説明

高電圧センサー及び除電器チェッカー

【課題】所定の高電圧が発生していることを簡便に検出することができる高電圧センサーを提供する。
【解決手段】液晶材料を挟んで対向配置される第1の基板と第2の基板とを有し、第1の基板には第1の画素電極と第2の画素電極とが形成され、第2の基板には対向電極が形成された液晶表示部と、液晶表示部の対向電極に接続された集電アンテナと、液晶表示部の第1の画素電極に接続された接地端子と、液晶表示部の第2の画素電極と接地端子との間に設けられた抵抗素子と、液晶表示部の対向電極と接地端子とを短絡させるスイッチとを有する。第1の画素電極の変化と第2の画素電極の変化との時間により、集電アンテナに高電圧が印加されたことを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧センサー及び除電器チェッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
作業所等で静電気に帯電した被除電物の帯電を除去するために、高電圧を発生させて、それにより発生した電荷を、風力により被除電物へと送り、被除電物の帯電を除去する除電器が知られている。
【0003】
また、別の方法として、被除電物の帯電を除去するために、放電電極と接地電極間に高電圧を印加してコロナ放電させて、空気をイオン化し、これを風力等で被除電物に吹き付けて除電する除電器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−59363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、いずれの除電器も高電圧を発生させて除電するものであるが、除電器から所定の高電圧が発生しているか否か、すなわち、被除電物を除電しているか否かは、別途テスター等を用意して電圧を測定する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、所定の高電圧が発生していることを簡便に検出することができる高電圧センサーを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、除電器が正常に動作しているか否かを簡便にチェックすることができる除電器チェッカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による高電圧センサーは、液晶材料を挟んで対向配置される第1の基板と第2の基板とを有し、前記第1の基板には第1の画素電極と第2の画素電極とが形成され、前記第2の基板には対向電極が形成された液晶表示部と、前記液晶表示部の前記対向電極に接続された集電アンテナと、前記液晶表示部の前記第1の画素電極に接続された接地端子と、前記液晶表示部の前記第2の画素電極と前記接地端子との間に設けられた抵抗素子と、前記液晶表示部の前記対向電極と前記接地端子とを短絡させるスイッチとを有し、前記集電アンテナに高電圧が印加されたことを検出することを特徴とする。
【0009】
上述した高電圧センサーにおいて、前記抵抗素子は、1MΩ〜1TΩの範囲の抵抗値を有するようにしてもよい。
【0010】
本発明の一態様による除電器チェッカーは、上述した高電圧センサーを有し、前記高電圧センサーの前記集電アンテナを除電器に対向させ、前記除電器から所定の高電圧が発生していることを検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の通り、本発明によれば、液晶材料を挟んで対向配置される第1の基板と第2の基板とを有し、前記第1の基板には第1の画素電極と第2の画素電極とが形成され、前記第2の基板には対向電極が形成された液晶表示部と、前記液晶表示部の前記対向電極に接続された集電アンテナと、前記液晶表示部の前記第1の画素電極に接続された接地端子と、前記液晶表示部の前記第2の画素電極と前記接地端子との間に設けられた抵抗素子と、前記液晶表示部の前記対向電極と前記接地端子とを短絡させるスイッチとを有し、前記集電アンテナに高電圧が印加されたことを検出するようにしたので、所定の高電圧が発生していることを簡便に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による高電圧センサーを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による高電圧センサーによる高電圧の検出方法の説明図(その1)である。
【図3】本発明の一実施形態による高電圧センサーによる高電圧の検出方法の説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[一実施形態]
本発明の一実施形態による高電圧センサーについて図面を用いて説明する。図1は本実施形態の高電圧センサーの構成を示す図であり、図2及び図3は本発明の一実施形態による高電圧センサーによる高電圧の検出方法の説明図である。
【0014】
高電圧センサー10には、図1(a)に示すように、高電圧を検出するための集電アンテナ12と、高電圧が印加されたか否かを表示するための液晶表示部14と、抵抗素子16と、短絡するためのスイッチ18とが設けられている。
【0015】
液晶表示部14では、図1(b)に示すように、液晶材料20を挟んで第1のガラス基板22と第2のガラス基板24とが対向配置されている。第1のガラス基板22には全面に対向電極26が形成されている。第2のガラス基板22には、第1の画素電極28と第2の画素電極30とが形成されている。
【0016】
液晶表示部14の対向電極26の端部26aは、集電アンテナ12に接続されている。第2のガラス基板22に形成された第1の画素電極28の端部28aは、直接に接地端子32に接続されている。第1のガラス基板22に形成された第1の画素電極28の端部28aは、抵抗素子16を介して接地端子32に接続されている。
【0017】
液晶表示部14において、対向電極26と第1の画素電極28間に所定の電位が印加されると、対向電極26と第1の画素電極28間の領域の液晶材料20が配向して不透明となり、第1の画素電極28の領域が黒色に変化する。
【0018】
同様に、対向電極26と第2の画素電極30間に所定の電位が印加されると、対向電極26と第2の画素電極30間の領域の液晶材料20が配向して不透明となり、第2の画素電極28の領域が黒色に変化する。
【0019】
液晶表示部14の対向電極26の端部26aと接地端子32の間には、それらを短絡させるためのスイッチ18が設けられている。
【0020】
高電圧センサー10による高電圧の検出方法について、図2を用いて説明する。
【0021】
除電器40は、電源アダプタ42にスイッチボックス44を介して電極一体型の高電圧出力部46が設けられている。被除電物に対向する位置に高電圧出力部46をセットし、電源アダプタ42をコンセントに接続する。スイッチボックス44により高電圧出力部46に通電すると、高電圧出力部46から高電圧が出力され、被除電物に帯電した静電気を除電する。
【0022】
除電器40が正常動作しているときには、高電圧出力部46から所定の高電圧、例えば、約7500Vの高電圧が出力される。除電器40が何らかの原因で故障して高電圧出力部46から所定の高電圧が出力されなくなり、例えば、約5000Vの電圧しか出力されなくなると、除電効率が著しく減退し、除電できなくなる。
【0023】
しかしながら、被除電物が除電されているかどうかをその外観から認識することができない。また、除電器40の外観からも、所定の高電圧(例えば、約7500V)の高電圧が出力されているのか、所定の高電圧に達しない電圧、例えば、約5000Vの電圧が出力されているのか、全く把握することができない。
【0024】
本実施形態の高電圧センサー10を用いれば、除電器40から所定の高電圧が出力されて被除電物が除電されているかを簡便に検出することができ、その結果、除電器40が正常に動作しているかを簡便にチェックすることができる。
【0025】
その検出方法について説明する。
【0026】
まず、図2に示すように、除電器40の高電圧出力部46の放電針前方より、例えば、100mm程度離れた位置に、高電圧センサー10の集電アンテナ12をセットする。
【0027】
次に、除電器40のスイッチボックス44を操作して、高電圧出力部46に通電する。
【0028】
次に、高電圧センサー10のスイッチ18を押下して、図3(a)に示すように、液晶表示部14の第1の画素電極28と第2の画素電極30の表示を消去して初期状態とする。
【0029】
次に、高電圧センサー10のスイッチ18から手を離すと、スイッチ18の回路が遮断され、除電器40の高電圧出力部46から出力される電圧により、対向電極26と第1の画素電極28及び第2の画素電極30の間に電圧が印加される。
【0030】
第1の画素電極28は接地端子32に直接接続されているので、測定開始後の短時間のうちに、対向電極26と第2の画素電極30の間に所定の電圧(例えば、5V)が印加され、対向電極26と第2の画素電極30間の領域の液晶材料20が配向して不透明となり、図3(b)に示すように、第2の画素電極30の領域が黒色に変化する。
【0031】
第1の画素電極28は抵抗素子16を介して接地端子32に接続されているので、第2の画素電極30の領域が黒色に変化した後、しばらくして、対向電極26と第1の画素電極28間の電圧が所定の電圧となり、対向電極26と第1の画素電極28間の領域の液晶材料20が配向して不透明となり、図3(c)に示すように、第1の画素電極28の領域が黒色に変化する。
【0032】
第2の画素電極30の領域が黒色に変化してから、第1の画素電極28の領域が黒色に変化するまでの変化時間に基づいて、高電圧が印加されているか否かを検出する。
【0033】
例えば、除電器40の高電圧出力部46の放電針前方から100mm離れた位置に高電圧センサー10の集電アンテナ12をセットしたとして、抵抗素子16が1.0GΩの場合、除電器40から約7500Vの高電圧が出力されている場合には、上記の変化時間は、測定条件により変動はあるが、約2〜5秒の範囲内である。
【0034】
これに対し、除電器40が故障して約5000Vの電圧しか出力されない場合には、上記の変化時間は、約10秒以上となる。
【0035】
したがって、上記の変化時間が約2〜5秒の範囲内であれば、除電器40が正常動作していると判断する。もし、上記の変化時間が約10秒以上もかかる場合には、除電器40が故障していると判断し、高電圧出力部46の電極の掃除を行う等の故障対応を実施したり、テスター等を用いて精密に検査したりする。
【0036】
また、本実施形態の高電圧センサー10を用いて、正常動作している除電器40の除電効果が有効な領域を知ることができる。
【0037】
高電圧センサー10の集電アンテナ12を、除電器40の高電圧出力部46の放電針前方から100mm離れた位置にセットし、第1の画素電極28と第2の画素電極30の領域を黒変させる。そして、その黒変した状態の高電圧センサー10を、セットした位置を中心として左右に動かすと、第1の画素電極28と第2の画素電極30の黒変が消える位置がある。これは、除電器40により、高電圧センサー10の帯電が除電されたためである。
【0038】
したがって、この黒変が消えた位置が、除電器40の高電圧出力部46から出力される高電圧のバランスが取れた位置であることがわかる。特に、第1の画素電極28と第2の画素電極30の黒変が20秒以上持続する場合には、高電圧のバランスが±300V以下の極めて優れた位置であることがわかる。
【0039】
このように、本実施形態の高電圧センサー10を用いて、除電器40の除電効果が有効な位置を知り、その位置に被除電物を載置するようにする。
【0040】
[実施例]
抵抗素子16の抵抗値を変化することにより、測定時間を調整することができる。
【0041】
本願発明者等は、抵抗素子16の抵抗値を変化させ(抵抗素子16の抵抗値=0.5GΩ、1.0GΩ又は2.0GΩ)、第2の画素電極30の領域が黒色に変化してから第1の画素電極28の領域が黒色に変化するまでの変化時間を測定した。
【0042】
除電器40を稼働させ(除電器40の放電電圧=+7500V又は+8500V)、本発明品の高電圧センサー10のアース線をアースし、スイッチ18をオンして、高電圧を検出するための集電アンテナ12と、高電圧が印加されたか否かを表示するための液晶表示部14と、抵抗素子16とを短絡する。その状態で、除電器40の放電針前方の所定距離(100mm又は150mm)に高電圧センサー10を位置させ、スイッチ18をオフして、第1の画素電極28と第2の画素電極30の状態を観測した。
【0043】
第2の画素電極30の領域が黒色に変化するまでの時間とT1とし、第2の画素電極30の領域が黒色に変化してから第1の画素電極28の領域が黒色に変化するまでの時間をT2とする。
【0044】
その結果、次のような実験結果となった。
(1)除電器40の放電電圧=+7500Vで、高電圧センサー10の位置=除電器40の放電針前方100mmの場合
抵抗素子16の抵抗値=0.5GΩの場合:T1=7秒、T2=8秒
抵抗素子16の抵抗値=1.0GΩの場合:T1=5秒、T2=8秒
抵抗素子16の抵抗値=2.0GΩの場合:T1=1秒、T2=8秒
(2)除電器40の放電電圧=+7500Vで、高電圧センサー10の位置=除電器40の放電針前方150mmの場合
抵抗素子16の抵抗値=0.5GΩの場合:T1=20秒以上、T2=測定不能
抵抗素子16の抵抗値=1.0GΩの場合:T1=20秒以上、T2=測定不能
抵抗素子16の抵抗値=2.0GΩの場合:T1=20秒以上、T2=測定不能
(3)除電器40の放電電圧=+8500Vで、高電圧センサー10の位置=除電器40の放電針前方100mmの場合
抵抗素子16の抵抗値=0.5GΩの場合:T1=1秒、T2=2秒
抵抗素子16の抵抗値=1.0GΩの場合:T1=1秒、T2=2秒
抵抗素子16の抵抗値=2.0GΩの場合:T1=1秒、T2=2秒
(4)除電器40の放電電圧=+8500Vで、高電圧センサー10の位置=除電器40の放電針前方150mmの場合
抵抗素子16の抵抗値=0.5GΩの場合:T1=20秒以上、T2=測定不能
抵抗素子16の抵抗値=1.0GΩの場合:T1=15秒以上、T2=6秒
抵抗素子16の抵抗値=2.0GΩの場合:T1=15秒以上、T2=6秒
この実験結果から、抵抗素子16の抵抗値の相違により、アースが直結された第2の画素電極30の領域が黒色に変化するまでの時間T1に大きな変化があるが、抵抗素子16が接続されている第1の画素電極28の領域が黒色に変化するまでの時間T2には大きな変化がない、ということがわかった。
【0045】
この実験結果から、高電圧センサー10を除電器40の放電針前方100mmの位置に設定し、T2=5秒以内であれば、除電器40が標準性能を発揮していると判断してもよいことがわかった。
【0046】
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、液晶表示部14の第1の画素電極28と第2の画素電極30の形状を単純な矩形としたが、複雑な文字形状としてもよい。例えば、直ちに黒色に変化する第1の画素電極28を矩形枠形状とし、遅れて黒色に変化する第2の画素電極30を矩形枠内に位置する「OK」等の文字形状としてもよい。液晶表示部14に、矩形枠が表示され、その後短時間で矩形枠内にOK文字が表示されれば、除電器40が正常動作していることを確認できる。また、第1の画素電極28と第2の画素電極30に、異なる色のカラーフィルタを設けて、色により判別するようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、液晶表示部14に2つの第1の画素電極28と第2の画素電極30を設けたが、3つ以上の画素電極を設け、各画素電極を異なる抵抗値の抵抗素子を介して接地するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、液晶表示部14にバックライトを設けていなかったが、液晶表示部14にバックライトを設けてもよい。
【0050】
また、上記実施形態の液晶表示部14にフォトセンサーを設け、そのフォトセンサーの出力信号により遠方から除電器の性能を確認したり、除電器の劣化・故障などの警報信号を発生させたりするようにしてもよい。
【0051】
また、上記実施形態のスイッチ18は、押したときにオンとなるような構造のものでもよいし、押したときにオフとなる構造のものでもよい。押したときにオフとなる構造のスイッチ18を用いれば、スイッチ18を押したときだけ測定され、それ以外にときには短絡された測定されず、高電圧センサー10の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…高電圧センサー
12…集電アンテナ
14…液晶表示部
16…抵抗素子
18…スイッチ
20…液晶材料
22…第1のガラス基板
24…第2のガラス基板
26…対向電極
28…第1の画素電極
30…第2の画素電極
32…接地端子
40…除電器
42…電源アダプタ
44…スイッチボックス
46…高電圧出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶材料を挟んで対向配置される第1の基板と第2の基板とを有し、前記第1の基板には第1の画素電極と第2の画素電極とが形成され、前記第2の基板には対向電極が形成された液晶表示部と、
前記液晶表示部の前記対向電極に接続された集電アンテナと、
前記液晶表示部の前記第1の画素電極に接続された接地端子と、
前記液晶表示部の前記第2の画素電極と前記接地端子との間に設けられた抵抗素子と、
前記液晶表示部の前記対向電極と前記接地端子とを短絡させるスイッチとを有し、
前記集電アンテナに高電圧が印加されたことを検出することを特徴とする高電圧センサー。
【請求項2】
請求項1記載の高電圧センサーにおいて、
前記抵抗素子は、1MΩ〜1TΩの範囲の抵抗値を有することを特徴とする高電圧センサー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高電圧センサーを有し、
前記高電圧センサーの前記集電アンテナを除電器に対向させ、前記除電器から所定の高電圧が発生していることを検査することを特徴とする除電器チェッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−186726(P2010−186726A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54170(P2009−54170)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(592029337)株式会社石山製作所 (5)
【Fターム(参考)】