説明

高齢者に保護免疫を提供するための方法及び組成物

少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗体の少なくとも一部とを含むフラジェリン/抗原タンパク質を含む組成物と、該組成物を少なくとも49才の人間に投与する方法。前記組成物は、高齢者のような人間における、前記抗原に対する免疫応答、特に、前記抗原対する保護免疫応答を刺激する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本件出願は引用によって本明細書に取り込まれる2010年1月6日出願の米国仮出願第61/292,593号を基礎とする優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は高齢者に保護免疫を提供するための方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
(65才を超える)多くの高齢者はインフルエンザのような多くの疾患に対する免疫感作を受けているか、あるいは、暴露されているが、多くの者は健康を保つために免疫感作を受けることが必要な場合がある。
【0004】
インフルエンザワクチンへの応答性を向上させることは1970年代からの大きな課題である(非特許文献1)。数多くの研究者が、標準的な15μgの用量を超える用量のヘマグルチニン(HA)の効果を探索してきた。高齢者に薬効のあるインフルエンザワクチンを提供するための最も徹底的で、かつ、記録がそろった治験はFluzone(登録商標)に関するものである。3回の成功した治験(非特許文献2(表1)、非特許文献3(表2)及び非特許文献4(表3))が、HAの用量を15μgから60μgまで増加させ、HA成分に焦点を当てることで、HAIの力価を約1.6ないし1.7倍に改善できることを証明した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0005】
405μgまでの用量のより積極的な研究(非特許文献5(表4)、非特許文献6(表5))の結果、約2.1倍のHAI力価改善がみられた。
【表4】

【表5】

【0006】
高齢者におけるインフルエンザワクチンの効果を実証するその他の研究は以下の表に示される。
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0007】
一般に、高齢者はインフルエンザワクチン接種が困難な集団である。ワクチン用量を増加するといくらか役立つが、比例増加ではない。アジュバントも免疫原性の増大に役立つが、副作用の可能性も増大する。したがって、HAの用量を増大することによる高齢者におけるインフルエンザに対する免疫応答の増強改善には限度がある。高齢者の免疫を強化する高齢者用改良ワクチン製剤の需要はまだ存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mostow SR,ら、(1973)、Inactivate vaccines in Volunteer studies with very high doses of influenza vaccine purified by zonal centrifugation Postgrad Med. J. 49: 152-158
【非特許文献2】Keitelら、(2006) Safety of high doses of influenza vaccine and effect on antibody responses in elderly persons. Arch. Intern. Med. 166: 1121-1127
【非特許文献3】Couchら、(2007) Safety and immunogenicity of a high dose trivalent influenza vaccine among elderly subjects Vaccine 25: 7656-7663
【非特許文献4】Falseyら、(2009) Randomized, double-blind controlled phase 3 trial comparing the immunogenicity of high-dose and standard-dose influenza vaccine in adults 65 years and older. J. Infect Dis. 200: 172-180
【非特許文献5】Keitelら、(1994) High doses of purified influenza A virus hemagglutinin significantly augment serum and nasal secretion antibody responses in healthy young adults. J Clin Microbiol 32: 2468-2473
【非特許文献6】Keitelら、(1996) Increased doses of purified influenza hemagglutinin and subvirion vaccines enhance antibody responses in the elderly Clin Diagn Lab immunol 3: 507-510
【非特許文献7】Keitel, Couch, J. Clin. Microbiol. 1994
【非特許文献8】Keitel, Clin. Diag. Lab. 1996
【非特許文献9】Cools et al. J. Med. Virol. 2009
【非特許文献10】Squarcione, Sgricia, Biasio, Pernetti Vaccine 2003
【非特許文献11】Frey, Poland, Vaccine 2003
【非特許文献12】Treanor, JID 2006
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は一般的に高齢者の免疫応答を刺激する方法に関する。本発明は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む組成物をヒトに投与するステップを含む、人間の免疫応答を刺激する組成物及び方法を含み、前記組成物は免疫応答を惹起するのに十分な用量で前記人間に投与され、前記人間は高齢者であり、該高齢者は49才を超える年齢である。一部の実施態様では、前記組成物は、55才か、60才か、65才か、70才か、75才か、80才かを超える年齢の人に投与される。
【0010】
本発明の組成物は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む。前記フラジェリンと前記抗原とは、異なるやり方で会合する場合がある。例えば、前記フラジェリンと前記抗原とは融合タンパク質の一部であって、発現時にタンパク質の一部としてフラジェリン及び抗原の両方を含むタンパク質が産生されるDNA又はRNA配列を構築することによって、前記融合タンパク質内で前記フラジェリン部分が前記抗原と会合する場合がある。前記フラジェリン部分と抗原部分とは他のやり方で会合する場合もあり、例えば前記フラジェリン部分と抗原部分とがそれぞれ粒子又はなんらかのタイプの担体と会合して、前記フラジェリン部分と前記抗原部分とが前記担体又は粒子と結合してもかまわない。
【0011】
本発明は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を人間の集団に投与するステップを含む、高齢者集団における免疫応答を刺激する組成物及び方法であって、抗体陽転率(seroconversion rate)は、少なくとも50%か、少なくとも60%か、少なくとも70%か、少なくとも80%か、少なくとも90%か、少なくとも95%か、少なくとも99%かである、組成物及び方法にも関する。
【0012】
本発明は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を人間の集団に投与するステップを含む、高齢者集団における免疫応答を刺激する組成物及び方法であって、抗体応答率(seroresponse rate)は、少なくとも50%か、少なくとも60%か、少なくとも70%か、少なくとも80%か、少なくとも90%か、少なくとも95%か、少なくとも99%かである、組成物及び方法にも関する。
【0013】
本発明は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を人間の集団に投与するステップを含む、高齢者集団における免疫応答を刺激する組成物及び方法であって、抗体保持率(seroprotection rate)は、少なくとも50%か、少なくとも60%か、少なくとも70%か、少なくとも80%か、少なくとも90%か、少なくとも95%か、少なくとも99%かである、組成物及び方法にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】STF2.HA1(VAX125)のアミノ酸配列
【図2A】65才以上の被験者でのVAX125を用いるワクチン接種第14日の測定されたピークGMHAI応答のグラフ
【図2B】65才以上の被験者での0.5μgから8μgまでの範囲のVAX125を単回投与後0日から28日までに測定されたピークGMHAI力価のグラフ
【図3】Vax128A、Vax128B及びVax128Cのプラスミドマップ
【図4】Vax128A(HL184 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のヌクレオチド配列
【図5】Vax128A(HL184 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のアミノ酸配列
【図6】Vax128B(HL185 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のヌクレオチド配列
【図7】Vax128B(HL185 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のアミノ酸配列
【図8】Vax128C(HL186 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のヌクレオチド配列
【図9】Vax128C(HL186 STF2.HA1−2 CA7(CA07 H1N1))のアミノ酸配列
【図10】VAX128(CA07)を単回筋注投与された18−49才の被験者112名と、65才以上の被験者100名との免疫応答を用量ごとに比較したグラフ(備考:VAX128のA−Cに対する応答がプールされた)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の特徴その他の詳細は、本発明のステップ又は本発明の部分の組合せのいずれであっても、以下に具体的に説明され、特許請求の範囲に記載される。本発明の特定の実施態様は図面により示されるが、本発明を限定するものとしてでなないことが理解されるであろう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲を逸脱することなく、さまざまな実施態様に用いることができる。
【0016】
1の実施態様では、本発明は人間の免疫応答を刺激する方法であって、該方法は、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部と、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部とを含む組成物を前記人間に投与するステップを含み、前記組成物は、少なくとも49才の人間に投与される。前記組成物の前記人間への投与は、前記抗原の出所に前記人間が暴露された結果起こる感染に対する保護免疫を提供することができる。
【0017】
本発明の組成物は、少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む。前記フラジェリン及び前記抗原は異なるやり方で会合される場合がある。例えば、前記フラジェリンと前記抗原とは、融合タンパク質の一部となって、発現するとフラジェリン及び抗原の両方を含むタンパク質を産生する、DNA及びRNA配列を構築することによって、前記融合タンパク質中で前記フラジェリン部分が前記抗原と会合する場合がある。前記フラジェリンの一部と抗原の一部とは他のやり方で会合する場合があり、例えば、これらの部分のそれぞれが粒子又は担体と会合し、タンパク質、リポタンパク質、糖類、多糖類及び/又は脂質を含むがこれらに限定されない前記抗原の一部と、前記フラジェリンの一部との両方が前記担体又は粒子に結合する場合がある。前記粒子又は担体は、前記フラジェリンの一部と、前記抗原の一部とが、人体に導入されるとき免疫応答を起こすように会合する場合がある。粒子製剤は脂質、タンパク質、ワックス又はアミノ酸類、多糖類、ポリアクリル物質又は有機酸類を含むが、これらに限定されない、さまざまな材料でできる場合がある。1の実施態様では、前記フラジェリンの一部と抗原の一部とは、例えば、引用によって本明細書に取り込まれる米国特許出願公開第2010/136053号明細書に説明されるビロソームに会合する場合がある。前記抗原及びフラジェリンが結合する可能性がある粒子は、ウイルス様粒子と、生分解性ミクロスフェアと、リポソームと、ペプチドナノ粒子と、ナノ粒子と、引用によって本明細書に取り込まれる国際公開第2010/002818号パンフレットに説明される自己集合型ウイルス様粒子とを含むが、これらに限定されない。1の実施態様では、フラジェリン及び抗原は自己集合型ペプチドナノ粒子(self-assembling peptide nanoparticles、以下、「SAPN」という)と会合する。SAPNは国際公開第2009/109428号パンフレットに説明され、引用によって本明細書に取り込まれる。これらのナノ粒子は、リンカーセグメントによって連結された2個のオリゴマ化ドメインを含む、連続したペプチド鎖の凝集体でできていて、一方又は両方のオリゴマ化ドメインはそのペプチド配列内にT細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープを取り込んでいる。本発明の組成物及び方法においてフラジェリンと組み合わせて使用可能な抗原は、人間に免疫応答を惹起させるいかなる抗原であってもよい。本発明の組成物に使用される抗原は、インフルエンザウイルス抗原(例えば、ヘマグルチニン(HA)タンパク質、マトリックス2(M2)タンパク質、ノイラミニダーゼ)と、呼吸器多核体ウイルス(RSV)抗原(例えば、融合タンパク質、結合糖タンパク質)と、パピローマウイルス抗原(例えば、E6タンパク質、E7タンパク質、L1タンパク質及びL2タンパク質のようなヒトパピローマウイルス(HPV)抗原)と、単純ヘルペスウイルス、狂犬病ウイルス及び(例えばデング熱ウイルス抗原、西ナイルウイルス抗原のような)フラビウイルスの抗原と、HBV及びHC由来の抗原を含む肝炎ウイルス抗原とのようなウイルス抗原を含む。本発明の組成物に使用される抗原は、肺炎球菌(Streptococcus pneumonia)と、インフルエンザ菌(Haemophilus influenza)と、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)と、ディフィシル菌(Clostridium difficile)と、エシェリキア属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、シゲラ属(Shigella)、エルシニア属(Yersinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、エンテロバクター属(Enterobacter)、セラシア属(Serratia)、プロテウス属(Proteus)を含む腸内グラム陰性病原体とを含む細菌抗原を含む。本発明の組成物に使用される抗原は、カンジダ属菌(Candida spp.)と、アスペルギルス属菌(Aspergillus spp.)と、クリプトコックス・ネオフォルマンス菌(Crytococcus neoformans)と、コクシジオイデス属菌(Coccidiodes spp.)と、ヒストプラスマ・カプスラーツム菌(Histoplasma capsulatum)と、ニューモシスチス・カリニ菌(Pneumocystis carinii)と、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス(Paracoccidiodes brasiliensis)と、熱帯マラリア病原虫(Plasmodium falciparum)と、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)と、卵型マラリア原虫(Plasmodium ovale)と、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)とを含む真菌抗原を含む。
【0018】
本発明の組成物におけるフラジェリン対抗原の比は、約100:1から約1:100までの場合がある。他の実施態様では、フラジェリン対抗原の比は、約1:20から約20:1までの場合がある。フラジェリン及びインフルエンザ抗原の好ましい実施態様では、フラジェリン対インフルエンザ抗原の比は、約1:20から約1:5までである。特にフラジェリンとインフルエンザ抗原とが融合タンパク質で連結される一部の実施態様では、フラジェリン対インフルエンザ抗原の比は、5:1から1:5までの場合がある。
【0019】
本発明の組成物は、1種類または2種類以上の抗原が会合した1種類または2種類以上のフラジェリンを含む場合がある。粒子担体については、複数種類の異なるフラジェリンが同一粒子か異なる粒子かの上の1種類または2種類以上の抗原と会合する場合がある。
【0020】
好ましい実施態様では、本発明の組成物に含まれる抗原はインフルエンザウイルス由来の抗原である。好ましい抗原はヘマグルチニン(HA)である。好ましい実施態様ではHA配列は、フラジェリンか、引用によって本明細書に取り込まれる国際公開第2009/128950号パンフレットに説明される改変フラジェリンかにコンジュゲーションされる。HAを抗原として用いる本発明の好ましい実施態様は、VAX125、VAX128A、VAX128B及びVAX128Cである。STF2.HA1(SI)としても知られるVAX125は、A型インフルエンザ/ソロモン諸島/3/2006(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部(第62−284アミノ酸残基)にカルボキシル末端で融合した、TLR5リガンドであるネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の2型フラジェリン(STF2)からなる組換え融合タンパク質であり、分子量は77,559kDaである。前記ワクチン組成物の分子量の約3分の2はフラジェリンで、3分の1はインフルエンザHA球状頭部である。したがって用量3μgは、2μgのフラジェリンと、1μgのインフルエンザHAとからなる。VAX125のアミノ酸配列(配列番号1)は図1に示される。HL184 STF2.HA1−2 CA7としても知られるVAX128Aは、インフルエンザの汎発流行性株A型インフルエンザ/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部にカルボキシル末端で融合した、TLR5リガンドであるネズミチフス菌の2型フラジェリン(STF2)からなる組換え融合タンパク質である。VAX128Aのヌクレオチド配列(配列番号2)及びアミノ酸配列(配列番号3)はそれぞれ図4及び図5に示される。HL185 STF2.HA1−2 CA7としても知られるVAX128Bは、前記フラジェリンのD3ドメインが除去され、A型インフルエンザ/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部に置換されたR3融合体である。VAX128Bのヌクレオチド配列(配列番号4)及びアミノ酸配列(配列番号5)はそれぞれ図6及び図7に示される。HL186 STF.2.HA1−2 CA7としても知られるVAX128Cは、前記フラジェリンのD3ドメインが除去され、A型インフルエンザ/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHA1ドメインの球状頭部に置換され、本フラジェリンのカルボキシル末端がA型インフルエンザ/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部に置換され、本フラジェリンのカルボキシル末端がA型インフルエンザ/カリフォルニア/07/2009(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部に融合される、R32x融合体である。したがって、前記融合タンパク質は、フラジェリン単位あたり2個のコピーのHA抗原を含む。VAX128Cのヌクレオチド配列(配列番号6)及びアミノ酸配列(配列番号7)はそれぞれ図8及び図9に示される。VAX128Cでは、前記HAの球状頭部のコピーが2個あり、ワクチン組成物中のHAの割合がVAX128Aコンストラクトの33%から54%に増大している。
【0021】
本件の出願人の出願に係る方法の利点は、感染性病原体(例えばインフルエンザ)に対する抗原の比較的低用量を用いて高齢者集団で保護免疫を起こさせることができる点を含む。高齢者は、感染性病原体抗原に対する適切かつ持続的な免疫応答を行うことができないことが部分的には理由となって、インフルエンザ抗原のような感染性病原体に暴露された後の疾患リスクが高いことが典型的である。高齢者の抗原に対する応答を増大させるために提案されるアプローチは、抗原用量及び投与頻度を増やすことである。しかし、かかる代替的な治療プロトコールは、高齢者集団において、抗原への暴露後、最適値より低い抗原に対する免疫応答をもたらし、疾患に対する保護免疫を提供する能力を減退させた(先行技術の製品及び研究に関して本明細書中に提供される表を参照せよ。)。本明細書で用いられる方法は、高齢者集団での免疫応答を改善し、前記高齢者集団の40%を超える人が比較的低用量で投与される抗原に対して適切でかつ持続的な免疫応答を起こしたが、該適切でかつ持続的な免疫応答はまた、副作用を最小限にするという利点もある。本発明の組成物は、先行技術のワクチンよりも、免疫原性が強く、副作用を起こしにくい。
【0022】
ある実施態様では、本発明の組成物及び方法で治療される人間は、49才と、約64才との間である。別の実施態様では、前記人間は64才より高齢の場合がある。一部の実施態様では、前記組成物は、60才を超える年齢か、65才を超える年齢か、70才を超える年齢か、75才を超える年齢か、80才を超える年齢かの人間に投与される。本発明の組成物の用量は、いかなる予期せぬ副作用をも低減させることを求めて高齢者での効果を最適化するために選択される場合がある。例えば、(VAX125、VAX128A、vX128B及びVAX128Cの場合に説明されたとおり、)フラジェリン及びHAを含む融合タンパク質組成物において、用量は、副作用発症性を低く保つことを試みて、免疫応答を最適化するために選択される場合がある。0.1μg、0.5μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、15μg、20μg、25μg及び30μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量が、高齢者の人間で免疫応答を誘導するのに十分な場合がある。前記融合タンパク質の用量は、約0.1μgから約500μgまでと、1μgから約100μgまでと、1μgから約50μgまでと、約1μgから約30μgまでと、約1μgから約25μgまでと、約1μgから約20μgまでと、約1μgから約15μgまでと、約1μgから約10μgまでと、約2μgから約50μgまでと、2μgから約30μgまでと、約2μgから約20μgまでと、約2μgから約10μgまでと、約2μgから約8μgまでと、約3μgから約50μgまでと、3μgから約30μgまでと、約3μgから約20μgまでと、約3μgから約10μgまでと、約3μgから約8μgまでと、約3μgから約5μgまでと、約4μgから約50μgまでと、4μgから約30μgまでと、約4μgから約20μgまでと、約4μgから約10μgまでと、約4μgから約8μgまでと、約5μgから約50μgまでと、5μgから約30μgまでと、約5μgから約20μgまでと、約5μgから約10μgまでと、約5μgから約9μgまでと、約5μgから約8μgまでとを含む用量範囲内で前記人間に投与される場合がある。フラジェリン及びインフルエンザ抗原を含む融合タンパク質組成物に関して、用量とは、前記人間に与えられるワクチンに存在するタンパク質の量をいう。前記タンパク質の量の一部は前記抗原に関し、前記タンパク質量の一部は前記フラジェリンに関する。例えば、VAX125、VAX128A及びVAx128BではHA1抗原はコンストラクトの分子量の約33%を構成する。VAX128Cでは、HAの球状の頭部のコピー数が2個あり、ワクチン中のHAの割合はVAX128コンストラクトの33%から54%に増大する。HA以外の抗原を用いる実施態様、特に抗原が非タンパク質起源の実施態様では、抗原の量によって用量を特徴づけることがより有用かもしれない。いかなる場合でも、本発明のフラジェリン/抗原組成物は、高齢者の治療において先行技術の組成物よりも優れた特性を提供する。
【0023】
前記フラジェリン及び抗原が粒子を介して送達される組成物について、用量は使用される粒子のタイプと組成物中に存在するフラジェリン対抗原の比とに依存するであろう。フラジェリン及び前記抗原が1:1以外の比で存在する組成物について、用量は成分の比に依存するであろう。インフルエンザ抗原以外の抗原について、用量は使用される抗原とフラジェリン対抗原の比とに依存するであろう。当業者は、担体、抗原及びフラジェリン対抗原の比に基づいて、フラジェリン組成物の最適用量を決定することが容易にできるかもしれない。
【0024】
本発明の融合タンパク質組成物の抗原成分は、インフルエンザ抗原(インフルエンザA、インフルエンザB及びインフルエンザC抗原)であることが好ましい。本組成物の好ましい実施態様では、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原(例えば、融合タンパク質が配列番号1(図1)を含む)と、マトリックス2(以下で「M2e」というM2のエクトドメイン(extodomain)のようなM2)と、ノイラミニダーゼインフルエンザ抗原とからなる群より選択される少なくとも1種類のメンバーである。前記インフルエンザ抗原は、H1N1インフルエンザ抗原を含む場合がある。好ましい実施態様では前記抗原は、引用によって本明細書に取り込まれる国際公開第2009/128950号パンフレットに説明されるようなフラジェリン分子の配列に融合される。本発明の組成物は、各融合タンパク質に含まれる1種類または2種類以上の抗原配列を有する1種類または2種類以上の融合タンパク質を含む場合がある。
【0025】
前記組成物は、単回又は複数回投与で人間に筋注投与される場合がある。前記方法は、前記フラジェリン/抗原組成物をその後に少なくとも1回前記人間に投与するステップをさらに含む場合がある。
【0026】
本発明に従って使用するための免疫原性のある組成物は、標準として0.5mLの注射可能な用量で送達され、約0.1μgから約50μgの抗原を含む場合がある。本発明に従って使用するための免疫原性のある組成物の好ましい実施態様では、標準の0.5mLの注射可能な用量で、約3μgから約20μgの抗原を含む。ワクチンの体積は、0.25mLと1.0mLとの間の場合があり、0.5mLと1.0mLとの間が適当で、特に0.5mLが標準的である。本発明に従うワクチン用量は、従来の投与法よりも小さい体積で提供される場合がある。本発明に従う小体積用量は、0.5mL未満が適当で、0,3mL未満が典型的で、通常は0.1mL以上である。
【0027】
したがって本発明の1の局面では、本件に係る組成物、方法又は使用について提供されるのは、前記組成物の投与によって人間の集団において生じる免疫応答であって、前記人間は約49才から約64才までか、あるいは、前記人間は55才を超える年齢か、60才を超える年齢か、65才を超える年齢か、70才を超える年齢か、75才を超える年齢か、80才を超える年齢かであり、抗体陽転率は、50%を超えるか、60%を超えるか、65%を超えるか、70%を超えるか、75%を超えるか、80%を超えるか、85%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えるかの免疫応答である。
【0028】
したがって本発明のある局面では、本件に係る組成物、方法又は使用について提供されるのは、前記組成物の投与によって人間の集団において生じる免疫応答であって、前記人間は約49才から約64才までか、あるいは、前記人間は55才を超える年齢か、60才を超える年齢か、65才を超える年齢か、70才を超える年齢か、75才を超える年齢か、80才を超える年齢かであり、抗体保持率は、50%を超えるか、60%を超えるか、65%を超えるか、70%を超えるか、75%を超えるか、80%を超えるか、85%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えるかの免疫応答である。
【0029】
抗体応答とは、HAI抗体力価が少なくとも4倍高くなり、ワクチン接種後の力価が最低限40であることをいう。
【0030】
抗体保持とは、ワクチン接種前のHAI力価が40未満の被験者の間で、ワクチン接種後のHAI力価が最低限40に達することをいう。
【0031】
抗HA抗体応答について抗体陽転率とは、各グループにおいてワクチン接種後の力価が1:40以上である被験者の割合をいう。抗体保持率とは、ワクチン接種前のHAI力価が1:10未満で、かつ、ワクチン接種後の力価が1:40以上である被験者の百分率をいう。しかし、初期力価が1:10以上の場合には、ワクチン接種後の抗体量が少なくとも4倍増大する必要がある。
【0032】
本発明の別の局面では、本件に係る組成物、方法又は使用について提供されるのは、本発明の組成物の投与によって生じる免疫応答が、高齢者の被接種者の大半において機能的な(HAI)抗体を用量依存的に誘導することである。一部の実施態様では前記組成物は、第7日、第14日又は第28日に約50を超える力価の中和抗体応答を誘導するであろう。別の実施態様では前記組成物は、第7日、第14日又は第28日に約100を超える力価の中和抗体応答を誘導するであろう。別の実施態様では前記組成物は、第7日、第14日又は第28日に約150を超える力価の中和抗体応答を誘導するであろう。別の実施態様では前記組成物は、第7日、第14日又は第28日に約200を超える力価の中和抗体応答を誘導するであろう。
【0033】
したがって本発明の1の局面では、本件に係る組成物、方法又は使用について提供されるのは、本発明の組成物の高齢者集団への投与によって生じる免疫応答が、以下の基準の1つに該当するか、あるいは、超えることである。
【0034】
抗体陽転率が、50%を超えるか、60%を超えるか、70%を超えるか、80%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えること。
【0035】
抗体保持率が、50%を超えるか、60%を超えるか、70%を超えるか、80%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えること。
【0036】
ワクチン接種後に中和抗体力価が平均4倍以上増大すること。
【0037】
人間に投与される組成物及び融合タンパク質の量について「有効量」とは、前記被験者に投与されると治療上の薬効に十分な量(例えば、被験者における免疫応答を刺激するのに十分な量、被験者における保護免疫を提供するのに十分な量)の組成物の量又は用量をいう。
【0038】
本発明の方法は、経腸的又は非経口的手段で本発明の組成物及び融合タンパク質を投与することにより達成できる。具体的には、投与経路は前記組成物及び融合タンパク質の筋注である。本発明の投与経路には、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、鼻内、経皮、坐薬又は皮下の経路も含まれる。
【0039】
前記融合タンパク質を含む組成物は、単独で、あるいは、従来技術の添加剤との配合剤、例えば、前記組成物と有害な反応を行わず、経腸的又は非経口的用途に適する、薬学的又は生理学的に許容できる有機又は無機担体物質との配合剤として投与される場合がある。薬学的に許容できる適切な担体は、(リンゲル液のような)塩類溶液と、アルコールと、油類と、ゼラチン類と、ラクトース、アミロース又はデンプンのような糖類と、脂肪酸エステルと、ヒドロキシメチルセルロースと、ポリビニルピロリジンとを含む。かかる製剤は、消毒され、必要なら、人間に投与する組成物と有害な反応を行わない、滑剤、保存料、安定剤、助剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩類、バッファー、着色物質及び/又は香料その他のような助剤と混合される場合がある。本発明のワクチンを希釈するために好ましい希釈剤は、ヒスチジン及びトレハロースを含む150mM NaClを含むが、これに限定されない。
【0040】
本発明の組成物、融合タンパク質及びタンパク質は、被験者において免疫応答を起こすために該被験者の免疫系に本発明の組成物、タンパク質及び融合タンパク質を提示する支持体表面に付着した状態で前記被験者に投与される場合がある。本発明の組成物、タンパク質及び融合タンパク質の提示は、抗体産生のために前記融合タンパク質の抗原性のある部分を曝露することを含むのが好ましい。前記支持体は生体適合性がある。ここで「生体適合性がある」とは、前記サポートが被験者において(例えば抗体産生のような)免疫応答を惹起しないことをいう。
【0041】
被験者に投与する用量及び頻度(単回又は複数回)は、例えば、抗原への曝露につながる感染への事前曝露、被験者の健康状態、体重、ボディマスインデックス及び食事又は健康に関する問題を含むさまざまな要因に依存して異なる場合がある。その他の治療処方又は薬剤が、本発明の方法と、組成物、タンパク質又はポリペプチドとともに使われる場合がある。
【0042】
本組成物は、単回投与か、少なくとも2回のような複数回投与かで人間に投与される場合がある。人間に複数回投与されるとき、第2回目又は第3回目の投与は、初回投与の後、日単位(例えば、1、2、3、4、5、6、7日)か、週単位(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週)か、月単位(例えば、1、2、3、3、5、6、7、8、9、10月)か、年単位(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10年)かの期間をおいて投与される場合がある。例えば前記組成物の第2回目の投与は、前記融合タンパク質を含む組成物の第1回目の投与の約第7日、約第14日又は約第28日に行われる場合がある。
【0043】
本明細書において範囲は、およその特定の数値から、及び/又は、別のおよその特定の数値までとして表される。かかる範囲が表記されるとき、別の局面は、前記一方の特定の数値から及び/又は他方の特定の数値までを含む。同様に、数値が先行詞aboutを用いて近似値として表されるとき、該特定の数値が別の局面を形成することが理解されるであろう。各範囲の端点は、他方の端点との関係で有意であり、同時に、他方の端点と独立に有意である。
【0044】
融合タンパク質の投与は、マイクログラム単位の用量を基準に行われる。本発明は、一般的には、抗原に対する免疫応答、特に、保護免疫応答を刺激して、人間の高齢者集団を治療する方法であって、抗原を含む抗原性組成物の比較的低用量を用いる方法に向けられる。本発明の実施例実施態様の説明は以下のとおりである。
【実施例】
【0045】
実施例1
第II相非盲倹用量漸増用量範囲探索試験
STF2.HA1(SI)(VAX125)は、A型インフルエンザ/ソロモン諸島/3/2006(H1N1)のHAのHA1ドメインの球状頭部(第62−284アミノ酸残基)にカルボキシル末端で融合した、TLR5リガンドであるネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)の2型フラジェリン(STF2)からなる組換え融合タンパク質であり、分子量は77,559kDa(配列番号1)である。ワクチンは20μg/mL又は2μg/mLのいずれかでガラスバイアル入りで供給され、投与日に最終濃度に希釈バッファー(ヒスチジン及びトレハロースを含む150mM NaCl)で希釈された。試験材料は非盲倹の薬剤師により調製され、盲倹の臨床スタッフに提供された。ワクチンは三角筋に深部筋注により最終体積0.5mLで投与された。
【0046】
地域で生活している 65才以上の成人120名(平均年齢72才、範囲64−84才)が6つの用量グループに分かれて登録された。被検者は健康で、受診歴、身体所見及び臨床検査で確認された。治療中、臨床検査異常(全血球及び個別血球の計測値、及び、AST及びALT)、ワクチン成分に対するアレルギー既往歴、過去半年以内のインフルエンザワクチン接種、又は、過去30日以内の他のワクチン接種の被検者は治験参加から除かれた。
【0047】
前記試験は、非盲倹用量漸増式で実行された。被検者20名が3カ所以内の試験機関で各用量グループに登録された。被検者は、0.5μg、1.0μg、2.0μg、3.0μg、5μg及び8μgの用量レベルで単回投与を受けた(表10)。被検者は、ワクチン接種の30分後、4時間後及び第1日に治験機関で、そして、第3日に電話面談で評価された。前記5μg及び8μgのグループに登録された被検者は、ワクチン接種後4時間治験機関に残して観察された。さらに被検者は、ワクチン接種後第7日、第14日及び第28日の治験機関での診察の際に評価された。電話での接触による安全性の経過観察は、ワクチン接種の6ヶ月後及び12ヶ月後にも行われた。
【表10】

【0048】
免疫原性
大腸菌由来ヘマグルチニン抗原に応答して産生された抗体が卵で増殖されたインフルエンザウイルスによる血球凝集を阻害する能力は表11及び表12に示される。単回投与の第28日のHAI抗体の幾何学的平均力価(GMT)は用量依存的に増大し、ワクチン接種後GMTの最高値は5μgされた被検者で検出された(表11)。4倍以上の抗体応答が5又は8μgの用量を投与された被検者の大半で検出された。5又は8μgされた被検者の間では、被検者40名中合計30名(75%)が4倍以上の血清HAI抗体応答を示した。前記5μg及び8μgのグループでは、18名(45%)の被検者はワクチン接種開始前に1:40以上の力価があった。ワクチン接種前の血清HAI抗体が1:40以下の被検者22名の間では、21名(98%)がワクチン接種第28日までに少なくとも1:40の力価に達した(表12)。本試験におけるグループごとの抗体力価の動態は図2に示される。
【0049】
IgGのELISA法により評価された抗フラジェリン応答は表13に示される。ワクチン接種前の被検者における抗フラジェリンIgGのレベルは低い。ワクチン接種前に検出された抗フラジェリン抗体のレベルと、副作用の頻度又は重篤度か、インフルエンザヘマグルチニンに対する血清抗体応答かのいずれかとの間には明確な相関は存在しなかった。
【0050】
VAX125によって生じる免疫応答が、Falseyらにより報告されたFluzone標準用量(15μg)及び高用量(60μg)のH1N1成分と比較された(表14)。65才以上の被検者における標準用量Fluzone投与後のGMTの増大は約2倍で、高用量投与後は約4倍であった。これに対し、65才以上の被検者における5μg用量のVAX125投与後のGMTの増大は10倍を超えた。これは、VAX125グループでの抗体陽転率及び抗体保持率の高さにつながる。
【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【0051】
反応原性
ワクチンは全ての用量グループで十分に許容された(表15)。重篤(グレード3)又は生命の危険あり(グレード4)と判定されるいかなる副作用も認められず、重篤な副作用事象もなかった。中等度の腕の痛みが2μg以上の用量を投与された被験者の約20%で観察された。全身的な副作用事象は通常軽度で、用量依存性は認められなかった。C−反応性タンパク質(CRP)レベルが基準線及び第1日に測定された(表16)。CRPの平均上昇倍数は用量依存性を示し、最高から2番目までの用量を投与された被験者では平均上昇倍数が5倍未満であった。3μg以上の用量では、被験者60名の56%が少なくとも2倍のCRPを経験した。しかし、CRPが増大した者の大半(又は全員)が中等度の重篤性を超える局所又は全身の症状を伴うことはなかったか、あるいは、ステージ1の被験者についてIL−6、IL−8又はIL−10の上昇を伴うことはなかった。
【表15】

【表16】

【0052】
考察
VAX125は、試験を行った用量の範囲では安全で、かつ、免疫原性が認められたが、免疫応答及びサイトカイン応答の点で、高齢者はVAX125に対してあまり鋭敏に反応しないようである。高齢者の3μgグループでのGMT HAI力価のピーク値は160で、これは若年成人の0.1μgグループと同様の値である。前記若年成人の0.3μg及び0.5μgでのピーク力価は前記高齢者グループより高かった(表17)。0.5μgから2μgまでの用量を投与された被験者72名中46名を含めて、0.5μg以上の用量を投与された被験者96名中61名(64%)で、血清HAI応答が4倍以上であった。VAX125の0.5μg単回投与後のGMHAI力価は、65才を超える被験者で5μg投与されたときに観察された力価と同様であったので、高齢者では、同じ力価を得るには10倍近く用量を増やす必要があることが示唆された。
【表17】

【0053】
表18は、約65才を超える健常な被験者と、18−49才の被験者とについてCRPの平均値及び最大値の比較である。幾何学的平均値は3μgグループまでは違いがないが、若年成人は3μgで前記平均値がほぼ2倍になる。95%信頼区間上限及び最大値はともに高齢者のほうが低い。
【表18】

【0054】
これらのデータは高齢者での最適用量は3μgを超えることを示唆するともいえるが、これほど低い用量でも、FluzoneTIV標準用量よりも優れたH1N1抗原に対するHAI応答であって、高用量Fluzone製剤で観察される応答と同程度のHAI応答を起こさせる(表19)。
【表19】

【表20】

【表21】

【0055】
VAX125は機能的な(HAI)抗体を用量依存的に大半の高齢接種者で誘導する。5.0μg及び8.0μgの用量は、高いHAI GMT値(それぞれ226及び234)と、高いGMT倍数応答(それぞれ12.6及び7.7)とを惹起した。5.0μg用量が最も免疫原性が高かった。5.0μg及び8.0μgの用量は、高い抗体陽転率(それぞれ80%及び65%)と、高い抗体保持率(それぞれ95%及び100%)とをもたらした。65才以上の健常成人でのピークGMT値は、若年成人での0.5μg用量で観察される値と同様であった。これは、高齢者には高用量の製剤が必要であることを示唆する。高齢者用に大腸菌で高用量のインフルエンザワクチンを製造する能力は本製品に特有である。
【0056】
実施例2
Vax128A、Vax128B及びVax128Cの構築及び発現
クローニング及び発現
3種類のワクチン候補Vax128A、Vax128B及びVax128Cのそれぞれを産生する大腸菌クローンは、各コンストラクトに特異的なプラスミド調製法の相違はあるが、類似した手法で作出された。STF2.HA1(CA07)及びSTF2R3.HA1(CA07)は、STF2.HA1(CA04)及びSTF2R3.HA1(CA04)をコード化するプラスミドからの突然変異体である。STF2R3.2xHA1(CA07)をコード化するプラスミドはSTF2.HA1(CA07)及びSTF2R3.HA1(CA07)から作出された。プラスミド構築及びクローン選択の詳細は以下に説明する。前記ワクチン候補のプラスミドマップが図3に示される。
【0057】
Vax128A(STF2.HA1(CA07))のプラスミド構築
STF2.HA1(CA07)をコード化するプラスミドを作出するために複数ステップPCR法が実施された。STF2.HA1(CA04)をコード化するプラスミドが最初に作出され、それから、STF2.HA1(CA07)をコードするように突然変異が導入された。STF2.HA1(CA04)を作るためには、STF2をコード化するDNAが(CA04)HAタンパク質のHA1球状頭部ドメインをコード化するDNAと融合された。STF2をコード化するDNAはpET24a−STF2.HA1 FLプラスミドから増幅された。HA球状頭部ドメインをコード化するDNAは外部の業者(DNA2.0、カリフォルニア州、メンロパーク)により合成され、PCRにより増幅された。SFT2及びHA1(CA07)の両方のDNAのゲル精製後、断片がいっしょに融合された。最終的なPCR産物(STF2.HA1(CA04)融合タンパク質をコード化するDNA)は制限酵素NdeI及びEcoRIで消化され、前記pET24aプラスミドに連結された。STF2.HA1−2(CA04)及びSTF2.HA1(CA07)のHA部分の間には残基1個だけしか相違がないため、STF2.HA1(CA07)は、STF2.HA1−2(CA04)の部位特異的変異誘発によって作られた。組換えDNA配列は外部の業者(Genewiz Inc.社)によって確認された。
【0058】
Vax128B(STF2R3.HA1(CA07))のプラスミド構築
STF2.HA1(CA07)と同様に、STF2R3.HA1 CA4をコード化するプラスミドが最初に作成され、それから、STF2R3.HA1(CA07)をコードするように突然変異が導入された。STF2R3.HA1(CA04)を作るために、STF2のアミノ末端及びカルボキシル末端セクションの部分をコード化するDNAが、CA4HAタンパク質のHA1球状頭部ドメインをコード化するDNAと融合された。これは、STF2のD3ドメインを前記融合タンパク質のHA1−2(CA04)で置換される効果がある。STF2のアミノ末端及びカルボキシル末端のセクションの部分をコード化するDNAがpET24a−STF2.HA1(CA04)プラスミドからPCR増幅された。HA1(CA04)をコード化するDNAは同じプラスミドからPCR増幅された。ゲル精製されたSTF2及びHA1(CA04)断片が融合され、最終PCR産物は制限酵素NdeI及びEcoRIで消化され、前記pET24aプラスミドに連結された。STF2R3.HA1(CA04)及びSTF2R3.HA1(CA07)のHA部分の間には残基1個だけしか相違がないため、STF2R3.HA1(CA07)はSTF2R3.HA1(CA04)の部位特異的変異誘発により作られた。組換えDNA配列は外部の業者(Genewiz Inc.社)によって確認された。
【0059】
Vax128C(STF2R3.2×HA1(CA07))のプラスミド構築
STF2R3.2×HA1(CA07)をコード化するプラスミドは、STF2R3.HA1(CA07)プラスミド及びSTF2.HA1(CA07)プラスミドに由来するDNAの融合から作られた。両方のプラスミドが別々にNdeI及びMfeI酵素で消化された。(インサートとしての)STF2R3.HA1(CA07)及び(ベクターとしての)STF2.HA1(CA07)の特定の断片がゲル精製され、STF2R3.2×HA1(CA07)をコード化する完全なDNA配列を形成するように連結された。共通の制限酵素部位はSTF2のカルボキシル末端セクションにある。前記組換えDNA配列は外部の業者(Genewiz Inc.社)によって確認された。
【0060】
クローニング
前記DNAは商業的に入手可能な大腸菌BLR(DE3)細胞(Novagen、カタログ番号69053)を形質転換するのに用いられた。Novagen由来の大腸菌BLR(DE3)細胞は、プラスミド単量体の収率を向上させて菌体内のプラスミドを安定化するのに役立つかもしれない、大腸菌のBL21株のrecA分離株である。前記細胞は、Ion及びompTプロテアーゼが欠損し、IPTGで誘導可能なT7RNAポリメラーゼを含むラムダプロファージが溶原化している。得られたBLR(DE3)クローンは、各ワクチン候補について研究用細胞バンク(a research cell bank)を作成するために用いられた。前記バンクを作成するためには、選択されたクローンが、0.5%グルコース及び25μg/mLカナマイシンが添加されたLB培地中で増殖された。細胞は、グリセロールを最終濃度7%に添加された後、1mL凍結バイアル中で−60ないし−80℃で凍結された。タンパク質発現の研究では、前記ワクチン候補の予想分子量に対応するタンパク質は、クーマジー・ブルー染色と、抗フラジェリンモノクローナル抗体を用いるウェスタンブロッティング解析とにより容易に可視化された。
【0061】
タンパク質産生
以下に説明するコンストラクトは全て、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)fljBフラジェリン(STF2)と、2009年に出現した新規なH1N1株(A/カリフォルニア 07/2009)由来の保護ヘマグルチニン抗原の球状頭部ドメインの一部との組合せを含む。
【0062】
VAX128A
STF2.HA1−2 CA07をコード化するpET24aプラスミドが商業的に入手可能な大腸菌BLR(DE3)細胞を形質転換するために用いられる。これらの細胞は研究細胞バンクとcGMPマスター細胞バンクとの両方を製造するために大量培養される。標的タンパク質を産生するために、バンクの細胞は、合成培地を用いて旋回フラスコ中で大量培養され、特定の光学密度になるまで増殖された。その後特定の量の細胞が、異なる合成培地を含むバイオリアクタ中に移された。前記バイオリアクタは、グルコースが消費しつくされるまでバッチモードで自動制御条件(T=30C、pH=7、DO>=30%)下で運転された。その時点で、合成フィード培地が前記バイオリアクタに特定の流速で添加される。3時間後、IPTGを2mMの濃度まで添加することによって、標的タンパク質の産生が開始された。前記細胞は誘導の4時間後に回収され、細胞のペーストが条件付けられた培地から遠心により分離された。凍結及び解凍の後、前記細胞は、トリス酢酸バッファー中で再懸濁され、高圧ホモジナイズ処理により溶解された。細胞溶解液の上清は遠心後回収された。タンパク質は、14%PEGを用いて沈澱されてから、pH4の6M尿素中で再懸濁された。溶液のpHを8に調整した後、前記バッファーはTFFによりトリス/酢酸バッファーに交換された。トリトンX−114及びPEGが添加され、得られた溶液は遠心により界面活性剤相と水相とに分離された。前記水相は保持され濾過された。タンパク質は尿素の添加により変性され、pH8の6モル尿素溶液中タンパク質2g/Lの濃度に希釈された。標的タンパク質はリフォールディングバッファーでの10倍希釈によりバッチモードでリフォールディングされた。活性のある単量体ワクチンの初期精製はアニオン交換クロマトグラフィへの結合及び溶出により実施され、標的タンパク質及び不純物の溶出は塩濃度の段階的上昇による効果で行われた。濾過され、AEX溶出液のpHが6.8に調整された後、活性のある単量体ワクチンは、ヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィ媒質を結合モードで利用することによってさらに精製された。不純物及び標的タンパク質の溶出はリン酸濃度を段階的に上昇させることにより行われた。濾過後、材料はTFF及び希釈により製剤バッファーにバッファー交換され、濾過され、分注されて、−70℃で保存された。得られたバルクの医薬物質は同じ製剤バッファーで標的薬剤製品濃度に希釈され、投与前は−70℃で保存された。
【0063】
VAX128Bの製造
STF2R3.HA1−2 CA07をコード化するpET24aプラスミドが商業的に入手可能な大腸菌BLR(DE3)細胞を形質転換するために用いられた。これらの細胞は、研究細胞バンクとcGMPマスター細胞バンクとの両方を製造するために大量培養された。標的タンパク質を産生するために、バンクの細胞は、合成培地を用いて旋回フラスコ中で大量培養され、特定の光学密度になるまで増殖された。その後、特定の量の細胞が異なる合成培地を含むバイオリアクタ中に移された。前記バイオリアクタは、グルコースが消費しつくされるまでバッチモードで自動制御条件(T=30C、pH=7、DO>=30%)下で運転された。その時点で、合成フィード培地が前記バイオリアクタに特定の流速で添加された。3時間後、IPTGを2mMの濃度まで添加することによって、標的タンパク質の産生が開始された。前記細胞は誘導の4時間後に回収され、細胞のペーストが条件付けられた培地から遠心により分離された。凍結及び解凍の後、前記細胞は、トリス酢酸バッファー中で再懸濁され、高圧ホモジナイズ処理により溶解された。細胞溶解液の上清は遠心後回収され、リン酸バッファー中に再懸濁され、その次の遠心によって再度回収された。ペレットの再懸濁及び回収の過程は繰り返され、洗浄されたペレットはpH8で6M尿素に可溶化された。攪拌後、可溶化されたタンパク質が遠心により回収され、溶液で2g/Lに希釈された。流動中の9倍過剰のリフォールディングバッファー中に変性タンパク質を急速希釈することにより、標的タンパク質は適切なコンフォメーションにリフォールディングされた。前記変性タンパク質の溶液及びリフォールディングバッファーは管路内で1対9の流速比で混合され、アニオン交換クロマトグラフィカラムに装架される前に平均30分間保持された。活性のある単量体ワクチンは前記AEX媒質に結合され、標的タンパク質及び不純物の溶出は段階的な塩濃度の上昇による効果で行われた。濾過後、アニオン交換溶出液は水で10%希釈され、さらなる精製のために別のアニオン交換クロマトグラフィカラムに装架された。不純物及び標的タンパク質の溶出は、トリス/酢酸の濃度を段階的に上昇させることによる効果で行われた。濾過後、材料はTFF及び希釈によって製剤バッファーにバッファー交換され、濾過され、分注されて、−70℃で保存された。得られるバルクの医薬物質は同じ製剤バッファーで標的薬剤製品濃度に希釈され、投与前は−70℃で保存された。
【0064】
VAX128Cの製造
STF2R3.2xHA1−2 CA07をコード化するpET24aプラスミドが商業的に入手可能な大腸菌BLR(DE3)細胞を形質転換するのに用いられた。これらの細胞は、研究細胞バンクとcGMPマスター細胞バンクとの両方を製造するために大量培養された。標的タンパク質を産生するために、バンクの細胞は、合成培地を用いて旋回フラスコ中で大量培養され、特定の光学密度になるまで増殖された。その後、特定の量の細胞が異なる合成培地を含むバイオリアクタ中に移された。前記バイオリアクタは、グルコースが消費しつくされるまでバッチモードで自動制御条件(T=30C、pH=7、DO>=30%)下で運転された。その時点で、合成フィード培地が前記バイオリアクタに特定の流速で添加された。3時間後、IPTGを2mMの濃度まで添加することによって、標的タンパク質の産生が開始された。前記細胞は誘導の4時間後に回収され、細胞のペーストが条件付けられた培地から遠心により分離された。凍結及び解凍の後、前記細胞は、トリス酢酸バッファー中で再懸濁され、高圧ホモジナイズ処理により溶解された。細胞溶解液の上清は遠心後回収され、リン酸バッファー中に再懸濁され、その次の遠心によって再度回収された。ペレットの再懸濁及び回収の過程が繰り返され、洗浄されたペレットはpH8で6M尿素に可溶化された。攪拌後、可溶化されたタンパク質が遠心により回収され、溶液で2g/Lに希釈された。標的タンパク質はリフォールディングバッファーに10倍希釈されることによってバッチモードでリフォールディングされた。活性のある単量体ワクチンの初期精製はアニオン交換クロマトグラフィの結合及び溶出により実施され、標的タンパク質及び不純物の溶出は段階的な塩濃度の上昇による効果で行われた。濾過され、AEX溶出液のpHが6.8に調整された後、活性のある単量体ワクチンは、ヒドロキシアパタイト(CHT)クロマトグラフィ媒質を結合モードで利用することによってさらに精製された。不純物及び標的タンパク質の溶出はリン酸濃度を段階的に上昇させることにより行われた。濾過後、材料はTFF及び希釈により製剤バッファーにバッファー交換され、濾過され、分注されて、−70℃で保存された。得られるバルクの医薬物質は同じ製剤バッファーで標的薬剤製品濃度に希釈され、投与前は−70℃で保存された。
【0065】

【0066】

【0067】

【0068】

【0069】

【0070】
実施例3
Vax128A、B、Cの第I相用量漸増用量範囲探索試験
18−49才の健常な成人と65才以上の成人とにおけるVAX128A、B及びCのH1N1インフルエンザワクチンコンストラクトの安全性及び免疫原性を評価するための第I相用量漸増用量範囲探索試験が実施された。これらの3種類の新規インフルエンザワクチンコンストラクトは、TLR5リガンドであるフラジェリンと融合された、新規H1N1(VAX128)であるA/カリフォルニア/07のHA1ドメインの球状頭部を含み、大腸菌で産生される。Vax128Aでは前記HA1はフラジェリンのカルボキシル末端に融合されるが、VAX128BではHA1はフラジェリンのD3ドメインを置換し、VAX128CではHA1は前記D3ドメインを置換し、かつ、前記カルボキシル末端に融合される。ワクチンは20μg/mL又は2μg/mLのいずれかでガラスバイアル入りで供給され、投与日に最終濃度まで希釈バッファー(ヒスチジン及びトレハロースを含む150mM NaCl)で希釈された。試験材料は非盲倹状態の薬剤師によって調製され、盲倹状態の臨床スタッフに提供された。ワクチンは三角筋へ深部筋注により最終体積0.5mLが投与された。
【0071】
18−49才の健常成人被検者116名と65才以上の健常成人100名とが、2カ所のセンターで実施された二重盲倹偽薬対照臨床治験に参加した。用量漸増試験において被検者は、3種類のVAX128ワクチンコンストラクトの1つか、偽薬かを3:3:3:1の割合で投与された。ワクチンは0.5μgから20μgまでの範囲の用量で筋注投与された。被検者は安全のため追跡され、第0日、第7日、第14日及び第28日に血清が卵で増殖されたウイルスに対する血球凝集−阻害(HAI)試験に供された。血清のC−反応性タンパク質(CRP)、サイトカインレベル及び抗フラジェリン抗体も評価された。
【表22】

【表23】

【表24a】

【表24b】

【表25】

【表26】

【表27−1】

【表27−2】

【表27−3】

【表28】

【0072】
若年成人では、VAX128Aの最大許容用量(MTD)は8μgで、VAX128BのMTDはは16μgであった。VAX128Cは20μgで安全で、これは試験されたなかで最高用量であった(表22)。血清抗体応答は0.5μgまで低い用量でもHAIによって検出された。1.25μgないし2.5μgの用量は1:250のGMTを誘導し、抗体陽転率及び抗体保持率は90%を超えた(表24a及び24b)。65才以上の成人では、3種類のワクチン全てが、VAX128A、B及びCでそれぞれ8μg、12μg及び20μgという試験された最高用量で安全であった(表23)。2.5ないし4μgの用量は70−180の相互的な(reciprocal)なHAI力価と相関があり、8−16μgの用量は60ないし370のHAI力価と相関があった(表25)。表26は年齢コホートによる免疫応答を示し、表27は65才以上の各個人についての応答を示す。
【0073】
HA1及びフラジェリンの配置を改変することが広い治療可能用量範囲があり安全なインフルエンザワクチンを作成するために利用された。HA1球状頭部のコピーを2個有するVAX128CはMTDが最高で免疫原性が最も高かった。原核生物の系で発現されたインフルエンザHAの球状頭部は機能的な抗体応答を誘導できた。活発な応答が比較的低い用量のHA抗原で認められ、フラジェリンの添加が実質的なアジュバント効果を提供したことを示した。
【0074】
本明細書内では、ある特徴が任意的であるといういかなる指摘も、当該任意的特徴に関するクローズド又は排他的又は否定的な文言を含む特許請求の範囲について(例えば、米国特許法第112条又は欧州特許条約第83及び84条に規定される)適切なサポートを提供することを意図する。排他的な文言は、いかなる追加の特許発明の対象を含むことからその特定の列挙された特徴を特異的に排除する。例えば、Aが薬Xの場合があると指摘された場合には、かかる文言は、AがXのみからなること、あるいは、AはX以外のいかなる他の薬も含まないことを明示的に指定するクレームについてサポートを提供する意図がある。「否定的な」文言は、前記任意的特徴そのものを特許請求の範囲から明示的に排除する。例えば、要素AがXを含む場合があると指摘される場合には、かかる文言は、AはXを含まないということを明示的に指定するクレームについてサポートを提供する意図がある。排他的又は否定的な用語の非限定的な例は、「のみ(only)」、「だけ(solely)」、「からなる(consisting of)」、「実質的に〜からなる(consisting essentially of)」、「単独で(alone)」、「〜なしで(without)」、「(例えば、同じタイプ、構造及び/又は機能の他のもの)〜が存在しない状態で(in the absence of)」、「〜を除く(excluding)」、「〜を含まない(not including)」、「〜しない(not)」、「できない(cannot)」又はかかる文言のいずれかの組合せ及び/又は変形を含む。
【0075】
同様に、「ある(a、an)」、「前記、該(said)」又は「前記、該(the)」のような単語が指示する対象は、文脈が反対の指摘をする場合を除いて、単数及び/又は複数の出来事の両方をサポートする意図である。例えば、「犬(a dog)」は、1匹の犬、犬1匹いるかいないか、少なくとも1匹の犬、複数匹の犬、等についてサポートを含む意図がある。単数を示す修飾語の非限定的な例は、「単一の(single)」、「1つの(one)」、「単独で(alone)」、「唯一の(only one)」、「あっても1つだけ(not more than one)」等である。(潜在的又は現実的な)複数を示す修飾語の非限定的な例は、「少なくとも1つ(at least one)」、「1以上(one or more)」、「1を超える(more than one)」、「2以上(two or more)」、「多数の(a multiplicity)」、「複数(a plurality)」、「いずれかの組合せ(any combination of)」、「いずれかの順列(any permutation of)」、「1以上のいずれかの(any one or more of)」等を含む。あるグループのメンバーの1つまたは2つ以上の間に「又は(or)」を含むクレーム又は明細書の記載は、反対の指摘をされるか、あるいは、その他文脈から明かであると指摘される場合を除いて、前記グループのメンバーの1つか、2つ以上か、全てかが、ある製品又は方法に存在するか、用いられるか、あるいは、その他関連する場合に満たすと考えられる。
【0076】
本明細書において範囲が示されるときには端点は含まれる。さらに、特記されるか、あるいは、その他文脈及び当業者の理解から明らかであるかの場合を除いて、範囲として表現される数値は、文脈が明確に異なるとの指示がある場合を除いて、当該発明の異なる実施態様において表明された範囲内のいずれかの特定の数値又は下位の範囲(subrange)を、当該範囲の下限の単位の10分の1まで当然含むことができると理解されるべきである。
【0077】
本明細書において引用された全ての刊行物及び特許は、あたかも個々の刊行物又は特許のそれぞれが特に個別に引用により取り込まれることが指摘されたかのごとく、引用により本明細書に取り込まれる。いかなる刊行物の引用も、本件特許出願日前の開示のためであり、本発明が先発明を理由としてかかる刊行物より先になされたと主張する資格がないことの承認として解釈されるべきではない。
【0078】
本発明は、実施例及びその実施態様を参照して具体的に示され、説明されたが、添付する特許請求の範囲に含まれる本発明の範囲から逸脱することなく、形式及び詳細のさまざまな変更が行われる場合があることは当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を人間に投与するステップを含み、前記融合タンパク質は約0.5μgを超える用量で前記人間に投与され、前記人間は少なくとも49才である、人間における免疫応答を刺激する方法。
【請求項2】
前記組成物の前記人間への投与は、抗原の出所に前記人間が曝露された結果の感染に対する保護免疫を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記人間は49才と約64才との間の年齢である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記人間は少なくとも65才の年齢である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記用量は、0.5μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、10μg、15μg、20μg、25μg及び30μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記用量は、0.5μg、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg及び8μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記用量は、5μg、6μg、7μg、8μg、10μg、15μg、20μg、25μg及び30μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記用量は、8μg、10μg、15μg、20μg、25μg及び30μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗原はインフルエンザ抗原である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記インフルエンザ抗原はヘマグルチニンインフルエンザ抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インフルエンザ抗原はA型インフルエンザ抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記インフルエンザ抗原はB型インフルエンザ抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記インフルエンザ抗原はC型インフルエンザ抗原である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記融合タンパク質は前記人間に筋注により投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記融合タンパク質の少なくとも1回の次の投与を行うステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記融合タンパク質は配列番号1を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体応答率が少なくとも75%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項18】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体保持率が少なくとも95%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項19】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体陽転率が少なくとも50%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項20】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類のインフルエンザ抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を高齢者に投与するステップを含む、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項21】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、粒子と会合する、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む融合タンパク質を含む組成物を人間に投与するステップを含み、前記人間は少なくとも49才である、人間における免疫応答を刺激する方法。
【請求項22】
前記粒子は、ビロソーム、リポソーム、生分解性マイクロスフィア、自己集合性ペプチドナノ粒子、ウイルス様粒子又はこれらの組合せである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記粒子は自己集合性ペプチドナノ粒子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記粒子はビロソームである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物の前記人間への投与は、抗原の出所に前記人間が曝露された結果の感染に対する保護免疫を提供する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記人間は49才と約64才との間の年齢である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記人間は少なくとも65才の年齢である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記用量は、8μg、10μg、15μg、20μg、25μg及び30μgからなる群より選択される少なくとも1種類の用量である、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原はインフルエンザ抗原である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記インフルエンザ抗原はヘマグルチニンインフルエンザ抗原である、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記インフルエンザ抗原はA型インフルエンザ抗原である、請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記インフルエンザ抗原はB型インフルエンザ抗原である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記インフルエンザ抗原はC型インフルエンザ抗原である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体応答率が少なくとも75%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項35】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体保持率が少なくとも95%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項36】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類の抗原の少なくとも一部とを含む組成物を高齢者に投与するステップを含み、抗体陽転率が少なくとも50%である、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項37】
少なくとも1種類のフラジェリンの少なくとも一部と、少なくとも1種類のインフルエンザ抗原の少なくとも一部とを含む組成物を高齢者に投与するステップを含む、高齢者における免疫応答を刺激する方法。
【請求項38】
配列番号2に列挙される核酸配列。
【請求項39】
配列番号4に列挙される核酸配列。
【請求項40】
配列番号6に列挙される核酸配列。
【請求項41】
配列番号3に列挙されるポリペプチド配列。
【請求項42】
配列番号5に列挙されるポリペプチド配列。
【請求項43】
配列番号7に列挙されるポリペプチド配列。
【請求項44】
高齢者集団における免疫応答を刺激する方法であって、前記高齢者集団に少なくとも3μgの配列番号1を含む組成物を投与するステップを含み、前記組成物の高齢者集団への投与によって生じる免疫応答は、
抗体陽転率が、50%を超えるか、60%を超えるか、70%を超えるか、80%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えるかであること、
抗体保持率が、50%を超えるか、60%を超えるか、70%を超えるか、80%を超えるか、90%を超えるか、95%を超えるか、99%を超えるかであること、又は、
ワクチン接種後の中和抗体力価が平均4倍以上上昇することの基準のうち1つに該当するか、あるいは、超える、高齢者集団における免疫応答を刺激する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−516469(P2013−516469A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548078(P2012−548078)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2011/020159
【国際公開番号】WO2011/084967
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(512178721)ヴァクシネイト コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】VAXINNATE CORPORATION
【Fターム(参考)】