説明

魚用接触センサー装置

【課題】海藻などの水生生物又はごみが付着し又は絡みにくく、海水の動きによる直接影響を防止して誤作動を防止することのできる魚用接触センサー装置を提供する。
【解決手段】 端部に魚が引っ張るための目印部を取り付けた道糸22と、圧力を感知する圧力センサー18と、前記道糸の他端部に接続され、前記道糸にかけられた引っ張り力を前記圧力センサーの作動部26に伝える押圧部材28と、前記道糸を保護するための保護筒体20を含み、前記圧力センサー及び前記押圧部材は前記保護筒体の上部に取り付けられ、前記道糸は前記保護筒体内を挿通して下端部より導出されて、先端部に目印部が取り付けられていることを特徴とする魚用接触センサー装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚用接触センサー装置に関し、特に、魚の摂餌要求行動の有無を感知することに適した魚用接触センサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、養殖漁場において給餌を行う場合、所定の設定時間になると自動的に給餌を行う自動給餌装置が用いられている。
【0003】
この場合、必要以上の飼料の投与による養殖漁場の環境悪化、あるいは、給餌量が不十分な場合成長が悪くなるということなどが問題となる。
【0004】
このため、魚が自発的に餌を取りたいときに餌を与えることで、必要十分量の給餌を行い、漁場環境の改善と持続的な養殖生産の確保を図ろうとして、自発摂餌給餌装置が工夫されている。
【0005】
このような自発摂餌給餌装置を起動するためのスイッチ装置としては、特許文献1に示すようなものが提案されている。
【0006】
この自発摂餌給餌装置を起動するためのスイッチ装置は、筐体に支持された固定接点と、この固定接点と対向する可動接点を有し粘弾性性型樹脂から構成される衝撃吸収体で支持された可動接片と、筐体に移動可能に支持され可動接片を固定接点方向に移動させる押圧片と、筐体にヒンジ部を介して搖動可能に支持され押圧片を移動させる作動片とを備えるものとされている。従って、この部分がスイッチを起動するためのセンサーとして機能している。
【0007】
また、この作動片に水平ロッドが固着され、これら作動片と水平ロッドはヒンジから離れる方向に延出され、この水平ロッドに対して垂直ロッドが自由に動ける状態で連結され、この垂直ロッドの下端に目印部が取り付けられた状態となっている。
【0008】
そして、垂直ロッドに取り付けた目印部の動きにより、垂直ロッド、水平ロッド、作動片、押圧片が作動して、可動接片が固定接点及び可動接点をON・OFFさせるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−155571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような自発摂餌給餌装置を起動するためのスイッチ装置にあっては、そのセンサーとしての機能を担う垂直ロッドがそのまま海水中に配されるため、垂直ロッドに海藻などの水生生物又はごみが付着し又は絡みやすく、また、海水の動きによってロッドが直接影響を受けて、魚が疑似餌に食いついていないのにセンサー装置が誤動作してしまうという問題がある。またブリやマグロなどの大型海産魚に用いる場合には垂直ロッドを引っ張る力が強いためセンサー装置の破損が生じること、センサー装置の起動時に装置全体へ与える振動又は遊泳中の魚体に触れた際の振動による誤作動などの問題がある。
【0011】
本発明の目的は、海藻などの水生生物やごみが付着し又は絡みにくく、海水の動きによる直接影響を防止して誤作動を防止することのできる魚用接触センサー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明の魚用接触センサー装置は、魚が引っ張る先端の目印部と圧力センサーをつなぐ経路の構造に工夫を加えたものである。圧力センサーに魚の引っ張り行動による力を伝えるため道糸と押圧部材を設けた。また、道糸を保護する保護筒体を設け、圧力センサーと押圧部材を保護筒体の上部側に取り付け、下部側を水面下に挿入可能にした。すなわち、端部に魚が引っ張るための目印部を取り付けた道糸と、圧力を感知する圧力センサーと、前記道糸の他端部に接続され、前記道糸にかけられた引っ張り力を前記圧力センサーの作動部に伝える押圧部材と、前記道糸を保護するための保護筒体を含み、前記圧力センサー及び前記押圧部材は前記保護筒体の上部に取り付けられ、前記道糸は前記保護筒体内を挿通して下端部より導出され、先端部に目印部が取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明で用いる圧力センサーは、加えられた圧力を電気信号に変換する機能を有するものであれば何でもよく、市販の圧力センサーを用いればよい。海岸などの環境で用いるので、水や塩の影響を受けないよう保護されたものが好ましい。
【0014】
目印部は魚にとって見えやすく、魚が口に入れやすい大きさと強度を備えている。目印部は疑似餌のようなものであっても構わないし、釣り用の浮きのようなものであっても構わない。
【0015】
本発明によれば、道糸が保護筒体内を挿通されて保護筒体により保護されているため、道糸に海藻などの水生生物又はごみが付着し又は絡みにくく、海水の動きによる道糸への直接影響を防止して誤作動を防止することができる。
【0016】
また、この魚用接触センサー装置は、摂餌要求行動の有無を感知することで、給餌装置の給餌開始用若しくは給餌終了用又は摂餌行動の記録装置の記録用として用いることが可能である。
【0017】
本発明においては、前記圧力センサーの作動部から前記目印部に至る経路の一部には、圧力センサーへの過荷重及び道糸の切断を防止する弾性部材を設けることができる。
【0018】
このような構成とすることにより、圧力センサーの作動部から目印部に至る経路の一部に設けた弾性部材により衝撃を吸収して、圧力センサーにかかる過荷重及び道糸の切断を防止して耐久性を向上させることができる。
【0019】
本発明においては、前記圧力センサーの作動部から前記目印部に至る経路の一部には、圧力センサーへの過荷重を防止するストッパを設けることができる。
【0020】
このような構成とすることにより、圧力センサーの作動部から目印部に至る経路の一部に設けたストッパにより圧力センサーへの過荷重を防止して、より一層、耐久性を向上させることができる。
【0021】
本発明においては、前記道糸は、前記補強筒体の他端部との接触部付近に補強部材が設けられたものとすることができる。
【0022】
このような構成とすることにより、道糸に設けた補強部材により、道糸が直接保護筒体の他端部に接触するのを防止し、道糸の擦り切れを防止して、耐久性を向上させることができる。また、この補強部材は目印部に浮力を提供し、目印部の自重と波による圧力センサーの誤作動の防止にも役立つ。
【0023】
本発明においては、前記保護筒体は、円筒形とするとともに、撓み防止及び魚が目印部を引っ張るたびに、自動的に内部に付着した海藻などの水生生物又はごみの清掃を自動的にすることが可能な直径とする。
【0024】
このような構成とすることにより、保護筒体を円筒形で、ある程度の太さの直径とすることで、保護筒体の撓みを防止し、魚が目印部を引っ張る度に、自動的に内部に付着した海藻などの水生生物又はごみの清掃を自動的にすることが可能となる。また、保護筒体により一定の水面下まで保護することで、波の影響を受けた誤作動を減らすこと又は浮上性の海藻などの水生生物又はごみが絡みつくことを防ぐことができる。保護筒体の具体的な直径は用いる対象となる魚の大きさや筒の長さによって調節すればよいが、通常2〜10cm程度、好ましくは3〜7cm程度である。
【0025】
本発明においては、大型海産魚に用いられるようにすることができる。
【0026】
このような構成とすることにより、ブリ、ハマチ、カンパチ、マグロなどの目印部を引く力の強い大型海産魚に特に好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる魚用接触センサー装置を示す断面図である。
【図2】図1に示す魚用接触センサー装置を用いた給餌装置を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる魚用接触センサー装置を示す断面図、図2は、図1に示す魚用接触センサー装置を用いた給餌装置を示す概略説明図である。
【0030】
この給餌装置10は、図2に示すように、飼料を生簀2の中心に落とすように、生簀2の上に掛けた桟橋等4の中心位置に設置されている。
【0031】
また、この給餌装置10は、自発摂餌給餌装置として用いられるもので、給餌用ホッパー12と、コントローラー14と、魚用接触センサー装置16とを有し、魚用接触センサー装置16が魚の摂餌要求行為を検出すると、コントローラー14に摂餌信号を送り、コントローラー14を介して給餌用ホッパー12の図示せぬ開閉蓋に給餌信号が送信されて、開閉蓋が開き所定時間給餌用ホッパー12より給餌されるようになっている。
【0032】
魚用接触センサー装置16は、図1に示すように、圧力センサー18と、魚が引っ張る目印部24と、道糸22と、道糸22の引っ張りを圧力センサー18に伝える押圧片28と、ストッパ34と、弾性部材32と、保護筒体20とを有している。
【0033】
圧力センサー18は、自発摂餌給餌装置においては給餌の開始を指示するもので、図2に示すコントローラー14に接続されるようになっている。
【0034】
また、この圧力センサー18は、図示せぬ接点のON・OFFを行う作動部26が筐体6の外方に付勢された状態で突出され、作動部26への操作力が加わらない状態で接点がOFF状態を維持し、作動部26に内方への押圧力が加わると接点がONとなるようになっている。
【0035】
筐体6には、一端を筐体6に回動可能に支持させた押圧片28が作動部26側の一辺に沿って配設され、力を圧力センサーに伝える機能を果たしうるようにされている。
【0036】
また、押圧片28の他端は、筐体6の外方に延出された状態となっている。
【0037】
そして、押圧片28の途中位置で押圧片28が作動部26と接触し、押圧片28に作動部26側への力が加わると、押圧片28が作動部26の付勢力に抗して、作動部26を押し込んで接点がONとなるようになっている。
【0038】
保護筒体20は、上部側の側部位置に圧力センサー18の取り付け部30が突出形成され、この取り付け部30に作動部26及び押圧片28を上方にして圧力センサー18が取り付けられ、押圧片28の先端が保護筒体20の中心側に突出するようにされている。
【0039】
また、この保護筒体20の下端部は、開放された状態となっており、その下部側が生簀2の水面下に挿入可能にされている。
【0040】
さらに、この保護筒体20は、円筒形となっており、その直径は2〜3cmとされ、海水の流れによって容易に撓むことがなく、しかも、内部が汚れた場合にも清掃が容易になっている。
【0041】
そしてさらに、保護筒体20は、上部筒体20Aと下部筒体20Bとがねじ部20Cにて連結された状態となっており、保護筒体20内部のメンテナンスを容易にしたり、桟橋4から生簀2の水面までの距離その他の条件に応じて、長さの異なる下部筒体20Bに交換し得るようにされている。
【0042】
道糸22は、一端(上端)が圧力センサー18の押圧片28の先端に接続され、この押圧片28を介して作動部26に接続されるようになっている。
【0043】
また、道糸22は、保護筒体20内を垂下する状態で挿通して、道糸22の他端(下端)が保護筒体20の下端部より導出されるようになっている。
【0044】
この道糸22は、合成樹脂製の糸、あるいは、金属線を内蔵した合成樹脂製の糸等からなり、ある程度の引っ張り力に対して耐用性を有するようにしてある。
【0045】
目印部24は、道糸22の他端部(下端部)に取り付けられて、保護筒体20の下方に配されるようになっており、この目印部24に魚が食いつくことにより、道糸22が引っ張られて、押圧片28の先端部が下降し、作動部26が押下されることで圧力センサー18が作動するようになっている。目印部24としてはペレットなどの餌と似た大きさ、色、形のものをつけるのが好ましい。
【0046】
このように、本実施の形態では、道糸22が保護筒体20内を挿通されて保護筒体20により保護されるようにしているため、道糸22に海藻などの水生生物又はごみが付着し又は絡みにくく、海水の動きによる道糸22への直接影響を防止して誤作動を防止することが可能となる。保護筒体20は常に一定の水面下まで保護することで、海藻などの水生生物又はごみはより絡みにくくなるため、好ましい。このような効果は保護筒20を10cm以上の水面下まで保護することで得られるが、より好ましくは20cm以上、さらに好ましくは30cm以上とすることで特に海に浮上する海藻などの水生生物又はごみが絡むことを防止できる。
【0047】
保護筒体は一定の強度があればどのような素材で製造してもよい。海水につけることから、金属よりも合成樹脂などが好ましい。
【0048】
また、本実施の形態においては、圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部に、圧力センサー18への過荷重及び道糸の切断を防止する弾性部材32を設けるようにしている。
【0049】
具体的には、弾性部材32としてコイルスプリングを用い、このコイルスプリングを道糸22の途中位置に配し、道糸22をコイルスプリングに掛けまわすようにして取り付けている。
【0050】
この弾性部材32としては、コイルスプリングに限らず、圧力センサー18への過荷重及び道糸22の切断を防止しうるものであれば種々の弾性部材を採用することができ、弾性部材32の取り付け位置も、圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部であれば種々の位置に取り付けることができる。
【0051】
このように、圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部に設けた弾性部材32により衝撃を吸収することで、圧力センサー18にかかる過荷重及び道糸の切断を防止して、耐久性を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施の形態においては、圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部に、圧力センサー18への過荷重を防止するストッパ34を設けるようにしている。
【0053】
具体的には、ストッパ34は、保護筒体20の押圧片28下方位置に突出形成したストッパピンにより構成されており、このストッパピンに押圧片28が当接することで、押圧片28がそれより下方に移動しないようにしている。
【0054】
このストッパ34は、押圧片28に当接するストッパピンに限らず、例えば道糸22に形成した突起部の移動を阻止するストッパ体を保護筒体20の途中位置に形成するようにしたものでも良く、その形成位置は圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部であればよい。
【0055】
このように、圧力センサー18の作動部26から目印部24に至る経路の一部に設けたストッパ34により圧力センサー18への過荷重を防止して、より一層、耐久性を向上させることができるようにしている。
【0056】
そしてさらに、本実施の形態においては、道糸22の補強筒体20の下端部との接触部付近に補強部材36を設け、この補強部材36により、道糸22が直接保護筒体20の下端部に接触するのを防止し、道糸22の擦り切れを防止して、耐久性を向上させるようにしている。
【0057】
この補強部材36は、合成樹脂製の筒体で道糸22を覆うことで補強を行うようになっているが、例えばポリオレフィンなどの合成樹脂製のコーティングを所定の厚さで道糸22に施すようにしても良い。
【0058】
本発明において海藻などの水生生物には、海藻類の他、貝類、フジツボ類、ホヤ類、ヒドラ類のような付着生物、クラゲ類、貝類や甲殻類の幼生、プランクトンなどの浮遊生物が含まれる。本発明においてごみには、木屑、藻屑、生物の死骸又はその一部、プラスチック片、ビニール片、発泡スチロール片、缶、瓶、漂流物が含まれる。
【0059】
本発明は、ブリ、ハマチ、カンパチ、マグロなどの目印部を引く力の強い大型海産魚に特に好適である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の形態に変形可能である。
【0061】
例えば、本発明の魚用接触センサー装置は、前記実施の形態における自発摂餌給餌装置の給餌の開始を指示するものとして使用されるほか、所定時間になると自動的に給餌が行われる自動給餌装置における給餌の終了を指示するものとして使用することも可能であり、さらには魚の摂餌要求行為など魚の引っ張り行動の有無を感知するものとして使用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10 給餌装置
16 魚用接触センサー装置
18 圧力センサー
20 保護筒体
22 道糸
24 目印部
26 作動部
28 押圧片
32 弾性部材
34 ストッパ
36 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に魚が引っ張るための目印部を取り付けた道糸と、
圧力を感知する圧力センサーと、
前記道糸の他端部に接続され、前記道糸にかけられた引っ張り力を前記圧力センサーの作動部に伝える押圧部材と、
前記道糸を保護するための保護筒体を含み、
前記圧力センサー及び前記押圧部材は前記保護筒体の上部に取り付けられ、前記道糸は前記保護筒体内を挿通して下端部より導出され、先端部に目印部が取り付けられていることを特徴とする魚用接触センサー装置。
【請求項2】
請求項1に記載の魚用接触センサー装置において、
前記圧力センサーの作動部から前記目印部に至る経路の一部には、圧力センサーへの過荷重及び道糸の切断を防止する弾性部材が設けられていることを特徴とする魚用接触センサー装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の魚用接触センサー装置において、
前記圧力センサーの作動部から前記目印部に至る経路の一部には、圧力センサーへの過荷重を防止するストッパが設けられていることを特徴とする魚用接触センサー装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の魚用接触センサー装置において、
前記道糸には、前記補強筒体の下端部との接触部付近に補強部材が設けられていることを特徴とする魚用接触センサー装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の魚用接触センサー装置において、
前記保護筒体は、円筒形とされるとともに、撓み防止及び魚が目印部を引っ張る度に、自動的に内部に付着した海藻などの水生生物又はごみの清掃を自動的にすることが可能となる直径とされていることを特徴とする魚用接触センサー装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の魚用接触センサー装置において、
大型海産魚に用いられることを特徴とする魚用接触センサー装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−239910(P2010−239910A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93377(P2009−93377)
【出願日】平成21年4月7日(2009.4.7)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】