説明

魚礁用ブロック

【課題】 単独で又は組み合わせて人工魚礁として用いることのできる、製造が容易で、海流に逆らわない構造の魚礁用ブロックと、そのような魚礁用ブロックを組み合わせて用いる、人工魚礁を構築する方法及び突堤又は離岸堤の構築方法の提供。
【解決手段】 コンクリート製の魚礁用ブロックであって、その横断面形状が多角形である本体部と、当該本体部の外周部の一部から当該外周部に連なって下方に且つ内側に向かって延びる外側面を有する脚部二つ以上とを備え、当該本体部のその下方に脚部を有しない部分には本体部の上面と下面とを直線的に繋ぐ貫通孔が一つ以上形成されていることを特徴とする魚礁用ブロックを、単独で、積重ねて、又は隣接して設置して用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚礁用ブロックと、当該魚礁用ブロックを用いる人工魚礁の構築方法及び突堤又は離岸堤の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚類等の繁殖を促進するため、人工魚礁や人工藻場の構築が行われており、そのような目的に使用される構造体も、多数提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、洞門・洞孔を設けたコンクリートブロック製の魚礁が開示されている。また、特許文献2には、上面から底面に向かって貫通する複数の貫通孔を設けたコンクリートブロック製の藻場造成用ブロックであって、当該コンクリートブロックに鞘パイプを貫通させ且つ当該鞘パイプ内に脚部を上下動自在に貫通させてなるものが開示されている。これらの魚礁用ブロックでは、前記洞門・洞孔や貫通孔には海水が流入し、比較的小さな魚類はこれら洞門等を通過する。
【0004】
一方、比較的大きな魚類や、砂に潜る生物のために、下部に空洞を設けたものも知られている。そのような例として、前記特許文献1の魚礁において、洞門・洞孔を大きくしたものが挙げられる。また、特許文献3に記載の藻場造成礁は、その基台として、複数の空洞型魚礁ブックを使用している。さらに、特許文献4の図1に記載の人工魚礁は、その下部に通路を有するものである。
【0005】
人工物である魚礁用ブロックの自然との調和や、海中における海藻の林の生成のために、間伐材等の木質系材料の使用も提案されている。例えば特許文献5には、魚礁としても用いられるコンクリートブロックであって、その一端はコンクリート中に埋設され、他端はコンクリートブロックから突出している木を複数備えてなるものが開示されている。また、前記特許文献4の図1には、コンクリートブロックから突出するようにブロック内に配設された、L字形又はT字形の間伐材等の木質系材料を備える人工魚礁が開示されている。請求項12によると、この木質系材料は生物分解によって消滅し、木質系材料が存在した個所は、最終的には通路となる。
【0006】
また、離岸堤等の海岸構造物を、藻場の基盤として利用しようとする提案もある。特許文献6には、丸太木材を海岸構造物に固定することが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−129642
【特許文献2】特開2006−191847
【特許文献3】特開2004−89008
【特許文献4】実開2005−143457
【特許文献5】特開2003−166226
【特許文献6】特開2005−117901
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、単独で又は組み合わせて人工魚礁として用いることのできる、製造が容易で、海流に逆らわない構造の魚礁用ブロックと、そのような魚礁用ブロックを組み合わせて用いる、人工魚礁を構築する方法及び突堤又は離岸堤の構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、本発明を完成させた。
即ち第一の発明は、コンクリート製の魚礁用ブロックであって、その横断面形状が多角形である本体部と、当該本体部の外周部の一部から当該外周部に連なって下方に且つ内側に向かって延びる外側面を有する脚部二つ以上とを備え、当該本体部のその下方に脚部を有しない部分には本体部の上面と下面とを直線的に繋ぐ貫通孔が一つ以上形成されていることを特徴とする魚礁用ブロックに関する。
【0010】
上記魚礁用ブロックは、下記(1)乃至(6)の中のいずれか、又はそれらの中の二つ以上を組み合わせた態様であることができる:
(1)前記本体部の外周部の少なくとも一部が内側に向かう傾斜面となっているもの、
(2)二つの脚部を備え、それらの脚部は、その外側面が、前記本体部の下面の多角形形状の相向かい合う二辺a,bのそれぞれから内側に向かって傾斜しつつ下方に延びているもの、
(3)さらに、前記貫通孔に充填されている木質系材料であって、その端部は前記本体部の上面及び/又は下面から突出していてもよく、但し、下面から突出している部分の高さは前記脚部の高さ以下であるものを有するもの、
(4)前記本体部の上面上に突起が形成されており、好ましくは、当該突起は平坦な頂上部を有し且つ突起の高さは当該魚礁用ブロックの上に載置される魚礁用ブロックの脚部の高さ以下であるもの、
(5)前記本体部自体の上方の一部が凹部となっており、当該凹部の位置及び大きさは、前記魚礁用ブロックの上に載置される第二の魚礁用ブロックの脚部が載置され且つ固定されるに適するものであるもの、及び
(6)さらに、前記本体部の下面の中央付近から下方に向かって延びる脚部を有するもの。
【0011】
上記魚礁用ブロックにおいて、脚部の高さは15乃至30cmであることが好ましく、20乃至25cmであることがさらに好ましい。また、上記魚礁用ブロックにおいて、貫通孔の直径は15乃至30cmであることが好ましく、20乃至25cmであることがさらに好ましい。
【0012】
このような大きさは、魚類や甲殻類等の有価生物の大きさよりもに若干大である大きさである。換言すれば、有価生物が棲息するに適した空間を与える大きさである。
【0013】
また、第二の発明は、上記第一の発明に係る第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状が正方形であるものを海底又は浜に設置し、その上に、上記第一の発明に係る第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状が正方形であるものを載置し、さらに、必要に応じて第三以降の魚礁用ブロックも同様に載置することを特徴とし、ここで、貫通孔に木質系材料が充填されてなる魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さである、人工魚礁の構築方法に関する。
【0014】
本明細書において、「積重ねに支障のない高さ」とは、最上段のブロックの本体部の上面から突出している木質系材料を除き、二つの魚礁用ブロックが積み重なられた際に、上下のブロックの本体部間の間隔が上限となる。また、木質系材料が本体部の上面から突出しているブロックの上に、木質系材料が本体部の下面から突出しているブロックを積み重ねる場合には、上下のブロックの突出部が重ならないように配置するとか、突出部の位置が重なる場合には、下段のブロックの本体部の上面から突出している木質系材料の高さと、上段のブロックの本体部の下面から突出している木質系材料の高さの合計が、上下のブロックの本体部間の間隔以下となるような組合わせとする必要がある。
【0015】
第二の発明には、前記第二の魚礁用ブロックが前記第一の魚礁用ブロックよりも小さく、さらに、必要に応じて載置される第三以降の魚礁用ブロックも順次小さくなっていく、という態様も包含される。
【0016】
第三の発明は、上記第一の発明に係る第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第一の魚礁用ブロック二つを、それら二つの第一の魚礁用ブロックの前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して海底又は浜に設置し、その上に、上記第一の発明に係る第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺とそれらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第二の魚礁用ブロック一つ又は二つを、第一の魚礁用ブロックの脚部と第二の魚礁用ブロックの脚部とが互いに直角となるように、そして、第二の魚礁用ブロックを二つ用いる場合には、それら二つの第二の魚礁用ブロックの前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して載置し、さらに、必要に応じて第三以降の魚礁用ブロックも同様に載置することを特徴とし、ここで、貫通孔に木質系材料が充填されてなる魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さであり、また、魚礁用ブロック一つのみを載置した場合には、その一つのみ魚礁用ブロック上に魚礁ブロック二つが載置されることはない、人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築方法に関する。
【0017】
第四の発明は、上記第一の発明に係る第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第一の魚礁用ブロック三つ以上を、前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して海底又は浜に設置し、端部に設置された第一の魚礁用ブロック(I)とその隣りに設置された第一の魚礁用ブロック(II)の上には、上記第一の発明に係る第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第二の魚礁用ブロック(I)を、前記第一の魚礁用ブロック(I)、(II)の脚部と当該第二の魚礁用ブロック(I)の脚部とが互いに直角となるように且つ同様の方向に第二の魚礁用ブロック(II)を載置できる空間を空けて載置し、第二の魚礁用ブロック(II)は、前記第二の魚礁用ブロック(I)に対し、前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して、且つ第二の魚礁用ブロック(I)の前記八角形の長辺の長さ方向に約1/2だけずらして第一の魚礁用ブロック(II)及びその隣りの第一の魚礁用ブロック(III)の上に載置し、更に第一の魚礁用ブロック(IV)以降が海底又は浜に設置されている場合には、第二の魚礁用ブロック(III)以降も同様に載置することを含み、従って、両端部の第一の魚礁用ブロックは、その上面の面積の1/2以上が第二の魚礁用ブロックが載置されないために露出されており、ここで、請求項4に記載の魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さである、人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築方法に関する。
【0018】
また、第五の発明は、第一の発明の魚礁用ブロック二つ以上を、並置し及び/又は積重ねてなる人工魚礁、突堤又は離岸堤に関する。
【0019】
第六の発明は、(1)第一の発明の魚礁用ブロックの中、貫通孔に木質系材料が充填されているものを含む一つ以上の魚礁用ブロックを、海底に設置する、(2)当該木質系材料をセルロース消化能を有する生物によって消化、分解させ、貫通孔を復帰させる、及び(3)前記魚礁用ブロックに海藻を繁殖させることを含む、人工魚礁又は藻礁の構築方法に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の魚礁用ブロックは、脚部が本体部の外周部の一部から当該外周部に連なって下方に且つ内側に向かって延びる外側面を有するため、海流がぶつかって渦ができる等の現象が生じ難く、従って魚類、甲殻類等の海中有価用生物が集まりやすい。このような効果は、本体部の側面が内側に向かって傾斜面となっている態様では、さらに著しい。
【0021】
また、本発明の魚礁用ブロックの脚部の外側や本体部の下(脚部のない個所)には、海中有価用生物が隠れる空間が存在するので、この点からも、海中有価用生物が集まりやすいということができる。
【0022】
本発明の魚礁用ブロックであって、貫通孔に木質系材料が充填されているものを用いると、先ず、木質系材料を餌とするフナクイムシ等が棲息し、また、その食害痕には小型の甲殻類や多毛類が棲息するので、よい餌場となる。即ち、小型の甲殻類やフナクイムシ等を好む魚類が集まるようになる。また、小型の甲殻類やフナクイムシ等を好む魚類が集まると、海藻を食料とする魚類やウニ等が集まらず、従って海藻が繁茂するようになる。なお、木質系材料がなくなる頃には、海藻が十分に繁茂しているので、海藻等の植物を餌とする魚類、ウニ、貝類とが増えても、磯焼けの被害を受けにくい。
【0023】
第一の発明の魚礁用ブロックの中、その上に載置されるブロックの脚部を固定するための突起や凹部を有するものでは、魚礁用ブロックを積み重ねた際に、上に載置されたブロックのすべり落ちを防止できる。
【0024】
第一の発明の魚礁用ブロックの中、本体部の上面上にその上に載置されるブロックの脚部の高さとほぼ同じであって、当該脚部の高さ以下の高さの突起が形成されているブロック、あるいは、本体部の下面の中央付近から下方に向かって延びる脚部を有するブロックを最下段に用いれば、魚礁の構築場所が砂である場合も、最下段のブロックが傾き難い。
【0025】
第一の発明の魚礁用ブロックの中、貫通孔に木質系材料が充填されているものは、従来の型枠材を用いた魚礁用コンクリート・ブロックの製造方法において、貫通孔となる個所に、例えば棒状の間伐材等の木質系材料を配置するだけで製造することができる。従って、製造が容易で、多数のブロックの製造も可能であるという利点がある。
【0026】
本発明の人工魚礁の構築方法では、複数個のブロックを積み上げて使用するので、構築現場の状況に応じて適切な魚礁を構築することができる。
【0027】
また、本発明の突堤又は離岸堤の構築方法では、複数個のブロックを並列させ且つ積み上げて使用するので、構築現場の状況に応じて適切な長さ(距離)及び高さの突堤や離岸堤を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明を、その実施のための最良の形態に基づいて、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の魚礁用ブロックの一例を模式的に示す斜視図である。この魚礁用ブロック100においては、その本体部(同図中、破線jよりも上の部分)10の上面10xは全体が平坦である。また、本体部10の横断面形状は正方形であり、その外周部10rは、四側面すべてが内側に向かう傾斜面となっている。従って、本体部10の横断面形状である正方形は、断面の位置毎に大きさが異なる。
【0030】
脚部30の外側面30rは、本体部10の外周部10rの一部、具体的には相向かいあう二側面のそれぞれに連なって、本体部10の下面10yの平面形状である正方形の相向かい合う二辺a,b(bは図示されていない)のそれぞれから、内側に向かって傾斜しつつ下方に向かって延びている。脚部30の内側面30qは、外側に向かって傾斜しつつ下方に向かって延びている。従って、脚部30はその肉厚が徐々に減少している、即ちテーパ状である。
【0031】
なお、本発明の魚礁用ブロックにおいて、脚部30の外側面30rは内側に向かって傾斜していることが必須であるが、内側面30qは、図1の例のように外側に向かって傾斜していることは必須ではなく、垂直でも、内側に向かって傾斜していてもよい。
【0032】
本体部10のその下方に脚部30,30を有しない部分(以下、「本体中央部」ということがある)には、本体部10の厚さ方向にほぼ垂直に貫通する、即ち、本体部10の上面10xと下面10yとを直線的に繋ぐ貫通孔5が、複数個設けられている。
【0033】
ここで、「直線的に繋ぐ」とは、折れ曲がっていたり、大きく曲線を描く場合を除く概念であるが、完全に直線である必要はない。また、貫通孔の方向は、垂直のみならず、傾斜していてもよい。
【0034】
貫通孔の形状は、図1に示す例では円筒状であるが、このような形状に限定されない。どのような形状であってもよい。また、貫通孔の数や配置も限定されない。さらに、貫通孔が複数存在する場合、各々の大きさや形は、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
図2は、本発明の魚礁用ブロックの他の一例を模式的に示す斜視図であり、図3は、その側面図である。この魚礁用ブロック200においては、本体部10(図2において破線jよりも上の部分)は、その上面10xは平坦であり、その横断面形状は八角形である。この八角形は、二つの相向かい合う長辺c1,c2、長辺c1,c2に対して直角の方向に存在する二つの相向かい合う短辺d1,d2、及び長辺と短辺との間に位置する四つの辺e1,e2,e3,e4を有する。
【0036】
本体部10の外周部の中、その上部(符号10sで示す部分)は垂直であり、その下部(符号10tで示す部分)は、内側に向かう傾斜面となっている。
【0037】
また、魚礁用ブロック200は、本体部10の外周部に連なって、本体部10の下面10yの八角形形状の相向かい合う二辺、具体的には短辺d1,d2、のそれぞれから、内側に向かって傾斜しつつ下方に向かって延びる外側面30rを有する脚部30,30を有する。なお、脚部30の内側面30qは、外側に向かって傾斜しており、外側面30rと内側面30qとを繋ぐ他の側面は、内側に向かって傾斜している。従って、脚部30は、テーパ状となっている。
【0038】
本体部10のその下方に脚部30,30を有しない部分には、その厚さ方向にほぼ垂直に貫通する、即ち、本体部10の上面10xと下面10yとを直線的に繋ぐ貫通孔5が設けられている。
【0039】
図4は、本発明の魚礁用ブロックの他の一例を模式的に示す平面図である。この魚礁用ブロック600は、本体部10の上面10x上に、ストッパとなる突起9a,9b,9c,9dを有する。
【0040】
ストッパ9a,9b,9c,9dは、図15に示すように、人工魚礁の構築のために二つの魚礁用ブロック600,600をそれらの本体部10の横断面形状である八角形の長辺同士が平行となるように近接して並べ、それらの上に、二つの魚礁用ブロック200,200を、魚礁用ブロック600の脚部30,30と魚礁用ブロック200の脚部30,30とが互いに直角となるように積み重ねる際に、当該ブロック200,200の脚部30,30を止めるために有用である。この例では、ストッパ9aとストッパ9bとの間に魚礁用ブロック200の脚部30が配置され、ストッパ9dとストッパ9cとの間にもう一つの魚礁用ブロック200の脚部30が配置される。
【0041】
ストッパとなる突起の形状、大きさ及びその形成位置は、特に限定されない。積重ねに支障がなく、積み重ねられる他の魚礁用ブロックの脚部を止めることができるような形状、大きさ、位置であればよい。
【0042】
図5は、本発明の魚礁用ブロックのさらに他の一例を模式的に示す平面図である。この魚礁用ブロック800は、本体部10の上面10x上に、平担な頂上部を有し、その高さは脚部の高さとほぼ同じである突起9x,9yが形成されている。
【0043】
これらの突起9x,9yは、図16(B)に示すように、人工魚礁の構築のために、二つの魚礁用ブロック800,800をそれらの本体部の横断面形状である八角形の長辺同士が平行となるように近接して並べ、それらの上に二つの魚礁用ブロック200,200を積み重ねる際に、当該ブロック200,200の本体部10の長さ方向中央部付近を支えるために有用である。本発明の魚礁用ブロックを砂地に設置する場合、最下段のブロックとして突起がないもの(魚礁用ブロック200)を使用すると、図16(A)に示すように、最下段のブロック200,200が傾くことがある。これに対し、最下段に突起9x,9yを有するブロック800,800を用いれば、図16(B)に示すように、ブロック800,800は傾かない。
【0044】
突起9x,9yの高さは、上記したその存在意義から明らかなように、突起9x,9yを有する魚礁用ブロック800の上に載置される魚礁用ブロック200の脚部30の高さ、より正確にいうと、魚礁用ブロック800の本体部10の上面10xと魚礁用ブロック200の本体部10の下面10yとの間の高さとほぼ同じである。
【0045】
突起9x,9yの位置は、本体部10の上面10xの平面形状である八角形の長辺c1に連なる(突起9x,9yの底部の一辺が、当該長辺c1の一部を共有する)か、当該長辺c1の近傍であればよい。
【0046】
突起9x,9yの形状は、突起9x,9yを有する二つの魚礁用ブロック800,800の上に載置される魚礁用ブロック200,200の本体部10の下面10yを支持できるような形状である。従って、その支持のための平担な頂上部を有する形状である必要がある。
【0047】
図6に、突起9xの一例を示す。この突起9xには、平担な頂上部50と二つの凹部60,60がある。凹部60中にあり、符号70で示されているものは、アンカーボルトの入る孔である。突起9xは、このアンカーボルトにより、魚礁用ブロックの上面10x上に取り付けられる。
【0048】
図7に、本発明の魚礁用ブロックの形状のさらに他の一例を模式的に示す。図7において、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。この魚礁用ブロック400は、本体部10の上方の一部に凹部80,80を有する。
【0049】
図17は、二つの魚礁用ブロック400,400の上に二つの魚礁用ブロック700,700を載置した状態を示す側面図である。なお、魚礁用ブロック700は、脚部30の高さが高いことを除き、魚礁用ブロック200と同様の形状を有する。図17に示すように、人工魚礁の構築のために二つの魚礁用ブロック400,400をそれらの本体部10の横断面形状である八角形の長辺同士が平行となるように近接して並べ、それらの上に二つの魚礁用ブロック700,700を積み重ねる際に、当該ブロック700,700の脚部30,30が、魚礁用ブロック400,400の凹部80,80に配置される。従って、凹部80,80の形状及び大きさは、積み重ねられる他の魚礁用ブロックの脚部を止めることができるような形状、大きさ、位置であればよい。
【0050】
図8は、本発明の魚礁用ブロックの形状のさらに他の一例の模式的側面図である。この魚礁用ブロック500は、三つの脚部を有する点に特徴がある。即ち、両サイドの脚部30,30に加え、本体部10の下面10yの中央付近に、下方に延びるもう一つの脚部31を有する。
【0051】
図18は、二つの魚礁用ブロック200,200の上に二つの魚礁用ブロック500,500を載置した状態を示す側面図である。図18に示すように、人工魚礁の構築のために、二つの魚礁用ブロック200,200をそれらの本体部10の横断面形状である八角形の長辺同士が平行となるように近接して並べ、それらの上に二つの魚礁用ブロック500,500を積み重ねる際に、当該ブロック500,500の中央付近に形成された脚部31が、魚礁用ブロック200,200の両者に跨って、当該ブロック200,200の上面10x上に配置される。本発明の魚礁用ブロックを砂地に設置する場合、図18に示すような組合せで漁礁用ブロックを用いれば、脚部31が、最下段のブロックが傾くことを防止する。
【0052】
図9は、本発明の魚礁用ブロックのさらに他の一例を模式的に示す斜視図である。この魚礁用ブロック900は、先に説明した魚礁用ブロック200の各々の貫通孔5に、木質系材料40が充填されているものである。この木質系材料40の上部は、本体部10の上面10xから突出している。この突出している部分の高さhは、後述する人工魚礁の構築方法において、最上段のブロックとして又は単独で使用する場合を除き、魚礁用ブロック900の本体部10の上面10xと、このブロック900の上に載置される他のブロックの本体部10の下面10yとの間の高さ以下とする。
【0053】
木質系材料40は、フナクイムシ等のセルロース消化能を有する生物によって消化、分解される木質系のものであればよい。その例を挙げると、間伐材、廃棄木材等がある。また、木屑を圧縮加工したものでもよい。複数の貫通孔5に充填された木質系材料40各々の高さ、や太さは、揃っている必要はない。形状は、貫通孔5に充填され得るようなものであればよい。さらに、木質系材料40は、すべての貫通孔5に充填されている必要はない。換言すれば、一部の貫通孔5には、木質系材料40が充填されていなくてもよい。
【0054】
図9に示した例においては、木質系材料40は、本体部10の上面10xと下面10yとを垂直に繋ぐ貫通孔5に充填されて、本体部10の上面10xから突出しているが、木質系材料の充填方法は、これに限定されない。
【0055】
図10に、本体中央部10uの断面模式図を示す。図10(A)に記載した例では、貫通孔5は、本体部10の上面10xと下面10yとの間に傾斜をもって形成されている。そして、木質系材料40は貫通孔5を封止するように充填又は充当されているが、本体部10の上面10xからも下面10yからも突出していない。図10(B)に記載した例では、木質系材料40は、本体部10の上面10xからは突出せず、下面10yからのみ突出している。さらに、図10(C)に記載した例では、木質系材料40は、本体部10の上面10x及び下面10yから突出しているものと、上面10xからのみ突出しているものとがある。
【0056】
本発明の魚礁用ブロックの本体部及び脚部はコンクリート製である。コンクリートには様々な配合があるが、本発明においては、いずれも使用することができる。但し、ポーラス・コンクリートは、その孔の大きさが植食生物の棲息に適し、磯焼けを生じることがあるので、ポーラス・コンクリート以外のコンクリートが好ましい。
【0057】
次に、本発明の魚礁用ブロックの中、貫通孔に木質材料が充填されているものについて、その製造方法を説明する。
【0058】
図11は、図9に示す魚礁用ブロックの製造途中の状態を示す断面図である。魚礁用ブロック900は、例えば、次のように製造する。
【0059】
型枠F内に、木質系材料40をそれらが所定位置に来るように配置し、木質系材料40の上には平板Wを置き、その平板の上部から木質系材料40に向かって釘Nを打ち込む。次いで、平板Wに重石を載せる等の方法で荷重をかける。コンクリート組成物Cを流し込み、硬化させる。
【0060】
図12は、本発明の他の魚礁用ブロックの製造途中の状態を示す断面図である。この図に示すものは、貫通孔5に充填された木質系材料40が、本体部10の上面10x及び下面10yから突出しているものである。
【0061】
型枠Fには、貫通孔5の形成位置に合わせて孔が形成されている。先ず、棒状の木質系材料40を型枠Fの孔に挿入し、孔を埋める。木質系材料40の上に、型枠Fの底面と平行になるように平板Wを置き、その平板Wの上部から木質系材料40に向かって釘Nを打ち込む。次いで、平板Wに重石を載せる等の方法で荷重をかける。コンクリート組成物Cを流し込み、硬化させる。なお、型枠Fの孔の部分には、ゴム製パッキング等が使用されていると、脱型が容易となる。
【0062】
この例では、木質系材料40の長さにバラつきがあり、従って突出部の高さもバラついているので、最も長い、即ち突出部高さが高い木質系材料以外の木質系材料(ここでは「短い木質系材料」ということがある)については、平板Wと短い木質系材料との間に釘Nを露出させて、最も長い木質系材料の長さに合うように釘Nを打つ。換言すれば、短い木質材料と平板との間は釘が繋ぐという構成となる。
【0063】
なお、貫通孔に木質系材料が充填されていない魚礁用ブロックは、木質系材料の代わりに貫通孔形成用部材を用いて、通常の方法で製造する。
【0064】
続いて、本発明の魚礁用ブロックを用いた人工魚礁の構築方法の例について説明する。先ず、第二の発明について説明する。第二の発明では、第一の発明のブロック中、その本体部の横断面形状が正方形であるものを用いる。
【0065】
例えば図1に示す漁礁用ブロック100を使用する場合は、例えば図13に示すように、二つ(又は三つ以上)のブロックを重ねる。具体的には、次のようにして、人工魚礁を構築する。
【0066】
先ず、第一の魚礁用ブロック100aを海底に設置し、その上に、同じ形状、大きさの第二の魚礁用ブロック100bを、第一の魚礁用ブロック100aの脚部30a,30aと第二の魚礁用ブロックの脚部30b,30bとが互いに直角となるように載置する。
【0067】
木質系材料を備えるブロックを使用する場合には、木質系材料の本体部より突出している部分の高さが、ブロックの積重ねに影響しない高さとなるような組合せで使用する。
【0068】
第二の魚礁用ブロック100bの上に、更に、第三、第四の魚礁用ブロックを積み重ねてもよい。要は、互いに接触する二つの魚礁用ブロックの脚部が重ならないように、90度回転させて重ねればよい。また、最上段のブロックには、本体部10の上面10xから突出する木質系材料を有するものを使用することが好ましい。
【0069】
第二の魚礁用ブロック100bとして、第一の魚礁用ブロック100aよりも小さいものを使用し、さらに、必要に応じて載置される第三以降の魚礁用ブロックも順次小さいものを使用することが好ましい。このような組合せで魚礁用ブロックを使用すると、第一の魚礁用ブロック100aの上面10xの外周部上には障害物がないので、海藻類が高さの制限なく繁茂することができ、一方、第二の魚礁用ブロック100bの脚部30bの外側面は内側に向かう傾斜面となっているため、この脚部30bの外側面の外側であって、第一の魚礁用ブロック100aの上面10x上であり、且つ前記海藻が繁茂した個所の内側には、魚類等が隠れるのに適する空間ができるので、また、第二の魚礁用ブロック100bの本体部10の下には空間があるため、これらの空間に魚類が集まり易いからである。
【0070】
さらに、第三の発明について説明する。第三の発明においては、第一の発明のブロック中、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有するものを用いる。このようなブロックの具体的形状の例は、第一の発明において既に説明した。
【0071】
例えば図2に示す魚礁用ブロック200の上面部外周を若干削った、即ち面取りしたもの300を使用する場合は、例えば図14に示すように、二つの第一の魚礁用ブロック300a,300aを、それらの本体部10の横断面形状である八角形の長辺c1,c2同士が平行となるように且つ近接して設置し、それらの上に、第二の魚礁用ブロック300b,300bを、それらの本体部10の横断面形状である八角形の長辺c1,c2同士が平行となるように且つ近接して、且つ、第一の魚礁用ブロック300a,300aの脚部30a,30aと第二の魚礁用ブロック300b,300bの脚部30b,30bとが互いに直角となるように載置し、さらに、第三の魚礁用ブロック300cを一つだけ、第二の魚礁用ブロック300b,300bの脚部30b,30bと第三の魚礁用ブロック300cの脚部30cとが互いに直角となるように、第二の魚礁用ブロック300b,300bの中央部上に載置する。
【0072】
魚礁用ブロック一つのみを使用した場合には、その一つのみのブロック上に、二つの魚礁用ブロックが載置されることはない。即ち、例えば第三段目をブロックを一つのみで形成した場合には、第四段目以降の各段は、何れもブロックは一つのみとなる。
【0073】
上記のようにして、人工魚礁、突堤又は離岸堤を構築する。「二つの魚礁用ブロックを近接して設置する」とは、二つのブロックを互いに接触させて設置することと、若干離して設置することとを包含するが、人工魚礁の構築の際には、魚類等の移動又は棲息空間を確保するという観点から、並置された魚礁用ブロック同士は、若干離れていることが好ましい。また、突堤や離岸堤の構築の場合は、構築現場の状況に応じ、並置された魚礁用ブロック同士は、互いに接触していてもよいし、若干離れていてもよい。
【0074】
第三の発明において使用するブロックは、すべて同じものでも、互いに異なるものでもよい。なお、木質系材料を備えるブロックを使用する場合には、木質系材料の本体部より突出している部分の高さが、ブロックの積重ねに影響しない高さとなるような組合せで使用する。
【0075】
図14に示した例や、その例において第三の魚礁用ブロック300cを使用しない場合には、第一の魚礁用ブロック300a,300aの本体部10aの上面10x上であって、第二の魚礁用ブロック300bが載っていない部分(即ち、おおよそ、脚部30a,30aが存在する個所の上方部分)に、障害物がない個所ができる。従って、その個所においては、海藻類は高さの制限なく繁茂することができる。一方、第二の魚礁用ブロック300bの本体部10bの外周部の中、当該本体部10bの横断面形状である八角形の長辺c1(又はc2)に相当する部分であって下方10tは、内側に向かう傾斜面となっているため、前記外周部下方10tの外側であって、第一の魚礁用ブロック300a,300aの上面10x,10x上であり、且つ前記海藻が繁茂した個所の内側には、魚類等が隠れるのに適する空間ができる。また、第二の魚礁用ブロック300bの本体部10bの下にも空間がある。そのため、これらの空間に魚類が集まり易い。
【0076】
さらに、第三の発明に係る、他の人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築例、換言すれば、魚礁用ブロックの積重ね方の例を示す。
【0077】
図15には、二つの、図4に示した本体部10の上面10x上にストッパとなる突起9a,9b,9c,9dがある魚礁用ブロック600,600を最下段に用い、その上(最上段)に、図3に示した魚礁用ブロック200,200を設置した例の側面図を示す。図16(B)には、二つの、図5に示した本体部10の上面10x上であって本体部10の上面10xの平面形状(即ち、本体部の横断面形状)である八角形の長辺に近接する個所に平担な頂上部を有する突起9x,9yがある漁礁用ブロック800,800を最下段に用い、その上(最上段)に、図3に示した魚礁用ブロック200,200を設置した例の側面図を示す。図17には、二つの、図7に示した本体部10に凹部80,80を有する魚礁用ブロック400,400を最下段に用い、その上(最上段)に、魚礁用ブロック700,700(脚部30の高さが高いことを除き、魚礁用ブロック200と同様の形状を有するもの)を設置した例の側面図を示す。図18には、最下段には図3に示した魚礁用ブロック200,200を用い、その上(最上段)に、図8に示した本体部10の下面10yの中央部付近から下方に延びる第三の脚部31を有する魚礁用ブロック500,500を設置した例の側面図を示す。
【0078】
以上説明したように、第三の発明では、第一の魚礁用ブロックの中、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する魚礁用ブロックを、当該ブロックの脚部が段毎に90度ずつずれる(換言すれば、一段おきに同じ場所に脚部が積み重なる)ように積重ねていけばよい。
【0079】
第三の発明では、最下段ブロックの数は二であり、二段目以降のブロックの数は二又は一であるが、例えば図19に示すように、第一の発明の魚礁用ブロック四つ(具体的には下段に二つ、上段に二つ)を使用して第三の発明を実施して構築したものを一単位とし、そのような単位を二以上集合させることで、人工魚礁のみならず、突堤や離岸堤を構築することもできる。
【0080】
次に、第四の発明について説明する。第四の発明に係る人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築方法でも、第三の発明に使用したものと同様の形状のブロックを用いる。但し、最下段には、魚礁用ブロックを三つ以上用いる。最下段における魚礁用ブロック同士の配置は、第三の発明の場合と同様である。第三の発明との大きな相違点は、第二段目のブロックの配置の仕方にある。図20に示す人工魚礁、突堤又は離岸堤を参照しながら説明する。
【0081】
第四の発明では、端部に設置された第一の魚礁用ブロック(I)とその隣りに設置された第一の魚礁用ブロック(II)の上には、第二の魚礁用ブロック(I)を、第一の魚礁用ブロック(I),(II)の脚部と第二の魚礁用ブロック(I)の脚部とが互いに直角となるように且つ同様の方向に第二の魚礁用ブロック(II)を載置できる空間を空けて載置する。また、第二の魚礁用ブロック(II)は、第二の魚礁用ブロック(I)に対し、それらの本体部の横断面形状の八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して、但し、第二の魚礁用ブロック(I)の本体部の横断面形状の八角形の長辺の長さ方向に約1/2だけずらして、第一の魚礁用ブロック(II)及びその隣りの第一の魚礁用ブロック(III)の上に載置する。このように、第二の魚礁用ブロックは、その本体部の横断面形状の八角形の長辺の長さ方向に約1/2だけずれながら、換言すると互い違いになりながら、第一の魚礁用ブロック上に載置される。従って、両端部の第一の魚礁用ブロック(I),(III)は、その上面の面積の1/2以上が第二の魚礁用ブロックが載置されないために露出されている。
【0082】
なお、第一の魚礁用ブロック(IV)以降も設置される場合には、第二の魚礁用ブロック(III)以降も同様に載置され、第一の魚礁用ブロックの中、両端に配置されたものについては、その上面の面積の1/2以上には、第二の魚礁用ブロックが載置されない。
【0083】
第四の発明において使用するブロックは、すべて同じものでも、互いに異なるものでもよい。なお、木質系材料を備えるブロックを使用する場合には、木質系材料の本体部より突出している部分の高さが、ブロックの積重ねに影響しない高さとなるような組合せで使用する。
【0084】
第五の発明は、第一の発明の魚礁用ブロック二つ以上を、並置し及び/又は積重ねてなる人工魚礁、突堤又は離岸堤に関する。このような人工魚礁、突堤又は離岸堤の好適例は、既に、第二乃至第四の発明に関する説明中で言及した。
【0085】
最後に、第六の発明について説明する。第六の発明に係る人工魚礁又は藻礁の構築方法は、(1)第一の発明の魚礁用ブロックの中、貫通孔に木質系材料が充填されているものを含む一つ以上の魚礁用ブロックを、海底に設置する、(2)当該木質系材料をセルロース消化能を有する生物によって消化、分解させ、貫通孔を復帰させる、及び(3)前記魚礁用ブロックに海藻を繁殖させることを含む。
【0086】
第一工程は、第一の発明の魚礁用ブロックを海底に設置する工程である。用いる魚礁用ブロックは、一つでも二つ以上でもよい。但し、用いるブロックの中の少なくとも一つは、貫通孔に木質系材料が充填されているものである。魚礁用ブロックを二つ以上用いる場合、それらの相対的配置は、魚礁用ブロックを並置したり積み上げたりすることができる限り、特に限定されない。
【0087】
第二工程は、フナクイムシ等のセルロース消化能を有する生物を用いる、貫通孔に充填されている木質系材料の消化、分解と、その結果としての貫通孔の復帰の工程である。セルロース消化能を有する生物は海中に生存しているので、それらの生物を利用し、2乃至5年の時間をかけて、第二工程を実施する。
【0088】
第三工程は、魚礁用ブロックに海藻を繁殖させる工程である。より具体的には、魚礁用ブロックのコンクリート部分や木質系材料に、海中に存在する海藻の種子や胞子を着床させ、海藻を生育させ、そして繁茂させる工程である。
【0089】
第二工程と第三工程とは、同時進行し、最終的に、即ち木質系材料がなくなることで貫通孔が復活すると、海藻が繁茂し且つ有価植食生物が棲息する人工魚礁又は藻礁が出来上がる。
【0090】
第六の発明の実施に際しては、すべての貫通孔に木質系材料が充填されてなる魚礁用ブロックのみを使用することが好ましい。そのような魚礁用ブロックのみを用いると、海藻や海藻の芽を食料とする魚類、鮑、伊勢海老、ウニ等の植食生物の棲息に先立って海藻を繁茂させることができるからである。より具体的には、以下のとおりである。
【0091】
第六の発明では、魚礁用ブロックが海底に設置されると、先ず、木質系材料の存在する個所にフナクイムシやキクイムシ等のセルロース消化能を有する生物が棲息し、それらの生物により、木質系材料が消化、分解される。フナクイムシ等の食害痕やコンクリート表面の穴は、巻貝等の植食生物が棲息するには狭いが、海藻の種子や胞子が着床したり、小型の甲殻類や多毛類が棲息するには十分な大きさである。フナクイムシや小型の甲殻類や多毛類の棲息により、魚礁用ブロック周辺はよい餌場となる。即ち、魚礁用ブロック周辺に、小型の甲殻類やフナクイムシ等を好む魚類が集まるようになる。また、小型の甲殻類やフナクイムシ等を好む魚類が集まると、海藻を食料とする魚類、鮑、伊勢海老、ウニ等の植食生物が集まらないので、魚礁用ブロックに付着した海藻が繁茂するようになる。魚礁用ブロックの海底への設置から2乃至5年が経過すると、フナクイムシ等が木質系材料を消化、分解し尽くし、木質系材料がなくなる。木質系材料がなくなると、フナクイムシ等はいなくなり、従って、小型の甲殻類やフナクイムシ等を好む魚類は集まらなくなり、代わって、木質系材料がなくなることで復活した貫通孔を棲家とし、海藻を食料とする魚類、鮑、伊勢海老、ウニ等の植食生物が棲息するようになる。しかし、このときまでには、既に海藻が十分に繁茂しているので、植食生物が増えても磯焼けの被害を受けにくい。従って、最終的には、海藻が繁茂し且つ有価植食生物が棲息する人工魚礁又は藻礁が出来上がる。
【0092】
以上、本発明の好適例を説明したが、これらはあくまでも例であり、本発明はこれらの好適例のみに限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ規定される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の魚礁用ブロックの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の魚礁用ブロックの他の一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】図2の魚礁用ブロックの側面図である。
【図4】本発明の魚礁用ブロックの更に他の一例を模式的に示す平面図である。
【図5】本発明の魚礁用ブロックの更に他の一例を模式的に示す平面図である。
【図6】突起の一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の魚礁用ブロックの更に他の一例を模式的に示す平面図及び側面図である。
【図8】本発明の魚礁用ブロックの更に他の一例を模式的に示す側面図である。
【図9】本発明の魚礁用ブロックの更に他の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】本発明の魚礁用ブロックにおける貫通孔とその貫通孔を封止する木質系材料の配置や形状の例を示す部分断面図である。
【図11】図9に示す魚礁用ブロックの製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の魚礁用ブロックの一例の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。
【図13】本発明の魚礁用ブロックを積み重ねた人工魚礁の一例を示す斜視図である。
【図14】本発明の魚礁用ブロックを積み重ねた人工魚礁の他の一例を示す斜視図である。
【図15】最下段にストッパとなる突起を有する魚礁用ブロックを使用して構築した人工魚礁の一例を示す側面図である。
【図16】最下段に、その上に載置される魚礁用ブロックを支持する突起を有さない(A)及び有する(B)魚礁用ブロックを使用して構築した人工魚礁の一例を示す側面図である。
【図17】最下段に凹部を有する魚礁用ブロックを使用して構築した人工魚礁の一例を示す側面図である。
【図18】下から2段目(この例では最上段)に、第三の脚部を有する魚礁用ブロックを使用して構築した人工魚礁の一例を示す側面図である。
【図19】本発明の魚礁用ブロックを用いて構築した人工魚礁、突堤又は離岸堤の一例を模式的に示す斜視図である。
【図20】本発明の魚礁用ブロックを用いて構築した人工魚礁、突堤又は離岸堤の他の一例を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0094】
5 貫通孔
9 突起
10 本体部
30 脚部
40 木質系材料
50 平坦な頂上部
60 凹部
70 アンカーボルト用孔
80 凹部
100,200,300,400,500,600,700,800,900 魚礁用ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製の魚礁用ブロックであって、その横断面形状が多角形である本体部と、当該本体部の外周部の一部から当該外周部に連なって下方に且つ内側に向かって延びる外側面を有する脚部二つ以上とを備え、当該本体部のその下方に脚部を有しない部分には本体部の上面と下面とを直線的に繋ぐ貫通孔が一つ以上形成されていることを特徴とする魚礁用ブロック。
【請求項2】
前記本体部の外周部の少なくとも一部が内側に向かう傾斜面となっている、請求項1に記載の魚礁用ブロック。
【請求項3】
二つの脚部を備え、それらの脚部は、その外側面が、前記本体部の下面の多角形形状の相向かい合う二辺a,bのそれぞれから内側に向かって傾斜しつつ下方に延びている、請求項1又は2に記載の魚礁用ブロック。
【請求項4】
さらに、前記貫通孔に充填されている木質系材料であって、その端部は前記本体部の上面及び/又は下面から突出していてもよく、但し、下面から突出している部分の高さは前記脚部の高さ以下であるものを有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の魚礁用ブロック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状が正方形であるものを海底又は浜に設置し、その上に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状が正方形であるものを載置し、さらに、必要に応じて第三以降の魚礁用ブロックも同様に載置することを特徴とし、ここで、請求項4に記載の魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さである、人工魚礁の構築方法。
【請求項6】
前記第二の魚礁用ブロックが前記第一の魚礁用ブロックよりも小さく、さらに、必要に応じて載置される第三以降の魚礁用ブロックも順次小さくなっていく、請求項5に記載の人工魚礁の構築方法。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第一の魚礁用ブロック二つを、それら二つの第一の魚礁用ブロックの前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して海底又は浜に設置し、その上に、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第二の魚礁用ブロック一つ又は二つを、第一の魚礁用ブロックの脚部と第二の魚礁用ブロックの脚部とが互いに直角となるように、そして、第二の魚礁用ブロックを二つ用いる場合には、それら二つの第二の魚礁用ブロックの前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して載置し、さらに、必要に応じて第三以降の魚礁用ブロックも同様に載置することを特徴とし、ここで、請求項4に記載の魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さであり、また、魚礁用ブロック一つのみを載置した場合には、その一つのみ魚礁用ブロック上に魚礁ブロック二つが載置されることはない、人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築方法。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第一の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第一の魚礁用ブロック三つ以上を、前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して海底又は浜に設置し、端部に設置された第一の魚礁用ブロック(I)とその隣りに設置された第一の魚礁用ブロック(II)の上には、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の第二の魚礁用ブロックであって、その本体部の横断面形状は、相向かい合う二つの長辺と、それらの長辺に対して直角の相向かい合う二つの短辺と、長辺と短辺との間に位置する四つの辺からなる八角形であり、前記本体部の下面の八角形形状の短辺から当該本体部の外周部に連なって内側に向って傾斜しつつ下方に延びる外側面を有する脚部二つを有する第二の魚礁用ブロック(I)を、前記第一の魚礁用ブロック(I)、(II)の脚部と当該第二の魚礁用ブロック(I)の脚部とが互いに直角となるように且つ同様の方向に第二の魚礁用ブロック(II)を載置できる空間を空けて載置し、第二の魚礁用ブロック(II)は、前記第二の魚礁用ブロック(I)に対し、前記八角形の長辺同士が平行となるように且つ近接して、且つ第二の魚礁用ブロック(I)の前記八角形の長辺の長さ方向に約1/2だけずらして第一の魚礁用ブロック(II)及びその隣りの第一の魚礁用ブロック(III)の上に載置し、更に第一の魚礁用ブロック(IV)以降が海底又は浜に設置されている場合には、第二の魚礁用ブロック(III)以降も同様に載置することを含み、従って、両端部の第一の魚礁用ブロックは、その上面の面積の1/2以上が第二の魚礁用ブロックが載置されないために露出されており、ここで、請求項4に記載の魚礁用ブロックを使用する場合には、木質系材料の突出部の高さは魚礁用ブロックの積重ねに支障のない高さである、人工魚礁、突堤又は離岸堤の構築方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の魚礁用ブロック二つ以上を、並置し及び/又は積重ねてなる人工魚礁、突堤又は離岸堤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−253221(P2008−253221A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101253(P2007−101253)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(501168814)独立行政法人水産総合研究センター (103)
【出願人】(505251347)日本コーケン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】