説明

高電圧印加装置

【課題】小型で搬送が容易で、屋外の作業でも継続して安定的に十分に高い高電圧パルスパワーを出せる手持ち式の高電圧印加装置を提供する。
【解決手段】高電圧発生部は、ブリーダ抵抗を内蔵したコッククロフトウォルトン回路を備え、高電圧パルス印加部は、手持ち部55に一体に設けられ、高電圧発生部の出力電圧が供給される放電側電極63と、放電ギャップGを介して対向した接地側電極65と、接地側電極65と導通され被印加体に印加する印加側電極69とを備え、直状の保護筒(絶縁性の保護カバー57+絶縁性乃至半導電性の放電ギャップカバー59)内に高電圧印加部の大部分が収容され、印加側電極69のみがその外に出て露出している高電圧印加装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外での作業に適した高電圧印加装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ほだ木に雷が落ちるとシイタケが異常発生することが知られており、最近では発芽直前のほだ木に高電圧の電気的刺激を与えるとシイタケの発生を促進する効果があることまで判明している。
そこで、ほだ木に人工的に高電圧の電気的刺激を与えようとする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−98322号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】高木浩一、猪原哲著「パルスパワー技術の農業・食品分野への応用」電気学会論文誌Vol.129 No.7 2009 社団法人電気学会 p.439-445
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、上記のような作業は、最終的にはシイタケ等の栽培農家が屋外で作業により行うことが想定される。また、非特許文献1では、50kV程度の高電圧が必要と記載されている。
それに対して、特許文献1で提案されているものは、屋外で作業が想定されているようであるが、その高圧印加器では所望の高電圧は印加できないと思われる。また、非特許文献1で記載されている高電圧発生回路を組み込んだ場合には装置が大型化するため、屋外での作業には向かない。
さらに、屋外の作業では、周囲の環境によって湿気や汚損などに晒されるが、そのような過酷な状況下でも、継続して安定的に十分に高い高電圧パルスパワーを出せることが求められる。
【0006】
本発明は上記従来の問題点に着目して為されたものであり、屋外での作業に適した小型のものでありながら、十分に高い電圧でしかも安定的に十分に高い高電圧パルスパワーを出せる高電圧印加装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、高電圧発生部と手持ち部と高電圧パルス印加部を有する高電圧印加装置であって、前記高電圧パルス印加部は、前記手持ち部に一体に設けられ、前記高電圧発生部の出力端が接続される放電側電極と、前記放電側電極と放電ギャップを介して対向した接地側電極と、前記接地側電極と導通され被印加体に印加する印加側電極とを備え、保護筒内に前記高電圧パルス印加部の大部分が収容され、前記印加側電極のみが露出していることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した高電圧印加装置において、保護筒は2つの電極を含む放電領域を包囲する放電ギャップカバーとその余の部分を包囲する保護カバーとに分かれており、前記放電ギャップカバーは絶縁体または半導電体で構成されていることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2に記載した高電圧印加装置において、放電ギャップカバーは透明乃至半透明の材料で構成され、外部から放電が視認可能になっていることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載した高電圧印加装置において、
放電ギャップカバーと保護カバーは着脱自在に連結されてなることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した高電圧印加装置において、保護筒の外面を平面または指が入る程度の凹凸を有した上で構成することを特徴とする高電圧印加装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した高電圧印加装置において、保護筒の外面が撥水性を有していることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した高電圧印加装置において、放電ギャップの間隔が調整可能になっていることを特徴とする高電圧印加装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載した高電圧印加装置において、放電側電極と設置側電極は球状になっていることを特徴とすることを特徴とする高電圧印加装置。
【0015】
請求項9の発明は、請求項1から8のいずれかに記載した高電圧印加装置において、高電圧発生部は、ブリーダ抵抗を内蔵したコッククロフトウォルトン回路を備えることを特徴とする高電圧印加装置。
【0016】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれかに記載した高電圧印加装置において、高電圧発生部の出力端側は高電圧ケーブルを介して放電側電極に接続され、且つ調整用コンデンサが着脱自在に介装されることを特徴とする高電圧印加装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高電圧印加装置によれば、小型に構成でき、且つ、屋外の作業でも継続して安定的に十分に高い高電圧パルスパワーを出せる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る高電圧印加装置の全体の斜視図である。
【図2】図1の高電圧印加装置の電源乃至高電圧発生部の電気的配線図である。
【図3】図1の高電圧印加装置の高電圧パルス印加部の構成図である。
【図4】図1の高電圧印加装置の高電圧パルス印加部の電気的配線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る高電圧印加装置1を、図面にしたがって説明する。
図1に示すように、高電圧印加装置1は、高電圧発生部3、コントローラ37、高電圧パルス印加部51とから主になっており、高電圧パルス印加部51には手持ち部55が一体に取り付けられている。
高電圧発生部3は使用の際には後述する設置型ハウジング47内に収容される。
高電圧発生部3は低電圧ケーブル31を介してコントローラ37と接続され、高電圧ケーブル49を介して高電圧パルス印加部51と接続されている。
【0020】
高電圧発生部3は、熱硬化性樹脂製の樹脂成形体5に高電圧発生回路7が封入されて一体になっている。高電圧発生回路7の構成について、図2にしたがって説明する。
入力側には複数の端子9(9a〜9g)を有するメタルコネクタ10が備えられている。その右側には昇圧変圧器11が配置されており、昇圧変圧器11の右側にはコッククロフトウォルトン回路13が配置されている。コッククロフトウォルトン回路13は複数のコンデンサ15と複数のダイオード17とから成っている。コッククロフトウォルトン回路13の右側には出力用抵抗19が配置されており、出力用抵抗19の右側には出力端子21が配置されている。昇圧変圧器11、コッククロフトウォルトン回路13の下側にはブリーダ抵抗23、25、保護抵抗27が配置されている。
符号29は温度センサを示し、この温度センサ29は昇圧変圧器11の近傍に配置されている。
【0021】
低電圧ケーブル31には複数の伝送線33(33a〜33g)が備えられており、複数の伝送線33はシールド材35で包囲されている。低電圧ケーブル31の端部にはメタルコネクタ34が設けられており、このメタルコネクタ34と高電圧発生部3のメタルコネクタ10が連結されている。
コントローラ37のCPU39には、定格温度、高電圧パルスの印加方法(出力電圧、発生方法等)を規定したプログラム等が記憶されたメモリ41と、直流電源43の電源ラインに介挿されるトランジスタ45が接続されている。
【0022】
昇圧変圧器11の一次側コイルは端子9a、9b、9c、伝送線31a、31b、31cを介してコントローラ37に接続されている。昇圧変圧器11の二次側コイルはコッククロフトウォルトン回路13に接続されている。コッククロフトウォルトン回路13の高電圧側(図2において右側)には出力用抵抗19の一端が接続されており、この出力用抵抗19の他端は出力端子21に接続されている。
また、コッククロフトウォルトン回路13の高電圧側にはブリーダ抵抗23の一端が接続されており、ブリーダ抵抗23の他端にはブリーダ抵抗25の一端が接続されている。ブリーダ抵抗25の他端は端子9f、伝送線33fを介してコントローラ37に接続されており、コントローラ37内で接地されている。
【0023】
ブリーダ抵抗23とブリーダ抵抗25との接続点は端子9e、伝送線31eを介してコントローラ37に接続されている。
昇圧変圧器11の二次側コイルの一端は端子9d、伝送線33dを介してコントローラ37に接続されている。
保護抵抗27の一端は端子9dに接続され、他端は端子9fに接続されている。
上記の構成により、入力電圧・電流値、出力電圧・電流値を監視しながら安定した高電圧の供給を可能としている。
【0024】
また、温度センサ29の一端は端子9g、伝送線33gを介してコントローラ37に接続されており、他端はメタルコネクタ10、34、シールド材35、導線36を介してコントローラ37内で接地されている。
この構成により、コントローラ37は樹脂成形体5内の温度を監視できるので、異常高温を検知した場合には装置を停止する等して安全性を確保できる。また、プログラム運転をすることで、後述するように作業者は作業中手で手持ち部55を持つだけで済むようになる。
【0025】
上記したように、高電圧発生部3をコッククロフトウォルトン回路で構成したことにより、小型でありながら所望の直流高電圧を出力させることができる。そのため、高電圧パルス印加部51内の一箇所の放電ギャップでパルス化することで所望のパルス高電圧が得られ、メンテナンスが容易となっている。
【0026】
図1において符号47は設置型ハウジングを示し、この設置型ハウジング47は、一端側に開口を有する高電圧発生部収容空間47a、高電圧ケーブル挿入空間47b及び調整用コンデンサ収容空間47cを有している。設置型ハウジング47内には金属製の接続部48(図2参照)が設けられており、この接続部48は高電圧発生部収容空間47a、高電圧ケーブル挿入空間47b及び調整用コンデンサ収容空間47cの他端側の側面を画定している。
設置型ハウジング47の一端側の側面のうち、調整用コンデンサ収容空間47cは接地プレート52で閉鎖されるようになっている。メタルコネクタ10、34は接地プレート52に接続されている。また、高電圧ケーブル挿入空間47bの開口にはケーブルグランド58が設けられている。
【0027】
設置型ハウジング47の高電圧発生部収容空間47aには高電圧発生部3が収容され、この高電圧発生部3の出力端子21は接続部48に接続されるようになっている。出力端子21と設置型ハウジング47の開口端までの距離(A)は高電圧値に応じて十分に長く設定されており、安全性のために十分な絶縁・沿面距離が確保されている。
【0028】
高電圧ケーブル挿入空間47bには高電圧ケーブル49の一端部が差し込まれ、接続端子49aが接続部48に接続されている。高電圧ケーブル49は、ケーブルグランド58に締結されて設置型ハウジング47に固定されている。なお、ケーブルグランド58を緩めることで高電圧ケーブル49を高電圧ケーブル挿入空間47bから引き抜くことができるようになっている。
高電圧ケーブル49は通常の市販されている構造のものであるが、特に作業性を重視して柔軟なものとなっている。
【0029】
調整用コンデンサ収容空間47cには、ユニット化された調整用コンデンサ54が収容されており、この調整用コンデンサ54の一方の端子54aは接続部48に接続され、他方の端子54bは接地プレート52に接続されている。この調整用コンデンサ54は設置型ハウジング47に対して着脱可能となっている。
【0030】
次に、高電圧パルス印加部51の構成について、図3にしたがって説明する。
符号53は長筒状の筺体を示し、この筺体53は3つの部材からなっている。すなわち、左方から手持ち部55、保護カバー57、放電ギャップカバー59がそれぞれ連結されて一体になっており、その中で放電ギャップカバー59は保護カバー57に対して着脱自在に連結している。保護カバー57の開口端は内方フランジが設けられて開口が狭められており、高電圧ケーブル49が漸く貫通できる程度になっている。
【0031】
手持ち部55は導電材、例えば金属材で構成されており、アース線56が接続されている。保護カバー57は絶縁体、例えばPVC、PE、PP、POM、PETP、PFA、PTFEなどで構成される。
放電ギャップカバー59は透明乃至半透明で、上記した絶縁体や、10〜1010Ω程度の抵抗値を有する半導電体、例えば、PVC、PETP、PMMA、PCなどで構成される。なお、半導電体は、後述する放電側電極63と接地側電極65との間の放電を阻害することがないものである。
【0032】
この筺体53内に軸方向左端側から高電圧ケーブル49の他端側が引き込まれており、この引き込まれた部分は絶縁性の筒体50に収容されている。
高電圧ケーブル49の引き込み口にはケーブルグランド61が設けられており、高電圧ケーブル49が所定の長さまで引き込まれた状態で締結されており、ケーブルグランド61が締結した状態では引き込み口部分の気密保持が図られる。
【0033】
高電圧ケーブル49は放電ギャップカバー59側まで延びており、その先端側に球状の放電側電極63が裸出している。
この放電側電極63に放電ギャップ(G)を介して球状の接地側電極65が対向している。棒状の連結部67を挟んでこの接地側電極65の反対側には印加側電極69が裸出している。連結部67は接地側電極65側が筺体53内に引き込まれており、被印加体(O)に当てて接触させる印加側電極69のみが筺体53の外に裸出している構成になっている。
【0034】
高電圧パルス印加部51は上記した構成のうち保護カバー57と放電ギャップカバー59とで包囲された部分となっており、そのうち放電ギャップカバー59で包囲された空間内でパルス放電が起こることになる。そのため、周囲の環境の湿気や汚損などによる高電圧リークの発生が防止されるようになっている。
また、放電側電極63から保護カバー57と放電ギャップカバー59との連結部までの距離(C)は十分に長く設定され、放電ギャップカバー59は絶縁体でなく半導電体で構成した場合でも抵抗が10〜1010Ω程度はあるので、放電側電極63と接地側電極65との間の放電を阻害することはなく、しかも放電側電極63からの絶縁・沿面距離が十分に確保されている。
したがって、屋外で作業しても、周囲の環境にかかわらず、継続して安定的に、且つ安全に高電圧パルスが出せるようになっている。
【0035】
放電ギャップカバー59は透明乃至半透明の材料で構成されているので、放電ギャップカバー59内での放電を外部から視認できる。
また、保護カバー57は十分な長さ(B)を有し、フッ素系樹脂を塗布する撥水処理が施されているので、湿気等により水分が付着してもその水分が玉状となる。従って、手持ち部55と放電側電極63との間の絶縁性は確保される。
放電ギャップカバー59が半導電体から成る場合には、接地側電極側の残留電荷は放電ギャップカバー59と放電側電極63を介して、高電圧発生部3のブリーダ抵抗23、25まで導かれるので、印加側電極69に作業者が作業後に誤って触れても感電することはない。
このように、作業者の安全性も十分に確保されている。
【0036】
保護カバー57を含む筺体53の外面には凹凸が無い分だけ湿気や汚損の清掃が容易になっている。
また、放電ギャップカバー59は取り外せるので、内面の汚れの清掃や電極の交換も容易にできる。
そのため、作業者のメンテナンス作業も容易となっている。
【0037】
高電圧パルス印加部51の放電側電極63と接地側電極65とが球状になっていることから、針状の場合より放電し難くなっており、放電ギャップ(G)の間隔を狭めることができ、結果として高電圧パルス印加部51を小型化することに成功している。この部分は手持ち部55と一体になっていることから、小型化することにより作業性が向上する。
また、放電側電極63側の高電圧ケーブル49の引き込み深さは、ケーブルグランド61によって調整できるので、放電ギャップ(G)の間隔を変えてパルス放電量を微調整することも可能である。
【0038】
次にパルス幅の調整機構について、図4にしたがって説明する。
被印加体(O)毎に有効な高電圧パルスは、電圧値や放電回数だけでなく、パルス幅(=出力電圧パルスの半値幅)も異なる。例えば、ほだ木に印加する場合には約50nsが、被子植物の球根の場合には約100nsがそれぞれ有効と報告されている。
高電圧印加装置1では、高電圧ケーブル49の静電容量C1、調整用コンデンサ54の静電容量C2及び被印加体(O)の抵抗Rから計算される時定数T=(C1+C2)・Rが略パルス幅と同じになるので、高電圧パルスのパルス幅をこの時定数としている。
【0039】
高電圧ケーブル49は、一例として長さが2mのもので50pFの静電容量(25pF/m)を有しており、調整用コンデンサ54は、一例として静電容量が50pFのものである。
ほだ木に印加する場合、該ほだ木の抵抗Rが1kΩの場合には、調整用コンデンサ54を取り外せば、C2=0となり、パルス幅(時定数)は50nsとなる。
被子植物の球根に印加する場合、該球根の抵抗Rが1kΩの場合には、調整用コンデンサ54を装着すれば、パルス幅(時定数)は100nsとなる。
このように、被印加体に応じてパルス幅を調整できる。また、高電圧ケーブル49の静電容量C1を利用することで部品点数を少なくすることが可能である。
【0040】
なお、種々の被印加体に印加するような場合には、高電圧ケーブル49を種々の長さで複数本揃えておき、その交換によりパルス幅を調整してもよいし、調整用コンデンサ54を2個以上容易して交換したり、2個以上同時に装着したりできるように構成することになる。
【0041】
次に、高電圧印加装置1の使用方法と動作について説明する。
被印加体(O)としてのシイタケのほだ木に高電圧パルスを印加する場合について説明する。
シイタケのほだ木は水分を多く含んでおり、抵抗値は数kΩ(約10kΩ)となっており、これに対して静電容量が調整されて、パルス幅(時定数)が50nsに設定されている。出力電圧は50kV、印加回数は50回にそれぞれ設定されている。
【0042】
被印加体(O)を適当なアース台の上に載せておく。
そして、運転スイッチ(図示省略)をONにした状態で、手持ち部55を手で握って、先端の印加側電極69を被印加体(O)に当てる。
上記作業により、コントローラ37の制御下、直流電源43から供給された電源が高電圧発生部3の出力端子21に出力される。この高電圧は、放電側電極63に送られて接地側電極65との間で放電を起こして高電圧パルスを生じ、この高電圧パルスが印加側電極69側から被印加体(O)に対して印加されることになる。
【0043】
高電圧の出力中、コントローラ37は温度センサ29によって昇圧変圧器11の近傍温度を常時測定して監視する。
コントローラ37は温度センサ29によって検知された温度が定格温度を超えたと判断すると、実際に故障が起こるまでに高電圧印加装置1の運転を停止させる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、高電圧発生部3は小型化できるので、手持ち部55と一体にしてもよい。
また、接地側電極65もケーブルグランド61を介して筺体53に取り付けて引き込み深さを調整できるようにしてもよい。両側にケーブルグランド61を設けることで、放電ギャップ(G)の間隔の調整範囲が広がる。
また、入力電源を、家庭用電源(AC100V)、カ―シガレット(DC12V)、乾電池(DC1.5V×8本)と多様化させることで、作業場所等に応じて使い分けできるようにしてもよい。例えば、被印加体(O)側が移動し難い場合には、高電圧印加装置1側をそこまで移動させることも可能となる。
【0045】
上記の実施の形態では、高電圧発生回路としてコッククロフトウォルトン回路13が利用されている。小型で、比較的容易に、しかも安価に入手できるようになっているからである。しかしながら、これに限らず、静電発電機、ウィムスハースト発電機、ヴァンデグラーフ発電機、圧電トランス高電圧発生装置などを利用してもよい。
さらに、保護カバー57と放電ギャップカバー59とで構成された保護筒は直状に形成されているが、これに限定されず、例えば提灯状などのようにカーブを取ったものでもよい。
また、保護カバー57と放電ギャップカバー59とで構成された保護筒の外面を平面になっているが、凹凸があっても凹部に指が入る程度であればよい。外面の表面性状は清掃のし易さを考慮して設定されたものだからである。
そして、保護筒の外面に撥水剤であるフッ素系樹脂を塗布する撥水処理が施されているが、保護筒の保護カバーはPTFEなどのフッ素系樹脂で形成してもよい。また、外面を鏡面化することにより、即ち高度に平滑にすることにより撥水性を持たせてもよい。
【0046】
手持ち部55は作業場所への搬送時から作業終了後の保管場所へ搬送時にだけ用いて、高電圧印加時には図示しない支持手段に支持させ、高電圧印加装置1を据え置きして、高電圧パルスを印加してもよい。
被印加体(O)をシイタケのほだ木、被子植物の球根又は培地としたが、被印加体(O)はシイタケのほだ木、被子植物の球根又は培地に限定されない。
また、放電によりオゾン等が発生するので、高電圧印加装置1を殺菌、消臭等の目的で使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の高電圧印加装置は、屋外での作業、例えばほだ木への印加の他、高電圧パルスを利用して殺菌、消毒等の作業にも利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1…高電圧印加装置 3…高電圧発生部
7…高電圧発生回路 13…コッククロフトウォルトン回路
23、25…ブリーダ抵抗 31…低電圧ケーブル
37…コントローラ 47…設置型ハウジング
48…接続部 49…高電圧ケーブル
51…高電圧パルス印加部 52…接地プレート
53…筺体 54…調整用コンデンサ
55…手持ち部 57…保護カバー
58、61…ケーブルグランド 59…放電ギャップカバー
63…放電側電極 65…接地側電極
67…連絡部 69…印加側電極
O…被印加体 G…放電ギャップ
C1…高電圧ケーブルの静電容量 C2…調整用コンデンサの静電容量
R…被印加体の抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧発生部と手持ち部と高電圧パルス印加部を有する高電圧印加装置であって、
前記高電圧パルス印加部は、前記手持ち部に一体に設けられ、前記高電圧発生部の出力端が接続される放電側電極と、前記放電側電極と放電ギャップを介して対向した接地側電極と、前記接地側電極と導通され被印加体に印加する印加側電極とを備え、保護筒内に前記高電圧パルス印加部の大部分が収容され、前記印加側電極のみが露出していることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項2】
請求項1に記載した高電圧印加装置において、
保護筒は2つの電極を含む放電領域を包囲する放電ギャップカバーとその余の部分を包囲する保護カバーとに分かれており、前記放電ギャップカバーは絶縁体または半導電体で構成されていることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項3】
請求項2に記載した高電圧印加装置において、
放電ギャップカバーは透明乃至半透明の材料で構成され、外部から放電が視認可能になっていることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載した高電圧印加装置において、
放電ギャップカバーと保護カバーは着脱自在に連結されてなることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
保護筒の外面を平面または指が入る程度の凹凸を有した上で構成することを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
保護筒の外面が撥水性を有していることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
放電ギャップの間隔が調整可能になっていることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
放電側電極と設置側電極は球状になっていることを特徴とすることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
高電圧発生部は、ブリーダ抵抗を内蔵したコッククロフトウォルトン回路を備えることを特徴とする高電圧印加装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載した高電圧印加装置において、
高電圧発生部の出力端側は高電圧ケーブルを介して放電側電極に接続され、且つ調整用コンデンサが着脱自在に介装されることを特徴とする高電圧印加装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−80779(P2012−80779A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226880(P2010−226880)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(592180650)株式会社ミトミ技研 (2)
【出願人】(309007818)友信工機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】