魚釣用リール
【課題】 魚釣用リールを片手で保持したときにスプールの制動力の調整を行う操作部に外力が加わり難く、リールを保持した状態で操作部を手指に当てた状態を回避しつつ、リールを保持した手の指で操作部による制動力の調整操作を行うことができる魚釣用リールを提供すること。
【解決手段】 リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置54の制動力を、側板16bに配置した操作部86を介して調整可能とした魚釣用リールは、釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板16bに、この側板16bの外表面から内方に凹設させた凹部90を形成し、前記操作部86を、前記側板16bの外表面の延長面Sから外方に突出させることなく、この凹部90内に配置して外部に露出させ、前記操作部86をリールを保持した手の指LTで操作可能とした。
【解決手段】 リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置54の制動力を、側板16bに配置した操作部86を介して調整可能とした魚釣用リールは、釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板16bに、この側板16bの外表面から内方に凹設させた凹部90を形成し、前記操作部86を、前記側板16bの外表面の延長面Sから外方に突出させることなく、この凹部90内に配置して外部に露出させ、前記操作部86をリールを保持した手の指LTで操作可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばキャスティング等の釣糸放出時にスプールの過回転を防止するブレーキ装置として、遠心摩擦ブレーキ装置あるいは磁気ブレーキ装置が従来から設けられている。
例えば特許文献1や特許文献2の魚釣用リールの1対の側板の間に回転自在に支持したスプールに制動力を付与する制動装置の操作部は、ハンドルと反対側の側板の前方に設けられ、操作部の外周部を側板の外表面に対して突出するように設けて回動操作できるように構成されている。
一方、特許文献3には、制動装置の操作部が側板に対して突出していない魚釣用リールが開示されている。この制動装置は、操作部を指で摘んで操作することで制動力を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−41167号公報
【特許文献2】実開平7−5362号公報
【特許文献3】特開2004−208630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の魚釣用リールでは、1対の側板の外表面に対して、制動装置の操作部の外周部が外側に突出しているので、魚釣用リールを握持する際の手の位置によっては操作部の外周部が掌に食い込んでしまって違和感が生じる可能性があり、握持保持性に劣る。
また、実用時や釣場移動時に、突出している外周部に外力が加わり易く、操作部に傷が付いて回転操作性が低下したり、制動装置に支障が生じる可能性がある。
さらに、特許文献3に開示された魚釣用リールでは、側板から突出していない操作部を操作する際に操作部を摘む必要がある。このように操作部を摘む場合、指が2本以上必要となるので、リールを保持した手の指で操作部による制動力の調整操作が行えない問題がある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、スプールの制動力の調整を行う操作部に外力が加わり難く、リールを保持した状態で操作部の外周部が掌に喰い込むことを回避しつつ、リール本体を保持した手の指で操作部による制動力の調整操作を行うことができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールは、釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板に、この側板の外表面から内方に凹設させた凹部を形成し、前記操作部を、前記側板の外表面の延長面から外方に突出させることなく、この凹部内に配置して外部に露出させ、前記操作部をリールを保持した手の指で操作可能としたことを特徴とする。
前記操作部は、外周側縁部に沿って凹凸による滑り止めを形成した円形ダイヤル状の形状を有することが好ましい。
前記凹部は、側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、前記操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
側板の凹部にスプールの制動力を調整する操作部を配置することができるので、釣場移動時や運搬時に操作部に外力が加わり難く、操作部に傷が付いたり、操作部の操作性が低下するのを防止できる。このため、制動装置に支障をきたすのを防止できる。また、操作部が凹部に配設されているので、リールを手で保持した状態で操作部が掌に喰い込むのを回避できる。そして、必要な場合にはリールを保持した手の指(例えば親指)で操作部を操作できるので、釣糸の巻取り動作からキャスティング動作までの一連の動作の中で操作部を自由に操作してスプールの制動力を調整できる。したがって、一定時間内でのキャスティングの回数をより多くすることができる。また、リールを片手で保持している際に、操作部に手指が強く当たるのを防止できるので、意図しない操作部の操作を防止できる。
また、操作部に凹凸を有する滑り止めを形成することによって、凹凸を指に引っ掛けることができ、操作部の滑りを防止できる。
凹部がリールの側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことによって、露出した操作部の一部に指を掛けることによって、容易に操作部を操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係る、釣竿に魚釣用リールを取り付けた釣具を示し、左手で釣竿およびリールを保持し、右手で魚釣用リールのハンドルを操作する状態を示す概略的な上面図。
【図2】第1の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、図1中の矢印II方向から見た概略図。
【図3】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図2中のIII−III線に沿う概略的な部分横断面図。
【図4】第1の実施の形態に係る魚釣用リールの図3中の矢印IVで示す部分の概略的な拡大図。
【図5】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図2中のV−V線に沿う部分の要部を示す概略的な縦断面図。
【図6】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、左手でリールを保持しながら図5に示す操作部に左手の親指を当てて操作する状態を示す概略的な縦断面図。
【図7】第2の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示す概略図。
【図8】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図7中のVIII−VIII線に沿う概略的な部分横断面図。
【図9】第2の実施の形態に係る魚釣用リールの図8中の矢印IXで示す部分の概略的な拡大図。
【図10】第2の実施の形態に係る、釣竿に魚釣用リールを取り付けた釣具を示し、左手で釣竿およびリールを保持する状態を示す、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示す概略図。
【図11】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、左手でリールを保持しながら図10に示す操作部に左手の親指を当てて操作する状態を示す、図10中のXI−XI線に沿う部分の要部を示す概略的な縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図6は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リール10を示す。
図1から図3に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。図1に示すように、ここでは釣り人が左手LHで竿8および魚釣用リール10を保持し、右手RHで魚釣用リール10のハンドル30を回すように形成されている場合について説明する。もちろん、左手LHでハンドル30を操作するようにハンドル30の配置が逆であっても良い。
【0010】
図3に示すように、魚釣用リール10のリール本体12は、図示しない連結部材等で一体化される左右一対のフレーム14a,14bのそれぞれの外側に、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段により、側板16a,16bを取り付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、リール取付脚部18を介して釣竿8に固定される。
【0011】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右のフレーム14a,14b間に回転自在に支持され、右側板16aは、スプール20を回転駆動させる巻取り駆動部22を支持し、この右側板16aと右フレーム14aとの間に形成された空間内に、この巻取り駆動部22を形成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。なお、左右は図3中における左右方向を示し、実釣中における左右の方向を示すものではない。
【0012】
このリール本体12のフレーム14a,14b間には、スプール20を装着してこのスプール20と共に回転するスプール軸26の両端部が、例えば図示のようなボール軸受28a,28bを介して回転自在に支持されている。このスプール軸26の一端側には、ハンドル30の回転を軸受32a,32bに支持されたハンドル軸34、ハンドル軸34に回り止め嵌合されたドラグ機構44を経由してドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38がこのスプール軸26と同軸状に配置されている。
なお、ハンドル軸34には、公知のスタードラグ(ドラグ調整ノブ)42が配設され、ドライブギヤ36には公知のドラグ機構44が配設されているが、これらについては説明を省略する。
【0013】
このピニオンギヤ38は、図示しない公知のクラッチ(伝達機構)48を介して、側板16a,16b間に配置したクラッチレバー50と連動しており、このクラッチレバー50を下方に押圧作動することにより、クラッチ48がOFFとなり軸方向に沿って図3中の右側に移動することができる。例えば、クラッチレバー50の操作により、図1に示すスプール軸26の右端部にピニオンギヤ38が嵌合した位置すなわち巻取状態と、スプール軸26の右端部からピニオンギヤ38を分離した状態(スプールフリー状態)とすることができる。又、ピニオンギヤ38が分離した状態で、ハンドル30を回転させると、図示しない公知の復帰機構を介して、ピニオンギヤ38がスプール軸26の右端部に嵌合して元の状態(巻取状態)に復帰し、スプール軸26と一体化されているスプール20が、ピニオンギヤ38と共に一体的に回転する。
【0014】
このスプール20は、軸方向の両側に形成された一対の鍔部20a間に位置する円筒状の胴部20bを有し、胴部20bの内周側に位置する中央壁部20cを介してスプール軸26に一体的に装着され、一対の鍔部20aと釣糸巻回胴部20bの外周面とで形成される環状溝内に釣糸(図示しない)が巻回される。この環状溝の底部を形成する胴部20b上に釣糸(図示しない)を均等に巻回するため、ハンドル30の釣糸巻取り回転に連動して、一対の左右のフレーム14a,14b間を往復動する公知のレベルワインド機構(図示せず)が配置されている。このレベルワインド機構は、右側板16a内の駆動部と連動する係合子を左右に移動することにより、ハンドル30の回転操作にともなって、釣糸をスプール20の胴部20b上に均等に巻き取ることができる。
【0015】
そして、ハンドル30の反対側に位置する一側には、スプール20の過回転を防止する磁気制動装置54を配置してある。
この磁気制動装置54は、スプール20と一体回転するように取り付けた導電体56を備える。本実施形態の導電体56は、スプール軸26に強固に固定されるボス部56aと、このボス部56aから半径方向外方に延びるディスク状部56bと、このディスク状部56bの外周縁部からハンドル30と反対側に延びる円筒状部56cとを有し、例えばアルミニウムあるいは銅等の非磁性の導電性材料で形成される。
円筒状部56cは、後述する内側リング磁石68および外側リング磁石70とほぼ等しい軸方向寸法を有し、その全体がこれらの磁石68,70間の環状間隙72内に挿入されている。このため、円筒状部56cは、これらのリング磁石68,70の側面側から漏れ出る磁束の範囲内に配置されている。これらの円筒状の導電体56は、非磁性の導電性材料で形成されているので、これらの磁束内を移動するときに、渦電流が誘導される。
【0016】
なお、この導電体56は、円筒状部56cがこのような非磁性の導電性材料で形成されるものであれば、その全体を同一材料で形成することは必ずしも必要なく、例えばボス部56aおよびディスク状部56bをより軽量の樹脂材料等で形成してもよい。また、ボス部56aをスプール軸26の端部の小径部に隣接させて固定することにより、スプール軸26を支える軸受28bでボス部56aの軸方向外方への移動を抑制し、導電体56がスプール軸26から脱落するのを防止することも可能である。
【0017】
一方、この導電体56に対向する左フレーム14bの外側には、左側板16bが例えば複数本のねじで強固に固定されている。
左側板16bはボール軸受28bを介してスプール軸26の端部を回転自在に支える受部材58を一体的に有する。この受部材58は、スプール軸26および軸受28bを収容する中央開口60と同心状に、スプール軸26側から小径部62aと大径部62bとを順に形成した段付き構造の支持台部62を有する。小径部62aの外周部には、磁石ホルダ66を収容する環状溝64を形成してある。磁石ホルダ66は環状溝64に対して摺動可能である。この磁石ホルダ66の外周には、磁場を径方向に配向させるN極とS極とを周方向に沿って複数対を交互に逆向きに着磁させた内側リング磁石68を固定してある。
左フレーム14bには、内側リング磁石68に対向した状態で、内側リング磁石68に対して逆方向に着磁された外側リング磁石70を固定してある。
【0018】
これらの内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72内には、上述の導電体56の円筒状部56cが配置されている。このため、内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72に磁界が形成される。
【0019】
なお、内側リング磁石68は磁石ホルダ66が環状溝64に対して摺動することにより外側リング磁石70に対して回動可能である。このため、磁界を無段階で変化させることができる。
【0020】
そして、導電体56の円筒状部56cは、内側リング磁石68の外径よりも大きく、かつ外側リング磁石70の内径よりも小さい円筒状に形成してあり、磁石68,70の環状間隙72に形成される磁界内に配設されている。
【0021】
磁石ホルダ66は、左側板16bの受部材58の大径部62bを貫通して左側板16bの後述する凹部90の前側に向かって延出された延出部76を介して、連動歯車78が配設されている。図2に示すように、連動歯車78は磁石ホルダ66と同心状の円弧状の部材の外周面に複数の歯が形成されている。
【0022】
図4に示すように、左フレーム14bには、支持部82を介してスプール制動力調整部80が配設されている。支持部82は、左フレーム14bに対して固定されている。
スプール制動力調整部80は、支持部82および左フレーム14bに対して螺合固定可能な螺合固定部84と、螺合固定部84の回りを回動可能な回動操作部86とを備えている。回動操作部86は螺合固定部84によって支持部82に対して適度に押圧され、適当な力を加えないと回動操作部86が回動しないようになっている。
【0023】
回動操作部86は外周部86cの縁部86dに少なくとも凹凸による滑り止めKが形成された例えば円形ダイヤル形状を有する。このような円形ダイヤル形状を有すると、図6に示す親指LTの腹部が外周部86cと側面86eの2面に跨る縁部86dへの押圧となって接触面積を大きく取れ、かつ、親指LTへの圧力を広範囲に分散できる。このため、左手LHの親指LTが痛くなり難く、回動操作部86の操作もし易い。また、親指LTを回動操作部86に押し当てた際に追う凸部に指の腹が喰い込むので、操作の際の滑りを防止できる。
なお、凹凸による滑り止めKは回動操作部86の外周部86cの全体や側面86eの全体に形成しても良い。また、回動操作部86の径方向内方の側面86eに目盛り86fや、回動操作部86に対向する保護部材92に指標部92a等が形成されている。
【0024】
図4から図6に示すように、回動操作部86の縁部86dの近傍の側面86eには、例えば環状に溝86aが形成されている。このため、指に水分が付着している場合に、その水分を溝86aに逃がすことができ、回動操作部86を滑り難くすることができる。特に、凹部90内に親指LTを押し付けるので、この回動操作部86への親指LTへの押し付け力は小さくなり、これらの滑り防止は効果的である。
また、回動操作部86には、支持部82に対して当接するときにクリック音を発生するリーフスプリング88が配設されている。このため、回動操作部86を操作すると、クリック音が発生する。
そして、スプール制動力調整部80の回動操作部86の外周には回動操作部側歯車86bが形成され、これが連動歯車78に噛み合わせられている。このため、回動操作部86を左フレーム14bに対して例えば図2中のP方向に回動させると、回動操作部側歯車86bを介して連動歯車78をQ方向に回動させる。そして、連動歯車78に連結された延出部76を介して磁石ホルダ66がR方向に回動する。このため、内側リング磁石68に対する外側リング磁石70の相対位置が変化する。これにより、導電体56の円筒状部56cを配置した内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72の磁界の強さを、例えば制動力を全く形成しないゼロ制動の状態から、最大制動力を形成する全制動の状態まで無段階的に変化させることができる。
【0025】
なお、この実施の形態では、内側リング磁石68は、左フレーム14bに装着したスプール制動力調整部80(図4参照)を回転操作することにより、スプール軸26の軸線を中心として回動し、導電体56に作用する磁力を調節可能に構成されている。これとは逆に、外側リング磁石70を移動するように構成することも可能である。
【0026】
図3および図4に示すように、左側板16bは、左フレーム14bを覆うとともに、左フレーム14bから左方に突出したスプール制動力調整部80を覆う空間を有するカバーとして形成されている。この左側板16bには、スプール制動力調整部80の回動操作部86の一部を操作可能なように左手LHの親指LTを押し当てるための凹部(開口部)90が形成されている。
【0027】
図2に示すように、左側板16bの凹部90は、左側板16bの上方かつ前方側で、上下方向よりも前後方向に長く形成されている。ここでは、凹部90は外観が略平行四辺形に形成されている。左フレーム14bに配設された回動操作部86は凹部90を通してその外周部および側部の一部(ここでは回動操作部86の上側)が視認できる状態にある。そして、回動操作部86は、図5および図6中に破線で示す左側板16bの外表面の延長面Sから外方に突出させることなく、この凹部90の内側に配置した状態で外部に露出させている。
図5および図6中に破線で示す左側板16bの外表面の延長面Sから回動操作部86までの距離は、例えば0mmから5mm程度で、0.5mmから3.0mm程度であればなお好ましい。すなわち、回動操作部86は左側板16bの外表面に対して突出しないように露出されている。
【0028】
なお、延長面Sの形状は、左側板16bの凹部90の周囲の形状によって変わる。凹部90の周囲がこの実施の形態のように曲面の場合、延長面Sも曲面であり、凹部90の周囲が平面の場合(第2の実施の形態の図9および図11参照)、延長面Sも平面である。すなわち、図5および図6中、凹部90の周囲が曲面であるから、延長面Sを示す破線は曲線である。
【0029】
そして、左側板16bの外表面の延長面Sから回動操作部86が外方に突出しないことの判断は、リール取付脚部18を水平に配置したときに、凹部90の水平方向および上下方向の短寸法方向で判断するものとする。この実施の形態では図2に示す凹部90の上下方向が前後方向に比べて短寸法方向であるため、延長面S上に図示しない基準線が凹部90の上下方向に採られ、その基準線に回動操作部86が触れているか否かで突出しているか否かが判断される。なお、基準線は、凹部90の周囲が曲面であるからこの実施の形態では曲線である。また、この曲面は凹部90の周囲の曲率面が延長した形で定義付けられる。
【0030】
図2、図5および図6に示すように、左側板16bの凹部90の縁部には、左手LHの親指LTを保護したり、左側板16bの凹部90から左フレーム14bとの間にゴミが浸入するのを防止するため、例えば環状の保護部材92が固定されている。この保護部材92は硬度が低く、摩擦係数が小さい材料としてPTFE、ナイロン、ABS樹脂、アセタール樹脂(POM)などの樹脂材が用いられることが好ましい。
凹部90の下側の縁部に配設された保護部材92は、親指LTを置く部分として凹部90の下側縁部から外部に突出した状態に固定されている。凹部90の上側の縁部に配設された保護部材92は、ゴミの侵入を防止するように左側板16bの内周面から回動操作部86に向かって延出されている。
図6に示すように保護部材92の下側に親指LTを押し当てると、親指LTは下側に向けた力を掛けることとなる。このとき、親指LTが保護部材92に強く擦れるので、親指LTに負担を掛けるのを防止するため、R形状に丸められている。この保護部材92は、親指LTが強く擦れるため、未塗装、未メッキ仕上げとすることが好ましい。
【0031】
そして、釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板16bの凹部90を通して回動操作部86の上側部分に親指LTを押し当てることができる。このため、上側部分に押し当てた親指LTを凹部90の保護部材92に沿って前後方向に移動させると回動操作部86を回動操作可能である。そして、スプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68および外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生し、スプール20の回転を抑制する。
【0032】
このリール10をリール取付脚部18を介して釣竿8に取り付けた釣り具を用いて魚釣りを実際に行う場合の一連の動作について簡単に説明する。(1)ハンドル30を操作して釣糸を巻き取るとともに、左手でリール10を保持しつつ親指LTで回動操作部86を操作し、次キャスティング時の調整を行う。(2)釣糸の巻取りを完了する。(3)右手RHで釣竿8とリール10を持つ。(4)このように持った状態でキャスティングする。
【0033】
すなわち、この実施の形態に係る釣り具を用いると、釣竿8を操作しながら、又は、リール10のハンドル30を操作しながら親指一本でスプール20の制動調整を行うことができる。したがって、右手RHで釣竿8とリール10を持った後に左手LHで回動操作部86を調整する(スプール20の制動調整を行う)手間を省くことができる。このため、一連の動作のサイクルを短縮でき、一定時間内での投入回数を多くすることができるので、魚釣りのチャンスを逃し難い。そして、回動操作部86を操作するのに釣竿8を持ち替えたりする手間がないので、魚釣りをしながら次の投入プランに合わせてスプール20の制動力を調整できる。
【0034】
左側板16bの凹部90にスプール20の制動力を調整するスプール制動力調整部80を配置することができ、かつ、回動操作部86の外周部および側部の一部のみ凹部90によって露出された状態にあるので、意図せず回動操作部86を操作してしまうのを防止できる。また、螺合固定部84および回動操作部86に外力が加わり難く、螺合固定部84および回動操作部86に傷が付いたり、回動操作部86の操作性が低下するのを防止でき、磁気制動装置54に支障をきたすのを防止できる。また、回動操作部86が凹部90内に配設されているので、リール10を左手LHで保持した状態で回動操作部86が掌に喰い込むことがなく、握持保持性が良く、必要な場合に親指LTを動かして回動操作部86の一部に親指LTを掛けることによって、容易に回動操作部86を操作できる。また、手指が回動操作部86に強く当たることによる誤操作も発生し難い。
【0035】
また、回動操作部86に凹凸を有する滑り止めを形成することによって、回動操作部86の凹凸を親指LTに引っ掛けることができ、回動操作部86を操作しようとする際の滑りを防止できる。また、回動操作部86に溝86aが形成されていることによって、操作時の水分を溝86a内に入れることができる。このため、回動操作部86に対する親指LTの滑りをより確実に防止できる。特に、凹部90内に親指LTを押し付けるので、この回動操作部86への親指LTからの押し付け力は小さくなり、これらの滑り防止は効果的である。
【0036】
次に、第2の実施の形態について図7から図11を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、この実施の形態ではスプール20の制動力の調整を行う回動操作部186がリング磁石68,70と同心状に配設された型式の魚釣用リール10について説明する。
【0038】
図8および図9に示すように、左フレーム14bの外側には、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段により、受部材158と、左側板116bとが取り付けられている。この実施の形態では第1の実施の形態とは異なり、左側板116bとは別部材の受部材158を有する。そして、左側板116bは、左フレーム14bとの間に空間を有し、その空間内に受部材158およびスプール制動力調整部180が配設されている。
【0039】
受部材158は、スプール軸26および軸受28bを収容する中央開口160と同心状に、スプール軸26側から小径部162aと大径部162bとを順に形成した支持台部162を有する。
小径部162aの外周部には、磁石ホルダ166を収容する環状溝164を形成してある。磁石ホルダ166は環状溝164に対して摺動可能である。この磁石ホルダ166の外周には、第1の実施の形態で説明した内側リング磁石68を固定してある。左フレーム14bには、内側リング磁石68に対向した外側リング磁石70が固定されている。
【0040】
なお、内側リング磁石68は磁石ホルダ166が環状溝164に対して摺動することにより外側リング磁石70に対して回動可能である。このため、磁石ホルダ166を支持台部162の小径部162aに対して摺動させることにより磁界を無段階で変化させることができる。
【0041】
図9に示すように、受部材158は、リール10の前側で左フレーム14bに対して遠位側(左側板116b側)に延びる腕部163を有する。この腕部163は、左フレーム14bおよび左側板116bとの間にスプール制動力調整部180を収容する凹部190を区画する。すなわち、腕部163は、図10および図11に示す回動操作部186の動作範囲を規定している。
【0042】
受部材158と左フレーム14bとの間には、磁石ホルダ166から延出された延出部176が配設されている。この延出部176の前側には、スプール制動力調整部180を支持する支持部177が形成されている。
【0043】
スプール制動力調整部180は支持部177に対して螺合固定可能な螺合固定部(固定ネジ)184と、螺合固定部184により固定された回動操作部186とを備えている。すなわち、支持部177には、螺合固定部184を介して回動操作部186が配設されている。
【0044】
図7および図10に示すように、左側板116bの凹部190は、左側板116bの上方かつ前方側で、上下方向に長く形成されている。回動操作部186は凹凸による滑り止めが形成された突起部186aを有し、この突起部186aが図9および図11中に破線で示す左側板116bの外表面の延長面Sに対して外方に突出させることなく、この凹部190内側に配置した状態で外部に露出している。
図9および図11中に破線で示す左側板116bの外表面の延長面Sから回動操作部186の突起部186aまでの距離は、例えば0mmから5mm程度で、0.5mmから3.0mm程度であればなお好ましい。すなわち、回動操作部186は左側板16bの外表面に対して突出しないように露出されている。
【0045】
なお、図9および図11中、凹部190の周囲が平面であるから、延長面Sを示す破線は直線である。そして、左側板116bの外表面の延長面Sから回動操作部186が外方に突出しないことの判断は、リール取付脚部18を水平に配置したときに、凹部190の水平方向および上下方向の短寸法方向で判断する。この実施の形態では図7に示す凹部190の前後方向が上下方向に比べて短寸法方向であるため、延長面S上に図示しない基準線を凹部190の前後方向に採られ、その基準線に回動操作部186が触れているか否かで突出しているか否かが判断される。なお、基準線は、凹部190の周囲が平面であるからこの実施の形態では直線である。
【0046】
そして、スプール制動力調整部180の回動操作部186には支持部177が連結されている。このため、回動操作部186を左フレーム14bに対して例えば図7中のP方向に回動させると、支持部177は、左フレーム14bの押圧受部15a,15bでその押圧力を受けて延出部176をQ方向に回動させるので、磁石ホルダ166(内側リング磁石68)がR方向に回動する。このため、内側リング磁石68に対する外側リング磁石70の相対位置が変化する。これにより、導電体56の円筒状部56cを配置した内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72の磁界の強さを、例えば制動力を全く形成しないゼロ制動の状態から、最大制動力を形成する全制動の状態まで無段階的に変化させることができる。
【0047】
なお、凹部190の縁部190aはこの実施の形態では斜面として形成され、左手LHの親指LTを縁部190aに当てると回動操作部186の突起部186aに簡単に触れることができるように形成されている。
【0048】
そして、釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板116bの凹部190を通して回動操作部186の突起部186aに親指LTを押し当てることができる。このため、押し当てた親指LTで回動操作部186の突起部186aを回動操作可能である。そして、スプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68および外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生し、スプール20の回転を抑制する。
【0049】
この実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明したように、釣竿8を操作しながら、又は、リール10のハンドル30を操作しながら親指一本でスプール20の制動調整を行うことができる。したがって、右手RHで釣竿8とリール10を持った後に左手LHで回動操作部86を調整する(スプール20の制動調整を行う)手間を省くことができる。
【0050】
また、左側板116bの凹部90にスプール20の制動力を調整する回動操作部186を配置することができ、かつ、回動操作部186の一部(突起部186a)のみ凹部190によって露出された状態にあるので、意図せず回動操作部186を操作してしまうのを防止できる。また、突起部186aが凹部190に対して突出していないので、回動操作部186に外力が加わり難く、回動操作部186に傷が付いたり、回動操作部186の操作性が低下するのを防止でき、磁気制動装置54に支障をきたすのを防止できる。また、回動操作部186が凹部190内に配設されているので、リール10を左手LHで保持した状態で回動操作部186が掌に喰い込むことがなく、握持保持性が良く、必要な場合に親指LTを動かして回動操作部186の一部(突起部186a)に親指LTを掛けることによって、容易に回動操作部186を操作できる。また、手指が回動操作部186に強く当たることによる誤操作も発生し難い。
【0051】
また、回動操作部186の突起部186aに凹凸を有する滑り止めを形成することによって、突起部186aの凹凸を親指LTに引っ掛けることができ、突起部186aを操作しようとする際の滑りを防止できる。
【0052】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む
【符号の説明】
【0053】
S…延長面、16b…左側板、26…スプール軸、28a,28b…ボール軸受、54…磁気制動装置、56…導電体、56a…ボス部、56b…ディスク状部、56c…円筒状部、58…受部材、60…中央開口、62a…小径部、62b…大径部、62…支持台部、64…環状溝、66…磁石ホルダ、68…内側リング磁石、70…外側リング磁石、72…環状間隙、76…延出部、78…連動歯車、80…スプール制動力調整部、82…支持部、84…螺合固定部、86…回動操作部、86a…溝、86b…回動操作部側歯車、88…リーフスプリング、90…凹部、92…保護部材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関し、特に、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばキャスティング等の釣糸放出時にスプールの過回転を防止するブレーキ装置として、遠心摩擦ブレーキ装置あるいは磁気ブレーキ装置が従来から設けられている。
例えば特許文献1や特許文献2の魚釣用リールの1対の側板の間に回転自在に支持したスプールに制動力を付与する制動装置の操作部は、ハンドルと反対側の側板の前方に設けられ、操作部の外周部を側板の外表面に対して突出するように設けて回動操作できるように構成されている。
一方、特許文献3には、制動装置の操作部が側板に対して突出していない魚釣用リールが開示されている。この制動装置は、操作部を指で摘んで操作することで制動力を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−41167号公報
【特許文献2】実開平7−5362号公報
【特許文献3】特開2004−208630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や特許文献2の魚釣用リールでは、1対の側板の外表面に対して、制動装置の操作部の外周部が外側に突出しているので、魚釣用リールを握持する際の手の位置によっては操作部の外周部が掌に食い込んでしまって違和感が生じる可能性があり、握持保持性に劣る。
また、実用時や釣場移動時に、突出している外周部に外力が加わり易く、操作部に傷が付いて回転操作性が低下したり、制動装置に支障が生じる可能性がある。
さらに、特許文献3に開示された魚釣用リールでは、側板から突出していない操作部を操作する際に操作部を摘む必要がある。このように操作部を摘む場合、指が2本以上必要となるので、リールを保持した手の指で操作部による制動力の調整操作が行えない問題がある。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、スプールの制動力の調整を行う操作部に外力が加わり難く、リールを保持した状態で操作部の外周部が掌に喰い込むことを回避しつつ、リール本体を保持した手の指で操作部による制動力の調整操作を行うことができる魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る、リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールは、釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板に、この側板の外表面から内方に凹設させた凹部を形成し、前記操作部を、前記側板の外表面の延長面から外方に突出させることなく、この凹部内に配置して外部に露出させ、前記操作部をリールを保持した手の指で操作可能としたことを特徴とする。
前記操作部は、外周側縁部に沿って凹凸による滑り止めを形成した円形ダイヤル状の形状を有することが好ましい。
前記凹部は、側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、前記操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
側板の凹部にスプールの制動力を調整する操作部を配置することができるので、釣場移動時や運搬時に操作部に外力が加わり難く、操作部に傷が付いたり、操作部の操作性が低下するのを防止できる。このため、制動装置に支障をきたすのを防止できる。また、操作部が凹部に配設されているので、リールを手で保持した状態で操作部が掌に喰い込むのを回避できる。そして、必要な場合にはリールを保持した手の指(例えば親指)で操作部を操作できるので、釣糸の巻取り動作からキャスティング動作までの一連の動作の中で操作部を自由に操作してスプールの制動力を調整できる。したがって、一定時間内でのキャスティングの回数をより多くすることができる。また、リールを片手で保持している際に、操作部に手指が強く当たるのを防止できるので、意図しない操作部の操作を防止できる。
また、操作部に凹凸を有する滑り止めを形成することによって、凹凸を指に引っ掛けることができ、操作部の滑りを防止できる。
凹部がリールの側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことによって、露出した操作部の一部に指を掛けることによって、容易に操作部を操作できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態に係る、釣竿に魚釣用リールを取り付けた釣具を示し、左手で釣竿およびリールを保持し、右手で魚釣用リールのハンドルを操作する状態を示す概略的な上面図。
【図2】第1の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示し、図1中の矢印II方向から見た概略図。
【図3】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図2中のIII−III線に沿う概略的な部分横断面図。
【図4】第1の実施の形態に係る魚釣用リールの図3中の矢印IVで示す部分の概略的な拡大図。
【図5】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図2中のV−V線に沿う部分の要部を示す概略的な縦断面図。
【図6】第1の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、左手でリールを保持しながら図5に示す操作部に左手の親指を当てて操作する状態を示す概略的な縦断面図。
【図7】第2の実施の形態に係る魚釣用リールのうち、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示す概略図。
【図8】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、図7中のVIII−VIII線に沿う概略的な部分横断面図。
【図9】第2の実施の形態に係る魚釣用リールの図8中の矢印IXで示す部分の概略的な拡大図。
【図10】第2の実施の形態に係る、釣竿に魚釣用リールを取り付けた釣具を示し、左手で釣竿およびリールを保持する状態を示す、ハンドルが取り付けられた側と反対側から観察した状態を示す概略図。
【図11】第2の実施の形態に係る魚釣用リールを示し、左手でリールを保持しながら図10に示す操作部に左手の親指を当てて操作する状態を示す、図10中のXI−XI線に沿う部分の要部を示す概略的な縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から図6は、本発明の好ましい実施形態による魚釣用リール10を示す。
図1から図3に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。図1に示すように、ここでは釣り人が左手LHで竿8および魚釣用リール10を保持し、右手RHで魚釣用リール10のハンドル30を回すように形成されている場合について説明する。もちろん、左手LHでハンドル30を操作するようにハンドル30の配置が逆であっても良い。
【0010】
図3に示すように、魚釣用リール10のリール本体12は、図示しない連結部材等で一体化される左右一対のフレーム14a,14bのそれぞれの外側に、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段により、側板16a,16bを取り付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成され、リール取付脚部18を介して釣竿8に固定される。
【0011】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右のフレーム14a,14b間に回転自在に支持され、右側板16aは、スプール20を回転駆動させる巻取り駆動部22を支持し、この右側板16aと右フレーム14aとの間に形成された空間内に、この巻取り駆動部22を形成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。なお、左右は図3中における左右方向を示し、実釣中における左右の方向を示すものではない。
【0012】
このリール本体12のフレーム14a,14b間には、スプール20を装着してこのスプール20と共に回転するスプール軸26の両端部が、例えば図示のようなボール軸受28a,28bを介して回転自在に支持されている。このスプール軸26の一端側には、ハンドル30の回転を軸受32a,32bに支持されたハンドル軸34、ハンドル軸34に回り止め嵌合されたドラグ機構44を経由してドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38がこのスプール軸26と同軸状に配置されている。
なお、ハンドル軸34には、公知のスタードラグ(ドラグ調整ノブ)42が配設され、ドライブギヤ36には公知のドラグ機構44が配設されているが、これらについては説明を省略する。
【0013】
このピニオンギヤ38は、図示しない公知のクラッチ(伝達機構)48を介して、側板16a,16b間に配置したクラッチレバー50と連動しており、このクラッチレバー50を下方に押圧作動することにより、クラッチ48がOFFとなり軸方向に沿って図3中の右側に移動することができる。例えば、クラッチレバー50の操作により、図1に示すスプール軸26の右端部にピニオンギヤ38が嵌合した位置すなわち巻取状態と、スプール軸26の右端部からピニオンギヤ38を分離した状態(スプールフリー状態)とすることができる。又、ピニオンギヤ38が分離した状態で、ハンドル30を回転させると、図示しない公知の復帰機構を介して、ピニオンギヤ38がスプール軸26の右端部に嵌合して元の状態(巻取状態)に復帰し、スプール軸26と一体化されているスプール20が、ピニオンギヤ38と共に一体的に回転する。
【0014】
このスプール20は、軸方向の両側に形成された一対の鍔部20a間に位置する円筒状の胴部20bを有し、胴部20bの内周側に位置する中央壁部20cを介してスプール軸26に一体的に装着され、一対の鍔部20aと釣糸巻回胴部20bの外周面とで形成される環状溝内に釣糸(図示しない)が巻回される。この環状溝の底部を形成する胴部20b上に釣糸(図示しない)を均等に巻回するため、ハンドル30の釣糸巻取り回転に連動して、一対の左右のフレーム14a,14b間を往復動する公知のレベルワインド機構(図示せず)が配置されている。このレベルワインド機構は、右側板16a内の駆動部と連動する係合子を左右に移動することにより、ハンドル30の回転操作にともなって、釣糸をスプール20の胴部20b上に均等に巻き取ることができる。
【0015】
そして、ハンドル30の反対側に位置する一側には、スプール20の過回転を防止する磁気制動装置54を配置してある。
この磁気制動装置54は、スプール20と一体回転するように取り付けた導電体56を備える。本実施形態の導電体56は、スプール軸26に強固に固定されるボス部56aと、このボス部56aから半径方向外方に延びるディスク状部56bと、このディスク状部56bの外周縁部からハンドル30と反対側に延びる円筒状部56cとを有し、例えばアルミニウムあるいは銅等の非磁性の導電性材料で形成される。
円筒状部56cは、後述する内側リング磁石68および外側リング磁石70とほぼ等しい軸方向寸法を有し、その全体がこれらの磁石68,70間の環状間隙72内に挿入されている。このため、円筒状部56cは、これらのリング磁石68,70の側面側から漏れ出る磁束の範囲内に配置されている。これらの円筒状の導電体56は、非磁性の導電性材料で形成されているので、これらの磁束内を移動するときに、渦電流が誘導される。
【0016】
なお、この導電体56は、円筒状部56cがこのような非磁性の導電性材料で形成されるものであれば、その全体を同一材料で形成することは必ずしも必要なく、例えばボス部56aおよびディスク状部56bをより軽量の樹脂材料等で形成してもよい。また、ボス部56aをスプール軸26の端部の小径部に隣接させて固定することにより、スプール軸26を支える軸受28bでボス部56aの軸方向外方への移動を抑制し、導電体56がスプール軸26から脱落するのを防止することも可能である。
【0017】
一方、この導電体56に対向する左フレーム14bの外側には、左側板16bが例えば複数本のねじで強固に固定されている。
左側板16bはボール軸受28bを介してスプール軸26の端部を回転自在に支える受部材58を一体的に有する。この受部材58は、スプール軸26および軸受28bを収容する中央開口60と同心状に、スプール軸26側から小径部62aと大径部62bとを順に形成した段付き構造の支持台部62を有する。小径部62aの外周部には、磁石ホルダ66を収容する環状溝64を形成してある。磁石ホルダ66は環状溝64に対して摺動可能である。この磁石ホルダ66の外周には、磁場を径方向に配向させるN極とS極とを周方向に沿って複数対を交互に逆向きに着磁させた内側リング磁石68を固定してある。
左フレーム14bには、内側リング磁石68に対向した状態で、内側リング磁石68に対して逆方向に着磁された外側リング磁石70を固定してある。
【0018】
これらの内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72内には、上述の導電体56の円筒状部56cが配置されている。このため、内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72に磁界が形成される。
【0019】
なお、内側リング磁石68は磁石ホルダ66が環状溝64に対して摺動することにより外側リング磁石70に対して回動可能である。このため、磁界を無段階で変化させることができる。
【0020】
そして、導電体56の円筒状部56cは、内側リング磁石68の外径よりも大きく、かつ外側リング磁石70の内径よりも小さい円筒状に形成してあり、磁石68,70の環状間隙72に形成される磁界内に配設されている。
【0021】
磁石ホルダ66は、左側板16bの受部材58の大径部62bを貫通して左側板16bの後述する凹部90の前側に向かって延出された延出部76を介して、連動歯車78が配設されている。図2に示すように、連動歯車78は磁石ホルダ66と同心状の円弧状の部材の外周面に複数の歯が形成されている。
【0022】
図4に示すように、左フレーム14bには、支持部82を介してスプール制動力調整部80が配設されている。支持部82は、左フレーム14bに対して固定されている。
スプール制動力調整部80は、支持部82および左フレーム14bに対して螺合固定可能な螺合固定部84と、螺合固定部84の回りを回動可能な回動操作部86とを備えている。回動操作部86は螺合固定部84によって支持部82に対して適度に押圧され、適当な力を加えないと回動操作部86が回動しないようになっている。
【0023】
回動操作部86は外周部86cの縁部86dに少なくとも凹凸による滑り止めKが形成された例えば円形ダイヤル形状を有する。このような円形ダイヤル形状を有すると、図6に示す親指LTの腹部が外周部86cと側面86eの2面に跨る縁部86dへの押圧となって接触面積を大きく取れ、かつ、親指LTへの圧力を広範囲に分散できる。このため、左手LHの親指LTが痛くなり難く、回動操作部86の操作もし易い。また、親指LTを回動操作部86に押し当てた際に追う凸部に指の腹が喰い込むので、操作の際の滑りを防止できる。
なお、凹凸による滑り止めKは回動操作部86の外周部86cの全体や側面86eの全体に形成しても良い。また、回動操作部86の径方向内方の側面86eに目盛り86fや、回動操作部86に対向する保護部材92に指標部92a等が形成されている。
【0024】
図4から図6に示すように、回動操作部86の縁部86dの近傍の側面86eには、例えば環状に溝86aが形成されている。このため、指に水分が付着している場合に、その水分を溝86aに逃がすことができ、回動操作部86を滑り難くすることができる。特に、凹部90内に親指LTを押し付けるので、この回動操作部86への親指LTへの押し付け力は小さくなり、これらの滑り防止は効果的である。
また、回動操作部86には、支持部82に対して当接するときにクリック音を発生するリーフスプリング88が配設されている。このため、回動操作部86を操作すると、クリック音が発生する。
そして、スプール制動力調整部80の回動操作部86の外周には回動操作部側歯車86bが形成され、これが連動歯車78に噛み合わせられている。このため、回動操作部86を左フレーム14bに対して例えば図2中のP方向に回動させると、回動操作部側歯車86bを介して連動歯車78をQ方向に回動させる。そして、連動歯車78に連結された延出部76を介して磁石ホルダ66がR方向に回動する。このため、内側リング磁石68に対する外側リング磁石70の相対位置が変化する。これにより、導電体56の円筒状部56cを配置した内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72の磁界の強さを、例えば制動力を全く形成しないゼロ制動の状態から、最大制動力を形成する全制動の状態まで無段階的に変化させることができる。
【0025】
なお、この実施の形態では、内側リング磁石68は、左フレーム14bに装着したスプール制動力調整部80(図4参照)を回転操作することにより、スプール軸26の軸線を中心として回動し、導電体56に作用する磁力を調節可能に構成されている。これとは逆に、外側リング磁石70を移動するように構成することも可能である。
【0026】
図3および図4に示すように、左側板16bは、左フレーム14bを覆うとともに、左フレーム14bから左方に突出したスプール制動力調整部80を覆う空間を有するカバーとして形成されている。この左側板16bには、スプール制動力調整部80の回動操作部86の一部を操作可能なように左手LHの親指LTを押し当てるための凹部(開口部)90が形成されている。
【0027】
図2に示すように、左側板16bの凹部90は、左側板16bの上方かつ前方側で、上下方向よりも前後方向に長く形成されている。ここでは、凹部90は外観が略平行四辺形に形成されている。左フレーム14bに配設された回動操作部86は凹部90を通してその外周部および側部の一部(ここでは回動操作部86の上側)が視認できる状態にある。そして、回動操作部86は、図5および図6中に破線で示す左側板16bの外表面の延長面Sから外方に突出させることなく、この凹部90の内側に配置した状態で外部に露出させている。
図5および図6中に破線で示す左側板16bの外表面の延長面Sから回動操作部86までの距離は、例えば0mmから5mm程度で、0.5mmから3.0mm程度であればなお好ましい。すなわち、回動操作部86は左側板16bの外表面に対して突出しないように露出されている。
【0028】
なお、延長面Sの形状は、左側板16bの凹部90の周囲の形状によって変わる。凹部90の周囲がこの実施の形態のように曲面の場合、延長面Sも曲面であり、凹部90の周囲が平面の場合(第2の実施の形態の図9および図11参照)、延長面Sも平面である。すなわち、図5および図6中、凹部90の周囲が曲面であるから、延長面Sを示す破線は曲線である。
【0029】
そして、左側板16bの外表面の延長面Sから回動操作部86が外方に突出しないことの判断は、リール取付脚部18を水平に配置したときに、凹部90の水平方向および上下方向の短寸法方向で判断するものとする。この実施の形態では図2に示す凹部90の上下方向が前後方向に比べて短寸法方向であるため、延長面S上に図示しない基準線が凹部90の上下方向に採られ、その基準線に回動操作部86が触れているか否かで突出しているか否かが判断される。なお、基準線は、凹部90の周囲が曲面であるからこの実施の形態では曲線である。また、この曲面は凹部90の周囲の曲率面が延長した形で定義付けられる。
【0030】
図2、図5および図6に示すように、左側板16bの凹部90の縁部には、左手LHの親指LTを保護したり、左側板16bの凹部90から左フレーム14bとの間にゴミが浸入するのを防止するため、例えば環状の保護部材92が固定されている。この保護部材92は硬度が低く、摩擦係数が小さい材料としてPTFE、ナイロン、ABS樹脂、アセタール樹脂(POM)などの樹脂材が用いられることが好ましい。
凹部90の下側の縁部に配設された保護部材92は、親指LTを置く部分として凹部90の下側縁部から外部に突出した状態に固定されている。凹部90の上側の縁部に配設された保護部材92は、ゴミの侵入を防止するように左側板16bの内周面から回動操作部86に向かって延出されている。
図6に示すように保護部材92の下側に親指LTを押し当てると、親指LTは下側に向けた力を掛けることとなる。このとき、親指LTが保護部材92に強く擦れるので、親指LTに負担を掛けるのを防止するため、R形状に丸められている。この保護部材92は、親指LTが強く擦れるため、未塗装、未メッキ仕上げとすることが好ましい。
【0031】
そして、釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板16bの凹部90を通して回動操作部86の上側部分に親指LTを押し当てることができる。このため、上側部分に押し当てた親指LTを凹部90の保護部材92に沿って前後方向に移動させると回動操作部86を回動操作可能である。そして、スプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68および外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生し、スプール20の回転を抑制する。
【0032】
このリール10をリール取付脚部18を介して釣竿8に取り付けた釣り具を用いて魚釣りを実際に行う場合の一連の動作について簡単に説明する。(1)ハンドル30を操作して釣糸を巻き取るとともに、左手でリール10を保持しつつ親指LTで回動操作部86を操作し、次キャスティング時の調整を行う。(2)釣糸の巻取りを完了する。(3)右手RHで釣竿8とリール10を持つ。(4)このように持った状態でキャスティングする。
【0033】
すなわち、この実施の形態に係る釣り具を用いると、釣竿8を操作しながら、又は、リール10のハンドル30を操作しながら親指一本でスプール20の制動調整を行うことができる。したがって、右手RHで釣竿8とリール10を持った後に左手LHで回動操作部86を調整する(スプール20の制動調整を行う)手間を省くことができる。このため、一連の動作のサイクルを短縮でき、一定時間内での投入回数を多くすることができるので、魚釣りのチャンスを逃し難い。そして、回動操作部86を操作するのに釣竿8を持ち替えたりする手間がないので、魚釣りをしながら次の投入プランに合わせてスプール20の制動力を調整できる。
【0034】
左側板16bの凹部90にスプール20の制動力を調整するスプール制動力調整部80を配置することができ、かつ、回動操作部86の外周部および側部の一部のみ凹部90によって露出された状態にあるので、意図せず回動操作部86を操作してしまうのを防止できる。また、螺合固定部84および回動操作部86に外力が加わり難く、螺合固定部84および回動操作部86に傷が付いたり、回動操作部86の操作性が低下するのを防止でき、磁気制動装置54に支障をきたすのを防止できる。また、回動操作部86が凹部90内に配設されているので、リール10を左手LHで保持した状態で回動操作部86が掌に喰い込むことがなく、握持保持性が良く、必要な場合に親指LTを動かして回動操作部86の一部に親指LTを掛けることによって、容易に回動操作部86を操作できる。また、手指が回動操作部86に強く当たることによる誤操作も発生し難い。
【0035】
また、回動操作部86に凹凸を有する滑り止めを形成することによって、回動操作部86の凹凸を親指LTに引っ掛けることができ、回動操作部86を操作しようとする際の滑りを防止できる。また、回動操作部86に溝86aが形成されていることによって、操作時の水分を溝86a内に入れることができる。このため、回動操作部86に対する親指LTの滑りをより確実に防止できる。特に、凹部90内に親指LTを押し付けるので、この回動操作部86への親指LTからの押し付け力は小さくなり、これらの滑り防止は効果的である。
【0036】
次に、第2の実施の形態について図7から図11を用いて説明する。この実施の形態は第1の実施の形態の変形例であって、第1の実施の形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0037】
図7に示すように、この実施の形態ではスプール20の制動力の調整を行う回動操作部186がリング磁石68,70と同心状に配設された型式の魚釣用リール10について説明する。
【0038】
図8および図9に示すように、左フレーム14bの外側には、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段により、受部材158と、左側板116bとが取り付けられている。この実施の形態では第1の実施の形態とは異なり、左側板116bとは別部材の受部材158を有する。そして、左側板116bは、左フレーム14bとの間に空間を有し、その空間内に受部材158およびスプール制動力調整部180が配設されている。
【0039】
受部材158は、スプール軸26および軸受28bを収容する中央開口160と同心状に、スプール軸26側から小径部162aと大径部162bとを順に形成した支持台部162を有する。
小径部162aの外周部には、磁石ホルダ166を収容する環状溝164を形成してある。磁石ホルダ166は環状溝164に対して摺動可能である。この磁石ホルダ166の外周には、第1の実施の形態で説明した内側リング磁石68を固定してある。左フレーム14bには、内側リング磁石68に対向した外側リング磁石70が固定されている。
【0040】
なお、内側リング磁石68は磁石ホルダ166が環状溝164に対して摺動することにより外側リング磁石70に対して回動可能である。このため、磁石ホルダ166を支持台部162の小径部162aに対して摺動させることにより磁界を無段階で変化させることができる。
【0041】
図9に示すように、受部材158は、リール10の前側で左フレーム14bに対して遠位側(左側板116b側)に延びる腕部163を有する。この腕部163は、左フレーム14bおよび左側板116bとの間にスプール制動力調整部180を収容する凹部190を区画する。すなわち、腕部163は、図10および図11に示す回動操作部186の動作範囲を規定している。
【0042】
受部材158と左フレーム14bとの間には、磁石ホルダ166から延出された延出部176が配設されている。この延出部176の前側には、スプール制動力調整部180を支持する支持部177が形成されている。
【0043】
スプール制動力調整部180は支持部177に対して螺合固定可能な螺合固定部(固定ネジ)184と、螺合固定部184により固定された回動操作部186とを備えている。すなわち、支持部177には、螺合固定部184を介して回動操作部186が配設されている。
【0044】
図7および図10に示すように、左側板116bの凹部190は、左側板116bの上方かつ前方側で、上下方向に長く形成されている。回動操作部186は凹凸による滑り止めが形成された突起部186aを有し、この突起部186aが図9および図11中に破線で示す左側板116bの外表面の延長面Sに対して外方に突出させることなく、この凹部190内側に配置した状態で外部に露出している。
図9および図11中に破線で示す左側板116bの外表面の延長面Sから回動操作部186の突起部186aまでの距離は、例えば0mmから5mm程度で、0.5mmから3.0mm程度であればなお好ましい。すなわち、回動操作部186は左側板16bの外表面に対して突出しないように露出されている。
【0045】
なお、図9および図11中、凹部190の周囲が平面であるから、延長面Sを示す破線は直線である。そして、左側板116bの外表面の延長面Sから回動操作部186が外方に突出しないことの判断は、リール取付脚部18を水平に配置したときに、凹部190の水平方向および上下方向の短寸法方向で判断する。この実施の形態では図7に示す凹部190の前後方向が上下方向に比べて短寸法方向であるため、延長面S上に図示しない基準線を凹部190の前後方向に採られ、その基準線に回動操作部186が触れているか否かで突出しているか否かが判断される。なお、基準線は、凹部190の周囲が平面であるからこの実施の形態では直線である。
【0046】
そして、スプール制動力調整部180の回動操作部186には支持部177が連結されている。このため、回動操作部186を左フレーム14bに対して例えば図7中のP方向に回動させると、支持部177は、左フレーム14bの押圧受部15a,15bでその押圧力を受けて延出部176をQ方向に回動させるので、磁石ホルダ166(内側リング磁石68)がR方向に回動する。このため、内側リング磁石68に対する外側リング磁石70の相対位置が変化する。これにより、導電体56の円筒状部56cを配置した内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72の磁界の強さを、例えば制動力を全く形成しないゼロ制動の状態から、最大制動力を形成する全制動の状態まで無段階的に変化させることができる。
【0047】
なお、凹部190の縁部190aはこの実施の形態では斜面として形成され、左手LHの親指LTを縁部190aに当てると回動操作部186の突起部186aに簡単に触れることができるように形成されている。
【0048】
そして、釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板116bの凹部190を通して回動操作部186の突起部186aに親指LTを押し当てることができる。このため、押し当てた親指LTで回動操作部186の突起部186aを回動操作可能である。そして、スプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68および外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生し、スプール20の回転を抑制する。
【0049】
この実施の形態によれば、第1の実施の形態で説明したように、釣竿8を操作しながら、又は、リール10のハンドル30を操作しながら親指一本でスプール20の制動調整を行うことができる。したがって、右手RHで釣竿8とリール10を持った後に左手LHで回動操作部86を調整する(スプール20の制動調整を行う)手間を省くことができる。
【0050】
また、左側板116bの凹部90にスプール20の制動力を調整する回動操作部186を配置することができ、かつ、回動操作部186の一部(突起部186a)のみ凹部190によって露出された状態にあるので、意図せず回動操作部186を操作してしまうのを防止できる。また、突起部186aが凹部190に対して突出していないので、回動操作部186に外力が加わり難く、回動操作部186に傷が付いたり、回動操作部186の操作性が低下するのを防止でき、磁気制動装置54に支障をきたすのを防止できる。また、回動操作部186が凹部190内に配設されているので、リール10を左手LHで保持した状態で回動操作部186が掌に喰い込むことがなく、握持保持性が良く、必要な場合に親指LTを動かして回動操作部186の一部(突起部186a)に親指LTを掛けることによって、容易に回動操作部186を操作できる。また、手指が回動操作部186に強く当たることによる誤操作も発生し難い。
【0051】
また、回動操作部186の突起部186aに凹凸を有する滑り止めを形成することによって、突起部186aの凹凸を親指LTに引っ掛けることができ、突起部186aを操作しようとする際の滑りを防止できる。
【0052】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む
【符号の説明】
【0053】
S…延長面、16b…左側板、26…スプール軸、28a,28b…ボール軸受、54…磁気制動装置、56…導電体、56a…ボス部、56b…ディスク状部、56c…円筒状部、58…受部材、60…中央開口、62a…小径部、62b…大径部、62…支持台部、64…環状溝、66…磁石ホルダ、68…内側リング磁石、70…外側リング磁石、72…環状間隙、76…延出部、78…連動歯車、80…スプール制動力調整部、82…支持部、84…螺合固定部、86…回動操作部、86a…溝、86b…回動操作部側歯車、88…リーフスプリング、90…凹部、92…保護部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールであって、
釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板に、この側板の外表面から内方に凹設させた凹部を形成し、
前記操作部を、前記側板の外表面の延長面から外方に突出させることなく、この凹部内に配置して外部に露出させ、
前記操作部をリール本体を保持した手の指で操作可能としたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記操作部は、外周側縁部に沿って凹凸による滑り止めを形成した円形ダイヤル状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記凹部は、側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、前記操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項1】
リール本体の側板間にスプールを回転自在に支持し、このスプールの回転を制動する制動装置の制動力を、側板に配置した操作部を介して調整可能とした魚釣用リールであって、
釣糸をスプールに巻き取るハンドルに対して反対側の側板に、この側板の外表面から内方に凹設させた凹部を形成し、
前記操作部を、前記側板の外表面の延長面から外方に突出させることなく、この凹部内に配置して外部に露出させ、
前記操作部をリール本体を保持した手の指で操作可能としたことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記操作部は、外周側縁部に沿って凹凸による滑り止めを形成した円形ダイヤル状の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記凹部は、側板の上方かつ前方側で、前後方向に沿って延設され、この凹部内で、前記操作部の外周部および側部の一部が外部に露出するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の魚釣用リール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−10579(P2011−10579A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156137(P2009−156137)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]