説明

高輝度放電ランプおよび電球

【課題】 外管バルブやバルブに塗布される拡散膜による全光束の低下を抑制すると共に、眩しさを軽減することを妨げず、更に、キラキラとした煌きを呈する高輝度放電ランプまたは電球を提供する。
【解決手段】 この高輝度放電ランプは、発光管1と、発光管1を収容する外管バルブ2と、外管バルブ2内面に設けられた光を拡散する蛍光体膜3(3−1)とを備える。蛍光体膜3−1は蛍光体膜3−1の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部3−2を蛍光体膜3−1中に分散して備える。膜脱落部3−2の面積は3平方ミリメートル以下であることが好ましい。また、膜脱落部3−2の総面積は蛍光体膜3−1の面積の3%〜20%であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煌きを呈する高輝度放電ランプおよび電球に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧ナトリウムランプ等の高輝度放電ランプあるいは電球においては、使用時の眩しさ軽減のために外管バルブあるいはバルブに拡散材を塗布した拡散形が広く用いられている。また、高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等の高輝度放電ランプでは、眩しさ軽減と共に光色改善の為に蛍光体を塗布した拡散形が広く用いられている。ここで、蛍光体も拡散材の一つであり、本明細書では、その塗布膜すなわち蛍光体膜も拡散膜として表現する。
【0003】
この種の拡散膜(蛍光体膜を含む)は拡散作用をなす一方、発光管またはフィラメントから放射された光の一部を吸収する結果、透明外管バルブ仕様のランプと比較すると5%程度および透明バルブ仕様の電球では1%程度の全光束の低下をもたらす。この拡散膜の膜厚を薄くし、透過率を上げると全光束の低下は減少することとなるが、眩しさ軽減の効果も薄らいでしまうことから、経験的に上記仕様が広く用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、外管バルブやバルブに塗布される拡散膜による全光束の低下を抑制すると共に、眩しさを軽減することを妨げず、更に、キラキラとした煌きを呈する高輝度放電ランプまたは電球を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、発光管と、前記発光管を収容する外管バルブと、前記外管バルブ内面に設けられた光を拡散する拡散膜とを備えた高輝度放電ランプであって、前記拡散膜が前記拡散膜の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を前記拡散膜中に分散して備える高輝度放電ランプにより達成される。ここで、1/2以下の厚さには膜厚ゼロすなわち膜なしの場合を含む。前記膜脱落部の面積は3平方ミリメートル以下であることが好ましい。また、前記膜脱落部の総面積は前記拡散膜の面積の3%〜20%であることが好ましい。
【0006】
また、上記目的は、バルブと、前記バルブ内面に設けられた光を拡散する拡散膜とを備えた電球であって、前記拡散膜が前記拡散膜の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を前記拡散膜中に分散して備える電球により達成される。ここで、1/2以下の厚さには膜厚ゼロすなわち膜なしの場合を含む。前記膜脱落部の面積は0.2平方ミリメートル以下であることが好ましい。また、前記膜脱落部の総面積は前記拡散膜の面積の3%〜20%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外管バルブやバルブに塗布される拡散膜による全光束の低下を抑制すると共に、眩しさを軽減することを妨げず、更に、キラキラとした煌きを呈する高輝度放電ランプまたは電球を得ることができる。すなわち、本発明に係る拡散膜を設けることにより、メタルハライドランプ等の高輝度放電ランプのランプ効率を2%程度高めることが可能となり、また、電球の全光束をクリアランプとほぼ等しくすることができ、同時に、眩しさは軽減され、かつ煌き感をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る高輝度放電ランプの一実施例を示す構成図である。本実施例では、高輝度放電ランプとして、始動器内蔵形の低電圧始動形セラミックメタルハライドランプを示す。同図は内部が分かるように一部切欠き図としている。
【0009】
図1に示すように、セラミック発光管1は、硬質ガラスからなる外管バルブ2の内部にステム5を介して気密に封止され、支持棒を兼ねたリード線4a、4bにより保持されている。外管バルブ2の球状部2aの内面には蛍光体膜(拡散膜)3が塗布されている。口金6は外管バルブ2のネック部2bに機械的にかしめ固定され、リード線と電気的に接続されている。グロー管7、電流制限用抵抗8、バイメタル(図示せず)からなる始動器10はリード線4a、4bに電気的に接続され、固定されている。反射板9は、例えば白色セラミック板からなり、外管バルブの球状部2aとネック部2bとの境界部分に配置され、反射板9に設けた穴を貫通するリード線4a、4bに固定される。電流制限用抵抗8の一部は、反射板9に設けた穴を通じて、ランプ中心部に伸びている。これにより、外管バルブの球状部2aと反射板9とで概略球状を形成する。外管バルブ2の内部には窒素ガスが約二分の一気圧に減圧され封入されている。セラミック発光管1の内部には、始動ガスとして約15kPaのアルゴンガスと、バッファガスとして水銀50mg、発光金属としてナトリウム、タリウム、ディスプロシウムのヨウ化物が適量封入されている。セラミック発光管1の外部には、近接導体11が設けられている。
【0010】
このように、本実施例に係る高輝度放電ランプは、発光管1と、発光管1を収容する外管バルブ2と、外管バルブ内面に設けられた光を拡散する拡散膜(蛍光体膜3)とを備え、図1には図示しないが、さらに蛍光体膜3は蛍光体膜3の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を蛍光体膜3中に分散して備える。ここで、1/2以下の厚さには膜厚ゼロすなわち膜なしの場合を含む。この膜脱落部について図2を用いて詳述する。
【0011】
図2は、図1の実施例における蛍光体膜の部分拡大図である。図2において、3−1は平均粒径3マイクロメートルの蛍光体が1〜2層塗布されている蛍光体膜である。蛍光体膜3−1は、例えば3μm〜6μmの膜厚を有する。3−2は蛍光体膜の膜厚を薄くした円形の膜脱落部であり、その直径は1mmであり、3mm角の中に2ケ(端部を含めると5ケ)設けた。この場合、膜脱落部3−2の総面積の蛍光体膜3−1に対する割合は約17%である。本実施例では、蛍光体膜3−1を一様に塗布した後に、例えば特開2004−311039号公報に記載された方法により、レーザー光を用いて膜脱落部3−2を形成している。なお、膜脱落部3−2は円形に限らず、各種の形状で構成することができる。
【0012】
ここで、膜脱落部3−2の膜厚は蛍光体膜の膜厚の1/2以下であり、ゼロ(蛍光体膜がない状態)でもよい。膜脱落部3−2の膜厚が蛍光体膜3−1の膜厚の1/2を超えると煌き効果が期待できないからである。また、膜脱落部3−2の面積は3平方ミリメートル以下であることが好ましい。この高輝度放電ランプを8mの距離から視力1.2の人が見た場合、膜脱落部3−2の面積が3平方ミリメートルのとき、膜脱落部3−2を識別できる限界となるからである。すなわち、その面積が3平方ミリメートルを超えると、膜脱落部3−2を識別できることとなり、眩しさの軽減が十分とならない。また、膜脱落部3−2の総面積は蛍光体膜3の面積の3%〜20%であることが好ましい。これは、膜脱落部3−2の総面積が蛍光体膜3の面積の3%を下回ると、全光束の現象を防止する効果が少なく、また、煌きも感じられないからである。逆に、上記20%を超えると、ランプ内部が透けて見え、眩しさを軽減する効果が十分でなくなり、好ましくないからである。
【0013】
本実施例のランプを定格電力270W、周囲温度25℃、ベースアップの状態で裸点灯したところ、ランプ効率は105ルーメン/ワットであった。また、本実施例では、複数の膜脱落部3−2の存在によりランプがキラキラとした煌きを呈したが、眩しさは感じないものであった。一方、比較例として、蛍光体膜3−1に膜脱落部3−2を設けない仕様とし、他は同仕様のランプを同条件で点灯したところ、103ルーメン/ワットであった。また、比較例では、膜脱落部3−2がないのでランプにキラキラとした煌きはない。すなわち、本実施例では比較例と比べ、ランプ効率が2%程度向上し、眩しさは軽減されており、かつ煌き感を呈することができた。
【0014】
図3は、本発明に係る電球の一実施例を示す構成図である。本実施例では、電球として、60W形電球を示す。同図は内部が分かるように一部切欠き図としている。図3に示すように、本電球では、フィラメント12がバルブ13内に気密に封じられている。バルブ13の内表面にはシリカ微粒子からなる拡散膜14が塗布されている。
【0015】
このように、本実施例に係る電球は、バルブ13と、バルブ13内面に設けられた光を拡散する拡散膜14とを備え、図3には図示しないが、さらに拡散膜14は拡散膜14の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を拡散膜14中に分散して備える。ここで、1/2以下の厚さには膜厚ゼロすなわち膜なしの場合を含む。この膜脱落部について図4を用いて詳述する。
【0016】
図4は、図3の実施例における拡散膜の部分拡大図である。同図において、14−1は平均粒径15ナノメートルのシリカが1本当たり30mg塗布されている拡散膜である。拡散膜14−1は、例えば50μm〜100μmの膜厚を有する。14−2は拡散膜の膜厚を薄くした円形の膜脱落部であり、その直径は0.5mmであり、2.8mm角の中に2ケ(端部を含めると5ケ)設けた。この場合、膜脱落部14−2の総面積の拡散膜14−1に対する割合は約5%である。本実施例では、上記高輝度放電ランプの場合と同様に、拡散膜14−1を一様に静電塗布した後に、特開2004−311039号公報に記載された方法により、レーザー光を用い、この脱落した部分を形成している。なお、膜脱落部14−2は円形に限らず、各種の形状で構成することができる。
【0017】
ここで、膜脱落部14−2の膜厚は拡散膜14−1の膜厚の1/2以下であり、ゼロ(拡散膜がない状態)でもよい。膜脱落部14−2の膜厚が蛍光体膜の膜厚の1/2を超えると煌き効果が期待できないからである。また、膜脱落部14−2の面積は0.2平方ミリメートル以下であることが好ましい。この電球を2mの距離から視力1.2の人が見た場合、膜脱落部14−2の面積が0.2平方ミリメートルのとき、膜脱落部14−2を識別できる限界となるからである。すなわち、その面積が0.2平方ミリメートルを超えると、膜脱落部14−2を識別できることとなり、眩しさの軽減が十分とならない。また、膜脱落部14−2の総面積は拡散膜14−1の面積の3%〜20%であることが好ましい。これは、膜脱落部14−2の総面積が拡散膜14−1の面積の3%を下回ると、全光束の現象を防止する効果が少なく、また、煌きも感じられないからである。逆に、上記20%を超えると、ランプ内部が透けて見え、眩しさを軽減する効果が十分でなくなり、好ましくないからである。
【0018】
本実施例の電球を定格電力54Wで点灯したところ全光束は812ルーメンであった。また、本実施例では、複数の膜脱落部14−2の存在により電球がキラキラとした煌きを呈したが、眩しさは感じないものであった。一方、比較例として、拡散膜に局部的に薄い部分を設けない仕様とし、他は同仕様の電球を同条件で点灯したところ、808ルーメンであった。また、比較例では、膜脱落部14−2がないので電球にキラキラとした煌きはない。すなわち、本実施例では比較例と比べ、7ルーメン(約0.5%)光束が上昇したが、眩しさは軽減されており、また同時に、煌き感を呈することができた。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、煌きを呈する高輝度放電ランプおよび電球に関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る高輝度放電ランプの一実施例を示す構成図である。
【図2】図1の実施例における蛍光体膜の部分拡大図である。
【図3】本発明に係る電球の一実施例を示す構成図である。
【図4】図3の実施例における拡散膜の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0021】
1 セラミック発光管、2 外管バルブ、3 蛍光体膜、3−1 蛍光体膜、3−2 膜脱落部、4a リード線、4b リード線、5 ステム、6 口金、7 グロー管、8 電流制限用抵抗、9 反射板、12 フィラメント、13 電球のバルブ、14 拡散膜、14−1 拡散膜、14−2 膜脱落部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管と、前記発光管を収容する外管バルブと、前記外管バルブ内面に設けられた光を拡散する拡散膜とを備えた高輝度放電ランプであって、前記拡散膜が前記拡散膜の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を前記拡散膜中に分散して備えることを特徴とする高輝度放電ランプ。
【請求項2】
前記膜脱落部の面積が3平方ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1記載の高輝度放電ランプ。
【請求項3】
前記膜脱落部の総面積が前記拡散膜の面積の3%〜20%であることを特徴とする請求項1または2記載の高輝度放電ランプ。
【請求項4】
バルブと、前記バルブ内面に設けられた光を拡散する拡散膜とを備えた電球であって、前記拡散膜が前記拡散膜の膜厚の1/2以下の厚さを有する複数の膜脱落部を前記拡散膜中に分散して備えることを特徴とする電球。
【請求項5】
前記膜脱落部の面積が0.2平方ミリメートル以下であることを特徴とする請求項4記載の電球。
【請求項6】
前記膜脱落部の総面積が前記拡散膜の面積の3%〜20%であることを特徴とする請求項4または5記載の電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−98120(P2008−98120A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282054(P2006−282054)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000005474)日立ライティング株式会社 (130)
【Fターム(参考)】