説明

高速液体クロマトグラフ

【課題】試料に疎水性成分と親水性成分というような疎水性又は極性の大きく異なる成分が混在している場合でもそれらの成分をそれぞれ捕捉して分離分析を行なうことができる高速液体クロマトグラフを提供する。
【解決手段】試料注入部を備えた試料搬送流路、第1トラップカラムを有する第1捕捉流路、第1トラップカラムとは異なる捕捉特性をもつ第2トラップカラムを有する第2捕捉流路、及びそれらの流路の接続を切り換える流路切換機構が設けられている。流路切換機構は分析の工程に応じたモードの流路構成にすることができる。試料注入部から注入された試料を捕捉するための試料捕捉モードでは、試料搬送流路の下流側に第1捕捉流路と第2捕捉流路とが直列に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料注入部から注入された試料をトラップカラムに捕捉し、トラップカラムに捕捉した試料を分析カラムに導いて分離分析を行なう方式の高速液体クロマトグラフに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5に従来の一般的な高速液体クロマトグラフの一例を示す。
この高速液体クロマトグラフは、試料搬送流路64、捕捉流路66、ドレイン流路72、溶媒送液流路80、分析流路82を備え、各流路が6方バルブ(流路切換機構)70のポートに接続されている。
【0003】
試料搬送流路64は送液ポンプ76及び試料注入部78を備え、試料注入部78から注入された試料を移動相74とともに搬送する流路であり、下流端が6方バルブ70の1つのポートに接続されている。6方バルブ70の試料搬送流路64が接続されているポートの隣接ポートの1つは、ドレイン流路72が接続されたドレインポートとなっている。
捕捉流路66は試料搬送流路64によって搬送される試料を捕捉するためのトラップカラム68を備えた流路であり、一端が6方バルブ70の試料搬送流路64が接続されているポートの隣接ポートの1つに接続され、他端がドレインポートの隣接ポートに接続されている。
【0004】
溶媒送液流路80は、2種類の移動相84a,84bからなる溶媒を送液するための流路であり、上流部に移動相84a,84bを送液するための送液ポンプ86a,86bを備えた2本の流路を備え、その合流部にミキサ88が設けられている。溶媒送液流路80の下流端は、6方バルブ70の捕捉流路66が接続されたポートの隣接ポートの1つに接続されている。
【0005】
分析流路82は、試料を成分ごとに分離する分析カラム90及び分離された各成分を検出するための検出器92を備えた流路であり、上流端が6方バルブ70の捕捉流路66が接続されたポートの隣接ポートの1つに接続されている。
デガッサ75は移動相74,84a,84b中の気泡を取り除くためにポンプ76,86a,86bの上流側に配置されている。
【0006】
上記の流路接続により、6方バルブ70の切換えで2つのモードに切り換えることができる。1つのモードは、試料搬送流路64を捕捉流路66の一端に接続し、捕捉流路66の他端をドレイン流路72に接続した試料捕捉モードである。もう1つのモードは、溶媒送液流路80を捕捉流路66の一端に接続し、捕捉流路66の他端を分析流路82に接続した分析モードである。
【0007】
分析時は、まず、試料捕捉モードにして、送液ポンプ76を駆動させて移動相74を試料搬送流路64内で流しながら試料注入部78から試料を注入することで、移動相によって試料を捕捉流路66へ搬送し、トラップカラム68で試料成分を捕捉する。トラップカラム68で試料成分を捕捉した後、分析モードに切り換えて溶媒送液流路80から捕捉流路66へ溶媒を送液することにより、トラップカラム68に捕捉されていた試料成分を溶出させて分析流路82へ導き、分析カラム90で成分ごとに分離して各成分を検出器92によって検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4093201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図5の高速液体クロマトグラフでは、試料注入部78から注入された試料に例えば疎水性成分と親水性成分とが混在している場合、例えば移動相74を水系の移動相、トラップカラム68を逆相モード用のカラムとすると、疎水性成分はトラップカラム68に捕捉されるが、親水性成分は逆相モード用のトラップカラム68には捕捉されにくいためにトラップカラム68を通過し、ドレイン流路72を介して移動相74とともに排出されてしまう。したがって、図5に示される構成の高速液体クロマトグラフでは、例えば試料に疎水性成分と親水性成分とが混在しているときに、それらの成分全てを捕捉して分析することができなかった。
【0010】
そこで、本発明は、試料に疎水性成分と親水性成分というような疎水性や極性の大きく異なる成分が混在している場合でもそれらの成分をそれぞれ捕捉して分離分析を行なうことができる高速液体クロマトグラフを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、試料注入部及び試料注入部から注入された試料を搬送するための移動相を送液する移動相送液部を有し、試料注入部から注入された試料を移動相によって搬送するための試料搬送流路と、第1トラップカラムを有し、試料搬送流路の下流側で試料注入部から注入された試料中の成分を捕捉するための第1捕捉流路と、第1トラップカラムとは捕捉特性の異なる第2トラップカラムを有し、試料注入部から注入された試料のうち第1トラップカラムで捕捉されずに通過した試料成分を第1捕捉流路の下流側で捕捉するための第2捕捉流路と、第1トラップカラムに捕捉された試料成分を溶出させるための溶媒を送液する第1溶媒送液部と、第1トラップカラムに捕捉された試料成分を分離するための第1分析カラム及び第1分析カラムで分離された各成分を検出するための検出器を有する第1分析流路と、第2トラップカラムに捕捉された試料成分を溶出させるための溶媒を送液する第2溶媒送液部と、第2トラップカラムに捕捉された試料成分を分離するための第2分析カラム及び第2分析カラムで分離された各成分を検出するための検出器を有する第2分析流路と、第1捕捉流路の上流側に試料搬送流路を接続すると同時に第1捕捉流路の下流側に第2補足流路を接続する試料捕捉モード、第1捕捉流路の上流側に第1溶媒送液部を接続すると同時に第1捕捉流路の下流側に第1分析流路を接続する第1分析モード、及び第2捕捉流路の上流側に第2溶媒送液部を接続すると同時に第2捕捉流路の下流側に第2分析流路を接続する第2分析モードのいずれか1つのモードに互いに異なるタイミングで切り換えることができる流路切換機構と、を備えた高速液体クロマトグラフである。
【0012】
上記の高速液体クロマトグラフでは、試料捕捉モードにおいて互いに捕捉特性の異なる第1トラップカラムと第2トラップカラムとが直列に接続されているので、第1トラップカラムで捕捉されない試料成分を第2トラップカラムで捕捉することができる。
【0013】
なお、従来から複数のトラップカラムを備えた高速液体クロマトグラフは存在する(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1の高速液体クロマトグラフは、切換バルブを介して並列に接続された2つのトラップカラムを備え、注入された試料を分析カラムによって成分ごとに分離し(一次元目分析)、分離された成分ごとにトラップカラムで捕捉して濃縮し、それらの試料成分を順次、分析カラムでさらに分離して検出を行なう(二次元目分析)ものである。このような高速液体クロマトグラフは、1種類の分析カラムによって分離される試料成分を捕捉することを前提としているため、同じ捕捉特性のトラップカラムを並列に接続されており、これらのトラップカラムで捕捉されない成分はやはりトラップカラムを通過して排出されてしまう。このように、従来の高速液体クロマトグラフは試料中の疎水性成分と親水性成分というような疎水性又は極性の大きく異なる両方の成分を分析することは想定していないため、本発明のように捕捉特性の異なるトラップカラムを直列に接続したものは存在しない。
【0014】
本発明の高速液体クロマトグラフにおいては、第1分析流路の検出器と第2分析流路の検出器は共通の1つの検出器であり、流路切換機構は第1分析カラム及び第2分析カラムと検出器の間にあっていずれかの分析カラムを検出器に接続するように切り換える切換機構を含んでいることが好ましい。そうすれば、第1トラップカラムに捕捉された試料成分を分離分析する工程と第2トラップカラムに捕捉された試料成分を分離分析する工程において1つの検出器を兼用することができるため、第1分析流路と第2分析流路のそれぞれに検出器を設ける場合よりも装置のコストが低減され、装置の大きさを小さくなる。
【0015】
好ましい実施例は、第1トラップカラムと第2トラップカラムは一方が順相カラム、他方が逆相カラムであり、第1捕捉流路と第2捕捉流路の間には第2トラップカラムでの保持力を高めるための溶媒を供給する希釈液供給流路が接続されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる高速液体クロマトグラフは、流路切換機構によって試料捕捉モード、第1分析モード、第2分析モードのいずれかに切り換えられるように構成されており、試料捕捉モードでは試料搬送流路の下流側に、第1トラップカラムを有する第1捕捉流路と第1トラップカラムとは捕捉特性の異なる第2トラップカラムを有する第2捕捉流路とが直列に接続されるので、第1トラップカラムに捕捉されない試料成分を第2トラップカラムで捕捉することができる。そして、第1トラップカラムに捕捉された試料成分は第1分析モードで、第2トラップカラムに捕捉された試料成分は第2分析モードでそれぞれ分離分析されるので、試料に混在する疎水性成分と親水性成分というような疎水性又は極性の大きく異なる両方の成分を分離分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施例の高速液体クロマトグラフを示す流路構成図である。
【図2】同実施例における試料捕捉モードを示す流路構成図である。
【図3】同実施例における第1分析モードを示す流路構成図である。
【図4】同実施例における第2分析モードを示す流路構成図である。
【図5】従来の高速液体クロマトグラフの一例を示す流路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、高速液体クロマトグラフの一実施例について説明する。図1は一実施例を示す流路構成図である。
この実施例の高速液体クロマトグラフは、3つの6方バルブ28,30,32が切り換えられることにより、各分析工程に応じた流路が構成される。
【0019】
6方バルブ28の1つのポートに試料搬送流路2の下流端が接続され、そのポートに隣接するポートの一方に第1捕捉流路4の一端、他方にバルブ間接続流路6の一端が接続され、さらにバルブ間接続流路6の一端が接続されているポートに隣接するポートに第1捕捉流路4の他端が接続されている。6方バルブ28の残りの2つのポートには、それぞれ第1溶媒送液流路12の下流端と第1試料分離流路14の上流端が接続されている。
【0020】
6方バルブ28は、試料搬送流路2と第1捕捉流路4の一端とを接続すると同時に第1捕捉流路4の他端とバルブ間接続流路6の一端とを接続した状態と、第1溶媒送液流路12と第1捕捉流路4の一端とを接続すると同時に第1捕捉流路4の他端と第1試料分離流路14とを接続した状態のいずれかの状態に切り換えることができる。
【0021】
6方バルブ30のバルブ間接続流路6の他端が接続されているポートに隣接するポートの一方はドレインへ繋がるドレイン流路22が接続されており、他方のポートには第2捕捉流路8の一端が接続されている。第2捕捉流路8の他端はドレイン流路22が接続されたポートに隣接するポートに接続されている。6方バルブ30の残りの2つのポートには、それぞれ第2溶媒送液流路16の下流端と第2試料分離流路18の上流端が接続されている。
【0022】
6方バルブ30は、バルブ間接続流路6の他端と第2捕捉流路8の一端とを接続すると同時に第2捕捉流路8の他端とドレイン流路22とを接続した状態と、第2溶媒送液流路16と第2捕捉流路8の他端を接続すると同時に第2捕捉流路8の一端と第2試料分離流路18とを接続した状態のいずれかの状態に切り換えることができる。
【0023】
6方バルブ32の1つのポートに検出流路20が接続され、そのポートに隣接する2つのポートに第1試料分離流路14の下流端、第2試料分離流路18の下流端がそれぞれ接続されている。6方バルブ32の第1試料分離流路14の下流端が接続されているポートに隣接するポートにはドレイン流路24が接続され、第2試料分離流路18の下流端が接続されているポートに隣接するポートにはドレイン流路26が接続されている。これらのドレインポート24,26の間のポートにはいずれの流路も接続されていない。
【0024】
6方バルブ32は、第1試料分離流路14と検出流路20とを接続すると同時に第2試料分離流路18とドレイン流路26とを接続した状態と、第2試料分離流路18と検出流路20とを接続すると同時に第1試料分離流路14とドレイン流路24とを接続した状態のいずれかの状態に切り換えることができる。
【0025】
試料搬送流路2は送液ポンプ36及び試料注入部38を備え、送液ポンプ36によって移動相34を送液することにより試料注入部38から注入された試料を搬送する流路である。この実施例においては、移動相34は水系の移動相、例えば純水又はリン酸バッファ液などの緩衝溶媒である。
第1捕捉流路4は第1トラップカラム40を備え、第2捕捉流路8は第2トラップカラム42を備えている。第1トラップカラム40としては、例えばODS(オクタデシルシリカ)カラムのほか、シリカゲルを基材としてこれをTMS(トリメチルシリル基)やC4(ブチル基)、C8(オクチル基)などの官能基で修飾した充填剤を充填したカラムなどの逆相カラムが挙げられる。第2トラップカラム42としては、例えばシリカゲルなどの充填剤が充填された順相カラムが挙げられる。なお、移動相34が有機溶媒系の移動相である場合には、上記の場合とは逆に、第1トラップカラム40が順相カラムとなり、第2トラップカラム42が逆相カラムとなる。
【0026】
バルブ間接続流路6には希釈液送液流路10が合流している。希釈液送液流路10は送液ポンプ44を備え、希釈液33を収容する容器から希釈液33を送液する。希釈液33は水系の移動相34を有機溶媒系にするための有機溶媒リッチな移動相、例えばアセトニトリル溶液である。
【0027】
第1溶媒送液流路12は、送液ポンプ48a,48bによって移動相46a,46bを汲み上げるための2本の流路を上流側に有し、それらの流路の合流部に移動相46a,46bを混合して溶媒とするミキサ50を備えている。移動相46a,46bは例えば水とアセトニトリルなどの有機溶媒である。
【0028】
第2溶媒送液流路16は、送液ポンプ56a,56bによって移動相54a,54bを汲み上げるための2本の流路を上流側に有し、それらの流路の合流部に移動相54a,54bを混合して溶媒とするミキサ58を備えている。移動相54a,54bは例えばアセトニトリルなどの有機溶媒と水である。
【0029】
第1試料分離流路14は第1分析カラム52を備え、第2試料分離流路18は第2分析カラム60を備えている。第1分析カラム52は例えばODSカラムや、シリカゲルを基材としてこれをTMS、C4、C8等の官能基で修飾した充填剤が充填されたカラムなどの逆相系カラムである。第2分析カラム60は例えばDIOL(ジオール)基などが修飾されたカラムやシリカゲルなどのHILIC(Hydrophilic Interaction Chromatography:親水性相互作用クロマトグラフィ)系カラムである。
希釈液33、各移動相34,46a,46b,54a及び54bを送液するための流路上には、各液から気泡などを取り除くためのデガッサ35が設けられている。
【0030】
以上の構成により、6方バルブ28,30,32を所定のポジションにすることで、試料捕捉モード、第1分析モード及び第2分析モードのいずれかのモードに切り換えることができる。試料捕捉モードで試料注入部38から注入された試料をトラップカラム40,42で捕捉する工程(試料捕捉工程)が行われ、第1分析モードで第1トラップカラム40に捕捉された試料の分離分析を行なう工程(第1分析工程)が行われ、第2分析モードで第2トラップカラム42に捕捉された試料の分離分析を行なう工程(第2分析工程)が行なわれる。この高速液体クロマトグラフでは、試料注入部38から注入された試料ごとに、これら3工程が試料捕捉工程−第1分析工程−第2分析工程の順に行なわれる。
【0031】
試料捕捉モードは、図2に示されているように、上流側から順に、試料搬送流路2−第1捕捉流路4−バルブ間接続流路6−第2捕捉流路8−ドレイン流路22が接続されるモードである。
第1分析モードは、図3に示されているように、上流側から順に、第1溶媒送液流路12−第1捕捉流路4−第1試料分離流路14−検出流路20が接続されるモードである。直列に接続された第1試料分離流路14と検出流路20は第1トラップカラム40に捕捉された試料成分を分析するための第1分析流路を構成する。
第2分析モードは、図4に示されているように、上流側から順に、第2溶媒送液流路16−第2捕捉流路8−第2試料分離流路18−検出流路20が接続されるモードである。直列に接続された第2試料分離流路18と検出流路20は第2トラップカラム42に捕捉された試料成分を分析するための第2分析流路を構成する。
【0032】
試料捕捉工程では、図2において太線で示されているように、6方バルブ28,30及び32によって流路構成が試料捕捉モードに切り換えられ、送液ポンプ36,44によって移動相34及び希釈液33が供給される。試料注入部38から注入された試料は移動相34によって第1トラップカラム40に導かれて捕捉される。試料中の親水性成分は逆相カラムである第1トラップカラム40には捕捉されず、移動相34とともに第1トラップカラム40を通過する。第1トラップカラム40を通過した親水性成分は、バルブ間接続流路6を通って第2トラップカラム42に導かれる。バルブ間接続流路6には送液ポンプ44によって希釈液33が送液されており、親水性成分を含む移動相34が希釈液33によって希釈され、第1トラップカラム40に捕捉されなかった親水性成分が順相カラムである第2トラップカラム42に捕捉される。
【0033】
試料捕捉工程終了後に第1分析工程が行なわれる。第1分析工程では、図3において太線で示されているように、6方バルブ28,30及び32によって流路構成が第1分析モードに切り換えられ、送液ポンプ48a,48bによって移動相46a,46bがミキサ50へ送液され、ミキサ50からの混合液が溶媒として第1トラップカラム40を通過する。溶媒が第1トラップカラム40を通過することにより、第1トラップカラム40に捕捉されていた試料成分が溶出し、第1分析カラム52に導かれて成分ごとに分離された後、検出器62に導かれて検出される。このとき、第2トラップカラム42は捕捉した成分を保持した状態で維持される。また、第2分析カラム60には送液ポンプ56a,56bにより移動相54a,54bの混合液が導入されており、分析前のコンディショニングが行なわれている。
【0034】
第1分析工程終了後に第2分析工程が行なわれる。第2分析工程では、図4において太線で示されているように、6方バルブ28,30及び32によって流路構成が第2分析モードに切り換えられ、送液ポンプ56a,56bによって移動相54a,54bがミキサ58へ送液され、ミキサ58からの混合液が溶媒として第2トラップカラム42を通過する。溶媒が第2トラップカラム42を通過することにより、第2トラップカラム42に捕捉されていた試料成分が溶出し、第2分析カラム60に導かれて成分ごとに分離された後、検出器62に導かれて検出される。このとき、第1分析カラム52には送液ポンプ48a,48bにより移動相46a,46bが導入され、次の試料に対する第1分析カラム52のコンディショニングが行なわれている。
【0035】
以上のように、この高速液体クロマトグラフは、試料捕捉モードにおいて互いに捕捉特性の異なる2つのトラップカラム40と42が直列に接続され、一方のトラップカラムでは捕捉できない成分を他方のトラップカラムで捕捉することができるので、試料中に含まれる成分が分析されずに排出されることを防止できる。2つのトラップカラム40,42で捕捉した試料成分はそれぞれ第1分析モード、第2分析モードで分離分析することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 試料搬送流路
4 第1捕捉流路
6 バルブ間接続流路
8 第2捕捉流路
10 希釈液送液流路
12 第1溶媒送液流路
14 第1試料分離流路
16 第2溶媒送液流路
18 第2試料分離流路
20 検出流路
22,24,26 ドレイン流路
28,30,32 6方バルブ
33,34,46a,46b,54a,54b 移動相
35 デガッサ
36,44,48a,48b,56a,56b 送液ポンプ
38 試料注入部
40,42 トラップカラム
50,58 ミキサ
52,60 分析カラム
62 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料注入部及び試料注入部から注入された試料を搬送するための移動相を送液する移動相送液部を有し、試料注入部から注入された試料を移動相によって搬送するための試料搬送流路と、
第1トラップカラムを有し、試料搬送流路の下流側で試料注入部から注入された試料中の成分を捕捉するための第1捕捉流路と、
第1トラップカラムとは捕捉特性の異なる第2トラップカラムを有し、試料注入部から注入された試料のうち第1トラップカラムで捕捉されずに通過した試料成分を第1捕捉流路の下流側で捕捉するための第2捕捉流路と、
前記第1トラップカラムに捕捉された試料成分を溶出させるための溶媒を送液する第1溶媒送液部と、
前記第1トラップカラムに捕捉された試料成分を分離するための第1分析カラム及び第1分析カラムで分離された各成分を検出するための検出器を有する第1分析流路と、
前記第2トラップカラムに捕捉された試料成分を溶出させるための溶媒を送液する第2溶媒送液部と、
前記第2トラップカラムに捕捉された試料成分を分離するための第2分析カラム及び第2分析カラムで分離された各成分を検出するための検出器を有する第2分析流路と、
第1捕捉流路の上流側に試料搬送流路を接続すると同時に第1捕捉流路の下流側に第2補足流路を接続する試料捕捉モード、第1捕捉流路の上流側に第1溶媒送液部を接続すると同時に第1捕捉流路の下流側に第1分析流路を接続する第1分析モード、及び第2捕捉流路の上流側に第2溶媒送液部を接続すると同時に第2捕捉流路の下流側に第2分析流路を接続する第2分析モードのいずれか1つのモードに互いに異なるタイミングで切り換えることができる流路切換機構と、を備えた高速液体クロマトグラフ。
【請求項2】
第1分析流路の検出器と第2分析流路の検出器は共通の1つの検出器であり、前記流路切換機構は第1分析カラム及び第2分析カラムと前記検出器の間にあっていずれかの分析カラムを前記検出器に接続するように切り換える切換機構を含んでいる請求項1に記載の高速液体クロマトグラフ。
【請求項3】
第1トラップカラムと第2トラップカラムは一方が順相カラム、他方が逆相カラムであり、第1捕捉流路と第2捕捉流路の間には第2トラップカラムでの保持力を高めるための溶媒を供給する希釈液供給流路が接続されている請求項1又は2に記載の高速液体クロマトグラフ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−276358(P2010−276358A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126453(P2009−126453)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)