説明

魚釣用電動リール

【課題】 釣竿とリールを把持する手を上下して電動リールを操作する場合、指は押し又は曲げ伸ばしの方が操作し易く、この指操作にあった操作部材が必要である。
【解決手段】電動リールのスプールを回転させて釣糸を巻上げる駆動モータの駆動を指示する操作部材であり、回動可能に支持された円筒形状を成し、回動軸方向に延出する突起部又は溝を有し、指操作による回動範囲が4mm〜25mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールのモータ駆動を制御する操作部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年に、魚釣りに用いられている魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)は、モータ等の小型化及び高トルク化が図られており、釣竿に至っても軽量化が実現している。これらの小型軽量化に伴い、釣竿と電動リールの軽量化された組み合わせ、所謂ライトタックルが種々の魚種の釣法に提案されている。
【0003】
このライトタックルとして、釣竿を持つ手による電動リールの片手持ち操作、即ちワンハンドによる釣法が提案されている。例えば、特許文献1には、電動リールにおいて、片手操作を行うための回転式又はスライド式の操作部を制御ケース上面に設けて、リール本体を持つ手の指によりモータ出力を調整する技術が提案されている。また同様に、特許文献2には、制御ケースの表示画面の脇に、親指を揺動させて操作し、モータ出力を連続的に可変させる変速装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−092959号公報
【特許文献2】特開2003−169700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した片手持ち操作の場合、片手でリール本体と釣竿を把持しているため、電動リールの操作は、親指又は人差し指に限定されることとなる。しかし実際には、把持状態では、親指はリール本体から離して操作することができるが、人差し指は、リール本体の側面に這わしてリール本体を押さえているため、釣竿を上げ下げしている状況下では、指先を持ち上げる程度であり、指全体を離して操作することは容易ではない。これらの指は、少なくともモータ駆動操作を行い、魚種や釣法によっては、サミング操作やクラッチ操作をも必要とされる場合がある。
【0006】
人差し指による操作を想定した場合、これらの操作スイッチのうち、モータ駆動操作及びクラッチ操作が実施できる。しかし、これらのスイッチを人差し指が宛がわれるリール本体の斜め前面に設けることは、電動リールの構造上においては容易ではなく、また斜め前面は、巻上げられる釣糸から飛散する水(又は、海水)が常に掛かるため、他の箇所よりも防水対策や防塩対策が重要視される。また、リール本体の斜め前に操作スイッチを設けた構成において、リール本体を把持する手で仕掛け等を持ってしまった場合、反対の手による操作は、逆手になり操作しづらい面もある。
【0007】
これらを考慮すると、親指が届く範囲内にこれらの操作部材を配置することが望ましく、且つ単純な操作でなければならない。また、スライド式の操作スイッチを用いてモータ駆動操作を行う場合、親指を揺動させると指の付け根を中心として、指先は円弧を描くこととなる。つまり、魚が掛かった釣竿を上げ下ろししながら、円弧を描く親指の動作で直線的なスライド移動による巻上げ速度を調整する微妙な操作を行うには、十分な慣れを必要とする。
【0008】
一方、把持状態の手を上げ下ろした場合であれば、親指は押し又は曲げ伸ばしの方が容易であり、本能的に操作し易い。よって、片手に釣竿を持つ両手による操作だけでは無く、片手持ち操作を考慮すれば、回転する操作部材の方が好適する。さらに、親指の曲げ伸ばし範囲は狭く、指操作にあった操作部材が必要となる。
そこで本発明は、スプールのモータ駆動部の容易な駆動操作を実現する操作部材を搭載する魚釣用電動リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態による魚釣用電動リールは、釣糸を巻回するスプールと、前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示する操作部材と、を具備し、前記操作部材は、当接領域を有する円筒形状を成し、該当接領域上に回動軸方向に沿って延出する少なくとも1つの突起部又溝部のいずれかを有し、該突起部又溝部の回動範囲が4mm〜25mmである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプールのモータ駆動部の容易な駆動操作を実現する操作部材を搭載する魚釣用電動リールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明に係る第1の実施形態に係る魚釣用電動リールの上方から見た全体的な外観構成を示す図である。
【図2】図2は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を示す図である。
【図3】図3(a),(b)は、図1に示すA−A断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。
【図4】図4(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第1の構成例の概念的な概観構成を示す図、図4(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【図5】図5(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第2の構成例の概念的な概観構成を示す図、図5(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【図6】図6(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第3の構成例の概念的な概観構成を示す図、図6(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【図7】図7(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第4の構成例の概念的な概観構成を示す図、図7(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【図8】図8(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第5の構成例の概念的な概観構成を示す図、図8(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【図9】図9(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第6の構成例の概念的な概観構成を示す図、図9(b)は、操作スイッチにおける分解構成図、図9(c)は、図9(a)における軸方向B−Bの断面構成を示す図である。
【図10】図10(a)は、本実施形態に係る操作スイッチの第7の構成例の概念的な概観構成を示す図、図10(b)は、操作スイッチにおける軸方向C−Cの断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る魚釣用電動リール(以下、電動リールと称する)を上方から見た全体的な外観構成を示す図である。図2は、電動リールを後方から見た全体的な外観構成を図である。図3(a),(b)は、図1に示すA−A断面の電動リールの内部構造を示す断面図である。尚、以下の説明でリール本体において、釣糸が繰出される矢印mの方向を前方とし、その反対の矢印nの方向を後方とする。
【0013】
電動リール1は、リール本体2として、スプール3に釣糸(又は道糸)を巻取るための駆動モータ4を含む駆動機構(図示せず)が外装部5により覆われている。また、駆動機構には、スプール3への駆動モータ4の駆動力の伝達を行うクラッチOFFレバー6を有するクラッチ機構が含まれている。さらに、側方の一方には、スプール3を手動で回転させる手巻き用ハンドル7が設けられ、ハンドル7の基部側にはドラグ調整用ノブ8が設けられている。
【0014】
リール本体2の上面には、液晶表示部9の表示画面カバー9aが配置され、その後方にはメニュー選択及び各種設定を行うための複数の操作ボタン10が配置されている。さらに、操作ボタン10の後方でスプール3の上方には、釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示する操作スイッチ11が設けられている。
【0015】
また、リール本体2でスプール3を露呈させる窓(開口領域)12の一方の側端には、クラッチ機構における駆動力の伝達を行わせるクラッチONボタン(クラッチON切換部材)13が設けられる。前述したクラッチOFFレバー(クラッチOFF切換部材)6は、リール本体2のスプール3後方に設けられ、押し下げよりクラッチ機構における駆動力の伝達を遮断する。
【0016】
これらのクラッチONボタン13とクラッチOFFレバー6は、図示しないクラッチ機構に対して相関関係を有し、クラッチOFFレバー6を押し下げてロックさせた際に、クラッチが切られると共に、クラッチONボタン13の上部がポップアップして突出される。反対に、突出するクラッチONボタン13の上部を押し込むと、クラッチが繋がれると共に、クラッチOFFレバー6が開放されて上方に移動して戻る。尚、クラッチが切られた状態の時に、手動ハンドル7を回してクラッチを繋いだ場合には、クラッチONボタン13の上部が引き込まれ、クラッチOFFレバー6が開放されて戻る。
【0017】
外装部5は、図示しないフレームに取着する側面カバー5a、5b及び前面カバー5cとで構成される。上面には、前述した液晶表示部9、操作ボタン10及び操作スイッチ11等が設けられた箱形状の部材(箱部材)からなる制御ケース14が取り付けられている。さらに、制御ケース14内には、図示していないが、それぞれの構成部位を駆動制御するための種々のプログラムや設定情報等を記憶する不揮発性固体記憶素子:ROM(Read Only Memory)と、書き換え可能で一時記憶領域として利用する揮発性固体記憶素子:RAM(Random Access Memory)と、リール全体を制御する演算処理デバイス例えば、CPU(Central Processing Unit)からなる制御部とを備えている。
【0018】
スプール3の前方には、スプール3に均一な高さとなるように巻き付けを行うレベルワインド機構15が設けられている。また、リール本体2の下部には、釣竿に装着するための竿取付部16が設けられている。
【0019】
<第1の構成例>
次に図4(a),(b)を参照して、本実施形態に係る操作スイッチについて説明する。図4(a)は、操作スイッチの第1の構成例の概念的な概観構成を示す図、図4(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
【0020】
この操作スイッチ11は、回動可能に支持された円筒形状を成す回動型スイッチである。操作スイッチ11の一端11aは、制御ケース14に固定された図示しない角度センサ18が連結される。また、その他端11bは、制御ケース14に設けられた支持部材に回動可能に取り付けられている。操作スイッチ11の中央部分は、指を接触させて回動させる当接領域11cである。この例では、当接領域11cの中央が両端側より外径が大きい樽形状となっている。
【0021】
操作スイッチ11の回動により角度センサ18の角度を変化させることで、駆動モータ4による釣糸の巻上げ開始・停止及び巻上げ速度を指示する。この操作スイッチ11は、図3(a)に示すように、指20を伸ばした状態の腹部分20aから曲げた状態の指先部分20bまでの当接領域11cが回動範囲LLである。具体的には、回動範囲LLは、親指の曲げ伸ばし距離に相当する、即ち、最大で指先から第1関節における腹の長さ(大人の男性で30〜38mm程度、女性で27〜35mm程度と想定される)である。
【0022】
また、この回動範囲LLを適用する場合に、操作スイッチ11の操作上、何回転もするのではなく、操作角度としては、一回転の1/3程度が適正と考えせれる。本実施形態では、当接領域11cに後述する突起部を設けているため、操作しやすい操作角度αとして、130度に設定している。勿論、このスイッチを配置する箇所に応じて、適宜、変更は可能である。
【0023】
好ましい回動範囲LLを想定する。回動範囲LL=2πr×α/360であれば、操作スイッチ11の外径R(2r)として、例えば、R:φ5の時、LL=5.67となり、R:φ20の時、LL=22.69となる。よって、可能な回動範囲LLは、4mm〜25mmである。但し、現実的に好ましい回動範囲LLとしては、10mm〜20mm程度が操作しやすい。勿論、回動範囲の数値は、目安であり、限定されるものではなく、適宜、変更することは容易である。尚、後述する第2乃至第7の構成例による操作スイッチにおいても、第1の構成例と同様に、可能な回動範囲LLは、4mm〜25mmであるものとしている。
【0024】
図4(a)に示すように、操作スイッチ11は、中央部分の当接領域11cが曲面を成す樽形形状となっている。操作スイッチ11は、海水や汗に対して耐腐食性が高い、例えばステンレス等の金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。また、アルミニウム等の一般的な金属に耐腐食性の表面加工処理を施した部材であってもよい。また、特に、当接領域11cの回転軸方向の長さが、親指の腹の幅(約22mm)より小さくする場合は、指の腹に食い込むように樽型形状とすることが好ましい。逆に、親指の幅より大きく設定する場合には、親指の腹の曲面を想定し、中窪み形状とするのも好ましい。
【0025】
この当接領域11c上には、1つの突起部21及び複数の滑り止め部22が形成されている。突起部21は、操作スイッチ11の現在位置を示し、且つ指掛けとして機能する。突起部21の上面には、直線状の凹溝22が切られており、凹溝22内は、視認性が高い色のペイントで着色されている。他にも、蓄光又は蛍光の特性を有するペイントを塗布してもよいし又はその特性を有する部材を嵌め込んでもよい。また、突起部21の高さは、指の腹での転がし操作を考えると、0.5〜5mmの範囲が好ましい。
【0026】
滑り止め部23は、少なくとも回動範囲LLを含む表面上に、長手方向(軸方向)で直線状に延びる複数の溝であり、等間隔に配置されている。これらの溝は、連続した1本の溝でもよいし、断続的な続く溝であってもよい。また、これらの溝の断面は、半円形溝であっても矩形溝であってもよい。尚、滑り止め部22は、溝に替わって、反対に、半円凸状又は矩形凸状に突出する形状であってもよい。
【0027】
図4(b)に示すように、操作スイッチ11は、断面が円形であり、操作角度αとして、130度に設定している。また、回動軸方向に沿った当接領域11cの回動範囲、即ち突起部21の回動範囲LLは、4mm〜25mmであり、好ましくは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
【0028】
この第1の構成例によれば、指掛かりとなる突起部21を設けたことにより、掛かった指先が外れることなく、微妙な操作ができる。さらに、突起部21の現在位置により、釣糸の巻上げ状態(巻上げ速度)も直接目視することができる。また、回動範囲LLを含む表面上に滑り止め部22を設けているため、突起部21だけではなく、指の腹部分において、滑り難く密着することとなり、より操作性が改善される。
【0029】
<第2の構成例>
図5(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第2の構成例を示している。図5(a)は、操作スイッチの第2の構成例の概念的な概観構成を示す図、図5(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
図5(a)に示すように、操作スイッチ25は、円筒形状を成し、中央部分の当接領域25cが両端よりも一段大きい外径となっている。操作スイッチ25は、海水や汗に対して耐腐食性が高い金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。
【0030】
この当接領域25c上には、複数、例えば3つの突起部26(26a,26b,26c)が形成されている。これらの突起部26は、少なくとも回動範囲LL(26a−26a’)に相当する円弧長内に、均等に配置されるように設けられている。最初は、延びた親指の腹部分に突起部26aが掛かり、親指の曲げに従い、突起部26bを経て、指先に突起部26cが掛かる。これらの突起部26は、前述した突起部21と同様に、操作スイッチ11の現在位置を示すことができる。尚、突起部26のそれぞれの上面に凹溝を切って、凹溝内に視認性が高い色の着色を施してもよい。また、それぞれに異なる色を着色してもよい。
【0031】
図5(b)に示すように、操作スイッチ25は、断面が円形であり、操作角度αとして、130度に設定している。また、回動軸方向に沿った回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
この第2の構成例によれば、指掛かりとなる3つの突起部26を設けたことにより、掛かった指先が外れることなく、微妙な操作ができる。さらに、突起部26の現在位置により、釣糸の巻上げ状態(巻上げ速度)も直接目視することができる。
【0032】
<第3の構成例>
図6(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第3の構成例を示している。図6(a)は、操作スイッチの第3の構成例の概念的な概観構成を示す図、図6(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
図6(a)に示すように、操作スイッチ27は、円筒形状を成し、中央部分の当接領域27cが両端27a,27bよりも一段大きい外径となっている。操作スイッチ27は、海水や汗に対して耐腐食性が高い金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。
【0033】
この当接領域27c上には、1つのV字溝28が形成されている。V字幅は、親指の腹が入り込み且つ、指先が掛かる深さに形成されている。また、V字溝28の底は半径rによる丸みを持たせている。この丸みを持たせることにより、強度的に補強され、且つ溝の底に付いた汚れを除去しやすくしている。
【0034】
図6(b)に示すように、操作スイッチ27は、操作角度αとして、130度に設定している。また、回動軸方向に沿った当接領域27cの回動範囲、即ちV字溝28の回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
この第3の構成例によれば、指掛かりとなるV字溝28を設けたことにより、掛かった指の腹から指先まで外れることなく、微妙な操作ができる。さらに、V字溝28の現在位置により、釣糸の巻上げ状態(巻上げ速度)も直接目視することができる。
【0035】
<第4の構成例>
図7(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第4の構成例を示している。図7(a)は、操作スイッチの第4の構成例の概念的な概観構成を示す図、図7(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
図7(a)に示すように、操作スイッチ30は、円筒形状を成し、中央部分の当接領域30cが両端30a,30bよりも一段大きい外径となっている。操作スイッチ30は、海水や汗に対して耐腐食性が高い金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。
【0036】
この当接領域30c上には、複数の円形溝(所謂、ディンプル)31が形成されている。これらの円形溝は、半球形に窪んでおり、親指の腹が入り込み、吸着による滑り止めとなっている。尚、半球形の円形溝に限定されるものではなく、筒形状の溝であってもよいし、円形以外にも、矩形又は多角形であってもよい。
【0037】
さらに、当接領域30c上には、軸方向に沿って直線的な凹溝32が形成され、凹溝32内に視認性が高い色の着色が施されている。また、凹溝32以外にも、凸形状に突出させて、指の接触感覚で判断できるようにしてもよい。
図7(b)に示すように、操作スイッチ30は、操作角度αとして、130度に設定している。また、回動軸方向に沿った当接領域30cの回動範囲、即ち凹溝32の回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
【0038】
この第4の構成例によれば、複数の円形溝31を設けたことにより、掛かった指の表面に吸着しやすくしたため、指の掛かり具合がよく指先まで滑ることなく、微妙な操作ができる。さらに、直線的な凹溝32の現在位置により、釣糸の巻上げ状態(巻上げ速度)も直接目視することができる。
【0039】
<第5の構成例>
図8(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第5の構成例を示している。図8(a)は、操作スイッチの第5の構成例の概念的な概観構成を示す図、図8(b)は、操作スイッチにおける当接領域の断面を示す図である。
図8(a)に示すように、操作スイッチ33は、円筒形状を成し、中央部分の当接領域33cが両端33a,33bよりも一段大きい外径となっている。操作スイッチ33は、海水や汗に対して耐腐食性が高い金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。
【0040】
この当接領域33c上には、複数の円形突起部34が形成されている。これらの円形突起部34は、円筒形状に突出しており、それぞれのエッジ部分が親指の表面に掛かり、滑り止めとなっている。尚、突起部の形状は、円筒形に限定されるものではなく、矩形又は多角形であってもよい。さらに、当接領域33c上には、軸方向に沿って直線的な凹溝35が形成され、凹溝35内に視認性が高い色の着色が施されている。
【0041】
図8(b)に示すように、操作スイッチ33は、操作角度αとして、130度に設定している。また、回動軸方向に沿った当接領域33cの回動範囲、即ち凹溝35の回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
この第5の構成例によれば、指掛かりとなる複数の円形突起部34を設けたことにより、指の腹の食い込み、指の掛かり具合がよく指先まで滑ることなく、微妙な操作ができる。また、凹溝35以外にも、凸形状に突出させて、指の接触感覚で判断できるようにしてもよい。
【0042】
<第6の構成例>
図9(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第6の構成例を示している。図9(a)は、操作スイッチの第6の構成例の概念的な概観構成を示す図、図9(b)は、操作スイッチにおける分解構成図、図9(c)は、図9(a)におけるB−Bの断面構成を示す図である。
【0043】
ユーザの手の大きさは、男女又は大人子供によって様々である。しかし、操作スイッチは、設計時に決定された寸法により製造されているため、販売店舗等において、購入客合った最適なサイズに併せて簡易に変更することができない。この第6の構成例は、販売時に購入客の親指の実寸に合わせたサイズ調整部位を操作スイッチに後付けで装着させる構成である。
【0044】
図9(a)に示すように、操作スイッチ41は、円筒形状を成すスイッチベース部42と、中央部分42cに被せるように被装するサイズ調整部位43とで構成される。
スイッチベース部42は、同一径の円筒形状を成し、当接領域に相当する中央部分42cと、両端42a,42bとは、当接領域を規定するための一段高く環状に形成された一対のガイド部42dにより区分されている。スイッチベース部42は、海水や汗に対して耐腐食性が高い金属、セラミックス又は、硬質な樹脂等の材料により形成される。この当接領域42cには、別部材のサイズ調整部位43が挟むように装着される。
【0045】
サイズ調整部位43は、図9(c)に示すように、硬質樹脂からなるベース部材43aと、ゴム等の弾性部材からなる当接部材43bとが積層された2層構造となっている。ベース部材43aと当接部材43bは、接着剤又は溶着により一体的に接着されている。当接部材43bの表面には、指の滑り止めのために、複数の半球形の突起部45が形成されている。尚、突起部45に変わって、例えば、当接部材43bに表面に任意径の気泡を当てた状態で作製して、表面を凹凸状にしてもよい。また、当接部材43bは、弾性部材に代わって、シート状のコルク材により作製されてもよい。
【0046】
ベース部材43aは、スイッチベース部42と同様に耐腐食性を有する材料であれば、特に限定されるものではない。さらに、当接部材43b上には、軸方向に沿って直線的な凹溝46が形成される。また、凹溝46以外にも、凸形状に突出させて、指の接触感覚で判断できるようにしてもよい。
【0047】
このサイズ調整部位43は、図9(b)に示すように、スイッチベース部42の中央部分42cを挟んで装着できるように2つに割れた構造を成し、接合箇所に設けられた突起部44aと切り欠き部44bを嵌め合わせて固定する。この時、係止部42dに設けられた位置用決め凸部42eを、サイズ調整部位43の位置決め用凹部44cに嵌め入れることで、スイッチベース部42とサイズ調整部位43との位置決めを行い、且つこれらの間で空回りすることを防止する。本例では、接合箇所を先端側が広い台形形状の突起部44aと、この台形形状と合致する切り欠き部44bを嵌め合わせて外れ難く固定する構成であるが、補助的に接着剤や粘着テープを用いて、接合を強化してもよい。
【0048】
サイズ調整部位43は、厚さh(特に、ベース部材43aの厚さ)を調整することで、操作スイッチ41の当接領域における外径を調整することが可能である。つまり、個々のユーザによって、親指のサイズには違いがあるため、複数の異なる厚さを持つサイズ調整部位43を予め用意する。尚、本例においても、操作スイッチ41は、操作角度αとして、130度に設定している。また、当接部材43bの回動範囲、即ち凹溝46の回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
【0049】
この第6の構成例によれば、販売現場において、操作スイッチ41がユーザの親指の実寸に合わせた外径となるように、販売員又はユーザ自身で取付け又は交換により調整を行うことができる。本例では、親指の当接領域に滑り難い弾性部材を採用し、さらに表面に複数の半球形の突起部45を設けたことにより、指の掛かり具合がよく、指先まで滑ることなく、微妙な操作ができる。さらに、直線的な凹溝46を設けたことにより、現在の釣糸の巻上げ状態(巻上げ速度)も直接目視することができる。
【0050】
<第7の構成例>
図10(a),(b)は、本実施形態に係る操作スイッチの第7の構成例を示している。図10(a)は、操作スイッチの第7の構成例の概念的な概観構成を示す図、図10(b)は、操作スイッチにおける軸方向C−Cの断面を示す図である。
【0051】
図10(a)に示すように、操作スイッチ51は、円筒形状を成すスイッチベース部52と、中央部分52cの周囲上に被装される当接部53とで構成される。
スイッチベース部52は、中央部分52cが両端52a,52bよりも一段大きい外径となっている。操作スイッチ52は、透明材料である透明樹脂又は、ガラス等により形成され、内部は中空であり、その内面には反射面となる角度が異なる複数の傾斜面57を有する凹凸部が形成されている。
【0052】
さらに、中央部分の当接領域52cの周囲上には、多数のパンチ孔54が開口された腐食性金属からなる当接部材53が巻き付けられるように設けられている。さらに、当接部材53には、前述した突起部又は凹溝に代わって、軸方向に沿って直線的な長穴55が開口されている。また、回動軸方向に沿った当接領域52cの回動範囲、即ち長穴55の回動範囲LLは、前述した10mm〜20mm程度を想定している。
【0053】
また、スイッチベース部52の一端側には、例えば発光ダイオード(LED)等の光源56が設けられている。光源56は、リール本体2の上面に設けられた操作ボタン10の操作により、点灯/消灯が制御され、必要に応じて点灯することができる。
この光源56が発光した光束は、スイッチベース部52の端から導入され、傾斜面57により乱反射された光がパンチ孔54及び長穴55を通過して外部に放光される。
【0054】
この第7の構成例によれば、操作スイッチ51から光が放光されるため、夜明けや夜間の周囲が暗いときに、操作スイッチ51の所在位置を確認することができ、さらに長穴55からの光により、操作状態を視覚的に認識することができる。さらに当接部53に設けたパンチ穴54により、指の掛かり具合がよい。また、指の操作角度αとして、130度に設定している。
【0055】
以上説明した各実施形態による操作スイッチによれば、親指の曲げ伸ばしにより、釣糸を巻上げるためのモータ駆動操作が容易に実行でき、且つ親指が届く範囲内にスプールやクラッチが配置されているため、サミング操作やクラッチ操作も必要に応じて、容易に実行することができる。親指の曲げ伸ばしによる操作であるため、リールと釣竿を把持した状態の手を上げ下ろしする状況下で釣糸の巻上げ速度を調整する微妙な操作を容易に行うことができる。
【0056】
尚、前述した第1乃至第7の構成例は、それぞれ組み合わせて適宜、実施することも可能である。例えば、第7の構成例の透明材料を用いて、第1又は第2の構成例の形状で操作スイッチを作成し、表面には光が透過する着色を施し、それとは異なる色のペイントにより突起部を着色すれば、複数の光が放光されるため、周囲が暗い状態であっても操作状態を視覚的に認識することができる。また、第1乃至第5の構成例において、第6の構成例で用いた弾性部材からなり、突起部45がない十分に薄い厚みの当接層43bをそれぞれの操作スイッチに貼り付けることにより、指の滑り防止を実現してもよい。
【0057】
さらに、前述した第1乃至第7の構成例による操作スイッチは、釣糸が巻回されるスプールを回転させるための駆動モータの駆動操作を行うためのスイッチに適用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、液晶ディスプレイの表示画面を照明(又はバックライト照明)するための発光部のスイッチとして適用してもよい。また、各構成例において、操作スイッチにおける指の当接領域の回動可能範囲は制限されるが、当接領域の幅は特に限定されるものではなく、指の横幅に満たない幅であってもよい。
【0058】
以上説明した実施形態においては、以下の発明を含んでいる。
1.釣糸を巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示する操作部材と、を具備し、
前記操作部材は、
指操作を行うための当接領域を区分する環状のガイド部が設けられた円筒形状を成すスイッチベース部材と、
前記スイッチベース部材の前記当接領域に着脱可能に冠着され、耐腐食性を有する材料からなり、結合箇所を有する筒形状のベース部材と、該ベース部材の外面を覆う弾性部材からなる当接部材とによる層構造を成し、任意の厚さを有するサイズ調整部位とで構成され、
前記操作部材は、回動可能に支持され、前記サイズ調整部位における回動範囲が4mm〜25mmであることを特徴とする魚釣用電動リール。
【符号の説明】
【0059】
1…電動リール、2…リール本体、3…スプール、4…駆動モータ、5…外装部、5a,5b…側面カバー、5c…前面カバー、6…クラッチOFFレバー、7…手巻き用ハンドル、8…ドラグ調整用ノブ、9…液晶表示部、9a…表示画面カバー、10…操作ボタン、11,25,27…操作スイッチ、12…窓(開口領域)、13…クラッチONボタン、14…制御ケース、15…レベルワインド機構、16…竿取付部、20…指、20a…指の腹部分、20b…指先部分、21,26,26a,26b,26c…突起部、22…滑り止め部、25c…当接領域、27a,27b…両端、28…V字溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用電動リールに搭載される構成部位に対して、駆動を指示する少なくとも1つの操作部材を具備し、
前記操作部材は、回動可能に支持され、指操作による回動範囲が4mm〜25mmであることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
釣糸を巻回するスプールと、
前記スプールを回転させて、前記釣糸の巻上げを行うための駆動モータと、
前記駆動モータの駆動を指操作による回動で指示する操作部材と、を具備し、
前記操作部材は、当接領域を有する円筒形状を成し、該当接領域上に回動軸方向に沿って延出する少なくとも1つの突起部又溝部のいずれかを有し、該突起部又溝部の回動範囲が4mm〜25mmであることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項3】
前記操作部材の当接領域の溝部は、V字溝であることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項4】
前記操作部材の当接領域の表面には、球状又は円筒形状のいずれかを成す凸部又は凹部のいずれかが形成されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項5】
前記操作部材の当接領域に着脱可能に冠着され、耐腐食性を有する材料からなるベース部材及び、該ベース部材を覆う弾性部材からなる当接部材による積層構造を成し、任意の厚さを有するサイズ調整部位を具備することを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。
【請求項6】
前記操作部材の当接領域は、透明材料による中空形状に形成され、さらに、
前記操作部材の端部から光束を入射させる光源と、
前記当接領域の中空の内面に形成された反射面となる角度が異なる複数の傾斜面を有する凹凸部と、
前記当接領域の外面を覆うように設けられた、複数の孔が開口された当接部材と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の魚釣用電動リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−21936(P2013−21936A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157075(P2011−157075)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】