説明

髪色再生方法

【課題】酸化型染毛剤組成物で染色した毛髪の退色した色調を、毛髪に損傷を与えることなく染毛直後の色調に容易に再生する方法の提供。
【解決手段】酸化型染毛剤組成物によって染色された後退色した毛髪に対し、当該酸化型染毛剤組成物の色に基づいて決定される、当該色とは異なる色を有し、少なくとも1種の直接染料を含有する髪色再生用組成物を適用して、当該酸化型染毛剤組成物による処理後の色調を甦らせる髪色再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化型染毛剤組成物で染色した毛髪の退色した色調を染毛直後の色調に回復させるための、髪色再生方法に関する。本発明の方法は、広い範囲の色調に対応できる。
【背景技術】
【0002】
人々は審美的な観点から、既に知られている各種毛髪カラーリング処理で自分の毛髪の色を変えることを望む場合がしばしばあり、多くの人が現在利用可能な染毛剤組成物を用いて自分の毛髪の色を好きな色に変えている。特に、酸化型染毛剤組成物は、脱色と染毛を同時に行い、色の選択の自由度を広げることができることから良く用いられている。毛髪の色が比較的暗い人は、これらの製品を使用できる。また、これら製品のカラーバリエーションは増加しつつある。
【0003】
毛髪処理における酸化型染毛剤組成物の使用は、一般に安価ではなく、またその処理には時間を要する。さらに、処理の際に使用する化学薬品は苛性であり、毛髪に損傷を与える場合がある。そのような薬品を頻繁に使用することは好ましくないため、通常は1ヶ月程度以上の間隔を置いて使用される。酸化型染毛剤組成物で染めた毛髪の色が、その1ヶ月の間にシャンプーでの洗髪や、汗や、日光の紫外線等の影響で次第に退色することは避けることができない。毛髪が次第に色褪せるにつれ、染毛直後に感じる満足感は薄らいでしまう。
【0004】
したがって、毛髪のカラーリング処理を受けた人は、処理の効果ができるだけ長く続くことを望み、あるいは、次に染毛するまでの間、毛髪をできるだけ健康な状態に保ちたいと願う。毛髪カラーリング処理直後の新鮮な色合いを長持ちさせる一方、毛髪の保護を図るには、髪色保持効果を有するシャンプー、コンディショナー、リンス、ムース、ジェル、スプレー等を用いるという方法がある。そのような髪色保持製品としては、AVEDA(商標)シャンプー及びコンディショナー、TRICOL(商標)ColorPlus(商標)、LOGICS(商標)Color Refresher(商標)、UTENA(商標)Cha Charl(商標)等が挙げられる。そのような髪色保持製品には、カラーリング処理効果を持続させたい人の要望に応えるため、一般的にある程度の量のカラーリング剤が配合されている。
【0005】
このように、毛髪に損傷を与えることなくその色を保つ製品は、既に販売されており、酸化型染毛剤組成物で染めた毛髪に毎日使用することを意図した各種製品、例えばシャンプー、コンディショナー、あるいはそれらをセット化した製品が知られている。ところで、永久(酸化型)染毛剤で染色された髪色を維持するために、この色と同じ色の製品が選択されることが多い。そのような製品は、一般に髪色保持製品と呼ばれ、染毛後の色と同じ色を有するように作られているが、数々の欠点を有している。例えば、毛髪の色を保持するために毎日使用しなければならない。さらに、染毛力が弱いため、褪せた色を甦らせるには不十分である。
【0006】
酸化型染毛剤組成物で染毛した直後の色をより正確に保つ方法として、以下の方法が知られている。その方法は、具体的には、毛髪の色と色調を目視で決定し、その決定した色と色調とをチャートに適用して少なくとも2つの製品を選択し、これら選択した製品を混合し、毛髪に適用することにより、酸化型染毛剤組成物で染毛した直後の毛髪の色を維持することができるという方法である(特許文献1参照)。毛髪の色を目で見て決定して使用する一時染毛剤製品として既に知られているものとしては、レブロン社のカラーリフレッシュリンス(商品名ROUX Fancifull)がある。
【0007】
しかしながら、仮に毛髪の色が目視で同一と判断される場合でも、退色した色を染毛直後の色に戻すために用いるべき組成物の色は人により異なるため、この方法は、酸化型染毛剤組成物で染毛した直後の色に正確に戻す方法として常に十分であるとはいい難い。例えば、毛髪の色がほとんど同じ「幾分赤みがかった明るい茶色」と目視判断される人同士であっても、その毛髪の色(即ち、「幾分赤みがかった明るい茶色」)が退色したとき、染毛直後の毛髪の色に戻す際に用いられる組成物の色は、もともと金髪だった毛髪を「幾分赤みがかった明るい茶色」に染毛した人と、もともと幾分濃い赤みがかった茶色の髪を「幾分赤みがかった明るい茶色」に染毛した人とでは異なるのである。
【0008】
上述のように、従来の色保持製品は、染毛直後の色に戻すために同じ色を補充するように設計されており、色は目視で選択する必要があったもので、仕上がりに関しては、毛髪の色を染め上がりの色に戻すことは難しい。
【0009】
従って、洗浄やシャンプーによって失われた髪色を補給する方法の開発が望まれている。
【特許文献1】米国特許第5643341号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
染毛は、前駆体とカプラーとの間の反応に基づいており、この反応により、流失特性を異にする多数の着色化合物が得られる。本発明者らは、染毛時の色が退色する主因は、シャンプーにより染毛剤の特定の色成分が洗い流されることによることを見出した。着色成分の中には、シャンプーによって非常に洗い流されやすいものもある。このように洗い流すこと、すなわち流失によって、染めた毛髪の色調の退色や変化が引き起こされる。本発明者らは、染毛処理した毛髪に流失した着色成分を供給することが可能な方法を見出した。本発明の方法では、染めた毛髪の染め上がり色に基づくのではなく染毛剤の染毛特性に基づいて色保持製品を選択する。本発明の方法は、染め上がりの毛髪色と同じ色を補給しようとするものではない点で、従来の方法と異なる。
【0011】
本発明の目的は、永久染毛処理後に次第に認められる退色を補填するための髪色再生剤として好適に用いることのできる方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、酸化型染毛剤組成物で染毛した毛髪の退色した色を、染毛直後に観察される色に戻すことにある。
【0013】
本発明の更なる一目的は、様々な色調に対応でき、また染毛直後に観察される色調を正確に再現することのできる方法を提供することにある。
【0014】
本発明の更なる目的は、毛髪の色を甦らせるために染毛を頻繁に行うことを避け、毛髪を損傷から守ることにある。本発明の更なる目的は、染毛処理された毛髪のくたびれた鈍い感じを改善し、透明感、つや、明るさ、ボリューム感、深いシェード及びしっとり感を与えることにある。
【0015】
本発明の更なる他の目的は、安全で、皮膚を刺激したり汚染したりすることのない方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、染毛時に用いた酸化型染毛剤組成物の色に基づいて髪色再生用組成物を選択する、色を再生させるための方法を見出した。本方法においては、酸化型染毛剤組成物を用いて得られた染毛当初の色が再生され、毛髪の色が退色する時期に達しても、次に予定された染毛処理時まで色を維持することができる。
【0017】
本発明は、酸化型染毛剤組成物によって染色された後退色した毛髪に対し、当該酸化型染毛剤組成物の色に基づいて決定される、当該色とは異なる色を有し、少なくとも1種の直接染料を含有する髪色再生用組成物を適用して、当該酸化型染毛剤組成物による処理後の色調を甦らせる髪色再生方法を提供するものである。
【0018】
また本発明は、使用する髪色再生用組成物の選択が、
(1)あらかじめ酸化型染毛剤組成物の色を色座標空間によりグループ分けして、そのグループ毎に対応する直接染料組成物を設定しておき、
(2)染毛に使用した酸化型染毛剤組成物の色を測定し、
(3)該測定値に基づいて、これが属する色座標空間に対応する直接染料組成物を選択する、
ことにより行われるものである前記髪色再生方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の髪色再生方法によれば、酸化型染毛剤組成物で染色した毛髪の退色した色調を、毛髪に損傷を与えることなく染毛直後の色調に容易に再生できる。
本発明の方法は、毛髪に損傷を与えずに、必要な時に何度でも、退色した毛髪の色を再生させることができる。加えて、本発明の方法によれば、色の変化を目視で判断する必要はない。本発明の方法では、限られた数の色分類を用意することによって、従来の方法が必要とした煩雑な「混合と色合わせ」を行う必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明においては、酸化型染毛剤組成物で染めた毛髪の退色した色調を染毛直後の色調に甦らせるために使用できる髪色再生用組成物の色を、当初使用した酸化型染毛剤組成物の色に基づき選択する。
【0021】
本発明で使用する髪色再生用組成物は、退色した色要素を置き換え、且つくたびれた鈍い色調を除くことによって毛髪の色を濃くするものである。また、本発明で使用する髪色再生用組成物は毛髪に損傷を与えずに毛髪の色を酸化型染毛剤で染めた当初の色調に戻すものである。
【0022】
本発明者らはこれに対応する、酸化型染毛剤組成物の色と髪色再生用組成物の色との間の関係を見出した。酸化型染毛剤組成物で染毛した直後に認められる色調に毛髪の色を戻すのに使用される組成物の色を上記の「毛髪の色の目視に基づく選択方法」では正確に選択できない場合であっても、本発明の方法によればその組成物の色を正確に選択でき、毛髪を染毛直後の色調に正確に甦らせることができる。より具体的には、2人以上の人の毛髪が染毛後には目で見てほぼ同じ「幾分赤みがかった明るい茶色」である場合であっても、例えば、元が金髪である人と幾分濃い赤みがかった茶色の人では、染めた毛髪の色が退色したときに染毛直後に認められる色に正確に戻すために各人に使用されるべき組成物の色は異なる。これは、それぞれの染毛プロセスで使用された酸化型染毛剤組成物の色が互いに異なるからである。
【0023】
同様に、見た目では毛髪の色が互いに異なる人であっても、染毛に用いた酸化型染毛剤組成物に使われている色が同じであれば、毛髪の染色が退色した時に染毛直後に認められる色に正確に戻すために使用される組成物の色が同じ場合もある。
【0024】
本発明で上記に対応して用いる関係は次のとおりである。
・様々な色の酸化型染毛剤組成物が知られている。
・これらの色をそれぞれ色座標空間(L***色空間)にプロットすると、それらの点は色空間内において一定の範囲を占めるグループに分類される。
・グループへの分類は正確に行われ、使用される一つの髪色再生用組成物の色は一つのグループに対応する。その髪色再生用組成物の色は色座標空間内の特定の範囲で表される。
【0025】
酸化型染毛剤組成物の色は、5〜12グループ、特に6〜10グループに分類するのが好ましい。このようなグループ分けの例を以下に挙げる。
【0026】
*が15〜47,a*が−2〜8,b*が9〜35の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、一つのグループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「LIGHT BROWN/LOREAL PREFERENCE 6(L*=42,a*=3,b*=10)」、「MEDIUM BROWN/LOREAL PREFERENCE 5(L*=35,a*=3,b*=10)」、「MEDIUM GOLDEN BROWN/LOREAL PREFERENCE 5G(L*=34,a*=7,b*=10)」、「DARK BROWN/LOREAL PREFERENCE 4(L*=31,a*=2,b*=10)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=51,a*=8,b*=19の点を中心とした半径r=11(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0027】
*が47〜90,a*が−2〜8,b*が9〜35の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、他の一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「LIGHTEST GOLDEN BLOND/LOREAL PREFERENCE 9G(L*=62,a*=7,b*=15)」、「GOLDEN BLOND/LOREAL PREFERENCE 8G(L*=63,a*=5,b*=14)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=76,a*=2,b*=21の点を中心とした半径r=6(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0028】
*が15〜43,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「LIGHT ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 6A(L*=41,a*=5,b*=7)」、「MEDIUM ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 5A(L*=33,a*=5,b*=7)」、「DARK ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 4A(L*=28,a*=4,b*=5)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=53,a*=4,b*=18の点を中心とした半径r=12(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0029】
*が43〜52,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「DARK ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 7A(L*=44,a*=5,b*=7)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=78,a*=2,b*=0の点を中心とした半径r=9(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0030】
*が52〜90,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「EXTRA LIGHT ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE LB01(L*=83,a*=0,b*=4)」、「EXTRA LIGHT ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9 1/2A(L*=73,a*=4,b*=6)」、「EXTRA LIGHT NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE LB02(L*=82,a*=1,b*=6)」、「LIGHTEST ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9A(L*=63,a*=5,b*=4)」、「LIGHTEST NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE 9 1/2NB(L*=87,a*=−1,b*=7)」、「ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 8A(L*=58,a*=6,b*=4)」、「NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE 9(L*=64,a*=5,b*=7)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=82,a*=0,b*=5の点を中心とした半径r=5(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0031】
*が15〜46,a*が8〜12,b*が0〜35の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「LIGHT AUBURN/LOREAL PREFERENCE 6R(L*=46,a*=10,b*=15)」、「DARK REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 7SF(L*=45,a*=9,b*=12)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=55,a*=25,b*=16の点を中心とした半径r=4(好ましくは2)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0032】
*が15〜46,a*が12〜30,b*が0〜35の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「INTENSE DARK RED/LOREAL PREFERENCE RR04(L*=28,a*=13,b*=6)」、「INTENSE RED/LOREAL PREFERENCE RR06(L*=33,a*=20,b*=8)」、「INTENSE RED KAPPA/LOREAL PREFERENCE RR07(L*=43,a*=22,b*=20)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=50,a*=32,b*=10の点を中心とした半径r=8(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0033】
*が46〜90,a*が8〜30,b*が0〜35の範囲の色の酸化型染毛剤組成物は、更なる一グループを構成すると考えることができる。このグループに入る酸化型染毛剤組成物の例としては、「LIGHTEST AUBURN/LOREAL PREFERENCE 7LA(L*=54,a*=9,b*=14)」、「REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 8BA(L*=55,a*=11,b*=18)」、「LIGHT GOLDEN REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9GR(L*=61,a*=10,b*=15)」等という色名で販売されているものが挙げられる。L*=55,a*=17,b*=23の点を中心とした半径r=8(好ましくは4)の円に属する色調を有する髪色再生用組成物を、このグループに含まれる酸化型染毛剤組成物で染色された毛髪に対して使用すると、毛髪の色を染毛直後の色にほぼ甦らせることができ、染毛直後の色調と満足感が蘇る。
【0034】
このようにして、本発明の方法は様々な酸化型染毛剤組成物の色に適用することができる。
【0035】
「酸化型染毛剤組成物の多くの色数」対「髪色再生用組成物の色数」は多数対一とすることができるので、色合わせが簡単で、色の選択も簡単且つ正確に行うことができる。
【0036】
本明細書において、酸化型染毛剤組成物及び髪色再生用組成物の「色」又は「色調」は、次のようにして測定される色座標空間(L***色空間)の値で定義される。
・酸化型染毛剤組成物あるいは髪色再生用組成物11gを白ヤギの毛束(中国チベット自治区に住む2才以上の白ヤギの毛を洗浄し、10cmに均一に切り取り、グラム単位で束にしたもの。L*=84〜87,a*=−3〜0,b*=9〜12の範囲の色を有する)1gに均一に塗布し、30℃の恒温槽に20分間静置し、40℃の水ですすぎ、シャンプー、リンス剤処理、乾燥を行う。得られたヤギの毛の色のL***値を色彩色差計(CR-200,ミノルタ社)で測定する。
【0037】
本発明の実施態様に係る色を甦らせるための方法で用いられる髪色再生用組成物としては、酸性直接染料と有機溶剤とを含有し、酸性のpHを有する組成物が挙げられる。
【0038】
酸性直接染料としては、黄色203号(D&C Yellow No.10(CI 47005))、だいだい色205号(D&C Orange No.4(CI 15510))、赤色227号(D&C Red No.33(CI 17200))、紫色401号(Ext. D&C Violet No.2(CI 607301))、黒色401号(CI 20470)が挙げられる。有機溶剤としては、ベンジルアルコール、2-ベンジルオキシエタノール等の芳香族アルコール;炭酸エチレン、炭酸プロピレン等の低級カーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン等のラクトン類;N-メチルピロリドン等のピロリドン類が挙げられる。また、有機溶剤を水に溶かす溶解補助剤としてエタノール、プロピレングリコール等を使用するのが好ましい。組成物はpH2〜6に維持するのが好ましく、特にpH2〜5、更にはpH2〜4に維持するのが好ましい。pHは従来の方法で調整することができる。タレ等を防止するために増粘剤を加えることができ、これにより容易に毛髪に適用することができる。
【0039】
酸性直接染料及び有機溶剤を含む酸性の組成物を髪色再生用組成物として使用すると、毛髪のくたびれた鈍い感じが改善され、毛髪に透明感、艶、輝き、こし、はり、深いシェード、扱いやすさを付与することができる。
【0040】
本発明で使用する髪色再生用組成物の他の一実施形態として、塩基性直接染料と有機溶剤を含有し、弱酸性〜アルカリ性の組成物が挙げられる。塩基性直接染料としては「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第8版)に記載され商品名Alianolで販売されている塩基性染料及び欧州特許第970685号明細書に記載されている染料が挙げられる。欧州特許第970685号明細書の全内容を、本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。有機溶剤としては、前述の酸性直接染料と共に用いられるものとして挙げたものと同様のものを使用することができる。この組成物はpH6〜12に維持するのが好ましく、更にはpH8〜11に維持するのが好ましい。pHは従来の方法で調整することができる。タレ等を防止するために増粘剤を加えることができ、これにより容易に毛髪に適用することができる。
【0041】
本発明において使用される髪色再生用組成物には、必要に応じて、化粧料組成物に一般的に用いられる化粧成分を加えることができる。また、炭酸プロピレンを加えることが好ましい。炭酸プロピレンは染料の毛髪への浸透を促進し、毛髪の肌理と質を改善する。
【0042】
本発明において使用される髪色再生用組成物は、ジェル、クリーム、液体、泡等の剤型に製造することができ、また、エアゾールの剤型であってもよい。
【0043】
本発明で使用される髪色再生用組成物を毛髪に適用する方法には、乾いた毛髪やタオルで拭いた濡れた毛髪に適量の髪色再生用組成物を毛髪全体に均一になるように塗り、3〜45分置いた後、ぬるま湯ですすぎ(シャンプーしてからすすぐのも任意である)、乾燥する方法や、シャンプー後にタオルで拭いた毛髪に適量の髪色再生用組成物を毛髪全体に均一になるように塗り、3〜45分置いた後、ぬるま湯ですすぎ(シャンプーしてからすすぐのも任意である)、乾燥する方法が挙げられる。
【0044】
本発明の方法は単純で、多くの時間を要さない。本発明で使用する髪色再生用組成物を適用するための手順としては、例えば、次のものが挙げられる。
【0045】
手袋をはめ、湿らせた毛髪に均一に塗る。10分放置する。シャンプーで洗い流す。通常のヘアケアを行う。週1回、もしくは毛髪の色を美しく保つのに必要とされる頻度で使用する。
【0046】
必要に応じ、以下に示す簡単なストランドテストをして事前に結果を知ることができる。
1)表面に見えない部分の毛髪(1/2〜1インチ)を湿らせる。
2)髪色再生用組成物(およそ10セント硬貨大)を適用し、十分に揉み込む。
3)10分後、シャンプーし、すすぐ。
4)乾燥し、毛髪の色の回復具合を検査する。
【0047】
本発明で使用する髪色再生用組成物を適用するための他の手順として、例えば、次のものが挙げられる。
・シンクで、またはシャワーで毛髪を湿らせる(ずぶ濡れでなく)。
・手袋をはめ、およそ50セント硬貨の量を掌に搾り出す(およそ小さじ2杯)。量は毛髪の長さに応じて調整する。
・毛髪に揉み込む。
・毛髪全体に均一にいきわたるまで摺りこむ。
・10分間放置する。
・シャンプーで髪色再生用組成物を洗い流し、水に色が出なくなるまですすぐ。
・通常のヘアケアをし、スタイリングする。
【実施例】
【0048】
実施例1〜8
髪色再生用組成物として下記表1に示す組成物1〜8を調製した。L***値を除き、特記しない限りすべての量は重量%である。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例9
「LIGHT BROWN/LOREAL PREFERENCE 6」で染毛して7日目の2名、「MEDIUM BROWN/LOREAL PREFERENCE 5G」で染毛して7日目の2名、及び「DARK BROWN/LOREAL PREFERENCE 4」で染毛して7日目の2名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、本発明で使用する髪色再生用組成物(表1中、実施例1の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0051】
実施例10
「LIGHT GOLDEN BLOND/LOREAL PREFERENCE 9G」で染毛して9日目の4名、及び「GOLDEN BLOND/LOREAL PREFERENCE 8G」で染毛して9日目の4名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例2の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0052】
実施例11
「LIGHT ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 6A」で染毛して14日目の3名、「MEDIUM ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 5A」で染毛して14日目の3名、及び「DARK ASH BROWN/LOREAL PREFERENCE 4A」で染毛して14日目の3名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例3の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0053】
実施例12
「DARK ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 7A」で染毛して10日目に入り、自分の毛髪の色に不満を感じるようになった7名は、髪色再生用組成物(表1中、実施例4の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0054】
実施例13
「EXTRA LIGHT ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE LB01」で染毛して8日目の1名、「EXTRA LIGHT ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9 1/2A」で染毛して8日目の1名、「EXTRA LIGHT NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE LB02」で染毛して8日目の1名、「LIGHTEST ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9A」で染毛して8日目の1名、「LIGHTEST NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE 9 1/2NB」で染毛して8日目の1名、「ASH BLOND/LOREAL PREFERENCE 8A」で染毛して8日目の1名、及び「NATURAL BLOND/LOREAL PREFERENCE 9」で染毛して8日目の1名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例5の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0055】
実施例14
「LIGHT AUBURN/LOREAL PREFERENCE 6R」で染毛して9日目の4名、及び「DARK REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 7SF」で染毛して9日目の4名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例6の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0056】
実施例15
「INTENSE DARK RED/LOREAL PREFERENCE RR04」で染毛して7日目の3名、「INTENSE RED/LOREAL PREFERENCE RR06」で染毛して7日目の3名、及び「INTENSE RED KAPPA/LOREAL PREFERENCE RR07」で染毛して7日目の3名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例7の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0057】
実施例16
「LIGHTEST AUBURN/LOREAL PREFERENCE 7LA」で染毛して12日目の3名、「REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 8BA」で染毛して12日目の3名、及び「LIGHT GOLDEN REDDISH BLOND/LOREAL PREFERENCE 9GR」で染毛して12日目の3名は、皆自分の毛髪の色に不満を感じるようになって、髪色再生用組成物(表1中、実施例8の組成物)を使用した。使用後、各人は皆満足感(色、感触等)を得た。
【0058】
本発明を実施例によって十分に説明したが、種々の変更や修正を加えることができることは当業者には明白であろう。従って、上述した詳細な説明は、本発明の範囲を規定すべく意図されている特許請求の範囲(等価物すべてを含む)に基づいて理解されるべく意図されている。それ故に、各種の変更や修正は、本発明の範囲から逸脱しない限り、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化型染毛剤組成物によって染色された後退色した毛髪に対し、当該酸化型染毛剤組成物の色に基づいて決定される、当該色とは異なる色を有し、少なくとも1種の直接染料を含有する髪色再生用組成物を適用して、当該酸化型染毛剤組成物による処理後の色調を甦らせる髪色再生方法。
【請求項2】
髪色再生用組成物が、酸性直接染料及び有機溶剤を含有するpH2〜6の組成物であって、この酸性直接染料を前記毛髪に浸透させてこれを着色させるものである請求項1記載の髪色再生方法。
【請求項3】
髪色再生用組成物が、塩基性直接染料及び有機溶剤を含有するpH6〜12の組成物であって、この塩基性直接染料を前記毛髪に浸透させてこれを着色させるものである請求項1記載の髪色再生方法。
【請求項4】
使用する髪色再生用組成物の選択が、
(1)あらかじめ酸化型染毛剤組成物の色を色座標空間によりグループ分けして、そのグループ毎に対応する直接染料組成物を設定しておき、
(2)染毛に使用した酸化型染毛剤組成物の色を測定し、
(3)該測定値に基づいて、これが属する色座標空間に対応する直接染料組成物を選択する、
ことにより行われるものである請求項1〜3のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項5】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が15〜47,a*が−2〜8,b*が9〜35の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=51,a*=8,b*=19の点を中心とした半径r=11の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項6】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が47〜90,a*が−2〜8,b*が9〜35の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=76,a*=2,b*=21の点を中心とした半径r=6の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項7】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が15〜43,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=53,a*=4,b*=18の点を中心とした半径r=12の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項8】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が43〜52,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=78,a*=2,b*=0の点を中心とした半径r=9の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項9】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が52〜90,a*が−2〜8,b*が0〜9の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=82,a*=0,b*=5の点を中心とした半径r=5の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項10】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が15〜46,a*が8〜12,b*が0〜35の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=55,a*=25,b*=16の点を中心とした半径r=4の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項11】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が15〜46,a*が12〜30,b*が0〜35の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=50,a*=32,b*=10の点を中心とした半径r=8の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。
【請求項12】
酸化型染毛剤組成物の色が色座標空間(L***色空間)でL*が46〜90,a*が8〜30,b*が0〜35の範囲に入るとき、該色座標空間におけるL*=55,a*=17,b*=23の点を中心とした半径r=8の領域に属する色調を有する髪色再生用組成物を用いるものである請求項1〜4のいずれかに記載の髪色再生方法。

【公開番号】特開2006−111642(P2006−111642A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14208(P2006−14208)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【分割の表示】特願2002−305746(P2002−305746)の分割
【原出願日】平成14年10月21日(2002.10.21)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】