説明

魚釣用リール

【課題】動力遮断状態から動力伝達状態へ意図しない誤作動を防止するとともに、耐久性の向上を図る。
【解決手段】クラッチ機構は、クラッチレバーに連結されてハンドルが取り付けられるハンドル軸と連動回転するクラッチ復帰用回転体と、クラッチ復帰用回転体に係脱するクラッチ作動片31と、クラッチ作動片31の移動を案内および規制する案内規制部45と、を有しており、クラッチ作動片31は、動力伝達状態から動力遮断状態に切り換えられる切換時と、動力遮断状態から動力伝達状態に復帰される復帰時とでは、案内規制部45に沿って異なる移動軌跡K1,K2上を移動するようになっており、クラッチ作動片31が復帰時に移動する移動軌跡K2上の移動抵抗は、切換時に移動する移動軌跡K1上の移動抵抗より大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な魚釣用リールとして両軸受けリールについて説明すると、両軸受けリールは、リ−ル本体に回転自在に支持されたスプ−ルを巻き取り駆動可能とする動力伝達状態のクラッチオン位置と、スプールをフリー状態とする動力遮断状態のクラッチオフ位置とに切り換えるクラッチ機構を備えたものが知られている。
クラッチ機構は、通常、振り分け用のばね部材を備えており、このばね部材の付勢力によってクラッチオン位置(釣糸巻き取り時)とクラッチオフ位置(釣糸放出時)とに、それぞれ振り分け保持されるようになっている。
【0003】
クラッチ機構は、スプール後方の側部フレーム間において移動操作可能に設けられたクラッチレバーに連結されており、このクラッチレバーの移動操作によってクラッチオン位置からクラッチオフ位置に切り換えられて、前記ばね部材の付勢力によって保持されるようになっている。
そして、キャスティング操作時には、クラッチオフ位置にクラッチレバーを操作して釣糸の放出を行い、釣糸放出操作の終了後には、ハンドルを回転操作することで、例えば、クラッチ復帰用回転体、クラッチ作動片、作動カム、付勢ばね等からなる復帰機構を作動させて、動力伝達状態のクラッチオン位置にクラッチ機構が復帰される。
【0004】
ところで、キャスティング操作時等には、ハンドルに慣性力等が作用してハンドルが巻き取り方向に回転することがあり、このハンドルの回転によって動力遮断状態から動力伝達状態へ意図しない誤作動が発生する場合がある。
従来、この誤作動への対策として、特許文献1,2に開示されたものが知られている。
特許文献1の魚釣用リールでは、動力遮断状態から動力伝達状態へ復帰させる際のハンドルの回転操作時に、ハンドル操作力を増加させる牽制手段が設けられており、この牽制手段を機能させる状態と機能させない状態とに切換可能に構成されている。
【0005】
また、特許文献2の魚釣用リールでは、クラッチ機構のクラッチカムに押圧部を設け、クラッチカムの切換操作に連動して、押圧部でハンドル軸や逆転防止爪車、あるいはピニオン等の回転部に回転抵抗を付与してハンドルの回転を防止するように構成されている。
【特許文献1】実登02563861号公報
【特許文献2】特開平07−135877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の魚釣用リールでは、牽制手段により、動力遮断状態から動力伝達状態へのハンドル操作力を増加させるので、キャスティング操作時等に、動力遮断状態から動力伝達状態へ意図しない誤作動が発生し難い。
しかしながら、動力伝達状態から動力遮断状態へのクラッチレバーの操作時にも、牽制手段により操作力を増加させるように作用するので、クラッチレバーの操作感が重くなるという問題があった。また、牽制手段による摩擦で摩耗が生じ易く、長期的に安定した作動を実現することができない。
【0007】
この点、特許文献2の魚釣用リールでは、押圧部で回転部に回転抵抗を付与してハンドルの回転を防止するように構成されているので、動力遮断状態から動力伝達状態へ意図しない誤作動が発生し難く、また、動力伝達状態から動力遮断状態へのクラッチレバーの操作時には回転部に回転抵抗が付与されないので、クラッチレバーの操作感が軽い。
しかしながら、押圧部で回転部に回転抵抗を付与する構成であるため、このものも摩擦で摩耗が生じ易く、長期的に安定した作動を実現することができない。
また、回転軸(回転軸近傍)に直接負荷がかかるので、回転性能の低下を来し易く、特に、ハンドル回転中にクラッチレバーが操作された場合に、耐久性に問題がある。
【0008】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、動力遮断状態から動力伝達状態へ意図しない誤作動を防止するとともに、耐久性の向上を図ることができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決する本発明の魚釣用リールは、リール本体に回動自在に支持したスプールを、動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構と、前記リール本体に設けたクラッチレバーの操作で動力遮断状態にされた前記クラッチ機構を、前記リール本体に設けたハンドルの釣糸巻き取り方向の回転操作で動力伝達状態に復帰させる復帰機構とを備えた魚釣用リールにおいて、前記クラッチ機構は、前記クラッチレバーに連結されて前記ハンドルが取り付けられるハンドル軸と連動回転するクラッチ復帰用回転体と、前記クラッチ復帰用回転体に係脱するクラッチ作動片と、前記クラッチ作動片の移動を案内および規制する案内規制部と、を有しており、前記クラッチ作動片は、動力伝達状態から動力遮断状態に切り換えられる切換時と、動力遮断状態から動力伝達状態に復帰される復帰時とでは、前記案内規制部に沿って異なる移動軌跡上を移動するようになっており、前記クラッチ作動片が復帰時に移動する前記移動軌跡上の移動抵抗は、切換時に移動する前記移動軌跡上の移動抵抗より大きいことを特徴とするものである。
【0010】
この魚釣用リールによれば、クラッチ作動片は、動力伝達状態から動力遮断状態に切り換えられる切換時と、動力遮断状態から動力伝達状態に復帰される復帰時とでは、案内規制部に沿って異なる移動軌跡上を移動するようになっており、クラッチ作動片が復帰時に移動する移動軌跡上の移動抵抗は、切換時に移動する移動軌跡上の移動抵抗より大きい構成であるので、復帰時の移動軌跡上をクラッチ作動片が移動する際に好適にクラッチ作動片に移動抵抗を付与することができ、復帰時にハンドルの操作力が増加するようにすることができる。
また、相対的に切換時におけるクラッチ作動片の移動抵抗が復帰時の移動抵抗よりも小さくなるので、切換時にクラッチレバーをスムーズに操作することができる。
【0011】
また、本発明は、前記クラッチ作動片に移動抵抗を付与する抵抗付与手段を備え、前記抵抗付与手段は、復帰時の前記移動軌跡上にのみ設けられていることを特徴とする。
ここで、復帰時の移動軌跡上には、クラッチ作動片が通る移動軌跡上と、この移動軌跡に隣接して沿う部分も含まれる。
【0012】
この魚釣用リールによれば、抵抗付与手段は、復帰時の移動軌跡上にのみ設けられているので、復帰時の移動軌跡上をクラッチ作動片が移動する際に好適にクラッチ作動片に移動抵抗を付与することができ、復帰時にハンドルの操作力が増加するように容易に構成することができる。
【0013】
また、本発明は、前記案内規制部は、前記クラッチ作動片の移動を案内および規制するガイドを有しており、前記抵抗付与手段は、前記ガイドに備わることを特徴とする。
【0014】
この魚釣用リールによれば、ガイドが、クラッチ作動片の移動を案内および規制する機能と、クラッチ作動片に移動抵抗を付与する機能とを併せ備えたものとなるので、構成が簡単になる。
【0015】
また、本発明は、前記抵抗付与手段は、復帰時の前記移動軌跡上に設けられた凹状の摺動部または凸状の段差部であることを特徴とする。
【0016】
この魚釣用リールによれば、復帰時の前記移動軌跡上に設けられた凹状の摺動部または凸状の段差部により抵抗付与手段を簡単に構成することができる。
【0017】
また、前記クラッチ作動片は、復帰時の前記移動軌跡上において前記クラッチ復帰用回転体に係止され、当該クラッチ復帰用回転体の復帰方向への回転に抵抗力を付与することを特徴とする。
【0018】
この魚釣用リールによれば、クラッチ作動片が復帰時の移動軌跡上においてクラッチ復帰用回転体に直接的に係止され、この係止によってクラッチ復帰用回転体の復帰方向への回転に抵抗力が付与されるので、構成が簡単になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、復帰時の移動軌跡上をクラッチ作動片が移動する際に好適にクラッチ作動片に移動抵抗を付与することができ、復帰時にハンドルの操作力が増加するようにすることができるので、キャスティング操作時等に、動力遮断状態から動力伝達状態への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。
また、切換時と復帰時とでは、クラッチ作動片が案内規制部に沿って異なる移動軌跡上を移動するようになっており、移動抵抗もそれぞれの移動軌跡上で異なるので、例えば、切換時と復帰時とで移動軌跡が同一である場合に比べて、摩耗が生じ難くなり、耐久性の向上を図ることができる。したがって、長期的に安定したクラッチ機構の作動を得ることができる。したがって、耐久性の向上に寄与する魚釣用リールが得られる。
【0020】
さらに、クラッチ作動片がクラッチ機構の回転軸(ピニオン)に直接的に作用するものではないので、回転性能の低下を来さず耐久性が低下することもない。
【0021】
また、相対的に切換時におけるクラッチ作動片の移動抵抗が復帰時の移動抵抗よりも小さくなるので、切換時にクラッチレバーをスムーズに操作することができ、クラッチレバーの操作性の向上を図ることができる。このことは、クラッチ機構によって操作時に得られる節度感の向上にもつながる。
【0022】
また、抵抗付与手段を備え、抵抗付与手段が復帰時の移動軌跡上にのみ設けられている構成では、復帰時の移動軌跡上をクラッチ作動片が移動する際に好適にクラッチ作動片に移動抵抗を付与することができ、復帰時にハンドルの操作力が増加するように容易に構成することができるので、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。このことは生産性の向上に寄与する。
【0023】
また、抵抗付与手段がガイドに備わる構成では、ガイドが、クラッチ作動片の移動を案内および規制する機能と、クラッチ作動片に移動抵抗を付与する機能とを併せ備えたものとなるので、復帰時にクラッチ作動片に移動抵抗を付与する構成を簡単な構成で実現することができ、コストの低減が可能となる。
【0024】
また、抵抗付与手段が、復帰時の移動軌跡上に設けられた凹状の摺動部または凸状の段差部である構成では、抵抗付与手段を簡単に構成することができるので、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。
【0025】
また、クラッチ作動片は、復帰時の移動軌跡上においてクラッチ復帰用回転体に係止され、当該クラッチ復帰用回転体の復帰方向への回転に抵抗力を付与する構成では、別途部品を介さずに、動力遮断状態から動力伝達状態への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができ、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。
また、別途部品を必要としないので、省スペース化を図ることができ、その分、リール本体内のスペースの有効活用を図ることができる。また、リール本体の小型化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚釣用リールとしての両軸受けリールの全体構成を示す断面図である。
【図2】右フレームの側方のギャボックス内における主要な構成部材を示した図であり、クラッチ作動片がクラッチオン位置にあるときの様子を示した一部断面側面図である。
【図3】右フレームの側方のギャボックス内における主要な構成部材を示した図であり、クラッチ作動片がクラッチオフ位置にあるときの様子を示した一部断面側面図である。
【図4】(a)は案内規制部を示した拡大側面図、(b)は図4(a)におけるA−A線断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図5(a)におけるB−B線断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図6(a)におけるC−C線断面図である。
【図7】本発明の第4実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図7(a)におけるD−D線断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図8(a)におけるE−E線断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図9(a)におけるF−F線断面図である。
【図10】本発明の第6実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図10(a)におけるG−G線断面図である。
【図11】本発明の第7実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図11(a)におけるH−H線断面図である。
【図12】本発明の第8実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した図であり、(a)は拡大側面図、(b)は図12(a)におけるJ−J線断面図である。
【図13】本発明の第9実施形態に係る魚釣用リールの案内規制部を示した拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る魚釣用リールの実施形態について図面を参照しながら説明する。
なお、以下の説明において、「前、後」「左、右」「上、下」の語は、両軸受けリールを釣竿R(図1参照)に取り付けた状態を基準とする。
【0028】
(第1実施形態)
図1に示すように、両軸受けリールのリール本体1は、側部フレームとしての左右フレーム2a,2bと、これら左右フレーム2a,2bに所定の空間をもって夫々シール材を介して装着される左右側板3a,3bと、を備えている。左右フレーム2a,2bは、複数の支柱を介して一体化されており、下方の支柱には、釣竿Rの図示しないリールシートに装着されるリール脚2cが設けられている。左右フレーム2a,2bは、例えば、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属材から形成されている。
そして、右フレーム2bと右側板3bとの間で、ギャボックスを形成している。
【0029】
左右フレーム2a,2b(左右側板3a,3b)間には、スプール軸5が軸受6a,6bを介して回転可能に支持されており、このスプール軸5には、釣糸が巻回されるスプール5aが取り付けられている。
スプール5aは、ハンドル7aを回転操作することによって回転させることができるように構成されており、ハンドル7aは、右側板3bから突出したハンドル軸7の端部に取り付けられている。
【0030】
ギャボックスには、ハンドル軸7に回転自在に支持されてハンドル7aの回転運動をスプール軸5側に伝達するための駆動歯車11が設けられており、また、この駆動歯車11に係合して、スプール5aに所定のドラグ力を付与する公知のドラグ機構12が収容されている。ドラグ機構12は、魚釣時にスプール5aから釣糸が繰り出された際に、スプール5aに所定のドラグ力を付与するようになっており、駆動歯車11に当接する複数の摩擦板12aを備えている。このようなドラグ機構12は、ハンドル軸7の端部に配設されたスタードラグ13を回動操作することで、駆動歯車11に対する圧接力が調節されるようになっており、スプール5aに対するドラグ力が調節されるように構成されている。
【0031】
駆動歯車11には、クラッチ機構20の一部を構成する動力伝達部材としてのピニオン21が噛合している。このピニオン21は、駆動歯車11の回転をスプール5a(スプール軸5)に伝達する部材であり、右フレーム2bと右側板3bに設けられた軸受6c,6dを介して回動可能に支持されている。また、スプール軸5の端部には、右側板3bに設けた調節ツマミ3cを回転操作することで軸方向に移動する、ピニオン21内に挿通される押圧軸21aの端部が、当接している。
また、ピニオン21の端部には、図示しない嵌合凹部が形成されており、ピニオン21が、以下に説明するクラッチ機構20の後記する可動部材25によってスプール5a側に移動され、嵌合凹部がスプール軸5の端部に形成されている係合ピンに嵌合することで駆動力を伝達する動力伝達状態(クラッチオン位置)となり、ピニオン21が可動部材25によって右側板3b側に移動され、嵌合部がスプール軸5の端部の係合ピンから外れることで駆動力の伝達を遮断する動力遮断状態(クラッチオフ位置)となる。なお、ピニオン21は、その外周に形成された円周溝21bが可動部材25に係合して、スプール軸5の軸方向に移動可能となっている。
なお、押圧軸21aは、調節ツマミ3cが回動操作されることでスプール軸5に対して所定の押圧力をブレーキ力として付与できるように構成されている。
【0032】
クラッチ機構20は、図2に示すように、クラッチ駆動部材24を備えている。このクラッチ駆動部材24は、リール本体1の後部から後方へ突出するクラッチレバー23に連結されており、このクラッチレバー23の下方側への押圧操作等に連動して回動可能に配設されている。
【0033】
クラッチ駆動部材24は、クラッチレバー23およびハンドル7a(図1参照)の操作により、図2において矢印D1,D2方向に回動されるようになっており、その表面には、ピニオン21の円周溝21b(図1参照、以下同じ)に嵌合した可動部材25と係合可能な一対のカム面24a,24aが形成されている。
可動部材25は、ピニオン21の円周溝21bに略180°に亘って嵌合するとともに、ピニオン21を中心として直径方向に延出する一対の腕部25a,25aを有しており、各腕部25a,25aの裏面にカム面24a,24aがそれぞれ係合する係合部25b,25bが形成されている。また、各腕部25a,25aは、右フレーム2bに突設された支持ピン26,26によって保持されており、可動部材25は、各支持ピン26に配設されたばね部材26a(図1参照、以下同じ)によって、常時、クラッチ駆動部材24側に付勢された状態となっている。なお、図2は、可動部材25が、ばね部材26aによってクラッチ駆動部材24側に付勢された状態を示しており、このとき、ピニオン21は図示しない係合部に嵌合してクラッチオン状態となっている。
【0034】
また、クラッチ駆動部材24には、右フレーム2bに突設されたボス27が係合する円弧溝24cが形成されるとともに、右フレーム2b側(ボス部2h)との間で付勢手段としての振り分け保持ばね28が、後記する復帰機構30のクラッチ作動片31を介して設けられている。
【0035】
このようなクラッチ駆動部材24は、クラッチレバー23を操作することで、クラッチオン位置(釣糸巻き取り位置、図2参照)と、クラッチオフ位置(釣糸放出位置、図3参照)との間で、位置決めされ、振り分け保持されるようになっている。
【0036】
復帰機構30は、クラッチオフ状態において、ハンドル7a(図1参照、以下同じ)を巻き取り操作した際に、自動的にクラッチ駆動部材24をクラッチオン位置に復帰させる機構である。
この復帰機構30は、クラッチ駆動部材24に対して回動可能に支持されたクラッチ作動片31を備えて構成される。
【0037】
クラッチ作動片31は、アルミニウム合金や亜鉛合金、ステンレス等の金属材からなり、その上部が、クラッチ駆動部材24の後部側に延出する延出部24dに支持ピン24eを介して回動可能に連結されている。また、クラッチ作動片31の下部は、その側方に突設されたガイドピン31aを介して右フレーム2bに設けられた案内規制部45に係合している。また、クラッチ作動片31の後部側に突出形成された突出部31bに振り分け保持ばね28の一端側が支持されている。
クラッチ作動片31は、クラッチレバー23がクラッチオフ位置(図3参照)にされた状態で、その下端が、ハンドル軸7に回り止め固定されたクラッチ復帰用回転体32の爪歯32aに係合可能となっている。
【0038】
クラッチ作動片31は、クラッチレバー23がクラッチオン位置からクラッチオフ位置に切り換えられる切換え操作時(以下、切換時という)と、クラッチオフ位置からクラッチオン位置に復帰される復帰操作時(以下、復帰時という)とでは、図4(a)に示すように、案内規制部45に沿って異なる2つの移動軌跡K1,K2上を移動するようになっている。
【0039】
すなわち、クラッチオン位置において、クラッチ作動片31は、そのガイドピン31aが案内規制部45の内側の上端近傍に当接して位置しており、この状態でクラッチレバー23を下方に押圧操作すると、図2において、D1方向にクラッチ駆動部材24が回動し、クラッチ作動片31は、支持ピン24eを中心に反時計方向に若干回動しつつ、図4(a)に示すように、案内規制部45の後部側に突設された第1のガイド壁46aに沿って切換時の移動軌跡K1上を移動する。
【0040】
その過程で、ガイドピン31aは、第1のガイド壁46aに連続する下部壁46bに沿って前方へ移動し、第2のガイド壁(ガイド)46cの始端部分に当接して停止する。この状態で、クラッチ作動片31の下端が、クラッチ復帰用回転体32の爪歯32aの回転軌跡内に位置する状態となり、振り分け保持ばね28の付勢力でクラッチオフ位置に付勢保持される(図3参照)。
【0041】
そして、このクラッチオフ位置からハンドル7aを巻き取り操作すると、ハンドル軸7を介してクラッチ復帰用回転体32が時計回り方向に回転駆動され、クラッチ作動片31は、回転する爪歯32a、および振り分けばね部材28の付勢力に抗して、支持ピン24eを中心に時計方向に回動しつつ案内規制部45の第2のガイド壁46cに沿ってガイドピン31aが復帰時の移動軌跡K2上を上方向に移動する。
この移動に伴って、クラッチ駆動部材24がD2方向に回動し、振り分け保持ばね28の死点(デッドポイント)を越えることによって、クラッチ駆動部材24がクラッチオン位置(図2参照)に自動復帰され、付勢力をもって保持される。この過程で、第2のガイド壁46cに沿って移動軌跡K2上を上方向に移動してきたガイドピン31aが、前記した死点を越えるタイミングで第2のガイド壁46cから離れ、移動軌跡K2上を第1のガイド壁46aに向けて移動し、第1のガイド壁46aに当接して前記したクラッチオン位置の初期位置に復帰する。
つまり、ガイドピン31aは、切換時に移動軌跡K1上を移動し、復帰時に移動軌跡K1とは異なる移動軌跡K2上を移動して初期位置に復帰される。
【0042】
このように、クラッチレバー23が上限位置と下限位置との間で操作され、ガイドピン31aがこれに伴って移動する過程において、振り分け保持ばね28により、クラッチ駆動部材24は、クラッチオン位置(釣糸巻き取り位置、図2参照)と、クラッチオフ位置(釣糸放出位置、図3参照)との間で位置決めされて、振り分け保持されるようになっている。
【0043】
振り分け保持ばね28は、ねじりばねであり、前記のように、クラッチ駆動部材24の突出部31bに一端側が支持され、右フレーム2bに設けられたボス部2hに、他端側が支持されて配置されることで、クラッチ駆動部材24と右フレーム2bとの間に設けられている。
【0044】
案内規制部45は、右フレーム2bから側方へ向けて突出するように設けられており、前記した移動軌跡K1,K2上をガイドピン31aが摺動(移動)するようにクラッチ作動片31の移動を案内および規制する。
案内規制部45は、例えばポリアセタール等の樹脂材にて一体的に形成されており、図4(a)(b)に示すように、右フレーム2bに取り付けられる板状の基部45aと、この基部45aの側部から右フレーム2bの側方へ壁状に突設され側面視で略U字状を呈する壁部46とを備える。壁部46は、第1のガイド壁46aと、この第1のガイド壁46aに連続する下部壁46bと、この下部壁46bに連続して第1のガイド壁46aに対向する第2のガイド壁46cとを備えて構成されている。
なお、案内規制部45は右フレーム2bと一体的にアルミニウム合金やマグネシウム合金等の金属材で形成して、剛性を備えたものとしてもよい。この場合には、案内規制部45の内面を樹脂材でコーティングして、樹脂材による摺動性、防食性を高めてもよい。
【0045】
壁部46の内側面は、右フレーム2bの側面に対して略垂直に立ち上がる面とされており、この略垂直とされた面に沿ってガイドピン31aが移動するようになっている。
また、壁部46の側方への突出量は、図4(b)に示すように、案内規制部45に係合するクラッチ作動片31の対向部位との間に間隙S1を有するように設定されている。これによって、クラッチ作動片31の移動時にクラッチ作動片31が壁部46に接触することがなく、クラッチ作動片31のスムーズな移動が実現されている。
【0046】
なお、ガイドピン31aは、壁部46の内面のみに接触するようにして壁部46の内側の移動軌跡K1,K2上を基部45aに隙間S2を有して非接触状態で移動するように構成してもよいし、隙間S2を有さずに、基部45aに対しても接触しながら移動するように構成してもよい。
【0047】
案内規制部45には、復帰時の移動軌跡K2上において、クラッチ作動片31(ガイドピン31a)に移動抵抗を付与する抵抗付与手段60が設けられている。
抵抗付与手段60は、図4(b)に示すように、ばね部材62により移動軌跡K2上に出没可能に設けられた抵抗ピン61を備えている。この抵抗ピン61は、その下部が、右フレーム2bに形成された凹部63内に収容されており、抵抗ピン61に一体に設けられたフランジ部61aと凹部63の底部との間に縮設配置されたばね部材62の付勢力で、先端部が案内規制部45の連通孔45bを通じて移動軌跡K2上に突出する状態に保持されている。
これにより、移動軌跡K2上を移動するガイドピン31aに対して抵抗ピン61の先端部が当接し、ガイドピン31aに移動抵抗が付与されるようになっている。
なお、ばね部材62の付勢力は、クラッチオフ位置からハンドル7aを巻き取り操作してクラッチオン位置にする復帰時に、移動してきたガイドピン31aの押圧力(当接力)に抗して抵抗ピン61が好適に押し下げられる大きさを有するように設定され、かつ、キャスティング操作時等に入力される遠心力等で移動軌跡K2上を移動してきたガイドピン31aの押圧力(当接力)程度では抗しない大きさに設定されている。
【0048】
このような抵抗付与手段60は、復帰時の移動軌跡K2上にのみ設けられており、これによって、クラッチ作動片31が復帰時に移動する移動軌跡K2上の移動抵抗は、切換時に移動する移動軌跡K1上の移動抵抗より大きくなっている。
【0049】
ここで、クラッチ作動片31は、図3に示すように、復帰時の移動軌跡K2(図4(a)参照)上において、クラッチ復帰用回転体32の爪歯32aに係止されるようになっており、当該クラッチ復帰用回転体32の復帰方向への回転に抵抗力を直接付与するように構成されている。
【0050】
再び図1を参照してクラッチレバー23の周辺の構造について説明する。クラッチレバー23は、クラッチ駆動部材24に固定された平面視L字型の支持部材としての支持アーム24fに支持されて、左右のフレーム2a,2b間に上下方向に移動可能(揺動可能)に設けられている。左右フレーム2a,2bにおけるクラッチレバー23との対向部には、摺接部材40A,40Bがそれぞれ取り付けられている。
摺接部材40A,40Bは、耐摩耗性の高い材料、例えば、ポリアセタールやABS樹脂等で形成されており、ともに、クラッチレバー23との摺動抵抗を低減する機能を有している。
摺接部材40Bには、図2に示すように、クラッチレバー23の支持アーム24fが貫通可能な貫通孔44が形成されている。
【0051】
図1を参照して、リール本体1のその他の構造を説明する。リール本体1の前部には、レベルワインド機構50が設けられている。このレベルワインド機構50は、外周面に往復カム溝51aが設けられた螺軸51と、この螺軸51と中心軸を同じくしてこれを覆う案内筒52とが、左右フレーム2a、2b間に装着されるとともに、案内筒52に釣糸案内体53(摺動体)がスプール5aの軸方向へ移動可能に取り付けられている。
【0052】
案内筒52は、右端部の外周面上に面取り部52aを有しており、図2に示すように、この面取り部52aに係合可能な環状部54aを有する抜け止め防止部材54が、右フレーム2bにねじ54bで固定されている。この抜け止め防止部材54には、度当り部54cが一体的に設けられ、この度当り部54cは、ハンドル軸7のクラッチ復帰用回転体32に係合する逆転防止爪55に度当りすることで、逆転防止爪55の回動を規制する。つまり、抜け止め防止部材54は、案内筒52の抜け止めを阻止するとともに、案内筒52の回動を規制し、さらに、逆転防止爪55の回動を規制する。
【0053】
なお、図1に示すように、螺軸51は、その右端部に固定された連動歯車15aを介して駆動されるように構成されている。
【0054】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、クラッチ作動片31は、クラッチオン位置からクラッチオフ位置に切り換えられる切換時と、クラッチオフ位置からクラッチオン位置に復帰される復帰時とでは、案内規制部45に沿って2つの異なる移動軌跡K1,K2上を移動するようになっており、クラッチ作動片31が復帰時に移動する移動軌跡K2上の移動抵抗は、切換時に移動する移動軌跡K1上の移動抵抗より大きいので、復帰時にハンドル7aの操作力が増加するようにすることができ、キャスティング操作時等に、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。
【0055】
また、切換時と復帰時とでは、クラッチ作動片31が案内規制部45に沿って異なる移動軌跡K1,K2上を移動するようになっており、移動抵抗もそれぞれの移動軌跡K1,K2上で異なるので、例えば、切換時と復帰時とで移動軌跡が同一である場合に比べて、摩耗が生じ難くなり、耐久性の向上を図ることができる。したがって、長期的に安定したクラッチ機構20の作動を得ることができる。したがって、耐久性の向上に寄与する魚釣用リールが得られる。
【0056】
さらに、クラッチ作動片31は、復帰時の移動軌跡K2上においてクラッチ復帰用回転体32の爪歯32aに係止され、クラッチ機構20のピニオン21に作用するものではないので、回転性能の低下を来さず耐久性が低下することもない。
【0057】
また、相対的に切換時におけるクラッチ作動片31の移動抵抗が復帰時の移動抵抗よりも小さくなるので、切換時にクラッチレバー23をスムーズに操作することができ、クラッチレバー23の操作性の向上を図ることができる。このことは、クラッチ機構20によって操作時に得られる節度感の向上にもつながる。
【0058】
また、抵抗付与手段60が復帰時の移動軌跡K2上にのみ設けられているので、復帰時の移動軌跡K2上をクラッチ作動片31が移動する際に好適にクラッチ作動片31に移動抵抗を付与することができ、キャスティング操作時等に、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。復帰時の移動軌跡K2に設けるだけでよいので、構成が簡単になり、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。このことは生産性の向上に寄与する。
【0059】
また、クラッチ作動片31は、復帰時の移動軌跡K2上においてクラッチ復帰用回転体32の爪歯32aに係止され、クラッチ復帰用回転体32の復帰方向への回転に抵抗力を付与するようになっているので、別途部品を介さずに、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができ、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。
また、別途部品を必要としないので、省スペース化を図ることができ、その分、リール本体1内のスペースの有効活用を図ることができる。また、リール本体1の小型化も可能となる。
【0060】
(第2実施形態)
図5(a)(b)を参照して第2実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第1実施形態と異なるところは案内規制部45の第2のガイド壁46cにクラッチ作動片31(ガイドピン31a)に移動抵抗を付与する抵抗付与手段64が設けられている点である。
【0061】
抵抗付与手段64は、側面視で略鋸歯状を呈しており、復帰時の移動軌跡K2上において(移動軌跡K2に沿うようにして)第2のガイド壁46cに対して一体的に連続して設けられている。
本実施形態のガイドピン31aは、壁部46の内面のみに接触するようにして壁部46の内側の移動軌跡K1,K2上を基部45aに隙間S2を有して非接触状態で移動するように構成されている。なお、隙間S2を有さずに、基部45aに対しても接触しながら移動するように構成してもよい。
【0062】
この魚釣用リールによれば、案内規制部45の第2のガイド壁46cが、クラッチ作動片31の移動を案内および規制する機能と、クラッチ作動片31に移動抵抗を付与する機能とを併せ備えたものとなるので、復帰時にクラッチ作動片31に移動抵抗を付与する構成を簡単な構成で実現することができ、コストの低減が可能となる。
【0063】
なお、抵抗付与手段64は、側面視で略鋸歯状を呈するものを示したが、これに限られることはなく、側面視で角部が直角とされた凹凸状のもの、波状のもの等、種々の形状のものを採用することができる。
また、抵抗付与手段64は、第2のガイド壁46cと別体に形成して、これを第2のガイド壁46cの内面に固定してもよい。
また、案内規制部45を構成している材料と異なる材料、例えば、弾力性を有する材料、面粗度の粗い材料、滑り抵抗の大きい合成ゴム等の材料を用いて抵抗付与手段64を形成してもよい。
【0064】
(第3実施形態)
図6(a)(b)を参照して第3実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記第2実施形態と異なるところは第2のガイド壁46cに設けられた抵抗付与手段65の形状が異なる点である。
【0065】
抵抗付与手段65は、側面視で山形形状に突出する形状を呈しており、復帰時の移動軌跡K2上において(移動軌跡K2に沿うようにして)第2のガイド壁46cに対して一体的に設けられている。
第2のガイド壁46cにおいて、抵抗付与手段65は、復帰時にガイドピン31aが第2のガイド壁46cから第1のガイド壁46aに向けて離れる直前となる位置に形成されている。これによって、移動軌跡K2上を移動してきたガイドピン31aは、抵抗付与手段65に確実に当接するようになっている。
【0066】
この魚釣用リールによれば、第2実施形態で説明した作用効果に加えて、抵抗付与手段65が側面視で山形形状を呈しており、形状がシンプルであるので、形成が簡単であり、生産性が高まる。
【0067】
(第4実施形態)
図7(a)(b)、図8(a)(b)を参照して第4実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記各実施形態と異なるところは、案内規制部45の基部45aにおける復帰時の移動軌跡K2上に、抵抗付与手段として機能する凹状の摺動部66または凸状の段差部67を設けた点にある。
【0068】
図7(a)(b)に示す魚釣用リールでは、案内規制部45の基部45aにおける復帰時の移動軌跡K2上に、凹状の摺動部66が設けられいる。凹状の摺動部66には、切換時の移動軌跡K1上を移動してきたガイドピン31aが入り込んで当接するようになっており、ガイドピン31aは、復帰時にこの摺動部66内を移動するようになっている。
【0069】
摺動部66は、復帰時にガイドピン31aが第2のガイド壁46cから第1のガイド壁46aに向けて離れる直前となる位置まで形成されており、摺動部66の縁部66aにガイドピン31aが当接して、移動抵抗が付与されるように構成されている。
【0070】
また、図8(a)(b)に示す魚釣用リールでは、案内規制部45の基部45aにおける復帰時の移動軌跡K2上に、凸状の段差部67が設けられいる。凸状の段差部67には、切換時の移動軌跡K1上を移動してきたガイドピン31aが当接するようになっており、段差部67の端部67aにガイドピン31aが当接して、移動抵抗が付与されるように構成されている。
【0071】
この魚釣用リールによれば、抵抗付与手段を簡単に構成することができるので、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。特に、凹状の摺動部は、案内規制部45に凹部を形成することで簡単に設けることができるので、これが設けられていない案内規制部45からの変更点が少なく、コストが嵩むこともない。
【0072】
(第5実施形態)
図9(a)(b)を参照して第5実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記各実施形態と異なるところは、案内規制部45の基部45aに、抵抗付与手段として機能する弾力性を備えたピン68が立設されている点にある。
【0073】
ピン68は、案内規制部45の復帰時の移動軌跡K2上に沿うようにして配置され、第2のガイド壁46cとの間に、移動軌跡K2を移動してきたガイドピン31aを弾力をもって挟持するようになっており、この挟持によって、クラッチ作動片31に移動抵抗を付与するようになっている。
【0074】
この魚釣用リールによれば、抵抗付与手段をより簡単に構成することができるので、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。
【0075】
(第6実施形態)
図10(a)(b)を参照して第6実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールは、前記第5実施形態の変形例であり、抵抗付与手段として機能するピン68に弾力性を有するリング69bが装着されている。
【0076】
ピン69は、案内規制部45の復帰時の移動軌跡K2上に沿うようにして配置され、ピン69に形成された周溝69aにリング69bが装着されている。
ピン69は、剛性を有しており、また、周溝69aは、ピンの軸方向から見て第2のガイド壁46c側に偏芯している、リング69bは、例えば合成ゴム製であり、Oリング等を用いることができる。
【0077】
このようなピン69は、第2のガイド壁46cとの間に、移動軌跡K2を移動してきたガイドピン31aを偏芯したリング69bで弾力をもって挟持するようになっており、この挟持によって、クラッチ作動片31に移動抵抗を付与するようになっている。
一方、周溝69aの偏芯によって、リング69bは、第1のガイド壁46a側に突出しておらず、ピン69と第1のガイド壁46aとの間には、ガイドピン31aがピン69に接触することなく通過することの可能な隙間が形成されている。これによって、移動軌跡K1上では、ピン69による移動抵抗が付与されない構成となっている。
【0078】
この魚釣用リールによれば、抵抗付与手段を簡単に構成することができるので、部品点数の削減を図ることが可能となりコストの低減が可能となる。また、リング69bが劣化した場合には、これを簡単に交換することができる。また、異なる材料でリング69bを複数種類形成することにより、付与される移動抵抗を調整することもできる。
【0079】
(第7実施形態)
図11(a)(b)を参照して第7実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記各実施形態と異なるところは、復帰時の移動軌跡K2上に抵抗付与手段として機能する邪魔板70が設けられている点である。
【0080】
邪魔板70は、基部45a上に立設された支持部71aと、これに対向する第2のガイド壁46cとの間に、復帰時の移動軌跡K2を挟むようにして一対の当接片71,72が対向する方向に間隔を隔てて設けられてなる。そして、一対の当接片71,72は、復帰時のガイドピン31aの移動方向に向けてそれぞれ傾斜する状態に開いており、これらの間を通過するガイドピン31aに対して当接して、移動抵抗を付与するようになっている。
なお、当接片72の側方には、当接片72が開き易いように、切欠き72aが形成されている。
【0081】
この魚釣用リールによれば、別途部材等を用いることなく、一対の当接片71,72の開く角度を調整することにより、付与される移動抵抗を簡単に調整することができ、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。
【0082】
(第8実施形態)
図12(a)(b)を参照して第8実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記各実施形態と異なるところは、案内規制部45が切換時の移動軌跡K1と復帰時の移動軌跡K2に沿う溝部47を有しており、この溝部47内をガイドピン31aが移動するように設けられている点である。
【0083】
溝部47内において、復帰時の移動軌跡K2上には、溝部47を跨ぐようにして突部73が形成されており、この突部73にガイドピン31aが当接することで、クラッチ作動片31に移動抵抗が付与されるようになっている。
【0084】
この魚釣用リールによれば、溝部47内に沿ってガイドピン31aが移動する構成であるので、ガイドピン31aの移動軌跡K1,K2をより確実に分離することができ、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。
【0085】
(第9実施形態)
図13(a)(b)を参照して第9実施形態の魚釣用リールについて説明する。
本実施形態の魚釣用リールが前記各実施形態と異なるところは、ガイドピン31aに抵抗部74を設けて、クラッチ作動片31が復帰時に移動する移動軌跡K2上の移動抵抗が、切換時に移動する移動軌跡K1上の移動抵抗より大きくなるようにした点である。
【0086】
ガイドピン31aには、第2のガイド壁46cに対向する側の周壁に側面視で溝状に切り込まれてなる抵抗部74が設けられている。この抵抗部74は、復帰時の移動軌跡K2上をガイドピン31aが移動する際に第2のガイド壁46cに当接するようになっており、この当接によって、クラッチ作動片31に移動抵抗が付与されるようになっている。
【0087】
この魚釣用リールによれば、ガイドピン31a側に設けられた抵抗部74によって、クラッチ作動片31に移動抵抗が付与され、クラッチオフ位置からクラッチオン位置への意図しない誤作動が生じるのを好適に防止することができる。
また、ガイドピン31a側の抵抗部74で移動抵抗が付与されるように構成されているので、構成が簡単であり、コストが嵩むのをより確実に低減することができる。
【0088】
なお、ガイドピン31aの第2のガイド壁46cに対向する側に、面粗度の粗い材料や滑り抵抗の大きい合成ゴム等の材料を付設して、を構成してもよい。
【0089】
前記した第1実施形態から第8実施形態において、第9実施形態で示した抵抗部74をガイドピン31aに設けてもよい。
また、前記各実施形態において、案内規制部45の形状を略U字形状として説明したがこれに限られることはなく、切換時の移動軌跡K1と復帰時の移動軌跡K2とが異なるものであれば、第1のガイド壁46aと第2のガイド壁46cとが相互に分離されているものや、3つ以上のガイド壁から構成されるものであってもよい。
また、案内規制部45の第2のガイド壁46cは、始端から終端に向けて略直線状とされたものを示したが、これに限られることはなく、始端から終端に向けて曲線部分を含んで構成されたものや、前方へ向けてくの字状(側面視くの字状)に膨出した形状のものであってもよい。
【0090】
また、案内規制部45は、図示しないねじ等の固定部材や接着剤を用いて右フレーム2bに固着してもよいし、射出成形、ダイキャスト、切削加工等により右フレーム2bと一体に設けてもよい。
【0091】
また、ガイドピン31aと基部46aとの隙間S2は、必ずしも設けなくてもよく、復帰時の移動軌跡K2上で付与される移動抵抗を考慮して適宜設定すればよい。
【符号の説明】
【0092】
1 リール本体
5a スプール
7 ハンドル軸
7a ハンドル
20 クラッチ機構
23 クラッチレバー
24 クラッチ駆動部材
30 復帰機構
31 クラッチ作動片
31a ガイドピン
32 クラッチ復帰用回転体
45 案内規制部
46 壁部
46c 第2のガイド壁(ガイド)
60 抵抗付与手段
64 抵抗付与手段
65 抵抗付与手段
66 摺動部(抵抗付与手段)
67 段差部(抵抗付与手段)
70 邪魔板
73 突部
74 抵抗部
K1,K2 移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回動自在に支持したスプールを、動力伝達状態と動力遮断状態とに切り換えるクラッチ機構と、前記リール本体に設けたクラッチレバーの操作で動力遮断状態にされた前記クラッチ機構を、前記リール本体に設けたハンドルの釣糸巻き取り方向の回転操作で動力伝達状態に復帰させる復帰機構とを備えた魚釣用リールにおいて、
前記クラッチ機構は、
前記クラッチレバーに連結されて前記ハンドルが取り付けられるハンドル軸と連動回転するクラッチ復帰用回転体と、前記クラッチ復帰用回転体に係脱するクラッチ作動片と、前記クラッチ作動片の移動を案内および規制する案内規制部と、を有しており、
前記クラッチ作動片は、動力伝達状態から動力遮断状態に切り換えられる切換時と、動力遮断状態から動力伝達状態に復帰される復帰時とでは、前記案内規制部に沿って異なる移動軌跡上を移動するようになっており、
前記クラッチ作動片が復帰時に移動する前記移動軌跡上の移動抵抗は、切換時に移動する前記移動軌跡上の移動抵抗より大きいことを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記クラッチ作動片に移動抵抗を付与する抵抗付与手段を備え、
前記抵抗付与手段は、復帰時の前記移動軌跡上にのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記案内規制部は、前記クラッチ作動片の移動を案内および規制するガイドを有しており、
前記抵抗付与手段は、前記ガイドに備わることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記抵抗付与手段は、復帰時の前記移動軌跡上に設けられた凹状の摺動部または凸状の段差部であることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項5】
前記クラッチ作動片は、復帰時の前記移動軌跡上において前記クラッチ復帰用回転体に係止され、当該クラッチ復帰用回転体の復帰方向への回転に抵抗力を付与することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の魚釣用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−157266(P2012−157266A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18328(P2011−18328)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】