説明

魚釣用電動リール

【課題】スプールのサミング操作を行いつつ、クラッチ操作や駆動モータの巻き取り操作が容易に行える魚釣用電動リールを提供する.
【解決手段】本発明に係る魚釣用電動リールは、釣糸が巻回されるスプール7と、リール本体5に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータ8と、駆動モータ8の出力を調整する操作部材30と、スプール7を、釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換え操作するクラッチOFF切換部材18と、スプール7を、フリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換え操作するクラッチON切換部材19とを有する。そして、操作部材30の操作部30a、及びクラッチON切換部材19の操作部19aは、スプールをサミング操作している状態の指で操作可能な位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用電動リールは、主に深場の釣りに適用させるべく、仕掛けの放出から巻き取りに至るまで、釣竿を船縁に装着された竿掛けに置いたままの状態で行えるように構成されたものが多いが、最近では、手持ち状態で操作が行えるように工夫されたものが知られている。
【0003】
例えば、魚釣用電動リールのスプールを巻き取り操作する(モータ出力を連続的に可変操作する)ための操作部材を、様々な位置に配置することが知られている。例えば、特許文献1には、回転式の操作部材をリール本体の後方の左右側板間に前後方向に回転可能に支持したもの、或いは、スライド式の操作部材をカウンターケースの後方に左右方向に移動可能に支持したものが開示されている。また、特許文献2には、制御ケースの上面から円板状の回転摘み(操作部材)の一部を露出させ、上方から親指を押し付けながら回転操作することで、モータ出力を連続的に可変させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−169700号
【特許文献2】特開2003−92959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、最近の魚釣用電動リールでは、ルアーフィッシングに用いられる魚釣用(ベイトキャスティング)リールと同様、手持ち状態で操作することが可能なタイプも望まれているが、従来のモータ出力を調整する操作部材の配置を工夫した魚釣用電動リールでは、操作性の面でさらに改良すべき余地がある。具体的には、単なる仕掛けの上げ下ろしのスピーディさは勿論のこと、特に、トラブルなく魚のいる棚(例えば、海底から5〜15m)に、精度良く狙ったスピードで落下、停止できることが望ましく、そのような操作を行うためには、スプールの回転が一瞬でも制御できなくなるのは好ましくない。
【0006】
すなわち、通常、スプールに対しては、リール本体を把持している側の手の親指でサミング操作をしてスプール回転を制御する操作が行われるが、サミング操作しながらクラッチOFF操作すると、クラッチOFF操作部材に指をシフトした際、サミング状態が解除されてスプールが釣糸放出方向に過回転してバックラッシュするおそれがある。また、仕掛けを上記した棚に正確に停止するには、サミング操作しながらクラッチON操作する必要があるが、クラッチON操作部材に指をシフトした際、サミング状態が解除されてスプールが釣糸放出方向に過回転して、狙いの棚に停止できなくなる可能性がある。そして、このようなケースでは、棚取りの修正や外道(対象魚以外の魚)に先にエサを食われてエサがなくなる等、大事な機会を逃すことになる。
【0007】
また、従来の構成では、クラッチON状態でモータ出力操作部材に指をかけながらサミング操作をしつつ魚信をとり、魚信があったときにそのまま巻き取り操作を行う、という操作を考慮したものではなかった。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、スプールのサミング操作を行いつつ、クラッチ操作や駆動モータの巻き取り操作が容易に行える魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用電動リールは、リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、前記スプールを、釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換え操作するクラッチOFF切換部材と、前記スプールを、フリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換え操作するクラッチON切換部材と、を有しており、前記操作部材の操作部、及びクラッチON切換部材の操作部は、前記スプールをサミング操作している状態の指で操作可能な位置に配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記した構成の魚釣用電動リールでは、クラッチON切換部材は、その操作部がスプールをサミングした状態で操作することが可能であるため、仕掛けを放出している状態(クラッチOFFで仕掛けが落下している状態)において、クラッチをONするまではサミング操作して釣糸の放出状態を調整することができ、狙った棚に意図したスピードで落下させ、かつ停止することが可能となる。また、クラッチON状態でサミング操作をすると魚信が感知し易いが、上記のように、モータの出力を調整する操作部材の操作部に指を当接させながら魚信を待つことが可能であるため、魚信があった場合、直ちに巻き取り操作が行えるようになる。特に、シャクリ操作において、釣竿を上げた際の魚信の感知と、そのままの(合せを兼ねた)巻き取り操作がスムーズに行えるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スプールのサミング操作を行いつつ、クラッチ操作や駆動モータの巻き取り操作が容易に行える魚釣用電動リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図2】図1に示した魚釣用電動リールを後方側から見た後面図。
【図3】内部機構が部分的に示される図1に示す魚釣用電動リールの平面図。
【図4】図1に示した魚釣用電動リールの内部駆動機構を側方から見た概略図。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図。
【図6】(a)〜(i)を含み、仕掛けを放出した後の一般的な操作を順に説明する図。
【図7】クラッチON状態を示す図。
【図8】図7に示すクラッチON状態からクラッチOFF状態に切換える動作を示す図。
【図9】クラッチOFF状態でサミング操作している状態を示す図。
【図10】クラッチOFF状態において、サミング操作しながら、クラッチON切換部材に指を当接した状態を示す図。
【図11】図10に示すクラッチOFF状態からクラッチON状態に切換える動作を示す図。
【図12】クラッチON状態でサミング操作しながら、操作部材に指を当接した状態を示す図。
【図13】サミング操作することなく、操作部材を操作する動作を示す図。
【図14】サミング操作することなく、上方側から指を当接して操作部材を操作する動作を示す図。
【図15】サミング操作しながら操作部材を操作する動作を示す図。
【図16】サミング操作しながらクラッチOFF状態にして仕掛けの落下速度を調整する動作を示す図。
【図17】図14に示す状態の平面図。
【図18】図11に示す状態の平面図。
【図19】指でクラッチON切換部材と操作部材を同時に触れた状態を示す平面図。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図21】図20のB−B線に沿った断面図。
【図22】図21に示した魚釣用電動リールの内部駆動機構を側方から見た概略図。
【図23】図22を矢印方向から見た図であり、(a)は、クラッチON切換部材の概略図、(b)は、クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す図。
【図24】クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す平面図。
【図25】サミング操作しながら、クラッチON切換部材に指を当接し、クラッチOFF状態からクラッチON状態に切換える動作を示す図。
【図26】本発明の第3の実施形態に係る魚釣用電動リールの平面図。
【図27】図26に示した魚釣用電動リールを後方側から見た後面図。
【図28】図26に示した魚釣用電動リールの内部駆動機構を側方から見た概略図。
【図29】図28に示したソレノイドの動作を示す図であり、(a)はクラッチOFFの状態を示す図、(b)は、クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す図、(c)は、クラッチONの状態を示す図。
【図30】指でクラッチON切換部材と操作部材を同時に触れた状態を示す平面図。
【図31】サミング操作しながら、クラッチON切換部材に指を当接し、クラッチOFF状態からクラッチON状態に切換える動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について説明する。
図1から図5は本発明の第1の実施形態を示す図であり、図1は平面図、図2は図1に示した魚釣用電動リールを後方側から見た後面図、図3は内部機構を部分的に示した平面図、図4は内部駆動機構を側方から見た概略図、そして、図5は図1のA−A線に沿う断面図である。
なお、以下の説明において、前後方向、左右方向、上下方向は、図1及び図2に記載の方向と定義する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る魚釣用電動リール1は、左右のフレーム3a,3bに左右カバー4a,4bを取着して構成される左右側板5A,5Bを具備したリール本体5を有している。リール本体5を構成する一方の側板(右側板5B)側には、巻取り操作される手動ハンドル6が設けられており、左右側板5A,5B間には、釣糸が巻回されるスプール7がスプール軸7a(図5参照)を中心に回転可能に支持されている。また、本実施形態では、図3から図5に示すように、スプール7の前方側における左右側板5A,5B間に駆動モータ8を保持しており、スプール7は、手動ハンドル6の巻取り操作および駆動モータ8の回転駆動によって、動力伝達機構10を介して釣糸巻取り方向に回転駆動される。
【0015】
なお、駆動モータ8については、スプール7の内部に設置する構成であっても良いが、本実施形態のように、スプール7の前方に設置することで、スプール7の糸巻き量を確保しつつ、リール本体5を可及的にコンパクト化することが可能となる。また、動力伝達機構10については、駆動モータ8の回転駆動力を減速してスプール7側に伝達する機能(減速機構102および伝達ベルト101(図3参照)などによって果たされる)、駆動モータ8が回転駆動しても手動ハンドル6を連れ回しさせない機能や手動ハンドル6の逆回転を防止する機能(ラチェット104を含む)などを備えた公知のものによって構成することが可能である。また、そのような動力伝達機構10については、左側板5A側に配設されていても良いし、右側板5B側に配設されていても良く、或いは、左右側板それぞれに振り分けて配設されていても良い。なお、図中(特に図3)、符号116は、ハンドル6に結合されたハンドル軸、符号118は、ハンドル軸116に回転可能に支持されたドライブギヤ、符号120は、ドライブギヤ118に噛合するピニオンであり、これらは前述した動力伝達機構10を構成する。また、図中、符号125は、魚釣時にスプール7から釣糸が繰り出された際にスプール7の回転にドラグ力を付与する公知のドラグ機構であり、リール本体5とハンドル6との間には、ドラグ機構125によるドラグ力の調整を行なうための星型のドラグ調整ノブ(スタードラグ)139が設けられている。
【0016】
また、スプール7の前方の左右側板5A,5B間には、スプール7に対して均等に釣糸を巻回する機能を備えた公知のレベルワインド機構142(図4および図5参照)が設置されている。さらに、リール本体5を構成する左右側板5A,5B間のスプール7の上方には、駆動モータ8を制御する制御部100(制御基板100A,100Bを有する)を収容した箱型の制御ケース15が配設されている。本実施形態の制御ケース15は、リール本体を構成する左右側板5A,5Bの表面と面一状になるように構成されており、前後方向の長さ寸法が左右方向の長さ寸法よりも長く設定されている。
【0017】
また、リール本体5内には、前記ピニオン120を軸方向に移動させてスプール7を釣糸巻き取り状態/フリー回転状態に切り換える公知のクラッチ機構17(図3及び図4参照)が配設されている。このクラッチ機構17は、動力伝達機構10に介在されて手動ハンドル6および駆動モータ8からの動力伝達を継脱する機能を備えており、本実施形態では、右側板5B側に設置されている。
【0018】
前記クラッチ機構17は、前記右フレーム3bに回動可能に支持された公知のクラッチプレート17aを備えており、このクラッチプレート17aには、動力伝達をON状態からOFF状態に切り換える(スプールを釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換える)クラッチOFF切換部材18が係合している。本実施形態におけるクラッチOFF切換部材18は、スプール7をサミングしながら操作が可能となる位置、具体的には、スプール7の後方側の左右側板5A,5B間に橋設された構成となっており、図5に示す状態から、その表面となる操作部(クラッチOFF部)18aに親指を載置して下方に押し下げ操作することで、クラッチ機構17をON状態からOFF状態に切り換えるよう構成されている。すなわち、クラッチOFF切換部材18は、図15に示すように、クラッチON状態において、リール本体を把持している状態の手の指(親指T)でスプール7をサミングし、かつ操作部18aに載置してクラッチOFF操作ができるように配置されている。この場合、クラッチOFF切換部材18は、クラッチプレート17aと右フレーム3aとの間に設けられた振り分け保持バネ200によって、クラッチON位置(図7参照)とクラッチOFF位置(図8参照)との間で振り分け保持される。換言すれば、クラッチOFF切換部材18の押圧操作によって、前記クラッチプレート17aは、クラッチON位置とクラッチOFF位置との間で回動し、各々の位置で振り分け保持バネ200によって振り分け保持される。公知のように、クラッチプレート17aがクラッチOFF位置に回動されると、その表面に形成された一対のカム17bが前記ピニオン120に係合しているアーム部材17cを軸方向に移動させ、これによりピニオン120とスプール軸7aとの動力伝達状態を解除する(クラッチOFF状態)。
【0019】
また、動力伝達をOFF状態からON状態に切り換える(スプールをフリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換える)クラッチON切換部材19は、上記クラッチプレート17aをクラッチOFF位置からクラッチON位置に回動させるように機能する。このクラッチON切換部材19は、その操作部(クラッチON部)19aが、スプール7をサミングしている指(親指)が届く位置、すなわち、親指の腹部でスプールの表面を押し当てている状態のまま、それ以外の部位で操作ができるように構成されていれば良く、本実施形態では、スプール7の上方で左フレーム3aの内面から突出するとともに、その内面に沿って移動可能に配設されている。具体的に、操作部19aは、図1に示すように、制御ケース15の後端15aの左側板側において、左フレーム3aから内側に向けて突出するように配設されており、この操作部19aは、前記クラッチOFF切換部材18と一体的に連動するように構成されている。すなわち、クラッチON切換部材19は、左フレーム3aに配設され、スプール7のフランジ7bの径方向外側で円弧状に移動可能な連結部19bを備えており、この連結部19bには、その一端側に前記操作部19aが、他端側に前記クラッチOFF切換部材18の左側板側の端部が一体的に連結されている。
【0020】
このため、図5の矢印D3で示すように、前記クラッチOFF切換部材18の操作部18aを押圧操作すると、前記クラッチON切換部材19の操作部19aは、矢印D4で示すように、円弧状に移動する連結部19bとともに、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動する(図7及び図8参照)。そして、クラッチOFFで切り換え保持される位置は、図10に示すように、側面視した際、クラッチOFF切換部材18の操作部18aに親指Tの根元側腹部を載置して中間腹部でスプール7をサミングでき、かつ、先端部で、クラッチON切換部材19の操作部19aに当接できる位置に設定されている。
【0021】
前記クラッチON操作部材19の操作部19aの形状については、特に限定されることはないが、ブロック状でクラッチOFF切換部材18側に面する領域に凹所19cを形成しておくことが好ましい。これにより、凹所19c内に指先を安定して押し付けることができ、そのままクラッチON位置に向けて回動操作し易くなる(図11参照)。なお、クラッチON位置に向けて回動操作する際、前記振り分け保持バネ200のデッドポイントを超えると、操作部19aは、図5及び図7で示す位置に振り分け保持される。
【0022】
前記リール本体5には、駆動モータ8に対して電力を供給するための給電部20が設けられている。この給電部20は、左側板5Aの前方側の下面領域に形成されており、この給電部20に対しては、着脱可能な携帯バッテリ(図示せず)を装着したり、或いは、足元に置いたバッテリや釣り船に設置されている電源部から電力供給される給電コードが装着される。
【0023】
前記制御ケース15は、図5に示すように、スプール7の上方で、その支軸(この支軸としては、本実施形態ではスプール7の外側に駆動モータ8が配置されているためスプール軸7aが該当するが、スプール7の内部に駆動モータ8が配置される別の形態ではスプール軸7aが存在しないためモータ8の回転軸が該当する)近傍からレベルワインド機構142および駆動モータ8を覆うような大きさを備えている。
【0024】
また、制御ケース15の後方部分には、駆動モータ8の出力を調整するモータ出力操作部材30(以下、単に操作部材と称する)が配置されている。本実施形態の操作部材30は、スプール7(スプール軸7a)の上方で制御ケース15の中央部分(左右側板5A,5Bの間の中心領域)に設置され、制御ケース15の後方に回転可能に支持された支軸(回転支軸)31に設けられている。具体的には、制御ケース15の後方側には、その中央領域に、制御ケース15の後端15aから前方側に向かって延び、制御ケース15の後端で開口した凹陥部(開放部)15Aが設けられており、この凹陥部15Aを横切るようにして前記支軸31が回転可能に支持されている。前記支軸31は、前記スプール7の支軸(スプール軸7a)の上方側において、略平行でその両側が制御ケース15に対して回転可能に支持された状態となっており、操作部材30は、支軸31の中央部において、凹陥部15A内に納まるように設置されている。なお、制御ケース後方の中央領域(左右側板間の中心領域)に設置される操作部材30の軸方向長さについては、親指の幅程度(8〜25mm)あれば良い。
【0025】
前記操作部材30は、下側から回転操作(スプールをサミングしている親指を伸ばして押し上げるような回転操作;図15参照)することが可能であり、かつ、上方からリール本体を押さえ付けた状態でも操作性が良好となるように(図14参照)、略円筒形状に構成されており、その両端が前記支軸31によって、制御ケース15に対して回転可能に両軸支持された状態となっている。具体的には、その外表面(回転表面となる操作部30a)が、左右側板間で、スプール7を露出させる開口領域に面するように支持されており、リール本体を把持保持した状態で、実際に操作する方向は、略前後方向D1となる成分、及び略上下方向D2となる成分を含むように支持されている(図1及び図2参照)。
【0026】
このため、凹陥部15Aに収容されるように設置された略円筒形状の操作部材30に対しては、スプール7上のどの位置でサミング操作していても、その指(親指T)を、支障なくスムーズに操作部30aに当て付けることができると共に、制御ケース15の表面に載置していても操作部30aに当て付けることができ、容易に回転操作(モータの出力調整操作)することが可能となる。また、操作部30aが左右側板5A,5Bの中央領域に位置することで、リール本体5の重心に対する把持位置のバランスが良くなり、操作性が良く、疲れ難い構成とすることが可能となり、右手、左手のどちらの手で把持しても共通の感覚が得られるようになる。
【0027】
なお、本実施形態では、図19に示すように、サミングしている状態の親指Tで、操作部30aと前記クラッチON切換部材19の操作部19aを同時に触れることができるような配置関係となっている。また、本実施形態では、前記操作部材30、前記クラッチON切換部材19、及び前記クラッチOFF切換部材18は、それぞれの操作部30a,19a,18aがリール本体を側面視した際に前方から順に配置された状態になっている。
【0028】
前記操作部材30の略円筒形状とは、内部が中実であっても良いし、全体或いは部分的に空洞部があるものを含む概念である。また、その外形状については、正確な円筒形状は勿論、周囲に凹凸が形成されていたり、指でつまんだり、当て付けることが可能な突起部が形成されたものであっても良い。或いは、軸方向の中間部分が膨出していたり、窪んでいるなど、軸方向に親指の腹部が当接できて回転操作ができるような外形状を備えたものであっても良い。また、略円筒形状に構成された操作部材30については、その操作部30aが制御ケース15の表面から部分的に突出していても良いし、制御ケース(リール本体)との間で、少なくとも一端側の回転表面が略面一状にされていても良い。
【0029】
また、前記制御ケース15に、操作部材30とスプール7との間で、操作部30aの下方を覆うように、保護カバー(誤動作防止部材)15bを設けておくことが好ましい。このような保護カバー15bを設けておくことで、釣糸を巻き取り操作する際、釣糸に付着したゴミや海水が操作部30aに当たることを防止して、誤動作が生じることを防止することが可能となる。この場合、保護カバー15bは、制御ケースと一体部品であっても良いし、金属の薄板材などを制御ケースに接合しても良い。
【0030】
前記支軸31には、操作部材30の操作角度を検知する検知手段、具体的には、支軸の右端部に角度センサ130が設置されている(設置位置は任意である)。この角度センサ130は、制御ケース15内に設けられた収容部133にシールされた状態で組み込まれており、支軸31の回転位置に応じた操作位置信号を出力する。すなわち、角度センサ130は、操作部材30の操作位置に応じて操作信号を出力し、駆動モータ8の出力は、操作部材30の操作位置に応じて調整することが可能となっている。
【0031】
なお、上記したように、前記支軸31は、前記スプール7の支軸(スプール軸7a)と略平行となるように回転可能に支持されているため、前記操作部材30は、略前後方向(釣竿の方向;矢印D1に示す方向)に変位できるようになっている。また、操作部材30は、リール本体を把持した状態で操作することから、操作部材30に親指Tを当接させた際、親指の位置が大きく横にずれることがなく、リール本体の重心や給電部20にかかる力(給電コードに引っ張られる力や携帯バッテリの重量負荷などで、釣竿の長手軸を中心に回転負荷による力)によるねじれ負荷に対し、操作性が低下したり疲れ易くなることがなくなる。この場合、操作部材30を回転させた際の指(親指T)の位置の横方向のずれを考慮すると、上記した略平行の範囲については、スプール7の支軸に対して±30°の範囲内であれば良い。すなわち、±30°の範囲内であれば、リール本体5を把持保持した状態で、操作部材30を自由に回転しても、指(親指T)の位置が横方向にずれ難くなり、リール本体を把持保持した際のバランスが悪くなることがなくなる。
【0032】
また、本実施形態のリール本体5は、釣竿とともに片手で把持して操作可能な大きさに構成されており、上記したような回転可能な操作部材30は、リール本体5を、竿取付部5aを介して釣竿に装着した際に、釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態の手の親指Tが届く位置に配設されている(図17参照)。
【0033】
上記した制御ケース15には、図5に示すように、駆動モータ8の駆動を制御する制御部100が収容されており、操作部材30の回転操作量に応じて駆動モータ8の出力を調整するようになっている。この場合、制御部100は、操作部材30を前方に向けて回動操作することで、駆動モータ8の出力が上昇するように設定されている。これにより、釣糸の巻き取りをする際、サミングしている親指Tをそのまま前方に延ばして、操作部材30を押し上げるような操作をすることで釣糸の巻き取り操作が行えるようになり、指の動きが単純化され、一連の探り操作をする際の操作性の向上が図れるようになる。
【0034】
前記操作部材30の回転操作量と駆動モータ8の出力との関係については任意である。本実施形態では、操作部材30が、ある位置を基準位置としてモータの出力値0とし、そこから前方に回転操作した際、モータ出力が増速するように設定されている。すなわち、前方方向に向けて操作した際に増速とすることで、釣竿とリール本体を持つ手に負荷がかかる高速巻き取り時に、より前方を把持できるので、把持保持性が高くなり、操作性が良く、疲れ難くなる(操作回転角度については特に限定されないが、120°程度あれば良い)。
【0035】
なお、操作部材30については、後方に向けて回転操作した際に、駆動モータ8の出力が上昇するように設定しても良い。このような構成によれば、スプール7をサミングしている親指の第一関節を折り曲げる動作をするだけで、サミング操作をONからOFFにすると同時に、操作部材30を手前側に回転操作(駆動モータの増速回転)することができ操作性の良い構成となる。
【0036】
前記制御ケース15の表面には、繰り出された釣糸の長さ(糸長情報)などを表示する表示部(液晶表示部)16が設けられており、また、その周囲には、各種の情報が設定可能な複数の操作ボタン16a,16bが配設されている。なお、本実施形態において、操作ボタン16a,16bは、図1に示されるように、制御ケース15の上面において、表示部16と操作部材30との間で、且つ釣竿とともにリール本体5を把持保持した状態で親指が届く位置とされている。
【0037】
前記制御ケース15に収容される制御部100は、魚釣用電動リールの動作を制御するCPU(Central Processing Unit)等を実装した制御基板(マイクロコンピュータ)100A、及び各種駆動回路を実装した回路基板100Bを備えており、これらは、省スペース化のため、表示部16の下方で上下方向に重なるように配置されている。すなわち、前記制御基板100Aは、操作部材30の支軸31の操作角度に応じて操作位置信号を出力する前記角度センサ130、スプール7に巻回されている釣糸の繰り出し量を検知することが可能な糸長計測装置、制御ケース15上に設けられた液晶表示部16に対して各種の情報を表示させる表示制御回路、制御ケース15上に設けられた操作ボタン16a,16b、及び駆動モータ8の出力を停止状態から高出力値まで連続的に増減調整するモータ駆動回路との間で信号の送受信を行い、魚釣用電動リールの動作を制御する。
【0038】
次に、上記した構成の魚釣用電動リールを用いて、実際に船釣りをする際の動作(コマセ釣りを例にして説明する)について図6、及び図7から図19を参照して説明する。なお、以下に例示する一連の魚釣り操作は、釣竿とともにリール本体を把持した手持ち状態で行うことが可能である。
【0039】
最初、釣竿とともにリール本体5を把持している手の親指Tで、スプール後方側に配設されているクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで、クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換える(図7,図8参照)。クラッチ機構をON状態からOFF状態に切り換えると、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは、図6(a)から(b)に示すように落下する。このとき、クラッチON切換部材19は、連結部19bとともに、スプール7のフランジ7bに沿うように円弧状に移動し、その操作部19aは、スプール7をサミングしている状態で押圧できる位置に停止する(図8から図10参照)。また、仕掛けが落下して着底(所定の棚に到達)するまでは、バックラッシュが生じ易いものの、リール本体5を把持している親指Tを、そのままクラッチOFF切換部材18の操作部18aから釣糸表面に延ばしてサミングすることで、バックラッシュを防止することが容易に行える(図9参照)。
【0040】
この場合、図10に示すように、操作部18aに親指を載置した状態でサミング操作できるため、クラッチOFFに切り換え操作した一瞬に釣糸Sが落下して棚が狂ってしまうようなこともない。また、仕掛けを投入する際、サミングしながらクラッチOFFできるので、操作部18aに指を掛けた瞬間に釣糸Sが急速に出てバックラッシュすることもない。さらに、特定の棚で魚信を待っているときにおいても、直ぐに、意図する棚へ意図するスピードで仕掛けを落下することができる。なお、サミングは、図10に示すように、スプールに巻回された釣糸Sに、直接、親指の腹部を押し当てても良いし、指の側部でスプールのフランジに接触させても良い。
【0041】
仕掛けが着底したり、所定の棚まで落下した際(通常、糸巻量は、ほぼ半分程度となるように設定されている)、サミングしている状態の親指をそのまま前方に伸ばして、クラッチON切換部材19の操作部19aを押し上げるように操作することで、容易にクラッチONに切り換えることが可能となる(図6(c)及び図10,図11参照)。このとき、サミングしたままの状態でクラッチON操作が行えるため、サミングが離れて釣糸Sがずり落ちるようなこと(棚が狂ってしまうこと)はない。
【0042】
また、本実施形態では、スプール7のフランジ側にクラッチON切換部材19の操作部19aを配置しているため、特に、糸巻量が少ない状態の場合、図18に示すように、フランジ7bを直接サミングした状態からクラッチON操作が行い易くなる。さらに、本実施形態では、図19に示すように、操作部19aは、サミングしている状態の親指Tで、操作部材30の操作部30aと同時に触れることができるため、両者の間でスムーズな移行操作ができ、特に、暗い状態での操作や、クラッチをONして直ちに魚信があった場合など、迅速に巻き取り操作に移行することが可能となる。
【0043】
仕掛けが所定の棚(魚がいる下層域)まで落下した後、図6(d)に示すように、釣竿を上下に振ってコマセ振りを行う。このとき、図12に示すように、親指Tをサミングした状態で魚信感知することが可能となり、魚信感知しながら次のアクション(探り操作、巻き取り操作、アオリ操作など)を待機することができる。なお、図12で示すサミングした状態での魚の魚信は、クラッチON状態であっても、スプールと逆転防止機構の間にギヤが複数噛合しているため、スプールは回転方向に遊度があり、その遊度を利用して感知することが可能となっている。また、図6(d)に示すコマセ振りを行うときは、しっかりとリール本体5を把持した状態で魚信を感知しながら実施することができる。さらに、魚の魚信を待つのであれば、図12に示したように、サミングしながら操作部材30の操作部30aに親指Tを当てておくことができるため、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。
【0044】
実際に探り操作をする場合、魚のいる棚を集中的に探るように、例えば、図6(d)から図6(f)で示すように実行される。すなわち、図6(d)に示すように、コマセカゴを振ってコマセを放出した後は、棚の上層域まで低速巻き取り駆動操作してエサをコマセ放出領域まで巻き上げる(図6(e)参照)。このとき、仕掛けの巻き取り駆動は、図12に示すように、サミングしたままの状態で親指Tの先端を操作部材30の操作部30aに当て付け、操作部材30をそのまま回転させることで行うことが可能である。或いは、図13に示すように、サミング操作することなく、操作部材30を下側から上側に向けて転がすようにして親指を移動させても良いし、図14及び図17に示すように、リール本体を掌全体で保持している状態で、上方から押し付けて操作部材30を回転させて巻き上げ操作することも可能である。なお、図12で示す状態で、シャクリ操作をしているときに魚信があれば、瞬時に図13や図14に示すように、操作部材30を操作してフッキングすることも可能である。
【0045】
そして、棚の上層域まで仕掛けを巻き上げた後、再び仕掛けを所定の棚(魚がいる下層域)まで落下させる(図6(f)参照)。この操作は、操作部材30に親指Tの先端側を当てながらそのまま後方にずらして、駆動モータ8の駆動をOFFにし(図15参照)、さらに、そのまま親指Tの根元側でクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げ操作することで行うことが可能である(図16参照)。このとき、スプール7はフリー回転状態となり、仕掛けは急速に落下するものの、図16に示すように、そのまま親指Tの腹部でサミングすることができるため、その落下速度を容易に調整したり、仕掛けを所望の量だけ容易に落下させたり、緩急をつけた誘い落下することも可能となる。
【0046】
そして、図6(d)から(f)に示すような一連の操作(探り操作)においては、仕掛けの巻き取り(駆動モータの巻き取り駆動)、駆動モータの停止、クラッチOFF、クラッチONの各操作が繰り返されるが、このような各操作は、上記したように、サミングしている親指Tを、そのまま前方にずらして巻き取り操作/駆動停止操作が行え、かつ、後方にずらしてクラッチOFF、さらに、前方に伸ばしてクラッチONできるため、上記のような一連の探り操作を、魚信を感知しながらスムーズかつ素早く行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態では、上記したように、クラッチONをする操作部19aと、モータ出力を調整する操作部30aは、共にスプール上方に配設されているため、指先での操作が容易に行え、操作性が良いと共に、図19に示すように、親指Tを両方に当接した状態にもできるため、スムーズな操作が行える。また、操作部材30、クラッチON切換部材19、及びクラッチOFF切換部材18は、それぞれの操作部がリール本体を側面視した際に前方から順に配置されているため、図9から図14に至る一連の操作において、親指Tの動きが一方向(後方から前方)に統一されるため、指の動きが単純となって操作性が高くなる。特に、デリケートな操作が求められるもの(モータの出力調整操作)ほど、前方側の方が、指先が使えて好ましく、デリケート感よりもパワーが必要なクラッチOFF操作については、手元側に操作部18aがあるため、力が入り易く操作し易くなる。また、上下方向に関しても、一方向(下から上)となっているため、操作性が良好となる。
【0048】
さらに、所定の棚位置にある状態において、図6(g)に示すような釣竿を上下に振るシャクリ操作や駆動モータを巻き上げながらのシャクリ操作、或いは、誘い操作を行って仕掛けを上昇させる操作を行うこともあるが(図6(h)参照)、このようなシャクリ操作(誘い操作)をしながらの駆動モータの巻き上げ駆動は、図12から図14で示すような態様で行うことが可能である。特に、巻き上げ駆動は、図12に示すようなサミング操作をすることが容易であるため、魚信も感知し易く、魚信があった場合は、直ちに巻き取り操作に移行することが可能となる。さらに、図6(i)で示すように、釣竿を高くシャクリ上げたときに魚信があっても、直ちに、図12から図14に示すように、操作部材30に当接する親指Tを移動して、そのまま巻き取り操作することでフッキングすることが可能となる。そして、魚をフッキングした後は、そのまま親指Tを側方にシフトして制御ケース15を押さ付けるようにしてリール本体を把持保持することもでき、安定した状態で釣竿を操作することが可能となる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、クラッチON切換部材19は、その操作部19aがスプールをサミングした状態で操作することが可能であるため、仕掛けを放出している状態(クラッチOFFで仕掛けが落下している状態)において、クラッチをONするまではサミング操作して釣糸の放出状態を調整することができ、狙った棚に意図したスピードで落下させ、かつ停止することが可能となる。これにより、外道にエサを食われたり、棚を修正する作業をする必要がなくなって機会ロスをなくすことができる。また、クラッチON状態で、サミング操作して魚信を感知しながら、操作部材30の操作部30aに指を当接させておくことができるため、魚信があった場合、直ちに巻き取り操作が行えるようになる。特に、シャクリ操作で釣竿を上げた際、そのままの巻き取り操作することで合わせ操作が行えるようになる。
【0050】
図20から図25は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、図20は、平面図、図21は、図20のB−B線に沿った断面図、図22は、内部駆動機構を側方から見た概略図、図23は、図22を矢印方向から見た図であり、(a)は、クラッチON切換部材の概略図、(b)は、クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す図、図24は、クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す平面図、そして、図25は、サミング操作しながら、クラッチON切換部材に指を当接し、クラッチOFF状態からクラッチON状態に切換える動作を示す図である。
なお、以下に説明する実施形態では、クラッチON切換部材の構成が異なっており、それ以外については、上記した第1の実施形態と同様に構成されているため、第1の実施形態と同一の構成部材については同一の参照符号を付し、詳細な説明については省略する。
【0051】
本実施形態のクラッチON切換部材50は、右側板5B側に配設されており、機械式で押しボタン方式となっている。クラッチON切換部材50は、右フレーム3bの内面からスプール軸方向に突出する操作部(押しボタン)50aを備えており、この操作部50aは、リール本体を側面視した際、スプール7のフランジ7bの径方向外側で、操作部材30の操作部30aと、クラッチOFF切換部材18の操作部18aとの間に配設されている(図21参照)。すなわち、操作部50aは、図24及び図25に示すように、サミングしながらクラッチON操作が可能となるように、サミングしている親指Tをそのまま右側板側にずらすだけで押圧操作できる位置に配設されている。
【0052】
図23に示すように、前記操作部50aは、右フレーム3bに形成された貫通孔3dから突出しており、右フレームに対して片持ち状態で併設された係止板51と係合状態となっている。すなわち、操作部50aは、右フレーム3bの裏面に設置された収容ケース52に、バネ53を介在させて、常時、突出する方向に付勢された状態で右フレーム3bに支持されている。操作部50aには、軸方向に突出するピン状の係合部50bが一体形成されており、係合部50bは、前記係止板51に対して係合状態となっている。また、片持ち支持された前記係止板51の自由端側には、外側に傾斜面51aを有する係止爪51bが形成されており、この部分に、クラッチプレート17aの回動アーム17dの突起17fが係合するようになっている。この場合、回動アーム17dは、クラッチ機構17を構成するクラッチプレート17aと一体化されており、右フレーム3bとの間で配設された引張バネ200aによって、常時、クラッチON方向側に回動付勢されている(図22参照)。なお、回動アーム17dと引張バネ200aは、クラッチプレート17aをクラッチON位置とクラッチOFF位置に振り分け保持する機能を有する。
【0053】
上記したクラッチON切換部材50は、図22で示す状態からクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げてクラッチOFFにすると、クラッチプレート17aが引張バネ200aの付勢力に抗して反時計方向に回動し、回動アーム17dの突起17fが傾斜面51aを経由して係止爪51bと係合する(図23(a)参照)。これにより、クラッチOFF状態が維持される。そして、この状態で、操作部50aを、バネ53の付勢力に抗して押圧操作すると、図23(b)に示すように、係合部50bが軸方向に入り込んで、前記係止板51を撓ませ、回動アーム17dの突起17fと係止板51の係止爪51aとの係合を解除する。これにより、回動アーム17d(クラッチプレート17a)は、引張バネ200aの付勢力によって、図22に示すクラッチON位置に復帰する。
【0054】
このようなクラッチON切換部材50によれば、上記した実施形態と同様な作用効果が得られると共に、図24及び図25に示すように、サミングしている指をそのまま右側板側にシフトするだけで、クラッチON操作ができ、図6に示した一連の操作をスムーズに行うことができる。
【0055】
図26から図31は、本発明の第3の実施形態を示す図であり、図26は、平面図、図27は、後面図、図28は、内部駆動機構を側方から見た概略図、図29は、図28に示したソレノイドの動作を示す図であり、(a)はクラッチOFFの状態を示す図、(b)は、クラッチON切換部材を押圧操作したときの状態を示す図、(c)は、クラッチONの状態を示す図、図30は、指でクラッチON切換部材と操作部材を同時に触れた状態を示す平面図、そして、図31は、サミング操作しながら、クラッチON切換部材に指を当接し、クラッチOFF状態からクラッチON状態に切換える動作を示す図である。
【0056】
本実施形態のクラッチON切換部材60は、制御ケース15に配設されており、電気式で押しボタン方式となっている。クラッチON切換部材60は、制御ケース15の後端15aの左側板側に、後方に向けて突出する操作部(押しボタン)60aを備えており、この操作部60aは、操作部材30の操作部30aとの間でスムーズな移行操作(特に、暗い中でのスムーズな移行操作)が可能となるように、図30に示すように、スプールの上方で、操作部30aと同時に接触できるように配設されている。また、操作部60aは、図31に示すように、サミングしながらクラッチON操作が可能となるように、サミングしている親指Tをそのまま上方側にずらすだけで押圧操作できる位置に配設されている。
【0057】
前記操作部60aは、ソレノイド61のスイッチとなっており、押圧するとソレノイド61のプランジャ62が突出するようになっている。クラッチ機構17を構成するクラッチプレート17aには、回動アーム17hが一体形成されており、この回動アーム17hは、右フレーム3bとの間で配設された振り分け保持バネ200によって、クラッチプレートと共にクラッチON位置とクラッチOFF位置に振り分け保持されている。
【0058】
前記ソレノイド61は、プッシュ型として構成されており、操作部60aを押圧操作するとプランジャ62が突出し、クラッチOFF位置に回動したクラッチプレート17aの回動アーム17hを押圧するようになっている(図29(a)(b)参照)。すなわち、上記したクラッチON切換部材60は、図28で示す状態からクラッチOFF切換部材18の操作部18aを押し下げてクラッチOFFにすると、クラッチプレート17aが振り分け保持バネ200のデッドポイントを超えて、図29(a)で示すクラッチOFF位置に振り分け保持され、ソレノイド61のプランジャ62に係合可能な位置に保持される。そして、この状態で、操作部60aを押圧操作して通電させると、図29(b)に示すように、プランジャ62が回動アーム17hを押圧し、クラッチプレート17aをクラッチON位置に向けて回動させ、振り分け保持バネ200のデッドポイントを超えると、図29(c)に示すように、クラッチON位置に復帰する。
【0059】
このようなクラッチON切換部材60によれば、上記した実施形態と同様な作用効果が得られると共に、操作部材30の操作部30aとの同時接触を可能にすることができるため、両部材の間でスムーズな移行操作が行える。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、クラッチON切換部材が、スプールをサミングしながら操作できる位置に配設されていれば良く、クラッチONするための構成については、上述した実施形態で説明した方式以外にも適宜変形することが可能である。例えば、機械式の場合、クラッチOFF切換部材とギヤトレイン等の機械的要素により、連動する構成であっても良い。また、電気式の場合、駆動モータ8を利用した公知の方法を利用して、クラッチONさせるような構成であっても良い。また、クラッチON切換部材の操作部の形状についても適宜、変形することが可能である。さらに、上述した実施形態では、手持ち保持される小型の電動リールを例示したが、釣竿を両手で手持ち保持する中型以上の電動リールにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 魚釣用電動リール
5 リール本体
5A,5B 左右側板
6 手動ハンドル
7 スプール
7a スプール軸
7b フランジ
8 駆動モータ
15 制御ケース
17 クラッチ機構
17a クラッチプレート
18 クラッチOFF切換部材
18a 操作部
19,50,60 クラッチON切換部材
19a,50a,60a 操作部
30 操作部材
30a 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体の左右側板間に設けられ、釣糸が巻回されるスプールと、
前記リール本体に設けられ、スプールを回転駆動する駆動モータと、
前記駆動モータの出力を調整する操作部材と、
前記スプールを、釣糸巻き取り状態からフリー回転状態に切り換え操作するクラッチOFF切換部材と、
前記スプールを、フリー回転状態から釣糸巻き取り状態に切り換え操作するクラッチON切換部材と、
を有する魚釣用電動リールにおいて、
前記操作部材の操作部、及びクラッチON切換部材の操作部は、前記スプールをサミング操作している状態の指で操作可能な位置に配置されていることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
前記クラッチOFF切換部材の操作部は、前記スプールをサミング操作している状態の指で操作可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部材の操作部、及びクラッチON切換部材の操作部は、前記スプールの上方に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部材、クラッチON切換部材、及びクラッチOFF切換部材は、それぞれの操作部が、前記リール本体を側面視した際に前方から順に配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記操作部材の操作部と、前記クラッチON切換部材の操作部は、サミング操作している状態の指で同時に触れることが可能な配置関係となっていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の魚釣用電動リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2013−13370(P2013−13370A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148770(P2011−148770)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】