説明

魚の品質測定装置および品質測定方法

【課題】魚に刺し傷をつけることなく、魚の品質を正確に測定できるようにすることを目的とする。
【解決手段】魚34に交流電流を流す電流用電極3a,3d及び電圧を検出する電圧用電極3b,3cを、水平方向に振動させながら魚34の表面に押し付けることによって、魚34の表面34aを覆っている、ぬめりや汚れの層36を除去しつつ、前記各電極3a〜3dを魚34の表面34aに押圧接触させて安定した接触を確保し、魚34に交流電流を流してインピーダンスを測定し、魚34の脂質含有量を演算するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の脂質含有量や鮮度等の品質を測定する装置および測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、マグロなどの高級大型魚では、トロや赤身等の全体の肉質は、尾を切断した断面から経験を有する人間の肉眼による類推判定によって行なわれている。このような人間の肉眼による類推判定では、魚の品質を正確にかつ客観的に評価しているとは必ずしも言えないことから、測定データに基づいた客観的な品質の評価が求められる。
【0003】
このため、例えば、特許文献1には、魚に測定用の電極を挿入して抵抗値を測定することによって肉質を判別する技術が開示され、あるいは、特許文献2には、魚類の肉組織の酸化還元電位を測定して鮮度を測定する技術が開示されている。
【0004】
これら特許文献1,2に開示されている技術では、一般に、魚体の表面は、ぬめり、汚れ等で覆われているために、抵抗値や酸化還元電位等を正確に測定して測定データを取得するに際しては、測定用の電極の先端を鋭利にして魚体に電極を刺し通して測定するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−222022号公報
【特許文献2】特許第3933396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献1,2では、そのいずれにおいても、鋭利な電極先端を魚体に刺し通して測定しなければならないために、魚体に刺し傷を付けてしまうこととなり、その傷口から魚体に傷みが発生してその商品価値を損ねてしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みて為されたものであって、魚体に傷を付けることなく、魚の脂質含有量や鮮度等の品質を高精度に測定することができる装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0009】
(1)本発明の魚の品質測定装置は、魚に押し当てられる複数の電極と、 前記複数の電極に、振動運動および回転運動の少なくともいずれか一方の運動を付与する運動付与手段と、前記複数の電極に接続されて電気的測定を行う測定手段とを備えている。
【0010】
電気的測定とは、魚の品質の測定に用いる電気的な測定、例えば、インピーダンスの測定などをいう。
【0011】
運動付与手段によって、複数の電極に付与される運動の強度や速度などは、魚の種類やサイズ等に応じて調整できるようにするのが好ましい。
【0012】
本発明の魚の品質測定装置によると、複数の電極を、振動および回転の少なくともいずれか一方の運動をさせながら、魚の表面に押し当てることによって、前記複数の各電極の先端部を、魚の表面に擦り合わせて、魚の表面を覆っているぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去して良好な接触状態を得ることができ、この状態で複数の電極を用いて電気的測定を行うことが可能となるので、魚に電極を刺し通す必要がなく、魚に刺し傷を付けることなく、魚の脂質や鮮度などの品質を高精度に測定することができる。
【0013】
(2)本発明の魚の品質測定装置の好ましい実施態様では、前記複数の電極は、電流用電極と電圧用電極とを含み、前記測定手段は、前記電流用電極を介して前記魚に交流電流を流すと共に、前記電圧用電極によって検出される電圧に基づいて、インピーダンスを測定する。
【0014】
この実施態様によると、魚に交流電流を流して電圧を検出することによってインピーダンスを測定することができる。
【0015】
(3)上記(2)の実施態様では、前記測定手段によって測定される前記インピーダンスに基づいて、前記魚の脂質を演算する演算手段と、前記演算手段による演算結果を表示する表示手段とを備えるようにしてもよい。
【0016】
前記演算手段は、魚の脂質を、脂質含有量あるいは脂質含有率として演算するのが好ましい。
【0017】
この実施態様によると、測定したインピーダンスに基づいて、魚の脂質含有量や脂質含有率を演算して表示手段に表示することができる。
【0018】
(4)本発明の魚の品質測定装置の別の実施態様では、前記運動付与手段が、振動モータおよび超音波振動子の少なくともいずれか一方を備え、前記複数の電極に振動運動を付与する。
【0019】
前記振動運動は、魚に押し当てられる前記複数の電極が、魚の表面に沿って振動するのが好ましく、魚の種類やサイズ等に応じて、振動の強度を調整できるのが好ましい。
【0020】
この実施態様によると、複数の電極を、振動させながら、魚の表面に押し当てることによって、魚の表面を覆っている、ぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去して良好な接触状態を得て、魚の品質を測定することができる。
【0021】
(5)本発明の魚の品質測定装置の好ましい実施態様では、前記複数の電極が、三角形状の各頂点に対応するように配置される少なくとも三つの電極を含んでいる。
【0022】
この実施態様によると、複数の電極が、三角形状の三つの各頂点に配置されるので、三つの電極を直線状に配置するのに比べて、各電極を、丸みを帯びた魚の表面に沿わせて密着させ易くなり、再現性がよく正確な測定が可能となる。
【0023】
(6)上記(5)の実施態様では、前記複数の電極が、前記三角形状の内側に配置される一つの電極を更に含んでもよい。
【0024】
この実施態様によると、三角形状の三つの各頂点及びその内側に四つの電極が配置されるので、四つの電極を直線状に配置するのに比べて、各電極を、丸みを帯びた魚の表面に沿わせて密着させ易くなり、再現性がよく正確な測定が可能となる。また、電圧を検出する二つの電圧用電極からなる組として、方向および間隔の異なる二組を用いることができ、方向及び間隔の異なる電流路の2点間の電圧をそれぞれ検出してインピーダンスをそれぞれ測定することができ、これによって、精度の高い測定が可能となる。
【0025】
(7)本発明の魚の品質測定方法は、振動運動および回転運動の少なくともいずれか一方の運動をする運動部材を、魚の表面の測定部位に押し当てて前記測定部位を処理するステップと、処理された前記測定部位に押し当てられた複数の電極を用いて電気的測定を行うステップとを含んでいる。
【0026】
本発明の魚の品質測定方法によると、振動および回転の少なくともいずれか一方の運動をする運動部材を、魚の表面の測定部位に押し当てて処理するので、運動部材が、魚の表面の測定部位に擦り合わされて、表面を覆っているぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去することができ、この測定部位に、複数の電極を押し当てて良好な接触状態で電気的測定を行うことが可能となるので、魚に電極を刺し通す必要がなく、魚に刺し傷をつけることなく、魚の品質を測定することができる。
【0027】
(8)本発明の魚の品質測定方法の好ましい実施態様では、前記運動部材を、前記複数の電極で兼用する。
【0028】
この実施態様によると、魚の表面の測定部位を処理してぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去する運動部材を、複数の電極で兼用するので、複数の電極によって、魚の表面の測定部位を処理し、その後、引き続いて電気的測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0029】
このように本発明の魚の品質測定装置によれば、複数の電極を、振動および回転の少なくともいずれか一方の運動をさせながら、魚の表面に押し当てることによって、前記複数の各電極の先端部を、魚の表面に擦り合わして、表面を覆っているぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去して良好な接触状態を得ることができ、この状態で複数の電極を用いて電気的測定を行うことが可能となるので、魚に電極を刺し通す必要がなく、魚に刺し傷をつけることなく、魚の脂質や鮮度等の品質を精度よく測定することができる。
【0030】
また、本発明の魚の品質測定方法によれば、運動部材を、振動および回転の少なくともいずれか一方の運動をさせながら、魚の表面の測定部位に押し当てて処理するので、運動部材が、魚の表面の測定部位に擦り合わされて、測定部位を覆っているぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去することができ、ぬめり等が除去された測定部位に、複数の電極を押し当てて良好な接触状態で電気的測定を行うことが可能となるので、魚に電極を刺し通す必要がなく、魚に刺し傷をつけることなく、魚の品質を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る魚の品質測定装置の正面図である。
【図2】図2は図1の各電極の要部の断面構成を拡大して示す図である。
【図3】図3は他の実施形態の電極の要部の断面構成を拡大して示す図である。
【図4】図4は図1の魚の品質測定装置の構成を示すブロック図である。
【図5】図5は魚の測定部位の一例を示す図である。
【図6】図6は測定用電極を魚の表面に押し当てた状態を示す断面図である。
【図7】図7は他の実施形態の電極の配置を示す図である。
【図8】図8は本発明の他の実施形態の電極の構成を示す図である。
【図9】図9は本発明の更に他の実施形態の電極の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0033】
(実施形態1)
図1に本発明の一実施形態の魚の品質測定装置の概略構成を示す。
【0034】
図1を参照して、この実施形態の魚の品質測定装置(以下「品質測定装置」という)1は、作業者が手で把持できる程度のサイズで大略直方体状のケース2を備えている。このケース2はその下部に4本の測定用の電極3a〜3dが装備されている。この品質測定装置1では、当該品質測定装置1の4本の電極3a〜3dを、品質測定対象である魚の表面に後述のようにして押し当ててインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて、魚の脂質含有量を測定することができる。なお、品質測定対象となる魚は、4本の測定用電極3a〜3dをその表面に押し当ててインピーダンスを測定することができる魚であればよく、その種類は何等問わない。
【0035】
4本の電極3a〜3dは、ケース2下部に、図の左右方向に沿って直線状に等間隔に並設されており、その左右方向両側2本の電極3a,3dは、魚に微弱な交流電流を流して電流路を形成する電流用電極であり、内側2本の電極3b,3cは、電流路内の2点間電圧を検出するための電圧用電極である。
【0036】
ケース2の正面の上方位置には、測定したインピーダンスや脂質含有量等を表示するためのLCD等からなる表示部4が備えられており、ケース2の正面の下方位置には、電源キー、後述のように振動させる振動キー、測定を開始する測定キー等の各種の操作キー5が配置されている。
【0037】
この実施形態では、魚に傷を付けることなく、魚の脂質含有量を正確に測定するために、各電極3a〜3dが、振動できるように構成されている。
【0038】
図2に、電極3aをケース2の下部に、振動可能に保持する構成を拡大して示す。なお、いずれの電極3a〜3dもその構成は同じであるので、電極3aを代表的に示す。図2を参照して、ケース2の下面には、可撓性を有する樹脂製の振動カバー6が取付けられ、この振動カバー6の下方先端の開口内側に金属製の電極ホルダ7が装備されている。この電極ホルダ7にステンレス等の金属からなる電極3aがネジ止めされている。
【0039】
電極3aは、水平方向に振動させながら魚の表面に押し当てるにつれて、魚の表面から剥がれた、ぬめりや汚れ等を当該電極3aの周囲へ円滑に除去できるように、その先端部3a1は、中央部がやや突出した球面状になっている。なお、電極3aの先端部3a1は、上記球面状に限らず、平面状であってもよく、あるいは、図3に示すような円錐状であってもよい。
【0040】
また、魚の種類によっては、魚の表面のぬめりや汚れに加えて、鱗も除去して測定を行いたい場合があるので、かかる場合には、各電極3a〜3dそれぞれの先端部は、鱗を除去しやすいように、鋭角に形成してもよいし、あるいは、溝部等を形成してもよい。
【0041】
電極ホルダ7の上面の周縁には、電極バネ8の下端側が圧接され、電極バネ8の上端側は、電極板9に圧接されており、電極3aを保持する電極ホルダ7と電極板9との電気的な接続が図られている。電極板9は、該電極板9に半田付けされたワイヤ10を介して図示略の基板のインピーダンス測定回路に接続されている。
【0042】
電極ホルダ7上方のケース2内には、カップリング12を介して回転軸13に取付けられた偏心回転子14を有する小型の振動モータ15aが配設されている。この振動モータ15aの偏心回転子14の下方遊端側は、電極ホルダ7の上面中央部の取付け凹部11に嵌合連結されている。これによって、振動モータ15aが回転することによって、電極3aが、水平方向に振動し、その振動の変位は、振動カバー6によって略吸収されてケース2には、殆ど伝達されないように構成されている。
【0043】
この実施形態では、電極3aを上記振動モータ15aによって水平方向へ振動させながら魚の表面に押し当て、当該魚の表面に沿うように振動する電極3aによって、魚の表面のぬめりや汚れをその電極3a先端部3a1の周囲へと除去しつつ、魚の表面に当該電極3a先端部3a1を密着させることができる。他の電極3b〜3dにおいても同様である。すなわち、各電極3b〜3dも、それぞれ、図2や図3と同様の構成を有し、図4で示す振動モータ15b〜15dにより振動させて魚の表面に押し当てることができる。
【0044】
図4は、図1の品質測定装置1の構成を示すブロック図であり、図1に対応する部分には、同一の参照符号を付す。
【0045】
この実施形態の品質測定装置1は、上述の4本の電極3a〜3dに接続されたインピーダンス測定回路20と、各電極3a〜3dをそれぞれ振動させる各振動モータ15a〜15dと、各振動モータ15a〜15dそれぞれを駆動するモータ駆動回路21a〜21dと、各部を制御すると共に、インピーダンス測定回路20から測定データが与えられるCPU22と、上述の表示部4と、上述の操作キー5の入力が与えられるキー入力回路23と、測定データなどを記憶する外部メモリ24と、各部に電源を供給する電源回路25と、2次電池26への充電を制御する充電回路27と、を備えている。
【0046】
なお、振動モータ15a〜15dそれぞれの回転数を可変制御できるようにし、魚の種類や魚のサイズなどに応じて、振動の強度を調整できるようにしてもよい。
【0047】
インピーダンス測定回路は、50kHzの矩形波からSIN波を生成するSIN波形発生回路28と、このSIN波に基づいて、2本の電流用電極3a,3dを介して魚に一定電流を流す定電流駆動回路29を備える一方、2本の電圧用電極3b,3cに接続されると共に、魚と内部の校正用抵抗との接続を切換えて校正するための校正回路30と、校正回路30を介して与えられる2本の電圧用電極3b,3cによって検出される電圧を差動増幅する差動増幅回路31と、差動増幅回路31の出力を整流する整流回路32と、整流回路32の出力をA/D変換してCPU22に与えるA/D変換回路33とを備えており、いわゆる、4電極法によってインピーダンスを測定する。
【0048】
CPU22は、上述の操作キー5の内の振動キーが操作されると、モータ駆動回路21a〜21dを介して各振動モータ15a〜15dを駆動し、各電極3a〜3dを水平方向に振動させる。また、演算手段としてのCPU22は、操作キー5の内の測定キーが操作されると、モータ駆動回路21a〜21dによる振動モータ15a〜15dの駆動を停止させ、インピーダンスの測定を開始する。すなわち、SIN波形発生回路28を制御し、定電流駆動回路29を介して、定電流化した正弦波を電流用電極3a,3dを介して魚に流し、電圧用電極3b,3cで検出される電圧を、校正回路30、差動増幅回路31、整流回路32およびA/D変換回路33を介して取込んでインピーダンスを測定し、測定したインピーダンスに基づいて、脂質含有量を演算し、その結果を表示部4に表示すると共に、外部メモリ24に記憶する。
【0049】
次に、この品質測定装置1を用いた魚の脂質含有量の測定の手順を説明する。
【0050】
作業者は、品質測定装置1を把持して操作キー5の内の電源キーを操作し、電源をONにし、更に、操作キー5の内の振動キーを操作し、各電極3a〜3dを振動させ、測定対象の魚の測定部位、例えば、図5に示される魚34の表面の背側の測定部位35に、各電極3a〜3dを振動させながら押し当てる。
【0051】
このように各電極3a〜3dを、水平方向に振動させながら、ぬめりや汚れ等で覆われた魚34の表面に押し付けてゆくことによって、例えば図6で電極3aの先端部3a1の一部を拡大して示すように、水平方向に振動する電極3aの先端部3a1と魚34の表面34aのぬめりや汚れ等の層36とが擦り合わされることになり、これによって、魚34の表面34aのぬめりや汚れ等の層36が電極3aの周囲へと除去され、電極3aの先端部3a1と魚34の表面34aとの良好な接触が得られる。このことは他の電極3b〜3dでも同様である。
【0052】
この状態で、作業者が操作キー5の内の測定キーを操作すると、各電極3a〜3dの振動が停止され、電流用電極3a,3dから魚に交流電流を流し、電圧用電極3b,3cによって電圧を検出してインピーダンスを測定し、脂質含有量が演算されて表示部4に表示されて測定が終了する。なお、本発明の他の実施形態として、振動キーを操作することによって、各電極3a〜3dを所定時間に亘って振動させた後、自動的に振動を停止してインピーダンスを測定し、脂質含有量を演算して表示するようにしてもよい。また、魚の種類などによって、測定に与える振動の影響が少ない場合には、各電極3a〜3dを振動させながら、インピーダンスを測定してもよい。
【0053】
このように各電極3a〜3dを振動させながら魚34に押し付けることによって、魚34の表面34aを覆っているぬめりや汚れ等の層36を除去しつつ、各電極3a〜3dを魚34の清浄な表面34aに押圧接触させることができ、これによって、魚34に刺し傷を付けることなく、安定した接触を確保することができ、魚のインピーダンスを正確に測定して脂質含有量を算出することができる。
【0054】
なお、上述のように、魚の種類によっては、魚の表面のぬめりや汚れに加えて、鱗も除去してインピーダンスを測定したい場合がある。かかる場合には、鱗の除去に適した形状、例えば、先端が鋭角に形成されたり、溝部等が形成された複数の電極を備える品質測定装置を用いて、鱗の除去に適した振動強度で上述と同様に行えばよい。あるいは、品質測定装置に、ぬめりや汚れ等を除去する4本の電極と、ぬめりや汚れに加えて鱗を除去する4本の電極とを交換して装着使用することができるようにしてもよい。
【0055】
この実施形態では、振動する4本の電極3a〜3dの部分を、ケース2と一体に構成したけれども、本発明の他の実施形態として、振動する4本の電極3a〜3dの部分と、インピーダンス測定回路20を含む品質測定装置本体とを分離し、両者を有線また無線で接続してもよい。
【0056】
また、この実施形態では、各電極3a〜3dを各振動モータ15a〜15dによって個別に振動できるようしたけれども、本発明の他の実施形態として、各電極3a〜3dを含むケース2の全体を一体的に振動させてもよい。
【0057】
また、この実施形態では、振動モータ15a〜15dによって4本の各電極3a〜3dを、魚の表面に沿うように水平方向に振動させたけれども、本発明の他の実施形態として、振動モータ15a〜15dに代えて超音波振動子等を用いて各電極を水平方向に振動させるようにしてもよい。
【0058】
また、振動に代えて、各電極3a〜3dを、その軸回りにモータで回転させて魚の表面を覆っている、ぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を各電極3a〜3dの外周側へ除去するようにしてもよく、更に、振動および回転を同時に行うようにしてもよい。
【0059】
この実施形態では、4本の各電極3a〜3dの長さは、同一の固定長であったけれども、本発明の他の実施形態として、4本の電極3a〜3dの内の少なくとも内側の2本の電圧用電極3a,3bは、その基端側を、ケース2内部にバネ等の付勢部材を介して取り付けて伸縮可能とし、4本の電極3a〜3dを魚の表面に押し付けた際に、4本の各電極3a〜3dが、丸味を帯びた魚の外形に沿ってその表面に容易に密着できるようにしてもよい。
【0060】
また、この実施形態では、4本の電極3a〜3dは、一直線状に配置したけれども、本発明の他の実施形態他として、丸味を帯びた魚の外形に沿ってその表面に、各電極3a〜3dが容易に密着できるように、例えば、図7(a)に示されるように、矩形の各頂点に対応するように配置してもよく、あるいは、図7(b)に示されるように、台形状の各頂点に対応するように配置してもよい。この場合、間隔の広い一対の電極を、電流用電極3a,3dとし、間隔の狭い一対の電極を、電圧用電極3b,3cとするのが好ましい。
【0061】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、2本の電流用電極3a,3dと2本の電圧用電極3b,3cとの合計4本の測定用の電極を備えていたけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、図8に示すように、3本の電極(3a,3b),3c,3dを備える構成とし、1本の電極(3a,3b)を、電流用と電圧用とに兼用する兼用電極としてもよい。すなわち、この兼用電極(3a,3b)と電流用電極3dとによって魚に交流電流を流し、兼用電極(3a,3b)と電圧用電極3cとによって電圧を検出するものである。この場合、3本の電極(3a,3b),3c,3dが、丸味を帯びた魚の外形に沿ってその表面に容易に密着できるように、三角形状の各頂点に対応するように配置するのが好ましい。
【0062】
上述の各実施形態では、2本の電圧用電極3b,3cは、その配列方向及び間隔(距離)が固定であったけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、図9に示すように、三角形状の各頂点に対応する3本の電極(3a,3b),3c,3dに加えて、更に、電圧用追加電極3c’を三角形状の内側に配置し、兼用電極(3a,3b)と電圧用電極3cとの間、及び、兼用電極(3a,3b)と電圧用追加電極3c’との間で、それぞれ電圧を検出して、それぞれインピーダンスを測定するようにしてもよい。
【0063】
このように構成することによって、兼用電極(3a,3b)と電流用電極3dとによって魚に交流電流を流して形成される電流路の内、方向及び間隔(距離)が異なる2組の電圧用電極(3a,3b),3c:(3a,3b),3c’間の各電圧をそれぞれ検出して、各インピーダンスをそれぞれ測定することができ、全体的なインピーダンスと局所的なインピーダンスの両者を測定できることになる。これによって、再現性がよく、しかも、精度の高い測定が可能となる。
【0064】
上述の図7〜図9の各電極3a〜3dの配置や構成は、魚以外にも、牛や豚などの家畜、犬や猫などのペット、あるいは、人体などの曲率を持った部位の脂質などの測定に採用することができる。
【0065】
上述の各実施形態では、電流用電極3a,3d及び電圧用電極3b,3cは、いずれも振動や回転などの運動を行うものであったけれども、本発明の他の実施形態として、各電極3a〜3dは、振動や回転などの運動を行わない固定の電極としてもよい。この固定の電極は、上述の図7〜図9等の配置や構成を採用することができ、魚以外にも、牛や豚などの家畜、犬や猫などのペット、あるいは、人体などの曲率を持った部位の脂質などの測定に有効である。この場合、魚の品質の測定方法では、次の手順で測定を行う。すなわち、振動および回転の少なくともいずれか一方の運動を行う運動部材を備える処理装置を予め準備し、インピーダンスを測定するのに先立って、処理装置の運動部材を、振動等の運動をさせながら、魚の表面の測定部位に押し当てて、測定部位の表面を覆っている、ぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去する処理を行なう。この処理装置による測定部位の処理後に、ぬめりや汚れ等が除去された魚の表面の測定部位に、品質測定装置の固定の各電極3a〜3dを押し当ててインピーダンスを測定すればよい。運動部材は、振動や回転の運動によって、魚の表面を覆っている、ぬめりや汚れ、更に、必要に応じて鱗を除去できればよく、上述の各電極3a〜3dと同様の形状としてもよい。処理装置は、振動モータや超音波振動子によって運動部材を振動させ、あるいは、モータによって運動部材を回転させればよく、品質測定装置と一体化してもよい。
【0066】
上述の各実施形態では、インピーダンスを測定したけれども、本発明の他の実施形態として、例えば、酸化還元電位の測定などの他の電気的測定を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、魚を傷つけることなく、魚の脂質や鮮度などの品質を測定するのに有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 魚の品質測定装置
2 ケース
3a,3d 電流用電極
3b,3c 電圧用電極
4 表示部
5 操作キー
15a〜15d 振動モータ
20 インピーダンス測定回路
22 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚に押し当てられる複数の電極と、
前記複数の電極に、振動運動および回転運動の少なくともいずれか一方の運動を付与する運動付与手段と、
前記複数の電極に接続されて電気的測定を行う測定手段と、
を備えることを特徴とする魚の品質測定装置。
【請求項2】
前記複数の電極は、電流用電極と電圧用電極とを含み、
前記測定手段は、前記電流用電極を介して前記魚に交流電流を流すと共に、前記電圧用電極によって検出される電圧に基づいて、インピーダンスを測定する、
請求項1に記載の魚の品質測定装置。
【請求項3】
前記測定手段によって測定される前記インピーダンスに基づいて、前記魚の脂質を演算する演算手段と、
前記演算手段による演算結果を表示する表示手段とを備える、
請求項2に記載の魚の品質測定装置。
【請求項4】
前記運動付与手段が、振動モータおよび超音波振動子の少なくともいずれか一方を備え、前記複数の電極に振動運動を付与する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の魚の品質測定装置。
【請求項5】
前記複数の電極が、三角形状の各頂点に対応するように配置される少なくとも三つの電極を含む、
請求項1ないし4のいずれかに記載の魚の品質測定装置。
【請求項6】
前記複数の電極が、前記三角形状の内側に配置される一つの電極を更に含む、
請求項5に記載の魚の品質測定装置。
【請求項7】
振動運動および回転運動の少なくともいずれか一方の運動をする運動部材を、魚の表面の測定部位に押し当てて前記測定部位を処理するステップと、
処理された前記測定部位に押し当てられた複数の電極を用いて電気的測定を行うステップと、
を含むことを特徴とする魚の品質測定方法。
【請求項8】
前記運動部材を、前記複数の電極で兼用する、
請求項7に記載の魚の品質測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−88067(P2012−88067A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232529(P2010−232529)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】