説明

魚類監視水槽

【課題】
濁度によって監視カメラの撮像機能が低下し、魚類の呼吸困難が生じ、画像処理が誤判定していた、また入水量と排水量を同量にしないと、魚類の撮像焦点距離がずれ、誤解析を起こしていた、また照明を飼育水槽上部から照射すると乱反射を起こし画像処理の誤解析の原因になっていた、また簡易な濾過器が望まれていた。
【解決手段】ポンプ水槽にフイルターユニットとヒーターを装着できる形状とし、また飼育水槽の底部から排水ポンプ水槽の側面まで連結排水ユニットを付着した、また飼育水槽の正面蛍光灯の光を透過する透明窓を装着した、またフイルターユニットは底部に濾材を敷設し、上部に引出し式の蓋を設け、蓋の一部に原水を入水する孔を開孔した形状とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる含有毒物を魚類の行動で監視する魚類監視水槽において、原水の入水量と排水量を一定に保ち、飼育水槽の魚類を長期的に飼育し、監視カメラで俯瞰で撮像し、その映像を画像処理することで原水に含まれる含有毒物に対して魚類の行動変化を解析し、毒物判定を自動的に行うことができる魚類監視水槽に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や湖から飲料用水として取水する原水には有毒物質、例えばPCB(ポリ塩化ビフェニール)などの有機塩素系化合物、水銀、カドミウム、鉛、亜鉛などの有害重金属、ダイオキシン、シアン化カリウムや農薬などの混入する事態が発生しないとも限らない、このため原水の水質管理は大変重要であり24時間連続した監視が重要である。
そこで、取水した原水を連続的に魚類監視水槽に通水させ、その飼育水槽で飼育している魚類を監視カメラで常時撮影し、監視中の魚類の行動が正常か異状かを画像処理装置によって解析し、異状と装置が判断した場合は自動的にアラームを発報する魚類を使った水質自動監視装置が知られており、本発明は魚類を使用した水質自動監視装置18内に具備される魚類監視水槽である。
【特許文献1】特開2003−001809号公報
【特許文献2】実開2003−000064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の魚類監視水槽は以下の問題があった。
(1) 河川の表流水は雨が降ると高濁度水が魚類監視水槽に入水することがあり、濁度によって監視カメラの撮像機能が低下したり、魚類の鰓に溶存した土の微粒子が付着して呼吸困難が生じ魚類が行動停止を起こし、魚類の死亡と画像処理が誤判定していた。
(2) 入水量と排水量を常に同量にしないと、飼育水槽の水位が異状に高くなったり、また異状に低下したりすると、魚類の撮像焦点距離がずれて監視カメラの撮像に支障を及ぼし、安定した画像処理ができず、誤解析を起こしていた。
(3) 魚類監視水槽は水質自動監視装置内に収納されており、装置の扉を閉めると監視カメラの撮像には最低被写体照度を必要とする、そのため蛍光灯等の照明を必要とするが、蛍光灯等の照明を飼育水槽上部から照射すると、光が水面に映り水面の波で光が乱反射し、監視カメラの映像信号を画像処理するシステムにおいて光の波状的な反射は画像処理の誤解析の原因になっていた。
(4) 濁度水を処理するには別置式の専用濾過器を必要としていたが、これらは大型で価格も高いため、濁度の状態や頻度によっては、簡易な濾過器が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、水槽は受水槽とポンプ水槽と飼育水槽とに分割され、ポンプ水槽にフイルターユニットとヒーターを装着できる形状を特徴とする。また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、飼育水槽の排水口Fからの排水をポンプ水槽の側面の排水口Hから排水するため飼育水槽の底部から排水ポンプ水槽の側面まで連結排水ユニットを付着した形状を特徴とする。また、請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、飼育水槽の正面に蛍光灯を具備し、蛍光灯の光を透過する透明窓を飼育水槽の正面に装着した形状を特徴とする。また、請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、フイルターユニットは底部に濾材を敷設し、上部に引出し式の蓋を設け、蓋の一部に原水を入水する孔を開孔した形状を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の魚類監視水槽によって、入水量と排水量の均衡が図られ、適切の照明装置によって画像処理の解析で誤解析や誤判定を解消し、24時間連続的な魚類の行動を監視カメラで撮像できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
原水の含有毒物を魚類行動で24時間連続自動監視を監視カメラや画像処理装置で行うため、本発明の魚類監視水槽は、原水の水位の保持や還流や入水量及び排水量の調整や監視カメラの照明等によって、飼育水槽の魚類の棲息環境を整え画像処理に支障が出ないことで実現した。
【実施例】
【0007】
以下、この発明に係わる魚類監視水槽の実施形態を添付図面を参照して詳細に説明をする。図1は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す斜視図である。図2は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す平面図である。図3は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す正面図である。図4は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す左側面図である。図5は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す右側面図である。図6は、この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す裏面図である。図8は、この発明に係わるフイルターユニットの実施の形態を示す斜視図である。図9は、本発明の魚類監視水槽を具備する魚類を使用した水質自動監視装置の全体図である。
【0008】
図1、において、魚類監視水槽1は受水槽2、ポンプ水槽3、飼育水槽4で分割され、正面、右側面、左側面、裏面を表する。
【0009】
図1、図2、図3、図4、図5、図6の矢印は原水の流れる方向を示す。
【0010】
図1において、受水槽2は原水入水口Aとオーバーフロー口Bと給水口Cを備えている。

【0011】
原水入水口Aからの入水量が給水口Cから排水されるより水量が多い場合は、オーバーフロー口Bから排水し、入水量が少ない場合は、排水量が少なくなり受水槽2の水量は常に一定に保たれている。
【0012】
給水口Cから原水はフイルターユニット5の蓋7に開口した孔8から給水される。
【0013】
図1、図3、図4、図5、図6において、ポンプ水槽3は、フイルターユニット5とヒーター9が上下に装着できるスペースを有し、フイルターユニット5はヒーター9の上部に装着される。
【0014】
フイルターユニット5とヒーター9は、受水槽2の底部面とポンプ水槽3の下部面の中間に装着する。
【0015】
フイルターユニット5は受水槽2の底部面に挿入する形状とし、ポンプ水槽3の両内面にレール棒5aを付着し、フイルターユニット5はレール棒5aの上を滑挿して装着する。
【0016】
ヒーター9は、フイルターユニット5の底部面とポンプ水槽3の下部面の中間に装着する。
【0017】
図8はフイルターユニット5の斜視図である、フイルターユニット5は長方形の箱状の形状で上部に蓋7が具備し、蓋7はレール5b上を滑らせる開閉式になっている、蓋7には孔8が開口し、受水槽2の給水口Cから原水がこの孔8から給水される。
【0018】
フイルターユニット5の底部には濾材6が敷設され、フイルターユニット5の底部は多数の小孔があり、原水中に溶け込んだ泥や土は濾材6を通過するとき原水中に溶け込んだ泥や土を濾材6で除去する。
【0019】
濾材6の材質は、布材や紙材やセラミック材や砂材などを使用する、濾材は濾過の汚れによって定期的に洗浄や交換が必要で、そのためフイルターユニット5は受水槽2の左右側面に定着されたレール棒5a上を滑らせて簡単に着脱可能な形状となっている。
【0020】
ヒーター9は、ポンプ水槽3の底部に横臥した状態で装着し、上面部にフイルターユニット5が装着できる寸法とし、ヒーター9は数本装着できる、ヒーターの端部からヒーター用電線9aが具備されている。
【0021】
ヒーター9は、片端にヒーター電源用の電線9aが固着し、電線9aは通常AV100Vに接続することでヒーター9は発熱する、通常ヒーター9はサーモスタットが具備されているため一定の温度が保持され発熱過剰による火災防止等の対応が施されている。
【0022】
魚類は水温が5℃以下になると冬眠状態で行動停止になり、画像処理は死亡と誤判定するためヒーター9は原水が河川湖沼水の場合は設置が必要になる。
【0023】
通常は別置式の加温器を設置するが、地域によっては、また地下水等の場合は水温がそれほど低下しない場合、簡易な加温方法が望まれていた。
【0024】
図1、図2において、ポンプ槽3に給水された原水は循環ポンプ10よって飼育水槽4内に噴出される。
【0025】
飼育水槽4は上部を開放した四角形の箱状で製作され、深さは20センチメートル以内と浅い、そのため水槽の清掃などメンテナンスを容易にしている、材質は製作加工を容易にするため乳白アクリル板で製作されている、透明板や黒色のアクリル板は鏡の映し作用で魚類の姿が写り魚類にストレスを与えるため好ましくない。
【0026】
監視カメラ17は飼育水槽4の上部から俯瞰で撮影される、飼育水槽4には小型の魚類11が試験魚として飼育されている、例えば魚類11はメダカなどが20匹前後常時、原水中の毒物含有の試験魚として長期間飼育される。
【0027】
四角形の飼育水槽4の三ヶ所の角には三日月形状板4aを具備することで、水槽内部を円形状にし、循環ポンプ10よって噴出された原水は四角形の水槽の角に滞留することなく飼育水槽4内を円状に還流する。
【0028】
例えば毒物が原水中に含有すると飼育水槽4の魚類11は当然毒物に侵されて泳ぐ力が弱まり、魚類11は飼育水槽4内を円状に流される。
【0029】
通常は、魚類は水の流れに向かって泳ぐ習性をもつが、毒物に侵されると流れに向かって泳ぐことができなくなり、流れに流されることになる。
【0030】
飼育水槽4の底部の中心部に排水口Fが開孔している、この開孔部にポールを立て、ポールに網目のネットを繋着し、片方を飼育水槽4の内壁に掛着することで毒物に侵されて流れに流された魚類は網目の捕獲ネット12に掛着し、流の水圧によって捕獲ネット12から脱出して泳ぐことができなくなる。
【0031】
俯瞰で撮影する監視カメラ17は、映像信号を画像処理装置に送り、画像処理装置では泳いでいる魚類の数を1秒間に数回解析して数が減少すれば段階的にアラームを出す仕組みになっている。
【0032】
解析は、常時泳いでいる飼育水槽4内の魚類11の総数を予め決めておき、毒物に侵されて流れに向かって泳ぐことができなくなった魚類は、網目の捕獲ネット12に掛着し泳ぐ総数から除外され、泳いでいる魚類だけの数が計数される。
【0033】
画像処理装置は泳いでいる魚類11を計数して、その結果として減少があれば、減少数に応じて段階的なアラームを出す、例えば全数が泳いでいないと計数されたときは重大警報となり、電磁弁を開いて飼育水槽4内の原水を検査水として予め準備された容器に自動採水する仕組みになっている。
【0034】
飼育水槽4とポンプ水槽3の水位は常時一定に保持されている、まず原水は給水口Aか受水され、ポンプ水槽3を経由して飼育水槽4に給水する、給水された水量だけ排水されることで、常に水位を一定に保持し、魚類11は常に新しい原水に曝されることで原水中の含水毒物の判定をすることになる、この試験法はバイオアッセイ法と言われる、図9はバイオアッセイ法が適用される魚類を使用した水質自動監視装置18の全体図である。
【0035】
図3、図4、図5、図6において、給水量が排水量より多いときは、受水槽2のオーバーフロー口Bと飼育水槽4のオーバーフロー口Eの2箇所のオーバーフロー口からオーバーした水量を排水することで常に水位を一定に保持する、逆に給水量が少ない時は排水量も少なくなる。
【0036】
従来工法においては、水量調節は塩ビの配管によって排水口とオーバーフロー口の位置を調節していたが、配管加工ではレベル位置の誤差が生じていた、本発明では飼育水槽の排水口Fからの排水をポンプ水槽の側面の排水口Hから排水するため飼育水槽の底部から排水ポンプ水槽の側面まで連結排水ユニットを付着した形状とした。
【0037】
飼育水槽の排水口Fからの排水を魚類監視水槽1の底面の排水口Hから排水する。
【0038】
飼育水槽4の排水口Fの底部に連結排水ユニット15を付着し、裏面の排水口Hまで連結排水ユニット15を捲着することで従来の配管加工で生じていたレベル位置の誤差を解決した。
【0039】
排水口Gは通常は排水口Gの下部に具備するバルブ16で閉じられており、清掃やメンテナンスの時以外は開放しない、バルブ16を開放すると排水口I原水が排水される。
【0040】
図3、図4、図5、図6において、飼育水槽4のオーバーフロー口Eより連結排水ユニット15の排水口Hを低い位置に具備することで水位を一定に保つことができる、また連結排水ユニット15を魚類監視水槽1に付着することで従来工法の塩ビの配管より水位を正確に保つことができる。
【0041】
飼育水槽4の水位を正確に保つことで、魚類11の撮像焦点距離がずれないで監視カメラ17の撮像と画像処理の解析を安定させる。
【0042】
魚類監視水槽1の材料は乳白アクリル板で通常製作されている、図1、図2において、魚類監視水槽1の正面に細い長方形の透明窓13が嵌着されている、目的は蛍光灯14等の照明の光の透過窓13であり、飼育水槽4内の魚類11を監視カメラ17で撮像する最低被写体照度を確保するためである。
【0043】
蛍光灯14等の照明を飼育水槽上部から照射すると、光が水面に映り水面の波に光が揺れ乱反射する。
【0044】
監視カメラの映像信号を画像処理をするシステムにおいて光の乱反射は誤解析の原因となる、そのため魚類監視水槽1の正面に細い長方形の透明窓13を嵌着して蛍光灯14等の照明の光の透過窓13から飼育水槽4内に照射することで画像処理の誤解析を解決した。
【0045】
透明窓13は魚類監視水槽1の正面の乳白アクリル板を切り抜いた窓に透明アクリル板を嵌着してもよいし、切り抜いた乳白アクリル板の内側に透明アクリル板を張り合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
表流水、湖沼水、地下水などの原水を使用する上水道や飲料水工場や排水などの原水中の有毒物質含有を24時間連続自動監視で行う、バイオアッセイ法の魚類を使用した水質自動監視装置18内に具備する魚類監視水槽の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す平面図である。
【図3】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す正面図である。
【図4】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す左側面図である。
【図5】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す右側面図である。
【図6】この発明に係わる魚類監視水槽の実施の形態を示す裏面図である。
【図7】この発明に係わるフイルターユニットの実施の形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の魚類監視水槽を具備する魚類を使用した水質自動監視装置の全体図である。
【符号の説明】
【0048】
1 魚類監視水槽
2 受水槽
3 ポンプ水槽
4 飼育水槽
4a 三日月形状板
5 フイルターユニット
5a レール棒
5b レール
6 濾材
7 蓋
8 孔
9 ヒーター
10 循環ポンプ
11 魚類
12 捕獲ネット
13 透明窓
14 蛍光灯
15 連結排水ユニット
16 バルブ
17 監視カメラ
18 魚類を使用した水質自動監視装置
A 給水口
B オーバーフロー口
C 給水口
D 給水口
E オーバーフロー口
F 排水口
G 排水口
H 排水口
I 排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽は受水槽とポンプ水槽と飼育水槽とに分割され、ポンプ水槽にフイルターユニットとヒーターを装着できる形状を特徴とする魚類監視水槽。
【請求項2】
請求項1記載の飼育水槽の排水口Fからの排水をポンプ水槽の側面の排水口Hから排水するため飼育水槽の底部から排水ポンプ水槽の側面まで連結排水ユニットを付着した形状を特徴とする魚類監視水槽。
【請求項3】
請求項1記載の飼育水槽の正面に蛍光灯を具備し、蛍光灯の光を透過する透明窓を飼育水槽の正面に装着した形状を特徴とする魚類監視水槽。
【請求項4】
請求項1記載のフイルターユニットは底部に濾材を敷設し、上部に引出し式の蓋を設け、蓋の一部に原水を入水する孔を開孔した形状を特徴とする魚類監視水槽。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−82124(P2009−82124A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1272(P2008−1272)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願変更の表示】意願2007−7530(D2007−7530)の変更
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(500548943)
【Fターム(参考)】