶液が内部に封入された泡水溶液供給手段3と、前記防護領域Bの上部に前記泡水溶液供給手段3と一体に設けられると共に、前記泡水溶液供給手段3から泡水溶液が供給される放射ノズル4aを内部に有し、高膨張の泡を生成して外部に放出する発泡機4と、前記火災検出手段2からの火災信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段3に泡水溶液の供給を開始させる制御手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高膨張の泡を放出して消火をする高膨張泡消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
個室ビデオ店や漫画喫茶等の個室型店舗或いはグループホーム等の小規模福祉施設では、個室が各利用者に提供されている。近年、このような個室提供型の小規模施設で発生する火災が増えている。
【0003】
前記のような個室提供型の小規模施設の場合、施設全体としては小規模であるため、一般に、設備費用が高額となるスプリンクラ設備等の消火設備は設けられていない。
【0004】
そこで、前記のような個室提供型の小規模施設に対しては、スプリンクラ消火設備よりは設備費用が小額で済むパッケージ型消火装置を設けることが考えられる。
【0005】
パッケージ型消火装置には、水又は強化液等の消火剤が封入された消火剤容器が箱の中に収納されて、必要な装備がパッケージ化されており、前記のようにスプリンクラ消火設備を設置するよりは設備費用が小額で済むものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−299918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このようなパッケージ型消火装置は、スプリンクラ消火設備と同等の消火能力を有するものとするために、消火剤容器として容量80リットル程度の大きなものを用いており、消火剤充填後の設備本体全体の大きさや質量は相当大きなものとなる(前記特許文献1参照)。
【0008】
個室ビデオ店、漫画喫茶等の個室型店舗は雑居ビルの一室を改築して店舗として利用していることが多く、又、グループホーム等の小規模福祉施設は一般住宅を改築して施設として利用していることが多い。このため、これら個室提供型の小規模施設に前記のような従来のパッケージ型消火装置を設ける場合、その設置スペースがなかったり、床等の耐荷重が不足するということが多々あり得る。
【0009】
従って、従来のパッケージ型消火装置は、前記の個室提供型の小規模施設に適しているとはいえない。
【0010】
この発明は、前記の事情に鑑み、個室提供型の小規模施設に適した消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、出入り口に開閉手段を有する防護領域に設けられ、該防護領域の火災を検出すると火災信号を出力する火災検出手段と、泡水溶液が内部に封入された泡水溶液供給手段と、前記防護領域の上部に前記泡水溶液供給手段と一体に設けられると共に、前記泡水溶液供給手段から泡水溶液が供給される放射ノズルを内部に有し、高膨張の泡を生成して外部に放出する発泡機と、前記火災検出手段からの火災信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させる制御手段とを設けたことを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【0012】
又、この発明は、前記制御手段は、前記火災検出手段からの火災信号を受信すると所定時間のカウントをするカウント手段を備え、該カウント手段が所定時間のカウントを終了後、前記火災検出手段からの火災信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させることを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【0013】
又、この発明は、前記火災検出手段が火災を検出すると、前記開閉手段に出入り口を閉鎖させる閉鎖手段を設けたことを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【0014】
又、この発明は、手動により前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させる手動起動手段を前記防護領域の外側に更に設け、前記制御手段は、前記カウント手段がカウントする所定時間中に前記手動起動手段が操作されると、前記閉鎖手段は前記開閉手段によって出入り口を閉鎖させることを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【0015】
又、この発明は、前記開閉手段は、前記開閉手段の開動作を検出すると前記制御手段に開信号を送信し、前記開閉手段の閉動作を検出すると前記制御手段に閉信号を送信する開閉動作検出手段を備え、前記制御手段は、前記カウント手段がカウントする所定時間中に前記開閉動作検出手段から開信号を受信した後に閉信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させることを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【0016】
又、この発明は、前記閉鎖手段によって前記開閉手段が出入り口を閉鎖する際、前記開閉手段が閉鎖すると共に、避難を促す旨を警報する警報手段を更に設けたことを特徴とする高膨張泡消火装置である。
【発明の効果】
【0017】
この発明は、発泡倍率の高い高膨張泡で防護領域を埋め尽くすことによって窒息消火をするものである。より詳細に述べると、高膨張泡を放出することで、防護領域に対して少量の泡水溶液で消火に必要な程度の量の泡を放出することができ、窒息消火が行えるので、泡水溶液供給手段中に封入する泡水溶液の量を少なくすることができる。これにより、装置全体を小さくすることができると共に、軽くすることができる。
【0018】
従って、この発明は、消火に必要な構成を一体にして小さく形成できるので、個室提供型の小規模施設に適した消火装置を提供することができる。
【0019】
又、この発明は、所定時間をカウントし、それと火災信号のアンド条件で泡水溶液の供給を開始させるようにしたので、利用者が避難する時間を確保することができ、又、火災判断の確実性を向上させることができる。
【0020】
又、この発明は、火災信号により開閉手段に出入り口を閉鎖させるようにしたので、防護領域内に放出される高膨張泡が出入り口から漏れるのを防ぐことができる。
【0021】
又、この発明は、手動操作により開閉手段に出入り口を閉鎖させるようにしたので、防護領域内に放出される高膨張泡が出入り口から漏れるのを防ぐことができる。
【0022】
又、この発明は、所定時間のカウント中に開閉手段により出入り口が開放され、その後開閉手段により出入り口が閉鎖されたら、泡水溶液の供給を開始させるようにした。これにより、防護領域内にいた利用者が開閉手段を開き、防護領域から避難したと判断できる。このため、利用者が避難した後即座に防護領域に高膨張泡を放出することができ、即座に泡を放出しても利用者が避難するのを妨げない。
【0023】
又、この発明は、閉鎖手段によって開閉手段が出入り口を閉鎖する際に、開閉手段が閉鎖すると共に、利用者に避難を促す旨を警報させるようにしたので、利用者に防護領域からの避難を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の高膨張泡消火装置の装置構成の一例を示すと共に、防護領域に対する配置の一例を(a)が平面視で、(b)が側面視で、(c)が正面視でそれぞれ示した図である。
【図2】同上の高膨張泡消火装置のブロック図である。
【図3】同上の高膨張泡消火装置の動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を図1乃至3に基づいて説明する。
【0026】
先ず、図1に基づき、この発明の一実施形態である高膨張泡消火装置1の構成例及び防護領域への配置例について説明する。尚、個室提供型の施設、例えば、個室ビデオ店では1〜2畳程の個室ブースが利用者に提供されているが、図1は、そのような個室ビデオ店の個室ブースBを防護領域として高膨張泡消火装置1を設置する場合の例を示したものである。
【0027】
防護領域である個室ブースBは、利用者が個室ブースB内に出入りするための出入り口が備えられており、この出入り口には、開閉手段である扉Dを有している。
【0028】
高膨張泡消火装置1は、火災検出手段を構成し、防護領域である個室ブースB内の火災を検出すると火災信号を出力する火災感知器2と、泡水溶液供給手段を構成し、泡水溶液が内部に封入された泡水溶液容器3を有している。さらに泡水溶液容器3は、封板3c(常時は封止状態にあるが、火災時、即ち泡水溶液の供給時には供給される泡水溶液の圧力によって封止を解除するようになっている。泡水溶液容器3は後記するように横置きされるものであり、この封板3cがあることで泡水溶液の漏出を防ぐことが可能となる。)を介して配管P1により放射ノズル4aと接続されている。さらに高膨張泡消火装置1は、泡水溶液容器3から供給される泡水溶液を放射する放射ノズル4aを本体4d内部に有し、放射ノズル4aから放射される泡水溶液を本体4dの後端に設けた空気導入口4cから取り込んだ空気と一緒に当てることで高膨張の泡を生成して外部に放出する発泡網4bを、本体4dの先端に備えた発泡機4を有している。また、高膨張泡消火装置1は、泡水溶液容器3と共に泡水溶液供給手段を構成し、電動弁3bを介して配管P2により泡水溶液容器3と接続され、泡水溶液容器3から放射ノズル4aに泡水溶液を圧送供給させるために、泡水溶液容器3に加圧ガスを供給する加圧ガス容器3aを備えている。さらに高膨張泡消火装置1は、制御手段を構成し、火災感知器2と信号線L1により接続されると共に、電動弁3bと信号線L2により接続された制御盤5を備えている。この制御盤5は、火災感知器2からの火災信号を受信すると、電動弁3bを開放し、泡水溶液の供給を開始させるものである。特に、本実施例の高膨張泡消火装置1は、泡水溶液供給手段および発泡機4が筐体6(図示の便宜上一点鎖線で示してある。)によって一体にパッケージ化され、個室ブースBの入り口上部に設けられたものとなっている。
【0029】
尚、高膨張泡消火装置1において、火災感知器2としては各種火災感知器を用いることができる。例えばスポット型の火災感知器を用いてもよいことは勿論であるが、防護領域によっては光電式分離型の火災感知器を用いてもよい。一般に、個室ビデオ店の個室ブースBは、図1に示したように、上方が天井Rまで仕切られており、側方だけでなく上方も閉鎖された防護領域となっている。そのような防護領域に本願高膨張泡消火装置1の火災感知器2を設ける場合は、火災感知器2を一般のスポット型の火災感知器としても、火災が発生した防護領域に限定して装置を起動させることができる。しかしながら、漫画喫茶の個室ブースBの中には、側方の間仕切り壁が天井までは仕切られておらず、防護領域の上方が開放された防護領域となっており、その上方の開放部分を通じて防護領域間で煙が流通する防護領域となっている場合がある。そのような防護領域に本願高膨張泡消火装置1の火災感知器2を設ける場合に、火災感知器2を一般的なスポット型の火災感知器とした場合について考える。このようなスポット型の火災感知器を、監視対象とする個室ブースBの直上の天井面にそれぞれ設置すると、火災が発生した防護領域以外の防護領域、即ち、火災が発生していない個室ブースBの直上の天井に設けた火災感知器2も起動する可能性がある。つまり、隣の防護領域で火災が起こっているにもかかわらず、上方の開口から火災が起こっていない防護領域の上方に煙が流れてしまう。そのため、火災が起こっていない防護領域の火災感知器2が火災信号を出力することで、火災が起きていない防護領域の高膨張泡消火装置1が起動してしまう虞がある。そこで、漫画喫茶の個室ブースのように上方が開放された防護領域に高膨張泡消火装置1を設ける場合は、火災感知器2を光電式分離型の火災感知器とし、投光部及び受光部を各防護領域の壁面上端部に対向する位置に設け、各防護領域の開口のみを横断する位置に監視範囲がくるように配置する。これにより、間仕切り壁等によって上方が開放された漫画喫茶の個室ブースのような防護領域でも、火災が発生した防護領域を検出できるので、火災が発生した防護領域に限定して高膨張泡消火装置1が起動するようにできる。
【0030】
高膨張泡消火装置1は、前記のように構成され、火災発生時には、火災感知器2の火災検出に基づき、電動弁3bを開放し、加圧ガス容器3aから泡水溶液容器3にガスを供給する。ガスによって内圧が高まると、泡水溶液容器3から泡水溶液が圧送され、この泡水溶液の勢いによって封板3cを破ることで放射ノズル4aから泡水溶液が放射される。放射ノズル4aから放射された泡水溶液は、発泡機4に設けられた発泡網4dに当てることで高膨張泡を放出する。そして、発泡機4から個室ブースB内に高膨張泡を放出し、その高膨張泡により火源を覆いつつ、個室ブースB内を火災の消火に必要な程度埋め尽くして火災の窒息消火をすることができるようになっている。尚、高膨張泡消火装置1から放出する高膨張泡の発泡倍率としては、80〜1000倍程度(1000倍を超えるものとしてもよい。)の範囲で適宜選択することができるが、例えば、700倍程度の発泡倍率が好ましいと考えられる。
【0031】
ここで、高膨張泡消火装置1は、前記の通り、発泡倍率の高い高膨張泡で消火をするものであり、少量の泡水溶液でも個室ブースBで発生する火災の消火に必要な程度の量の泡を放出することができるものとなっている。即ち、高膨張泡消火装置1は、泡水溶液容器3に封入する泡水溶液の量を少なくすることができるので、泡水溶液容器3もその容量を小さなものとして、小さく、且つ軽いものとすることができる。従って、自己完結のパッケージタイプのものではあるが、装置全体を小さく、且つ軽くすることができるものとなっている。
【0032】
よって、高膨張泡消火装置1は、個室ブースBのような個室提供型の小規模施設で利用者に提供される個室、例えば、その個室の大きさとしては、1〜8m程度、好ましくは2〜4m程度、より好ましくは2m程度の広さのものに設置するのに適したものとなっている。
【0033】
そして、前記のように構成された高膨張泡消火装置1は、個室ブースBの上部に配置されたものとなっており、具体的には、個室ブースBの出入り口の開閉手段を構成する扉Dのある壁Wの最上部、即ち天井Rの直下に配置されたものとなっている。この配置位置については、勿論、適宜変更することができる。
【0034】
尚、高膨張泡消火装置1は、前記の通り、筐体6によって一体にパッケージ化されたものとなっている。具体的には、筐体6内において、泡水溶液容器3、加圧ガス容器3a、発泡機4の何れもが横向きに配置されたものとなっており、装置全体の高さが高くならないようになっている。又、高膨張泡消火装置1のパッケージ中、制御盤5は、筐体6内には収容されておらず、個室ブースBの正面出入り口のある壁Wの外側に設けられており、制御盤5は個室ブースBの外側から操作可能なものとなっている。更に、高膨張泡消火装置1において、発泡機4は、先端側の発泡網4bを筐体6より個室ブースBの室内側に露出させている。また、発泡機4の後端側に設けられた空気導入口4cは、個室ブースBの壁Wに形成した開口WAを介して個室ブースBの室外側に露出するように設けられている。これにより発泡機4は火災時に空気導入口4cから個室ブースBの室外の煙をほとんど含んでいない空気を吸引しつつ、放射ノズル4aから泡水溶液を放射して、発泡網4bに衝突させて発泡させ、高膨張泡として個室ブースBの室内に放出することができるようになっている。
【0035】
次に、図2は、高膨張泡消火装置1において、制御手段(制御盤5)によって制御される制御系の概要について、それをブロック図として示したものである。尚、図2は、前記で図1に基づいて説明した構成に加え、開閉動作検出手段と、手動起動手段と、警報手段と、カウント手段をさらに備えている。
【0036】
開閉動作検出手段は、防護領域の出入り口の開閉手段(扉D)の開閉動作を検出するものであり、例えば扉Dのフック部分に設けられたスイッチによって構成されている。スイッチは信号線を介して制御盤5と接続され、扉Dが閉じている時、つまりスイッチが押下された状態である閉動作を検出すると、制御盤5に閉信号を送信する。さらにスイッチは扉Dが開いている時、つまりスイッチが押下されていない状態である開動作を検出すると、制御盤5に開信号を送信するものである。
【0037】
手動起動手段は、防護領域の外側(例えば制御盤5)に設けられたスイッチによって構成され、利用者等がスイッチを手動操作することで、手動により泡水溶液供給手段(泡水溶液容器3、加圧ガス容器3a及び電動弁3b等)に泡水溶液の供給を開始させるものである。
【0038】
警報手段は、個室ブースB内に向けて避難警報を発するスピーカーによって構成され、筐体6の側面または底面に設けられる。警報手段は火災感知器2が火災信号を検出し、制御手段(制御盤5)によって後述する閉鎖手段に閉信号が送信される際に、制御手段(制御盤5)によって利用者に扉Dが自動で閉鎖される旨及び、避難を促す旨の警報を出力する。
【0039】
カウント手段は、制御手段(制御盤5)に設けられ、所定時間をカウントし、カウントが終了するとカウント信号を制御手段(制御盤5)の受信手段に出力する。
【0040】
又、図2に示した例において、開閉手段は自動閉鎖可能なものとなっており、開閉手段の自動閉鎖を制御する閉鎖手段を含むものとなっている。
【0041】
図2に示したように、制御手段(制御盤5)には、火災検出手段(火災感知器2)と、手動起動手段と、警報手段と、泡水溶液供給手段(具体的には電動弁3b)と、開閉手段(扉D)と、開閉動作検出手段とが接続されている。そして、制御手段において、受信手段は、火災検出手段(火災感知器2)からの火災信号と、手動起動手段からの起動信号と、開閉動作検出手段からの開閉手段の開動作に基づく開信号及び閉動作に基づく閉信号と、カウント手段からのカウント信号を受信する。さらに送信手段は、泡水溶液供給手段への供給開始信号(電動弁3bへの開放信号)と、開閉手段(扉D)への閉鎖信号と、警報手段への警報発報信号とを送信するようになっている。
【0042】
最後に、図3の動作フロー図に基づいて、高膨張泡消火装置1の火災時の動作について説明する。
【0043】
平常時の待機状態からスタートし(SS)、火災が発生して、火災検出手段(火災感知器2)がその火災を検出すると、火災検出手段(火災感知器2)は火災信号を制御手段(制御盤5)の受信手段に送信する。制御手段(制御盤5)の受信手段が火災信号を受信すると(S1)、制御手段(制御盤5)はカウント手段に所定時間のカウントを開始させ(S2)、カウント手段が所定時間カウントし、カウント信号を出力したかどうかを制御手段(制御盤5)が判断する(S3)。
【0044】
制御手段(制御盤5)は、カウント手段が所定時間をカウントしている間に、手動起動手段からの起動信号の有無または、出入り口の開閉手段(扉D)の開閉動作検出手段による開動作の開信号、及びその後の閉動作の閉信号の有無を判断している(S4)。
【0045】
所定時間のカウント中に、その何れかがあった場合には、泡水溶液供給手段(電動弁3b)に供給開始信号を送信する。これにより、防護領域内にいた利用者が開閉手段を開き、防護領域から避難したと判断できる。このため、利用者が避難した後即座に防護領域に高膨張泡を放出することができ、即座に泡を放出しても利用者が避難するのを妨げない。その後、電動弁3bを開放し、直ちに泡水溶液供給手段(泡水溶液容器3、加圧ガス容器3a及び電動弁3b)に泡水溶液の供給を開始させ(S8)、発泡機4から高膨張泡を放出させて消火を開始させるようになっている。一方、このステップ(S3)において起動信号又は開閉信号が検出されることなく所定時間のカウントが終了したら、カウント手段はカウント信号を制御手段(制御盤5)の受信手段に送信する(S5)。制御手段(制御盤5)はカウント手段からカウント信号を受信したら、火災検出手段(火災感知器2)からの火災信号の受信の有無を再度判断する(S6)。火災信号の受信が引き続きあった場合、制御手段(制御盤2)は、その送信手段から開閉手段(扉D)の閉鎖手段に閉鎖信号を送信する。さらに、利用者に扉Dが自動で閉鎖される旨及び、避難を促す旨の警報を警報手段から出力させる警報発報信号を送信した上で(S7)、泡水溶液供給手段(電動弁3b)に供給開始信号を送信する。これにより、利用者が避難する時間を確保すると共に、防護領域内に放出される高膨張泡が出入り口から漏れるのを防ぐことができる。そして、ステップ(S4)経由と同様、泡水溶液供給手段(泡水溶液容器3、加圧ガス容器3a及び電動弁3b)に泡水溶液の供給を開始させ(S8)、発泡機4から高膨張泡を放出させて消火を開始させる。その後、所定の泡水溶液の供給を終えたら、処理を終了させる(SE)。尚、ステップ(S6)で火災信号の受信の有無を判断して、火災信号の受信がなかった場合は、誤報又は消火が行われたものと判断し、その段階で処理を終了させるようになっている(SE)。
【0046】
なお、警報手段は利用者に扉Dが自動で閉鎖される旨及び、避難を促す旨の警報を行うものとしたが、例えば利用者に扉Dの閉鎖を促す旨の警報を行うものとすることで、利用者に開閉手段を閉鎖してから避難させるようにしても良い。これにより、高膨張泡が防護領域から漏れ出すのを防止できると共に、別途閉鎖手段を設ける必要が無くなるという効果を奏する。
【0047】
また、発泡機4の後端側に設けられた空気導入口4cは、開口WAを介して個室ブースBの室外側に露出するように設けられているが、発泡機4の一部に開口を設けて、個室ブースB内の空気を取り込むようにしても良い。これにより、個室ブースBの壁面に開口を設ける必要が無くなるので、取付が容易になるという効果を奏する。
【0048】
また、開口WAにファンを設け、強制的に空気を供給するようにしても良い。これにより、アスピレート式の発泡機4と比較して、発泡機本体の長さを短くすることができるので、筐体6をより小さくできるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1:高膨張泡消火装置 2:火災感知器 3:泡水溶液容器
3a:加圧ガス容器 3b:電動弁 3c:封板 4:発泡機
4a:放射ノズル 4b:発泡網 4c:空気導入口 4d:本体
5:制御盤 6:筐体 B:個室ブース L1,L2:信号線
P1,P2:配管 W:壁 WA:開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口に開閉手段を有する防護領域に設けられ、該防護領域の火災を検出すると火災信号を出力する火災検出手段と、
泡水溶液が内部に封入された泡水溶液供給手段と、
前記防護領域の上部に前記泡水溶液供給手段と一体に設けられると共に、前記泡水溶液供給手段から泡水溶液が供給される放射ノズルを内部に有し、高膨張の泡を生成して外部に放出する発泡機と、
前記火災検出手段からの火災信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させる制御手段とを設けたことを特徴とする高膨張泡消火装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記火災検出手段からの火災信号を受信すると所定時間のカウントをするカウント手段を備え、該カウント手段が所定時間のカウントを終了後、前記火災検出手段からの火災信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させることを特徴とする請求項1記載の高膨張泡消火装置。
【請求項3】
前記火災検出手段が火災を検出すると、前記開閉手段に出入り口を閉鎖させる閉鎖手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の高膨張泡消火装置。
【請求項4】
手動により前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させる手動起動手段を前記防護領域の外側に更に設け、前記制御手段は、前記カウント手段がカウントする所定時間中に前記手動起動手段が操作されると、前記閉鎖手段は前記開閉手段によって出入り口を閉鎖させることを特徴とする請求項2又は3記載の高膨張泡消火装置。
【請求項5】
前記開閉手段は、前記開閉手段の開動作を検出すると前記制御手段に開信号を送信し、前記開閉手段の閉動作を検出すると前記制御手段に閉信号を送信する開閉動作検出手段を備え、前記制御手段は、前記カウント手段がカウントする所定時間中に前記開閉動作検出手段から開信号を受信した後に閉信号を受信すると、前記泡水溶液供給手段に泡水溶液の供給を開始させることを特徴とする請求項2乃至4何れか記載の高膨張泡消火装置。
【請求項6】
前記閉鎖手段によって前記開閉手段が出入り口を閉鎖する際、前記開閉手段が閉鎖すると共に、避難を促す旨を警報する警報手段を更に設けたことを特徴とする請求項2乃至5何れか記載の高膨張泡消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−200522(P2012−200522A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70142(P2011−70142)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】