説明

魚釣用電動リール

【課題】手持ち状態で、一連の魚釣り操作が容易に行える魚釣用電動リールを提供する。
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、スプール7を回転駆動する駆動モータ8と、リール本体5に配置され、駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケース15と、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、駆動モータ8の出力を調整する操作部材25と、スプールをフリー回転可能とするクラッチ機構と、クラッチ機構をOFF状態からON状態に切り換え操作するクラッチON切り換え部材19とを有する。そして、操作部材25は、左右側板5A,5B間でスプールの上方に位置するように支持されて前後方向に変位可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように、よりコンパクト化された構成も製品化されている。
【0003】
一方、魚釣用電動リールは、スプールを巻き取り操作するための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1に開示されているように、リール本体の側板に、モータ出力を連続的に可変できるようなレバータイプに構成したもの、或いは、スライドタイプに構成したもの等を配置することが知られている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来の小型化された魚釣用電動リールでは、操作性の面でさらに改良すべき余地がある。具体的には、釣竿とともにリール本体を把持した状態で、クラッチOFF(仕掛けの放出)、釣糸放出と共にサミング操作、クラッチON、棚取り操作、シャクリ操作、フッキング、釣糸巻き取り操作などの一連の操作を、釣竿とともにリール本体を把持している側の手で違和感なく行えるようにすることが望ましい。
【0006】
上記した従来のタイプの魚釣用電動リールでは、これら一連の操作を手持ち状態で行うことは難しい。すなわち、特許文献1に開示されている構成では、スプールの巻き取り操作を行う操作部材を、リール本体を把持している手とは反対の手で操作する必要があり、また、特許文献2に開示されている構成では、親指を制御ケースの上方側から押さえつけるようにして操作する必要があるため、リール本体を把持している側の手の親指で、クラッチOFFからスプールの巻き取り操作に至る一連の操作を行うことは困難である。
【0007】
さらに、操作部材を、リール本体を把持している側の親指で操作できるように構成した場合、釣竿にアクションを与えながら指を移動操作することから、モータ出力の調整が難しくなる可能性もある。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、手持ち状態で、一連の魚釣り操作が容易に行える魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記スプールを回転駆動する駆動モータと、前記リール本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、前記スプールをフリー回転可能とするクラッチ機構と、前記リール本体に設けられ、前記スプールがフリー回転状態から巻き取り状態となるように前記クラッチ機構をOFF状態からON状態に切り換え操作するクラッチON切り換え部材と、を有し、前記操作部材は、前記左右側板間でスプールの上方に位置するように支持されて、前後方向に変位可能に構成されていることを特徴とする。
【0010】
上記した構成の魚釣用電動リールでは、釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に、駆動モータの出力を調整する操作部材が配設されているため、サミング操作をしながら、駆動モータの巻き取り操作を違和感なく行うことが可能となる。すなわち、前記操作部材は、リール本体の左右側板間でスプールの上方に位置しているので、サミングしている親指を延ばして操作することが可能であり、操作性の向上が図れると共に、手や指を大きく動かす必要がなく疲れ難い。また、操作部材は、前後方向に変位可能に構成されているため、リール本体を把持保持しながら、親指の腹部を延ばしてそのまま前後方向への操作が可能となり、安定性が高く確実な駆動モータの巻き取り操作が可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態で、一連の魚釣り操作が容易に行える魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示す平面図。
【図2】図1に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図。
【図3】図1に示す魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図。
【図4】図1に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図5】図1のA−A線に沿った断面図。
【図6】図5の主要部を拡大した図。
【図7】釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図。
【図8】制御ケース内に収容される制御部の構成を示すブロック図。
【図9】クラッチ機構をOFF操作する状態を示す図。
【図10】仕掛けの放出から着底するに至るまでのバックラッシュ防止のサミング操作を示す図。
【図11】図10に示す状態の後、クラッチ機構をON操作する状態を示す図。
【図12】操作部材を操作して駆動モータを巻き取る状態を示す図。
【図13】サミング操作をしながら操作部材を操作して駆動モータを巻き取る状態を示す図。
【図14】サミング操作と関係なく操作部材を操作して駆動モータを巻き取る状態を示す図。
【図15】(a)〜(d)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図。
【図16】本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す平面図。
【図17】図16に示す操作部材の断面図。
【図18】図16に示す魚釣用電動リールにおいて、釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図。
【図19】図18に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図20】本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す平面図。
【図21】図20に示す操作部材の断面図。
【図22】図20に示す魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図。
【図23】図20に示す魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図。
【図24】図20に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図25】図20のB−B線に沿った断面図。
【図26】図25の主要部を拡大した図。
【図27】図20に示す魚釣用電動リールにおいて、釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図。
【図28】図27に示す魚釣用電動リールを後方側から見た図。
【図29】操作部材の第1の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図30】操作部材の第2の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図31】操作部材の第3の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材の断面図、(c)は操作部材の側面図。
【図32】操作部材の第4の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材を後方側から見た図、(c)は操作部材の側面図、(d)は操作部材の断面図。
【図33】操作部材の第5の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材を後方側から見た図、(c)は操作部材の側面図、(d)は操作部材の断面図。
【図34】操作部材の第6の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材を後方側から見た図、(c)は操作部材の側面図、(d)は操作部材の断面図。
【図35】操作部材の第7の変形例を示す図であり、(a)は制御ケース部分を示す平面図、(b)は操作部材を後方側から見た図、(c)は操作部材の側面図、(d)は操作部材の断面図。
【図36】制御部において駆動モータを制御する手法を示し、デューティ比と、操作部材の操作角度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1から図5は、本発明に係る魚釣用電動リールの第1の実施形態を示しており、図1は平面図、図2は魚釣用電動リールをハンドル側から見た側面図、図3は魚釣用電動リールを反ハンドル側から見た側面図、図4は魚釣用電動リールを後方側から見た図、そして、図5は図1のA−A線に沿った断面図である。
なお、前後方向、左右方向、上下方向については、図1及び図2に記載の方向と定義する。
【0014】
本実施形態の魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。前記リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7が回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図5に示すように、前記スプール7の前方側における左右側板間に駆動モータ8を保持しており、前記スプール7は、前記手動ハンドル6の巻取り操作、及び駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0015】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプールの糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、前記動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール側に伝達する機能、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能、手動ハンドル6の逆回転を防止する機能などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。
【0016】
また、前記スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構12が設置されている。さらに、リール本体を構成する前記左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、前記駆動モータ8を制御する制御部を具備する制御ケース15が配設されている(制御部の構成については後述する)。この制御ケース15は、その表面が左右側板5A,5Bの表面と面一状に構成されている。
【0017】
また、前記リール本体5内には、スプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17が配置されている。このクラッチ機構17は、上記した動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6及び駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。このクラッチ機構17を構成するクラッチプレートには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換えるクラッチOFF切り換え部材18と、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換えるクラッチON切り換え部材19が係合している。
【0018】
本実施形態におけるクラッチOFF切り換え部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となるように、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっている。この場合、上側の表面が、実際に親指の腹部を載置して操作される操作部(OFF操作部)18aとなっており、この部分を、図5に示す状態から下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。クラッチOFF切り換え部材18は、図示されていない振り分け保持バネによって、図5に示すクラッチON位置とクラッチOFF位置(図9,図10参照)との間で振り分け保持される。
【0019】
また、本実施形態におけるクラッチON切り換え部材19は、右側板5B側に設置されており、図示されていない振り分け保持バネによって、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で揺動可能となるよう振り分け保持されている。この場合、前記クラッチON切り換え部材19は、釣竿とともにリール本体を把持し、前記クラッチOFF切り換え部材18のOFF操作部18aに親指を載置した状態から、そのまま親指を延ばせば届く位置に設置されている(詳細な寸法については後述する)。また、クラッチON切り換え部材19は、クラッチON状態では、図5に示すように、その表面(ON操作部19a)が右側板5Bの表面と略面一状となり、クラッチOFF状態では、ON操作部19aが右側板5Bの表面から突出して押圧操作可能な状態となるように、揺動可能に支持されている(図9,図10参照)。
なお、クラッチON切り換え部材19は、機械式以外にも、電気式(例えば、ソレノイドを利用したもの)で構成されていても良い。また、クラッチOFF切り換え部材18と一体部材で構成されていても良い。
【0020】
前記リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ22(図7参照)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0021】
前記制御ケース15は、図5に示すように、スプール7の上方で、その回転軸(スプール軸7a)付近から前方側のレベルワインド機構12、及び駆動モータ8を覆うような大きさを備えており、その後端部分に、駆動モータ8の出力を調整する操作部材25が配置されている。この操作部材25は、スプール7の上方に位置して、前後方向(釣竿方向)に変位できるように支持されている。ここで、スプール7の上方とは、側面視した際、操作領域(親指の腹部が当接する操作領域)が上方に位置したものであれば良く、特に、スプールに釣糸が巻回された状態において、サミング操作しながら、そのまま操作部材の操作が可能となるように、前記操作領域が、スプール軸7aよりも前方側に多少オフセットしていることが好ましい。本実施形態における操作部材は、略円筒形状に構成され、その外表面(回転表面)が、左右側板間でスプールを露出させる開口領域に面しており、回転する方向が前後方向となるように支持されている。
以下、図6及び図7を参照しながら、本実施形態の操作部材25の構成について詳細に説明する。
【0022】
操作部材25は、リール本体5を、リール脚取付け部5aを介して釣竿Rに装着した際に、図7に示すように、釣竿Rとともに前記リール本体を把持した状態の手の親指Tが届く位置に配設されている。具体的には、スプール7に釣糸Sが巻回された状態で、その表面をサミング操作しても、サミング操作しながら親指の腹部が当接可能となる位置(詳細には、図6に示すように、サミングしている親指を延ばしたときに最初に当接する操作部材の最も後端側となる位置Pから釣糸が巻回された表面までの垂直距離が、釣糸の放出を考慮して5〜40mm程度となっていれば良い)に配設されており、かつ、その操作方向が矢印(湾曲状の矢印)で示すように、略前後方向となるように支持されている。また、サミング操作している親指を離しながら(スプールから指を離して)、操作部材を操作しても把持性が良い構成(具体的には、親指で上から押し付けることも可能な構成)となっている。つまり、前後や上下の細かい動きが必要な操作部材25の操作には親指の先側を、主に上下の動きが中心であるサミング操作には親指の元側を使えるような構成となっており、これによりスムーズな一連の操作を可能としている。なお、標準的な糸巻量(S2で示す)から釣糸が繰り出されると、巻回されている釣糸の外径は次第に変化するが、ここでは、釣糸巻回量の半分(50%;S1で示す)であっても、十分にサミング操作しながら操作できる位置とされている。
【0023】
より具体的には、図7に示すように、制御ケース15の後端部15aの中央領域に、前方側に向けて窪んだ凹部15bを形成しておき、この凹部15bに操作部材25を回転可能に支持している。操作部材25は略円筒形状に構成されており、その回転軸25aの両端が、制御ケース15に対して回転可能に支持されている(両軸支持されている)。このように、操作部材25を両軸支持する構成としたことで、糸絡みを効果的に防止することが可能となり、また、操作部材25が左右側板5A,5Bの中央領域に位置することで、リール本体5の重心に対する把持位置のバランスが良くなり、操作性が良く、疲れ難い構成とすることが可能となり、更に、右手、左手のどちらの手で把持しても共通の感覚が得られる。なお、操作部材25の回転軸25aについては、制御ケース15以外の部分(例えば、リール本体5の左右のフレーム3a,3bに直接)に対して回転可能に支持されたものであっても良く、また、操作部材25と一体成型品であっても、筒状の軸であっても良い。また、操作部材25については、片側のみ回転可能に支持(片持ち支持)されたものであっても良い。そして、前記回転軸25a上には、角度センサ130が設けられている。
【0024】
ここで、操作部材における略円筒形状とは、図に示すように、内部が中実であっても良いし、全体或いは部分的に空洞部があるものを含む概念である。また、その外形状については、本実施形態のように、正確な円筒形状は勿論、周囲に凹凸が形成されていたり、指でつまんだり、当て付けることが可能な突起部が形成されたものであっても良い。或いは、軸方向の中間部分が膨出していたり、窪んでいるなど、軸方向に親指の腹部が当接できて回転操作ができるような外形状を備えたものであれば良い(これらの具体的な構成例については、図29から図31を参照しながら後述する)。さらに、略円筒形状に構成された操作部材25については、図2から図4に示されるように、制御ケース15の表面から突出していても良いし、後述する実施形態のように、少なくとも一端側の回転表面が、制御ケース、或いはリール本体との間で略面一状にされていても良い。
【0025】
上記のように、操作部材25を、釣竿Rとともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設したことで、釣竿Rとリール本体を保持した姿勢で片手操作を行うことが可能となり、操作部材25を略円筒形状としたことで、リール本体5を把持保持しながらの操作がし易くなる。また、図7に示すように、親指Tの腹部を押し当てた際、安定性が高くなり、確実な操作をすることができ、単なる薄幅の円板状の部材と比較しても、接触面積が大きいため、把持保持性も強くなる。
【0026】
ここで、上記したような操作を可能とする具体的な寸法関係について説明する。
リール本体を図1に示すように上面視した際、反ハンドル側のフレーム(本実施形態では左側板側)の後端内側点P3から、クラッチOFF切り換え部材のOFF操作部18aの中心点P4までの距離をL4、クラッチON切り換え部材のON操作部19aの中心点P5までの距離をL5、操作部材25の中心点P6までの距離をL6とした場合、これらのL4,L5,L6は、10〜70mmに設定するのが好ましく(70mm以内にすることで、一般的な大人の場合、確実に届く距離となる)、特に、15〜60mmに設定することが好ましい。なお、10mm未満にすると、大きく指を曲げる必要があり、操作が遅くなってしまい、70mmを超えると、釣竿とともにリール本体を把持した状態で指が届いても、操作時のバランスが悪くなってしまう。
【0027】
また、本実施形態では、略円筒状の操作部材25を、リール本体5(制御ケース)及びスプール7との間で以下のような関係となるように設置している。
【0028】
前記操作部材25の回転軸25aは、スプール7の回転軸7aと略平行となるように設置している。
このように、略円筒形状の操作部材25の回転軸25aを、スプール7の回転軸7aと略平行(平行を含む)にすることで、リール本体を把持保持した状態で、操作部材25を自由に回転しても、指(親指T)の位置が横方向にずれ難く、図7の矢印で示すように、前後方向にしか移動しないため、ねじれ方向の負荷が変化することはなく疲れ難くなる。すなわち、親指Tの位置が大きく横にずれてしまうと、リール本体の重心や給電部20にかかる力(図に示すように、給電部20は側部に設けられているため、給電コードに引っ張られる力や携帯バッテリの重量負荷などで、釣竿Rの長手軸を中心に回転負荷による力がかかり易い)によるねじれ負荷に対し、操作性が低下したり疲れ易くなってしまう。従って、操作部材25を回転させた際の指(親指T)の位置の横方向のずれを考慮すると、略平行の範囲は、スプールの回転軸に対して±30°の範囲と定義しても良い。このため、操作部材25の変位方向である「前後方向」には、前後方向(釣竿の軸方向)は勿論、軸方向に対して±30°の範囲内を含むものとする。
【0029】
また、本実施形態では、スプール7の回転軸7aを基準位置(H0で示す)とした場合において、スプール7に対して底部7bから釣糸S50%巻回されたときの釣糸表面までの高さをH1、クラッチON切り換え部材19の表面部における高さ方向の幅の中間点までの高さをH2、操作部材25が巻き速度0のときに最も後端側となっている位置Pまでの高さをH3とした場合、クラッチON切り換え部材19と操作部材25を、H1<H2<H3となるような関係に配置している。
【0030】
この場合、H2の高さを、クラッチON切り換え部材19の表面部における高さ方向の幅の中間点としたのは、クラッチON操作する際に、通常、最も操作される領域を考慮したためであり、H3の高さを、操作部材25が巻き速度0のときに最も後端側となっている位置Pとしたのは、駆動モータ8がOFF位置となった状態で、サミングしている親指をそのまま延ばしたときに最も接触し易い位置を考慮したためである。すなわち、クラッチON切り換え部材19における配設位置と、操作部材25の配置位置を上記のような関係に設定したことにより、クラッチOFFしてから釣糸巻き取り操作(操作部材25の操作)に至るまでの一連の操作をする際に、親指を俊敏に動かして無駄な動きを少なくすることが可能となる。なお、クラッチON切り換え部材19については、その形状によっては操作位置が異なるため、操作領域部分が前記H1より高く、かつ前記H3より低い位置に存在していれば良い。
【0031】
また、図5及び図6に示すように、制御ケース15の後方側下端部分に、操作部材25とスプール7との間で後方側に向けて突出する誤動作防止部15cを設けておくことが好ましい。
【0032】
制御ケース15に上記したような誤動作防止部15cを形成しておくことにより、釣糸を巻き取り操作する際、釣糸に付着したゴミや海水が操作部材25に当たることを防止して、誤動作が生じることを防止することが可能となる。なお、誤動作防止部15cは、制御ケース15と一体部品であっても良いし、金属の薄板材を制御ケース15に接合しても良い。
【0033】
また、誤動作防止部15cについては、その先端位置15d(図6のラインL1で示す位置)が、操作部材25の中心位置(図6のラインL2で示す位置)よりも前方側にあると、釣糸に付着したゴミや海水によって誤動作が生じる可能性があり、また、その先端位置15dが、前記操作部材25の後端位置Pよりも後方側になってしまうと、サミング状態から操作部材25へ親指を移動させる際、特に、糸巻量が少ないと、妨げになってしまう可能性がある。このため、誤動作防止部15cについては、図6に示すように、その先端位置15dが、前記後端位置Pよりも前方側にあり、かつ操作部材25の中心位置(回転軸25aの位置)よりも後方側にあるようにすることが好ましい。すなわち、誤動作防止部の先端位置15dは、操作部材25を覆いながら、その後端位置Pが、側面視で露出する範囲内にあることが好ましい。
【0034】
また、操作部材25については、スプール7の上方に配置し、かつ、その中心位置(回転軸25a)をスプール7の回転軸7aより駆動モータ8側に配設しておくことが好ましい。
本実施形態では、上述したように、スプール7の前方に駆動モータ8を配置したことにより、スプール7の外径を小さくでき、操作部材25を低い位置に取り付けることが可能となる。その際、駆動モータ8を前方にしたため、重心が前方にシフトしてしまうが、操作部材25をスプールの回転軸7aよりも駆動モータ側とすることで、リール本体5の重心と把持部との関係が良くなり、操作性の向上が図れると共に、疲れ難い構成とすることが可能となる。なお、操作部材25を低い位置に設置できるため、操作部材25をスプールの回転軸7aよりも前方側に設置しても、親指は容易に届くようになる。特に、操作部材25の中心位置は、スプール7の回転軸7aより駆動モータ8側に、1〜15mmの範囲にすることが好ましく、これにより、把持性、及び操作性のバランスが良くなる。
【0035】
また、上記した制御ケース15には、駆動モータ8の駆動を制御する制御部(制御基板)が収容されており、操作部材25の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部は、操作部材25を前方に向けて回転操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。すなわち、釣糸の巻き取りをする際、魚からの魚信をサミング状態で待機している親指をそのまま前方に延ばして、操作部材25を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるため、操作性の向上が図れるようになる。なお、操作部材25の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意であるが、本実施形態では、操作部材25の基準位置をモータの出力値0として、120°前方に回転操作した際、モータ出力がMaxになるように設定されている。
【0036】
また、前記制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な操作ボタン16a,16bが配設されている。
【0037】
ここで、前記制御ケース15に収容される制御部の構成について、図8を参照して説明する。
図8は、上記した構成の魚釣用電動リールの動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。
【0038】
制御ケース15に収容される制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)110、糸長を計測したり、駆動モータの出力を可変制御するための各種プログラムや設定情報などを記憶したROM(Read Only Memory)111、一時記憶領域としてのRAM(Random Access Memory)112を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)120を備えており、この制御基板120には、I/Oポート115を介して、各作動要素との間で信号の送受信がなされ、動作が制御されるようになっている。
【0039】
具体的には、制御基板120との間では、前記操作部材25の操作量を検知する検知手段、具体的には、操作部材25の操作角度に応じて操作位置信号を出力する角度センサ130、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置140、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路160、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a,16b、及び駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路170との間で信号の送受信がされるよう構成されている。すなわち、CPU110は、ROM111に格納されている所定のプログラムを実行し、これに応じて生成される制御信号を、I/Oポート115を介して上記した各作動要素に供給することで各作動要素を制御し、魚釣用電動リール全体を制御する機能を有する。
【0040】
また、前記ROM111は、CPU110によって実行される各種プログラムや、制御処理に必要とされるデータ(例えば、糸長計測装置140から入力される検知信号に基づいて糸長を計測する演算プログラム、操作部材25の操作角度とそれに対応して駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比を特定する可変制御テーブル、液晶表示部16で文字や数字などの画像を表示させるための画像表示データなど)が記憶されている。また、前記RAM112は、作業領域を備えており、前記プログラムが作動している際に、処理手順やデータなどを一時的に記憶する機能を備えている。
【0041】
前記操作ボタン16a,16bは、例えば、投入した仕掛けを所望の深さで停止させる深さ情報、駆動モータ8の出力の可変範囲を変更する出力範囲設定情報など、釣り人から各種の情報を受け付ける。
【0042】
前記糸長計測装置140は、スプール7が釣糸の繰り出し/巻き取りで回転駆動された際、例えば、回転部分に装着されたマグネットと、これを検知する磁気センサによって実際の回転量や回転方向を検知し、その検知信号を生成する。
【0043】
また、前記モータ駆動回路170は、スプール7を回転駆動する駆動モータ8を駆動制御する機能を備える。具体的には、モータ駆動回路170は、例えば、前記CPU110からの制御信号(PWM信号;パルス幅変調信号)に基づいて、駆動モータに対する駆動電流通電時間率(デューティ比)を可変制御し、駆動モータ8を停止状態(OFF状態)から高速回転状態(Max状態)まで連続的に増減調節する。なお、前記CPU110からは、操作部材25の初期位置(OFF位置)から実際の操作量を検知する角度センサによる検知信号に基づいて、角度毎に設定されているデューティ比に関する制御信号が出力される。
【0044】
前記表示制御回路160は、前記CPU110の制御に基づいて駆動され、液晶表示部16に対して、例えば、現在の釣糸の繰り出し量、仕掛けを投入してからの時間、駆動モータ8の駆動速度(インジケータによる表示でも良い)、或いは、操作方法やメッセージなど、釣り人に対して各種情報を表示させる機能を有する。
【0045】
前記角度センサ130は、操作部材25の操作角度に応じた信号を生成する機能を備えたものであれば良く、例えば、操作部材の操作量に応じた抵抗値の変化を出力するポテンショメータを備えたもの、或いは、操作量に応じたパルスを生成するエンコーダを備えたものなど、様々な構造のものを適用することが可能である。
【0046】
次に、上記した構成の魚釣用電動リールを用いて、実際に船釣りをする際の動作について図9から図15を参照して説明する。なお、以下の一連の魚釣り操作は、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態でなされる。
【0047】
最初、釣竿とともにリール本体5を把持している手の親指で、スプール後方側に配設されているクラッチOFF切り換え部材18のOFF操作部18aを押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換える(図9参照)。クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えると、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは落下する。このとき、クラッチON切り換え部材19は揺動して、図9及び図10に示すように、ON操作部19aが右側板5Bの表面から突出して押圧操作可能な状態となる。仕掛けが落下して着底するまでは、バックラッシュが生じ易いものの、リール本体5を把持している親指を、そのままクラッチOFF切り換え部材18のOFF操作部18aから釣糸表面にシフトさせてサミングすることで、バックラッシュを防止することが可能となる。
【0048】
仕掛けが着底したり、所定の棚まで落下した際(通常、糸巻量は、ほぼ半分程度となるように設定されている)、サミングしている親指を側方にずらして、突出した状態にあるクラッチON切り換え部材19のON操作部19aを押圧することで、容易にクラッチONに切り換えることが可能となる(図11参照)。
【0049】
図12は、上記した一連の操作が終了した後に、釣糸の巻き取り操作に移行する状態(操作部材25の回転操作)を示している。上記したように、スプール7に対して釣糸が50%巻回されたときの釣糸表面までの高さをH1、クラッチON切り換え部材19の表面部(ON操作部19a)における高さ方向の幅の中間点までの高さをH2、操作部材25が巻き速度0のときに最も後端側となっている位置Pまでの高さをH3とした場合、クラッチON切り換え部材19と操作部材25を、H1<H2<H3となるような関係に配置しているため、クラッチOFF、仕掛けの落下に伴うサミング操作、クラッチON、そして、操作部材25による巻き取り操作の一連の動作を、無駄な動きがなく、片手の親指Tで俊敏に行うことが可能となる。
【0050】
図13は、クラッチON状態でサミング操作と同時に操作部材25に、親指Tの腹部を当接させた状態を示している。上記したように、本実施形態では、操作部材25をサミング操作しながら操作可能な位置に設置しているので、後述するシャクリ操作時など、釣糸巻き取り操作とともに親指Tを釣糸に触れた状態にすることができ、魚の魚信を感知し易くなる(クラッチON状態であっても、スプールと逆転防止機構の間にはギヤが複数噛合しているため、スプールは回転方向に遊度がある。その遊度を利用して魚の魚信を感知し易くしている)。また、釣竿とリール本体を把持する際、スプールごと把持することもでき、露出した状態にある操作部材25の前記接点位置Pのみに触れた状態でも、リール本体5をしっかりと把持することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、クラッチOFF切り換え部材18についても、スプール7をサミングしながら操作可能な位置に配設されているため、シャクリ操作時において、再び仕掛けを所定の量だけ落下させたい場合、サミング操作しながらクラッチOFFにして、仕掛けを所望の量だけ落下させることが片手で容易に行えるようになる。
【0052】
図14は、サミング操作することなく、リール本体を把持した状態で、操作部材25を操作する状態を示している。上記したようなサミング操作をすることなく、リール本体5を把持した状態では、操作部材25は制御ケース15の表面から突出しているため(図2及び図3参照)、操作部材25を介しての把持が可能となる。すなわち、図に示すように、操作部材25の接点位置Pに当接した状態(駆動モータ8は巻き取り駆動されている状態)でもしっかりとリール本体を把持することが可能であり、この状態で、そのまま操作部材25を前方に転がすようにするだけで容易に駆動モータを増速することが可能となる。もちろん、駆動モータの停止状態においても、そのまま操作部材25を前方に転がすようにするだけで容易に駆動モータを巻き取り操作することが可能となる。また、図12や図13に示した状態から、図14に示した状態へ移行する上においても操作性が良い。
【0053】
図15(a)から(d)は、仕掛けを放出した後の一連の魚釣り操作の状況の一例を連続的に示した図である。これら一連の操作は、釣竿とともにリール本体を把持した片手で行うことが可能である。
まず、(a)に示すように、仕掛けを放出して着底した後、棚取りを行う(魚のいる水深まで巻き取り操作する)。また、棚取りした後、必要に応じてコマセ振りを行う(コマセ釣りの場合)。これらの一連の操作(着底した後の巻き上げ操作)は、図12で示したように実施することができ、コマセ振りのときは、図14で示すように、しっかりとリール本体5を把持して実施することができる。また、魚の魚信を待つのであれば、図13に示したように、サミングしながら操作部材25に親指を当てておくことができるため、魚信を感知し易いと共に、魚信があった場合、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。
【0054】
シャクリ操作をする場合、(b)に示すように、ゆっくりと釣竿を引き上げてストップする。このとき、図13に示すような状態にすることで、魚信が感知し易く、かつ魚信があった場合、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。特に、竿を高くシャクリ上げたときに魚信があった場合は、この巻き取り操作のみでフッキングが可能となる。
【0055】
次に、(c)に示すように、引き上げた釣竿を降ろしながら巻き取り操作を行う(仕掛けは上下動させない)。このとき、図13に示すような状態、或いは図14に示すような状態にすることで、釣竿を降ろしながらの巻き取り操作を容易に行うことが可能となる。すなわち、従来の魚釣用電動リールでは、釣竿を降ろしながらの巻き取り操作は、もう一方の手を使って手動ハンドルの巻き取り操作を実施するか、もしくは、レバー形状になった操作部材を回動操作する必要があるが、本実施形態では、両手を使うことなく片手で(c)に示すような操作を実施することが可能となる。
【0056】
なお、(d)に示すように、実際に魚の魚信があった場合、当接している操作部材25をそのまま操作することで魚をフッキングすることができ、さらに、そのまま釣糸を巻き取ることが可能となる。特に、竿によるあわせができない、高く竿を上げたときの魚の魚信に効果的である。
【0057】
以上のように、本実施形態の魚釣用電動リールによれば、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態(片手持ち状態)で、一連の魚釣り操作が容易に行えるようになる。
すなわち、釣竿とともにリール本体を把持した状態で、クラッチOFF(仕掛けの放出)、釣糸放出と共にサミング操作、クラッチON、棚取り操作、(サミングしながら)のシャクリ操作、フッキング、釣糸巻き取り操作などの一連の操作を、釣竿とともにリール本体を把持している側の手で違和感なく行えるようになる。特に、操作部材25は、スプールの上方に位置して左右側板間に回転可能に支持されているので、サミング操作している親指をそのまま延ばして操作することが可能であり、操作性の向上が図れると共に、手や指を大きく動かす必要がなく、疲れ難くなる。また、操作部材25は、略円筒形状に構成されており、前後方向の移動成分を有するため、リール本体を把持しながら、親指の腹部を延ばしてそのまま転がすようにして前後方向への操作が可能となる(図7参照)。
【0058】
ここで、そのような操作に適したリール本体の大きさ、及び操作部材25の具体的な配置箇所について説明する。
前記操作部材25については、図4及び図5に示すように、その後端位置Pまでの高さ(リール脚取付け部5aの幅方向中心位置からの高さ)H5が30mm〜90mmの範囲となるように設定されている。これは、30mm未満では、スプール径が小さくなり過ぎてしまい、90mmを超えると、釣竿とともに把持した際の操作性が低下してしまうためである。すなわち、操作部材25を上から押し付けるような操作ができるようにするのであれば、90mm未満にするのが良く、30mm〜75mmにするのが特に好ましい。また、操作部材25の前後方向における配置位置に関しては、図2に示すように、標準的な糸巻量S2の後端位置P7より前方、かつリール本体5の後端位置P8からの水平方向の距離Lpが60mm以内となることが好ましい。特に、釣糸が50%程度の巻回量S1のときの後端位置P9より前方とすることが好ましく、更には、スプールの底部7b(図6参照)より前方に配置しておくことが好ましい。
【0059】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上述した実施形態と同一の部分については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明については省略する。
図16から図19は、本発明に係る魚釣用電動リールの第2の実施形態を示す図であり、図16は平面図、図17は図16に示す操作部材の断面図、図18は、釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図、そして、図19は魚釣用電動リールを後方側から見た図である。
【0060】
本実施形態では、制御ケース15の後端部に配設される操作部材35を、リール本体5を平面視した際、リール脚取付け部5aの幅方向の中心線Xに対して給電部20とは反対側(反給電部側)に配置している。この場合、操作部材35は、中心線Xに対してシフトした位置に形成された凹部15bに配され、その回転軸35aが制御ケース15に対して両軸支持された状態となっている。また、操作部材35は、略円筒形状に構成されるが、回転軸方向における幅を狭くして、いわゆる円板状となるように構成されている。さらに、その外周面には、周方向に沿って多数の凹溝35bが形成されており、回転操作した際、滑り難い構成としている。
【0061】
このような構成では、親指Tの位置を、若干、反給電部側にずらした状態でリール本体5を把持することができるので、給電部20にかかるリール本体を回転させようとするモーメント(図19に示すように、給電部に携帯バッテリ22を装着した場合に生じる力Fや給電コードによる引張力)によるねじれ負荷に対しての把持保持バランスが向上し、操作性の向上が図れると共に、疲れ難くなる。特に、図15に示したようなシャクリ操作を行うと、上記したようなねじれ負荷がかかり易いため、操作部材35の位置を反給電部側にずらしておくことで、操作性の低下や疲労を効果的に防止することが可能となる。
【0062】
図20から図28は、本発明に係る魚釣用電動リールの第3の実施形態を示す図であり、図20は平面図、図21は操作部材の断面図、図22はハンドル側から見た側面図、図23は反ハンドル側から見た側面図、図24は後方側から見た図、図25は図20のB−B線に沿った断面図、図26は図25の主要部を拡大した図、図27は釣竿とともにリール本体を把持して操作部材を操作する状態を示す平面図、そして、図28は、リール本体を把持した状態で後方側から見た図である。
【0063】
本実施形態では、制御ケース15の後端部に配設される操作部材45を、上述した第1の実施形態と同様な略円筒形状に形成して、回転軸45aを両軸支持すると共に、その外周面に、周方向に沿って多数の凹溝45bを形成した構成としている。
【0064】
また、本実施形態では、制御ケース15の表面の一部に、操作部材45の両端の表面形状と略面一(互いの表面形状を近似させる)となるように、半円柱状の隆起部15eを形成している。この場合、その範囲について、操作時に指が強く触れる範囲(操作可能な領域)であれば良く、少なくとも、図26のP点から上方に沿ってP1点(操作部材45の最も上方となる位置)の範囲まで、略面一となっていれば良い。
【0065】
このように、操作部材45の端部に対向する部分の制御ケースの表面形状を、操作部材の端部形状に近似させることで、図27及び図28に示すように、親指Tの一部をこの部分に添え、かつ、親指の別部分を操作部材45に添えての操作ができるため、親指が痛くなることなく把持保持を安定させながら操作を確実に行うことが可能となる。従って、前記効果より、指への圧力の差や傾き度合いを考慮すると、略面一の範囲は±3mmの範囲とされていれば良い。そして、特に、これらの図に示すように、親指Tを反給電部側にシフトさせることが容易に行えるため、上記した第2実施形態と同様、給電部20にかかる力Fによるねじれ負荷に対しての把持保持バランスが向上し、操作性の向上が図れると共に、疲れ難くなる。
【0066】
なお、上記したような隆起部については、操作部材45の軸方向の少なくとも一端側に形成しておけば良い(好ましくは、反給電部側のみで良い)。また、操作部材45の支持態様によっては、リール本体5を構成する左右側板に、そのような面一状となる隆起部を形成しておいても良い。或いは、そのような隆起部を形成することなく、制御ケース15そのものを肉厚にして、操作部材45の表面形状と近似するような表面形状としても良い。
【0067】
また、本実施形態では、図26に示すように、制御ケース15に形成される誤動作防止部15cを、上述した第1の実施形態よりも長くしている(図6参照)。すなわち、誤動作防止部15cの先端位置15dを、操作部材45の最も後端側となっている位置Pまで延ばしたことで、より誤動作の発生を防止することが可能となる。
【0068】
図29から図31はそれぞれ略円筒形状の操作部材の変形例を示しており、各図における(a)は制御ケース部分を示す平面図、各図における(b)は操作部材の断面図、そして、各図における(c)は操作部材の側面図である。
【0069】
上述したように、操作部材を上述した実施形態のように略円筒形状に構成するのであれば、その略円筒形状については、種々変形することが可能である。具体的には、回転操作可能であり、その操作表面部が、左右側板と制御ケースとの間でスプールを露出させる開口に面して、サミングしている親指をそのまま延ばして当接できるような形状であれば良い。例えば、図29に示す操作部材55は、回転軸55aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって収縮した鼓形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して凹溝55bを形成している。このような構成では、親指の腹部がフィットし易いと共に、滑りが生じ難くなる。或いは、図30に示す操作部材65は、回転軸65aが両軸支持されており、その中間部分が湾曲面によって膨出した樽形状にすると共に、その周囲に、周方向に沿って連続して突起65bを形成している。このような構成では、親指の腹部が掛かり易くなって、滑り難く操作性の向上が図れるようになる。或いは、図31に示す操作部材75は、回転軸75aが両軸支持されており、円筒形状の表面の一部にレバー部75bを形成している。このような構成では、初期値(駆動モータの出力が0)となる位置を明確化することができ、また、置き竿時における揺れる船上においても、レバー部75bを摘んで操作できることから、操作性の向上が図れるようになる。
【0070】
図32から図35は、それぞれ操作部材の変形例を示しており、各図における(a)は制御ケース部分を示す平面図、各図における(b)は操作部材を後方側から見た図、各図における(c)は操作部材の側面図、そして、各図における(d)は操作部材の断面図である。なお、これらの図では、操作部材が巻き速度0のときに最も後端側となる位置に符号Pが付してある。
【0071】
上述したように、本発明の操作部材については、スプール7の上方に位置して、スプールをサミングする手の指(親指)をそのまま延ばして、矢印で示すような前後方向(略前後方向を含む)に操作できるように構成されたものであれば良く、その配置状態、支持方法、操作態様など、様々な形態にすることが可能である。例えば、図32に示す操作部材85は、板状に構成されて、その基端部に回動軸85aを装着し、この回動軸85aを制御ケース15に形成された凹部15b部分に両軸支持したものである。この場合、操作部材85を(c)で示すように、前方側に押し上げるような操作をすることで、駆動モータを増速させることが可能となっている。このような構成では、回動軸85aを中心として回動操作するため、モータ速度の微調整が行い易くなる。また、図33に示す操作部材95は、略コの字型に形成された回動軸95aを制御ケース15に形成された支持凹所15fに対して両軸支持しており、回動軸95aの中心領域に、親指がフィットし易いような柱状操作部95bを取着したものである。この場合、操作部95bを(c)で示すように、前方側に押し上げるような操作をすることで、図32に示した構成と同様、駆動モータを増速させることが可能となっている。このような構成においても、回動軸95aを中心として回動操作するため、モータ速度の微調整が行い易くなる。
【0072】
また、図34に示す操作部材105は、その中心部に回転軸105aを装着し、この回転軸105aを制御ケース15に形成された凹部15b部分に両軸支持したものである。操作部材105は、回転軸105aを中心として回転可能に構成されており、その周囲には周方向に沿って4箇所、操作突起105bが形成されている。この場合、操作部材105の操作突起105bに指の腹部を押し当て、前方に向けて回転操作することで、駆動モータを増速させることが可能となっている。このような構成では、親指の腹部が掛かりやすいため、操作性の向上が図れる。また、図35に示す操作部材115は、前後方向に沿ってスライドできるように構成したものである。具体的には、前記制御ケース15の後端側に、後方に向けて下降する傾斜面15Aを形成しておき、その傾斜面に摺動溝15Bを形成して、この摺動溝15Bに沿うようにして、スライド可能な操作部材115を配設している。この場合、操作部材115に指の腹部を押し当て、前方に向けてスライドすることで、駆動モータを増速させることが可能となっている。このような構成では、操作方向が直線状になるため、操作性の向上が図れる。
【0073】
上述した各実施形態における操作部材については、前後方向に変位可能に構成されており、サミング操作する親指の腹部で、駆動モータの出力を制御することができるように構成されていることから、従来の側板に設置されているレバータイプの操作部材と比較すると回転半径(操作径)が小さく、僅かな操作量(指の移動量)で駆動モータ8の駆動速度が急激に上昇してしまい、細かいモータ制御が難しくなる可能性がある。
【0074】
このため、前記制御部100において、上記した操作部材25,35,45…の操作範囲内において、駆動モータ8の出力を0から連続的に可変させると共に、操作部材25,35,45…の同一の操作範囲で前記駆動モータ8の可変範囲を変更可能に制御するようにしても良い。すなわち、図36のグラフで模式的に示すように、通常モードでは、(イ)に示すように、操作部材が初期位置にある状態(操作角度0°)から、最大操作角度(本実施形態では120°としてある)まで操作した際、駆動モータ8の回転速度を可変させるデューティ比の範囲を0%から100%まで連続的(段階的な変化でも良い)に可変するように制御を行う。そして、釣り人の好みにより、例えば、制御ケース15に設けられた操作ボタンを操作することで、デューティ比の範囲が可変するように制御を行う。すなわち、(ロ),(ハ)(ニ)…に示すように、デューティ比の範囲を任意に変更することで、同一の操作角度であっても、駆動モータ8の出力が急激に上昇することを防止することが可能となる。この結果、魚が掛かった場合に、急激に駆動モータ8の回転速度が急上昇することを防止することができ、口切れなどを防止することが可能となる。
【0075】
なお、図36では、操作部材の回転角度とデューティ比との関係を、説明上わかり易くするために直線の線形グラフとして示したが、実際には、操作角度の範囲内において、所定の角度ずつ複数段階(例えば0から30段階)で駆動速度が可変されるように制御されるため、両者の関係については非線形となる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、駆動モータ8の出力を制御する操作部材の構成に特徴があり、それ以外の構成については、上記した実施形態に限定されることはない。また、前記クラッチOFF切り換え部材やクラッチON切り換え部材については、その構成部材全体が釣竿とともにリール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配置されていても良いし、実際に操作が成される部位(OFF操作部、ON操作部)のみが、そのような位置に配置されていても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
8 駆動モータ
12 クラッチ機構
15 制御ケース
15c 誤動作防止部
18 クラッチOFF切り換え部材
18a OFF操作部
19 クラッチON切り換え部材
19a ON操作部
25,35,45,55,65,75,85,95,105,115 操作部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記リール0本体に配置され、前記駆動モータを制御する制御部を具備する制御ケースと、
釣竿とともに前記リール本体を把持保持した状態の手の親指が届く位置に配設され、前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、
前記スプールをフリー回転可能とするクラッチ機構と、
前記リール本体に設けられ、前記スプールがフリー回転状態から巻き取り状態となるように前記クラッチ機構をOFF状態からON状態に切り換え操作するクラッチON切り換え部材と、を有し、
前記操作部材は、前記左右側板間でスプールの上方に位置するように支持されて、前後方向に変位可能に構成されていることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記クラッチ機構をOFF状態に操作するクラッチOFF切り換え部材と、前記操作部材は、前記スプールをサミングしながら操作可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記クラッチOFF切り換え部材のOFF操作部と、前記クラッチON切り換え部材のON操作部は、釣竿とともに前記リール本体を把持した状態の手の親指が届く位置に配設されていることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部材は回転軸で支持され、前記回転軸は前記スプールの回転軸と略平行であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記操作部材は、略円筒形状に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記スプールの回転軸を基準位置とし、前記スプールに対して釣糸が50%巻回されたときの釣糸表面までの高さをH1、前記クラッチON切り換え部材の表面部における高さ方向の幅の中間点までの高さをH2、前記操作部材が巻き速度0のときに最も後端側となっている位置までの高さをH3とした場合、前記クラッチON切り換え部材と操作部材を、H1<H2<H3となるような関係に配置したことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項7】
前記制御ケースに、前記操作部材とスプールとの間で後方側に向けて突出する誤動作防止部を設けたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項8】
前記誤動作防止部は、その先端位置が、前記操作部材が巻き速度0のときに最も後端側となっている位置よりも前方側にあり、かつ前記操作部材の中心位置よりも後方側にあることを特徴とする請求項7に記載の魚釣用電動リール。
【請求項9】
前記操作部材は、前記左右側板間において両軸支持されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項10】
前記リール本体又は制御ケースは、前記操作部材の軸方向の少なくとも一端側における少なくとも操作可能な領域の表面形状と、略面一状となる表面部を有することを特徴とする請求項5から9のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項11】
前記スプールの前方側に前記駆動モータを配置すると共に、前記操作部材の中心位置を前記スプールの回転軸より駆動モータ側に配設したことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項12】
前記操作部材は、前記リール本体を平面視した際、リール脚取付け部の幅方向の中心線に対して反給電部側に配置されていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項13】
前記制御部は、前記操作部材を前方に回転操作することで駆動モータの出力が上昇するように制御することを特徴とする請求項1から12いずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項14】
前記制御部は、前記操作部材の操作範囲内において前記駆動モータの出力を0から連続的に可変させると共に、前記操作部材の同一の操作範囲で前記駆動モータの可変範囲を変更可能であることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2012−10696(P2012−10696A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97842(P2011−97842)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】