説明

魚餌カプセル

本発明は、カプセル外被(1)と、そのカプセル外被(1)内に封入される液体または懸濁質性状の魚餌剤(5)とから構成される魚餌カプセル、その魚餌カプセルの使用、および、魚餌キット、並びに、その魚餌カプセルの製造方法に関する。この場合、その魚餌カプセル内に、その魚餌カプセルの浮力を決定する気体相(6)が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル外被と、そのカプセル外被内に封入される液体または懸濁質性状の魚餌剤とから構成される魚餌カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
魚餌、釣り餌および釣り用の誘引材料は、さまざまな形態で製造され、提供される。天然の製品並びに特別に調製された混合物があり、それらがきわめて多様な形態において供される。
【0003】
天然の食餌および釣り餌は、魚の“真の”養分になり、かつ比較的容易に調達し得るので、この分野において使用される第一の製品である。
【0004】
ミジンコ(Wasserfloehe)、蚊の幼虫(Mueckenlarven)、淡水性のトビムシ(Bachflohkrebse)、ハエ(Fliegen)、蠕虫(Wuermer)、蛆虫(Maden)、ブラインシュリンプ(Artemia)および他の小動物は、生体形態、凍結形態、また乾燥形態において観賞魚に与えられるが、これらは、釣り餌としても用いられる。例えば、トウモロコシ、小麦および他の穀物種のような植物品および果実は、一般に用いられている漁業および釣り用の食餌および/または釣り餌である。
【0005】
これらの天然の食餌および釣り餌の多くは、食餌混合物および釣り餌混合物の構成成分として用いられる。
【0006】
食餌種および釣り餌種のもう1つの大きな製品群は乾燥餌である。この場合は、部分的にビタミン、保存剤、薬剤および医薬品を添加した動物性並びに植物性の原材料から構成される食餌混合物が対象になる。
【0007】
提供形態に応じて、種々多様な製造方法があるが、この場合、使用される食餌混合物は、通常、非常によく似ている。
【0008】
フレーク状食餌は、小さい円盤状に切断された食餌混合物であり、これは引き続いて凍結乾燥される。このフレークは、製造条件から、切断によって、粗い面と滑らかな面とを有する。フレークのどちらの面が水と接触するかに応じて、粗い面が水の表面上に落ちるフレークが、滑らかな面で水面上に浮くフレークよりも早く沈降する。フレークのこの特性は、提供者によって、特別に好ましい特長であると宣伝されている。フレーク状食餌には実に多様な種類のものがある。
【0009】
顆粒、ボイリーおよびペレットは、フレークの場合と同様の食餌混合物から製造されるが、通常、これは熱による乾燥法によって処理される。顆粒およびボイリーは、その組成のためにすぐ底に沈降するが、これに対してペレットの場合は、沈降する製品並びに浮上する製品が同様に提供される。
【0010】
錠剤およびチップは、ほとんど製粉された原材料から調製されかつプレス成形される食餌種である。原材料としては、特に、乾燥された食餌動物、フレーク、ペレット、さらにまた植物品が用いられる。錠剤およびチップは、ほとんどすぐ底に沈降するので、底生動物用と見做されている。
【0011】
誘引餌の場合は、魚を引き寄せるのに用いる釣り餌が対象になる。誘引餌は粉末形態で提供される。この食餌混合物は、釣り人が使用する直前に水を加えて成形される。できた団子を水中に投げ込むと、水中で団子が崩壊して、微細片からなる“餌の雲”が生成され、その臭いによって小魚が引き寄せられる。
【0012】
さらに、医薬品を含有するフレークおよび錠剤が知られている。また、薬剤および/または医薬品を添加した食餌混合物がある。これらは、細菌性の病気を治療し、また寄生虫の発生に対処するために優先的に使用される。
【0013】
国際公開第2005/115341A2号パンフレットには、マイクロ粒子およびマイクロビーズが記載されている。このマイクロ粒子およびマイクロビーズは、魚餌の構成成分が閉じ込まれる難消化性のポリマー基材から構成され、さらに付加的に保護外殻によって被包されている。
【0014】
魚餌のさらに別の製造方法はマイクロカプセル化である。この場合は、例えば餌になる小動物あるいはまた藻類を芯材料として、外被材料と一緒にスプレーして保存処理する。
【0015】
懸濁された植物性プランクトンおよび動物性プランクトンを含む純液体の魚の養分は、幼魚の飼育用として、あるいは、イソギンチャクまたはサンゴのような無脊椎水生生物の飼育用として提供される。
【0016】
魚餌剤は、観賞魚および養殖魚の給餌と並んで、スポーツとしての魚釣りにおける誘引剤および釣り餌剤として用いられる。これらは、通常、ねり粉の生地およびペーストに混ぜ込まれた食餌混合物および釣り餌混合物である。食餌ペーストの場合は、ペーストの形態で供される、餌となる各種動物からなる食餌混合物が対象となる。釣り用のねり粉生地には2つの形態がある。1つの態様は完成ねり粉生地混合物で、これは、チューブまたはガラス容器の中に詰め込まれ、釣り人がすぐ使用できる。第2の形態は粉末混合物で、これは、使用前に水を加えて混ぜ合わされる。両食餌混合物共に、植物性成分並びに動物性成分と、香料材料とを含んでいる。
【0017】
餌となる生きた動物を含む食餌剤の場合は、これらの動物が自然の逃走本能を有することが欠点になる。この性質のために、これらの動物が、水槽、養殖プールまたは池内に隠れ、そこで、制御できない形で増殖または死滅する状況がもたらされる。これによって、水質および水環境の生態系が、影響が長く残る変化を受ける可能性がある。食餌ペースト、沈降する凍結食餌、および乾燥食餌動物のような、均等に摂取されない食餌剤の場合にも、同様の問題が惹起される。
【0018】
多くの乾燥食餌混合物は水で希釈される傾向がある。すなわち、食餌を水中に投入した直後に、発臭材料、味覚材料および色素材料が溶解する。この特性によって、一方では、水が汚染され、他方では、魚がこの食餌をもはや摂取しないことになる。割れ目や間隙の底部に堆積した食餌には、ごく僅かな種類の魚種が接近し得るだけなので、食餌の大部分は消費されないまま残存し、その分解生成物が、同様に、水槽、池または養殖プール内の生態的な環境条件の変化をもたらす。通常、食餌の分解によって生息圏の過剰栄養状況が生じ、これは、特に藻類の繁茂として顕現する可能性がある。
【0019】
医薬品含有フレークおよび錠剤は、ほとんどの魚が、ごく僅かしか摂取しないか、あるいは全く摂取しない。この挙動の原因は、医薬品含有フレークおよび錠剤から溶出する発臭粒子および味覚粒子が、魚にとって好ましくないものと知覚されるからである。
【0020】
“魚用の流動食”は、多くの魚飼育者によって必ずしも好んで使用されていない。その理由は、ほとんどのマイクロカプセル化された餌となる小動物および藻類が急速に底面に沈降し、従って、浮遊している餌を必要とする小型の幼魚の飼育に適していないからである。幼魚の飼育においては、魚が食餌の中にいなければならないという原則がある。
【0021】
総括的に言えば、公知の魚餌剤と誘引剤および釣り餌剤とは重大な欠点を有している。多くの種類の魚餌および釣り餌が、その発臭材料、味覚材料および色素材料を急速に失う、すなわち、水で希釈される。他の材料部分は、魚にとって臭いも味覚もなく、あるいは、急速に底面に沈降する。このような特性は、魚の摂取を妨げるように作用し、これはさらに、魚の生息圏の生態的な環境条件を変化させる結果をもたらす。
【0022】
公知の魚餌のさらに別の欠点は、魚餌を、生息圏、すなわち魚が主として生息している水深に対応して付与することができないという点にある。底生の魚種は、食餌を摂るために水面に浮き上がることは全くないか、あるいは滅多にない。十分な給餌を行うためには、まず第一に、食餌を底面に沈降させなければならない。これに対して、水面近くに生息する魚は、底面に沈降した食餌粒子を摂取しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、最適の魚餌に求められる要件は次のような条件である。すなわち、
1.混入された香料材料による摂取における高い受容性、
2.多くの色彩および形態に製造可能であること、
3.内容物が、ビタミン材、養分材料および/または誘引材料に富んでいること、
4.水による希釈に対して内容物の材料を保護するものであること、
5.摂取されない構成部分が、生物分解可能であるが、魚の生息圏の生態的環境条件を影響が長く残る形で変えることはないこと、
6.沈降挙動、浮遊挙動もしくは浮上挙動を組成によって個別に制御できること、
7.誘引剤および釣り餌剤の場合、誘引材料が周囲に緩慢に放出されること、
8.例えば医薬品の添加によって発現する可能性がある、魚に不快な発臭材料および味覚材料の生成が最小化されるか、あるいは全く封じ込まれること、
9.魚餌剤が、高品質かつ等しい品質で、工業的にかつ経済的に製造可能であること、
10.魚餌を、魚が好む生息圏、例えば特定の水深において、魚に持続的に提供することができ、かつ、魚にとって接近可能であること、
である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の要求は、カプセル外被と、そのカプセル外被内に封入される液体または懸濁質性状の魚餌材料と、そのカプセルの浮力を決定する気体相とから構成される魚餌カプセルによって実現される。
【0025】
懸濁質性状の魚餌剤は、固体粒子が液体中に分布された懸濁質、すなわち均質な材料混合物からなる食餌剤である。
【0026】
カプセル外被は、輸送剤、誘引剤および被包剤として、また、養分の構成成分として用いられる。
【0027】
カプセル外被は、魚が問題なく摂食し得る材料から構成される。このような材料は、特に、動物由来のゼラチン、アルギナート、デンプン、ポリビニルアルコール、キトサン、カラギーン、セルロース誘導体、オイドラギット(Eudragit:登録商標)、および、水生生物によって異化または排泄され得る他の固定化物である。これらのカプセル外被は、水中に食餌投入後、好ましくは0.5〜3時間、特に1〜2時間の時間内で、残留物なく溶解するものであることが望ましい。また、カプセル外被は、特別な実施形態においては、光および温度の影響に対して、かつ、pH値の変動と化学的および生物学的に活性な内容物材料とに対して広い範囲にわたって安定である。同時に、食餌剤カプセルの保存中に、食餌剤の構成成分および気体相のいずれも漏出し得ないように、従って、魚餌カプセルの特性が長い保存期間にわたってそのまま保持されるように、膜が形成される。特別な軟質ゼラチンのカプセルは、必要なこの膜特性を有する。
【0028】
カプセル外被には、発臭材料および味覚材料を混入することができる。これは、魚か好ましくないものと知覚し得る味覚材料および発臭材料で、魚餌剤の構成成分または医薬品に帰することができる味覚材料および発臭材料を、覆ってしまうか、あるいはそれに重なり合うことができるという利点を提供する。外被に混入されるこの味覚材料および発臭材料は魚を誘引できる。このような誘引材料は、魚が魚餌カプセルを摂食するようにするため、香料、エーテル性オイル、例えば虫または藻類の抽出物のような動物または植物からの抽出物質、スパイスのような味覚担持体、藻類、あるいは、魚が好んで摂取する物質で魚を活発化する他の物質、とすることができる。
【0029】
カプセル外被は着色することも可能である。この場合、食用となる色素、または健康上問題にならない色素材料を使用することが望ましい。魚餌カプセルは単色または多色とすることができる。
【0030】
魚餌カプセルは、魚餌剤、医薬品またはそれらの組み合わせの異なる組成を含む2つ以上のカプセル部分から構成することができる。例えば、軟質のゼラチンカプセルを製造する場合、これを2つのゼラチンカプセルの1/2部分から構成することができるが、その際、この2つの部分が異なるゼラチン混合物を含むことができる。食餌カプセルの部分は異なる色彩に着色することができる。同様に、それぞれの食餌カプセル部分内の魚餌剤の粘度を異なる高さにすることができる。従って、一方では、液体または低粘度の魚餌剤、味覚材料および/または発臭材料が含まれる1つの領域と、他方では、高粘度または場合によっては固体とすることができる1つの領域とを有する魚餌カプセルを製造できる。このような魚餌カプセルは、スポーツとしての魚釣りに好適に用いられる。このような魚餌カプセルの固体領域は、魚餌カプセルを釣り針または他の釣具に固定するのに役立つ。魚餌カプセルを釣り針に装着する際には、カプセルの固体領域を、通常販売されている釣り餌と同様に、釣り針に突き刺して固定する。液体または低粘度の食餌剤、味覚材料および/または発臭材料、特に誘引材料を含有するカプセル領域は、魚を引き寄せる役割を果たす。このカプセル領域は、誘引材料および食餌剤材料が緩慢に放出されるように調整することが可能である。この放出は、カプセル外被の水媒体中への溶解、または機械的な作用によって生じさせることができる。別の実施形態においては、魚餌カプセルを、互いに異なる香料、色素およびゲル強度を含む乃至は有するカプセル部分から構成することができる。
【0031】
液体または懸濁質性状の魚餌剤は、主として、液体の親油性基質材、特に植物性または動物性のオイルから構成され、このオイルの中に、液体および/または固体の食餌構成成分のようなさらに別の添加物が混入される。親油性基質材は油中水滴型エマルションとすることもできる。さらに別の食餌構成成分は、主として、ビタミン、カロチノイド、溶解ミネラルおよび微量元素、蛋白質、および/または炭水化物並びに食物繊維材料である。1つの好ましい実施形態においては、粉砕または製粉された食餌動物が、親油性基質材の中に混ぜ合わされる。
【0032】
本明細書の以下の記述においては、魚餌剤に言及する場合、純粋に液体の魚餌剤および懸濁質性状の魚餌剤の両者を意味する。
【0033】
魚餌カプセルの浮上特性および浮力特性は、表面積容積比率に対する気体相の分率と、魚餌カプセルの重量とによって調整可能である。カプセル外被は、製造方法およびその安定性のために任意に減量することはできず、“軽量の”内容物材料の使用も、同様に任意に高めることは不可能である。問題の解決策として、カプセル内に気体相を設けることが提示される。
【0034】
カプセル外被に気泡を多く含ませることは、それによって膜の安定性および透過性、従ってシール性が影響を受けるので必ずしも適切ではない。この問題は、カプセルの内部に気体相を形成することによって解決される。
【0035】
カプセル当たりの気体相の分率の大きさを選択することによって、魚餌カプセルを、浮上するカプセル、すなわち水の表面に漂うカプセル、あるいは、浮遊するカプセル、すなわち特定の水深に留まるカプセル、あるいはまた、沈降するカプセルとすることができる。
【0036】
これによって、魚が好む生息圏において、すなわち通常特定の水深または水の層において、魚に食餌を提供し得るという利点が得られる。
【0037】
魚餌カプセルは、球形、長方形、楕円形、ネジ切り形、または、魚雷形とするのが望ましいが、それぞれ他の形状も可能である。魚餌カプセルのサイズは、0.5〜50mm、好ましくは2〜40mm、特に5〜20mmであるが、この場合、非球形形態においては、それぞれの最大寸法が提示されている。
【0038】
カプセル内部における気体相の形成は次のように行われる。まず最初に、魚餌剤の固体の内容物材料を混合して粉砕する。これを親油性基質材に加える。続いて、別の液体の構成成分を、その親油性基質材に添加する。製造過程において早過ぎる気体の脱出を避けるために、液体または懸濁質性状の魚餌剤を増稠する、すなわち、その粘度を高める。これは、例えば、液体の蜜ロウに混ぜ込むことによって実現できる。粘度は、また、増稠剤の添加によって高めることも可能である。この増稠剤としては、例えば、アルギン酸、寒天、カラギーン、ローカスビーンガム、グアーガム、トラガンス、アラビアゴム、キサンタンガム、カラヤゴム、タラガム、ジェランガム、ペクチン、セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、修飾デンプン、寒天、ゼラチン、ペクチン、サゴ、PEG、ポリアクリル酸、あるいはさらに別のセルロース誘導体等がある。
【0039】
引き続いて、特に反応性の酸素を魚餌剤から離脱させるために、魚餌剤の脱気を行う。この反応性の酸素は、酸化反応を惹起し、それによって魚餌剤構成成分の早過ぎる分解をもたらす可能性があるからである。
【0040】
さらに別のステップにおいて気体相を導入する。この気体相は、食餌剤の構成成分に対して非反応性のものである。この場合、増稠されかつ脱気された食餌剤を、強く撹拌しながら気体または気体混合物と混合する。この工程は、例えば、気体供給用バスケットを備えたインペラで、その下部に気体の出口が(小さい玉のように)取り付けられたインペラによって、上向きの流れの方向で実施される。添加される気体の量は、食餌カプセルが浮上するか、浮遊するか、あるいは沈降するかを決定する所要の浮力によって定まる。
【0041】
気体の付加が完了すると、充填材料を、連続的に撹拌しながら、かつ気体遮断の形で保護気体を供給しながら直ちにカプセル化する。この気体遮断用の保護気体は、導入する気体相と同じ組成のものであることが望ましい。魚餌剤は、保護気体供給によって、酸素との接触から保護されると共に魚餌剤への酸素の導入が回避されるだけでなく、撹拌によって、気体の一部が改めて魚餌剤の中に導入され、それによって、魚餌剤の気体分率をほぼ一定に保持できるのである。
【0042】
気体としては、基本的に、窒素、アルゴン、二酸化炭素、または、魚餌剤の内容物材料と反応しない他の気体を使用する。また、窒素/アルゴン混合物、あるいは、他の非反応性の気体混合物も使用できる。窒素またはアルゴンは、魚にとって無害であり、消化後に再度排泄される。つまり、摂食過程において、気体は通例どおり取り込まれ、その後糞と一緒に排泄されるのである。
【0043】
気体を含有する魚餌剤は、引き続いて、公知の方法でカプセル外被の中に封入される。このような方法は、医薬品、栄養補完剤または化粧品のカプセル化からよく知られている。軟質のゼラチンを用いる場合は、これは、主として次のようなカプセル化法である。すなわち、カプセル化機械において、ゼラチン溶液から、2つのエンドレスのバンドを冷却しながら形成する。この2つのバンドは、互いに逆方向に回転する2つの成形ロールの間を通して導かれる。これらのロールには椀形の凹部が設けられ、その凹部によって、ゼラチンのバンドからそれぞれ2つの対向する部分片を打ち抜き、その2つの部分片の周囲を、改めて圧力をかけ、若干温度を高めた状態で相互に溶接するのである。周囲の縫合部を最終的に閉じる直前に、回転に同期させて、ポンプおよびそれに連結される充填用くさび体によって、流動性がありかつポンプ楊送可能なカプセル内容物を注入する。
【0044】
好ましい製造方法は、次のステップ、すなわち、
1.魚餌剤として必要な動物性および/または植物性のオイルの約1/3を1つの単独容器の中に入れ、かつ、ワックス、好ましくは蜜ロウ、あるいは、栄養補完剤の製造に使用し得る他のワックスを、同様に、1つの固有容器の中に入れるステップと、
2.ワックスを50〜60℃に加温するステップと、
3.加温したワックスを、連続的に撹拌しながら前記オイルと緩慢に混合するステップであって、その際、この混合物をカプセル外被材料の溶融温度以下にゆっくりと冷却するステップと、
4.その他の食餌剤構成成分および残りのオイルを加えるステップと、
5.魚餌剤を製粉機において微粉砕するステップと、
6.魚餌剤を脱気するステップと、
7.魚餌剤に、魚餌剤と反応しない気体、好ましくは窒素または窒素・アルゴン混合物を、高度に分散させながら気体供給するステップであって、添加する気体の量は、カプセルの所要の沈降挙動または浮遊挙動によって決定されるステップと、
8.気体遮断を用意するステップと、
9.気体遮断を保持したまま、魚餌剤を撹拌するステップと、
10.魚餌剤をカプセル化するステップと、
を含む。
【0045】
別の製造方法においては、液体のワックス相および魚餌剤を、一緒に混合する前に、別個に調製しかつ脱気する。続いて、脱気された魚餌剤の最初の1/3を、液体のワックス相に添加してこれと混合する。魚餌剤の残りの2/3の中に、非反応性の気体を分散させる。さらに別の1つのステップにおいて、非反応性の気体を添加された魚餌剤を、脱気されたワックス/魚餌剤原型物の中に気体遮断しながら混入する。最後に調製された魚餌剤をカプセル化する。
【0046】
さらにこれ以外に、魚餌カプセルを液滴法によって製造することが可能である。この技術では、0.5〜5mmの範囲のカプセルサイズを有する中空球形状の魚餌カプセルを製造できる。1つの好ましい方法においては、気体の流れ、特に食餌剤構成成分と反応しない気体の気体流れが重ねられた、あるいは振動が重ねられた同軸の液滴によって、中空球を形成する。カプセル外被の形成は、架橋浴中における橋かけ、析出、凝固、あるいは、この技術領域において用いられる他の公知の化学的または物理的プロセスによって行う。
【0047】
魚餌カプセルは、病気の魚を回復させるために、魚の病気を治療する医薬品を含むことができる。これは、単独で、あるいは、1種類以上の別の医薬品および/または魚餌剤と組み合わせて用いることができる。この魚餌カプセルは、主として次のような病気または寄生体の被害の治療に使用される。すなわち、“淡水および海水の双方における白点病(Weisspuenktchenkrankheit)、ハート形状の白雲病(Hauttrueber)、小さい豆状の白雲病、円形状の白雲病、ビロード病(Samtkrankheit)、鰓病(Kiemenwuermer)、真菌症(Mycosen)、リムフォシスティス病(Lymphocystis)、腸のべん毛虫症(Darmflagellaten)、カッターヘッド虫症(Fraeskopfwurm)、並びに、細菌性、ウィルス性または胞子虫類による病気”等の治療に用いられる。医薬品を含有する魚餌カプセルは摂食可能な食餌カプセルとして、あるいは、デポーカプセルとして調製することが可能である。医薬品含有魚餌カプセルは、サイズおよび味覚において魚が取り込むことができるカプセルである。それは、魚の病気を組織的に治療するのに役立つ。デポーカプセルは、十分に大きいか、あるいは、魚にとっと好ましくない味覚を有するので、魚が摂取しないようなカプセルである。それは、魚の周囲空間に置かれることになる。デポーカプセルは、特に、長い期間にわたって薬効成分の連続的な放出が生起するように構成される。これは、水環境内におけるカプセル外被の溶解挙動または透過性によって制御できる。デポーカプセルを用いると、魚の周囲空間内への医薬品の遊離によって、外部治療、例えば魚の皮膚表面上の寄生生物または病原菌の処理が実現可能になる。
【0048】
本発明は、相互に異なる浮力特性および/または各種の魚餌剤を含む種々の魚餌カプセルからなる魚餌キットにも関する。それによって、1回の操作だけで、種々の魚種に、その個々の生息圏において給餌できるようになる。この場合、個々の生息圏は、異なる水の層(表面水層、中央水層、底層)を意味する。各魚は、その魚用に特別に調製されかつ最適化された食餌を、その生息圏において、用意された状態で受け取ることができる。従って、魚の必要に応じた的確な給餌が可能になる。プールの表面または底面における餌の競合および餌の捕獲による食餌に関する妬みは避けられる。
【0049】
以下に、本発明を2つの実施例に基づいて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】魚餌カプセルの断面図である。
【図2a】製造方法の一工程を示す概略図である。
【図2b】製造方法の1つの実施形態を示す概略図である。
【図2c】製造方法の別の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1においては、カプセル外被1と、カプセルの内部空間内に充填される魚餌剤5とから構成される中空球形状の魚餌カプセルを示す。カプセル外被1は、色素材料3および香料材料4が混入された固体の軟質ゼラチン2から構成される。魚餌剤5は、固体粒子7、特に製粉された食餌小動物と、ワックス粒子8とから構成される。魚餌剤5の中には、気体の気泡6が分散され、魚餌カプセルの表面積容積比率に対するその分率と、魚餌カプセルの重量とが魚餌カプセルの浮力を決定する。
【0052】
製造方法の実施形態の概略図が図2a〜cに表現されている。製造装置はタンク9(図2a)から構成され、そのタンク9の中にワックス相10を装入して、熱源11によって50〜60℃に加温する。図2bは、ワックス相10を、親油性基質材に混入された食餌剤構成成分12と混合する工程を示す。両相を混合するために、撹拌機13が装備され、それを用いて、ワックス相およびオイルの混合物を冷却しながら、均質な混合物、すなわち魚餌剤14を生成する。脱気のステップは図には表現されていない。図2cは、撹拌機15による、脱気された魚餌剤16への気体供給を示している。撹拌機15の下部に、気体供給用バスケット17が取り付けられ、そのバスケット17によって、魚餌剤の構成成分とは反応しない気体相が食餌剤16の中に微細に分散される。分散18の状態は微細気泡であり、かつ、均質である。
【符号の説明】
【0053】
1 カプセル外被
2 軟質ゼラチン
3 色素材料
4 香料材料
5 魚餌剤
6 気泡
7 固体粒子、製粉された食餌動物
8 ワックス粒子
9 タンク
10 ワックス相
11 加熱手段
12 親油性基質材に混入された食餌剤構成成分
13 撹拌機
14 魚餌剤、空気含有している
15 分散用撹拌機
16 脱気された魚餌剤
17 気体供給用バスケット
18 分散

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル外被(1)と、そのカプセル外被(1)内に封入される液体または懸濁質性状の魚餌剤(5)とから構成される魚餌カプセルにおいて、
その魚餌カプセルのカプセル内部空間内に、その魚餌カプセルの浮力を決定する気体相(6)が設けられる、
ことを特徴とする魚餌カプセル。
【請求項2】
前記カプセル外被(1)が、“動物由来のゼラチン(2)、アルギナート、デンプン、ポリビニルアルコール、キトサン、カラギーン、セルロース誘導体、オイドラギット(Eudragit:登録商標)、水生生物によって異化または排泄され得る他の固定化物”からなる群から選択される化合物から形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の魚餌カプセル。
【請求項3】
前記カプセル外被(1)が水中において溶解可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の魚餌カプセル。
【請求項4】
前記カプセル外被(1)が、色素材料(3)、味覚材料(4)および/または発臭材料(4)を含む、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の魚餌カプセル。
【請求項5】
前記液体または懸濁質性状の魚餌剤(5)が、液体の親油性基質材、特に植物性または動物性のオイルと、液体および/または固体の食餌構成成分(12)と、増稠剤(8)、好ましくはワックス相とから構成される、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の魚餌カプセル。
【請求項6】
前記親油性基質材が油中水滴型エマルションである、
ことを特徴とする請求項5に記載の魚餌カプセル。
【請求項7】
前記液体および/または固体の食餌構成成分(12)が、薬剤または医薬品、発臭材料、味覚材料、誘引材料、ビタミン、カロチノイド、溶解ミネラルおよび微量元素、蛋白質、炭水化物、粉砕および/または製粉された食餌動物(7)、および/または、食物繊維材料である、
ことを特徴とする請求項5に記載の魚餌カプセル。
【請求項8】
前記魚餌カプセルが相互に異なる2つ以上のカプセル部分から構成され、その場合、そのカプセル部分は、魚餌剤、医薬品、および/またはそれらの組み合わせの異なる組成を含む、
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の魚餌カプセル。
【請求項9】
前記魚餌カプセルの浮力を決定する気体相(6)が、前記魚餌剤の構成成分と反応しない気体である、
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の魚餌カプセル。
【請求項10】
前記魚餌剤の構成成分と反応しない気体(6)が、“窒素、アルゴン、二酸化炭素、または、2種以上の気体の混合物”からなる群から選択される、
ことを特徴とする請求項9に記載の魚餌カプセル。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の魚餌カプセルの製造方法において、次のステップ、すなわち、
1.50〜60℃に加温された液体のワックス相(8)を用意するステップと、
2.親油性の基質材の1/3を撹拌しながら添加するステップと、
3.前記ワックス/基質材の混合物を、前記カプセル外被材料の溶融点以下の温度に冷却するステップと、
4.魚餌剤(14)を調製するために、第4項以下の温度に保持しながら、調合法に含まれる別の食餌剤構成成分および残りの親油性の基質材を添加するステップと、
5.前記魚餌剤(14)を脱気するステップと、
6.魚餌剤(5)に、魚餌剤の構成成分と反応しない気体(6)を、微細な分散(18)を形成しながら気体供給するステップと、
7.好ましくは前記気体供給された非反応性の気体(6)と同じ気体組成を有する気体遮断を用意して、前記魚餌剤(5)を定常的に撹拌するステップと、
8.前記魚餌剤(5)をカプセル外被(1)の中に封入するステップと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項12】
相互に異なる浮力特性および/または各種の魚餌剤(5)を備えた、請求項1〜10のいずれか1項に記載の種々の魚餌カプセルからなる魚餌キット。
【請求項13】
1種類以上の選択された魚種、特に鑑賞魚または養殖魚の魚種に対して、水の層に合わせて給餌するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の魚餌カプセルの使用。
【請求項14】
誘引餌および/または釣り餌としての、請求項1〜10のいずれか1項に記載の魚餌カプセルの使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公表番号】特表2011−500038(P2011−500038A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529231(P2010−529231)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001690
【国際公開番号】WO2009/049607
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510108629)アヤンダ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー,ファルケンハーゲン (1)
【Fターム(参考)】