説明

魚鱗粉末高濃度含有錠剤

【課題】魚鱗粉末を高濃度に含有し、嵩密度が大きく重質で、流動性の良い顆粒、並びに、該顆粒を圧縮成形することによって、魚鱗粉末を高濃度に含有する錠剤を提供する。
【解決手段】魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体を乾式造粒法で造粒し、嵩密度が0.39×106〜0.52×106g/m3であって、安息角が42〜55度であることを特徴とする顆粒。並びに、該顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚鱗粉末を高濃度に含有する顆粒及び該顆粒を圧縮成形して得られた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には食用に供しない魚の鱗も、食資源の有効利用を図るべく、これを微粉化した食用魚鱗粉末が、健康食品等の原料として提供されている。また、この魚鱗粉末が骨粗鬆症に有効であるという報告もある(非特許文献1参照)。そして、魚鱗粉末を配合した錠剤タイプの健康食品が市販されている。
【0003】
しかしながら、天然の魚の鱗を粉砕しただけの魚鱗粉末は密度が小さいため嵩高く、粉体としての流動性にも欠けるため、そのままでは錠剤等の量産には適さない。そのため、魚鱗粉末を高濃度に含有し、錠径8.0〜9.0mmくらいの小型の錠剤で、例えば、1回あたりに1.875gの魚鱗粉末を錠剤9個以内で服用可能な魚鱗粉末含有錠剤を提供することができなかった。
【0004】
そこで、次には他の賦形剤等と組み合わせることによって、重質で流動性の良い顆粒を調製することが求められるが、単純に賦形剤等の量を増やして魚鱗粉末含有粉体の流動性を改善すると錠剤等に配合可能な魚鱗粉末の割合が減少するし、かといって一般的な湿式の攪拌造粒や流動層造粒によって重質で、流動性の良い魚鱗粉末含有顆粒を調製できるとの報告もない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】永田勝太郎ほか,『魚鱗粉末の安全性ならびに腰痛・骨粗鬆症に対する効果』,臨床医薬,23巻8号(2007),773−782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、魚鱗粉末を高濃度に含有し、密度が大きく重質で、流動性の良い顆粒を提供し、また、該顆粒を圧縮成形することによって、魚鱗粉末を高濃度に含有する錠剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、魚鱗粉末にカルメロ−スカルシウムや微粒酸化ケイ素といった一般的な賦形剤を少量添加して混合し、該混合粉末を圧縮成形して一旦圧縮成形物とした後、該圧縮成形物を粗砕して顆粒を得るという乾式造粒法の一種であるスラッグ法を採択することによって、重質で流動性が良く、圧縮性にも問題のない魚鱗粉末高濃度含有顆粒を調製できることを見出した。
【0008】
かかる知見により得られた本発明の態様は、魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体を乾式造粒法(例えば、スラッグ法)で造粒し、嵩密度が0.39×106〜0.52×106g/m3であって、安息角が42〜55度であることを特徴とする顆粒である。
【0009】
本発明の他の態様は、上記顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、1錠質量310〜350mgの錠剤である。
【0010】
本発明の他の態様は、上記顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、魚鱗粉末を高濃度に含有し、密度が大きく重質で、流動性が良く、圧縮成形性にも優れた魚鱗粉末含有顆粒、並びに、該顆粒を圧縮成形して得られた魚鱗粉末を高濃度に含有する錠剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「顆粒」とは、魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体を乾式造粒法で造粒し、嵩密度が0.39×106〜0.52×106g/m3であって、安息角が42〜55度であることを特徴とする顆粒である。
【0013】
「魚鱗粉末」とは、魚の鱗を粉砕機で粉砕し、微粉化したもので、健康食品等の原材料等として市販されており、魚の鱗としては、イワシやサンマ等の鱗が用いられている。健康食品として供される魚鱗粉末の1回あたりの服用量は1.875gとされている。
【0014】
そして、魚鱗粉末の嵩高さの指標である嵩密度は0.22×106〜0.26×106g/m3であり、粉体の流動性の指標である安息角は50〜55度である。
【0015】
ここで、嵩密度はA.B.D.粉体特性測定器(72型,筒井理化学器械株式会社製)を用いて測定する。具体的には,予め質量を測定した容量1×10-43の試料容器に,高さ12.5cmの位置から粉体を適切な振動レベルにより目開き1000μmのメッシュを通して自然落下させ、試料容器に粉体を山盛りに充填し、上部をすり切りヘラにてすり切りし、その質量を測定し、嵩密度を算出する。また、安息角も前記A.B.D.粉体特性測定器で測定する。具体的には、試料用ホッパ−に投入した粉体を目開き1000μmのメッシュ、排出ロ−ト、口径φ4mmの排出ノズルを通して、直下に置いた径60mmの円板上に高さ10cmの位置から落下させ、三角錐を形成させ、底辺と稜線のなす角度を角度計にて測定する。
【0016】
例えば、高さ2.2cmの打錠用臼で、8.5mm径の錠剤を得る場合、1つの臼には最大で1.2×10-63の打錠用顆粒が充填されることになる。もっとも、実際には打錠用臼孔の空間の一部は打錠用下杵が占めるし、打錠機は通常30〜40rpmくらいの回転数で稼働するから、実生産の場で打錠用顆粒の充填に供される打錠用臼の容積は0.68×10-63ほどである。したがって、打錠用顆粒の嵩密度が小さいと圧縮成形して得られた錠剤の質量は軽くなり、その分1錠中に含有される有効成分量も少なくなる。魚鱗粉末の1回あたりの服用量1.875gを8.5mm径の錠剤9個以内で服用するためには、錠剤1個当たりに208.3mgの魚鱗粉末を含有させる必要があるということになる。
【0017】
これを可能とするためには、魚鱗粉末含有顆粒中の魚鱗粉末の含有(配合)量は、最低でも60質量%である必要があり、通常60〜99.9質量%であって、好ましくは71〜85質量%である。
【0018】
その上で、魚鱗粉末含有顆粒の嵩密度は臼への充填性及び錠剤物性を考慮して、0.39×106〜0.52×106g/m3にする必要があるし、如何に重質の顆粒であっても流動性が悪いとスム−スに打錠用の臼孔を充たすように充填されず、錠剤質量のバラツキを生じたりすることとなるので、流動性の指標である安息角は30〜50度を確保する必要がある。
【0019】
「魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体」とは、魚鱗粉末の他に他の有効成分や添加剤を15〜29質量%の範囲で配合した粉体を混合等した粉体である。他の有効成分としては、ビタミンC,カゼインホスホペプチド,ビタミンDが挙げられる。他の添加剤としては、微結晶セルロ−ス,微粒酸化ケイ素,カルメロ−スカルシウム,ステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0020】
この混合粉体を「乾式造粒法」で造粒することが本発明の特徴の1つである。乾式造粒法としては上記粉体をローラーコンパクター等で圧縮し、板状の塊とした後に、ロールグラニュレータ等で粗砕して顆粒を調製する一般的な方法の他、上記粉体を一旦、錠径11〜13mm、1錠質量350mg程度で、後に粗砕し易いように硬度80〜150N程度の圧縮成形物(錠剤)とし、これをフェザ−ミル(商品名)等の粗砕機で平均粒子径150〜250μm程度まで粗砕して顆粒を調製するという「スラッグ法」と呼ばれる方法がある。
【0021】
こうして得られた魚鱗粉末含有顆粒は、そのままガラス瓶やプラスチック製の容器に充填し、又は、アルミ包材に充填して顆粒剤として提供することが可能である他、ゼラチン製のカプセルに充填してカプセル剤として提供したり、該顆粒を圧縮成形(打錠)して錠剤等として提供することも可能である。
【0022】
ここで、錠剤の硬度は錠剤硬度計(8M型,Schleuniger社製)を用いて測定する。具体的には、金属でできた加圧ジョ−と呼ばれる2対のブロックの間に錠剤を置き、一方のジョ−が可動式となっており錠剤を挟むように移動して力を加え、錠剤を破壊する。固定された側のジョ−に内蔵されたロ−ドセルで力を検知し、硬度を算出する。
【0023】
もっとも、充填性や圧縮成形性を勘案すると、該顆粒にさらに滑沢剤等の公知の添加剤を配合し、より流動性や充填性、圧縮性に優れた「粉粒体」として提供することが好ましい。すなわち、かかる「粉粒体」とは、前記顆粒(魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体を乾式造粒法で造粒し、A.B.D.粉体特性測定器で測定したときの密度が0.39×106〜0.52×106g/m3であって、A.B.D.粉体特性測定器で測定したときの安息角が42〜55度であることを特徴とする顆粒)を78〜99.9質量%、好ましくは90〜94質量%含有し、該顆粒の他に公知の添加剤を22〜0.1質量%の範囲で添加し、混合等して得られた粉粒体である。公知の添加剤としては、微結晶セルロ−ス等の賦形剤、微粒酸化ケイ素等の流動化剤、カルメロ−スカルシウム等の崩壊剤、ステアリン酸カルシウム等の滑沢剤が挙げられる。これらは、最終製剤中の魚鱗粉末の含有量に大きく影響しないように22質量%を上限として配合可能である。
【0024】
そして、該魚鱗粉末含有「粉粒体」を圧縮成形することによって、本発明の魚鱗粉末含有「錠剤」が得られる。圧縮成形方法としては、一般的なロータリー式打錠機による連続打錠が好適である。
【0025】
こうして得られた「錠剤」は、魚鱗粉末を55〜85質量%、好ましくは60〜67質量%含有し、1錠質量310〜350mgの錠剤である。この錠剤には、通常の円形錠剤の他、三角形や楕円形等の変形錠剤も含まれる。
【0026】
特に好ましいのは、魚鱗粉末を55〜85質量%、好ましくは60〜67質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形錠剤である。
【0027】
ここで、円形錠剤における錠径とは、円形錠剤の横方向の長さであり、錠厚は、円形錠剤の縦方向の長さであり、何れもマイクロメ−タ−やノギス等によって測定される。
【0028】
魚鱗粉末を60〜67質量%含有(配合)する1錠質量310〜350mgの錠剤とすることにより、魚鱗粉末1.875gを9個の錠剤として服用することができる。また、錠径8.5〜9.0mmかつ錠厚4.7〜5.4mmの小型の錠剤として大変服用し易く、商品価値の高い魚鱗粉末高濃度含有錠剤を安価に提供できる。
【0029】
もちろん、圧縮成形せずに、そのままガラス瓶やプラスチック製の容器に充填し、又は、アルミ包材に充填して顆粒剤として提供することが可能である他、ゼラチン製のカプセルに充填してカプセル剤として提供することも可能である。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例、比較例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0031】
実施例1
魚鱗粉末(コラゲタイト(登録商標),信田缶詰株式会社製)1875g、カゼインホスホペプチド75g、直打用アスコルビン酸579.9g、ビタミンD3製剤(ビタミンD3としてコレカルシフェロールを0.5質量%含有し、他に食品素材等からなる顆粒,市販品)0.375g、ステアリン酸カルシウム36g及びカルメロ−スカルシウム54gを混合後、ロータリー式打錠機を用い、11mm径の隅丸平面の杵を使用して打錠圧28kNで圧縮成形(打錠)し、錠径11mm、1錠質量390mgの錠剤を得た(平均錠剤厚み:3.1mm、平均錠剤硬度:148N)。該錠剤を粗砕機で粗砕し、これに微結晶セルロ−ス135g、微粒酸化ケイ素27g及びステアリン酸カルシウム9gを添加、混合して魚鱗粉末含有粉粒体を得た。該魚鱗粉末含有粉粒体を、ロータリー式打錠機を用い、8.5mm径の糖衣面の杵を使用して打錠圧16〜20kNで圧縮成形(打錠)し、錠径8.5mm、錠厚5.1〜5.3mm、1錠質量313mgの錠剤を得た。
【0032】
実施例2
魚鱗粉末1875g、カゼインホスホペプチド75g、直打用アスコルビン酸579.9g、ビタミンD3製剤0.375g、ステアリン酸カルシウム36g及びカルメロ−スカルシウム54gを混合後、ロータリー式打錠機を用い、11mm径の隅丸平面の杵を使用して打錠圧28kNで圧縮成形(打錠)し、錠径11mm、1錠質量350mgの錠剤を得た(平均錠剤厚み:2.9mm、平均錠剤硬度:111N)。該錠剤を粉砕機で粗砕し、これに微結晶セルロ−ス197g、微粒酸化ケイ素27g及びステアリン酸カルシウム9gを添加、混合して魚鱗粉末含有粉粒体を得た。該魚鱗粉末含有粉粒体を、ロータリー式打錠機を用い、8.5mm径の糖衣面の杵を使用して打錠圧14〜18kNで圧縮成形(打錠)し、錠径8.5mm、錠厚5.2〜5.4mm、1錠質量320mgの錠剤を得た。
【0033】
実施例3
実施例2に準拠して得られた魚鱗粉末含有粉粒体を、ロータリー式打錠機を用い、9mm径の糖衣面の杵を使用して打錠圧18〜22kNで圧縮成形(打錠)し、錠径9mm、錠厚4.7〜4.9mm、1錠質量320mgの錠剤を得た。
【0034】
比較例1
魚鱗粉末1875g、カゼインホスペプチド75g、直打用アスコルビン酸579.9g、ビタミンD3製剤0.375g、直打用乳糖437g、微粒酸化ケイ素54g、カルメロ−スカルシウム54g及びステアリン酸カルシウム45gを混合し、魚鱗粉末含有粉体を得た。該魚鱗粉末含有粉粒体を、ロータリー式打錠機を用い、8.5mm径の糖衣面の杵を使用して打錠圧12〜16kNで圧縮成形(打錠)し、錠径8.5mm、錠厚4.4〜4.6mm、1錠質量260mgの錠剤を得た。
【0035】
試験例1
実施例1〜3において得られた顆粒及び比較例1において得られた魚鱗粉末含有粉体に関し、A.B.D.粉体特性測定器を用いて、嵩密度及び安息角を測定した(測定条件は前述)。
結果を表1に示す。
【0036】
試験例2
実施例1〜3において得られた魚鱗粉末含有粉粒体及び比較例1において得られた魚鱗粉末含有粉体について、ロータリー式打錠機における打錠において錠径8.5mm又は9mmの錠剤を成形する際に、魚鱗粉末1.875gを摂取するのに必要となる錠剤数が9錠以下で製造できるかを確認した。また、得られた錠剤について、マイクロメ−タ−にて錠厚を、錠剤硬度計(8M型,ShleuNiger社製)にて錠剤硬度を測定した。
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
結果
表1より、実施例1〜3において得られた顆粒は嵩密度が大きく重質で、流動性の良い顆粒であるのに対して、比較例1の魚鱗粉末含有粉体は嵩密度が小さく軽質な粉体であることがわかった。
【0039】
また、表1より、実施例1〜3で得られた錠剤は、錠径8.5mm又は9mm、錠厚4.7〜5.4mmかつ1錠質量313又は320mgと、小型の錠剤として大変服用し易く、9錠で魚鱗粉末1.875gを摂取できるのに対し、比較例1の錠剤では魚鱗粉末1.875gを摂取するのに10錠以上を要することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明により、高濃度の魚鱗粉末を配合した錠剤・顆粒剤等を健康食品等として提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚鱗粉末を71〜85質量%含有する粉粒体を乾式造粒法で造粒し、嵩密度が0.39×106〜0.52×106g/m3であって、安息角が42〜55度であることを特徴とする顆粒。
【請求項2】
請求項1記載の顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、1錠質量310〜350mgの錠剤。
【請求項3】
請求項1記載の顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形錠剤。
【請求項4】
乾式造粒法がスラッグ法である請求項1記載の顆粒。
【請求項5】
請求項4記載の顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、1錠質量310〜350mgの錠剤。
【請求項6】
請求項4記載の顆粒を78〜99.9質量%含有する粉粒体を圧縮成形したことを特徴とする、魚鱗粉末を55〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形錠剤。

【公開番号】特開2010−248157(P2010−248157A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101553(P2009−101553)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】